(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6077822
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】ターゲット供給装置、および、ターゲット供給方法
(51)【国際特許分類】
H05G 2/00 20060101AFI20170130BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20170130BHJP
G21K 5/08 20060101ALN20170130BHJP
【FI】
H05G2/00 K
H01L21/30 531S
!G21K5/08 X
【請求項の数】4
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2012-232890(P2012-232890)
(22)【出願日】2012年10月22日
(65)【公開番号】特開2013-179029(P2013-179029A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2015年9月10日
(31)【優先権主張番号】特願2012-27609(P2012-27609)
(32)【優先日】2012年2月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】薮 隆之
(72)【発明者】
【氏名】若林 理
【審査官】
遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−532228(JP,A)
【文献】
特表2008−532293(JP,A)
【文献】
特開2008−193014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05G 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットにレーザ光を照射して極端紫外光を生成する極端紫外光装置で用いられるターゲット供給装置であって、
タンクと、
貫通孔を備えたノズルであって、当該貫通孔と前記タンク内部とが連通するように設置されたノズルと、
前記タンクの壁に沿って設置された少なくともヒータと、
前記タンクの内部においてタンクの内壁から離れた位置に設けられた弱加熱部と、
前記少なくともヒータの温度が、前記弱加熱部の温度よりも高くなるように、前記少なくともヒータと弱加熱部とを制御するように構成された制御部と、
を含むターゲット供給装置。
【請求項2】
ターゲットにレーザ光を照射して極端紫外光を生成する極端紫外光装置で用いられるターゲット供給方法であって、
前記請求項1記載のターゲット供給装置、を用い、
前記ヒータの温度が、前記弱加熱部の温度より高い状態を維持するよう前記ヒータおよび前記弱加熱部を制御してターゲット物質を溶融するステップと、
前記ヒータの温度が、前記弱加熱部の温度より高い状態を維持するよう前記ヒータおよび前記弱加熱部を制御してターゲット物質の温度を所定温度範囲に保持するステップと、
前記ヒータの温度が、前記弱加熱部の温度より高い状態を維持するよう前記ヒータおよび前記弱加熱部を制御してターゲット物質を固化するステップと、
のいずれかを含むターゲット供給方法。
【請求項3】
前記タンクに温度センサをさらに備え、
前記制御部は、前記温度センサからの信号に基づいて、前記ヒータおよび前記弱加熱部を制御する、
前記請求項1記載のターゲット供給装置。
【請求項4】
ターゲットにレーザ光を照射して極端紫外光を生成する極端紫外光装置で用いられるターゲット供給方法であって、
前記請求項3記載のターゲット供給装置、を用い、
前記温度センサからの信号に基づいて、前記ヒータの温度が、前記弱加熱部の温度より高い状態を維持するよう前記ヒータおよび前記弱加熱部を制御してターゲット物質を溶融するステップと、
前記温度センサからの信号に基づいて、前記ヒータの温度が、前記弱加熱部の温度より高い状態を維持するよう前記ヒータおよび前記弱加熱部を制御してターゲット物質の温度を所定温度範囲に保持するステップと、
前記温度センサからの信号に基づいて、前記ヒータの温度が、前記弱加熱部の温度より高い状態を維持するよう前記ヒータおよび前記弱加熱部を制御してターゲット物質を固化するステップと、
のいずれかを含むターゲット供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ターゲット供給装置、および、ターゲット供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、70nm〜45nmの微細加工、さらには32nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、例えば32nm以下の微細加工の要求に応えるべく、波長13nm程度のEUV光を生成するための装置と縮小投影反射光学系とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲット物質にレーザ光を照射することによって生成されるプラズマを用いたLPP(Laser Produced Plasma)方式の装置と、放電によって生成されるプラズマを用いたDPP(Discharge Produced Plasma)方式の装置と、軌道放射光を用いたSR(Synchrotron Radiation)方式の装置との3種類の装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7405416号明細書
【0005】
本開示の一態様によるターゲット供給装置は、タンクと、貫通孔を備えたノズルであって、当該貫通孔とタンク内部とが連通するように設置されたノズルと、タンクの壁に沿って設置された少なくとも第1ヒータと、タンクの壁に沿って第1ヒータよりもノズルから遠い位置に設置された少なくとも第2ヒータと、第1ヒータの温度が、第2ヒータの温度よりも高くなるように、第1ヒータおよび第2ヒータを制御するように構成された制御部と、を含んでもよい。
【0006】
本開示の他の態様によるターゲット供給装置は、タンクと、貫通孔を備えたノズルであって、当該貫通孔とタンク内部とが連通するように設置されたノズルと、タンクの壁に沿って設置された少なくともヒータと、タンクの内部においてタンクの内壁から離れた位置に設けられた弱加熱部と、少なくともヒータの温度が、弱加熱部の温度よりも高くなるように、少なくともヒータと弱加熱部とを制御するように構成された制御部と、を含んでもよい。本明細書において「弱加熱」という言葉は、明細書記載の他のいずれのヒータよりも加熱効果が低いことを意味する。
【0007】
本開示の一態様によるターゲット供給方法は、タンクと、貫通孔を備えたノズルであって、当該貫通孔とタンク内部とが連通するように設置されたノズルと、タンクの壁に沿って設置された少なくとも第1ヒータと、タンクの壁に沿って第1ヒータよりもノズルから遠い位置に設置された少なくとも第2ヒータと、第1ヒータの温度が、第2ヒータの温度よりも高くなるように、第1ヒータおよび第2ヒータを制御するように構成された制御部と、を含むターゲット供給装置を用い、第1ヒータの温度が、第2ヒータの温度より高い状態を維持するよう第1ヒータおよび第2ヒータを制御してターゲット物質を溶融するステップと、第1ヒータの温度が、第2ヒータの温度より高い状態を維持するよう第1ヒータおよび第2ヒータを制御してターゲット物質の温度を所定温度範囲に保持するステップと、第1ヒータの温度が、第2ヒータの温度より高い状態を維持するよう第1ヒータおよび第2ヒータを制御してターゲット物質を固化するステップと、のいずれかを含んでもよい。
【0008】
本開示の他の態様によるターゲット供給方法は、タンクと、貫通孔を備えたノズルであって、当該貫通孔とタンク内部とが連通するように設置されたノズルと、タンクの壁に沿って設置された少なくともヒータと、タンクの内部においてタンクの内壁から離れた位置に設けられた弱加熱部と、少なくともヒータの温度が、弱加熱部の温度よりも高くなるように、少なくともヒータと弱加熱部とを制御するように構成された制御部と、を含むターゲット供給装置を用い、ヒータの温度が、弱加熱部の温度より高い状態を維持するようヒータおよび弱加熱部を制御してターゲット物質を溶融するステップと、ヒータの温度が、弱加熱部の温度より高い状態を維持するようヒータおよび第弱加熱部を制御してターゲット物質の温度を所定温度範囲に保持するステップと、ヒータの温度が、弱加熱部の温度より高い状態を維持するようヒータおよび弱加熱部を制御してターゲット物質を固化するステップと、のいずれかを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【
図1】
図1は、例示的なLPP方式のEUV光生成装置の構成を概略的に示す。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るターゲット供給装置が適用されるEUV光生成装置の構成を概略的に示す。
【
図3】
図3は、スズに対する酸素原子の溶解度を示すグラフ。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係るターゲット供給装置が適用されるEUV光生成装置の構成を概略的に示す。
【
図5】
図5は、EUV光の生成処理を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、ターゲット物質昇温サブルーチンを示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第1〜第5ヒータの目標温度をグラフ形式で示す。
【
図8】
図8は、ターゲット物質出力サブルーチンを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、ターゲット物質冷却サブルーチンを示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、第3実施形態に係るターゲット供給装置が適用されるEUV光生成装置の構成を概略的に示す。
【
図11】
図11は、ターゲット物質昇温サブルーチンを示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、第1〜第3ヒータおよび弱加熱部の目標温度をグラフ形式で示す。
【
図13】
図13は、ターゲット物質冷却サブルーチンを示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、第4実施形態に係るターゲット供給装置が適用されるEUV光生成装置の構成を概略的に示し、オンデマンド方式でドロップレットが生成される状態を示す。
【
図15】
図15は、第4実施形態に係るターゲット供給装置が適用されるEUV光生成装置の構成を概略的に示し、コンティニュアスジェット方式でジェットが生成される状態を示す。
【
図16】
図16は、第5実施形態に係るターゲット供給装置が適用されるEUV光生成装置の構成を概略的に示す。
【0010】
内容
1.概要
2.EUV光生成装置の全体説明
2.1 構成
2.2 動作
3.ターゲット供給装置を備えたEUV光生成装置
3.1 用語の説明
3.2 第1実施形態
3.2.1 概略
3.2.2 構成
3.2.3 スズに対する酸素原子の溶解度
3.2.4 動作
3.3 第2実施形態
3.3.1 概略
3.3.2 構成
3.3.3 動作
3.4 第3実施形態
3.4.1 概略
3.4.2 構成
3.4.3 動作
3.5 第4実施形態
3.5.1 概略
3.5.2 構成
3.5.3 動作
3.6 第5実施形態
3.6.1 概略
3.6.2 構成
3.6.3 動作
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成および動作の全てが本開示の構成および動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0012】
1.概要
本開示の実施形態においては、ターゲット供給装置は、ターゲット生成器と、複数のヒータと、制御部とを備えてもよい。ターゲット生成器は、ターゲット物質を収容するためのタンクと、タンク内のターゲット物質をチャンバ内に出力するためのノズルと、を含んでもよい。複数のヒータは、タンクの壁に沿って設置された少なくとも第1ヒータと、タンクの壁に沿って第1ヒータよりもノズルから遠い位置に設置された少なくとも第2ヒータとを備えてもよい。制御部は、第1ヒータの温度が第2ヒータの温度よりも高くなるように、第1ヒータおよび第2ヒータを制御してもよい。
【0013】
ここで、ターゲット生成器に収容されたターゲット物質中には、酸素原子が溶解し得る。ターゲット物質中の酸素原子の溶解度は、ターゲット物質の温度が低くなるほど小さくなり得る。このため、以下のような現象が生じ得る。
すなわち、所定温度(第1溶融温度という場合がある)まで加熱されて溶融しているターゲット物質には、当該第1溶融温度に対応する量(第1溶解量という場合がある)の酸素原子が溶解し得る。このターゲット物質の温度が下がると、ターゲット物質は、第1溶解量の酸素原子を含んだまま固化し得る。この後、EUV光の生成に用いるために、ターゲット物質を第1溶融温度よりも低い第2溶融温度で溶融すると、当該溶融したターゲット物質には、第2溶融温度に対応する量(第2溶解量という場合がある)の酸素原子が溶解し得る。上述のように、ターゲット物質の温度が低いほど酸素原子の溶解度が小さくなるため、第2溶解量は第1溶解量よりも少なくなり得る。したがって、第2溶融温度で溶融しているターゲット物質には、第1溶解量から第2溶解量を減じた量の酸素原子が溶解できないこととなり得る。その結果、この溶解できない酸素原子がターゲット物質と結合して、ターゲット物質の酸化物が析出し得る。この析出した酸化物は、ノズルのノズル孔で詰まり得る。また、析出した酸化物がノズル孔に集積すると、ターゲット物質の出力方向が変化し得る。
本開示の実施形態のターゲット供給装置では、ターゲット生成器内のターゲット物質の温度が、ノズルの先端に近い側の方が遠い方よりも高くなるように、第1ヒータおよび第2ヒータを制御してもよい。このような構成によって、ターゲット生成器のタンクの上端側の位置と比べて、ノズル付近でのターゲット物質の酸化物の析出を抑制し得る。すなわち、ターゲット物質の酸化物の析出を適切に制御し得る。したがって、酸化物がノズル孔に詰まる可能性が低減し得る。さらには、酸化物がノズル孔に集積する可能性が低減し、ターゲット物質の出力方向の変化を抑制し得る。
【0014】
また、本開示の実施形態においては、ターゲット供給装置は、ターゲット生成器と、第1ヒータと、弱加熱部と、制御部とを備えてもよい。ターゲット生成器は、ターゲット物質を収容可能な筒状のタンクを備え、ターゲット物質をチャンバ内に出力してもよい。第1ヒータは、タンクの壁に沿って設置されてもよい。弱加熱部は、タンクの内部においてタンクの内壁から離れた位置に設けられ、ターゲット生成器内のターゲット物質を弱加熱してもよい。制御部は、第1ヒータの温度が、弱加熱部の温度よりも高くなるように、第1ヒータおよび弱加熱部を制御してもよい。
【0015】
ここで、上述したように、ターゲット物質の温度が低くなると、ターゲット物質に溶解できない量の酸素原子は、ターゲット物質の酸化物として析出し得る。ターゲット物質の出力を停止する場合等、ターゲット物質の温度を下げて固化する際、ターゲット生成器の内壁とターゲット物質との界面の温度が、他の部分と比べて低い時間が長くなり得る。このため、ターゲット生成器の内壁には、ターゲット物質の酸化物が堆積し得る。
本開示の実施形態のターゲット供給装置では、ターゲット物質が溶融している間、第1ヒータの温度が弱加熱部の温度よりも高くなるように、すなわちターゲット生成器内のターゲット物質の温度が、ターゲット生成器の内壁から中央に向かうに従って低くなるように、第1ヒータおよび弱加熱部を制御してもよい。このような構成によって、弱加熱部の近傍と比べて、ターゲット生成器の内壁でのターゲット物質の酸化物の堆積を抑制し得る。
【0016】
2.EUV光生成装置の全体説明
2.1 構成
図1は、例示的なLPP方式のEUV光生成装置1の構成を概略的に示す。EUV光生成装置1は、少なくとも1つのレーザ装置3と共に用いられてもよい。EUV光生成装置1およびレーザ装置3を含むシステムを、以下、EUV光生成システム11と称する。
図1を参照に、以下に詳細に説明されるように、EUV光生成装置1は、チャンバ2を含んでもよい。チャンバ2は、密閉可能であってもよい。EUV光生成装置1は、ターゲット供給装置7をさらに含んでもよい。ターゲット供給装置7は、例えばチャンバ2に取り付けられていてもよい。ターゲット供給装置7から供給されるターゲットの材料は、スズ、テルビウム、ガドリニウム、リチウム、キセノン、またはそれらのうちのいずれか2つ以上の組合せ等を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0017】
チャンバ2の壁には、少なくとも1つの貫通孔が設けられていてもよい。その貫通孔をレーザ装置3から出力されたパルスレーザ光32が通過してもよい。あるいは、チャンバ2には、レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光32が透過する少なくとも1つのウインドウ21が設けられてもよい。チャンバ2の内部には例えば、回転楕円面形状の反射面を有するEUV集光ミラー23が配置されてもよい。EUV集光ミラー23は、第1焦点および第2焦点を有し得る。EUV集光ミラー23の表面には例えば、モリブデンあるいはタングステンとシリコンとが交互に積層された多層反射膜が形成されてもよい。EUV集光ミラー23は、例えば、その第1焦点がプラズマ生成位置またはその近傍(プラズマ生成領域25)に位置し、その第2焦点が露光装置の仕様によって規定される所望の集光位置(中間焦点(IF)中間焦点292)に位置するように配置されるのが好ましい。EUV集光ミラー23の中央部には、パルスレーザ光33が通過するための貫通孔24が設けられてもよい。
【0018】
EUV光生成装置1は、EUV光生成制御システム5を含んでいてもよい。また、EUV光生成装置1は、ターゲットセンサ4を含んでもよい。ターゲットセンサ4は、ターゲットの存在、軌道、位置等を検出してもよい。ターゲットセンサ4は、撮像機能を有してもよい。
【0019】
さらに、EUV光生成装置1は、チャンバ2内部と露光装置6内部とを連通させるための接続部29を含んでもよい。接続部29内部には、アパーチャが形成された壁291が設けられてもよい。壁291は、そのアパーチャがEUV集光ミラー23の第2焦点位置に位置するように配置されてもよい。
【0020】
さらに、EUV光生成装置1は、レーザ光進行方向制御部34、レーザ光集光光学系22、ドロップレット27を回収するためのターゲット回収装置28等を含んでもよい。レーザ光進行方向制御部34は、レーザ光の進行方向を規定するための光学素子と、この光学素子の位置や姿勢等を調節するためのアクチュエータとを備えてもよい。
【0021】
2.2 動作
図1を参照に、レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光31は、レーザ光進行方向制御部34を経て、パルスレーザ光32としてウインドウ21を透過して、チャンバ2に入射してもよい。パルスレーザ光32は、少なくとも1つのレーザ光経路に沿ってチャンバ2内に進み、レーザ光集光光学系22で反射されて、パルスレーザ光33として少なくとも1つのドロップレット27に照射されてもよい。
【0022】
ターゲット供給装置7からは、ドロップレット27がチャンバ2内部のプラズマ生成領域25に向けて出力されてもよい。ドロップレット27には、パルスレーザ光33に含まれる少なくとも1つのパルスレーザ光が照射され得る。パルスレーザ光33が照射されたドロップレット27はプラズマ化し、そのプラズマからEUVを含む光251(以下、「EUV光を含む光」を「EUV光」と表現する場合がある)が放射され得る。EUV光251は、EUV集光ミラー23によって集光されるとともに反射されてもよい。EUV集光ミラー23で反射されたEUV光252は、中間焦点292を通って露光装置6に出力されてもよい。なお、1つのドロップレット27に、パルスレーザ光33に含まれる複数のパルスレーザ光が照射されてもよい。
【0023】
EUV光生成制御システム5は、EUV光生成システム11全体の制御を統括してもよい。EUV光生成制御システム5は、ターゲットセンサ4によって撮像されたドロップレット27のイメージデータ等を処理してもよい。EUV光生成制御システム5は、例えば、ドロップレット27を出力するタイミングやドロップレット27の出力速度等を制御してもよい。また、EUV光生成制御システム5は、例えば、レーザ装置3のレーザ発振タイミングやパルスレーザ光32の進行方向やパルスレーザ光33の集光位置等を制御してもよい。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて他の制御を追加してもよい。
【0024】
3.ターゲット供給装置を備えたEUV光生成装置
3.1 用語の説明
以下、ノズルの先端に近い側の方の温度を遠い方の温度よりも高くすることを、「軸方向に温度勾配を与える」と説明し得る。また、ターゲット生成器の内壁から中央に向かうに従って温度を低くすることを、「径方向に温度勾配を与える」と説明し得る。
【0025】
3.2 第1実施形態
3.2.1 概略
本開示の第1実施形態によれば、ターゲット供給装置は、ターゲット生成器内のターゲット物質の温度がノズルの先端に向かうに従って高くなるように、ノズルに設けられた複数のヒータを制御してもよい。
【0026】
以上のような構成によって、ターゲット生成器のノズル付近でのターゲット物質の酸化物の析出を抑制し得る。したがって、酸化物がノズル孔に詰まる可能性が低減し得る。さらには、酸化物がノズル孔に析出する可能性が低減し、ターゲット物質の出力方向の変化を抑制し得る。
【0027】
3.2.2 構成
図2は、第1実施形態に係るターゲット供給装置が適用されるEUV光生成装置の構成を概略的に示す。
【0028】
EUV光生成装置1Aは、
図2に示すように、チャンバ2と、ターゲット供給装置7Aとを備えてもよい。ターゲット供給装置7Aは、ターゲット生成部70と、ターゲット制御装置80とを備えてもよい。
ターゲット生成部70は、ターゲット生成器71と、圧力調整器72とを備えてもよい。ターゲット生成器71は、内部にターゲット物質270を収容するためのタンク711を備えてもよい。タンク711は、筒状であってもよい。タンク711には、当該タンク711内のターゲット物質270を、ドロップレット27としてチャンバ2内に出力するためのノズル712が設けられていてもよい。ノズル712の先端部には、タンク711内部とチャンバ2内部を連通する貫通孔であるノズル孔が設けられていてもよい。ターゲット生成器71は、タンク711がチャンバ2外部に位置し、ノズル712がチャンバ2内部に位置するように設けられてもよい。圧力調整器72は、タンク711に連結されてもよい。また、圧力調整器72は、ターゲット制御装置80に電気的に接続されてもよい。
【0029】
3.2.3 スズに対する酸素原子の溶解度
図3は、スズに対する酸素原子の溶解度を示すグラフを示す。
ターゲット生成器71に収容されたターゲット物質270中には、酸素原子が溶解し得る。ターゲット物質270がスズの場合には、スズに対する酸素原子の溶解度は、
図3に示すように、スズの温度が低くなるほど小さくなり得る。このため、第1溶融温度まで加熱した後に固化したスズを、第1溶融温度よりも低い第2溶融温度で再度溶融した場合には、第1溶解量(第1溶融温度のスズに溶解可能な酸素原子の量)から第2溶解量(第2溶融温度のスズに溶解可能な酸素原子の量)を減じた量の酸素原子がスズに溶解できないこととなる。その結果、この溶解できない酸素原子がスズと結合して酸化スズとして析出し得る。
【0030】
チャンバ2の設置形態によっては、予め設定されるターゲット物質270の出力方向は、必ずしも重力方向10Bと一致するとは限らない。予め設定されるターゲット物質270の出力方向はノズル712の軸方向と同一であってもよく、以下、設定出力方向10Aと称する場合がある。重力方向10Bに対して、斜め方向や水平方向に、ターゲット物質270が出力されるよう構成されてもよい。なお、第1実施形態および後述する第2〜第5実施形態では、設定出力方向10Aが重力方向10Bと一致するようにチャンバ2が設置される場合について説明する。
【0031】
また、ターゲット供給装置7Aは、第1ヒータ91Aと、第2ヒータ92Aと、第3ヒータ93Aと、第4ヒータ94Aと、第5ヒータ95Aと、制御部としての温度分布制御部96Aとを備えてもよい。
第1ヒータ91Aは、ノズル712の先端側の外周面に設けられてもよい。第2ヒータ92Aは、ノズル712における第1ヒータ91Aよりも上側(例えば重力方向10Bと反対側)の外周面に設けられてもよい。第3ヒータ93Aは、タンク711の下端側(ノズル712側)の外周面に設けられてもよい。第4ヒータ94Aは、タンク711における第3ヒータ93Aよりも上に設けられてもよい。第5ヒータ95Aは、タンク711における第4ヒータ94Aよりも上に設けられてもよい。このように、第1〜第5ヒータ91A〜95Aは、ターゲット物質270の設定出力方向10Aに対してターゲット物質270の進行方向下流から上流側に並ぶように設けられてもよい。第1〜第5ヒータ91A〜95Aの間隔は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、第1〜第5ヒータ91A〜95Aは、温度分布制御部96Aにそれぞれ電気的に接続されてもよい。第1〜第5ヒータ91A〜95Aはセラミックヒータ等、電気抵抗によって発熱する発熱体を利用するものであってよい。しかし、これに限らず赤外線ヒータ等でもよい。また、発熱量の制御は、電流制御型、電圧制御型、あるいは周波数制御型であってもよい。以下、第1〜第5ヒータ91A〜95Aは、電流制御型のセラミックヒータとして説明するがこれに限られない。
【0032】
温度分布制御部96Aは、ターゲット制御装置80と電気的に接続されてもよい。温度分布制御部96Aは、ターゲット物質270に軸方向の温度勾配を与えてもよい。温度分布制御部96Aは、ターゲット制御装置80が送信する信号に基づいて、例えば、第1〜第5ヒータ91A〜95A個別に設定された電流を、各ヒータに供給する制御を行ってもよい。その結果、ターゲット物質270の温度がノズル712の先端に向かうに従って高い状態となってもよい。
【0033】
3.2.4 動作
ターゲット物質270に軸方向の温度勾配を与える制御は、以下の期間で行ってもよい。
期間1:パルス状のEUV光251の継続生成を開始するために、ターゲット生成器71内のターゲット物質270を溶融する場合。
期間2:パルス状EUV光251の継続生成中。
期間3:パルス状EUV光251の継続生成を終了するために、ターゲット生成器71内のターゲット物質270を固化する場合。
【0034】
EUV光生成制御システム5は、上述の期間1,2,3を監視、管理して、ターゲット制御装置80に温度分布制御信号を送信してもよい。ターゲット制御装置80は、EUV光生成制御システム5から受信した温度分布制御信号をターゲット供給装置7Aの温度分布制御部96Aに送信してもよい。温度分布制御部96Aは、温度分布制御信号を受信したときに、ターゲット物質270に軸方向の温度勾配を与えるように、第1〜第5ヒータ91A〜95Aを制御してもよい。
温度分布制御部96Aは、以下の式(1)の関係を満たすように、第1〜第5ヒータ91A〜95Aを制御してもよい。なお、期間1および期間3においては、T1t〜T5tは変数であってもよく、期間2においては定数であってもよい。
T1t>T2t>T3t>T4t>T5t … (1)
T1t:第1ヒータ91Aの目標温度
T2t:第2ヒータ92Aの目標温度
T3t:第3ヒータ93Aの目標温度
T4t:第4ヒータ94Aの目標温度
T5t:第5ヒータ95Aの目標温度
例えば、第1〜第5ヒータ91A〜95Aが全て同性能のヒータである場合、式(1)の関係を満たすように、温度分布制御部96Aは、第1〜第5ヒータ91A〜95Aに供給する電流を以下の式(2)の関係を満たすようにしてもよい。温度分布制御部96Aは、期間1、期間2、および期間3について、以下の式(2)の関係を維持するように第1〜第5ヒータ91A〜95Aに電流を供給してもよい。なお、期間1および期間3においては、I1t〜I5tは変数であってもよく、期間2においては定数であってもよい。
I1t>I2t>I3t>I4t>I5t … (2)
I1t:第1ヒータ91Aに供給する電流
I2t:第2ヒータ92Aに供給する電流
I3t:第3ヒータ93Aに供給する電流
I4t:第4ヒータ94Aに供給する電流
I5t:第5ヒータ95Aに供給する電流
一方、第1〜第5ヒータ91A〜95Aの何れかが他と異なる性能のヒータである場合、温度分布制御部96Aは、式(1)を満たすように設定された電流を各ヒータに個別に供給するようにしてもよい。この際、式(1)を満たすような電流は事前の実験結果等に基づいて設定されてもよい。
【0035】
温度分布制御部96Aが期間1において、上記式(1)の関係を満たすように温度を上げる制御を行うと、ターゲット物質270は、ノズル712の先端に向かうに従って温度が高くなる状態が維持されたまま加熱され得る。そして、ターゲット物質270は、当該ターゲット物質270の融点以上となるまで加熱されると、溶融し得る。この加熱処理の進行に伴い、ターゲット物質270は、ターゲット生成器71の下端側(ノズル712の先端側)が最初に溶融し、上端側が最後に溶融し得る。
【0036】
また、温度分布制御部96Aが期間2において、上記式(1)の関係を満たすように温度を維持する制御を行うと、ターゲット物質270の温度は、ノズル712の先端に向かうに従って温度が高くなる状態で維持され得る。そして、この状態が維持されたまま、ターゲット物質270がドロップレット27として出力して、EUV光251が生成され得る。
【0037】
ここで、期間1および期間2においては、ターゲット物質270がスズの場合、目標温度T1t〜T5t(T1t,T2t,T3t,T4t,T5t)は、スズの融点である231.9℃以上であってもよい。また、ターゲット生成器71のスズに接する部分がモリブデンあるいはタングステンで形成されている場合、目標温度T1t〜T5tは、370℃未満であってもよい。370℃以上となると、スズとモリブデンあるいはタングステンの合金が生成し得る。
また、ターゲット生成器71がグラファイトやPBN(気相成長法(CVD法)によって生成された窒化ホウ素)の場合、目標温度T1t〜T5tは、1000℃以下であってもよい。グラファイトやPBNは、1000℃でも化学的に比較的安定であってよい。また、1000℃はスズの蒸発温度より低いため、スズは、1000℃に加熱されても蒸発が抑制され得る。
【0038】
また、温度分布制御部96Aが期間3において、上記式(1)の関係を満たすように各ヒータの温度を低下させる制御を行うと、ターゲット物質270は、ノズル712の先端に向かうに従って温度が高くなる状態が維持されたまま冷却され得る。そして、ターゲット物質270は、当該ターゲット物質270の融点未満となるまで冷却されると、固化し得る。このとき、ターゲット物質270は、ターゲット生成器71の上端側にあるものが最初に固化し、下端側にあるものが最後に固化し得る。
【0039】
上述のように、ターゲット供給装置7Aの温度分布制御部96Aは、上述の期間1,2,3において、ターゲット物質270に軸方向の温度勾配を与えるように、第1〜第5ヒータ91A〜95Aを制御してもよい。
これにより、ターゲット生成器71のノズル712内部の貫通孔付近におけるターゲット物質270の酸化物の析出および集積を抑制し得る。したがって、酸化物が当該貫通孔内に詰まる可能性が低減し得る。さらには、ドロップレット27の出力方向の変化を抑制し得る。
【0040】
なお、ターゲット物質270に軸方向の温度勾配を与えることができれば、ヒータの数は、2個〜4個、あるいは、5個以上であってもよい。
【0041】
3.3 第2実施形態
3.3.1 概略
本開示の第2実施形態によれば、ターゲット供給装置は、複数のヒータ用温度センサを備えてもよい。複数のヒータ用温度センサは、複数のヒータがそれぞれ加熱した部分あるいはその周辺の温度を検出してもよい。ヒータ用温度センサは、各ヒータに対して少なくとも1個設けられてもよい。すなわち、ヒータ用温度センサの個数は、ヒータの個数と同じであってもよいし、ヒータの個数より多くてもよい。そして、制御部は、ヒータ用温度センサが検出した温度に基づいて、複数のヒータを制御してもよい。
【0042】
以上のような構成により、ターゲット物質が加熱されている状態に応じて、軸方向の温度勾配を付けるようにヒータの温度を制御してもよく、ターゲット物質の温度を調節し得る。また、ターゲット物質の全体が溶融したことを検出することが可能となり、適切なタイミングでEUV光の生成を開始し得る。さらに、ターゲット物質の全体が固化したことを検出することが可能となり、適切なタイミングでヒータを停止し得る。
【0043】
3.3.2 構成
図4は、第2実施形態に係るターゲット供給装置が適用されるEUV光生成装置の一部構成を概略的に示す。なお、EUV光生成装置のその他の部分の構成は
図2に示したものと同等であってよい。
【0044】
第2実施形態のEUV光生成装置1Bを構成するターゲット供給装置7Bと、第1実施形態のEUV光生成装置1Aのターゲット供給装置7Aとの相違点は、
図4に示すように、ターゲット制御装置80Bおよび温度分布制御部96Bの構成が異なる点と、第1〜第5ヒータ用温度センサ101B〜105B(第1ヒータ用温度センサ101B、第2ヒータ用温度センサ102B、第3ヒータ用温度センサ103B、第4ヒータ用温度センサ104B、第5ヒータ用温度センサ105B)を新たに設けた点であってもよい。
【0045】
ターゲット供給装置7Bは、ターゲット生成器71と、圧力調整器72と、第1〜第5ヒータ91A〜95Aと、制御部としての温度分布制御部96Bと、第1〜第5ヒータ用温度センサ101B〜105Bとを備えてもよい。
圧力調整器72には、不活性ガスボンベ721が接続されてもよい。圧力調整器72には、ターゲット制御装置80Bが電気的に接続されてもよい。圧力調整器72は、不活性ガスボンベ721から供給される不活性ガスの圧力を制御して、タンク711内の圧力を調節するよう構成されてもよい。
【0046】
第1ヒータ用温度センサ101Bは、ノズル712における第1ヒータ91Aよりも下側(ノズル712の先端側)に設けられてもよい。第1ヒータ用温度センサ101Bは、チャンバ2に設けられた導入端子960Bを介して、温度分布制御部96Bの第1温度コントローラ971Bに電気的に接続されてもよい。第1ヒータ用温度センサ101Bは、第1ヒータ91Aが加熱した部分の温度を検出して、当該検出した温度に対応する信号を第1温度コントローラ971Bに送信してもよい。
第2ヒータ用温度センサ102Bは、ノズル712における第2ヒータ92Aよりも下側に設けられ、導入端子960Bを介して、温度分布制御部96Bの後述する第2温度コントローラ972Bに電気的に接続されてもよい。第2ヒータ用温度センサ102Bは、第2ヒータ92Aが加熱した部分の温度を検出して、当該検出した温度に対応する信号を第2温度コントローラ972Bに送信してもよい。
【0047】
第3ヒータ用温度センサ103Bは、タンク711における第3ヒータ93Aよりも下側に設けられ、温度分布制御部96Bの後述する第3温度コントローラ973Bに電気的に接続されてもよい。第3ヒータ用温度センサ103Bは、第3ヒータ93Aが加熱した部分の温度を検出して、当該検出した温度に対応する信号を第3温度コントローラ973Bに送信してもよい。
第4ヒータ用温度センサ104Bおよび第5ヒータ用温度センサ105Bは、タンク711における第4ヒータ94Aおよび第5ヒータ95Aのそれぞれの下側に設けられてもよい。第4ヒータ用温度センサ104Bおよび第5ヒータ用温度センサ105Bは、温度分布制御部96Bの後述する第4温度コントローラ974Bおよび第5温度コントローラ975Bにそれぞれ電気的に接続されてもよい。第4ヒータ用温度センサ104Bおよび第5ヒータ用温度センサ105Bは、第4ヒータ94Aおよび第5ヒータ95Aがそれぞれ加熱した部分の温度を検出して、当該検出した温度に対応する信号を第4温度コントローラ974Bおよび第5温度コントローラ975Bにそれぞれ送信してもよい。
【0048】
温度分布制御部96Bは、第1〜第5ヒータ電源961B〜965B(第1ヒータ電源961B、第2ヒータ電源962B、第3ヒータ電源963B、第4ヒータ電源964B、第5ヒータ電源965B)と、第1〜第5温度コントローラ971B〜975B(第1温度コントローラ971B、第2温度コントローラ972B、第3温度コントローラ973B、第4温度コントローラ974B、第5温度コントローラ975B)とを備えてもよい。
第1,第2ヒータ電源961B,962Bは、導入端子960Bを介して、第1,第2ヒータ91A,92Aにそれぞれ電気的に接続されてもよい。また、第1,第2ヒータ電源961B,962Bは、第1,第2温度コントローラ971B,972Bにそれぞれ電気的に接続されてもよい。第1ヒータ電源961Bは、第1温度コントローラ971Bからの信号に基づいて、第1ヒータ91Aに電力を供給して第1ヒータ91Aを発熱させてもよい。それにより、ノズル712内のターゲット物質270が加熱され得る。第2ヒータ電源962Bは、第2温度コントローラ972Bからの信号に基づいて、第2ヒータ92Aを発熱させてもよい。
第3〜第5ヒータ電源963B〜965Bは、第3〜第5ヒータ93A〜95Aと、第3〜第5温度コントローラ973B〜975Bとにそれぞれ電気的に接続されてもよい。第3〜第5ヒータ電源963B〜965Bは、第3〜第5温度コントローラ973B〜975Bからのそれぞれの信号に基づいて、第3〜第5ヒータ93A〜95Aをそれぞれ発熱させてもよい。
【0049】
第1〜第5温度コントローラ971B〜975Bは、ターゲット制御装置80Bに電気的に接続されてもよい。第1〜第5温度コントローラ971B〜975Bは、第1〜第5ヒータ用温度センサ101B〜105Bからのそれぞれの信号に基づいて、ターゲット生成器71の温度を判定し、ターゲット生成器71のターゲット物質270に軸方向の温度勾配を与えるための信号を第1〜第5ヒータ91A〜95Aにそれぞれ送信してもよい。
【0050】
3.3.3 動作
図5は、EUV光の生成処理を示すフローチャートである。
図6は、ターゲット物質昇温サブルーチンを示すフローチャートである。
図7は、第1〜第5ヒータの目標温度をグラフ形式で示す。
図8は、ターゲット物質出力サブルーチンを示すフローチャートである。
図9は、ターゲット物質冷却サブルーチンを示すフローチャートである。
【0051】
図5に示すように、ターゲット制御装置80Bは、EUV光生成制御システム5からターゲット生成器71の立ち上げ信号を受信したか否かを判定してもよい(ステップS1)。この立ち上げ信号は、ターゲット生成器71内のターゲット物質270の溶融を開始するための信号であってもよい。
ターゲット制御装置80Bは、ステップS1において立ち上げ信号を受信していないと判定した場合、所定時間経過後にステップS1の処理を再度行ってもよい。一方で、ターゲット制御装置80Bは、ステップS1において立ち上げ信号を受信したと判定した場合、ターゲット物質昇温サブルーチンに基づく処理を行ってもよい(ステップS2)。このステップS2の処理によって、ターゲット生成器71内の固化しているターゲット物質270が溶融し、ノズル712からターゲット物質270を出力することが可能となり得る。あるいは、ターゲット生成器71内の十分に高温になっていないターゲット物質270の温度が必要温度まで上昇し、ノズル712からターゲット物質270を出力することが可能となり得る。
【0052】
具体的に、ターゲット制御装置80Bは、
図6に示すように、第1〜第5ヒータ91A〜95Aの目標温度T1t〜T5tを、それぞれ温度T1t0〜T5t0(T1t0,T2t0,T3t0,T4t0,T5t0)に設定してもよい(ステップS11)。この温度T1t0〜T5t0は、
図7に示すように、温度T1t0が最も高く、温度T5t0が最も低くてもよい。また、温度T1t0〜T5t0は、ターゲット物質270の融点Tm以上であってもよい。温度T1t0〜T5t0のそれぞれ温度差は、例えばおよそ10℃であってもよい。例えば、温度T1t0,T2t0,T3t0,T4t0,T5t0は、それぞれおよそ370℃,360℃,350℃,340℃,330℃であってもよい。
【0053】
次に、ターゲット制御装置80Bは、
図6に示すように、第1〜第5温度コントローラ971B〜975Bに、目標温度T1t〜T5tを設定して、第1〜第5ヒータ91A〜95Aを駆動してもよい(ステップS12)。
このステップS12の処理によって、第1〜第5ヒータ91A〜95Aは、軸方向に温度勾配が付くように、ターゲット生成器71内のターゲット物質270を加熱してもよい。そして、第1〜第5ヒータ用温度センサ101B〜105Bは、ターゲット物質270における第1〜第5ヒータ91A〜95Aが加熱した部分の温度を検出して、当該温度に対応する信号を第1〜第5温度コントローラ971B〜975Bにそれぞれ送信してもよい。第1〜第5温度コントローラ971B〜975Bは、第1〜第5ヒータ用温度センサ101B〜105Bから受信した信号をターゲット制御装置80Bに送信してもよい。
【0054】
この後、ターゲット制御装置80Bは、第1〜第5温度コントローラ971B〜975Bから受信した信号に基づいて、以下の式(3)〜(7)の条件を全て満たすか否かを判断してもよい(ステップS13)。
ΔTr1≧|T1t−T1| … (3)
ΔTr2≧|T2t−T2| … (4)
ΔTr3≧|T3t−T3| … (5)
ΔTr4≧|T4t−T4| … (6)
ΔTr5≧|T5t−T5| … (7)
T1:第1ヒータ用温度センサ101Bが検出した温度
T2:第2ヒータ用温度センサ102Bが検出した温度
T3:第3ヒータ用温度センサ103Bが検出した温度
T4:第4ヒータ用温度センサ104Bが検出した温度
T5:第5ヒータ用温度センサ105Bが検出した温度
ΔTr1,ΔTr2,ΔTr3,ΔTr4,ΔTr5:制御された結果の温度の許容範囲
【0055】
ここで、許容範囲ΔTr1〜ΔTr5(ΔTr1,ΔTr2,ΔTr3,ΔTr4,ΔTr5)は、例えば、1℃以上3℃以下の範囲内のいずれかの温度であってもよい。また、許容範囲ΔTr1〜ΔTr5は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
ターゲット制御装置80Bは、ステップS13において、式(3)〜(7)の条件のうち、少なくとも1つの条件を満たしていないと判定した場合、所定時間経過後にステップS13の処理を再度行ってもよい。一方で、ターゲット制御装置80Bは、ステップS13において、式(3)〜(7)の条件を全て満たすと判定した場合、EUV光生成制御システム5にターゲット生成器71の昇温完了信号を送信して(ステップS14)、ターゲット物質昇温サブルーチンに基づく処理を終了してもよい。すなわち、ターゲット制御装置80Bは、第1〜第5ヒータ用温度センサ101B〜105Bが検出した温度T1〜T5が、それぞれの目標温度T1t〜T5tに対して許容範囲にあると判定した場合、昇温完了信号を送信してもよい。
以上の処理によって、ターゲット物質270は、ノズル712の先端側から徐々に溶融し、目標温度に近づき得る。
【0056】
ターゲット制御装置80Bは、昇温完了信号を送信した後、
図5に示すように、ターゲット物質出力サブルーチンに基づく処理を行ってもよい(ステップS3)。このステップS3の処理によって、ターゲット制御装置80Bは、ステップS2で溶融したターゲット物質270を出力し得る。これにより、EUV光を生成し得る。なお、ターゲット制御装置80Bは、ステップS3の処理中において、ターゲット生成器71内のターゲット物質270に軸方向の温度勾配を与える制御を継続してもよい。
【0057】
具体的に、ターゲット制御装置80Bは、
図8に示すように、EUV光生成制御システム5からターゲット出力停止信号を受信したか否かを判定してもよい(ステップS21)。ターゲット制御装置80Bは、ステップS21においてターゲット出力停止信号を受信したと判定した場合、ターゲット物質出力サブルーチンの処理を終了し、
図5に示すステップS4の処理に移行してもよい。一方で、ターゲット制御装置80Bは、ステップS21においてターゲット出力信停止号を受信していないと判定した場合、EUV光生成制御システム5からターゲット出力信号を受信したか否かを判定してもよい(ステップS22)。
ターゲット制御装置80Bは、ステップS22においてターゲット出力信号を受信していないと判定した場合、ステップS21の処理を再度行ってもよい。一方で、ターゲット制御装置80Bは、ステップS22においてターゲット出力信号を受信したと判定した場合、ターゲット生成器71内部の圧力が所定の圧力となるように、圧力調整器72に信号を送信してもよい(ステップS23)。
圧力調整器72は、この信号を受信したときに、タンク711内の圧力を、ターゲット物質270が出力され得る圧力に調節してもよい。一方で、ターゲット制御装置80Bは、ノズル712の先端付近に設置された図示しない圧電素子を振動させてもよい。これにより、ターゲット物質270はドロップレット271として出力され得る。
出力されたドロップレット271の位置、速度、大きさ、進行方向、所定位置における通過タイミングおよび通過周期、それらの安定性等を示す情報は、ターゲットセンサ4(
図2参照)によって検出されてもよい。この検出された情報は、それぞれ信号として、ターゲット制御装置80Bが受信してもよい。
【0058】
そして、ターゲット制御装置80Bは、ドロップレット271の位置安定性が所定範囲となったか否か、すなわちドロップレット271が出力された位置が所定範囲内にあるか否かを判定してもよい(ステップS24)。このステップS24において、ターゲット制御装置80Bは、所定範囲となっていないと判定した場合、次に出力されたドロップレット271に対して、あるいは、所定個数出力された後に出力されたドロップレット271に対して、ステップS23の処理を行ってもよい。一方、ターゲット制御装置80Bは、ステップS24において、所定範囲となったと判定した場合、EUV光生成制御システム5にターゲット生成OK信号を送信してもよい(ステップS25)。
【0059】
EUV光生成制御システム5は、ターゲット生成OK信号を受信すると、ドロップレット271がプラズマ生成領域25(
図2参照)に到達したときにドロップレット271にパルスレーザ光が照射されるように、レーザ装置3(
図2参照)にパルスレーザ光の発振トリガを出力するよう構成されてもよい。
レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光は、ひとつまたは複数のドロップレット271に照射されてもよい。ドロップレット271にパルスレーザ光が照射されると、ドロップレット271はプラズマ化し、EUV光を含む電磁波が放射され得る。
そして、EUV光生成制御システム5は、EUV光の生成を終了する場合、レーザ装置3からのパルスレーザ光の出力を終了するとともに、ターゲット制御装置80Bにターゲット出力停止信号を送信してもよい。
【0060】
ターゲット制御装置80Bは、EUV光生成制御システム5からターゲット出力停止信号を受信したか否かを判定してもよい(ステップS26)。ターゲット制御装置80Bは、ステップS25において、受信していないと判定した場合、ステップS26の処理を再度行ってもよい。一方、ターゲット制御装置80Bは、ステップS26において、受信したと判定した場合、ターゲット生成器71内部の圧力をドロップレット271が出力しない圧力とするような信号を圧力調整器72に送信して(ステップS27)、ターゲット物質出力サブルーチンに基づく処理を終了してもよい。
以上の処理によって、圧力調整器72がターゲット生成器71内部の圧力を調整し、ターゲット生成器71からターゲット物質270が出力しなくなり得る。
【0061】
この後、ターゲット制御装置80Bは、
図5に示すように、EUV光生成制御システム5からターゲット生成器71の立ち下げ信号を受信したか否かを判定してもよい(ステップS4)。この立ち下げ信号は、ターゲット生成器71内のターゲット物質270の固化を開始するための信号であってもよい。
ターゲット制御装置80Bは、ステップS4において立ち下げ信号を受信していないと判定した場合、ステップS3の処理を行ってもよい。一方で、ターゲット制御装置80Bは、ステップS4において立ち下げ信号を受信したと判定した場合、ターゲット物質冷却サブルーチンに基づく処理を行い(ステップS5)、EUV光の生成処理を終了してもよい。このステップS5の処理によって、ターゲット生成器71内の溶融しているターゲット物質270が固化し得る。
【0062】
具体的に、ターゲット制御装置80Bは、
図9に示すように、第1ヒータ91Aに対して設定中の目標温度T1tから温度ΔTだけ減算した温度を、新しい目標温度T1tとして設定してもよい。同様に、ターゲット制御装置80Bは、第2〜第5ヒータ92A〜95Aに対して設定中の目標温度T2t〜T5tから、それぞれ温度ΔTだけ減算した温度を、新しい目標温度T2t〜T5tとして設定してもよい(ステップS31)。この温度ΔTは、例えば、5℃以上10℃以下の範囲内のいずれかの温度であってもよい。
【0063】
次に、ターゲット制御装置80Bは、第1〜第5温度コントローラ971B〜975Bに、新しい目標温度T1t〜T5tを設定してもよい(ステップS32)。このステップS32の処理が行われると、第1〜第5ヒータ91A〜95Aの発熱量が減少し、ターゲット物質270の温度が、例えば自然放熱等により下がり得る。
そして、第1〜第5ヒータ用温度センサ101B〜105Bは、検出した温度に対応する信号を第1〜第5温度コントローラ971B〜975Bにそれぞれ送信してもよい。第1〜第5温度コントローラ971B〜975Bは、第1〜第5ヒータ用温度センサ101B〜105Bから受信した信号をターゲット制御装置80Bに送信してもよい。
【0064】
この後、ターゲット制御装置80Bは、以下の式(8)〜(12)の条件を全て満たすか否かを判定してもよい(ステップS33)。
ΔTr11≧|T1t−T1| … (8)
ΔTr12≧|T2t−T2| … (9)
ΔTr13≧|T3t−T3| … (10)
ΔTr14≧|T4t−T4| … (11)
ΔTr15≧|T5t−T5| … (12)
ΔTr11,ΔTr12,ΔTr13,ΔTr14,ΔTr15:制御された結果の温度制御の許容範囲
【0065】
すなわち、ターゲット制御装置80Bは、第1〜第5ヒータ用温度センサ101B〜105Bが検出した温度T1〜T5が、目標温度T1t〜T5tとほぼ等しくなったか否かを判定してもよい。
ここで、許容範囲ΔTr11〜ΔTr15(ΔTr11,ΔTr12,ΔTr13,ΔTr14,ΔTr15)は、1℃以上3℃以下の範囲内のいずれかの温度であってもよい。また、許容範囲ΔTr11〜ΔTr15は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。さらに、許容範囲ΔTr11〜ΔTr15は、上述のΔTr1〜ΔTr5のいずれかと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0066】
ターゲット制御装置80Bは、ステップS33において、式(8)〜(12)の条件のうち、少なくとも1つの条件を満たしていないと判定した場合、所定時間経過後にステップS33の処理を再度行ってもよい。一方で、ターゲット制御装置80Bは、ステップS33において、式(8)〜(12)の条件を全て満たすと判定した場合、第1ヒータ用温度センサ101Bが検出した温度T1がターゲット物質270の融点Tm未満か否かを判断してもよい(ステップS34)。すなわち、ターゲット制御装置80Bは、ノズル712の先端に収容されたターゲット物質270の温度T1が、融点Tm未満か否かを判定してもよい。
ターゲット生成器71に収容されたターゲット物質270のうち、温度が最も高い部分周辺の温度T1が融点Tm未満ということは、当該ターゲット物質270全体の温度が融点Tm未満であることを意味してよい。この場合、ターゲット物質270全体が固化したと判定し得る。
【0067】
このステップS34において、ターゲット制御装置80Bは、温度T1が融点Tm未満でないと判定した場合、ステップS31の処理を行ってもよい。ステップS31〜ステップS34の処理を繰り返し行うことによって、目標温度T1t〜T5tが、徐々に低くなり得る。そして、ターゲット物質270は、ノズル712の先端に向かうに従って温度が高くなる状態が維持されたまま冷却され得る。
一方で、ターゲット制御装置80Bは、温度T1が融点Tm未満であると判定した場合、第1〜第5温度コントローラ971B〜975Bを制御することで、第1〜第5ヒータ91A〜95Aを停止して(ステップS35)。ターゲット物質冷却サブルーチンに基づく処理を終了してもよい。
以上の処理によって、ターゲット物質270は、タンク711の上端側から順に固化し得る。
【0068】
上述のように、第1〜第5ヒータ用温度センサ101B〜105Bは、ターゲット生成器71内のターゲット物質270のうち、第1〜第5ヒータ91A〜95Aがそれぞれ加熱した部分の温度T1〜T5を検出してもよい。温度分布制御部96Bは、第1〜第5ヒータ用温度センサ101B〜105Bが検出した温度T1〜T5に基づいて、第1〜第5ヒータ91A〜95Aを制御してもよい。
【0069】
以上のような構成により、ターゲット物質270の温度に応じて、段階的に第1〜第5ヒータ91A〜95Aの温度を制御することが可能となり、ターゲット物質270の温度を適切に調節し得る。例えば、ターゲット供給装置7Bは、目標温度T1t〜T5tを段階的に低くすることが可能となり、第1〜第5ヒータ91A〜95Aを同時に停止する場合と比べて、ターゲット物質270の急冷を抑制し得る。このため、ノズル712の先端での酸化物の析出、集積を抑制し得る。また、ターゲット供給装置7Bは、ターゲット物質270の全体が溶融したことを検出することが可能となり、適切なタイミングでEUV光の生成を開始し得る。さらに、ターゲット供給装置7Bは、ターゲット物質270の全体が固化したことを検出することが可能となり、適切なタイミングで第1〜第5ヒータ91A〜95Aを停止し得る。
【0070】
3.4 第3実施形態
3.4.1 概略
本開示の第3実施形態によれば、ターゲット供給装置は、ヒータと、ターゲット生成器の内部において内壁から離れた位置に設けられた弱加熱部とを備えてもよい。そして、ターゲット供給装置は、ターゲット生成器内のターゲット物質の温度が、ターゲット生成器の内壁から離れるに従って低くなるように、ヒータおよび弱加熱部を制御してもよい。
以上のような構成によって、ターゲット生成器の内壁でのターゲット物質の酸化物の堆積を抑制し得る。
【0071】
3.4.2 構成
図10は、第3実施形態に係るターゲット供給装置が適用されるEUV光生成装置の一部構成を概略的に示す。なお、EUV光生成装置のその他の部分の構成は
図2に示したものと同等であってよい。
【0072】
第3実施形態のEUV光生成装置1Cを構成するターゲット供給装置7Cと、第2実施形態のターゲット供給装置7Bとの相違点は、
図10に示すように、ターゲット制御装置80Cおよび温度分布制御部96Cの構成が異なる点と、第1〜第5ヒータ用温度センサ101B〜105Bの代わりに第1〜第3ヒータ用温度センサ101C〜103C(第1ヒータ用温度センサ101C、第2ヒータ用温度センサ102C、第3ヒータ用温度センサ103C)、弱加熱部用温度センサ104Cを設けた点と、第1〜第5ヒータ91A〜95Aの代わりに第1〜第3ヒータ91C〜93C(第1ヒータ91C,第2ヒータ92C、第3ヒータ93C)、弱加熱部94Cを設けた点とであってもよい。
【0073】
ターゲット供給装置7Cは、第1〜第3ヒータ91C〜93Cと、弱加熱部94Cと、制御部としての温度分布制御部96Cと、第1〜第3ヒータ用温度センサ101C〜103Cと、弱加熱部用温度センサ104Cとを備えてもよい。
第1,第2ヒータ91C,92Cは、第2実施形態の第1,第2ヒータ91A,92Aとそれぞれ同じ位置に設けられてもよい。第3ヒータ93Cは、第2実施形態の第3〜第5ヒータ93B〜95Bの設置範囲を包含するような位置に設けられてもよい。第3ヒータ93Cは、タンク711外壁をほぼ全周に渡って覆うように配置されてもよい。
【0074】
弱加熱部94Cは、良好な伝熱性を有し、少なくとも表面がターゲット物質270と反応しにくい物質で構成されているとよい。弱加熱部94Cは、例えば良好な伝熱性を有するモリブデンあるいはタングステンにより棒状に形成されてもよい。また、弱加熱部94Cは、例えば銅製のヒートパイプの表面に、ターゲット物質270と反応しにくい物質をコートしたものであってもよい。銅製のヒートパイプの表面にコートする物質としては、ターゲット物質270がスズの場合、モリブデンあるいはタングステンであってもよい。また、弱加熱部94Cの先端は、ノズル712の先端よりも若干上方に位置してもよい。弱加熱部94Cとノズル712との間には、ターゲット物質270を出力するための隙間が形成されてもよい。弱加熱部94Cの先端の形状は、ノズル712の内壁面を反映した形状でもよく、ノズル712内壁面から略一定の距離を離間して存在するような形状でもよい。
弱加熱部94Cは、タンク711の上面板を貫通して設けられた絶縁部714Cを介して、ターゲット生成器71の径方向の略中央に設置されてもよい。絶縁部714Cはタンク711の上面板に比べて熱伝達率が低いとよい。絶縁部714Cを介して弱加熱部94Cを設けることで、弱加熱部94Cとターゲット生成器71との熱伝導が抑制され得る。
弱加熱部94Cが良好な伝熱性を有するため、弱加熱部94Cの温度は、当該弱加熱部94Cに接触しているターゲット物質270の温度、すなわちターゲット生成器71の径方向の略中央に位置するターゲット物質270の温度とほぼ同じとなり得る。
【0075】
第3ヒータ用温度センサ103Cは、タンク711において第3ヒータ93Cよりも下側に設けられ、温度分布制御部96Cの第3温度コントローラ973Cに電気的に接続されてもよい。第3ヒータ用温度センサ103Cは、タンク711の温度を検出して、その温度をタンク711に収容されたターゲット物質270の温度として当該検出した温度に対応する信号を第3温度コントローラ973Cに送信してもよい。
弱加熱部用温度センサ104Cは、弱加熱部94Cにおけるターゲット生成器71から露出している部分に設けられ、温度分布制御部96Cの弱加熱部用温度コントローラ974Cに電気的に接続されてもよい。弱加熱部用温度センサ104Cは、弱加熱部94Cの温度を検出する。その温度を、ターゲット生成器71の径方向の略中央に位置するターゲット物質270の温度として当該検出した温度に対応する信号を弱加熱部用温度コントローラ974Cに送信してもよい。
【0076】
温度分布制御部96Cは、第1〜第3ヒータ電源961C〜963C(第1ヒータ電源961C、第2ヒータ電源962C、第3ヒータ電源963C)と、チラー964Cと、熱交換器965Cと、第1〜第3温度コントローラ971C〜973C(第1温度コントローラ971C、第2温度コントローラ972C、第3温度コントローラ973C)と、弱加熱部用温度コントローラ974Cと、を備えてもよい。
第1〜第3ヒータ電源961C〜963Cは、第1〜第3ヒータ91C〜93Cと、第1〜第3温度コントローラ971C〜973Cとにそれぞれ電気的に接続されてもよい。
第1〜第3ヒータ電源961C〜963Cは、第1〜第3温度コントローラ971C〜973Cからのそれぞれの信号に基づいて、第1〜第3ヒータ91C〜93Cをそれぞれ発熱させてもよい。
第1〜第3温度コントローラ971C〜973Cは、ターゲット制御装置80Cに電気的に接続されてもよい。第1〜第3温度コントローラ971C〜973Cは、第1〜第3ヒータ用温度センサ101C〜103Cからの信号に基づいて、タンク711の温度を検知し、各ヒータの温度制御のための信号を第1〜第3ヒータ91C〜93Cにそれぞれ送信してもよい。
【0077】
熱交換器965Cは、弱加熱部94Cの上端に設けられてもよい。
チラー964Cは、配管を介して熱交換器965Cに接続されてもよい。また、チラー964Cは、弱加熱部用温度コントローラ974Cに電気的に接続されてもよい。チラー964Cは、配管を介して熱交換器965Cとの間で熱媒体を循環させてもよい。これにより弱加熱部94Cは、ターゲット物質270を加熱してもよい。熱媒体は、ターゲット物質270の融点以上においても安定なものであってもよい。例えば、熱媒体は、油であってもよい。
弱加熱部用温度コントローラ974Cは、ターゲット制御装置80Cに電気的に接続されてもよい。弱加熱部用温度コントローラ974Cは、弱加熱部用温度センサ104Cからの信号に基づいて、弱加熱部94Cに接するターゲット物質270の温度を検知してもよい。次いで、弱加熱部用温度コントローラ974Cは、ターゲット物質270に径方向の温度勾配を与えるための信号をチラー964Cに送信してもよい。
ここで、弱加熱部用温度コントローラ974Cが設定する弱加熱部94Cの目標温度は、第1〜第3ヒータ91C〜93Cの目標温度よりも低く設定され得る。このため、ターゲット物質270は、ターゲット生成器71の径方向外側から高い温度で加熱され、ターゲット生成器71の径方向の略中央から外側よりも低い温度で加熱され得る。その結果、ターゲット生成器71の径方向の略中央に位置するターゲット物質270は、径方向外側に位置するターゲット物質270に対して、相対的に低い温度に維持され得る。つまり、弱加熱部94Cは、第1〜第3ヒータ91C〜93Cよりも低い温度でターゲット物質270を加熱し得る。
【0078】
3.4.3 動作
図11は、ターゲット物質昇温サブルーチンを示すフローチャートである。
図12は、第1〜第3ヒータおよび弱加熱部の目標温度をグラフ形式で示す。
図13は、ターゲット物質冷却サブルーチンを示すフローチャートである。
なお、第3実施形態では、EUV光の生成処理およびターゲット物質出力サブルーチンとして、
図5および
図8に示すような第2実施形態と同様の処理を行ってもよい。
【0079】
図5に示すステップS2において、第3実施形態では、
図11のターゲット物質昇温サブルーチンに基づく処理を行ってもよい。
具体的に、ターゲット制御装置80Cは、
図11に示すように、第1〜第3ヒータ91C〜93C、弱加熱部94Cの各目標温度T21t〜T23t(T21t,T22t,T23t),TCtを、温度T21t0〜T23t0(T21t0,T22t0,T23t0),TCt0に設定してもよい(ステップS41)。この温度T21t0〜T23t0,TCt0は、
図12に示すように、温度T21t0が最も高く、温度TCt0が最も低くてもよい。また、温度T21t0〜T23t0,TCt0は、ターゲット物質270の融点Tm以上であってもよい。温度T21t0〜T23t0,Tct0のそれぞれ温度差は、例えば10℃であってもよい。例えば、温度T21t0,T22t0,T23t0,TCt0は、それぞれ370℃,360℃,350℃,340℃であってもよい。
【0080】
次に、ターゲット制御装置80Cは、
図11に示すように、第1〜第3温度コントローラ、弱加熱部用温度コントローラ971C〜974Cに、目標温度T21t〜T23t,TCtを設定して、第1〜第3ヒータ91C〜93C、チラー964Cを駆動してもよい(ステップS42)。
このステップS42の処理によって、第1〜第3ヒータ91C〜93Cは、ノズル712の先端に向かうに従って温度が高くなるように、ターゲット生成器71内のターゲット物質270を加熱してもよい。一方で、弱加熱部94Cは、チラー964Cの駆動により、ターゲット生成器71の内壁713から離れるに従ってターゲット物質270の温度が低くなるように、ターゲット生成器71内のターゲット物質270を弱加熱してもよい。このような第1〜第3ヒータ91C〜93C、チラー964Cの駆動により、ターゲット物質270に、軸方向の温度勾配と径方向の温度勾配とが付き得る。
そして、第1〜第3ヒータ用温度センサ、弱加熱部用温度センサ101C〜104Cは、タンク711における第1〜第3ヒータ91C〜93Cが加熱した部分の温度、および、弱加熱部94Cが弱加熱したターゲット物質270の温度をそれぞれ検出してもよい。第1〜第3ヒータ用温度センサ,弱加熱部用温度センサ101C〜104Cは、この検出した温度に対応する信号を、第1〜第3ヒータ用温度コントローラ,弱加熱部用温度コントローラ971C〜974Cを介して、ターゲット制御装置80Cに送信してもよい。
【0081】
この後、ターゲット制御装置80Cは、第1〜第3ヒータ用温度コントローラ、弱加熱部用温度コントローラ971C〜974Cから受信した信号に基づいて、以下の式(13)〜(16)の条件を全て満たすか否かを判定してもよい(ステップS43)。
ΔTr21≧|T21t−T1| … (13)
ΔTr22≧|T22t−T2| … (14)
ΔTr23≧|T23t−T3| … (15)
ΔTrC1≧|TCt−TC| … (16)
T1:第1ヒータ用温度センサ101Cが検出した温度
T2:第2ヒータ用温度センサ102Cが検出した温度
T3:第3ヒータ用温度センサ103Cが検出した温度
TC:弱加熱部用温度センサ104Cが検出した温度
ΔTr21,ΔTr22,ΔTr23,ΔTrC1:温度制御の制御結果の許容範囲
【0082】
ここで、許容範囲ΔTr21〜ΔTr23(ΔTr21,ΔTr22,ΔTr23),ΔTrC1は、例えば、1℃以上3℃以下の範囲内のいずれかの温度であってもよい。また、許容範囲ΔTr21〜ΔTr23,ΔTrC1は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
ターゲット制御装置80Cは、ステップS43において、式(13)〜(16)の条件のうち、少なくとも1つの条件を満たしていないと判定した場合、所定時間経過後にステップS43の処理を再度行ってもよい。一方で、ターゲット制御装置80Cは、ステップS43において、上記式(13)〜(16)の条件を全て満たすと判定した場合、EUV光生成制御システム5に昇温完了信号を送信して(ステップS44)、ターゲット物質昇温サブルーチンに基づく処理を終了してもよい。すなわち、ターゲット制御装置80Cは、第1〜第3ヒータ用温度センサ,弱加熱部用温度センサ101C〜104Cが検出した温度T1〜T3,TCが、目標温度T21t〜T23t、TCtとほぼ等しくなったと判断した場合、昇温完了信号を送信してもよい。
以上の処理によって、ターゲット物質270は、ノズル712の先端側から、かつ、径方向外側から、徐々に溶融し得る。
【0083】
ターゲット制御装置80Cは、昇温完了信号を送信した後、
図5に示すように、ステップS3において、ターゲット物質出力サブルーチンに基づく処理を行い、EUV光を生成してもよい。具体的には、ターゲット制御装置80Cは、
図8に示すような処理を行ってもよい。なお、ターゲット制御装置80Cは、ステップS3の処理中において、ターゲット生成器71内のターゲット物質270に軸方向の温度勾配と径方向の温度勾配とを付ける制御を継続してもよい。
【0084】
この後、ターゲット制御装置80Cは、ステップS4において、ターゲット生成器71内のターゲット物質270の固化を開始するための立ち下げ信号を受信したと判定した場合、ステップS5のターゲット物質冷却サブルーチンに基づく処理を行い(ステップS5)、EUV光の生成処理を終了してもよい。このステップS5の処理において、第3実施形態では、
図13のターゲット物質冷却サブルーチンに基づく処理を行ってもよい。
【0085】
具体的に、ターゲット制御装置80Cは、
図13に示すように、第1〜第3ヒータ91C〜93C、弱加熱部94Cに対して設定中の目標温度T21t〜T23t,TCtから温度ΔTだけ減算した温度を、新しい目標温度T21t〜T23t,TCtとして設定してもよい(ステップS51)。この温度ΔTは、例えば、5℃以上10℃以下の範囲内のいずれかの温度であってもよい。
【0086】
次に、ターゲット制御装置80Cは、第1〜第3ヒータ用,弱加熱部用温度コントローラ971C〜974Cに、新しい目標温度T21t〜T23t,TCtを設定して(ステップS52)、第1〜第3ヒータ91C〜93C、弱加熱部94Cの発熱量を減少させてもよい。
そして、第1〜第3ヒータ用,弱加熱部用温度センサ101C〜104Cは、検出した温度に対応する信号を、第1〜第3ヒータ用,弱加熱部用温度コントローラ971C〜974Cを介してターゲット制御装置80Cに送信してもよい。
【0087】
この後、ターゲット制御装置80Cは、以下の式(17)〜(20)の条件を全て満たすか否かを判定してもよい(ステップS53)。
ΔTr31≧|T21t−T1| … (17)
ΔTr32≧|T22t−T2| … (18)
ΔTr33≧|T23t−T3| … (19)
ΔTrC2≧|TCt−TC| … (20)
ΔTr31,ΔTr32,ΔTr33,ΔTrC2:温度制御の制御結果の許容範囲
【0088】
すなわち、ターゲット制御装置80Cは、第1〜第3ヒータ用,弱加熱部用温度センサ101C〜104Cが検出した温度T1〜T3,TCが、目標温度T21t〜T23t,TCtとほぼ等しくなったか否かを判定してもよい。
ここで、許容範囲ΔTr31〜ΔTr33,ΔTrC2は、1℃以上3℃以下の範囲内のいずれかの温度であってもよい。また、許容範囲ΔTr31〜ΔTr33,ΔTrC2は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。さらに、許容範囲ΔTr31〜ΔTr33,ΔTrC2は、ΔTr21〜ΔTr23,ΔTrC1のいずれかと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0089】
ターゲット制御装置80Cは、ステップS53において、式(17)〜(20)の条件のうち、少なくとも1つの条件を満たしていないと判定した場合、所定時間経過後にステップS53の処理を再度行ってもよい。一方で、ターゲット制御装置80Cは、ステップS53において、上記の条件を全て満たすと判定した場合、第1ヒータ用温度センサ101Cが検出した温度T1がターゲット物質270の融点Tm未満か否かを判定してもよい(ステップS54)。このステップS54の条件を満たす場合、ターゲット物質270全体が固化したと判定し得る。
【0090】
このステップS54において、ターゲット制御装置80Cは、温度T1が融点Tm未満でないと判定した場合、ステップS51の処理を行う。ステップS51〜ステップS54の処理を繰り返し行うことによって、目標温度T21t〜T23t,TCtが、徐々に低くなり、ターゲット物質270は、ノズル712の先端に近い側の方が遠い方よりも温度が高くなる状態が維持され、かつ、内壁713から近い側よりも遠い側のターゲット物質の温度が低くなる状態が維持されたまま弱加熱され得る。
一方で、ターゲット制御装置80Cは、温度T1が融点Tm未満であると判定した場合、第1〜第3ヒータ91C〜93C、弱加熱部94Cを停止して(ステップS55)。ターゲット物質冷却サブルーチンに基づく処理を終了してもよい。
以上の処理によって、ターゲット物質270は、タンク711の上端側から、かつ、ターゲット生成器71の径方向中央から、徐々に固化し得る。
【0091】
上述のように、ターゲット供給装置7Cの温度分布制御部96Cは、ターゲット生成器71内のターゲット物質270に径方向の温度勾配を与えるように、第1〜第3ヒータ91C〜93C、弱加熱部94Cを制御してもよい。
これにより、内壁713でのターゲット物質270の酸化物の堆積を抑制し得る。
【0092】
また、温度分布制御部96Cは、第1〜第3ヒータ用,弱加熱部用温度センサ101C〜104Cが検出した温度T1〜T3,TCに基づいて、第1〜第3ヒータ91C〜93C、弱加熱部94Cを制御してもよい。
これにより、第2実施形態と同様の効果を奏し得る。
【0093】
なお、目標温度T21t〜T23tは、目標温度TCtよりも高ければ、同じであってもよい。この場合、ターゲット物質270に、径方向の温度勾配のみが付き得る。
【0094】
3.5 第4実施形態
3.5.1 概略
本開示の第4実施形態によれば、オンデマンド方式でドロップレットが生成されるよう構成されたEUV光生成装置、あるいは、コンティニュアスジェット方式でジェットが生成されるよう構成されたEUV光生成装置において、ターゲット物質の温度がノズルの先端に近い側の方が遠い方よりも高くなるように、複数のヒータを制御してもよい。
これにより、ターゲット生成器のノズル付近でのターゲット物質の酸化物の析出を抑制し、酸化物がノズル孔に詰まる可能性が低減し得る。さらには、酸化物がノズル孔に析出する可能性が低減し、ターゲット物質の出力方向の変化を抑制し得る。
【0095】
3.5.2 構成
図14は、第4実施形態に係るターゲット供給装置が適用されるEUV光生成装置の一部構成を概略的に示し、オンデマンド方式でドロップレットが生成される状態を示す。
図15は、第4実施形態に係るターゲット供給装置が適用されるEUV光生成装置の一部構成を概略的に示し、コンティニュアスジェット方式でジェットが生成される状態を示す。なお、
図13および
図14において、EUV光生成装置のその他の部分の構成は
図2に示したものと同等であってよい。
【0096】
第4実施形態のEUV光生成装置1Dを構成するターゲット供給装置7Dと、第3実施形態のターゲット供給装置7Cとの相違点は、
図14および
図15に示すように、ターゲット生成部70D、ターゲット制御装置80Dおよび温度分布制御部96Dの構成が異なる点と、弱加熱部94Cを設けない点であってもよい。
【0097】
ターゲット供給装置7Dは、ターゲット生成部70Dと、第1〜第3ヒータ91D〜93D(第1ヒータ91D、第2ヒータ92D、第3ヒータ93D)と、制御部としての温度分布制御部96Dと、第1〜第3ヒータ用温度センサ101D〜103D(第1ヒータ用温度センサ101D、第2ヒータ用温度センサ102D、第3ヒータ用温度センサ103D)とを備えてもよい。
ターゲット生成部70Dは、ターゲット生成器71と、圧力調整器72と、ピエゾ押出部74Dとを備えてもよい。ピエゾ押出部74Dは、ピエゾ素子741Dと、ピエゾ素子電源742Dとを備えてもよい。ピエゾ素子741Dは、チャンバ2内において、ノズル712の外周面に設けられてもよい。ピエゾ素子741Dの代わりに、高速でノズル712に押圧力を加えることが可能な機構が設けられてもよい。ピエゾ素子電源742Dは、チャンバ2の壁部を貫通して設けられた導入端子743Dを介して、ピエゾ素子741Dに接続されてもよい。ピエゾ素子電源742Dは、ターゲット制御装置80Dに接続されてもよい。
【0098】
第1〜第3ヒータ91D〜93D、第1〜第3ヒータ用温度センサ101D〜103Dは、第3実施形態の第1〜第3ヒータ91C〜93C、第1〜第3ヒータ用温度センサ101D〜103Dとそれぞれ同じ位置に設けられてもよい。
温度分布制御部96Dは、第2実施形態の第1〜第3ヒータ電源961C〜963C、第1〜第3温度コントローラ971C〜973Cとそれぞれ同様の機能を有する第1〜第3ヒータ電源961D〜963D(第1ヒータ電源961D,第2ヒータ電源962D,第3ヒータ電源963D)と、第1〜第3温度コントローラ971C〜973C(第1温度コントローラ971C、第2温度コントローラ972C,第3温度コントローラ973C)とを備えてもよい。
【0099】
3.5.3 動作
ターゲット制御装置80Dは、
図5〜
図9に示す処理と同様の処理を行い、軸方向の温度勾配を付けるようにターゲット生成器71内のターゲット物質270を加熱して、ノズル712の先端側からターゲット物質270を徐々に溶融させてもよい。また、ターゲット制御装置80Dは、ノズル712の先端に近い側の方が遠い方よりも温度が高くなる状態を維持したままターゲット物質270を放熱させて、タンク711の上端側からターゲット物質270を徐々に固化させてもよい。
【0100】
また、
図5に示すステップS3におけるEUV光生成時には、ターゲット制御装置80Dは、圧力調整器72に信号を送信して、タンク711内の圧力を所定の圧力に調節するよう構成されてもよい。この所定の圧力とは、ノズル孔にターゲット物質270によるメニスカス面(例えば、球面状の凸面)が形成される程度の圧力でよく、この状態ではドロップレット272は出力されなくともよい。
【0101】
その後、ターゲット制御装置80Dは、
図14に示すように、オンデマンド方式でドロップレット272を生成するためのドロップレット生成信号12Dをピエゾ素子電源742Dに送信してもよい。ドロップレット生成信号12Dを受信したピエゾ素子電源742Dは、ピエゾ素子741Dに対して所定のパルス状の電力を供給してもよい。
電力の供給を受けたピエゾ素子741Dは、電力の供給タイミングに合わせて変形し得る。これにより、ノズル712が高速で押圧され、ドロップレット272が出力され得る。タンク711内が所定の圧力に維持されていれば、電力供給のタイミングに合わせてドロップレット272が出力され得る。ドロップレット272出力直後に、再び所定の圧力によってノズル孔にターゲット物質270によるメニスカス面が形成され得る。
【0102】
ターゲット制御装置80Dは、
図15に示すように、コンティニュアスジェット方式でジェット273を生成するよう、タンク711内の圧力を調節するよう構成されてもよい。このときのタンク711内の圧力は上述の所定の圧力よりも高い圧力であってもよい。
そして、ターゲット制御装置80Dは、ドロップレット272を生成するための振動信号13Dをピエゾ素子電源742Dに送信してもよい。振動信号13Dを受信したピエゾ素子電源742Dは、ピエゾ素子741Dに対して当該ピエゾ素子741Dを振動させるための電力を供給してもよい。
電力の供給を受けたピエゾ素子741Dは、ノズル712を高速で振動させ得る。これにより、ジェット273は、一定周期で分断され、ドロップレット272として出力され得る。そして、このように出力されたドロップレット272にパルスレーザ光が照射されることで、EUV光が生成されてもよい。
【0103】
上述のように、ターゲット供給装置7Dにおいて、オンデマンド方式またはコンティニュアスジェット方式でドロップレット272が生成される場合でも、ターゲット物質270に軸方向の温度勾配を与えるように、第1〜第3ヒータ91D〜93Dを制御してもよい。
これにより、ノズル712付近でのターゲット物質270の酸化物の析出を抑制し、酸化物がノズル孔に詰まる可能性が低減し得る。さらには、酸化物がノズル孔に析出、集積する可能性が低減し、ドロップレット272の出力方向の変化を抑制し得る。
【0104】
なお、ターゲット供給装置7Dに、第3実施形態と同様の弱加熱部94C、弱加熱部用温度センサ104C、チラー964C、熱交換器965C、弱加熱部用温度コントローラ974Cを適用して、ターゲット物質270に径方向の温度勾配を与えてもよい。この場合、ターゲット物質270に、径方向と軸方向の両方の温度勾配を与えるようにしてもよいし、径方向の温度勾配のみを与えるようにしてもよい。
【0105】
3.6 第5実施形態
3.6.1 概略
本開示の第5実施形態によれば、静電引出方式でドロップレットが生成されるよう構成されたEUV光生成装置において、ターゲット物質の温度がノズルの先端に近い側の方が遠い方よりも高くなるように、複数のヒータを制御してもよい。
これにより、ターゲット生成器のノズル付近でのターゲット物質の酸化物の析出を抑制し、酸化物がノズル孔に詰まる可能性が低減し得る。さらには、酸化物がノズル孔に析出する可能性が低減し、ターゲット物質の出力方向の変化を抑制し得る。
【0106】
3.6.2 構成
図16は、第5実施形態に係るターゲット供給装置が適用されるEUV光生成装置の一部構成を概略的に示す。なお、EUV光生成装置のその他の部分の構成は
図2に示したものと同等であってよい。
【0107】
第5実施形態のEUV光生成装置1Eを構成するターゲット供給装置7Eと、第4実施形態のターゲット供給装置7Dとの相違点は、
図16に示すように、ターゲット生成部70E、ターゲット制御装置80Eの構成が異なる点であってもよい。
【0108】
ターゲット供給装置7Eは、ターゲット生成部70Eと、第1〜第3ヒータ91E〜93E(第1ヒータ91E、第2ヒータ92E、第3ヒータ93E)と、温度分布制御部96Dと、第1〜第3ヒータ用温度センサ101E〜103E(第1ヒータ用温度センサ101E、第2ヒータ用温度センサ102E、第3ヒータ用温度センサ103E)とを備えてもよい。
ターゲット生成部70Eは、ターゲット生成器71Eと、圧力調整器72と、静電引出部75Eとを備えてもよい。
【0109】
ターゲット生成器71Eは、タンク711と、ノズル712Eとを備えてもよい。ノズル712Eは、ノズル本体713Eと、先端保持部714Eと、出力部715Eとを備えてもよい。ノズル本体713Eは、タンク711の下面からチャンバ2内に突出するように設けられてもよい。先端保持部714Eは、ノズル本体713Eの先端に設けられてもよい。先端保持部714Eは、ノズル本体713Eよりも直径が大きい円筒状に形成されてもよい。先端保持部714Eは、ノズル本体713Eとは別体として構成され、ノズル本体713Eに固定されてもよい。
【0110】
出力部715Eは、略円板状に形成されてもよい。出力部715Eは、ノズル本体713Eの先端面に密着するように、先端保持部714Eによって保持されてもよい。出力部715Eの中央部分には、チャンバ2内に突出する円錐台状の突出部716Eが設けられてもよい。突出部716Eは、そこに電界が集中し易いようにするために設けられてもよい。突出部716Eには、突出部716Eにおける円錐台上面部を構成する先端部の略中央部に開口するノズル孔が設けられてもよい。ノズル孔はタンク711内部とチャンバ2内部とを連通する貫通孔であってよい。出力部715Eは、出力部715Eに対するターゲット物質270の濡れ性が低い材料で構成されるのが好ましい。出力部715Eが、出力部715Eに対するターゲット物質270の濡れ性が低い材料で構成されていない場合には、出力部715Eの少なくとも表面が、当該濡れ性が低い材料でコーティングされてもよい。
【0111】
タンク711と、ノズル712Eと、出力部715Eとは、電気絶縁材料で構成されてもよい。これらが、電気絶縁材料ではない材料、例えばモリブデンあるいはタングステンなどの金属材料で構成される場合には、チャンバ2とターゲット生成器71Eとの間や、出力部715Eと引出電極751Eとの間に電気絶縁材料が配置されてもよい。この場合、タンク711と後述するパルス電圧生成器753Eとが電気的に接続されてもよい。
【0112】
静電引出部75Eは、引出電極751Eと、電極752Eと、パルス電圧生成器753Eとを備えてもよい。引出電極751Eは、略円板状に構成されてもよい。引出電極751Eの中央には、ドロップレットが通過するための円形状の貫通孔754Eが形成されてもよい。引出電極751Eは、出力部715Eとの間に隙間が形成されるように、先端保持部714Eによって保持されてもよい。引出電極751Eは、貫通孔754Eの中心軸と、円錐台状の突出部716Eの回転対称軸とが一致するように保持されるのが好ましい。引出電極751Eは、導入端子755Eを介してパルス電圧生成器753Eに接続されてもよい。
【0113】
電極752Eは、タンク711内のターゲット物質270中に配置されてもよい。電極752Eは、フィードスルー756Eを介してパルス電圧生成器753Eに接続されてもよい。パルス電圧生成器753Eは、ターゲット制御装置80Eに接続されてもよい。パルス電圧生成器753Eは、タンク711内のターゲット物質270と引出電極751Eとの間に電圧を印加するよう構成されてもよい。これにより、ターゲット物質270が静電気力によってドロップレットの形状で引き出され得る。
【0114】
第1ヒータ91Eは、出力部715Eの下面であって突出部716Eを囲むように設けられてもよい。第2ヒータ92Eは、ノズル本体713Eにおいて先端保持部714Eから離れた位置に設けられてもよい。第3ヒータ93Eは、第4実施形態の第3ヒータ93Dと同じ位置に設けられてもよい。
第1ヒータ用温度センサ101Eは、出力部715Eに接して設けられてもよい。好ましくは、第1ヒータ用温度センサ101Eは、出力部715Eの内部であって、第1ヒータ91Eに対向する位置に設けられてもよい。第1ヒータ用温度センサ101Eは、出力部715Eの温度を検出してもよい。第2ヒータ用温度センサ102Eは、ノズル本体713Eにおける第2ヒータ92Eと先端保持部714Eとの間に設けられてもよい。第3ヒータ用温度センサ103Eは、第4実施形態の第3ヒータ用温度センサ103Dと同じ位置に設けられてもよい。
【0115】
3.6.3 動作
ターゲット制御装置80Eは、
図5〜
図9に示す処理と同様の処理を行い、ノズル712Eの先端に近い側の方が遠い方よりも温度が高くなるようにターゲット生成器71E内のターゲット物質270を加熱して、ノズル712Eの先端側からターゲット物質270を徐々に溶融させてもよい。また、ターゲット制御装置80Eは、ノズル712Eの先端に近い側の方が遠い方よりも温度が高くなる状態を維持したままターゲット物質270を放熱させて、タンク711の上端側からターゲット物質270を徐々に固化させてもよい。
【0116】
上述のように、いわゆる静電引出型のターゲット供給装置7Eによってドロップレットが生成される場合であっても、ターゲット物質270に軸方向の温度勾配を与えるように、第1〜第3ヒータ91E〜93Eを制御してもよい。
これにより、ノズル712E付近でのターゲット物質270の酸化物の析出、集積を抑制し、酸化物がノズル孔に詰まる可能性が低減し得る。さらには、酸化物がノズル孔に析出する可能性が低減し、ターゲット物質の出力方向の変化を抑制し得る。
【0117】
なお、ターゲット供給装置7Eに、第3実施形態と同様の弱加熱部94C、弱加熱部用温度センサ104C、チラー964C、熱交換器965C、弱加熱部用温度コントローラ974Cを適用して、ターゲット物質270に径方向の温度勾配を与えてもよい。この場合、ターゲット物質270に、径方向と軸方向の両方の温度勾配を与えるようにしてもよいし、径方向の温度勾配のみを与えるようにしてもよい。
【0118】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0119】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される修飾句「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0120】
7A,7B,7C,7D,7E…ターゲット供給装置、711…タンク、712,712E…ノズル、71,71E…ターゲット生成器、91A,92A,93A,94A,95A,91C,92C,93C,91D,92D,93D,91E,92E,93E…ヒータ、94C…弱加熱部、96A,96B,96C,96D…制御部としての温度分布制御部。