(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6077102
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】スパッタリング用チタンターゲット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
C23C14/34 A
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-504287(P2015-504287)
(86)(22)【出願日】2014年3月3日
(86)【国際出願番号】JP2014055226
(87)【国際公開番号】WO2014136702
(87)【国際公開日】20140912
【審査請求日】2015年3月3日
(31)【優先権主張番号】特願2013-43904(P2013-43904)
(32)【優先日】2013年3月6日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093296
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100173901
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 一輝
(72)【発明者】
【氏名】塚本 志郎
【審査官】
國方 恭子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−232061(JP,A)
【文献】
特開平11−269640(JP,A)
【文献】
特開2000−045067(JP,A)
【文献】
特開平08−269701(JP,A)
【文献】
特開2003−213389(JP,A)
【文献】
特開2003−253411(JP,A)
【文献】
特開平11−269621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
C22C 14/00
C22F 1/00,1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
純度が5N5(99.9995%)以上の高純度チタンターゲットであって、ターゲット表面にマクロ模様が存在せず、平均結晶粒径が10μm以下であることを特徴とするスパッタリング用チタンターゲット。
【請求項2】
純度が5N5(99.9995%)以上の高純度チタンターゲットの製造方法であって、溶解・鋳造したインゴットを、一次鍛造を800〜950℃で行い、500℃を超え600℃未満の温度で二次鍛造を行い、二次鍛造後に冷間圧延を行い、さらに400〜460℃で熱処理を行った後、ターゲットに加工し、表面にマクロ模様が存在せず、平均結晶粒径が10μm以下であるターゲットを製造することを特徴とするスパッタリング用チタンターゲットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリング用チタンターゲットに含有する不純物を低減させると同時に、高速スパッタリング時においても亀裂や割れの発生がなく、スパッタリング特性を安定させ、成膜時のパーティクルの発生を効果的に抑えることのできる高品質のスパッタリング用チタンターゲット及びその製造方法に関する。
なお、本明細書中に記載する不純物濃度については、全て質量%(mass%)で表示する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体の飛躍的な進歩に端を発して様々な電子機器が生まれ、さらにその性能の向上と新しい機器の開発が日々刻々なされている。
このような中で、電子、デバイス機器がより微小化し、かつ集積度が高まる方向にある。これら多くの製造工程の中で多数の薄膜が形成されるが、チタンもその特異な金属的性質からチタン及びその合金膜、チタンシリサイド膜、あるいは窒化チタン膜などとして、多くの電子機器薄膜の形成に利用されている。
このようなチタン(合金、化合物を含む)の薄膜を形成する場合に、注意を要することは、それ自体が極めて高い純度を必要とすることである。
【0003】
半導体装置等に使用される薄膜派は一層薄くかつ短小化される方向にあり、相互間の距離が極めて小さく集積密度が向上しているために、薄膜を構成する物質あるいはその薄膜に含まれる不純物が隣接する薄膜に拡散するという問題が発生する。これにより、自膜及び隣接膜の構成物質のバランスが崩れ、本来所有していなければならない膜の機能が低下するという大きな問題が起こる。
【0004】
このような薄膜の製造工程において、数百度に加熱される場合があり、また半導体装置を組み込んだ電子機器の使用中にも温度が上昇する。このような温度上昇は前記物質の拡散速度をさらに上げ、拡散による電子機器の機能低下に大きな問題を生ずることとなる。また、一般に上記のチタン及びその合金膜、チタンシリサイド膜、あるいは窒化チタン膜等はスパッタリングや真空蒸着などの物理的蒸着法により形成することができる。この中で最も広範囲に使用されているスパッタリング法について説明する。
【0005】
このスパッタリング法は陰極に設置したターゲットに、Ar+などの正イオンを物理的に衝突させてターゲットを構成する金属原子をその衝突エネルギーで放出させる手法である。窒化物を形成するにはターゲットとしてチタンまたはその合金(TiAl合金など)を使用し、アルゴンガスと窒素の混合ガス雰囲気中でスパッタリングすることによって形成することができる。
このスパッタリング膜の形成に際して、チタン(合金・化合物を含む)ターゲットに不純物が存在すると、スパッタチャンバ内に浮遊する粗大化した粒子が基板上に付着して薄膜回路を断線または短絡させ、薄膜の突起物の原因となるパーティクルの発生量が増し、均一な膜が形成されないという問題が発生する。
【0006】
このようなことから、従来不純物となる遷移金属、高融点金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはその他の金属を低減させる必要があることはいうまでもないが、これらの元素を可能な限り低減させても上記のようなパーティクルの発生があり、根本的な解決策を見出していないのが現状である。
また、チタン薄膜は窒化チタンTi−N膜を形成する場合のパーティクル発生防止用ペースティング層として使用することがあるが、膜が硬くて十分な接着強度が得られず、成膜装置内壁または部品から剥がれてしまいペースティング層としての役割をせず、パーティクル発生原因となるという問題があった。
【0007】
生産効率を上げるために、高速スパッタリング(ハイパワースパッタリング)の要請があり、この場合、ターゲットに亀裂が入ったり、割れたりすることがあり、これが安定したスパッタリングを妨げる要因となる問題があった。先行技術文献としては、次の特許文献1及び特許文献2が挙げられる。
【0008】
一般に、スパッタリング特性(膜厚の均一性、パーティクル)を良くするには、微細で均一な組織が良いとされている。チタンのスパッタリングターゲットとして一般的に使われている純度4N5(99.995%)品、5N(99.999%)品では、インゴットを熱間鍛造し、その後切断して圧延・熱処理を行い、平均結晶粒径が10ミクロン以下でかつ均一な結晶組織を得ている。
【0009】
近年、先端プロセスでは、より高純度な材料が求められるようになり、チタンにおいても純度5N5レベルのものが求められているが、5N5(99.9995)以上の高純度Tiインゴットを従来と同じ工程・条件でターゲットを作製すると、ターゲット表面にマクロ模様ムラが発生し、また平均結晶粒径が10ミクロンより大きくなってしまうという問題が発生した。また、マクロ模様ムラのある箇所とない箇所の平均結晶粒径を比較すると、20%以上異なっていた。
この結果、このターゲットを用いてスパッタリングすると、従来品と比べてユニフォーミティ、パーティクルとも悪い結果となった。
【0010】
先行技術文献には、本出願人が過去に開発したチタンターゲットに関する特許文献3〜6及び、その他の関連する特許文献7〜12がある。
しかし、これらの特許文献は、主としてチタンターゲットの結晶粒径、結晶配向、ターゲットとバッキングプレートとの接合方法に関するもので、一部には純度の規定もあるが、4N5(99.995%)レベルの純度に過ぎない。
これらの文献では、5N5レベルのチタンの製造時に発生するターゲットの問題、特にユニフォーミティの悪化とパーティクル発生の原因となるターゲット表面に発生するマクロ模様ムラとその原因の究明がなされておらず、ユニフォーミティとパーティクルに関する問題が依然として存在していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開WO01/038598号公報
【特許文献2】特表2001−509548号公報
【特許文献3】特開平07−090560号公報
【特許文献4】特開平07−090561号公報
【特許文献5】特開平07−090562号公報
【特許文献6】特開2000−204467号公報
【特許文献7】特開平07−278804号公報
【特許文献8】特開平08−333676号公報
【特許文献9】特開平11−050244号公報
【特許文献10】特開2001−115257号公報
【特許文献11】特開平8−269701号公報
【特許文献12】特開平09−143704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の諸問題点の解決、特にパーティクルや異常放電現象の原因となる不純物を低減させると同時に、ハイパワースパッタリング(高速スパッタリング)時においても亀裂や割れの発生がなく、スパッタリング特性を安定させ、マクロ模様ムラのなく、さらに平均結晶粒径10ミクロン以下のスパッタリングターゲットを得ること、そして成膜時のユニフォーミティを向上させ、かつパーティクルの発生を効果的に抑えることのできる高品質のスパッタリング用チタンターゲットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以下の発明を提供する。
1)純度が5N5(99.9995%)以上の高純度チタンターゲットであって、ターゲット表面にマクロ模様が存在しないことを特徴とするスパッタリング用高純度チタンターゲット。
なお、マクロ模様は、本願発明のスパッタリング用高純度チタンターゲットの固有の模様であるが、ターゲット表面を観察した場合に、マクロ模様が観察される部位と観察されない部位を比較すると、「マクロ模様が観察される部位は、平均結晶粒径が20%以上異なり、且つ結晶配向率が10%以上異なること」が分かった。この結果、マクロ模様が存在しない部位は、平均結晶粒径の差が20%未満、且つ結晶配向率の差が10%未満であることが理解できる。
したがって、本願発明のスパッタリング用高純度チタンターゲットの表面において、「平均結晶粒径の差が20%以上、且つ結晶配向率の差が10%以上である」ところ(部位)は、マクロ模様が存在すると定義できる。本願明細書及び特許請求の範囲で記載する「マクロ模様」は、この意味(定義)で使用するものである。以下、同様である。
2)平均結晶粒径が10μm以下であることを特徴とする上記1)記載のスパッタリング用高純度チタンターゲット。
【0014】
また、本発明は、次の発明を提供する。
3)純度が5N5(99.9995%)以上の高純度チタンターゲットの製造方法であって、溶解・鋳造したインゴットを、一次鍛造を800〜950℃で行い、500℃を超え600℃以下の温度で二次鍛造を行うことを特徴とするスパッタリング用チタンターゲットの製造方法。
4)二次鍛造後に、冷間圧延を行い、さらに400〜460℃で熱処理を行った後、ターゲットに加工することを特徴とする上記3)に記載のスパッタリング用チタンターゲットの製造方法。
5)表面にマクロ模様が存在しないターゲットとすることを特徴とする上記3)又は4)に記載のスパッタリング用高純度チタンターゲットの製造方法。
6)平均結晶粒径を10μm以下とすることを特徴とする上記3)〜5)のいずれか一項に記載のスパッタリング用高純度チタンターゲットの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、パーティクルや異常放電現象の原因となる不純物を低減させると同時に、ハイパワースパッタリング(高速スパッタリング)時においても亀裂や割れの発生がなく、スパッタリング特性を安定させ、マクロ模様ムラのなくかつ平均結晶粒径10ミクロン以下のスパッタリングターゲットを得ることが可能であり、成膜時のユニフォーミティを向上させ、かつパーティクルの発生を効果的に抑えることのできる高品質のスパッタリング用チタンターゲットを提供することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】マクロ模様が発生したターゲットの外観示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の、スパッタリング用高純度チタンターゲットは純度が5N5(99.9995%)以上の純度を持つ。従来は、このような高純度のチタンターゲットは、ターゲット表面にマクロ模様が発生するという問題を生じたが、本願発明の5N5(99.9995%)以上の高純度チタンターゲットは、上記に定義するマクロ模様は一切発生しない。
マクロ模様が発生したターゲットの外観写真を、
図1に示す。
図1の左側の写真は、ターゲットにマクロ模様が発生した表面のA部を示すが、
図1の右側の上図は、A部を拡大した写真(B部)を示し、
図1の右側の下図は、さらにB部を拡大した写真を示す。このように、ターゲットの表面に筋状のマクロ模様が観察される。
【0018】
上記のように、マクロ模様は、ターゲット表面の組織の不均一さを齎すものなので、この存在を低減する又は抑制することは、ターゲット及びスパッタリング成膜の品質を向上させる重要な役割を示すものである。
チタンターゲットの結晶配向については、表1に示すBasal面配向率の定義で求めたものである。
【0020】
上記のスパッタリング用高純度チタンターゲットを用いてスパッタリングした場合に、成膜時のユニフォーミティを向上させ、かつパーティクルの発生を効果的に抑えることのできる優れた効果を得ることができる。
さらに、スパッタリング用高純度チタンターゲットの平均結晶粒径が10μm以下とすることにより、成膜時のユニフォーミティをより向上させ、かつパーティクルの抑制効果を高めることができる。
【0021】
本発明の純度が5N5(99.9995%)以上の高純度チタンターゲットの製造に際しては、溶解・鋳造したインゴットを、一次鍛造を800〜950℃で行い、径が初期の40〜50%になるまで締め、二次鍛造を、500℃を超え600℃以下の温度で行い、径を一次鍛造後の状態から更に40〜60%になるまで締め、その後、1枚ずつ切断して冷間圧延・熱処理を行うことにより製造できる。従来は、一次鍛造を800〜950℃、二次鍛造を600〜700℃で行っていたが、この状態では、ターゲット表面のマクロ模様を消失させることができなかった。
【0022】
しかしながら、本願発明のように、二次鍛造を、500℃を超え600℃以下の温度に下げて行うことにより、マクロ模様の発生をなくすことが可能となった。この温度の上限値及び下限値を逸脱する範囲では、下記に定義するマクロ模様の発生が見られるので、避ける必要がある。
このマクロ模様は、ターゲット表面の組織の観察を行うことにより容易に判別できるが、平均結晶粒径が20%以上異なり、且つ結晶配向率が10%以上異なる部位なので、厳密性が要求される場合には、平均結晶粒径と結晶配向を調べることによっても、容易に判別することができる。
また、これを低減化することは、製造工程の変更に伴う生産性に影響を与えることが少なく、大きな効果を得ることができる。
【0023】
さらに、上記の二次鍛造後に、冷間圧延を行い、400〜460℃で熱処理を行った後、ターゲットに加工することが、より有効である。
従来、純度4N5または5Nチタン圧延板の熱処理温度は、460を超え500℃以下の温度であったが、400〜460℃に下げることで、平均結晶粒径を10μm以下の微細な結晶粒を得ることが可能となった。この温度条件を逸脱する範囲では、上記の効果は得られない。
また、上記のように、結晶配向が安定であるため、安定したスパッタリング特性を得ることができ、成膜の均一性に効果がある。
【0024】
高純度チタンを製造するには、既に知られた溶融塩電解法を使用できる。以下簡単に説明する。この溶融塩電解の雰囲気は不活性雰囲気とするのが望ましい。電解時には、初期カソード電流密度を低電流密度である0.6A/cm
2以下にして行うのが望ましい。さらに、電解温度を600〜800°Cとするのが良い。
【0025】
このようにして得た電析Tiを、さらにEB(電子ビーム)溶解し、これを冷却凝固させてインゴットを作製し、800〜950°Cで熱間鍛造又は熱間押出し等の熱間塑性加工を施してビレットを作製する。
これらの加工により、インゴットの不均一かつ粗大化した鋳造組織を破壊し均一微細化することができる。このようにして得たビレットに対して、上記の二次鍛造、圧延、熱処理、最終的に、ターゲットに加工する。
【実施例】
【0026】
次に、本発明の実施例について説明する。なお、本実施例はあくまで1例であり、この例に制限されるものではない。すなわち、本発明の技術思想の範囲に含まれる実施例以外の態様あるいは変形を全て包含するものである。
【0027】
(実施例1)
純度5N5のチタンを溶解・鋳造して得られたチタンインゴットを、850℃で一次鍛造、600℃で二次鍛造を行い、次にこれを切断して冷間圧延後、流動床炉で430℃の熱処理を行った。さらに、これを機械加工し、Cu合金バッキングプレートと拡散接合させ、チタン径約φ430mmのスパッタリングターゲットを作製した。
このようにして作製したチタンターゲットには、本発明で定義したマクロ模様のムラは見られず、平均結晶粒径は中心部8μm、R/2部9μm、外周部8μmと面内で均一であった。なお、Rは円盤状ターゲットの半径を示す。
なお、平均結晶粒径の測定は、それぞれの部位で190μm×230μmの面積を観察し、線分法により求めた。以下の実施例及び比較例で同様とする。
【0028】
また、結晶配向率は中心部74%、R/2部78%、外周部72%と、面内で均一であった。また、スパッタリング条件はパワー38kWで厚さ20nmのTiN膜をSiO
2基板上に形成した。
スパッタ評価の結果、ユニフォーミティは2.3%、パーティクル数は平均7個と少なく、良好であった。なお、ユニフォーミティは、KLA−テンコール社製オムニマップ(RS−100)により、パーティクル数はKLA−テンコール社製パーティクルカウンター(Surfscan SP1−DLS)により計測した。
表2に、実施例1のチタンターゲットの、マクロ模様の有無、平均結晶粒径とその最大差、結晶配向率とその最大差、ユニフォーミティ、パーティクル数を記載する。
【0029】
【表2】
【0030】
(実施例2)
純度5N5のチタンを溶解・鋳造して得られたインゴットを800℃で、一次鍛造、500℃で絞め鍛造を行い、切断して冷間圧延後、流動床炉で460℃の熱処理を行った。さらに、これを機械加工し、Cu合金バッキングプレートと拡散接合させ、チタン径約φ430mmのスパッタリングターゲットを作製した。ターゲットにマクロ模様は見られず、平均結晶粒径は中心部9μm、R/2部9μm、外周部9μmと均一であった。
【0031】
また、結晶配向率は中心部74%、R/2部75%、外周部73%であった。また、スパッタリング条件はパワー38kWで厚さ20nmのTiN膜をSiO2基板上に形成した。
スパッタ評価の結果、ユニフォーミティは2.2%、パーティクル数は平均9個であった。なお、ユニフォーミティは、KLA−テンコール社製オムニマップ(RS−100)により、パーティクル数はKLA−テンコール社製パーティクルカウンター(Surfscan SP1−DLS)により計測した。
表2に、実施例2のチタンターゲットにおいて、マクロ模様の有無、平均結晶粒径とその最大差、結晶配向率とその最大差、ユニフォーミティ、パーティクル数を記載する。
【0032】
(比較例1)
純度5N5のチタンを溶解・鋳造して得られたインゴットを850℃一次鍛造、700℃で二次鍛造を行い、切断して冷間圧延後、流動床炉で430℃の熱処理を行った。さらに、これを機械加工し、Cu合金バッキングプレートと拡散接合させ、チタン径約φ430mmのスパッタリングターゲットを作製した。
ターゲットにマクロ模様ムラが観察された。そして、マクロ模様が観察される部位と観察されない部位の平均結晶粒径は6μm、8μmと20%以上の差があり、結晶配向率は72%、63%と、10%以上の差が見られた。
【0033】
また、スパッタリング条件はパワー38kWで厚さ20nmのTiN膜をSiO
2基板上に形成した。スパッタ評価の結果、ユニフォーミティは6.3%、パーティクル数は平均15個と悪かった。なお、ユニフォーミティは、KLA−テンコール社製オムニマップ(RS−100)により、パーティクル数はKLA−テンコール社製パーティクルカウンター(Surfscan SP1−DLS)により計測した。
表2に、比較例1のチタンターゲットにおいて、マクロ模様の有無、平均結晶粒径とその最大差、結晶配向率とその最大差、ユニフォーミティ、パーティクル数を記載する。
【0034】
(参考例2)
純度5N5のチタンを溶解・鋳造して得られたインゴットを800℃で一時鍛造、500℃で絞め鍛造を行い、切断して冷間圧延後、流動床炉で470℃の熱処理を行った。さらに、これを機械加工し、Cu合金バッキングプレートと拡散接合させ、チタン径約φ430mmのスパッタリングターゲットを作製した。
【0035】
ターゲットにマクロ模様は見られなかったが、平均結晶粒径は中心部12μm、R/2部13μm、外周部13μmと10μmより大きくなり、また、結晶配向率は中心部82%、R/2部83%、外周部80%であった。また、スパッタリング条件はパワー38kWで厚さ20nmのTiN膜をSiO
2基板上に形成した。スパッタ評価の結果、ユニフォーミティは3.4%、パーティクル数は平均21個と悪かった。
なお、ユニフォーミティは、KLA−テンコール社製オムニマップ(RS−100)により、パーティクル数はKLA−テンコール社製パーティクルカウンター(Surfscan SP1−DLS)により計測した。
【0036】
マクロ模様が観察されず、平均結晶粒径の差、結晶配向率の差も、本願発明の範囲に入り、比較例1に比べてユニフォーミティは良好である。しかし、平均結晶粒径が大きくなる場合には、パーティクル数が増加する傾向にあるので参考例とした。マクロ模様の発生がないという意味で、対応する効果を有するものである。このことから、必要に応じて平均結晶粒径を調整することは、より望ましい条件と言える。
表2に、参考例2のチタンターゲットにおいて、マクロ模様の有無、平均結晶粒径とその最大差、結晶配向率とその最大差、ユニフォーミティ、パーティクル数を記載する。
【0037】
(比較例3)
純度4N5のチタンを溶解・鋳造して得られたインゴットを、850℃で一次鍛造、400℃で絞め鍛造を行った。その後切断して冷間圧延を行ったが、歪みの蓄積が過大になり圧延中に割れを生じてしまった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
パーティクルや異常放電現象の原因となる不純物を低減させると同時に、ハイパワースパッタリング(高速スパッタリング)時においても亀裂や割れの発生がなく、スパッタリング特性を安定させ、成膜時のパーティクルの発生を効果的に抑えることのできる高品質のスパッタリング用チタンターゲットを提供することができるので、電子機器等の薄膜の形成に有用である。