(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
近接効果、かぶり効果、及びローディング効果のうち少なくとも1つに起因する寸法変動を補正すると共に、さらに外部から入力された寸法変動を補正するドーズ変調量によってドーズ変調された荷電粒子ビームの単位面積あたりの照射量を示す照射量密度を演算する演算部と、
前記照射量密度が、パターン寸法の異常、レジストの蒸発、描画装置の汚染、或いは描画装置の故障を回避するための許容値を超えているかどうかを判定する判定部と、
荷電粒子ビームを用いて試料にパターンを描画する描画部と、
を備えたことを特徴とする荷電粒子ビーム描画装置。
前記試料の描画領域に描画されるためのチップのチップ領域が第1のサイズでメッシュ状に仮想分割された複数の第1のメッシュ領域の第1のメッシュ領域毎に前記照射量密度が定義された照射量密度マップを作成する照射量密度マップ作成部と、
前記試料の描画領域が第1のサイズよりも大きい第2のサイズでメッシュ状に仮想分割された複数の第2のメッシュ領域の第2のメッシュ領域毎に、当該第2のメッシュ領域に一部でも重なる複数の第1のメッシュ領域に定義された照射量密度の中から選択される最大照射量密度が定義された最大照射量密度マップを作成する最大照射量密度マップ作成部と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の荷電粒子ビーム描画装置。
近接効果、かぶり効果、及びローディング効果のうち少なくとも1つに起因する寸法変動を補正すると共に、さらに外部から入力されたドーズ変調量によってドーズ変調された荷電粒子ビームの照射量を演算する演算部と、
前記照射量が、パターン寸法の異常、レジストの蒸発、描画装置の汚染、或いは描画装置の故障を回避するための許容値を超えているかどうかを判定する判定部と、
荷電粒子ビームを用いて試料にパターンを描画する描画部と、
を備えたことを特徴とする荷電粒子ビーム描画装置。
近接効果、かぶり効果、及びローディング効果のうち少なくとも1つに起因する寸法変動を補正すると共に、さらに外部から入力されたドーズ変調量によってドーズ変調された荷電粒子ビームの照射量又は単位面積あたりの照射量を示す照射量密度を演算する工程と、
描画処理を行う前に、前記照射量又は照射量密度が、パターン寸法の異常、レジストの蒸発、描画装置の汚染、或いは描画装置の故障を回避するための許容値を超えているかどうかを判定し、結果を出力する工程と、
を備えたことを特徴とする荷電粒子ビームの照射量チェック方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでも構わない。また、荷電粒子ビーム装置の一例として、可変成形型(VSB方式)の描画装置について説明する。
【0017】
また、1回のビーム照射(1描画パス)あたりの照射量密度が閾値を超えるとヒーティング効果により描画精度が劣化する。一方、1描画パスあたりの照射量が閾値を超えても描画精度が劣化する。そこで、以下、実施の形態では、最大照射量密度と最大照射量をそれぞれ求めて、描画処理前に、それぞれ閾値と比較してチェックする。
【0018】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
図1において、描画装置100は、描画部150と制御部160を備えている。描画装置100は、荷電粒子ビーム描画装置の一例である。特に、可変成形型の描画装置の一例である。描画部150は、電子鏡筒102と描画室103を備えている。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、第1のアパーチャ203、投影レンズ204、偏向器205、第2のアパーチャ206、対物レンズ207、主偏向器208及び副偏向器209が配置されている。描画室103内には、XYステージ105が配置される。XYステージ105上には、描画時には描画対象となるマスク等の試料101が配置される。試料101には、半導体装置を製造する際の露光用マスクが含まれる。また、試料101には、レジストが塗布された、まだ何も描画されていないマスクブランクスが含まれる。
【0019】
制御部160は、制御計算機110、制御回路120、前処理計算機130、メモリ132、外部インターフェース(I/F)回路134、及び磁気ディスク装置等の記憶装置140,142,144,146を有している。制御計算機110、制御回路120、前処理計算機130、メモリ132、外部インターフェース(I/F)回路134、及び記憶装置140,142,144,146は、図示しないバスを介して互いに接続されている。
【0020】
前処理計算機130内には、寸法変動量ΔCD(x)演算部10、取得部12、近接効果補正照射係数Dp’(x)演算部14、照射量密度ρ
+(x)マップ作成部16、最大照射量密度ρ
+max(x)マップ作成部18、かぶり
効果補正照射係数Df(x)演算部20、最大照射量密度ρ
++max(x)マップ作成部22、判定部24、照射量D
+(x)マップ作成部30、最大照射量D
+max(x)マップ作成部32、最大照射量D
++max(x)マップ作成部34、判定部36、及び出力部40が配置される。寸法変動量ΔCD(x)演算部10、取得部12、近接効果補正照射係数Dp’(x)演算部14、照射量密度ρ
+(x)マップ作成部16、最大照射量密度ρ
+max(x)マップ作成部18、かぶり
効果補正照射係数Df(x)演算部20、最大照射量密度ρ
++max(x)マップ作成部22、判定部24、照射量D
+(x)マップ作成部30、最大照射量D
+max(x)マップ作成部32、最大照射量D
++max(x)マップ作成部34、判定部36、及び出力部40といった機能は、電気回路等のハードウェアで構成されてもよいし、これらの機能を実行するプログラム等のソフトウェアで構成されてもよい。或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより構成されてもよい。寸法変動量ΔCD(x)演算部10、取得部12、近接効果補正照射係数Dp’(x)演算部14、照射量密度ρ
+(x)マップ作成部16、最大照射量密度ρ
+max(x)マップ作成部18、かぶり
効果補正照射係数Df(x)演算部20、最大照射量密度ρ
++max(x)マップ作成部22、判定部24、照射量D
+(x)マップ作成部30、最大照射量D
+max(x)マップ作成部32、最大照射量D
++max(x)マップ作成部34、判定部36、及び出力部40に入出力される情報および演算中の情報はメモリ132にその都度格納される。
【0021】
制御計算機110内には、ショットデータ生成部112、照射量演算部113、及び描画制御部114が配置される。ショットデータ生成部112、照射量演算部113、及び描画制御部114といった機能は、電気回路等のハードウェアで構成されてもよいし、これらの機能を実行するプログラム等のソフトウェアで構成されてもよい。或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより構成されてもよい。ショットデータ生成部112、照射量演算部113、及び描画制御部114に入出力される情報および演算中の情報は図示しないメモリにその都度格納される。
【0022】
また、記憶装置140には、ユーザ側が作成された設計データであるレイアウトデータ(例えば、CADデータ等)が外部から入力され格納されている。記憶装置142には、ドーズ変調量(率)DMデータ、近接効果補正係数η−寸法CDの相関データ、及び、基準照射量D
B−寸法CDの相関データが外部から入力され格納されている。ドーズ変調量DMは、描画装置100へのデータ入力前の段階で、ユーザ或いは補正ツール等によって設定される。ドーズ変調量DMは、例えば、0%〜200%等で定義されると好適である。但し、これに限るものではなく、ドーズ変調率として、例えば、1.0〜3.0等の値として定義されても好適である。また、記憶装置144には、面積密度ρ(x)マップ、及びドーズ変調量が付加された面積密度ρ(DM)マップが格納されている。ρ(DM)は、例えば、面積密度ρ(x)にドーズ変調量(率)を乗じた値として定義される。ここで、位置xは、単に2次元のうちのx方向を示すわけではなく、ベクトルを示すものとする。以下、同様である。また、面積密度ρ(x)及び面積密度ρ(DM)は、前処理計算機130内で演算されても良いし、その他の計算機等で計算されてもよい。或いは、外部から入力されても構わない。
【0023】
ここで、
図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。例えば、位置偏向用には、主偏向器208と副偏向器209の主副2段の多段偏向器を用いているが、1段の偏向器或いは3段以上の多段偏向器によって位置偏向を行なう場合であってもよい。また、描画装置100には、マウスやキーボード等の入力装置、及びモニタ装置等が接続されていても構わない。
【0024】
図2は、実施の形態1における図形パターンの一例を示す図である。
図2では、例えば、レイアウトデータ内に、複数の図形パターンA〜Kが配置される。そして、図形パターンA,Kと、図形パターンB〜E,G〜Jと、図形パターンFと、について、異なるドーズ量で描画したい場合がある。そのため、図形パターンA,Kに対するドーズ変調量DMと、図形パターンB〜E,G〜Jに対するドーズ変調量DMと、図形パターンFに対するドーズ変調量DMとが、予め設定される。変調後のドーズ量は、例えば、描画装置100内で近接効果補正等の計算後の照射量D(x)にかかるドーズ変調量DMを乗じた値で算出される。
【0025】
図3は、実施の形態1におけるドーズ変調量DMデータの一例を示す図である。
図2に示すように、レイアウトデータ内の複数の図形パターンについて、図形毎に、指標番号(識別子)が付与される。そして、ドーズ変調量DMデータは、
図3に示すように、各指標番号に対するドーズ変調量DMとして定義される。
図3では、例えば、指標番号20の図形パターンについて、ドーズ変調量DMが100%と定義される。指標番号21の図形パターンについて、ドーズ変調量DMが120%と定義される。指標番号22図形パターンについて、ドーズ変調量DMが140
%と定義される。かかるドーズ変調量DMデータは、ユーザ或いは補正ツール等で設定されたドーズ変調量DMの各データとそれぞれ対応する図形パターンの指標番号を入力し、対応させたデータを作成すればよい。
【0026】
図4は、実施の形態1における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
図4では、特に、電子ビームの照射量チェック方法に重点を置いて示している。
図4において、寸法変動量ΔCD(x)演算工程(S104)と、取得工程(S106)と、近接効果補正照射係数Dp’(x)演算工程(S108)と、照射量密度ρ
+(x)マップ作成工程(S110)と、最大照射量密度ρ
+max(x)マップ作成工程(S112)と、照射量D
+(x)マップ作成工程(S120)と、最大照射量D
+max(x)マップ作成工程(S122)と、かぶり
効果補正照射係数Df(x)演算工程(S130)と、最大照射量密度ρ
++max(x)マップ作成工程(S132)と、判定工程(S134)と、最大照射量D
++max(x)マップ作成工程(S142)と、判定工程(S144)と、描画工程(S150)と、いった一連の工程を実施する。
【0027】
ΔCD(x)演算工程(S104)として、ΔCD(x)演算部10は、記憶装置144から面積密度ρ(x)を読み出し、ローディング効果に起因した寸法変動量ΔCD(x)を演算する。寸法変動量ΔCD(x)は、以下の式(1)で定義される。
【0029】
ここで、ローディング効果補正係数γは、面積密度100%での寸法変動量で定義される。また、g
L(x)は、ローディング効果における分布関数を示す。P(x)は、位置依存の寸法変動量を示す。位置依存の寸法変動量P(x)は、図示しない記憶装置等に格納されているデータを用いればよい。ここでは、描画対象となるチップのチップ領域をメッシュ状の複数のメッシュ領域(メッシュ2:第2のメッシュ領域)に仮想分割して、メッシュ領域(メッシュ2)毎に演算される。メッシュ領域(メッシュ2)のサイズ(第2のサイズ)は、例えば、ローディング効果の影響半径の1/10程度が好適である。例えば、100〜500μm程度が好適である。
【0030】
取得工程(S106)として、取得部12は、記憶装置142からη−CDの相関データ、及び、D
B−CDの相関データを読み出し、近接効果補正を維持しながらローディング効果に起因した寸法変動量ΔCD(x)をも補正するのに適した近接効果補正係数(後方散乱係数)η’と基準照射量D
B’の組を取得する。η−CDの相関データ、及び、D
B−CDの相関データから所望するCDに寸法変動量ΔCD(x)を加算(或いは差分)したCDに好適なη’とD
B’の組を取得すればよい。ローディング効果を考慮しない近接効果補正係数ηと基準照射量D
Bが予め設定されている場合には、これらに代わって、η’とD
B’の組を取得する。
【0031】
Dp’(x)演算工程(S108)として、Dp’(x)演算部14は、記憶装置144から面積密度ρ(DM:x)を読み出し、さらに、得られたη’を用いて、近接効果を補正するための近接効果補正照射係数Dp’(x)を演算する。近接効果補正照射係数Dp’(x)は、以下の式(2)を解くことで求めることができる。
【0033】
ここで、g
p(x)は、近接効果における分布関数(後方散乱影響関数)を示す。ここでは、描画対象となるチップのチップ領域をメッシュ状の複数のメッシュ領域(メッシュ1:第1のメッシュ領域)に仮想分割して、メッシュ領域(メッシュ1)毎に演算される。メッシュ領域(メッシュ1)のサイズ(第1のサイズ)は、例えば、近接効果の影響半径の1/10よりも数倍程度大きい値が好適である。例えば、5〜10μm程度が好適である。これにより、近接効果の影響半径の1/10程度のメッシュサイズのメッシュ領域毎に行われる詳細な近接効果補正演算に比べて演算回数を低減できる。ひいては高速演算が可能となる。
【0034】
図5は、実施の形態1における照射量密度のマップ作成のフローを説明するための概念図である。
図5(a)に示すように、試料50に、チップ52が描画されることを想定する。まずは、
図5(b)に示すように、単位面積あたりの照射量を示す照射量密度ρ
+(x)がメッシュ領域(メッシュ1)54毎に定義されたρ
+(x)マップを作成する。
【0035】
ρ
+(x)マップ作成工程(S110)として、ρ
+(x)マップ作成部16は、照射量密度ρ
+(x)をメッシュ領域(メッシュ1)毎に演算し、照射量密度ρ
+(x)がメッシュ領域(メッシュ1)毎に定義されたρ
+(x)マップを作成する。照射量密度ρ
+(x)は、以下の式(3)を解くことで求めることができる。かかるρ
+(x)マップでは、近接効果とローディング効果とが補正された照射量密度ρ
+(x)が定義されることになる。
【0037】
ここで、基準照射量D
B’は上述したようにローディング効果補正も考慮されたD
B’が用いられる。また、面積密度ρ(DM:x)は、記憶装置144から読み出せばよい。照射量密度ρ
+(x)は、近接効果及びローディング効果に起因する寸法変動を補正する照射量密度である。そして、照射量
密度ρ
+(x)は、式(3)に示すように、基準照射量D
B’と、近接効果及びローディング効果に起因する寸法変動を補正する近接効果補正照射係数Dp’(x)(照射量係数の一例)と、前記ドーズ変調量で重み付けされたパターン面積密度ρ(DM:x)と、を用いて定義される。
【0038】
最大照射量密度ρ
+max(x)マップ作成工程(S112)として、ρ
+max(x)マップ作成部18は、ρ
+(x)マップを用いて、メッシュ領域(メッシュ2)毎に最大照射量密度ρ
+max(x)を抽出して最大照射量密度ρ
+max(x)がメッシュ領域(メッシュ2)毎に定義されたρ
+max(x)マップを作成する。最大照射量密度ρ
+max(x)は、
図5(c)に示すように、サイズの大きいメッシュ領域(メッシュ2)に一部でも重なるサイズの小さいメッシュ領域(メッシュ1)が複数存在する場合には、複数のメッシュ領域(メッシュ1)に定義されたρ
+max(x)の中から最大値を抽出すればよい。そして、
図5(d)に示すように、最大照射量密度ρ
+max(x)がメッシュ領域(メッシュ2)51毎に定義されたρ
+max(x)マップを作成する。かかるρ
+max(x)マップでは、近接効果とローディング効果とが補正されたρ
+max(x)が定義されることになる。
【0039】
かぶり
効果補正照射係数Df(x)演算工程(S130)として、かぶり
効果補正照射係数Df(x)演算部20は、記憶装置144から面積密度ρ(DM:x)を読み出し、さらに、得られたη’,Dp’(x)を用いて、かぶり効果を補正するためのかぶり効果補正照射係数Df(x)を演算する。かぶり効果補正照射係数Df’(x)は、以下の式(4)を解くことで求めることができる。
【0041】
ここで、g
f(x)は、かぶり効果における分布関数(かぶり影響関数)を示す。ここでは、メッシュ領域(メッシュ2)毎に演算される。また、θは、かぶり効果補正係数を示す。
【0042】
ρ
++max(x)マップ作成工程(S132)として、ρ
++max(x)マップ作成部22は、得られたかぶり効果補正照射係数Df(x)を用いて、メッシュ領域(メッシュ2)毎に最大照射量密度ρ
++max(x)を演算し、
図5(e)に示すように、最大照射量密度ρ
++max(x)がメッシュ領域(メッシュ2)51毎に定義されたρ
++max(x)マップを作成する。最大照射量密度ρ
++max(x)は、以下の式(5)を解くことで求めることができる。
【0044】
かかるρ
++max(x)マップでは、近接効果とローディング効果とかぶり効果とが補正されたρ
++max(x)が定義されることになる。作成されたρ
++max(x)マップは、出力部40によって、記憶装置146にログとして格納される。これにより、描画前後に大まかな最大照射量密度を確認できる。
【0045】
以上のようにして、上述した各演算部によって、近接効果、かぶり効果、及びローディング効果に起因する寸法変動を補正すると共に、さらに外部から入力されたドーズ変調量によってドーズ変調された電子ビームの単位面積あたりの照射量を示す照射量密度を演算する。ここでは、一例として、近接効果、かぶり効果、及びローディング効果に起因する寸法変動を補正する最大照射量密度を演算したが、これに限るものではない。近接効果、かぶり効果、及びローディング効果のうち少なくとも1つに起因する寸法変動を補正すると共に、さらに外部から入力されたドーズ変調量によってドーズ変調された電子ビームの単位面積あたりの照射量を示す照射量密度を演算してもよい。
【0046】
判定工程(S134)として、判定部24は、照射量密度が許容値を超えているかどうかを判定する。具体的には、以下の式(6)を満たすかどうかにより判定する。
【0048】
ここでは、1描画パスあたりの最大照射量密度ρ
++max(x)が閾値D
th(1)を超えているかどうかを判定する。判定部24は、メッシュ領域(メッシュ2)毎に照射量密度が閾値D
th(1)を超えているかどうかを判定する。いずれかのメッシュ領域(メッシュ2)において超えている場合には、NGとして、出力部40は、警告を出力する。警告は、図示しないモニタ等に表示しても良いし、外部I/F回路134を介して外部に出力してもよい。これにより、ユーザに描画の有無を判断するための指標を与えることができる。警告は、メッシュ領域(メッシュ2)を特定すると好適である。これにより、かかる領域のドーズ変調量を変更することもできる。或いは、かかる警告によって描画中止にしてもよい。
【0049】
以上により、照射量密度について、描画装置内でドーズ量補正を行う場合でも、外部にて設定されるドーズ変調量により異常な照射量密度のビーム照射が行われてしまうことを回避できる。その結果、異常な照射量密度のビーム照射に起因する、パターン寸法CDの異常、レジストの蒸発、及び描画装置汚染(或いは描画装置故障)を回避できる。次に、照射量についてもチェックする。
【0050】
図6は、実施の形態1における照射量のマップ作成のフローを説明するための概念図である。
図6(a)に示すように、試料50に、チップ52が描画されることを想定する。まずは、
図6(b)に示すように、照射量D
+(x)がメッシュ領域(メッシュ1)55毎に定義されたD
+(x)マップを作成する。
【0051】
D
+(x)マップ作成工程(S120)として、D
+(x)マップ作成部30は、照射量D
+(x)をメッシュ領域(メッシュ1)毎に演算し、照射量D
+(x)がメッシュ領域(メッシュ1)毎に定義されたD
+(x)マップを作成する。照射量D
+(x)は、以下の式(7)を解くことで求めることができる。かかるD
+(x)マップでは、近接効果とローディング効果とが補正された照射量D
+(x)が定義されることになる。
【0053】
ここで、基準照射量D
B’は上述したようにローディング効果補正も考慮されたD
B’
が用いられる。近接効果補正照射係数Dp’(x)は、既に演算された値を用いればよい。また、ドーズ変調量DM(x)は、記憶装置142から読み出せばよい。或いは既に読み出したものを流用すればよい。ドーズ変調量DM(x)は、位置xに依存した値で定義されてもよいし、
図2等で説明したように図形パターン毎に定義されてもよい。図形パターン毎に定義される場合には、1つの図形パターン上の位置xでは同じ値を用いればよい。
【0054】
最大照射量D
+max(x)マップ作成工程(S122)として、D
+max(x)マップ作成部32は、D
+(x)マップを用いて、メッシュ領域(メッシュ2)毎に最大照射量D
+max(x)を抽出して最大照射量D
+max(x)がメッシュ領域(メッシュ2)毎に定義されたD
+max(x)マップを作成する。最大照射量D
+max(x)は、
図6(c)に示すように、サイズの大きいメッシュ領域(メッシュ2)51に一部でも重なるサイズの小さいメッシュ領域(メッシュ1)55が複数存在する場合には、複数のメッシュ領域(メッシュ1)に定義されたD
+max(x)の中から最大値を抽出すればよい。そして、
図6(d)に示すように、最大照射量D
+max(x)がメッシュ領域(メッシュ2)51毎に定義されたD
+max(x)マップを作成する。かかるD
+max(x)マップでは、近接効果とローディング効果とが補正されたD
+max(x)が定義されることになる。
【0055】
D
++max(x)マップ作成工程(S142)として、D
++max(x)マップ作成部34は、得られたかぶり効果補正照射係数Df(x)を用いて、メッシュ領域(メッシュ2)毎に最大照射量D
++max(x)を演算し、
図6(e)に示すように、最大照射量D
++max(x)がメッシュ領域(メッシュ2)51毎に定義されたD
++max(x)マップを作成する。最大照射量D
++max(x)は、以下の式(8)を解くことで求めることができる。
【0057】
かかるD
++max(x)マップでは、近接効果とローディング効果とかぶり効果とが補正されたD
++max(x)が定義されることになる。作成されたD
++max(x)マップは、出力部40によって、記憶装置146にログとして格納される。これにより、描画前後に大まかな最大照射量を確認できる。
【0058】
以上のようにして、上述した各演算部によって、近接効果、かぶり効果、及びローディング効果に起因する寸法変動を補正すると共に、さらに外部から入力されたドーズ変調量によってドーズ変調された電子ビームの照射量を演算する。ここでは、一例として、近接効果、かぶり効果、及びローディング効果に起因する寸法変動を補正する最大照射量を演算したが、これに限るものではない。近接効果、かぶり効果、及びローディング効果のうち少なくとも1つに起因する寸法変動を補正すると共に、さらに外部から入力されたドーズ変調量によってドーズ変調された電子ビームの照射量を演算してもよい。
【0059】
判定工程(S144)として、判定部36は、照射量が許容値を超えているかどうかを判定する。具体的には、以下の式(9)を満たすかどうかにより判定する。
【0061】
ここでは、1描画パスあたりの最大照射量D
++max(x)が閾値D
th(2)を超えているかどうかを判定する。判定部36は、メッシュ領域(メッシュ2)毎に照射量が閾値D
th(2)を超えているかどうかを判定する。いずれかのメッシュ領域(メッシュ2)において超えている場合には、NGとして、出力部40は、警告を出力する。警告は、図示しないモニタ等に表示しても良いし、外部I/F回路134を介して外部に出力してもよい。これにより、ユーザに描画の有無を判断するための指標を与えることができる。警告は、メッシュ領域(メッシュ2)を特定すると好適である。これにより、かかる領域のドーズ変調量を変更することもできる。或いは、かかる警告によって描画中止にしてもよい。
【0062】
以上により、照射量について、描画装置内でドーズ量補正を行う場合でも、外部にて設定されるドーズ変調量により異常な照射量のビーム照射が行われてしまうことを回避できる。その結果、異常な照射量のビーム照射に起因する、パターン寸法CDの異常、レジストの蒸発、及び描画装置汚染(或いは描画装置故障)を回避できる。
【0063】
以上の説明では、最大照射量密度と最大照射量をそれぞれ求めて、それぞれチェックをしているが、これに限るものではない。一方についてチェックするだけでも異常な照射量のビーム照射を回避するには効果がある。
【0064】
描画工程(S150)として、描画部150は、電子ビーム200を用いて試料101にパターンを描画する。最大照射量密度と最大照射量のチェックの結果、描画処理を進める場合には、以下のように動作する。ショットデータ生成部112は、記憶装置140から描画データを読み出し、複数段のデータ変換処理を行って、装置固有のショットデータを生成する。描画装置100で図形パターンを描画するためには、1回のビームのショットで照射できるサイズに描画データに定義された各図形パターンを分割する必要がある。そこで、ショットデータ生成部112は、実際に描画するために、各図形パターンを1回のビームのショットで照射できるサイズに分割してショット図形を生成する。そして、ショット図形毎にショットデータを生成する。ショットデータには、例えば、図形種、図形サイズ、及び照射位置といった図形データが定義される。
【0065】
照射量演算部113は、所定のサイズのメッシュ領域毎の照射量D(x)を演算する。照射量D(x)は、以下の式(10)で求めることができる。
【0067】
式(10)により、近接効果、かぶり効果、及びローディング効果に起因する寸法変動を補正すると共に、さらに外部から入力されたドーズ変調量によってドーズ変調された電子ビームの照射量を演算できる。なお、近接効果補正照射係数Dp’(x)を求める際には、上述したメッシュ領域(メッシュ1)よりも小さいサイズのメッシュ領域(メッシュ3)で演算されるとよい。メッシュ領域(メッシュ3)のサイズとして、近接効果の影響半径の1/10程度が好適である。例えば、0.5〜1μm程度が好適である。また、多重描画を行う場合には、例えば、多重度で割ることで、1描画パスあたりの照射量を得ることができる。
【0068】
そして、描画制御部114は、制御回路120に描画処理を行うように制御信号を出力する。制御回路120は、ショットデータと各補正照射量のデータを入力し、描画制御部114から制御信号に従って描画部150を制御し、描画部150は、電子ビーム200を用いて、当該図形パターンを試料100に描画する。具体的には、以下のように動作する。
【0069】
電子銃201(放出部)から放出された電子ビーム200は、照明レンズ202により矩形の穴を持つ第1のアパーチャ203全体を照明する。ここで、電子ビーム200をまず矩形に成形する。そして、第1のアパーチャ203を通過した第1のアパーチャ像の電子ビーム200は、投影レンズ204により第2のアパーチャ206上に投影される。偏向器205によって、かかる第2のアパーチャ206上での第1のアパーチャ像は偏向制御され、ビーム形状と寸法を変化させる(可変成形させる)ことができる。そして、第2のアパーチャ206を通過した第2のアパーチャ像の電子ビーム200は、対物レンズ207により焦点を合わせ、主偏向器208及び副偏向器209によって偏向され、連続的に移動するXYステージ105に配置された試料101の所望する位置に照射される。
図1では、位置偏向に、主副2段の多段偏向を用いた場合を示している。かかる場合には、主偏向器208でストライプ領域をさらに仮想分割したサブフィールド(SF)の基準位置にステージ移動に追従しながら該当ショットの電子ビーム200を偏向し、副偏向器209でSF内の各照射位置にかかる該当ショットのビームを偏向すればよい。
【0070】
以上のように実施の形態1によれば、レジスト飛散を防止できる。さらに、ヒーティングによる描画精度劣化を描画前に検知できる。また、装置内(自動)描画パス分けのインプットデータとして照射量(密度)マップを使用することができる。
【0071】
実施の形態2.
実施の形態1では、近接効果補正係数ηと基準照射量D
Bを取得する際に、ローディング効果補正を考慮した値を取得したが、これに限るものではない。実施の形態2では、別の手法でローディング効果補正を行う。
【0072】
図7は、実施の形態2における描画装置の構成を示す概念図である。
図7において、取得部12、近接効果補正照射係数Dp’(x)演算部14、照射量密度ρ
+(x)マップ作成部16、及び照射量D
+(x)マップ作成部30の代わりに、前処理計算機130内に、ローディング効果補正照射係数D
L(x)演算部42、近接効果補正照射係数Dp(x)演算部15、照射量密度ρ
+(x)マップ作成部17、及び照射量D
+(x)マップ作成部31を配置した点と、記憶装置142には、ドーズ変調量(率)DMデータ、裕度DL(U)データが外部から入力され格納されている点と、以外は
図1と同様である。
【0073】
前処理計算機130内に配置される寸法変動量ΔCD(x)演算部10、ローディング効果補正照射係数D
L(x)演算部42、近接効果補正照射係数Dp(x)演算部15、照射量密度ρ
+(x)マップ作成部17、最大照射量密度ρ
+max(x)マップ作成部18、かぶり
効果補正照射係数Df(x)演算部20、最大照射量密度ρ
++max(x)マップ作成部22、判定部24、及び照射量D
+(x)マップ作成部31、最大照射量D
+max(x)マップ作成部32、最大照射量D
++max(x)マップ作成部34、判定部36、及び出力部40といった機能は、電気回路等のハードウェアで構成されてもよいし、これらの機能を実行するプログラム等のソフトウェアで構成されてもよい。或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより構成されてもよい。寸法変動量ΔCD(x)演算部10、ローディング効果補正照射係数D
L(x)演算部42、近接効果補正照射係数Dp(x)演算部15、照射量密度ρ
+(x)マップ作成部17、最大照射量密度ρ
+max(x)マップ作成部18、かぶり
効果補正照射係数Df(x)演算部20、最大照射量密度ρ
++max(x)マップ作成部22、判定部24、及び照射量D
+(x)マップ作成部31、最大照射量D
+max(x)マップ作成部32、最大照射量D
++max(x)マップ作成部34、判定部36、及び出力部40に入出力される情報および演算中の情報はメモリ132にその都度格納される。
【0074】
図8は、実施の形態2における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
図8において、取得工程(S106)と、近接効果補正照射係数Dp’(x)演算工程(S108)と、照射量密度ρ
+(x)マップ作成工程(S110)と、照射量D
+(x)マップ作成工程(S120)と、の代わりに、ローディング効果補正照射係数D
L(x)演算工程(S107)と、近接効果補正照射係数Dp(x)演算工程(S109)と、照射量密度ρ
+(x)マップ作成工程(S111)と、照射量D
+(x)マップ作成工程(S121)とが実行される点以外は、
図4と同様である。また、以下、特に説明する点以外の内容は、実施の形態1と同様である。
【0075】
D
L(x)演算工程(S107)として、D
L(x)演算部42は、記憶装置142から裕度DL(U)データを読み出し、寸法変動量ΔCD(x)を用いて、ローディング効果補正照射係数D
L(x)を演算する。
【0076】
まず、裕度DL(U)データは、例えば、複数の裕度DL(U)がパラメータとして用いられる。まず、近接効果密度U毎に、パターン寸法CDと照射量Dとの相関データを実験により取得する。ここで、近接効果密度U(x)は、近接効果用のメッシュ領域(メッシュ1)内のパターン面積密度ρ(x)に分布関数g(x)を近接効果の影響範囲以上の範囲で畳み込み積分した値で定義される。分布関数g(x)は、例えばガウシアン関数を用いるとよい。ここでは、例えば、近接効果密度U(x)=0(0%),0.5(50%),1(100%)の各場合について電子ビームで描画されるパターンの寸法CDと電子ビームの照射量D(U)を実験により求めておく。そして、かかるパターン寸法CDと照射量D(U)との関係を裕度DL(U)が示している。裕度DL(U)は、近接効果密度U(x,y)に依存し、例えば、近接効果密度U(x,y)毎のCD−D(U)のグラフの傾き(比例係数)で定義される。
【0077】
記憶装置142には、ユーザ側(装置外部)から複数の裕度DL(U)が入力され、格納される。ここでは、近接効果密度U(x,y)=0(0%),0.5(50%),1(100%)の各場合の裕度DL(Ui)が入力される。ここでは、3点の近接効果密度U(x)に対する裕度DL(Ui)が入力されるが、3点以上であれば、4点でも、さらに多くてもよい。かかる複数の裕度DL(Ui)を多項式でフィッティングすることで、裕度DL(U)を得ればよい。記憶装置142に、予め多項式でフィッティングされた裕度DL(U)を格納しておいてもよい。
【0078】
次に、ローディング効果補正照射係数D
L(x)は、かかる裕度DL(U)と寸法変動量ΔCD(x)を用いて、以下の式(11)で定義される。
【0080】
Dp(x)演算工程(S109)として、Dp(x)演算部15は、近接効果に起因した寸法変動量ΔCD(x)を補正するのに適した近接効果補正係数(後方散乱係数)ηを用いて、近接効果を補正するための近接効果補正照射係数Dp(x)を演算する。なお、ηは、ローディング効果補正を考慮していない係数である。近接効果補正照射係数Dp(x)は、以下の式(12)を解くことで求めることができる。
【0082】
よって、得られた近接効果補正照射係数Dp(x)は、ローディング効果補正を考慮していない係数である。ここでは、描画対象となるチップのチップ領域をメッシュ状の複数のメッシュ領域(メッシュ1:第1のメッシュ領域)に仮想分割して、メッシュ領域(メッシュ1)毎に演算される。メッシュ領域(メッシュ1)のサイズ(第1のサイズ)は、例えば、近接効果の影響半径の1/10よりも数倍程度大きい値が好適である。例えば、5〜10μm程度が好適である。これにより、近接効果の影響半径の1/10程度のメッシュサイズのメッシュ領域毎に行われる詳細な近接効果補正演算に比べて演算回数を低減できる。ひいては高速演算が可能となる。
【0083】
ρ
+(x)マップ作成工程(S111)として、ρ
+(x)マップ作成部17は、照射量密度ρ
+(x)をメッシュ領域(メッシュ1)毎に演算し、照射量密度ρ
+(x)がメッシュ領域(メッシュ1)毎に定義されたρ
+(x)マップを作成する。照射量密度ρ
+(x)は、以下の式(13)を解くことで求めることができる。かかるρ
+(x)マップでは、近接効果とローディング効果とが補正された照射量密度ρ
+(x)が定義されることになる。
【0085】
ここで、基準照射量D
Bは、近接効果に起因した寸法変動量ΔCD(x)を補正するのに適した近接効果補正係数(後方散乱係数)ηと組みとなるD
Bを用いる。また、基準照射量D
Bは、ローディング効果補正を考慮していない。
【0086】
以下、照射量密度のチェックについては、実施の形態1と同様である。以上のように、裕度DL(U)と寸法変動量ΔCD(x)を用いて、ローディング効果補正を行ってもよい。かかるチェックによっても実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0087】
次に、照射量のチェックについて説明する。
【0088】
照射量D
+(x)マップ作成工程(S121)として、照射量D
+(x)マップ作成部31は、照射量D
+(x)をメッシュ領域(メッシュ1)毎に演算し、照射量D
+(x)がメッシュ領域(メッシュ1)毎に定義されたD
+(x)マップを作成する。照射量D
+(x)は、以下の式(14)を解くことで求めることができる。かかるD
+(x)マップでは、近接効果とローディング効果とが補正された照射量D
+(x)が定義されることになる。
【0090】
ここで、基準照射量D
Bは上述したようにローディング効果補正は考慮されていないD
Bが用いられる。近接効果補正照射係数Dp(x)は、既に演算された値を用いればよい。また、ドーズ変調量DM(x)は、記憶装置142から読み出せばよい。或いは既に読み出したものを流用すればよい。
【0091】
以下、照射量のチェックについては、実施の形態1と同様である。以上のように、裕度DL(U)と寸法変動量ΔCD(x)を用いて、ローディング効果補正を行ってもよい。かかるチェックによっても実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0092】
なお、判定工程(S134)では、判定部24は、以下の式(15)を満たすかどうかにより判定する。
【0094】
また、判定工程(S144)では、判定部36は、以下の式(16)を満たすかどうかにより判定する。
【0096】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0097】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0098】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての荷電粒子ビーム描画装置、方法、及び荷電粒子ビームの照射量チェック方法は、本発明の範囲に包含される。