【実施例】
【0037】
<実施例>
以下の原料を用いて、冷菓を製造した。
<冷菓ミックス1−1(冷菓シェル用)>
砂糖 12.0%
異性化糖 2.0%
スクラロース 0.02%
リンゴ酸 0.005%
クエン酸 0.01%
増粘剤 0.3%
濃縮果汁 10.0%
着色料 少量
香料 少量
水 75% (全体水分80%)
【0038】
<冷菓ミックス2(冷菓センター用)>
無塩バター 10.0%
脱脂粉乳 9.0%
砂糖 15.5%
水あめ 5.0%
安定剤 0.2%
乳化剤 0.2%
香料 少量
水 60%
【0039】
<コーティング液>
砂糖 5.0%
スクラロース 0.03%
リンゴ酸 0.01%
クエン酸 0.02%
増粘剤 0.4%
着色料 少量
香料 少量
水 94.0%
【0040】
冷菓ミックス1−1を、−3.0℃に調整した撹拌式フリーザー(カゴ型)内で、撹拌冷却することにより、冷菓ミックス中に微細氷結晶を生成、分散させた。また撹拌は、オーバーランが10%となるように行った。
続いて、微細氷結晶を含む冷菓ミックスを、−2.8℃を維持しながら、ホッパー及びノズルを用いてモールド内に充填した。充填から所定時間経過後に中心部(未凍結部分)を、吸引装置及びノズルを用いて吸引除去した。
次に、冷菓ミックス2を撹拌することにより、冷菓ミックス2のオーバーランを30%とした。冷菓ミックス2を−2.5℃に調節し、先に吸引除去した中心部に、ホッパー及びノズルを用いて注入し、−35℃で4分以上冷却した。冷却の途中で、木製のスティックの先端部を挿入した。
その後、モールドを加温することにより冷菓をモールドから抜き出し、コーティング液に浸漬した後、液体窒素に数秒浸漬することによりコーティング液を凍結し、スティックアイスを製造した。
【0041】
<試験例1>
冷菓ミックス1−1のオーバーランと、冷菓ミックス1−1の充填温度を以下の表に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてスティックアイス(実施例2〜12、比較例1〜3)を製造した。
なお、上記で製造した実施例1〜12、比較例1〜3のいずれのスティックアイスについても、冷菓の大きさは、100mm×60mm×25mmであった。また、冷菓シェルの厚さは3〜20mmの範囲であった。
【0042】
これらのスティックアイスについて、針状結晶の生成の度合い、スティックアイスの保形性、及び冷菓ミックスの中心部の吸引容易性(スプリット性)について、以下の基準により評価した。
【0043】
針状結晶の生成の度合いは、パネラーによる喫食した際の官能評価、及び冷菓を分断したときの露出面の観察により行った。評価基準は以下のとおりである。
(評価基準)
◎:喫食時にブロック状に冷菓が割れることがない。針状結晶に起因するキシキシとした食感は感じない。露出面に針状結晶がほとんど確認できない。
○:喫食時にブロック状に冷菓が割れることがない。針状結晶に起因するキシキシとした食感は感じない。露出面に小さな針状結晶が確認できる。
×:喫食時にブロック状に冷菓が割れる。針状結晶に起因するキシキシとした食感を感じる。露出面に太い針状結晶が確認できる。
【0044】
保形性については、−18℃の冷凍庫内に、冷菓を立てかけ、1ヶ月後の形状を観察することにより行った。評価基準は以下のとおりである。
(評価基準)
◎:試験開始時からの形状の変化がほとんどない。
○:試験開始時からの形状の変化がわずかにあるものの、容易には通常視認できない程度の変化である。
×:試験開始時からの形状の変化が明らかに視認できる。
【0045】
スプリット性についてはモールド内でシェルワーク後の中心部の冷菓ミックス2を吸出する際の適性について、目視確認を行った。評価基準は以下のとおりである。
(評価基準)
◎:吸出し用のノズルが容易に挿入でき、吸出し後に中心部分の冷菓ミックス1−1表面にあきらかな凸凹などが確認されない。
○:吸出し用のノズルが容易に挿入できるが、吸出し後に中心部分の冷菓ミックス1−1表面にわずかな凸凹が確認できる。
×:吸出し用のノズルが容易に挿入できない、または吸出しが困難で吸出し後の中心部分の冷菓ミックス1−1表面にあきらかな凸凹が確認できる。
【0046】
針状結晶の生成の度合いについての評価結果を以下に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
実施例のスティックアイスは、冷菓シェル部分及びセンター部分の何れにも太く食感を損なうような針状結晶が存在せず、キシキシとした食感は問題とならなかった。また、咀嚼した時に冷菓シェルがサクっと崩壊し、センターの冷菓と口の中で混ざり合いながら溶けていくものであった。
中でも、実施例1〜4、6、7、10〜12の冷菓に関しては、針状結晶の生成がほとんどなく、食感に優れるものであった。
【0049】
一方、比較例のスティックアイスは、冷菓シェル部分に針状結晶が存在し、そのため、食したときに冷菓シェルがブロック状に割れたようになった。そして、それを咀嚼した時に、冷菓シェルが結晶の配向方向に沿って割け、シェルとセンターが分離して口の中に存在するような食感であった。
【0050】
これより、冷菓シェルのミックス中の微細氷結晶の分散状態を維持しながら充填をし、続いて固化させることにより、針状結晶を成長させることを防ぐことができることが分かった。また、冷菓シェルのミックスの水分量が80%程度のものについて、微細氷結晶の分散状態を維持するためには、充填温度が−1.0℃以下、さらには−2.0℃より小さくなるように、冷菓ミックスの温度を維持することが好ましいことが分かった。
また、オーバーランは、0%より大きいことが、針状結晶を成長させることを防ぐ観点から、より一層好ましいことが分かった。
【0051】
次に、保形性についての評価結果を以下に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
実施例1〜3、6〜8、11の冷菓に関しては、特に保形性に優れていた。
これより、冷菓シェルミックスの水分量が80%程度のものについては、冷菓ミックスのオーバーランが50%より小さい場合に保形性が実現でき、さらに冷菓ミックスのオーバーランが20%以下の場合には、優れた保形性の冷菓が得られることが分かった。
【0054】
スプリット性についての評価結果を以下に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
実施例1、2、5〜9の冷菓に関しては、スプリット性に優れていた。
これより、冷菓シェルミックスの水分量が80%程度のものについては、充填温度を−3.3℃程度以上とすることで、優れたスプリット性が得られることが分かった。
【0057】
<試験例2>
上記で用いた冷菓ミックス1−1を、以下の冷菓ミックス1−2に置換し、同様にして冷菓(スティックアイス)を製造した(実施例13〜24、比較例4〜6)。また、針状結晶の生成の度合い、スティックアイスの保形性、及び冷菓ミックスの中心部の吸引容易性(スプリット性)について、以下の基準により評価した。
【0058】
<冷菓ミックス1−2(冷菓シェル用)>
砂糖 2.0%
スクラロース 0.08%
リンゴ酸 0.005%
クエン酸 0.01%
増粘剤 0.3%
濃縮果汁 5.0%
着色料 少量
香料 少量
水 92% (全体水分95%)
【0059】
針状結晶の生成の度合いについての評価結果を以下に示す。
【0060】
【表4】
【0061】
実施例のスティックアイスは、冷菓シェル部分及びセンター部分の何れにも太く食感を損なうような針状結晶が存在せず、キシキシとした食感は問題とならなかった。また、咀嚼した時に冷菓シェルがサクっと崩壊し、センターの冷菓と口の中で混ざり合いながら溶けていくものであった。
中でも、実施例15〜24の冷菓に関しては、針状結晶の生成がほとんどなく、食感に優れるものであった。
【0062】
一方、比較例のスティックアイスは、冷菓シェル部分に針状結晶が存在し、そのため、食したときに冷菓シェルがブロック状に割れたようになった。そして、それを咀嚼した時に、冷菓シェルが結晶の配向方向に沿って割け、シェルとセンターが分離して口の中に存在するような食感であった。
【0063】
これより、冷菓シェルのミックス中の微細氷結晶の分散状態を維持しながら充填をし、続いて固化させることにより、針状結晶を成長させることを防ぐことができることが分かった。また、冷菓シェルミックスの水分量が95%程度のものについて、微細氷結晶の分散状態を維持するためには、充填温度が−1.0℃以下、さらには−2.0℃以下となるように、冷菓ミックスの温度を維持することが好ましいことが分かった。
【0064】
次に、保形性についての評価結果を以下に示す。
【0065】
【表5】
【0066】
実施例13〜15、19、20、23の冷菓に関しては、特に保形性に優れていた。
これより、冷菓シェルミックスの水分量が95%程度のものについては、冷菓ミックスのオーバーランが50%以下、さらには20%以下の場合に、優れた保形性が得られることが分かった。
【0067】
スプリット性についての評価結果を以下に示す。
【0068】
【表6】
【0069】
実施例13〜15、19、20の冷菓に関しては、特にスプリット性に優れていた。
これより、冷菓シェルミックスの水分量が95%程度のものについては、充填温度を−2.8℃以上、さらには−2.0以上に設定することで、優れたスプリット性が得られることが分かった。
【0070】
<試験例3>
次に、上記で用いた冷菓ミックス1−1を、以下の冷菓ミックス1−3に置換し、同様にして冷菓(スティックアイス)を製造した。また、針状結晶の生成の度合い、スティックアイスの保形性、及び冷菓ミックスの中心部の吸引容易性(スプリット性)について、以下の基準により評価した。
【0071】
<冷菓ミックス1−3(冷菓シェル用)>
砂糖 12.0%
水あめ 20.0%
リンゴ酸 0.005%
クエン酸 0.01%
増粘剤 0.3%
濃縮果汁 10.0%
着色料 少量
香料 少量
水 55% (全体水分65%)
【0072】
【表7】
【0073】
実施例のスティックアイスは、冷菓シェル部分及びセンター部分の何れにも太く食感を損なうような針状結晶が存在せず、キシキシとした食感は問題とならなかった。また、咀嚼した時に冷菓シェルがサクっと崩壊し、センターの冷菓と口の中で混ざり合いながら溶けていくものであった。
中でも、実施例25、26、28〜31、33、35、36の冷菓に関しては、針状結晶の生成がほとんどなく、食感に優れるものであった。
【0074】
一方、比較例のスティックアイスは、冷菓シェル部分に針状結晶が存在し、そのため、食したときに冷菓シェルがブロック状に割れたようになった。そして、それを咀嚼した時に、冷菓シェルが結晶の配向方向に沿って割け、シェルとセンターが分離して口の中に存在するような食感であった。
【0075】
これより、冷菓シェルのミックス中の微細氷結晶の分散状態を維持しながら充填をし、続いて固化させることにより、針状結晶を成長させることを防ぐことができることが分かった。また、冷菓シェルミックスの水分量が65%程度のものについては、微細氷結晶の分散状態を維持するためには、充填温度が−2.0℃より小さく、さらには−3.0℃より小さくなるように、冷菓ミックスの温度を維持することが好ましいことが分かった。
【0076】
次に、保形性についての評価結果を以下に示す。
【0077】
【表8】
【0078】
実施例25、26、31、32、35の冷菓に関しては、特に保形性に優れていた。
これより、冷菓シェルミックスの水分量が65%程度のものについては、冷菓ミックスのオーバーランが30%より小さい場合、さらには15%より小さい場合には、特に優れた保形性の冷菓が得られることが分かった。
【0079】
スプリット性についての評価結果を以下に示す。
【0080】
【表9】
【0081】
実施例25、27、30〜32の冷菓に関しては、特にスプリット性に優れていた。
これより、冷菓シェルミックスの水分量が65%程度のものについては、充填温度を−5.0℃以上、さらには−3.7℃以上に設定することで、優れたスプリット性が得られることが分かった。
【0082】
以上の結果をまとめると、冷菓シェルのミックス中に微細氷結晶を分散させておき、この状態を維持しながら充填をすることで、針状結晶の生成が抑制された冷菓シェルを製造することができることが分かった。また、微細氷結晶を分散させておき、これを維持しながら分散を行うことによる針状結晶の生成の抑制効果は、65〜95重量%の水分含有量のいずれの冷菓ミックスを用いた場合にも得られることが分かった。
また、冷菓ミックスに空気を抱き込ませることが、針状結晶を成長させることを防ぐ観点からより好ましいことが分かった。一方で、冷菓ミックスのオーバーランを20%以下、好ましくは15%以下とすることにより、水分量の異なる冷菓ミックスにおいても特に優れた保形性の冷菓が得られることが分かった。
また、上述した冷菓ミックス中の微細氷結晶の分散状態は、冷菓ミックスの温度を制御することにより維持することができ、スプリット性などの製造効率を加味すると、−2.0〜−4.0℃程度が特に好ましいことが分かった。