特許第6077319号(P6077319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6077319
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】電子レンジ加熱調理用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20170130BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20170130BHJP
   A23L 27/21 20160101ALI20170130BHJP
【FI】
   A23L27/00 D
   A23L5/10 C
   A23L27/21
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-16354(P2013-16354)
(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公開番号】特開2014-147298(P2014-147298A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004477
【氏名又は名称】キッコーマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100125542
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 英之
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 拓
(72)【発明者】
【氏名】佐野 晴美
【審査官】 長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−231763(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/128221(WO,A1)
【文献】 特開平07−227241(JP,A)
【文献】 特開平11−332506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/
A23L 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子レンジ加熱調理用の食品の表面に付着させ、該食品の表面に焦げ目をつけるための電子レンジ加熱調理用組成物であって、顆粒醤油と糖類とを含む電子レンジ加熱調理用組成物。
【請求項2】
電子レンジ加熱調理用の食品の表面に付着させ、該食品の表面に焦げ目をつけるための電子レンジ加熱調理用組成物であって、顆粒醤油を20〜70重量%、且つ、糖類を30〜80重量%含有する請求項1記載の電子レンジ加熱調理用組成物。
【請求項3】
電子レンジ加熱調理用の食品の表面に付着させ、該食品の表面に焦げ目をつけるための電子レンジ加熱調理用組成物であって、顆粒醤油の粒径が0.25〜1.18mmである請求項1又は2記載の電子レンジ加熱調理用組成物。
【請求項4】
電子レンジ加熱調理用の食品の表面に付着させ、該食品の表面に焦げ目をつけるための電子レンジ加熱調理用組成物であって、賦形剤として5〜70重量%のα化した米粉、α化したコーン粉砕物及び酵素処理により多孔質化した澱粉からなる群から選択される少なくとも一種の多孔質体を含有した顆粒醤油と糖類からなる請求項1〜3のいずれか一項記載の電子レンジ加熱調理用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジを用いて肉、魚、豆腐等の食材を加熱調理する際に用いられる粉末状の組成物(以下、「電子レンジ加熱調理用組成物」という)に係り、詳しくは、食材の表面にふりかけることによって、電子レンジを用いて加熱するだけで、食材の表面に通常のフライパン等で加熱調理したものと同等のこんがりとした風合いの焦げ目を付与することが可能であり、しかも、保存安定性に優れた電子レンジ加熱調理用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭における電子レンジの普及及び個食化の進展に伴い、一人分といった少量でも手間が掛からず所望の量だけ簡単に調理出来ることから、電子レンジで加熱するだけで食材を調理できる電子レンジ用食品(以下、「電子レンジ加熱調理用食品」という。)の需要が非常に高まってきている。また、紙製容器等に充填した電子レンジ加熱調理用食品は、加熱するだけで可食できるので、食材の下ごしらえや鍋やフライパンによる調理が必要でないため、キッチンを汚すこともなく、近年様々な製品が開発され、その市場規模も拡大している。
【0003】
ところが、生肉等の未加熱食材をそのまま電子レンジで加熱調理すると、未加熱食材の表面にフライパンやグリルで焼いたような焦げ目を付けることができないため、食欲をそそるような外観とすることができなかった。そのために、従来の肉等の食材を用いた電子レンジ加熱調理用食品は、予め食材を焼き調理することで焦げ目を付与した調理済み食材として、この調理済み食材を電子レンジで温め直すことで食することができるような製品として開発されている。しかし、この焼き調理済みの電子レンジ加熱調理用食品の場合、食材を電子レンジで温め直すと加熱に伴い食材中の水分が出てしまいパサパサとした食感となり、とても食品として満足出来るものではない。
【0004】
そこで、焼き調理済みの電子レンジ加熱調理用食品とは異なり、生肉等の食材を電子レンジで加熱調理する前に、食材に付着させたりあるいは食材にふりかけたりすることで、食材にフライパンで焼いた焦げ目のような風合いを付与することができる調味料、すなわち、電子レンジ加熱調理用組成物が提案されている。例えば、アミノ酸と食塩を含有する粉末醤油に糖類等を配合することで、電子レンジ加熱により、メイラード反応を進行させて焼いた焦げ目状の風合いを付与する調味料が提案されている。すなわち、粉末醤油及び糖類に食材からの離水防止等のため、デキストリンやカラヤガムを配合した調味料(特許文献1参照)、粉末醤油と糖類にカードランを配合して、離水を防止する調味料(特許文献2参照)及び粉末醤油及び糖類に穀粉あるいは加工澱粉を配合して食材への付着性を改善することで油揚げ状のこんがりとした外観を付与することができる調味料が提案されている(特許文献3参照)。
【0005】
しかしながら、これらの粉末醤油を用いた電子レンジ加熱調理用調味料は、粉末醤油が持つ特性として吸湿性が高く保存中に固着してしまう欠点を有していた。また、粉末醤油を用いた電子レンジ加熱調理用調味料を食材に付着させた時、粉末醤油が食材の水分を吸収することで、食材のみずみずしさが減少し食感が硬くなってしまうことも欠点であった。さらに、食材の水分を吸収することで粉末醤油等の粒子が溶解するために、電子レンジで加熱すると単なる焦げ色の薄い膜状となり、フライパン等で焼いた際の斑点状の焦げ目(例えば、フライパンとハンバーグの接着面が加熱されることでハンバーグに生じる斑点状の焦げ目のこと)とは異なる風合いとなる欠点を有していた。
一方、これらの特許文献で提案されている電子レンジ加熱調理用調味料には、離水防止あるいは食材への付着性の向上のために、デキストリン、カラヤガムあるいは加工澱粉等を配合しているが、粉末醤油自体の吸湿性が高いために離水防止効果は充分ではないとともに、過剰な増粘剤により過度の粘性が生じるため口当たりもベタベタした食感となることも問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2957080号公報
【特許文献2】特許第3024899号公報
【特許文献3】特許第3200590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、電子レンジで加熱調理する前に食材に付着させるかあるいはふりかけることで、食材本来の風味を損なわずに焼いたような焦げ目を生じさせることができる長期保存が可能な電子レンジ加熱調理用組成物を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、粉末醤油に変えて、油脂、賦形剤及び粉末醤油から製造される粒径0.25〜1.18mmである顆粒醤油を20〜70重量%及び糖類を30〜80重量%を含有した電子レンジ加熱調理用組成物としたところ、該組成物を食材の表面に振り掛けることによって、電子レンジを用いて加熱するだけで、食材の表面に通常のフライパン等で加熱調理したものと同等のこんがりとした風合いの斑点状の焦げ目を付与することが可能であり、しかも、該組成物の吸湿性は、粉末醤油を用いた場合より著しく低減されたことにより、保存安定性に優れた電子レンジ加熱調理用組成物であることを知った。また、電子レンジ加熱調理用組成物に配合する顆粒醤油の賦形剤としてα化した米粉、α化したコーン粉砕物及び酵素処理により多孔質化した澱粉からなる群から選択される少なくとも一種の多孔質体を用いた場合、電子レンジ加熱調理用組成物の保存安定性がさらに改善されることを見出した。
そして、これらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0009】
すなわち本発明は、以下の電子レンジ加熱調理用組成物である。
【0010】
(1)電子レンジ加熱調理用の食品の表面に付着させ、該食品の表面に焦げ目をつけるための電子レンジ加熱調理用組成物であって、顆粒醤油と糖類とを含む電子レンジ加熱調理用組成物。
(2)電子レンジ加熱調理用の食品の表面に付着させ、該食品の表面に焦げ目をつけるための電子レンジ加熱調理用組成物であって、顆粒醤油を20〜70重量%、且つ、糖類を30〜80重量%含有する(1)記載の電子レンジ加熱調理用組成物。
(3)電子レンジ加熱調理用の食品の表面に付着させ、該食品の表面に焦げ目をつけるための電子レンジ加熱調理用組成物であって、顆粒醤油の粒径が0.25〜1.18mmである(1)及び(2)記載の電子レンジ加熱調理用組成物。
(4)電子レンジ加熱調理用の食品の表面に付着させ、該食品の表面に焦げ目をつけるための電子レンジ加熱調理用組成物であって、賦形剤として5〜70重量%のα化した米粉、α化したコーン粉砕物及び酵素処理により多孔質化した澱粉からなる群から選択される少なくとも一種の多孔質体を含有した顆粒醤油と糖類からなる(1)〜(3)記載の電子レンジ加熱調理用組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、生肉等の食材を電子レンジで加熱調理する前に、食材に付着させるかあるいはふりかけることによって、電子レンジ加熱調理された食材の表面にフライパンで焼いたような斑点状の焦げ目を付与することができるとともに、該食材のみずみずしさや風味が損なわれることがない電子レンジ加熱調理用組成物が得られる。さらに、粉末醤油を含む電子レンジ加熱調理用調味料と比較して、吸湿性が改善され、保存安定性が高い電子レンジ加熱調理用組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
続いて、本発明について、更に詳細に説明する。
本発明は、前記したように、油脂、賦形剤としてα化したコーン粉砕物及び酵素処理により多孔質化した澱粉からなる群から選択される少なくとも一種の多孔質体と粉末醤油から製造される顆粒醤油に糖類を含有してなることを特徴とする電子レンジ加熱調理用組成物に関するものであり、とりわけ、肉、魚、卵、豆腐、ハンバーグ等の食材に全体的に付着させるかあるいはふりかけて電子レンジで加熱調理するのに有用な電子レンジ調理用組成物に関するものであって、この場合、該組成物が使用される最終製品としては、いわゆる肉又は魚をそのまま焼成した焼成製品、挽肉や豆腐等からなるハンバーグ様食品、魚肉ハンバーグ、卵焼き様食品等、更に具体的に云えば、挽肉ハンバーグ、豆腐ハンバーグ、卵液等を電子レンジ調理可能な容器に入れて電子レンジで加熱調理できる食品が例示されるが、これに限らず、これらと同等又は類似のものであれば、その種類を問わず対象とすることができる。
【0013】
(顆粒醤油の製造)
本発明の電子レンジ加熱調理用組成物の必須成分であるところの顆粒醤油は、食用油、賦形剤としてα化したコーン粉砕物及び酵素処理により多孔質化した澱粉からなる群から選択される少なくとも一種の多孔質体及び粉末醤油を原料として顆粒を製造する一般的な方法で製造できるが、例えば、顆粒を製造する際に使用される押出造粒法、流動層造粒法、圧縮造粒法、破砕造粒法等の公知の造粒法を用いることができる。特に、好ましくは、押出造粒法による従来公知の顆粒醤油の製造法をそのまま採用することができる。具体的には、噴霧乾燥法で得られた粉末醤油に所定含水率のエチルアルコール(以下、含水エチルアルコールという)を加え、さらに、賦形剤としてα化したコーン粉砕物及び酵素処理により多孔質化した澱粉からなる群から選択される少なくとも一種の多孔質体と必要により食用油を添加し、混練して団塊状にし、押出造粒機に所定の孔径を有するダイス、又は所定の目開きのメッシュ構造の篩を介して押出し、乾燥して顆粒醤油を得る方法により実施する。
このようにして製造した顆粒醤油の粒の形状に特に限定はないが、顆粒醤油の粒径は、好ましくは0.25〜1.18mmであり、より好ましくは0.4〜1.0mmである。なお、顆粒醤油を製造する際の粉末醤油及び賦形剤、食用油の配合量は賦形剤が5〜70重量%、粉末醤油が30〜95重量%、食用油が粉末醤油と多孔質体との混合物の重量に対して、外割で1〜10重量%、の範囲であることが好適である。
【0014】
例えば、本発明の顆粒化法として、目開き0.25〜1.5mmのスクリーンを有する押出造粒機を用い、粉末醤油、賦形剤、含水エチルアルコール、食用油等からなる混合物を混練して団塊状にしたものを、当該スクリーンから押出すことによって、当該混合物より押出造粒物を得ることができる。
なお、押出造粒物の粒の形状、大きさには、特に限定はない。所望の形状、大きさの顆粒醤油が得られるように、スクリーンの目開きを調整して押出造粒物を製造すればよい。
【0015】
次いで押出造粒物は、常法により温風〜熱風乾燥後、解砕し、所定の目開きのメッシュ構造の篩により、例えば1.18mm通過(14メッシュパス)、且つ、0.25mm非通過(60メッシュオン)の区分を分離取得することにより、目的とする粒度の顆粒醤油を得ることができる。
【0016】
(粉末醤油)
顆粒醤油の製造に用いられる粉末醤油は、醤油に賦形剤を混和した後噴霧乾燥する、いわゆる噴霧乾燥法にて製造することができる。原料醤油としては、濃口醤油、淡口醤油、溜醤油、白醤油、再仕込醤油等があげられる。
【0017】
(粉末醤油の製造における賦形剤)
賦形剤としては、デキストリン、水飴、ブドウ糖、果糖、ガラクトース、麦芽糖、蔗糖、澱粉、多糖類等の炭水化物、ゼラチン及びガム等の1種又は2種以上が挙げられる。賦形剤としてはこの他、α化した米粉、α化したコーン粉砕物等の多孔質体粉末を用いてもよい。粉末醤油の製造には、賦形剤の添加が必要であり、液体状の醤油に対して10〜50重量%の賦形剤を添加して粉末化することが好ましい。
【0018】
なお、上記醤油に、必要により食塩、砂糖、澱粉、グルコース等の甘味料、グルタミン酸ナトリウム、その他のアミノ酸類、クエン酸、酒石酸等の有機酸類、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム等の5’−ヌクレオチド類、香辛料類、動物性又は植物性物質の抽出物或いは分解液等の調味成分を適宜加えた後、これを原料醤油として噴霧乾燥に供してもよい。
【0019】
(粉末醤油の製造)
粉末醤油の製造における噴霧乾燥は、従来公知の手段をそのまま採用することができ、例えば、圧力式ノズルを用いるか、回転円盤アトマイザーを用いて高温気流中に噴霧し、乾燥粉末化する方法があげられる。
【0020】
噴霧乾燥の具体的な方法としては、モービル・マイナー型噴霧乾燥機があげられるが、その噴霧乾燥条件は、熱風温度140〜180℃、排風温度95〜118℃、スプレードライ(SD)流量20〜30kg/時、アトマイザー回転数3000〜15000rpmが好ましい。
【0021】
(顆粒醤油製造における含水エチルアルコール)
粉末醤油の混合物に添加される含水エチルアルコールのエチルアルコール濃度は70〜99%(v/v)が好ましく、85〜97%(v/v)がより好ましく、88〜93%(v/v)が最も好ましい。この範囲のエチルアルコール濃度の場合、粉末醤油の混合物へすみやかに混和することができ、粉末醤油への吸湿等を最小限とすることができる。
【0022】
原料粉体に対する含水エチルアルコールの添加量は、10〜80重量%が好ましく、15〜60重量%がより好ましく、20〜40重量%が最も好ましい。そして、原料粉体に対する含水エチルアルコールの添加量は、該原料粉体に対して実水分として、0.1〜15重量%となるように添加することが好ましく、1〜13%がより好ましく、3〜7%が最も好ましい。例えば、粉末醤油100gに対して、実水分が4重量%濃度となるように、含水率10重量%のアルコールを40g混和(又は純エチルアルコール36g及び水4gをこの順序で混和してもよい)する。この範囲で含水エチルアルコールを添加した場合、押出造粒機への付着等が緩和され、混和物の押出を滑らかにすることができる。
【0023】
(顆粒醤油製造における食用油)
顆粒醤油の原料である食用油は、粉末原料の均一混合を容易にし、また押出し造粒を容易にし、吸湿性の緩和作用効果を奏する。使用できる油脂は、植物油、動物油、あるいはこれらの水素添加による硬化油脂等が挙げられるが、常温液状で無臭無味性のものが、醤油の風味を阻害しないし、また製品が冷水中でも油脂が解離して溶解するという点で好ましい。また酸化安定性が高いものがより好ましい。特に、本発明で用いられる食用油は、常温(例えば約20〜25℃)下で液状である油脂であり、炭素数6〜10の脂肪酸(中鎖脂肪酸)とグリセロールとをエステル結合したトリアシルグリセロール(トリグリセリドということもある。)を主成分とする油脂であることが好ましい。なお、トリアシルグリセロールを含む食用油としては、米油やパーム油を挙げることができる。米油は、米に由来する油脂、特に、米糠及び/又は米胚芽から採油した油脂を総称するものである。
【0024】
(顆粒醤油製造における賦形剤)
顆粒醤油の製造に添加される賦形剤としては、α化したコーン粉砕物及び酵素処理により多孔質化した澱粉からなる群から選択される少なくとも一種の多孔質体が好ましく、具体的には下記のようなものがあげられる。α化した米粉は、精白米、未熟米、玄米、破砕精米、白糠等をα化して粉砕したものである。α化の方法としては、上述した種々の米を蒸煮、焙炒、炒煎等加熱して変性させる方法や、膨化処理(パフ化)を施す方法が挙げられる。α化したコーン粉砕物は、乾燥とうもろこしを粉末化し、α化したものである。α化の方法は、α化した米粉と同様の方法により行うことができる。また、とうもろこしの種類は特に限定されない。酵素処理により多孔質化した澱粉は、とうもろこし等の澱粉の粒子に酵素を作用させることにより、該粒子の表面に無数の微細孔を形成したものであり、粒状又は球形の形状を有する。具体的な例としては、アルファ化した米粉はパフゲン(キッコーマン社製)、α化したコーン粉砕物はパフ化コーン粉末(キッコーマン社製)、酵素処理により多孔質化した澱粉はロンフードOWP(日澱化学社製)があげられる。
【0025】
(電子レンジ加熱調理用組成物の製造)
本発明の電子レンジ加熱調理用組成物は、顆粒醤油に糖類を配合することにより製造されるが、その製造方法は、通常の粉体混合装置、例えば、V型ミキサー、リボンミキサー等により組成物の原料を一括して混合する方法等が例示されるが、これに限らず、これらを順次配合してもよく、また、顆粒醤油と糖類という基本原料成分に加えて、食塩、節粉末粒子、粉末旨味調味料、香辛料等の粒状調味料や乾燥野菜粒子、ゴマ粒子等の固形粒子等他の原料成分を付加してもよい。
【0026】
(顆粒醤油)
電子レンジ加熱調理用組成物の顆粒醤油の配合量は、20〜70重量%が好ましく、30〜60重量%がより好ましい。顆粒醤油の配合が20重量%未満では、食材の表面への焦げ目の付き方が弱くなるという問題があり、70重量%を越えると焦げ目が薄い膜状(ペースト状)になり食感が悪くなってしまう。
【0027】
(糖類)
電子レンジ加熱調理用組成物の糖類は、単糖類、2糖類、3糖類、オリゴ糖、糖アルコール等の単独又は併用したものが例示されるが、好適には、グルコース、フラクトース、蔗糖、麦芽糖、水飴加水分解物、オリゴ糖等が使用される。該組成物への糖類の配合量は、30〜80重量%が好ましく、40〜70重量%がより好ましい。糖類の配合量が80重量%を超えた場合、食材の表面への焦げ目の付き方が弱くなるという問題が、また、30重量%未満の場合顆粒醤油の配合量が多くなるため、仕上りがペースト状になり食感が悪くなるという問題がある。
【0028】
(他の原料成分)
本発明の電子レンジ加熱調理用組成物に付加される他の原料成分としては、風味付け等を目的として、必要に応じて、乾燥野菜粒子、ゴマ粒子、植物性蛋白、粉乳、卵粉、食塩、節粉末粒子、粉末旨味調味料、香辛料、色素、油脂等の副原料を配合することができる。その他の原料成分の配合量としては、組成物全体に対して50重量%以下であることが好ましく、30重量%以下がより好ましい。その他の原料成分の配合量が、50重量%を超えた場合、食材の表面にふりかけて電子レンジ加熱調理した際に、食材の表面への焦げ目の付き方が弱くなってしまうため、充分な焦げ目を付ける為には過剰な量をふりかける必要があり、バランスが悪い食味となってしまう。
【0029】
本発明の電子レンジ加熱調理用組成物は、前記した適宜の形態のハンバーグ等の食材に適宜の手段でふりかけて、その表面部に均一に付着させるようにして使用されるが、この場合、例えば、電子レンジ可能な容器内に収納した肉や豆腐等のハンバーグにふりかけのようにして上方よりふりかけることによって簡便、かつ迅速に当該ハンバーグの表面に当該組成物を均一に付着させることができる。
【0030】
このようにして材料の表面に本発明の電子レンジ加熱調理用組成物をふりかけた後、電子レンジで加熱調理することにより、従来、電子レンジ調理の欠点とされていた焦げ目付けにおいて、通常のフライパン等で加熱調理したものと同等のこんがりとした斑点状の焦げ目を付与することができ、また、その焦げ目を食するとカリッとした食感とすることができる。また、粉末醤油を用いた電子レンジ加熱調理用組成物と比較して、α化したコーン粉砕物及び酵素処理により多孔質化した澱粉を賦形剤として製造した難吸湿性の顆粒醤油を用いることで、食材に含まれる水分が外部に除去されることなく、みずみずしくやわらかな食感と材料本来の旨味を保つようにすることができる。さらに、粉末醤油に比して吸湿性が抑制された顆粒醤油を用いたことで保存安定性に優れた電子レンジ加熱調理用組成物とすることができる。
以下に本発明を実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【実施例1】
【0031】
(電子レンジ加熱調理用組成物への顆粒醤油及び糖類の配合量と焦げの状態及び食感の評価)
(顆粒醤油の製造)
濃口醤油(キッコーマン社製)20リットルに賦形剤としてデキストリン5kgを混和し、80℃に加熱溶解し、室温に冷却してから、モービル・マイナー型噴霧乾燥機を用いて噴霧乾燥を行った。乾燥条件は168〜180℃、排風温度95〜100℃、スプレードライ(SD)流量25kg/時、アトマイザー回転数10000r.p.m.で行ない、粉末醤油を調製した。この粉末醤油の成分は、水分2.1重量%、食塩36.0重量%、総窒素3.1重量%であった。
次いで、粉末醤油80gと賦形剤としてα化米粉(パフゲン、キッコーマン社製)20gを容器に入れ、撹拌して混合した。この混合物(実水分約2重量%)100gに対して、実水分が更に4重量%高い濃度となるように、含水率10重量%のアルコールを40g及び米油5gを入れ、撹拌して混合し、実水分濃度6%の湿潤物を得た。当該湿潤物を目開き1.0mmのスクリーンを有する押出造粒機にて、混合物を顆粒化(押出造粒)し、さらに乾燥させることにより顆粒醤油を調製した。当該の顆粒醤油の成分分析値は、水分1.5重量%、食塩21.8重量%、総窒素2.0重量%であった。
【0032】
(電子レンジ加熱調理用組成物の製造)
上記の粉末醤油又は顆粒醤油に糖類として粉末水飴(K−SPD、昭和産業社製)又は上白糖を表2に記載の割合で配合し、ナイロン製の袋(縦34cm×横23cm)に入れてから激しく撹拌して混合し、電子レンジ加熱調理用組成物を製造した。
【0033】
(電子レンジ加熱調理用組成物による焦げ目付け試験)
市販の木綿豆腐を用いて表1に記載の配合で混和して豆腐ハンバーグの具を作製した。次いで、該豆腐ハンバーグの具を電子レンジ加熱調理が可能な紙製容器(上面が一辺11cmの正方形、底面が一辺8cmの正方形、高さ8.5cmの四角錐台、クラウン・パッケージ社製)にて押し付けて成形した後、本発明の電子レンジ加熱調理用組成物3gを容器に入れた豆腐ハンバーグの上部表面の全体に調理用スプーンを用いて均等にふりかけた。次いで、常用の500W出力の電子レンジで6分間加熱し電子レンジ加熱調理を行った後、焦げ目の状態と食感及び食味を評価した。
【0034】
【表1】
【0035】
(焦げ目の外観と食感に対する評価)
焦げ目の状態は、豆腐ハンバーグの上部表面の焦げ目の状態と焦げ目を含む豆腐ハンバーグの食感及び食味より評価した。なお、本発明における焦げ目とは、牛や豚の生肉を原料としたハンバーグをフライパンで焼いた際に生じるフライパンと挽肉粒子の接点部に生じる斑点状の焦げ目にできるだけ近い外観となることをいい、本発明では、豆腐ハンバーグの表面に、フライパン調理に近いこのような斑点状の焦げ目が観察された場合を良好とした。すなわち、紙製容器に入れた豆腐ハンバーグの表面についた斑点状の焦げ目が、識別能力を有するパネル5名において、フライパン調理に近い斑点状の焦げ目が全体に見られる場合を評点5、斑点状の焦げ目がやや少なく、一部が薄い膜状になっている焦げ目の場合を4、斑点状の焦げ目と薄い膜状になっている焦げ目が半々である場合を3、斑点状の焦げ目が少なく薄い膜状の焦げ目が大部分である場合を2、斑点状の焦げ目がなくフライパン調理の焦げ目と異なる薄い膜状の焦げ目である場合を1とする5段階で評価した。外観の評価は5名のパネルの平均評点において、3以上を○、2.5以上〜3未満を△、2.5未満を×とした。
【0036】
さらに、豆腐ハンバーグの表面の焦げ目の食感は、紙製容器に入れた豆腐ハンバーグの表面についた個々の斑点状の焦げ目を中心に直径1cm、深さ約2mmをスプーンで5ヶ所を採取し、それぞれがカリッとした食感であるかどうか評価した。5か所の焦げ目においてカリッとした食感が強い場合を評点5、やや強い場合を4、どちらともいえない場合を3、カリッとした食感がやや弱い場合を3、カリッとした食感が弱い場合を1とする5段階で評価した。カリッとした食感の評価は、5名のパネルの平均評点において、3以上を○、2.5以上〜3未満を△、2.5未満を×とした。
結果を表2に示した。
【0037】
(電子レンジ加熱調理用組成物の吸湿性の検討)
電子レンジ加熱調理用組成物の保存安定性は、該組成物の吸湿性で評価した。一般的に、粉体の調味料において、吸湿性が高い場合は、早い段階で粉体の固結が発生するとともに、原料成分等が変質するため、粉体としての品質や食味が非常に悪くなることが知られている(特開2005−270058参照)。
【0038】
吸湿性に関する試験は、電子レンジ加熱調理用組成物を、所定の条件下で吸湿させた後、目開き1.18mm(14メッシュ)の篩を通過した電子レンジ加熱調理用組成物の重量を測定した。篩に乗せた電子レンジ加熱調理用組成物の重量(X)に対する篩を通過した当該電子レンジ加熱調理用組成物の重量(Y)の比率であるメッシュ通過率((Y/X)×100(%))を計算した。
【0039】
具体的には、温度30℃、相対湿度52%の環境において実施例及び比較例に係る電子レンジ加熱調理用組成物を、容器に入れ、密閉した。そして当該容器を、同環境下で15時間放置した。その後、この電子レンジ加熱調理用組成物の重量(Y)を測定した。
【0040】
当該容器をタッピング装置(POWDER TESTER、HOSOKAWA MICRON CORP社製)で衝撃を加えることを50回繰り返した。このタッピング装置は、電子レンジ加熱調理用組成物を収容した容器を、2cm程度の高さから台座に落下させることを繰り返し行える装置である。タッピング装置で衝撃を加えた後、容器中の電子レンジ加熱調理用組成物を14メッシュの篩に供給し、篩を通過した電子レンジ加熱調理用組成物の重量(X)を測定し、メッシュ通過率を計算した。
結果を表2に示した。
【0041】
【表2】
【0042】
表2の注1〜注5は、下記を示す。
注1:外観は、紙製容器に入れた豆腐ハンバーグの表面についた斑点状の焦げ目が、フライパン調理に近い斑点状の焦げ目が全体に見られる場合を評点5、斑点状の焦げ目がやや少なく、一部が薄い膜状になっている焦げ目の場合を4、斑点状の焦げ目と薄い膜状になっている焦げ目が半々である場合を3、斑点状の焦げ目が少なく薄い膜状の焦げ目が大部分である場合を2、斑点状の焦げ目がなくフライパン調理の焦げ目と異なる薄い膜状の焦げ目である場合を1とする5段階で評価した。5名のパネルの平均評点において、3以上を○、2.5以上〜3未満を△、2.5未満を×とした。
注2:食感は、紙製容器に入れた豆腐ハンバーグの表面についた個々の斑点状の焦げ目を中心に直径1cm、深さ約2mmをスプーンで5ヶ所を採取し、それぞれがカリッとした食感であるかどうか評価した。カリッとした食感が強い場合を評点5として、やや強い場合を4、どちらともいえない場合を3、カリッとした食感がやや弱い場合を2、カリッとした食感が弱い場合を1とする5段階で評価した。5名のパネルの平均評点において、、3以上を○、2.5以上〜3未満を△、2.5未満を×とした。
注3:吸湿性の評価は、メッシュ通過率が50%以上の場合を○、40%以上〜50%未満の場合は△、40%未満の場合を×とした。
注4:総合評価は、評価項目のすべてが○の場合を○、ひとつでも△がある場合を△、ひとつでも×がある場合は×とした。
注5:食塩含有量換算で試験例1及び2の顆粒醤油に含まれる醤油量と同じくなるように粉末醤油を配合した。
【0043】
表2の比較例1及び2から、電子レンジ加熱調理用組成物に粉末醤油を使用した場合、電子レンジ加熱調理をすると粉末醤油が豆腐ハンバーグの水分を吸水し、フライパン調理に近い斑点状の焦げ目とはならず、豆腐ハンバーグの表面に薄く広げたような焦げ目となり、また、粉末醤油を使用した場合の薄い膜状の焦げ目においては、カリッとした食感に乏しいことが判った。すなわち、本発明においては、フライパン調理に近い焦げ目を得ることを目的としており、粉末醤油ではこのような効果を得ることができなかった。
しかしながら、表2の試験例1及び2に示すように、粉末醤油に変えて、顆粒醤油を40重量%、且つ、糖類を60重量%含有する電子レンジ加熱調理用組成物においては、電子レンジ加熱調理によって発生した焦げ目の状態は、フライパン調理に近い斑点状の焦げ目となり、また、焦げ目の食感もフライパン調理による焦げ目と同様にカリッとした食感となることが判った。また、糖類として、粉末水飴に変えて上白糖を用いても、同様にフライパン調理したような焦げ目を得ることができた。すなわち、顆粒醤油を40重量%、且つ、糖類を60重量%配合した本発明の電子レンジ加熱調理用組成物においては、電子レンジ加熱調理後、外観がフライパン調理に近い斑点状の焦げ目となり、また、焦げ目の食感がカリッとした食味に優れた豆腐ハンバーグとなることが判った。
さらに、顆粒醤油を用いた試験例1及び2の電子レンジ加熱調理用組成物のメッシュ通過率は高く吸湿性が抑制されていることから、顆粒が固結しないために保存安定性が優れていることが示唆された。しかし、比較例1及び2の粉末醤油を用いた場合は、吸湿が著しく固結しやすいため、保存安定性に問題があることが判った。
【実施例2】
【0044】
(電子レンジ加熱調理用組成物の顆粒しょうゆと糖類の配合割合の検討)
実施例1の顆粒醤油に糖類として粉末水飴(K−SPD、昭和産業社製)を表3に記載の配合で配合し、ナイロン製の袋(縦34cm×横23cm)に入れてから激しく撹拌して混合し、電子レンジ加熱調理用組成物を製造した。次いで、実施例1と同様の試験方法で、該組成物を豆腐ハンバーグにふりかけた後、電子レンジ調理後の豆腐ハンバーグ表面の焦げ目の状態及びカリッとした食感を検討した。
結果を表3に示した。
【0045】
【表3】
【0046】
表3の注1〜注3は下記を示す。
注1:外観は、紙製容器に入れた豆腐ハンバーグの表面についた斑点状の焦げ目が、フライパン調理に近い斑点状の焦げ目が全体に見られる場合を評点5、斑点状の焦げ目がやや少なく、一部が薄い膜状になっている焦げ目の場合を4、斑点状の焦げ目と薄い膜状になっている焦げ目が半々である場合を3、斑点状の焦げ目が少なく薄い膜状の焦げ目が大部分である場合を2、斑点状の焦げ目がなくフライパン調理の焦げ目と異なる薄い膜状の焦げ目である場合を1とする5段階で評価した。5名のパネルの平均評点において、3以上を○、2.5以上〜3未満を△、2.5未満を×とした。
注2:食感は、紙製容器に入れた豆腐ハンバーグの表面についた個々の斑点状の焦げ目を中心に直径1cm、深さ約2mmをスプーンで5ヶ所を採取し、それぞれがカリッとした食感であるかどうか評価した。カリッとした食感が強い場合を評点5として、やや強い場合を4、どちらともいえない場合を3、カリッとした食感がやや弱い場合を3、カリッとした食感が弱い場合を1とする5段階で評価した。5名のパネルの平均評点において、3以上を○、2.5以上〜3未満を△、2.5未満を×とした。
注3:総合評価は、評価項目のすべてが○の場合を○、ひとつでも△がある場合を△、ひとつでも×がある場合を×とした。
【0047】
表3の試験例4〜7の結果から、顆粒醤油を20〜70重量%、且つ、糖類を30〜80重量%配合した電子レンジ加熱調理用組成物において、電子レンジ加熱調理によって発生した焦げ目の状態は、フライパン調理に近い斑点状の焦げ目となることが判った。一方、顆粒醤油を20重量%未満又は70重量%超える場合、あるいは、糖類を30重量%未満又は70重量%を超えて配合した場合は、焦げ目がフライパン調理に近い斑点状にはならず、また、カリッとした食感にならないことが判った。すなわち、顆粒醤油を20〜70重量%、且つ、糖類を30〜80重量%配合した本発明の電子レンジ加熱調理用組成物をふりかけた豆腐ハンバーグを電子レンジ加熱調理すると、外観がフライパン調理に近い斑点状の焦げ目となり、また、フライパンで焦げ目を付けたような食感に優れた豆腐ハンバーグとなることが判った。
【実施例3】
【0048】
(電子レンジ加熱調理用組成物の焦げの状態に対する顆粒醤油の粒子の大きさの影響)
実施例1の顆粒醤油を、目開き1.18mm(14メッシュ)及び0.25mm(60メッシュ)の篩を用いて、粒径1.18mmを超える顆粒醤油、粒径0.25以上〜1.18mm未満の顆粒醤油及び粒径0.25mm未満の顆粒醤油に篩別した後、表4の配合にて電子レンジ加熱調理用組成物を製造した。次いで、実施例1と同様に豆腐ハンバーグを用いて、焦げ目付け試験を行った。
結果を表4に示す。
【0049】
【表4】
【0050】
表4の注1〜注3を下記に示す。
注1:外観は、紙製容器に入れた豆腐ハンバーグの表面についた斑点状の焦げ目が、フライパン調理に近い斑点状の焦げ目が全体に見られる場合を評点5、斑点状の焦げ目がやや少なく、一部が薄い膜状になっている焦げ目の場合を4、斑点状の焦げ目と薄い膜状になっている焦げ目が半々である場合を3、斑点状の焦げ目が少なく薄い膜状の焦げ目が大部分である場合を2、斑点状の焦げ目がなくフライパン調理の焦げ目と異なる薄い膜状の焦げ目である場合を1とする5段階で評価した。5名のパネルの平均評点において、3以上を○、2.5以上〜3未満を△、2.5未満を×とした。なお、試験例8〜10においては、黒から黒褐色の大きな斑点となり、フライパン調理の焦げ目とは異なるため、×と評価した。
注2:食感は、紙製容器に入れた豆腐ハンバーグの表面についた個々の斑点状の焦げ目を中心に直径1cm、深さ約2mmをスプーンで5ヶ所を採取し、それぞれがカリッとした食感であるかどうか評価した。カリッとした食感が強い場合を評点5として、やや強い場合を4、どちらともいえない場合を3、カリッとした食感がやや弱い場合を3、カリッとした食感が弱い場合を1とする5段階で評価した。5名のパネルの平均評点において、3以上を○、2.5以上〜3未満を△、2.5未満を×とした。
注3:総合評価は、評価項目のすべてが○の場合を○、ひとつでも△がある場合を△、ひとつでも×がある場合を×とした。
【0051】
表4の試験例11〜15に示す結果から、顆粒醤油の粒径が0.25mm以上〜1.18mm未満の顆粒醤油を用いた場合に、豆腐ハンバーグの焦げ目の外観が、フライパン調理に近い斑点状の焦げ目となり、且つ、カリッとした食感となることが判った。すなわち、電子レンジ調理加熱後の豆腐ハンバーグ表面の焦げ目の外観がフライパン調理に近い斑点状の焦げ目となり、且つ、食感をカリッとするためには、電子レンジ加熱調理用組成物に配合する顆粒醤油の粒径を0.25〜1.18mmとすることが必要であることが判った。なお、試験例8〜10の外観においては、電子レンジで加熱調理すると焦げ目様の斑点が生じるが、顆粒醤油の粒径が大きいためフライパン調理のような焦げ目ではなく、黒から黒褐色の大きな斑点となり、フライパン調理の斑点状の焦げ目とは異なる外観となることが判った。
【実施例4】
【0052】
(電子レンジ加熱調理用組成物の顆粒醤油の粒度分布の影響)
実施例3と同様の方法で、14メッシュの篩を通過し、60メッシュの篩を通過しない粒径0.25mm以上〜1.18mm未満の顆粒醤油を得た。次いで、粒径0.25mm以上〜1.18mm未満の該顆粒醤油に、8.6メッシュを通過しない顆粒醤油(粒径2mm以上)又は100メッシュを通過し、150メッシュを通過しない顆粒醤油(粒径0.1以上〜0.15mm未満)の顆粒醤油を、表5に示す配合で電子レンジ加熱調理用組成物を製造した。次いで、実施例1と同様の試験方法で、該組成物を豆腐ハンバーグにふりかけた後、電子レンジ調理後の豆腐ハンバーグ表面の焦げ目の状態及びカリッとした食感への顆粒醤油の粒度分布の影響を検討した。
結果を表5に示した。
【0053】
【表5】
【0054】
表5の注1〜注3を下記に示す。
注1:外観は、紙製容器に入れた豆腐ハンバーグの表面についた斑点状の焦げ目が、フライパン調理に近い斑点状の焦げ目が全体に見られる場合を評点5、斑点状の焦げ目がやや少なく、一部が薄い膜状になっている焦げ目の場合を4、斑点状の焦げ目と薄い膜状になっている焦げ目が半々である場合を3、斑点状の焦げ目が少なく薄い膜状の焦げ目が大部分である場合を2、斑点状の焦げ目がなくフライパン調理の焦げ目と異なる薄い膜状の焦げ目である場合を1とする5段階で評価した。5名のパネルの平均評点において、3以上を○、2.5以上〜3未満を△、2.5未満を×とした。
注2:食感は、紙製容器に入れた豆腐ハンバーグの表面についた個々の斑点状の焦げ目を中心に直径1cm、深さ約2mmをスプーンで5ヶ所を採取し、それぞれがカリッとした食感であるかどうか評価した。カリッとした食感が強い場合を評点5として、やや強い場合を4、どちらともいえない場合を3、カリッとした食感がやや弱い場合を3、カリッとした食感が弱い場合を1とする5段階で評価した。5名のパネルの平均評点において、3以上を○、2.5以上〜3未満を△、2.5未満を×とした。
注3:総合評価は、評価項目のすべてが○の場合を○、ひとつでも△がある場合を△、ひとつでも×がある場合を×とした。
【0055】
表5の試験例16〜19の結果より、顆粒醤油の粒度において、顆粒醤油全体に対して、粒径が0.25〜1.18mmの顆粒醤油を80%以上含有している場合において、豆腐ハンバーグ表面の焦げ目の外観がフライパン調理に近い斑点状の焦げ目となることが判った。
【実施例5】
【0056】
(電子レンジ加熱調理用組成物の顆粒醤油の賦形剤による吸湿性への影響)
実施例1と同様の方法で顆粒醤油を製造する際に、賦形剤として酵素処理により多孔質化した澱粉(ロンフードOWP、日澱化学社製)、市販の上新粉及び一般的なワキシーコーン加工でん粉(パインエース#1、松谷化学社工業社製)を用いて顆粒醤油を製造した。次いで、表5の配合割合で電子レンジ加熱調理用組成物を製造して保存安定性を検討した。吸湿性は、実施例1と同様の試験法で実施した。すなわち、電子レンジ加熱調理用組成物を、所定の条件下で吸湿させた後、1.18mm(14メッシュ)四方の格子を有する篩を通過した電子レンジ加熱調理用組成物の重量を測定した。篩に乗せた電子レンジ加熱調理用組成物の重量(X)に対する篩を通過した当該電子レンジ加熱調理用組成物の重量(Y)の比率であるメッシュ通過率((Y/X)×100(%))を計算した。
【0057】
具体的には、温度30℃、相対湿度52%の環境において実施例及び比較例に係る電子レンジ加熱調理用組成物を、容器に入れ、密閉した。そして当該容器を、同環境下で15時間放置した。その後、この電子レンジ加熱調理用組成物の重量(Y)を測定した。
結果を表6に示した。
【0058】
【表6】
【0059】
経験的に、固結安定性に優れた電子レンジ加熱調理用組成物であるためには、メッシュ通過率は50%を超えていることが好ましい。表6に示したように、本発明の賦形剤としてα化米粉(パフゲン、キッコーマン社製)を用いた場合に比較して、市販の上新粉又はワキシーコーン加工でん粉(パインエース#1、松谷化学社工業社製)を用いて製造された顆粒醤油を配合した電子レンジ加熱調理用組成物においては、篩の通過率が50%未満であり、吸湿性が高いことが判明した。すなわち、一般的な澱粉や加工澱粉ではなくα化米粉を用いた顆粒醤油を原料とした場合、吸湿性が抑制され保存安定性に優れた電子レンジ加熱調理用組成物が製造できることが判った。
【実施例6】
【0060】
(電子レンジ加熱調理用組成物を同梱した豆腐ハンバーグ調理用製品の保存安定性)
電子レンジ加熱調理が可能な取り外しができる蓋付きの紙製容器(上面が一辺11cmの正方形、底面が一辺8cmの正方形、高さ8.5cmの四角錐台、クラウン・パッケージ社製)に、表1に記載した木綿豆腐を除く原材料を混合した具材20gを収納し、次いで、α化米粉を賦形剤とした顆粒醤油40重量%と粉末水飴60重量%を配合した本発明の電子レンジ加熱調理用組成物10gを充填したプラスチック製小袋(大成ラミック社製)を同梱してから、蓋をしてシュリンク包装を行った豆腐ハンバーグ調理用製品を製造した。次いで、該豆腐ハンバーグ調理用製品35℃、且つ、湿度60%の部屋に30日間放置した後、シュリンク及び蓋をはずしてから、紙製容器内の具材に木綿豆腐を加えて良く撹拌した後、表面を平滑にしてから、同梱されていた子袋の内容物の固結状態を目視で確認した後、該豆腐の表面に全量を振りかけ、電子レンジで加熱して豆腐ハンバーグを調理した。
【0061】
上記のようにして製造された豆腐ハンバーグ調理用製品は、35℃、湿度60%の孵卵器に30日間放置しても、本発明の電子レンジ加熱調理用組成物は、固結が見られず、豆腐ハンバーグにふりかけて使用できることが判った。
さらに、市販の木綿豆腐200gを、紙製容器に入れて具材とよく混和した後、小袋に充填した電子レンジ加熱調理用組成物をふりかけてから、電子レンジで加熱調理したところ、フライパンで焼いたような斑点状の良好な焦げ目が付き、風味も保存前の製品と変わらなかった。