特許第6076724号(P6076724)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076724
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】銅合金材料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 9/00 20060101AFI20170130BHJP
   C22C 9/02 20060101ALI20170130BHJP
   C22C 9/04 20060101ALI20170130BHJP
   C22C 9/10 20060101ALI20170130BHJP
   C22F 1/08 20060101ALI20170130BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20170130BHJP
【FI】
   C22C9/00
   C22C9/02
   C22C9/04
   C22C9/10
   C22F1/08 B
   !C22F1/00 606
   !C22F1/00 622
   !C22F1/00 623
   !C22F1/00 624
   !C22F1/00 625
   !C22F1/00 630A
   !C22F1/00 630K
   !C22F1/00 650A
   !C22F1/00 661A
   !C22F1/00 682
   !C22F1/00 683
   !C22F1/00 685Z
   !C22F1/00 691B
   !C22F1/00 691C
   !C22F1/00 694A
   !C22F1/00 694B
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-267608(P2012-267608)
(22)【出願日】2012年12月6日
(65)【公開番号】特開2014-114464(P2014-114464A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100131288
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 尚祐
(72)【発明者】
【氏名】松尾 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】藤井 恵人
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 清慈
【審査官】 相澤 啓祐
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/026611(WO,A1)
【文献】 特開2007−177274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 9/00−9/10
C22F 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mgを0.01〜0.5mass%含有し、残部が銅と不可避不純物からなり、
電子後方散乱回折測定における結晶方位解析において、材料表面のW方位{001}<100>およびRDW方位{210}<100>の面積率の和が3%以上であり、結晶粒界における対応粒界Σ3とΣ9の粒界長の和の割合が全粒界の5〜20%であって、かつ粒界傾角1°以上15°以下の亜粒界と、15°を超え180°以下の大傾角粒界の粒界長の和が100μm/μm以下であることを特徴とする銅合金材料。
【請求項2】
Mgを0.01〜0.5mass%含有し、更にZnを0.20mass%以下、Snを0.10mass%以下、Agを0.05mass%以下、Pを0.03mass%以下、Crを0.40mass%以下、Siを0.03mass%以下、Zrを0.10mass%以下およびTiを0.10mass%以下からなる群から選ばれる少なくとも一種を合計で0.01〜0.5mass%含有し、残部が銅と不可避不純物からなり、
電子後方散乱回折測定における結晶方位解析において、材料表面のW方位{001}<100>およびRDW方位{210}<100>の面積率の和が3%以上であり、結晶粒界における対応粒界Σ3とΣ9の粒界長の和の割合が全粒界の5〜20%であって、かつ粒界傾角1°以上15°以下の亜粒界と、15°を超え180°以下の大傾角粒界の粒界長の和が100μm/μm以下であることを特徴とする銅合金材料。
【請求項3】
Mgを0.01〜0.5mass%含有し、残部が銅と不可避不純物からなる銅合金材料の製造方法であって、
上記の合金組成の銅合金を鋳造し、次いで下記の工程で処理して、
電子後方散乱回折測定における結晶方位解析において、材料表面のW方位{001}<100>およびRDW方位{210}<100>の面積率の和が3%以上であり、結晶粒界における対応粒界Σ3とΣ9の粒界長の和の割合が全粒界の5〜20%であって、かつ粒界傾角1°以上15°以下の亜粒界と、15°を超え180°以下の大傾角粒界の粒界長の和を100μm/μm以下とすることを特徴とする銅合金材料の製造方法。
(1)処理温度が、800〜1020℃の範囲である均質化熱処理
(2)処理温度が650〜1020℃の範囲である熱間加工であって、該熱間加工終了時の温度が800℃未満である熱間加工
(3)冷間圧延の総圧下率は、70〜99%
(4)処理温度が、400〜550℃の範囲である熱処理
(5)圧下率が、5〜50%の範囲である冷間加工
上記(4)および(5)は繰り返してもよい。
【請求項4】
Mgを0.01〜0.5mass%含有し、更にZnを0.20mass%以下、Snを0.10mass%以下、Agを0.05mass%以下、Pを0.03mass%以下、Crを0.40mass%以下、Siを0.03mass%以下、Zrを0.10mass%以下およびTiを0.10mass%以下からなる群から選ばれる少なくとも一種を合計で0.01〜0.5mass%含有し、残部が銅と不可避不純物からなる銅合金材料の製造方法であって、
上記の合金組成の銅合金を鋳造し、次いで下記の工程で処理して、
電子後方散乱回折測定における結晶方位解析において、材料表面のW方位{001}<100>およびRDW方位{210}<100>の面積率の和が3%以上であり、結晶粒界における対応粒界Σ3とΣ9の粒界長の和の割合が全粒界の5〜20%であって、かつ粒界傾角1°以上15°以下の亜粒界と、15°を超え180°以下の大傾角粒界の粒界長の和を100μm/μm以下とすることを特徴とする銅合金材料の製造方法。
(1)処理温度が、800〜1020℃の範囲である均質化熱処理
(2)処理温度が650〜1020℃の範囲である熱間加工であって、該熱間加工終了時の温度が800℃未満である熱間加工
(3)冷間圧延の総圧下率は、70〜99%
(4)処理温度が、400〜550℃の範囲である熱処理
(5)圧下率が、5〜50%の範囲である冷間加工
上記(4)および(5)は繰り返してもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は銅合金材料およびその製造方法に関し、詳しくはEV(Electric V
ehicle)、PHEV(Plug−in Hybrid Electic Vehicle)を中心とした車載部品および周辺インフラや太陽光発電システム、サーバー電源用コネクタなどのリードフレーム、リレー、スイッチ、ソケットなどに適用される銅合金材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
EV、PHEVを中心とした車載部品および周辺インフラや太陽光発電システム、サーバー電源用コネクタなどのリードフレーム、コネクタ、端子材、リレー、スイッチ、ソケットなどの用途に使用される銅合金材料に要求される特性項目としては、例えば、導電率、耐力(降伏応力)、引張強度、曲げ加工性、耐応力緩和特性などがある。近年、適用される対象のシステムが高電圧化し、また使用環境の高温化しており、これらの要求特性のレベルが高まっている。
【0003】
この要求レベルの変化に伴い、銅合金材料には種々の問題が生じている。
例えば、特に高温環境下において端子材などのばね弾性部に接圧がかかっている場合、その応力が経時劣化することがばね弾性による接触信頼性を損なう問題がある。また、上記に挙げた用途では、銅合金材の使用環境温度が年々上がっている。更に周囲環境のみでなく、自発熱も高温化を招いている。これらは電流ロスの要因となり得ることから問題とされている。
【0004】
Cuは純銅のままでは、ばね弾性強度が必要特性を満たすレベルには達しない。そのため、合金化する(例えばMgやSnを添加して固溶強化したり、CrやZrを添加して析出強化したりする)ことで弾性を向上させ、ばね材として利用することが行われてきた。また、大電流用途としては導電率が高く、かつ高温環境下にさらされる場合は各要求性能について耐熱性に優れていることが必要であることから、これらの要求を満たすべく開発が進められてきた。
Cu−Mg系銅基合金で各種金属成分を含ませる検討は古くから行われている(例えば特許文献1〜3参照)。
一方、曲げ加工性を改良するために、結晶粒界における対応粒界Σ3の割合を10%以上とすること(特許文献4参照)や、Cu−Fe−P−Mg系銅合金において、小傾角粒界と、大傾角粒界の割合を規定することこと(特許文献5参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3353324号公報
【特許文献2】特許第4756197号公報
【特許文献3】特開2011−241412号公報
【特許文献4】特許第4087307号公報
【特許文献5】特許第3838521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1〜3で使用されているCu−Mg系銅合金は、工程条件から組織制御(集合組織制御や粒界状態制御)による母材自身の特性改善には至っていない。また、特許文献4や5では、曲げ加工性の改善の提案がなされているが十分でない。また、今後ますます高温環境にさらされる大電流用コネクタ用の素材には、従来の高導電性銅合金条製品にはない高い耐応力緩和特性を具備する銅合金材料が必要とされるようになっている。
【0007】
上記のような問題点に鑑み、本発明は、強度、導電性に優れ、とりわけ耐応力緩和特性が優れた銅合金材料およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、種々の検討を重ね、電気・電子部品用途に適した銅合金について研究を行った。そして、銅合金材が有する組織において、圧延板の表面方向(ND)にW方位{001}<100>およびRDW方位{210}<100>の面積率の和が3%以上集積していること、結晶粒界における対応粒界Σ3とΣ9の粒界長の和の割合全粒界の5〜20%存在すること、更に粒界傾角1°以上15°以下の亜粒界と15°を超え180°以下の大傾角粒界の粒界長の和を100μm/μm以下とすることで、耐応力緩和特性を改善し得ることを見出した。この銅合金の金属組織は、整合性の高く欠陥が少ない対応粒界Σ3とΣ9の粒界長の和の割合が全粒界の中である割合以上を占めること、また亜粒界を含めた全粒界長を短い範囲で制御することにより、いずれも転位(線欠陥)の少ない組織状態を作り上げ、耐応力緩和特性を改善するに至っていると考えられる。また、集合組織W方位およびRDW方位に関しては、全粒界、特に亜粒界生成の抑制に対して有効に寄与する方位であり、それ自身も曲げ加工性に対して有効であるために、この方位が集積していることが、本発明の主眼である耐応力緩和特性の改善と同時に、曲げ加工性の改善をもたらすことができる。
すなわち、上記課題は以下の手段により達成された。
【0009】
〔1〕Mgを0.01〜0.5mass%含有し、残部が銅と不可避不純物からなり、
電子後方散乱回折測定における結晶方位解析において、材料表面のW方位{001}<100>およびRDW方位{210}<100>の面積率の和が3%以上であり、結晶粒界における対応粒界Σ3とΣ9の粒界長の和の割合が全粒界の5〜20%であって、かつ粒界傾角1°以上15°以下の亜粒界と、15°を超え180°以下の大傾角粒界の粒界長の和が100μm/μm以下であることを特徴とする銅合金材料。
〔2〕Mgを0.01〜0.5mass%含有し、更にZnを0.20mass%以下、Snを0.10mass%以下、Agを0.05mass%以下、Pを0.03mass%以下、Crを0.40mass%以下、Siを0.03mass%以下、Zrを0.10mass%以下およびTiを0.10mass%以下からなる群から選ばれる少なくとも一種を合計で0.01〜0.5mass%含有し、残部が銅と不可避不純物からなり、
電子後方散乱回折測定における結晶方位解析において、材料表面のW方位{001}<100>およびRDW方位{210}<100>の面積率の和が3%以上であり、結晶粒界における対応粒界Σ3とΣ9の粒界長の和の割合が全粒界の5〜20%であって、かつ粒界傾角1°以上15°以下の亜粒界と、15°を超え180°以下の大傾角粒界の粒界長の和が100μm/μm以下であることを特徴とする銅合金材料。
〔3〕Mgを0.01〜0.5mass%含有し、残部が銅と不可避不純物からなる銅合金材料の製造方法であって、
上記の合金組成の銅合金を鋳造し、次いで下記の工程で処理して、
電子後方散乱回折測定における結晶方位解析において、材料表面のW方位{001}<100>およびRDW方位{210}<100>の面積率の和が3%以上であり、結晶粒界における対応粒界Σ3とΣ9の粒界長の和の割合が全粒界の5〜20%であって、かつ粒界傾角1°以上15°以下の亜粒界と、15°を超え180°以下の大傾角粒界の粒界長の和を100μm/μm以下とすることを特徴とする銅合金材料の製造方法。
(1)処理温度が、800〜1020℃の範囲である均質化熱処理
(2)処理温度が650〜1020℃の範囲である熱間加工であって、該熱間加工終了時の温度が800℃未満である熱間加工
(3)冷間圧延の総圧下率は、70〜99%
(4)処理温度が、400〜550℃の範囲である熱処理
(5)圧下率が、5〜50%の範囲である冷間加工
上記(4)および(5)は繰り返してもよい。
〔4〕Mgを0.01〜0.5mass%含有し、更にZnを0.20mass%以下、Snを0.10mass%以下、Agを0.05mass%以下、Pを0.03mass%以下、Crを0.40mass%以下、Siを0.03mass%以下、Zrを0.10mass%以下およびTiを0.10mass%以下からなる群から選ばれる少なくとも一種を合計で0.01〜0.5mass%含有し、残部が銅と不可避不純物からなる銅合金材料の製造方法であって、
上記の合金組成の銅合金を鋳造し、次いで下記の工程で処理して、
電子後方散乱回折測定における結晶方位解析において、材料表面のW方位{001}<100>およびRDW方位{210}<100>の面積率の和が3%以上であり、結晶粒界における対応粒界Σ3とΣ9の粒界長の和の割合が全粒界の5〜20%であって、かつ粒界傾角1°以上15°以下の亜粒界と、15°を超え180°以下の大傾角粒界の粒界長の和を100μm/μm以下とすることを特徴とする銅合金材料の製造方法。
(1)処理温度が、800〜1020℃の範囲である均質化熱処理
(2)処理温度が650〜1020℃の範囲である熱間加工であって、該熱間加工終了時の温度が800℃未満である熱間加工
(3)冷間圧延の総圧下率は、70〜99%
(4)処理温度が、400〜550℃の範囲である熱処理
(5)圧下率が、5〜50%の範囲である冷間加工
上記(4)および(5)は繰り返してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のCu−Mg系の銅合金材料は、耐応力緩和特性、曲げ加工性に優れ、優れた導電性を有し、EV、PHEVを中心とした車載部品および周辺インフラや太陽光発電システムなどのコネクタ、サーバー電源用端子、リードフレーム等の接点部材およびリードフレーム材に好適である。さらに、本発明の製造方法により、上記の各特性の優れた銅合金材料が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の銅合金材料の好ましい実施の形態について、詳細に説明する。
ここで、「銅合金材料」とは、特定の合金組成に調製した銅合金素材を上記の処理工程で処理、加工して所望の形状(例えば、板、条、箔、棒、線など)に加工されたものを意味する。実施形態として板材、条材を例に以下に説明する。
なお、本発明の銅合金材料は、その特性を圧延板の所定の方向における集合組織の集積率、結晶粒界における特定の対応粒界、特定の化合物の存在割合で規定するものであるが、これは銅合金材料としてそのような特性を有していればよいのであって、銅合金材料の形状は板材や条材に限定されるものではない。
【0012】
本発明では、銅合金材料として、コネクタ用材料、特に、EV、PHEVを中心とした車載部品および周辺インフラや太陽光発電システム、サーバー電源用システムなどのコネクタに要求される導電性、機械的強度、曲げ加工性および耐応力緩和特性を具備するものとして、好ましいCu−Mg系銅合金を使用する。
銅合金の各成分について説明する。
【0013】
<合金成分Mg、Zn、Sn、Ag、P、Cr、Si、Zr、Ti>
本発明では銅合金中にMgを0.01〜0.5mass%含有し、残部が銅と不可避不純物からなるか、または上記の範囲の量のMgを含有し、Zn、Sn、Ag、P、Cr、Si、ZrおよびTiからなる群から選ばれる少なくとも一種を合計で0.01〜0.5mass%、好ましくは0.05〜0.3mass%含有し、残部が銅と不可避不純物からなる。
なお、これらの成分を含有するとは、不可避不純物を含んだ銅にこれらの成分を所定量添加し調整してなる含有量である。
ここで、残部に含まれる不可避的不純物は通常のものであり、例えばO、F、S、Cが挙げられる。不可避的不純物は0.001mass%以下であることが好ましい。
【0014】
上記の必須元素の作用を以下に説明する。
Mgは固溶し耐応力緩和特性を改善するが、含有量が過剰では化合物が溶解、鋳造、熱間圧延に対し悪影響を与え、製造性を著しく悪化させる。また固溶により導電性低下を起こす。
Znについては、添加範囲内ではめっき、半田の耐剥離特性が向上し、わずかであるが強度に寄与する。含有量が多すぎると固溶により導電性低下を起こすほかに、曲げ加工性が不十分になる。
Snについては、固溶強化、更に圧延時に加工硬化を促進する。また、Mgと同時に含有(好ましくは添加)することで、おのおのを単独で含有(好ましくは添加)するよりも更に耐応力緩和特性を良好化させることができる。
【0015】
Agについては、単独でも耐応力緩和特性を改善する効果があるが、一定量を越えて含有量を増大すると効果が飽和し、特にコストへの影響が大きいため好ましくない。
Pについては、溶解鋳造時の湯流れを良好にし、また単独、もしくは化合物の状態で耐応力緩和特性を良好化させることができる。含有量が増大すると、固溶により導電性低下を起こすほかに、粗大な化合物が起点となる曲げ加工時の割れの原因になる。
Crについては、単独でも耐応力緩和特性を改善する効果があり、また析出強化に利用することも出来る。含有量が増大すると効果が飽和し、特に粗大化合物が存在するようになり、プロセス中の割れなどを引起す。
【0016】
Siについては固溶状態で耐応力緩和特性を改善する効果があり、化合物として存在する場合はプレス時の破壊起点となることで、耐金型磨耗性を改善する効果がある。含有量が増大すると特に固溶で導電率が大きく減少する。
Tiについては、単独でも耐応力緩和特性を改善する効果があり、また析出強化に利用することも出来る。含有量が増大すると効果が飽和し、特に粗大化合物が存在するようになり、プロセス中の割れなどを引起す。また、固溶により大きく導電性低下を起こす。
Zrについては、単独でも耐応力緩和特性を改善する効果があり、また析出強化に利用することも出来る。含有量が増大すると効果が飽和し、特に粗大化合物が存在するようになり、プロセス中の割れなどを引起す。
【0017】
それぞれの元素は上記効果をもたらす添加範囲下限があり、それを下回ると添加の効果は得られない。元素それぞれの含有量の好ましい範囲は次の通りである。
Mgの含有量は、好ましくは0.01mass%〜0.5mass%、さらに好ましくは0.05mass%〜0.3mass%である。
Znの含有量は、好ましくは0.05mass%〜0.3mass%、さらに好ましくは0.1mass%〜0.2mass%である。
Snの含有量は、好ましくは0.05mass%〜0.3mass%、さらに好ましくは0.1mass%〜0.2mass%である。
【0018】
Agの含有量は、好ましくは0.05mass%〜0.2mass%、さらに好ましくは0.05mass%〜0.1mass%である。
Siの含有量は、好ましくは0.01mass%〜0.1mass%、さらに好ましくは0.02mass%〜0.05mass%である。
Crの含有量は、好ましくは0.05mass%〜0.2mass%、さらに好ましくは0.1mass%〜0.15mass%である。
【0019】
Pの含有量は、好ましくは0.005mass%〜0.1mass%、さらに好ましくは0.005mass%〜0.05mass%である。
Tiの含有量は、好ましくは0.01mass%〜0.2mass%、さらに好ましくは0.02mass%〜0.1mass%である。
Zrの含有量は、好ましくは0.01mass%〜0.2mass%、さらに好ましくは0.01mass%〜0.1mass%である。
各元素の含有量がこれより少なすぎると含有効果は得られない。
【0020】
<結晶方位解析>
本発明における上記結晶方位ならびに粒界の解析には、EBSD法を用いた。EBSDとは、Electron BackScatter Diffraction(電子後方散乱回折)の略で、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)内で試料に電子線を照射したときに生じる反射電子菊池線回折(菊池パターン)を利用した結晶方位解析技術のことである。
本発明では、結晶粒を200個以上含む、500μm四方の試料面積に対し、0.5μmのステップでスキャンし、EDAX TSL社製のソフト「Orientation Imaging Microscopy v5」(商品名)を用い結晶方位および結晶粒界を解析する。
【0021】
なお、EBSD測定にあたっては、鮮明な菊池線回折像を得るために、機械研磨の後に、コロイダルシリカの砥粒を使用して、基体表面を鏡面研磨した後に、測定を行うことが好ましい。また、測定は基体表面から行った。なお、板材の場合は、圧延面表面から行う。
【0022】
本発明では、電子後方散乱回折測定における結晶方位解析において、板表面のW方位{001}<100>およびRDW方位{210}<100>の面積率の和が3%以上であり、結晶粒界における対応粒界Σ3とΣ9の粒界長の和の割合が全粒界の5〜20%であって、かつ粒界傾角1°以上15°以下の亜粒界と、15°を超え180°以下の大傾角粒界の粒界長の和が100μm/μm以下である。
【0023】
このように、W方位とRDW方位の面積の和を3%以上、対応粒界Σ3とΣ9の粒界長の和を全粒界長で割り、100を掛けたΣ3とΣ9粒界長の和の割合(%)を5〜20%、亜粒界長と粒界長の和を100μm/μm以下として、組織制御することにより、耐応力緩和特性が改善できる。
【0024】
板表面のW方位{001}<100>およびRDW方位{210}<100>の面積率の和は、好ましくは3〜60%であり、より好ましくは3〜40%である。
また、結晶粒界における対応粒界Σ3とΣ9の粒界長の和の割合は、全粒界の6〜18%が好ましく、10〜15%がより好ましい。
粒界傾角1°以上15°以下の亜粒界と、15°を超え180°以下の大傾角粒界の粒界長の和は10〜100μm/μmが好ましく、30〜80μm/μmがより好ましい。
【0025】
なお、銅合金板材中の結晶は、加工条件や熱処理によって、W方位{001}<100>(Cube方位とも称す)や、RDW方位{210}<100>(RD−Rotated−Cube方位)、Goss方位{011}<100>、Rotated−Goss方位{011}<011>、Brass方位{011}<211>、Copper方位{112}<111>、S方位{123}<634>等と呼ばれる結晶方位を形成し、集合組織を形成する。
【0026】
ただし、集合組織は、同じ結晶系の場合でも加工条件や熱処理方法によって異なる。圧延による合金板材の集合組織の場合は、面と方向で表されており、面は{ABC}で表現され、方向は<DEF>で表現される。本明細書における結晶方位の表示方法は、材料の圧延方向(RD)をX軸、板幅方向(TD)をY軸、圧延面法線方向を(ND)をZ軸の直角座標系をとり、材料中の各領域がZ軸に垂直な(圧延面に平行な)結晶面の指数(hkl)とX軸に平行な(圧延面に垂直な)結晶方向の指数[uvw]とを用いて(hkl)[uvw]の形で示す。また、(1 3 2)[6−4 3]と(2 3 1)[3−4 6]などのように、銅合金の立方晶の対称性のもとで等価な方位については、ファミリーを表すカッコ記号を使用し、{hkl}<uvw>と示す。
【0027】
結晶粒界は、ある結晶と別の結晶との間に残された不連続な境界面である。これに対し、対応粒界とは幾何学的に整合性の高い特殊な粒界である。この粒界は一般に構造的にも安定で、力学的・化学的にも通常の粒界とは異なる特性を有する。対応粒界は、例えば、2つの結晶の一つを回転軸nの周囲にqだけ回転させた場合の2つの結晶の重なりを考える。この際、回転軸と回転角度によって原点以外にも周期的に重なる格子点が形成される。これが対応格子点であり、元の結晶格子の単位胞体積とここで形成される対応格子の単位胞体積の比がΣ(シグマ)値である。なお、双晶はΣ3となる。
【0028】
結晶粒界は、粒界での方位角の差から、小傾角粒界(境界)と大傾角粒界(境界)に分けられ、小傾角粒界は亜粒界とも呼ばれ、例えば刃状転位が隣接する粒にそって群列を形成したものである。
粒界傾角は、粒界で接する2つの結晶軸のなす角度である。
【0029】
<銅合金材料の製造方法>
次に、本発明の銅合金材料の製造方法について説明する。
以下に示す製造方法により、本発明で規定する結晶方位および粒界特性を制御することができる。
一般に銅合金は、均質化熱処理した鋳塊を熱間と冷間の各工程で薄板化し、再結晶熱処理を施した後、仕上げの冷間圧延と歪取焼鈍によって所望の強度、導電性、伸び、ばね性などの特性に応じて調整される。銅合金の集合組織については、この一連のプロセスにおける、最終再結晶化熱処理中に起きる再結晶によってそのおおよそが決定し、仕上げ圧延中に起きる方位の回転により、最終的に決定される。
また対応粒界などもほぼ大方が再結晶処理中に決定される。
亜粒界と粒界の絶対量とその割合については、その後の最終仕上圧延後に決定される。
【0030】
本発明の銅合金材料の製造方法としては鋳造、均質化熱処理、熱間加工(圧延など)、冷間加工(圧延など)、中間熱処理、冷間加工(圧延など)、再結晶熱処理を行う。
具体的に好ましい例について説明すると、以下の条件の工程を行って製造することができる。
(1)均質化熱処理
処理温度は、800〜1020℃である。処理時間は、0.5〜10時間である
2)熱間加工
圧延の場合、熱間圧延温度は、650〜1020℃である。ただし、必ず800℃未満で終了する。
熱間圧延温度は、650〜900℃が好ましい。
これによって、減面率を、50〜95%とすることが好ましく、80〜90%とすることがより好ましい。
(3)冷間圧延
圧延温度は、0〜50℃で通常行われる。
また、冷間圧延を数回に分けて行う場合、冷間圧延の総圧下率は、70〜99%であり、75〜98%が好ましい。
(4)熱処理
処理温度は、400〜600℃であり、処理時間は、0.5〜5時間である。
処理温度は、425〜550℃が好ましく、処理時間は、1〜3時間が好ましい。
(5)冷間加工
処理温度は、0〜50℃であり、10〜30℃が好ましい
また、圧下率は、5〜50%であり、15〜40%が好ましい。
【0031】
必要により、上記(4)の熱処理と(5)冷間加工の工程を繰り返す。
このうち、上記(4)の最後の熱処理が再結晶熱処理で、これ以外が、中間熱処理であり、また最後の(5)の冷間加工(好ましくは圧延)が冷間仕上加工(好ましくは圧延)である。
【0032】
なお、最後に通常、下記工程を行う。
(6)歪取焼鈍
処理温度は、450〜650℃、処理時間は、10〜300秒もしくは200〜400℃、処理時間は、0.5〜2時間である。
処理温度は、500〜600℃、処理時間は、30〜60秒もしくは250〜350℃、処理時間は、0.5〜1時間が好ましい。
【0033】
ここで、再結晶熱処理を終え、W方位およびRDW方位の面積率の和と、Σ3およびΣ9の各対応粒界の和の全粒界に対する割合はほぼ最終的な組織となっているため、後の工程ではこの組織が狙いの制御範囲にあれば、高強度化を含めた圧延薄板化、歪取焼鈍によるばね性、伸びの回復などについて自由な圧延と熱処理の組合せを行ってよい。一方、単位面積あたりの亜粒界長と粒界長の和は最終の仕上圧延にて決定されるため、過度の圧下率をとる仕上圧延を施すことはできない。具体的には再結晶成長が促進する600℃を超える温度処理や、90%の圧下率を超える冷間圧延は、各結晶方位の面積率や、粒界の状態を変化させるため好ましくない。
【0034】
本発明の銅合金材料はEV、PHEVを中心とした車載部品および周辺インフラや太陽光発電システムなどのリードフレーム、コネクタ、端子材等に要求される特性を満足することができる。
特に導電率については75%IACS以上、好ましくは80%IACS以上である。引張強さについては、250MPa以上である。応力緩和率は150℃、1000時間の試験にて30%以下を満たすことができ、これによって、従来の合金のバランスを上回る特性とすることができる。
【実施例】
【0035】
以下に、実施例に基づき、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
Mgを含有したもの、または更に添加成分としてZn、Sn、Ag、P、Cr、Si、Zr、Tiから選ばれる少なくとも1種を含有したもので、残部がCuと不可避不純物から成る合金を高周波溶解炉により溶解し、これを鋳造して鋳塊を得た。
下記表1および2に、これらの鋳塊の成分を鋳塊No.の標記で示す。
表1に示す鋳塊No.1〜14は本発明の合金成分であり、表2に示す鋳塊No.15〜24は、合金成分が本発明の範囲を満たさない比較のものである。
ここで、成分の記載された数値の単位はmass%である。空欄は添加なしを示し、残部はCuと不可避不純物である。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
上記のようにして鋳造して鋳塊を得た後、均質化熱処理、熱間圧延、水冷を施し、更に冷間圧延と熱処理を2回施し、最後に歪取焼鈍を行い、この状態を提供材とし、銅合金材料の供試材を製造した。
【0039】
本発明の銅合金材料の供試材を製造する工程条件を代表して、鋳造を終えた後、以下の製造工程(本発明および比較の銅合金材料の製造工程)を経たものとした。比較の銅合金材料の製造工程条件の各工程における範囲は、個々の比較の銅合金材料を製造した範囲を全体として上限および下限としてまとめたものであり、この範囲のみからすると本発明の銅合金材料の供試材の製造工程条件を含む範囲になるが、あくまでも表4および6に示した個々の製造の工程条件に基づいて、本発明の銅合金材料の供試材の製造工程の下記範囲のうち、少なくとも一工程が本発明における製造工程の処理時間以外の条件において、範囲外の条件を選定(具体的な工程条件は表4および6を参照)しており、本発明の銅合金材料の供試材を得ることができない。
【0040】
(本発明の銅合金材料の供試材の製造工程)
均質化熱処理(800〜1020℃、30分間)→熱間圧延650〜1020℃(但し必ず800℃未満で終了する)、減面率90%)→冷間圧延(圧下率70〜99%)→熱処理(400〜550℃、120分間)→冷間仕上圧延(圧下率5〜50%)→歪取焼鈍(300℃、30分間)
【0041】
(比較の銅合金材料の供試材の製造工程)
均質化熱処理(650〜1020℃、30分間)→熱間圧延(300〜1020℃、減面率90%)→冷間圧延(20〜99%)→熱処理(300〜650℃、120分間)→冷間仕上圧延(0〜90%)→歪取焼鈍(300℃、30分間)
【0042】
なお、各表に示す銅合金材料の供試材の均質化熱処理は表には示していないが、いずれも1000℃、30分の条件で行った。
【0043】
また、これとは別に、特許第4087307号公報に記載の実施例に相当する工程を模擬し、本発明例との差異を明確にした。製造工程として鋳造し、そのインゴットを均質化処理した(該特許第4087307号公報には900℃以上、300分以上とあるので、ここでは950℃、500分間とした)。更に熱間加工、溶体化処理し、最終冷間圧延を行い厚さ0.15mmとし時効処理を施した。冷間圧延の条件は内容にならい、各パスの加工度を20%、全加工度を98%とした。該特許第4087307号公報に条件明示のない熱間加工工程については、首尾よく熱間圧延し、その後水冷した。また、溶体化処理工程については、800℃、1時間で行った。時効処理に相当する熱処理については400℃で約30分行った。
この製造方法で得られた合金材料の下記特性調査および下記評価結果を後述の表7に示す。
【0044】
特許第3838521号公報に記載の実施例に相当する工程を模擬し、本発明例との差異を明確にした。製造工程としてサンプル厚さ70mmに鋳造し、950℃で2時間加熱後、20mmまで熱間圧延し、800℃にて終了し水冷した。更に酸化スケールを除去し、約2mmまで90%の冷間圧延し、600℃にて再結晶焼鈍を施し、その昇温速度を100℃/s、冷却速度を150℃/sとした。その後、400℃10時間の二次焼鈍を行い、圧延率30%の冷間圧延を施し、300℃で約30分の低温焼鈍を施した。
この製造方法で得られた合金材料の供試材の下記特性調査および下記評価結果を後述の表8に示す。
【0045】
なお、各熱処理や圧延の後に、材料表面の酸化や粗度の状態に応じて酸洗浄や表面研磨を、形状に応じてテンションレベラーによる矯正を行った。
【0046】
〔特性調査〕
上記各供試材を下記に示す特性調査を行った。
【0047】
(a.W方位およびRDW方位の面積率の和)
EBSD法により、約500μm四方の測定領域で、スキャンステップが0.5μmの条件で測定を行った。そのデータを用いEDAX TSL社製のソフト「Orientation Imaging Microscopy v5」(商品名)の方位解析により、W方位から±10°以内のずれ角度を有する結晶粒の原子面の面積およびRDW方位から±10°以内のずれ角度を有する結晶粒の原子面の面積を求めて、該面積を全測定面積で割り、これに100をかけた数値を「W方位+RDW方位(%)」として表中に示す。
【0048】
(b.対応粒界Σ3およびΣ9の和の全粒界に対する割合)
EBSD法により、約500μm四方の測定領域で、スキャンステップが0.5μmの条件で測定を行った。そのデータを用いEDAXTSL社製のソフト「Orientation Imaging Microscopy v5」(商品名)のBoundary CSL解析にて対応粒界Σ3とΣ9の和を測定し、全粒界に対する割合を計算した。以下の各表中には対応粒界Σ3およびΣ9の長さの和)を全粒界の長さの和で割り、これに100をかけた数値を「Σ3+Σ9(%)」として示す。
【0049】
(c.亜粒界と粒界の単位面積における全長)
EBSD法により約500μm四方の測定領域で、スキャンステップが0.5μmの条件で測定を行った。そのデータを用いEDAX TSL社製のソフト「Orientation Imaging Microscopy v5」(商品名)のBoundary Rotation Angle解析により、亜粒界と粒界の長さを測定した。解析条件として隣り合う粒の傾角は亜粒界に関しては1°以上15°以下、粒界に関しては15°を超え180°以下とした。以下の各表中には単位面積1μmあたりの長さ(単位はμm/μm)を示す。
【0050】
組織については、製品のW方位およびRDW方位の面積率、また対応粒界Σ3およびΣ9の和の全粒界に対する割合、および単位面積あたりの亜粒界長と粒界長の和について規定を満たす場合を発明範囲内とし、いずれかひとつでも規定を満たしていない場合発明範囲外とした。それに伴い、引張強度、導電性、耐応力緩和特性を合金特性として示し、全てが本規定以上の特性を示す場合、合金特性が十分であるとし、その場合は必ず組成および組織が規定の範囲内にある。
【0051】
(d.引張強度[TS])
圧延平行方向から切り出したJIS Z 2201−13B号の試験片をJIS Z 2241に準じて3本測定しその平均値を示した。
引張強度は250MPa以上が合格レベルである。
【0052】
(e.導電率[EC])
20℃(±0.5℃)に保たれた恒温漕中で四端子法により比抵抗を計測して導電率を算出した。なお、端子間距離は100mmとした。
導電率は75%IACS以上が合格レベルである。
【0053】
(f.応力緩和率[SR])
日本伸銅協会JCBA T309:2004(銅および銅合金薄板条の曲げによる応力緩和試験方法)に準じ、150℃で1000時間保持後の条件で測定した。片持ちはりブロック式の治具を用いて、耐力の80%の初期応力を負荷した。
応力緩和率は30%未満が合格レベルである。
【0054】
以下に、合金成分が本発明の範囲内である銅合金材料の供試材を下記表3に、合金成分が本発明の範囲でない銅合金材料の供試材を下記表4にまとめ、得られた結果を示す。
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】
上記表3および4から、発明で規定する合金成分の範囲を満たし、かつ本発明で規定する結晶方位特性項目をいずれも満たす本発明の合金材料の供試材(合金No.1〜14)はいずれも、引張強度および導電率が高く、かつ応力緩和率が低く、優れた銅合金材料の供試材であることがわかる。
しかも、発明で規定する合金成分の範囲を満たさなければ、合金No.15〜24に示すように、本発明で規定する結晶方位特性項目を満たしても、すなわち、本発明の製造方法で製造しても、引張強度、導電率および応力緩和率のいずれかが劣ることがわかる。
【0058】
以下に、合金成分が本発明の範囲内であるが、結晶方位解析が本発明の範囲の銅合金材料の供試材を下記表5に、結晶方位解析の項目のいずれかが本発明の範囲を満さない比較の銅合金材料の供試材を下記表6に示す。
【0059】
【表5】
【0060】
【表6】
【0061】
上記表5および6から、本発明で規定する合金成分の範囲を満たし、かつ本発明で規定する結晶方位特性項目をいずれも満たす本発明の合金材料の供試材(合金No.25〜49)はいずれも、引張強度および導電率が高く、かつ応力緩和率が低く、優れた銅合金材料の供試材であることがわかる。
これに対して、本発明で規定する合金成分の範囲を満たしても、結晶方位特性項目のいずれかが本発明の範囲を満たさなければ、合金No.50〜74に示すように、引張強度、導電率および応力緩和率のいずれかが劣ることがわかる。
【0062】
なお、上記表5および6から、本発明の合金材料の供試材は、上記の本発明における製造条件を満たすことにより得られることがわかる。
【0063】
以下に、合金成分が本発明の範囲内である銅合金材料の供試材であり、特許第4087307号公報に記載の実施例に相当する工程で製造した銅合金材料を下記表7に、特許第3838521号公報に記載の実施例に相当する工程で製造した銅合金材料の供試材を下記表8に、それぞれ得られた結果を示す。
【0064】
【表7】
【0065】
【表8】
【0066】
上記表7および8から、従来の公知の製造方法で使用しても、本発明で規定する結晶方位特性項目のいずれも満たすものは得られず、この結果、引張強度、導電率および応力緩和率のいずれかが劣り、本発明のことがわかる。
【0067】
上記の各表で示したように、本発明の銅合金材料はEV、PHEVを中心とした車載部品および周辺インフラや太陽光発電システムなどのリードフレーム、コネクタ、端子材等に好適であることがわかる。