(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記キャップ型コイルが、互いに沿って伸びる2本のコイルからなり、該2本のコイルの端部がずれていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
上記チャンバーには、フッ化炭化水素ガスが供給され、光を吸収することによって変質する分離層を上記被処理物上に堆積するようになっていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
上記ダウンフロー領域では、上記プラズマ発生部において生じた炭素ラジカル同士が、互いに結合するようになっていることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
基板、該基板を支持する光透過性の支持体、および該基板と該支持体との間に設けられ、該支持体を介して照射される光を吸収することによって変質する分離層を備えた積層体の製造方法であって、
請求項1〜7の何れか一項に記載のプラズマ処理装置に該支持体を上記被処理物として供する工程を包含することを特徴とする積層体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。具体的には、本実施形態に係る積層体の製造方法の全体について説明し、その中で、分離層を形成するための本実施形態に係るプラズマ処理装置の詳細について説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る積層体の製造方法の各工程を模式的に示す図である。本実施形態に係る積層体の製造方法によって製造される積層体10は、半導体ウエハ(基板)1、半導体ウエハ1を支持する光透過性の支持体4、および半導体ウエハ1と支持体4との間に設けられ、支持体4を介して照射される光を吸収することによって変質する分離層3を備えている。
図1に示すように、本実施形態に係る積層体の製造方法は、(1)接着層形成工程、(2)分離層形成工程、(3)貼り合わせ工程、(4)照射工程、(5)分離工程、および(6)洗浄工程を包含している。
【0015】
〔1:接着層形成工程〕
本実施形態に係る接着層形成工程では、
図1の(1)に示すように、半導体ウエハ1上に接着剤を塗布して、半導体ウエハ1上に接着層2を形成する。
【0016】
半導体ウエハ1は、支持体4に支持された状態で、薄化、実装等のプロセスに供されるものである。また、他の実施形態において、積層体10は、半導体ウエハ1の代わりに、薄いフィルム基板、フレキシブル基板等の任意の基板を採用することができる。なお、半導体ウエハ1またはその他の基板における接着層2が設けられる側の面には、電気回路等の電子素子の微細構造が形成されていてもよい。
【0017】
接着層2は、半導体ウエハ1を支持体4に接着固定すると同時に、半導体ウエハ1の表面を覆って保護する構成である。よって、接着層2は、半導体ウエハ1の加工または搬送の際に、支持体4に対する半導体ウエハ1の固定、および半導体ウエハ1の保護すべき面の被覆を維持する接着性および強度を有している必要がある。一方で、支持体4に対する半導体ウエハ1の固定が不要になったときに、半導体ウエハ1から容易に剥離または除去され得る必要がある。
【0018】
したがって、接着層2は、通常は強固な接着性を有しており、何らかの処理によって接着性が低下するか、または特定の溶剤に対する可溶性を有する接着剤によって構成される。接着層2の厚さは、例えば、1〜200μmであることがより好ましく、10〜150μmであることがさらに好ましい。接着層2は、以下に示すような接着材料を、スピン塗布のような従来公知の方法により半導体ウエハ1上に塗布することによって、形成することができる。
【0019】
接着剤として、例えばアクリル系、ノボラック系、ナフトキサン系、炭化水素系、ポリイミド系、エラストマー等の、当該分野において公知の種々の接着剤が、本実施形態に係る接着層2を構成する接着剤として使用可能である。以下では、本実施の形態における接着層2が含有する樹脂の組成について説明する。
【0020】
接着層2が含有する樹脂としては、接着性を備えたものであればよく、例えば、炭化水素樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂、エラストマー樹脂等、またはこれらを組み合わせたものなどが挙げられる。
【0021】
(炭化水素樹脂)
炭化水素樹脂は、炭化水素骨格を有し、単量体組成物を重合してなる樹脂である。炭化水素樹脂として、シクロオレフィン系ポリマー(以下、「樹脂(A)」ということがある)、ならびに、テルペン樹脂、ロジン系樹脂および石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂(以下、「樹脂(B)」ということがある)等が挙げられるが、これに限定されない。
【0022】
樹脂(A)としては、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分を重合してなる樹脂であってもよい。具体的には、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分の開環(共)重合体、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分を付加(共)重合させた樹脂などが挙げられる。
【0023】
樹脂(A)を構成する単量体成分に含まれる前記シクロオレフィン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの二環体、ジシクロペンタジエン、ジヒドロキシペンタジエンなどの三環体、テトラシクロドデセンなどの四環体、シクロペンタジエン三量体などの五環体、テトラシクロペンタジエンなどの七環体、またはこれら多環体のアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)置換体、アルケニル(ビニルなど)置換体、アルキリデン(エチリデンなど)置換体、アリール(フェニル、トリル、ナフチルなど)置換体等が挙げられる。これらの中でも特に、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、またはこれらのアルキル置換体からなる群より選ばれるノルボルネン系モノマーが好ましい。
【0024】
樹脂(A)を構成する単量体成分は、上述したシクロオレフィン系モノマーと共重合可能な他のモノマーを含有していてもよく、例えば、アルケンモノマーを含有することが好ましい。アルケンモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、α−オレフィンなどが挙げられる。アルケンモノマーは、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。
【0025】
また、樹脂(A)を構成する単量体成分として、シクロオレフィンモノマーを含有することが、高耐熱性(低い熱分解、熱重量減少性)の観点から好ましい。樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するシクロオレフィンモノマーの割合は、5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましい。また、樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するシクロオレフィンモノマーの割合は、特に限定されないが、溶解性および溶液での経時安定性の観点からは80モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがより好ましい。
【0026】
また、樹脂(A)を構成する単量体成分として、直鎖状または分岐鎖状のアルケンモノマーを含有してもよい。樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するアルケンモノマーの割合は、溶解性および柔軟性の観点からは10〜90モル%であることが好ましく、20〜85モル%であることがより好ましく、30〜80モル%であることがさらに好ましい。
【0027】
なお、樹脂(A)は、例えば、シクロオレフィン系モノマーとアルケンモノマーとからなる単量体成分を重合させてなる樹脂のように、極性基を有していない樹脂であることが、高温下でのガスの発生を抑制するうえで好ましい。
【0028】
単量体成分を重合する際の重合方法や重合条件等については、特に制限はなく、常法に従い適宜設定すればよい。
【0029】
樹脂(A)として用いることのできる市販品としては、例えば、ポリプラスチックス株式会社製の「TOPAS」、三井化学株式会社製の「APEL」、日本ゼオン株式会社製の「ZEONOR」および「ZEONEX」、JSR株式会社製の「ARTON」などが挙げられる。
【0030】
樹脂(A)のガラス転移点(Tg)は、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることが特に好ましい。樹脂(A)のガラス転移点が60℃以上であると、積層体が高温環境に曝されたときに接着層の軟化をさらに抑制することができる。
【0031】
樹脂(B)は、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂および石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である。具体的には、テルペン系樹脂としては、例えば、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、水添テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。ロジン系樹脂としては、例えば、ロジン、ロジンエステル、水添ロジン、水添ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステル、変性ロジン等が挙げられる。石油樹脂としては、例えば、脂肪族または芳香族石油樹脂、水添石油樹脂、変性石油樹脂、脂環族石油樹脂、クマロン・インデン石油樹脂等が挙げられる。これらの中でも、水添テルペン樹脂、水添石油樹脂がより好ましい。
【0032】
樹脂(B)の軟化点は特に限定されないが、80〜160℃であることが好ましい。樹脂(B)の軟化点が80℃以上であると、積層体が高温環境に曝されたときに接着層が軟化することを抑制することができ、接着不良を生じない。一方、樹脂(B)の軟化点が160℃以下であると、積層体を剥離する際の剥離速度が良好なものとなる。
【0033】
樹脂(B)の分子量は特に限定されないが、300〜3000であることが好ましい。樹脂(B)の分子量が300以上であると、耐熱性が充分なものとなり、高温環境下において脱ガス量が少なくなる。一方、樹脂(B)の分子量が3000以下であると、積層体を剥離する際の剥離速度が良好なものとなる。なお、本実施形態における樹脂(B)の分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の分子量を意味するものである。
【0034】
なお、樹脂として、樹脂(A)と樹脂(B)とを混合したものを用いてもよい。混合することにより、耐熱性および剥離速度が良好なものとなる。例えば、樹脂(A)と樹脂(B)との混合割合としては、(A):(B)=80:20〜55:45(質量比)であることが、剥離速度、高温環境時の熱耐性、および柔軟性に優れるので好ましい。
【0035】
(アクリル−スチレン系樹脂)
アクリル−スチレン系樹脂としては、例えば、スチレンまたはスチレンの誘導体と、(メタ)アクリル酸エステル等とを単量体として用いて重合した樹脂が挙げられる。
【0036】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、炭素数15〜20のアルキル基を有するアクリル系長鎖アルキルエステル、炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリル系アルキルエステル等が挙げられる。アクリル系長鎖アルキルエステルとしては、アルキル基がn−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基等であるアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。なお、当該アルキル基は、分岐状であってもよい。
【0037】
炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリル系アルキルエステルとしては、既存のアクリル系接着剤に用いられている公知のアクリル系アルキルエステルが挙げられる。例えば、アルキル基が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、ドデシル基、ラウリル基、トリデシル基等からなるアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。
【0038】
脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、イソボルニルメタアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0039】
芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されるものではないが、芳香族環としては、例えばフェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェノキシメチル基、フェノキシエチル基等が挙げられる。また、芳香族環は、炭素数1〜5の鎖状または分岐状のアルキル基を有していてもよい。具体的には、フェノキシエチルアクリレートが好ましい。
【0040】
(マレイミド系樹脂)
マレイミド系樹脂としては、例えば、単量体として、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−sec−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−n−ペンチルマレイミド、N−n−ヘキシルマレイミド、N−n−へプチルマレイミド、N−n−オクチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ステアリルマレイミドなどのアルキル基を有するマレイミド、N−シクロプロピルマレイミド、N−シクロブチルマレイミド、N−シクロペンチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−シクロヘプチルマレイミド、N−シクロオクチルマレイミド等の脂肪族炭化水素基を有するマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−m−メチルフェニルマレイミド、N−o−メチルフェニルマレイミド、N−p−メチルフェニルマレイミド等のアリール基を有する芳香族マレイミド等を重合して得られた樹脂が挙げられる。
【0041】
例えば、下記化学式(1)で表される繰り返し単位および下記化学式(2)で表される繰り返し単位の共重合体であるシクロオレフィンコポリマーを接着成分の樹脂として用いることができる。
【0043】
(化学式(2)中、nは0または1〜3の整数である。)
このようなシクロオレフィンコポリマーとしては、APL 8008T、APL 8009T、およびAPL 6013T(全て三井化学株式会社製)などを使用できる。
【0044】
なお、光硬化性樹脂(例えば、UV硬化性樹脂)以外の樹脂を用いて接着層2を形成することが好ましい。これは、光硬化性樹脂が、接着層2の剥離または除去の後に、半導体ウエハ1の微小な凹凸の周辺に残渣として残ってしまう場合があり得るからである。特に、特定の溶剤に溶解する接着剤が接着層2を構成する材料として好ましい。これは、半導体ウエハ1に物理的な力を加えることなく、接着層2を溶剤に溶解させることによって除去可能なためである。接着層2の除去に際して、強度が低下した半導体ウエハ1からでさえ、半導体ウエハ1を破損させたり、変形させたりせずに、容易に接着層2を除去することができる。
【0045】
上述した分離層、接着層を形成する際の希釈溶剤として、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、メチルオクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の直鎖状の炭化水素、炭素数4から15の分岐状の炭化水素、p−メンタン、o−メンタン、m−メンタン、ジフェニルメンタン、1,4−テルピン、1,8−テルピン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン、ツジャン、カラン、ロンギホレン、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、メントール、イソメントール、ネオメントール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、テルピネン−1−オール、テルピネン−4−オール、ジヒドロターピニルアセテート、1,4−シネオール、1,8−シネオール、ボルネオール、カルボン、ヨノン、ツヨン、カンファー、d−リモネン、l−リモネン、ジペンテン等のテルペン系溶剤;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン(CH)、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、またはジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類または前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテルまたはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体(これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい);ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル等の芳香族系有機溶剤等を挙げることができる。
【0046】
(エラストマー)
エラストマーは、主鎖の構成単位としてスチレン単位を含んでいることが好ましい。接着剤として用いるエラストマーは、当該スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲であることが好ましい。さらに、エラストマーは、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲であることが好ましい。
【0047】
エラストマーとしては、例えば、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロックコポリマー(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SBBS)、これらの水添物、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー)(SEPS)、および、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEEPS)等が挙げられる。
【0048】
(その他の成分)
接着材料には、本発明における本質的な特性を損なわない範囲において、混和性のある他の物質をさらに含んでいてもよい。例えば、接着剤の性能を改良するための付加的樹脂、可塑剤、接着補助剤、安定剤、着色剤、酸化防止剤および界面活性剤等、慣用されている各種添加剤をさらに用いることができる。
【0049】
〔2:分離層形成工程〕
本実施形態に係る接着層形成工程では、
図1の(2)に示すように、プラズマ処理によって、支持体4上に分離層3を形成する。
【0050】
支持体4は、光透過性を有している。そのため、積層体10の外から支持体4に向けて光が照射されたときに、該光が支持体4を通過して分離層3に到達する。また、支持体4は、必ずしも全ての光を透過させる必要はなく、分離層3に吸収されるべき(所定の波長を有している)光を透過させることができればよい。
【0051】
また、支持体4は、半導体ウエハ1を支持するものであり、半導体ウエハ1の薄化、搬送、実装等のプロセス時に、半導体ウエハ1の破損または変形を防ぐために必要な強度を有していればよい。以上のような観点から、支持体4としては、ガラス、シリコン、アクリル樹脂からなるもの等が挙げられる。なお、支持体4は、サポートプレートと称されることもある。
【0052】
分離層3は、支持体4を介して照射される光を吸収することによって変質する材料から形成されている層である。本明細書において、分離層3が「変質する」とは、分離層3をわずかな外力を受けて破壊され得る状態、または分離層3と接する層との接着力が低下した状態にさせる現象を意味する。光を吸収することによって生じる分離層3の変質の結果として、分離層3は、光の照射を受ける前の強度または接着性を失う。よって、わずかな外力を加える(例えば、支持体4を持ち上げるなど)ことによって、分離層3が破壊されて、支持体4と半導体ウエハ1とを容易に分離することができる。
【0053】
また、分離層3の変質は、吸収した光のエネルギーによる(発熱性または非発熱性の)分解、架橋、立体配置の変化または官能基の解離(そして、これらにともなう分離層の硬化、脱ガス、収縮または膨張)等であり得る。分離層3の変質は、分離層3を構成する材料による光の吸収の結果として生じる。よって、分離層3の変質の種類は、分離層3を構成する材料の種類に応じて変化し得る。
【0054】
分離層3は、支持体4における、接着層2を介して半導体ウエハ1が貼り合わされる側の表面に設けられている。すなわち、分離層3は、表面処理膜14と接着層2との間に設けられている。
【0055】
分離層3の厚さは、例えば、0.05〜50μmであることがより好ましく、0.3〜1μmであることがさらに好ましい。分離層3の厚さが0.05〜50μmの範囲内に収まっていれば、短時間の光の照射および低エネルギーの光の照射によって、分離層3に所望の変質を生じさせることができる。また、分離層3の厚さは、生産性の観点から1μm以下の範囲内に収まっていることが特に好ましい。
【0056】
なお、積層体10において、分離層3と支持体4との間に他の層がさらに形成されていてもよい。この場合、他の層は光を透過する材料から構成されていればよい。これによって、分離層3への光の入射を妨げることなく、積層体10に好ましい性質などを付与する層を、適宜追加することができる。分離層3を構成している材料の種類によって、用い得る光の波長が異なる。よって、他の層を構成する材料は、すべての光を透過させる必要はなく、分離層3を構成する材料を変質させ得る波長の光を透過させることができる材料から適宜選択し得る。
【0057】
また、分離層3は、光を吸収する構造を有する材料のみから形成されていることが好ましいが、本発明における本質的な特性を損なわない範囲において、光を吸収する構造を有していない材料を添加して、分離層3を形成してもよい。また、分離層3における接着層2に対向する側の面が平坦である(凹凸が形成されていない)ことが好ましく、これにより、分離層3の形成が容易に行え、且つ貼り付けにおいても均一に貼り付けることが可能となる。
【0058】
分離層3を構成する材料は、プラズマCVD法により支持体4上に形成することができ、かつ、光を吸収することによって変質するようになっていればよく、特に限定されないが、例えば、後述するフルオロカーボン、無機物、光吸収性を有している構造をその繰り返し単位に含んでいる重合体、赤外線吸収性の構造を有する化合物、赤外線吸収物質等が挙げられる。
【0059】
(フルオロカーボン)
分離層3は、フルオロカーボンからなっていてもよい。分離層3は、フルオロカーボンによって構成されることにより、光を吸収することによって変質するようになっており、その結果として、光の照射を受ける前の強度または接着性を失う。よって、わずかな外力を加える(例えば、支持体4を持ち上げるなど)ことによって、分離層3が破壊されて、支持体4と半導体ウエハ1とを容易に分離することができる。
【0060】
また、本実施形態において、分離層3を構成するフルオロカーボンは、プラズマCVD法によって成膜され得る。なお、フルオロカーボンは、CxFy(パーフルオロカーボン)およびCxHyFz(x、yおよびzは自然数)を含み、これらに限定されないが、例えば、CHF
3、CH
2F
2、C
2H
2F
2、C
4F
8、C
2F
6、C
5F
8等で有り得る。また、分離層3を構成するために用いるフルオロカーボンに対して、必要に応じて窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス、アルカン、アルケンなどの炭化水素、および、酸素、二酸化炭素、水素を添加してもよい。また、これらのガスを複数混合して用いてもよい(フルオロカーボン、水素、窒素の混合ガス等)。また、分離層3は、単一種のフルオロカーボンから構成されていてもよいし、2種類以上のフルオロカーボンから構成されていてもよい。
【0061】
フルオロカーボンは、その種類によって固有の範囲の波長を有する光を吸収する。分離層3に用いたフルオロカーボンが吸収する範囲の波長の光を分離層に照射することにより、フルオロカーボンを好適に変質させ得る。なお、分離層3における光の吸収率は80%以上であることが好ましい。
【0062】
(無機物)
分離層3は、無機物からなっていてもよい。分離層3は、無機物によって構成されることにより、光を吸収することによって変質するようになっており、その結果として、光の照射を受ける前の強度または接着性を失う。よって、わずかな外力を加える(例えば、支持体4を持ち上げるなど)ことによって、分離層3が破壊されて、支持体4と基板1とを容易に分離することができる。
【0063】
上記無機物は、光を吸収することによって変質する構成であればよく、例えば、金属、金属化合物およびカーボンからなる群より選択される1種類以上の無機物を好適に用いることができる。金属化合物とは、金属原子を含む化合物を指し、例えば、金属酸化物、金属窒化物であり得る。このような無機物の例示としては、これに限定されるものではないが、ドープされたシリコン、SiO
2、SiN、Si
3N
4等のシリコン含有化合物が挙げられる。また、その他の例示として、金、銀、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム、チタン、クロム、TiN、およびカーボンからなる群より選ばれる1種類以上の無機物が挙げられる。なお、カーボンとは炭素の同素体も含まれ得る概念であり、例えば、ダイヤモンド、フラーレン、ダイヤモンドライクカーボン、カーボンナノチューブ等であり得る。
【0064】
上記無機物は、その種類によって固有の範囲の波長を有する光を吸収する。分離層3に用いた無機物が吸収する範囲の波長の光を分離層に照射することにより、上記無機物を好適に変質させ得る。
【0065】
なお、分離層3として金属膜を使用する場合には、分離層3の膜質、レーザ光源の種類、レーザ出力等の条件によっては、レーザの反射や膜への帯電等が起こり得る。そのため、反射防止膜や帯電防止膜を分離層3の上下またはどちらか一方に設けることで、それらの対策を図ることが好ましい。
【0066】
(赤外線吸収物質)
分離層3は、赤外線吸収物質を含有していてもよい。分離層3は、赤外線吸収物質を含有して構成されることにより、光を吸収することによって変質するようになっており、その結果として、光の照射を受ける前の強度または接着性を失う。よって、わずかな外力を加える(例えば、支持体4を持ち上げるなど)ことによって、分離層3が破壊されて、支持体4と基板1とを容易に分離することができる。
【0067】
赤外線吸収物質は、赤外線を吸収することによって変質する構成であればよく、例えば、カーボンブラック、鉄粒子、またはアルミニウム粒子を好適に用いることができる。赤外線吸収物質は、その種類によって固有の範囲の波長を有する光を吸収する。分離層3に用いた赤外線吸収物質が吸収する範囲の波長の光を分離層3に照射することにより、赤外線吸収物質を好適に変質させ得る。
【0068】
(光吸収性を有している構造をその繰り返し単位に含んでいる重合体)
分離層3は、光吸収性を有している構造をその繰り返し単位に含んでいる重合体を含有していてもよい。該重合体は、光の照射を受けて変質する。該重合体の変質は、上記構造が照射された光を吸収することによって生じる。分離層3は、重合体の変質の結果として、光の照射を受ける前の強度または接着性を失っている。よって、わずかな外力を加える(例えば、支持体4を持ち上げるなど)ことによって、分離層3が破壊されて、支持体4と基板1とを容易に分離することができる。
【0069】
光吸収性を有している上記構造は、光を吸収して、繰り返し単位として該構造を含んでいる重合体を変質させる化学構造である。該構造は、例えば、置換もしくは非置換のベンゼン環、縮合環または複素環からなる共役π電子系を含んでいる原子団である。より詳細には、該構造は、カルド構造、または上記重合体の側鎖に存在するベンゾフェノン構造、ジフェニルスルフォキシド構造、ジフェニルスルホン構造(ビスフェニルスルホン構造)、ジフェニル構造もしくはジフェニルアミン構造であり得る。
【0070】
上記構造が上記重合体の側鎖に存在する場合、該構造は以下の式によって表され得る。
【0072】
(式中、R
30はそれぞれ独立して、アルキル基、アリール基、ハロゲン、水酸基、ケトン基、スルホキシド基、スルホン基またはN(R
31)(R
32)であり(ここで、R
31およびR
32はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基である)、Zは、存在しないか、または−CO−、−SO
2−、−SO−もしくは−NH−であり、kは0または1〜5の整数である。)
また、上記重合体は、例えば、以下の式のうち、(a)〜(d)の何れかによって表される繰り返し単位を含んでいるか、(e)によって表されるか、または(f)の構造をその主鎖に含んでいる。
【0074】
(式中、lは1以上の整数であり、mは0または1〜2の整数であり、Xは、(a)〜(e)において上記の“化2”に示した式の何れかであり、(f)において上記の“化2”に示した式の何れかであるか、または存在せず、Y1およびY2はそれぞれ独立して、−CO−またはSO
2−である。lは好ましくは10以下の整数である。)
上記の“化2”に示されるベンゼン環、縮合環および複素環の例としては、フェニル、置換フェニル、ベンジル、置換ベンジル、ナフタレン、置換ナフタレン、アントラセン、置換アントラセン、アントラキノン、置換アントラキノン、アクリジン、置換アクリジン、アゾベンゼン、置換アゾベンゼン、フルオリム、置換フルオリム、フルオリモン、置換フルオリモン、カルバゾール、置換カルバゾール、N−アルキルカルバゾール、ジベンゾフラン、置換ジベンゾフラン、フェナンスレン、置換フェナンスレン、ピレンおよび置換ピレンが挙げられる。例示した置換基が置換を有している場合、その置換基は、例えば、アルキル、アリール、ハロゲン原子、アルコキシ、ニトロ、アルデヒド、シアノ、アミド、ジアルキルアミノ、スルホンアミド、イミド、カルボン酸、カルボン酸エステル、スルホン酸、スルホン酸エステル、アルキルアミノおよびアリールアミノから選択される。
【0075】
上記の“化2”に示される置換基のうち、フェニル基を2つ有している5番目の置換基であって、Zが−SO
2−である場合の例としては、ビス(2,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,6‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4‐ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3‐ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(2‐ヒドロキシフェニル)スルホン、およびビス(3,5‐ジメチル‐4‐ヒドロキシフェニル)スルホンなどが挙げられる。
【0076】
上記の“化2”に示される置換基のうち、フェニル基を2つ有している5番目の置換基であって、Zが−SO−である場合の例としては、ビス(2,3‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,3‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,4‐ジヒドロキシ‐6‐メチルフェニル)スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,5‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3,5‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,3,4‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,3,4‐トリヒドロキシ‐6‐メチルフェニル)‐スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,3,4‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,4,6‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,4,6‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシドなどが挙げられる。
【0077】
上記の“化2”に示される置換基のうち、フェニル基を2つ有している5番目の置換基であって、Zが−C(=O)−である場合の例としては、2,4‐ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4‐トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’‐テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,5,6’‐テトラヒドロキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐メトキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐オクトキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’‐ジヒドロキシ‐4‐メトキシベンゾフェノン、2,6‐ジヒドロキシ‐4‐メトキシベンゾフェノン、2,2’‐ジヒドロキシ‐4,4’‐ジメトキシベンゾフェノン、4‐アミノ‐2’‐ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ジメチルアミノ‐2’‐ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ジエチルアミノ‐2’‐ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ジメチルアミノ‐4’‐メトキシ‐2’‐ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ジメチルアミノ‐2’,4’‐ジヒドロキシベンゾフェノン、および4‐ジメチルアミノ‐3’,4’‐ジヒドロキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0078】
上記構造が上記重合体の側鎖に存在している場合、上記構造を含んでいる繰り返し単位の、上記重合体に占める割合は、分離層3の光の透過率が0.001〜10%になる範囲にある。該割合がこのような範囲に収まるように重合体が調製されていれば、分離層3が十分に光を吸収して、確実かつ迅速に変質し得る。すなわち、積層体10からの支持体4の除去が容易であり、該除去に必要な光の照射時間を短縮させることができる。
【0079】
上記構造は、その種類の選択によって、所望の範囲の波長を有している光を吸収することができる。例えば、上記構造が吸収可能な光の波長は、100〜2000nmであることがより好ましい。この範囲のうち、上記構造が吸収可能な光の波長は、より短波長側であり、例えば、100〜500nmである。例えば、上記構造は、好ましくは約300〜370nmの波長を有している紫外光を吸収することによって、該構造を含んでいる重合体を変質させ得る。
【0080】
上記構造が吸収可能な光は、例えば、高圧水銀ランプ(波長:254nm〜436nm)、KrFエキシマレーザ(波長:248nm)、ArFエキシマレーザ(波長:193nm)、F2エキシマレーザ(波長:157nm)、XeClレーザ(308nm)、XeFレーザ(波長:351nm)もしくは固体UVレーザ(波長:355nm)から発せられる光、またはg線(波長:436nm)、h線(波長:405nm)もしくはi線(波長:365nm)などである。
【0081】
上述した分離層3は、繰り返し単位として上記構造を含んでいる重合体を含有しているが、分離層3はさらに、上記重合体以外の成分を含み得る。該成分としては、フィラー、可塑剤、および支持体4の剥離性を向上し得る成分などが挙げられる。これらの成分は、上記構造による光の吸収、および重合体の変質を妨げないか、または促進する、従来公知の物質または材料から適宜選択される。
【0082】
(赤外線吸収性の構造を有する化合物)
分離層3は、赤外線吸収性の構造を有する化合物によって形成されていてもよい。該化合物は、赤外線を吸収することにより変質する。分離層3は、化合物の変質の結果として、赤外線の照射を受ける前の強度または接着性を失っている。よって、わずかな外力を加える(例えば、支持体を持ち上げるなど)ことによって、分離層3が破壊されて、支持体4と基板1とを容易に分離することができる。
【0083】
赤外線吸収性を有している構造または赤外線吸収性を有している構造を含む化合物としては、例えば、アルカン、アルケン(ビニル、トランス、シス、ビニリデン、三置換、四置換、共役、クムレン、環式)、アルキン(一置換、二置換)、単環式芳香族(ベンゼン、一置換、二置換、三置換)、アルコールおよびフェノール類(自由OH、分子内水素結合、分子間水素結合、飽和第二級、飽和第三級、不飽和第二級、不飽和第三級)、アセタール、ケタール、脂肪族エーテル、芳香族エーテル、ビニルエーテル、オキシラン環エーテル、過酸化物エーテル、ケトン、ジアルキルカルボニル、芳香族カルボニル、1,3−ジケトンのエノール、o−ヒドロキシアリールケトン、ジアルキルアルデヒド、芳香族アルデヒド、カルボン酸(二量体、カルボン酸アニオン)、ギ酸エステル、酢酸エステル、共役エステル、非共役エステル、芳香族エステル、ラクトン(β−、γ−、δ−)、脂肪族酸塩化物、芳香族酸塩化物、酸無水物(共役、非共役、環式、非環式)、第一級アミド、第二級アミド、ラクタム、第一級アミン(脂肪族、芳香族)、第二級アミン(脂肪族、芳香族)、第三級アミン(脂肪族、芳香族)、第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩、アンモニウムイオン、脂肪族ニトリル、芳香族ニトリル、カルボジイミド、脂肪族イソニトリル、芳香族イソニトリル、イソシアン酸エステル、チオシアン酸エステル、脂肪族イソチオシアン酸エステル、芳香族イソチオシアン酸エステル、脂肪族ニトロ化合物、芳香族ニトロ化合物、ニトロアミン、ニトロソアミン、硝酸エステル、亜硝酸エステル、ニトロソ結合(脂肪族、芳香族、単量体、二量体)、メルカプタンおよびチオフェノールおよびチオール酸などの硫黄化合物、チオカルボニル基、スルホキシド、スルホン、塩化スルホニル、第一級スルホンアミド、第二級スルホンアミド、硫酸エステル、炭素−ハロゲン結合、Si−A
1結合(A
1は、H、C、Oまたはハロゲン)、P−A
2結合(A
2は、H、CまたはO)、またはTi−O結合であり得る。
【0084】
上記炭素−ハロゲン結合を含む構造としては、例えば、−CH
2Cl、−CH
2Br、−CH
2I、−CF
2−、−CF
3、−CH=CF
2、−CF=CF
2、フッ化アリール、および塩化アリールなどが挙げられる。
【0085】
上記Si−A1結合を含む構造としては、SiH、SiH
2、SiH
3、Si−CH
3、Si−CH
2−、Si−C
6H
5、SiO−脂肪族、Si−OCH
3、Si−OCH
2CH
3、Si−OC
6H
5、Si−O−Si、Si−OH、SiF、SiF
2、およびSiF
3などが挙げられる。Si−A
1結合を含む構造としては、特に、シロキサン骨格およびシルセスキオキサン骨格を形成していることが好ましい。
【0086】
上記P−A
2結合を含む構造としては、PH、PH
2、P−CH
3、P−CH
2−、P−C
6H
5、A
33−P−O(A
3は脂肪族または芳香族)、(A
4O)3−P−O(A
4はアルキル)、P−OCH
3、P−OCH
2CH
3、P−OC
6H
5、P−O−P、P−OH、およびO=P−OHなどが挙げられる。
【0087】
上記構造は、その種類の選択によって、所望の範囲の波長を有している赤外線を吸収することができる。具体的には、上記構造が吸収可能な赤外線の波長は、例えば1μm〜20μmの範囲内であり、2μm〜15μmの範囲内をより好適に吸収できる。さらに、上記構造がSi−O結合、Si−C結合およびTi−O結合である場合には、9μm〜11μmの範囲内であり得る。なお、各構造が吸収できる赤外線の波長は当業者であれば容易に理解することができる。例えば、各構造における吸収帯として、非特許文献:SILVERSTEIN・BASSLER・MORRILL著「有機化合物のスペクトルによる同定法(第5版)−MS、IR、NMR、UVの併用−」(1992年発行)第146頁〜第151頁の記載を参照することができる。
【0088】
分離層3の形成に用いられる、赤外線吸収性の構造を有する化合物としては、上述のような構造を有している化合物のうち、塗布のために溶媒に溶解でき、固化されて固層を形成できるものであれば、特に限定されるものではない。しかしながら、分離層3における化合物を効果的に変質させ、支持体4と基板1との分離を容易にするには、分離層3における赤外線の吸収が大きいこと、すなわち、分離層3に赤外線を照射した際の赤外線の透過率が低いことが好ましい。具体的には、分離層3における赤外線の透過率が90%より低いことが好ましく、赤外線の透過率が80%より低いことがより好ましい。
【0089】
一例を挙げて説明すれば、シロキサン骨格を有する化合物としては、例えば、下記化学式(3)で表される繰り返し単位および下記化学式(4)で表される繰り返し単位の共重合体である樹脂、あるいは下記化学式(3)で表される繰り返し単位およびアクリル系化合物由来の繰り返し単位の共重合体である樹脂を用いることができる。
【0091】
(化学式(4)中、R
41は、水素、炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下のアルコキシ基である)
中でも、シロキサン骨格を有する化合物としては、上記化学式(3)で表される繰り返し単位および下記化学式(5)で表される繰り返し単位の共重合体であるt−ブチルスチレン(TBST)−ジメチルシロキサン共重合体がより好ましく、上記式(3)で表される繰り返し単位および下記化学式(5)で表される繰り返し単位を1:1で含む、TBST−ジメチルシロキサン共重合体がさらに好ましい。
【0093】
また、シルセスキオキサン骨格を有する化合物としては、例えば、下記化学式(6)で表される繰り返し単位および下記化学式(7)で表される繰り返し単位の共重合体である樹脂を用いることができる。
【0095】
(化学式(6)中、R
42は、水素または炭素数1以上、10以下のアルキル基であり、化学式(7)中、R
43は、炭素数1以上、10以下のアルキル基、またはフェニル基である)
シルセスキオキサン骨格を有する化合物としては、このほかにも、特開2007−258663号公報(2007年10月4日公開)、特開2010−120901号公報(2010年6月3日公開)、特開2009−263316号公報(2009年11月12日公開)および特開2009−263596号公報(2009年11月12日公開)において開示されている各シルセスキオキサン樹脂を好適に利用できる。
【0096】
中でも、シルセスキオキサン骨格を有する化合物としては、下記化学式(8)で表される繰り返し単位および下記化学式(9)で表される繰り返し単位の共重合体がより好ましく、下記化学式(8)で表される繰り返し単位および下記化学式(9)で表される繰り返し単位を7:3で含む共重合体がさらに好ましい。
【0098】
シルセスキオキサン骨格を有する重合体としては、ランダム構造、ラダー構造、および籠型構造があり得るが、何れの構造であってもよい。
【0099】
また、Ti−O結合を含む化合物としては、例えば、(i)テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、およびチタニウム−i−プロポキシオクチレングリコレートなどのアルコキシチタン;(ii)ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、およびプロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート)などのキレートチタン;(iii)i−C
3H
7O−[−Ti(O−i−C
3H
7)
2−O−]n−i−C
3H
7、およびn−C
4H
9O−[−Ti(O−n−C
4H
9)
2−O−]n−n−C
4H
9などのチタンポリマー;(iv)トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、チタニウムステアレート、ジ−i−プロポキシチタンジイソステアレート、および(2−n−ブトキシカルボニルベンゾイルオキシ)トリブトキシチタンなどのアシレートチタン;(v)ジ−n−ブトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタンなどの水溶性チタン化合物などが挙げられる。
【0100】
中でも、Ti−O結合を含む化合物としては、ジ−n−ブトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタン(Ti(OC
4H
9)2[OC
2H
4N(C
2H
4OH)
2]
2)が好ましい。
【0101】
上述した分離層3は、赤外線吸収性の構造を有する化合物を含有しているが、分離層3はさらに、上記化合物以外の成分を含み得る。該成分としては、フィラー、可塑剤、および支持体4の剥離性を向上し得る成分などが挙げられる。これらの成分は、上記構造による赤外線の吸収、および化合物の変質を妨げないか、または促進する、従来公知の物質または材料から適宜選択される。
【0102】
(プラズマ処理装置)
図2は、分離層形成工程において用いる本実施形態に係るプラズマ処理装置100の一構成例を示す断面図である。
図2に示すように、プラズマ処理装置100は、ベース101の上に排気リング104、排気リング104上にチャンバー胴部105、チャンバー胴部105上にチャンバー上部106、チャンバー上部106上に天板108が重ねられ、排気リング104下方の開口をステージ103が塞いだ構造を有しており、内部にチャンバー102を構成している。
【0103】
排気リング104、チャンバー胴部105およびチャンバー上部106は、一実施形態において、石英によって構成されている。一方、天板108およびステージ103は、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属から構成されている。
【0104】
チャンバー102の上部は、ドーム形状(伏鉢形状)を有するドーム部112となっており、その下が円筒形状を有する円筒部113となっているベルジャー型の形状を有している。ドーム部112は、チャンバー上部106の上部によって構成され、円筒部113は、チャンバー上部106の下部と、チャンバー胴部105とによって構成されている。
【0105】
排気リング104には、排気孔109が設けられており、チャンバー102内から排ガスを排出する。
【0106】
また、天板108は、ドーム部112の頂上に設けられた開口部を塞ぐように配置されている。天板108には、供給口110が設けられており、チャンバー102内に反応ガスを供給する。天板108は、また、接地されている。
【0107】
ステージ103は、被処理物である支持体4を載置するステージであるとともに、下部電極として働く。ステージ103は接地されている。ドーム部112の外周には、キャップ型コイル107が配置されており、チャンバー102内におけるキャップ型コイル107によって囲まれた部分(プラズマ発生部104、図中、直線Aよりも上方の部分)においてプラズマを発生させる。
【0108】
そして、チャンバー102内に、供給口110から分離層3を形成する材料となる反応ガスを導入するとともに、キャップ型107とステージ103との間に高周波電圧を印加することにより、プラズマを生じさせ、プラズマと共に生じるラジカルによって分離層3が形成される。
【0109】
反応ガスは、形成する分離層3に応じて適宜選択すればよい。例えば、一実施形態において、分離層3としてフルオロカーボンの膜を形成する場合には、フッ化炭素ガスおよび炭化水素ガスの少なくとも何れかを含有するガスを用いることができる。フッ化炭素ガスおよび炭化水素ガスの少なくとも何れかを反応ガスとしてプラズマCVD法を実行することにより、分離層3を好適に形成することができる。
【0110】
フッ化炭素ガスの例示としては、CxFyおよびCxHyFzが挙げられ(x、yおよびzは自然数)、より詳細には、CHF
3、CH
2F
2、C
2H
2F
2、C
4F
8、C
2F
6、C
5F
8等が例示されるが、これらに限定されない。また、炭化水素ガスの例示としては、CH
4等のアルカン類、エチレン等のアルケン類、及びアセチレン等のアルキン類が挙げられる。
【0111】
また、反応ガスに、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス、アルカン、アルケン、アルキンなどの炭化水素ガス、フッ化炭素ガス、水素、酸素等の添加ガスを1種類以上添加してもよい。添加ガスの添加量は特に限定されないが、例えば、水素を添加する場合には、これに限定されるものではないが、ガス全体に対して5%以上、20%以下の割合で添加することが好ましい。また、酸素は、これに限定されるものではないが、極めて微量を添加するか、または添加しないことが好ましい。
【0112】
なお、反応ガスは、フッ化炭素ガスを主成分としてもよく、この場合、添加ガスとして炭化水素ガスを含有させてもよい。原料ガス全体に対する添加ガスの含有量は、例えば、5%以上、20%以下とすることが好ましい。また逆に、反応ガスが、炭化水素ガスを主成分としている場合は、添加ガスとしてフッ化炭素ガスを含有させることが好ましい。なお、主成分とは、チャンバー102に供給するガス中において最も含有量(体積%)が多いガスを意味する。また、不活性ガスを適量添加することにより、反応ガスを好適に攪拌して、分離層3を均一に成膜することもできる。
【0113】
また、分離層3を構成する材料が、反応ガスとして供給することが困難な物質を含む場合には、当該物質を含む前駆体溶液を、支持体4上に予め塗布しておいてもよい。
【0114】
反応ガスの流量およびチャンバー102内の圧力は、特に限定されず、種々の条件に設定すればよい。なお、反応ガスは、供給口110から供給されるとともに、排気孔109からポンプ等によって排気されることが好ましい。
【0115】
プラズマCVD法実行時のチャンバー102内の目標温度は、特に限定されず、公知の温度を用いることができるが、100℃以上、300℃以下の範囲であることがより好ましく、200℃以上、250℃以下の範囲であることが特に好ましい。チャンバー102内の温度を、このような範囲に設定することにより、プラズマCVD法を好適に実行することができる。
【0116】
また、キャップ型コイル107に印加する高周波電力は、これに限定するものではないが、モードジャンプを起こす電力よりも大きくなるように設定することが好ましい。容量結合主体のプラズマ(Eモードプラズマ)は、一般にプラズマ密度が低い場合に発生し、誘導結合主体のプラズマ(Hモードプラズマ)は、一般にプラズマ密度が高い場合に発生する。EモードからHモードへの遷移は誘電電界に依存し、誘電電界がある値以上になると容量結合から誘導結合へ切り替る。この現象は一般に「モードジャンプ」または「密度ジャンプ」と呼ばれている。すなわち、モードジャンプを起こす電力以下で生じているプラズマがEモードプラズマであり、モードジャンプを起こす電力より大きい電力で生じているプラズマがHモードプラズマである(例えば、特許3852655号、特許4272654号等を参照のこと)。これにより、高品質な分離層3を形成することができる。
【0117】
ここで、本実施形態に係るプラズマ処理装置100は、下記(A)〜(D)の特徴的構成を備えている。他の実施形態において、本発明に係るプラズマ処理装置は、(A)〜(D)の何れか一つの構成を有していればよいが、複数の特徴的構成を備えていることがより好ましく、全ての特徴的構成を備えていることが特に好ましい。
【0118】
(A:ダウンフロー領域)
図2に示すように、プラズマ処理装置100のチャンバー102には、プラズマ発生部114と、ステージ103との間に、ダウンフロー領域111が設けられている。ダウンフロー領域111とは、プラズマ発生部114において生じたラジカルが再結合する領域である。本実施形態では、プラズマ発生部114において生じたラジカルがダウンフロー領域111において再結合した後に、支持体4上に堆積するため、良好な分離層3を形成することができる。
【0119】
ここで、従来のプラズマCVD装置では、成膜速度を向上させるため、プラズマ発生部114と、ステージ103との間の距離を短くしている。そして、カソードバイアスを掛けることによって、不要な堆積物を排除している。しかしながら、本発明者らの独自の知見によれば、このようなプラズマCVD装置を用いた場合には、光吸収性が高い良好な分離層3を形成することが困難である。例えば、C
4F
8を反応ガスとして用いた場合、プラズマ発生部114においてCF
2が生成し、これがそのまま堆積すると、透明の分離層3が形成されてしまう。
【0120】
一方、本実施形態に係るプラズマ処理装置100では、プラズマ発生部114において発生したラジカルが再結合した後に、支持体4上に堆積するため、良好な分離層3を形成することができる。特に、プラズマ発生部114において発生した炭素ラジカルが再結合したものは、二重結合を有しているため、光吸収性が高く、良好な分離層3の形成に寄与する。この場合、好適な例において、分離層3は、両端がフッ素リッチであり、中央部が炭素リッチである粒子が堆積されてなる。
【0121】
ダウンフロー領域111の高さ、すなわち、プラズマ発生部114の下端(キャップ型コイル107の下端)から、ステージ103の上面までの距離は、特に限定されず、上述した炭素ラジカル等が好適に再結合し得る距離に設定すればよい。一実施形態において、ダウンフロー領域111の高さは、10cm以上、20cm以下、より好ましくは、10cm以上、15cm以下とすることができる。
【0122】
(B:天板)
上述したように、本実施形態に係る天板108は、金属、特にアルミニウム(アルミニウム合金を含む)から構成されており、隣接するチャンバー上部106等を構成する石英とは異なる材質から構成されている。
【0123】
従来技術に係るプラズマ処理装置では、このような構成は避けられる。なぜなら、金属と石英とをつなぐためにOリング等のパッキンが必要となるため、当該パッキンに起因する汚染が生じ得るからである。
【0124】
しかしながら、本実施形態では、天板108を、あえて、金属、特にアルミニウム(アルミニウム合金を含む)から構成することによって、より低い電力で、モードジャンプを起こし、誘導結合性プラズマを発生させることができる。
【0125】
上述したように、容量結合性プラズマと、誘導結合性プラズマとの二種類のプラズマが存在し、誘導結合性プラズマを用いることによって、より高品質な分離層3を形成することができる。特に、本発明者らの独自の知見によれば、誘導結合性プラズマを用いた場合に、炭素ラジカルの発生量を増大させ得る。そのため、誘導結合性プラズマを発生させることにより、炭素ラジカルが再結合してなる光吸収性が高い粒子を好適に堆積させることができる。
【0126】
特に天板108を接地することにより、モードジャンプに必要な電力をより低減することができる。これにより、電力供給設備や、消費電力等のコストを低減することができる。
【0127】
また、本実施形態では、天板108に供給口110を設けていることにより、プラズマ発生部114の上方から反応ガスを供給することができ、ダウンフロー領域111へのラジカルの流れが好適に生まれ、良好な分離層3を形成することができる。
【0128】
(C:キャップ型コイル)
図2に示すように、本実施形態に係るプラズマ処理装置100では、キャップ型コイル107が、ドーム部112の外周に設けられている。すなわち、キャップ型コイル107は、徐々に直径が大きくなるように構成されている。これにより、高周波電力を供給した際のキャップ型コイル107における抵抗成分を低減することができる。別の観点から言えば、抵抗成分を大きくすることなく、キャップ型コイル107の巻き数を多くすることができる。
【0129】
図3は、プラズマ処理装置100を上方から観察した図である。
図3に示すように、キャップ型コイル107は、二重のコイル(キャップ型コイル107aおよび107b)によって構成されている。これにより、平面上におけるプラズマの均一性を向上させることができる。また、両コイルは互いの端部(BとD、CとE)が重ならないように配置されており、特に、互いの端部(BとD、CとE)が、線対称の位置に配置されていることが好ましい。これにより、平面上におけるプラズマの均一性をさらに向上させることができる。
【0130】
(D:サイズ)
本実施形態に係るプラズマ処理装置100では、被処理物である支持体4の外周と、チャンバー102の内壁とが接近し、チャンバー102の容量が小さくなるように構成されている。
【0131】
従来技術に係るプラズマ処理装置では、通常、被処理物に対し、チャンバーを大きく構成する。なぜなら、チャンバーの縁部におけるプラズマは粗密のバラツキが大きくなることが多く、均質な分離層を形成することが困難であるためである。
【0132】
しかしながら、本発明者らの知見によれば、被処理物である支持体4の外周と、チャンバー102の内壁とが接近し、チャンバー102の容量が小さくなるように構成することにより、反応ガスのロスが少なくなり、成膜速度を向上させることができる。
【0133】
(変形例)
なお、
図2は、分離層形成工程において用いるプラズマ処理装置の一構成例を示しているだけであり、本発明はこれに限定されない。すなわち、十分なダウンフロー領域を確保し得る構造であれば、例えば、
図3に示すような構造のプラズマ処理装置を用いてもよいし、その他の構造のプラズマ処理装置を用いてもよい。
【0134】
例えば、チャンバー102の側壁を、チャンバー胴部105およびチャンバー上部106の二つの部材で構成する必要はなく、一つの部材または三つ以上の部材で構成してもよい。
【0135】
また、チャンパー102の外側の形状は、特に限定されず、チャンバー102内壁に適宜凹凸が設けられていてもよい。
【0136】
また、排気孔109の位置も特に限定されない。
【0137】
〔3:貼り合わせ工程〕
本実施形態に係る貼り合わせ工程では、
図1の(3)に示すように、半導体ウエハ1と支持体4との間に分離層3を備えるように接着層2を介して積層する。
【0138】
具体的な方法としては、半導体ウエハ1上の接着層2が形成された面と支持体4の分離層3が形成された面とを貼り合わせ、真空下でベークし圧着することで積層する工程が挙げられる。
【0139】
これにより、本実施形態に係る積層体10が得られる。積層体10は、支持体4を必要とする所望のプロセス(例えば、ウエハ薄化工程や、裏面配線工程等)を経た後、支持体4を半導体ウエハ1から分離するために、以下の工程に供される。
【0140】
〔4:照射工程〕
本実施形態に係る照射工程では、
図1の(4)に示すように、分離層3に対して支持体4側からレーザ8を照射して分離層3を変質させる。
【0141】
分離層3に照射するレーザ8としては、分離層3が吸収可能な波長に応じて、例えば、YAGレーザ、リビーレーザ、ガラスレーザ、YVO
4レーザ、LDレーザー、ファイバーレーザー等の固体レーザ、色素レーザ等の液体レーザ、CO
2レーザ、エキシマレーザ、Arレーザ、He−Neレーザ等の気体レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザ等のレーザ光であり得る。また、レーザ8の代わりに、非レーザ光を適宜用いればよい。分離層3に吸収されるべき光の波長としては、これに限定されるものではないが、例えば、600nm以下の波長の光であり得る。また、別の観点から言えば、分離層3における光の吸収率が80%以上である光を用いることが好ましい。
【0142】
なお、レーザ8の照射方向は、分離層3の面に対して垂直な方向から照射してもよく、斜めに照射してもよい。また、レーザ8の照射は、分離層3のほぼ全面に対して一斉に照射してもよいが、分離層3の面内を走査するように照射してもよい。
【0143】
なお、レーザ8を支持体4側から照射するのは、レーザ8が基板1の構造物に影響を与えることを避けるためである。レーザ8を支持体4側から照射することにより、レーザ8が分離層3に吸収され、レーザ8が基板1に到達することを避けることができる。
【0144】
そして、上述したように、分離層3は、光が照射されることによって変質するようになっている。それゆえ、レーザの照射が完了すると、分離層3は変質した状態となる。
【0145】
〔5:分離工程〕
本実施形態に係る分離工程では、
図1の(5)に示すように、基板1から支持体4を分離する。光の照射によって変質した分離層3は、その強度が著しく低下している。したがって、例えば、わずかな外力を加えて支持体4を引き上げることによって、分離層3が容易に破壊されて、支持体4を基板1から分離することができる。
【0146】
なお、
図1の(5)では、分離が分離層3と接着剤2との界面で起きるように描かれているが、分離の位置はこれに限定されず、分離が支持体4と分離層3との界面または分離層3中で起きることもあり得る。
【0147】
〔6:洗浄工程〕
本実施形態に係る洗浄工程では、
図1の(6)に示すように、支持体4が分離された基板1上に残った接着層2を除去する。接着層2の除去は、例えば、接着層2に、接着層2を溶解させる溶剤を噴霧することにより行うことができる。これにより、接着層2が除去された基板1を得ることができる。
【0148】
ここで、支持体4の分離後、基板1上に分離層3の残りが付着している場合がある。少量の分離層3が付着しているだけであれば、上述のように接着層2を溶解させる溶剤を噴霧することにより、接着層2とともに除去することができる。また、分離層3を溶解させる溶剤をまず噴霧し、その後に、接着層2を溶解させる溶剤を噴霧するようにしてもよい。
【0149】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0150】
〔実施例1〕
プラズマ発生部からガラス基板(支持体)までの距離が異なる複数のプラズマ処理装置を準備し、各プラズマ処理装置を用いて分離膜を形成した結果を比較した。
【0151】
プラズマ処理装置としては、プラズマ発生部からガラス基板(支持体)までの距離(ダウンフロー領域の高さ)が、20mm、80mm、120mmおよび200mmのものを用意した。各プラズマ処理装置のチャンバー内に、12インチガラス基板(厚さ700μm)を設置し、流量400sccm、圧力700mTorr、高周波電力2800Wおよび成膜温度240℃の条件下において、反応ガスとしてC
4F
8を使用したプラズマCVD法により、分離層であるフルオロカーボン膜を当該ガラス基板上に形成した。なお、各々のプラズマ処理装置において形成された分離層の膜厚は、
図5に示す。
【0152】
続いて、分離層が形成されたガラス基板の各々について漏れ光量を測定した。具体的には、波長532nmのレーザを、ガラス基板の分離層が形成されていない側から入射させ、透過した光の量(漏れ光量)を測定した。そして、分離層の膜厚当たりの遮蔽効率を算出した。結果を
図5に示す。
【0153】
図5に示すように、プラズマ発生部からガラス基板(支持体)までの距離(ダウンフロー領域の高さ)が10cm以上、20cm以下の範囲において、高い遮蔽効率が示された。
【0154】
〔実施例2〕
全体を石英で作製したプラズマ処理装置と、天板をアルミニウムで作製するとともに接地させたプラズマ処理装置とで、モードジャンプを起こす電力がどのように変化するのかを検証した。結果、全体を石英で作製したプラズマ処理装置では、モードジャンプを起こす電力は、2700〜2800Wであったのに対し、天板をアルミニウムで作製するとともに接地させたプラズマ処理装置では、モードジャンプを起こす電力は、2300〜2400Wであり、モードジャンプを起こす電力を著しく低減することができた。