特許第6077826号(P6077826)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6077826ベンゾフルオレン化合物、半導体電極及び色素増感型太陽電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6077826
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】ベンゾフルオレン化合物、半導体電極及び色素増感型太陽電池
(51)【国際特許分類】
   C07C 255/42 20060101AFI20170130BHJP
   C07D 333/24 20060101ALI20170130BHJP
   C07D 207/337 20060101ALI20170130BHJP
   H01M 14/00 20060101ALI20170130BHJP
   C09B 23/00 20060101ALN20170130BHJP
【FI】
   C07C255/42CSP
   C07D333/24
   C07D207/337
   H01M14/00 P
   !C09B23/00 J
   !C09B23/00 G
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-238576(P2012-238576)
(22)【出願日】2012年10月30日
(65)【公開番号】特開2014-88338(P2014-88338A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】相原 秀典
(72)【発明者】
【氏名】大野 竜太
【審査官】 福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−287694(JP,A)
【文献】 特開2009−132922(JP,A)
【文献】 特開2008−186717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 14/00
C09B 23/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】
(式中、R及びRメチル基を表す。Arは炭素数1から6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、炭素数1から6のアルキル基で置換されていてもよいナフチル基、炭素数1から6のアルキル基で置換されていてもよいフルオレニル基、又は炭素数1から6のアルキル基で置換されていてもよいベンゾフルオレニル基を表す。Lはチオフェンジイル基又はピロールジイル基を表し、nは0または1を表す。)で示されるベンゾフルオレン化合物。
【請求項2】
請求項1に記載のベンゾフルオレン化合物を含むことを特徴とする半導体電極。
【請求項3】
請求項記載の半導体電極を用いてなる色素増感型太陽電池素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機色素化合物として有用なベンゾフルオレン化合物と、該ベンゾフルオレン化合物を含む半導体電極、及び該半導体電極を用いた色素増感型太陽電池に関する。本発明の有機色素として有用なベンゾフルオレン化合物は、大きな吸光係数と幅広い光吸収帯を持つことから、色素増感型太陽電池の光増感剤として有用であり、本発明は、これらを含む半導体電極、及びそれを負極とする色素増感太陽電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
色素増感型太陽電池においては、インジウム−酸化スズ(ITO)等の透明電極上にチタニア等の半導体微粒子を塗布した後に焼結し、ここに光増感作用を有する色素を吸着させたものを負極に用いる。対極としては、Ptやカーボンを用い、これら両極間をI/Iのような酸化還元対を含む電解液で満たした構造を持つ。光照射時には、ITO・酸化物半導体層を通過した光子が色素に吸収され、光励起状態となった色素から半導体への電子注入が起こり、色素は酸化状態となる。酸化状態の色素は、酸化還元対から電子を受取ることで還元される。
【0003】
色素増感型太陽電池に用いられる色素のうち、高価な金属元素を含まない有機色素に関しては、電子供与性部位(D)と電子受容性部位(A)とを、π共役系を有する連結基(π)にて結合したD−π−A型化合物が多く報告されている。このようなD−π−A型の有機色素における電子供与性部位としては、第三級アミンが汎用的に用いられ、窒素上の置換基としてビフェニリル基やフルオレニル基を有する有機色素が報告されているが(特許文献1〜3)、本発明のベンゾフルオレン化合物は全く知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−287694号公報
【特許文献2】特開2009−132922号公報
【特許文献3】特表2011−517363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
優れた光電変換効率を有し、かつ、耐久性に優れた色素増感型太陽電池用有機色素として有用なベンゾフルオレン化合物と該化合物を含む半導体電極、及び該半導体電極を用いてなる色素増感型太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、一般式(1)で示されるベンゾフルオレン化合物が色素増感型太陽電池用有機色素として有用であり、本化合物が紫外−可視領域に大きな吸光係数を持つことを見出し、また、本化合物を含む半導体電極及び該半導体電極を用いてなる色素増感型太陽電池が、通常のフルオレン構造を有する色素と比べ、優れた変換効率を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち本発明は、一般式(1)
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、R及びRは各々独立に炭素数1から6のアルキル基を表す。Arは炭素数1から6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、炭素数1から6のアルキル基で置換されていてもよいナフチル基、炭素数1から6のアルキル基で置換されていてもよいフルオレニル基、又は炭素数1から6のアルキル基で置換されていてもよいベンゾフルオレニル基を表す。Lは2価の連結基を表し、nは0または1を表す。)で示されるベンゾフルオレン化合物に関する。
【0010】
また本発明は、一般式(1)で示されるベンゾフルオレン化合物を含むことを特徴とする半導体電極に関する。
【0011】
さらに本発明は、一般式(1)で示されるベンゾフルオレン化合物を含むことを特徴とする半導体電極を用いてなる色素増感型太陽電池素子に関する。
【0012】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
【0013】
本発明のベンゾフルオレン化合物におけるR、R、Ar及びLの定義について説明する。
【0014】
及びRで表される炭素数1から6のアルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状アルキル基のいずれでもよく、具体的にはメチル基の他、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基などを例示することができる。色素増感太陽電池における増感色素として性能が良い点で直鎖状アルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基又はヘキシル基が好ましく、合成が容易である点でメチル基がさらに好ましい。
【0015】
Arで表される炭素数1から6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基としては、無置換フェニル基の他、一置換〜五置換のフェニル基のいずれでもよい。該アルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状アルキル基のいずれでもよく、さらに具体的にはメチル基の他、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、2−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基などを例示することができる。Arで表される炭素数1から6のアルキル基が置換していてもよいフェニル基としてさらに具体的には、フェニル基の他、4−トルイル基、メシチル基、3−エチルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基等を例示することができる。原料の入手が容易である点で、無置換フェニル基が好ましい。
【0016】
Arで表される炭素数1から6のアルキル基で置換されていてもよいナフチル基としては、無置換ナフチル基の他、一置換〜七置換のナフチル基のいずれでもよい。該アルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状アルキル基のいずれでもよく、具体的にはメチル基の他、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、2−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基などを例示することができる。色素増感太陽電池における増感色素として性能が良い点で直鎖状アルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基又はヘキシル基が好ましい。Arで表される炭素数1から6のアルキル基が置換していてもよいナフチル基としてさらに具体的には、ナフタレン−1−イル基、ナフタレン−2−イル基、4−メチルナフタレン−1−イル基、4−エチルナフタレン−1−イル基、4−プロピルナフタレン−1−イル基、4−ヘキシルナフタレン−1−イル基等を例示することができる。
【0017】
Arで表される炭素数1から6のアルキル基で置換されていてもよいフルオレニル基としては、2−フルオレニル基の他、9,9−ジメチルフルオレン−1−イル基、9,9−ジメチルフルオレン−2−イル基、9,9−ジエフルオレン−2−イル基、9,9−ジプロピルフルオレン−2−イル基、9,9−ジ(イソプロピル)フルオレン−2−イル基、9,9−ジブチルフルオレン−2−イル基、9,9−ジヘキシルフルオレン−2−イル基、9,9−ジ(シクロヘキシル)フルオレン−2−イル基、等を例示することができる。
【0018】
Arで表される炭素数1から6のアルキル基で置換されていてもよいベンゾフルオレニル基としては、炭素数1から6のアルキル基で置換されていてもよいベンゾ[a]フルオレニル基、炭素数1から6のアルキル基で置換されていてもよいベンゾ[b]フルオレニル基、炭素数1から6のアルキル基で置換されていてもよいベンゾ[c]フルオレニル基を挙げることができる。該アルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状アルキル基のいずれでもよく、具体的にはメチル基の他、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、2−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基などを例示することができる。Arで表される炭素数1から6のアルキル基が置換していてもよいベンゾフルオレニル基としてさらに具体的には、11,11−ジメチルベンゾ[a]フルオレン−8−イル基、11,11−ジメチルベンゾ[a]フルオレン−9−イル基、11,11−ジエチルベンゾ[a]フルオレン−9−イル基、11,11−ジプロピルベンゾ[a]フルオレン−9−イル基、11,11−ジ(イソプロピル)ベンゾ[a]フルオレン−9−イル基、11,11−ジブチルベンゾ[a]フルオレン−9−イル基、11,11−ジヘキシルベンゾ[a]フルオレン−9−イル基、11,11−ジ(シクロヘキシル)ベンゾ[a]フルオレン−9−イル基、11,11−ジメチルベンゾ[a]フルオレン−10−イル基、11,11−ジメチルベンゾ[a]フルオレン−2−イル基、11,11−ジメチルベンゾ[a]フルオレン−3−イル基、11,11−ジメチルベンゾ[a]フルオレン−4−イル基、11,11−ジメチルベンゾ[b]フルオレン−8−イル基、11,11−ジメチルベンゾ[b]フルオレン−9−イル基、11,11−ジエチルベンゾ[b]フルオレン−9−イル基、11,11−ジプロピルベンゾ[b]フルオレン−9−イル基、11,11−ジ(イソプロピル)ベンゾ[b]フルオレン−9−イル基、11,11−ジブチルベンゾ[b]フルオレン−9−イル基、11,11−ジヘキシルベンゾ[b]フルオレン−9−イル基、11,11−ジ(シクロヘキシル)ベンゾ[b]フルオレン−9−イル基、11,11−ジメチルベンゾ[b]フルオレン−10−イル基、11,11−ジメチルベンゾ[b]フルオレン−2−イル基、11,11−ジメチルベンゾ[b]フルオレン−3−イル基、11,11−ジメチルベンゾ[b]フルオレン−4−イル基、11,11−ジメチルベンゾ[b]フルオレン−5−イル基、11,11−ジメチルベンゾ[c]フルオレン−8−イル基、11,11−ジメチルベンゾ[c]フルオレン−9−イル基、11,11−ジエチルベンゾ[c]フルオレン−9−イル基、11,11−ジプロピルベンゾ[c]フルオレン−9−イル基、11,11−ジ(イソプロピル)ベンゾ[c]フルオレン−9−イル基、11,11−ジブチルベンゾ[c]フルオレン−9−イル基、11,11−ジヘキシルベンゾ[c]フルオレン−9−イル基、11,11−ジ(シクロヘキシル)ベンゾ[c]フルオレン−9−イル基、11,11−ジメチルベンゾ[c]フルオレン−10−イル基、11,11−ジメチルベンゾ[c]フルオレン−2−イル基、11,11−ジメチルベンゾ[c]フルオレン−3−イル基、11,11−ジメチルベンゾ[c]フルオレン−4−イル基、11,11−ジメチルベンゾ[c]フルオレン−5−イル基等を例示することができる。色素増感太陽電池における増感色素として性能が良い点で、炭素数1から6のアルキル基で置換されていてもよいベンゾ[a]フルオレニル基及び炭素数1から6のアルキル基で置換されていてもよいベンゾ[c]フルオレニル基が好ましく、合成が容易である点で11,11−ジメチルベンゾ[a]フルオレン−9−イル基がさらに好ましい。
【0019】
Lで表される2価の連結基は、アリーレン基又はヘテロアリーレン基を挙げることができ、色素増感太陽電池における増感色素として性能が良い点で、一般式(2)
【0020】
【化2】
【0021】
(式中、Xは酸素原子、硫黄原子、セレン原子、炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよい窒素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよいリン原子を表す。)で示される五員ヘテロアリーレン基が好ましい。
【0022】
一般式(2)のXにおける炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよい窒素原子としては、無置換窒素原子の他、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等に置換された窒素原子が挙げられる。
【0023】
具体的な一般式(2)で示される五員ヘテロアリーレン基としては、チオフェンジイル基、ピロールジイル基、フランジイル基、フェレノフェンジイル基等が挙げられ、合成容易な点でチオフェンジイル基又はピロールジイル基がさらに好ましい。
【0024】
本発明のベンゾフルオレン化合物は当業者の良く知る一般的な有機合成化学の手法を用いて製造することができ、例えば、ベンゾフルオレニル基を窒素上に有する4−ハロゲン置換アニリンに対して、2価の連結基Lに対応するアリール基又はヘテロアリール基を鈴木−宮浦反応、根岸反応、玉尾−熊田反応、又はStille反応等のカップリング反応を用いて導入し、次いでVilsmeyer反応等を用いて反応後のアリール基又はヘテロアリール基上にホルミル基を導入した後、該ホルミル基とシアノ酢酸とを、酸又は塩基の存在下に脱水縮合させることで製造することができる。ベンゾフルオレニル基を窒素上に有する4−ハロゲン置換アニリンは、例えば、特開2008−231047及び特開2008−201769に開示されている方法を用いて製造することができる。
【0025】
次に、本発明のベンゾフルオレン化合物を含むことを特徴とする半導体電極の製造方法について説明する。
【0026】
本発明のベンゾフルオレン化合物を含むことを特徴とする半導体電極は、金属半導体ペーストを作成する工程1、基板上に金属半導体薄膜を形成する工程2、及び金属半導体薄膜に本発明のベンゾフルオレン化合物を吸着させる工程3を経ることにより得られる。
【0027】
工程1は、金属半導体を溶媒、ポリマー及び界面活性剤等と混練し、金属半導体ペーストを作成する工程である。工程1に用いる金属半導体としては、例えばTiO、ZnO、In、SnO、ZrO、Ta、Nb、Fe、Ga、WO、SrTiO等の金属酸化物及び複合酸化物、AgI、AgBr、CuI、CuBr等の金属ハロゲン化物、ZnS、TiS、ZnO、In、SnS、SnS、ZrS、AgS、PbS、CdS、TaS、CuS、CuS、WS、MoS2、CuInS等の金属硫化物、CdSe、TiSe、ZrSe、BiSe、InSe、SnSe、SnSe、AgSe、TaSe、CuSe、CuSe、WSe、MoSe、CuInSe、CdTe、TiTe、ZrTe、BiTe、InTe、SnTe、SnTe、AgTe、TaTe、CuTe、CuTe、WTe、MoTe等の金属カルコゲン化物等を挙げることができ、入手容易である点でTiO、ZnO、SnO等の金属酸化物が好ましく、色素増感太陽電池における半導体電極としての性能が良い点でTiOがさらに好ましい。
【0028】
工程1で用いる金属半導体の形状は、金属半導体ペーストを作成できれば特に制限はないが、焼結後に表面積の大きな多孔質構造を形成できる点で微粒子状が好ましい。この際、微粒子の粒子径は、1nm〜10μmが好ましく、さらに好ましくは5〜400nmである。
【0029】
工程1で用いる溶媒としては、水の他、塩酸水溶液、硝酸水溶液、酢酸水溶液等の酸性水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液等の塩基性水溶液、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸メチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等のエステル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等を例示することができ、これらを任意の比で混合して用いてもよい。極性が高い点で水、酸性水溶液又はアルコールが好ましく、金属半導体の分散が良い点で水、硝酸水溶液、メタノール、又はエタノールがさらに好ましい。溶媒の使用量に特に制限は無く、金属半導体に対し好ましくは1〜200重量%、さらに好ましくは15〜50重量%から適宜選ばれた量を加えることができる。
【0030】
工程1で用いるポリマーとしては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリメタクリル酸エステル等を例示することができ、これらを任意の比で混合して用いてもよい。金属半導体の分散が良い点でPEGが好ましい。ポリマーの使用量に特に制限は無く、金属半導体に対し好ましくは1〜95重量%、さらに好ましくは1〜10重量%から適宜選ばれた量を加えることができる。
【0031】
工程1で用いる界面活性剤としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硝酸エステル塩等のアニオン界面活性剤、第四級アンモニウム塩等のカチオン界面活性剤、多価アルコール等の非イオン界面活性剤を例示することができ、これらを任意の比で混合して用いてもよい。金属半導体の分散が良い点で非イオン界面活性剤が好ましく、入手容易である点でオクチルフェノキシポリエトキシエタノール(商品名:Toriton X−100)がさらに好ましい。界面活性剤の使用量に特に制限は無く、金属半導体に対し好ましくは1〜95重量%、さらに好ましくは1〜10重量%から適宜選ばれた量を加えることができる。
【0032】
工程1における混練方法は、撹拌、振盪、ボールミル等、一般的な手法を用いることができる。
【0033】
金属半導体ペーストは市販品をそのまま用いてもよい。
【0034】
工程2は、基板上に金属半導体ペーストを塗布し、次いで焼結することにより、金属半導体薄膜を形成する工程である。基板としては、導電性及び光透過性を持つものであれば特に制限は無く、例えばITO、フッ素にドープされた酸化スズ(FTO)、又はアルミニウムにドープされた酸化亜鉛等の導電性透明酸化物半導体薄膜をコートしたガラス又はプラスチック基板が挙げられる。耐薬品性が高く電気抵抗が低い点から、FTOコートガラスが好ましい。
【0035】
工程2において金属半導体ペーストを塗布する方法に特に制限は無く、ディップ法、キャスト法、スピンコート法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法等を例示することができ、簡便に平坦な膜を得られる点でドクターブレード法又はスクリーン印刷法が好ましい。
【0036】
工程2における焼結条件は、用いる金属半導体の焼結体が生成する条件であれば特に制限は無い。TiOを金属半導体に用いる場合には、好ましくは200〜1000℃にて5分から10時間、さらに好ましくは400〜600℃にて15分から1時間の条件から適宜選ばれた条件で焼結することにより、良好な金属半導体薄膜を形成することができる。
【0037】
工程3は、本発明のベンゾフルオレン化合物を含む溶液を調製し、ここに金属半導体薄膜を浸漬させることにより、金属半導体薄膜に本発明のベンゾフルオレン化合物を吸着させ、本発明のベンゾフルオレン化合物を含むことを特徴とする半導体電極を得る工程である。
【0038】
工程3において本発明のベンゾフルオレン化合物を含む溶液の調製に用いる溶媒に特に制限は無く、本発明のベンゾフルオレン化合物が溶解すればよい。該溶媒として具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸メチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等のエステル、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等を例示することができ、これらを任意の比で混合して用いてもよい。溶媒の使用量に特に制限は無く、得られる溶液の濃度が好ましくは1×10−6〜1×10−2M、吸着が良好な点でさらに好ましくは5×10−5〜9×10−4Mの範囲から適宜選ばれた濃度となる量の溶媒を用いることができる。
【0039】
工程3において本発明のベンゾフルオレン化合物を含む溶液に金属半導体薄膜を浸漬させる際の温度に制限は無く、好ましくは−50〜150℃、さらに好ましくは0〜60℃の範囲から適宜選ばれた温度にて浸漬させることができる。
【0040】
工程3において本発明のベンゾフルオレン化合物を含む溶液に金属半導体薄膜を浸漬させる際の時間に制限は無く、好ましくは30分〜100時間、さらに好ましくは2〜24時間の範囲から適宜選ばれた時間にて浸漬させることができる。
【0041】
工程3において、本発明の有機色素を含む溶液に金属半導体薄膜を浸漬させた後は、当業者における通常の技術手段に従って後処理を施しても良い。該後処理としては、例えばアセトニトリルなどの有機溶媒を用いて金属半導体薄膜を洗浄し、乾燥させる処理などを挙げることが出来る。
【0042】
次に、本発明の半導体電極を用いてなる色素増感型太陽電池素子の製造方法について説明する。
【0043】
本発明の半導体電極を用いてなる色素増感型太陽電池素子は、スペーサーを介して本発明のベンゾフルオレン化合物を含むことを特徴とする半導体電極と対極を貼り合わせ、空隙に電解液を注入することで製造される。スペーサーの材質としては当業者が通常用いるものであれば特に制限はなく、具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテート、又は熱あるいは光可塑性樹脂などのポリマーフィルムが好ましい。スペーサーの膜厚は、好ましくは15μm〜1mm、さらに好ましくは15〜100μmの範囲から適宜選択することができる。対極としては当業者が通常用いるものであれば特に制限はなく、具体例としては、Fe、Al、Cu、Ti等の卑金属、Ag、Au、Pt、Rh、Ru等の貴金属、又はカーボンを例示することができる。耐薬品性が高い点で、貴金属が好ましく、導電性の点でPtがさらに好ましい。また、これらの卑金属、貴金属及びカーボンは、工程2に例示した導電性透明酸化物半導体薄膜をコートしたガラスあるいはプラスチック基板にコートして用いることもできる。電解液としては当業者が通常用いるものであれば特に制限はなく、具体例としては、ヨウ素、ヨウ化リチウム、ヨウ化イミダゾウリウム、チオシアン酸グアジニウム及び4−tert−ブチルピリジン等をアセトニトリル等に溶解したものを用いることができ、例えばChem.Commun.,2198−2200,2009年に開示されている組成のものを用いることができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明のベンゾフルオレニン化合物は増感色素として有用であり、これにより増感された半導体電極を用いてなる色素増感太陽電池の光電変換効率を向上させることができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び参考例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
実施例−1
【0047】
【化3】
【0048】
参考例−2で得た5−[4−{ビス(11,11−ジメチルベンゾ[a]フルオレン−9−イル)アミノ}フェニル]チオフェン−2−カルボアルデヒド(260mg,0.38mmol)のエタノール(2mL)溶液にシアノ酢酸(117mg,1.38mmol)とピペリジン(2.0μL,0.02mmol)を加え、1時間加熱還流した。反応終了後、反応混合物に水(50mL)を加え酢酸エチル(50mL)で抽出した。有機層を水(50mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、乾燥剤を濾別し溶媒を減圧留去した。得られた混合物を自動設定中圧カラムクロマトグラフィーシステム(山善社製)で精製することで、暗紫色固体の3−[5−[4−{N,N−ビス(11,11−ジメチルベンゾ[a]フルオレン−9−イル)アミノ}フェニル]チオフェン−2−イル]−2−シアノアクリル酸(41mg,14%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ1.70(s,12H),7.21−7.25(m,4H),7.37(d,J=4.2Hz,1H),7.39(d,J=2.0Hz,2H),7.45−7.49(m,2H),7.54−7.62(m,4H),7.74(d,J=8.2Hz,2H),7.77(d,J=8.2Hz,1H),7.88(dd,J=8.5,9.6Hz,4H),7.96(d,J=8.1Hz,2H),8.18(d,J=8.4Hz,2H),8.32(s,1H).
実施例−2
【0049】
【化4】
【0050】
参考例−4で得た5−[4−{N−(11,11−ジメチルベンゾ[a]フルオレン−9−イル)−N−フェニルアミノ}フェニル]ピロール−2−カルボアルデヒド(177mg,0.35mmol)とシアノ酢酸(36mg,0.42mmol)をトルエン(10mL)に溶解し、ここにピペリジンおよび酢酸のトルエン溶液(0.2M,2.11mL,0.42mmol)を加えた。反応混合物を130℃で3時間加熱還流した。放冷後,1N−塩酸(3mL)及び水(60mL)を加え、有機層を分離した後、水層をクロロホルム(50mL)で抽出した。有機層を合わせ、減圧乾固し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離溶媒:クロロホルム/メタノール=95/5)及び再結晶(ヘキサン/ジクロロメタン)にて精製し、目的物のE/Z混合物(57:43)を赤橙色固体として得た(146mg,66%)。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ1.69(s,6H),6.68(dd,J=2.3,4.2Hz,0.57H),6.73(dd,J=2.4,4.1Hz,0.43H),6.95(dd,J=2.1,4.2Hz,0.57H),7.07−7.24(m,5.43H),7.28−7.37(m,3H),7.42−7.61(m,4.43H),7.71(d,J=8.2,2H),7.83−7.91(m,2H),7.93(s,0.57H),7.95(m,0.43H),7.96(d,J=8.2Hz,0.57H),8.18(d,J=8.3Hz,0.43H),8.19(d,J=8.3Hz,0.57H),10.20(brs,0.57H),12.65(brs,0.43H).
実施例−3
【0051】
【化5】
【0052】
参考例−5で得た4−{N−(11,11−ジメチルベンゾ[a]フルオレン−9−イル)−N−フェニルアミノ}ベンズアルデヒド(388mg,0.88mmol)のエタノール(3mL)溶液にシアノ酢酸(68mg,0.79mmol)とピペリジン(88μL,0.04mmol)を加え、3時間加熱還流した。反応終了後、反応混合物に塩酸(50mL)を加え酢酸エチル(50mL)で抽出した。有機層を水(50mL)で二回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、乾燥剤を濾別し溶媒を減圧留去した。得られた混合物を自動設定中圧カラムクロマトグラフィーシステム(山善社製)で精製することで、暗紫固体の3−{4−{N−(11,11−ジメチルベンゾ[a]フルオレン−9−イル)−N−フェニルアミノ}フェニル−2−シアノアクリル酸(242mg,54%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ1.60(s,6H),6.93−6.99(m,2H),7.08−7.18(m,4H),7.24−7.30(m,2H),7.33−7.38(m,1H),7.42−7.48(m,1H),7.60−7.68(m,3H),7.72−7.87(m,3H),8.02−8.11(m,2H),9.64(s,1H).
比較例−1
【0053】
【化6】
【0054】
本化合物はJ.Am.Chem.Soc.,16701−16707,2006年に開示されている方法に従って合成した。
【0055】
比較例−2
【0056】
【化7】
【0057】
参考例−7で得た5−[4−{N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ}フェニル]ピロール−2−カルボアルデヒド(84mg,0.19mmol)とシアノ酢酸(19mg,0.22mmol)をトルエン(10mL)に溶解し、ここにピペリジンおよび酢酸のトルエン溶液(0.2M,1.10mL,0.22mmol)を加えた。反応混合物を110℃で3時間加熱還流した。放冷後,1N−塩酸(3mL)及び水(60mL)を加え、有機層を分離した後、水層をクロロホルム(50mL)で抽出した。有機層を合わせ、減圧乾固し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離溶媒:クロロホルム/メタノール=95/5)及び再結晶(ヘキサン/ジクロロメタン)にて精製し、目的物を赤橙色固体として得た(35mg,36%)。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ1.43(s,6H),6.70−6.68(m,1H),7.01−6.99(m,1H),7.08(dd,J=8.2,2.0Hz,1H),7.14(d,J=8.8Hz,2H),7.14(t,J=8.8Hz,1H),7.19(dd,J=8.5,1.0Hz,2H),7.23(d,J=2.0Hz,1H),7.35−7.28(m,4H),7.40(dd,J=6.4,1.0Hz,1H),7.48(d,J=8.7Hz,2H),7.62(d,J=8.2Hz,1H),7.66(d,J=6.6Hz,1H),7.94(s,1H),10.2(s,1H).
参考例−1
【0058】
【化8】
【0059】
9−クロロ−11,11−ジメチルベンゾ[a]フルオレン(10.9g,39.9mmol)のトルエン(200mL)溶液に、アルゴン雰囲気下にて4−チエニルアニリン(3.5g,20.0mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(1.83g,2.00mmol)、テトラフェニルほう酸トリ(tert−ブチル)ホスホニウム(2.08mg,3.99mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド(11.5g,120mmol)を加え、12時間還流した。反応終了後、反応混合物に1M塩酸(100mL)と水(300nL)を加え酢酸エチル(300mL)で抽出した。さらに、水層を酢酸エチル(150mL)で再度抽出した。抽出した有機層を合わせ、水(400mL)で洗浄した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、乾燥剤を濾別し溶媒を減圧留去した。残渣を自動設定中圧カラムクロマトグラフィーシステム(山善社製)で精製することで、褐色固体の2−[4−{ビス(11,11−ジメチルベンゾ[a]フルオレン−9−イル)アミノ}フェニル]チオフェン(12.5g,94.7%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ1.69(s,12H),7.08(dd,J=3.2,3.7Hz,1H),7.19(dd,J=1.9,6.8Hz,2H),7.23−7.28(m,4H),7.38(d,J=1.8Hz,2H),7.45(dd,J=7.2,7.6Hz,2H),7.53−7.56(m,4H),7.70(d,J=8.3Hz,2H),7.85−7.89(m,4H),7.95(d,J=8.0Hz,2H),8.17(d,J=8.3Hz,2H).
参考例−2
【0060】
【化9】
【0061】
参考例−1で得た2−[4−{ビス(11,11−ジメチルベンゾ[a]フルオレン−9−イル)アミノ}フェニル]チオフェン(4.2g,6.35mmol)の脱水DMF(30mL)溶液にオキシ塩化リン(0.71mL,7.64mmol)を加え、室温で1時間、60度で1時間反応させた。反応終了後、反応混合物に1M塩酸(100mL)と水(100nL)を加え酢酸エチル(200mL)で抽出した。得られた有機層を水(200mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、乾燥剤を濾別し溶媒を減圧留去した。残渣を自動設定中圧カラムクロマトグラフィーシステム(山善社製)で精製することで、褐色固体の5−[4−{ビス(11,11−ジメチルベンゾ[a]フルオレン−9−イル)アミノ}フェニル]チオフェン−2−カルボアルデヒド(3.2g,73.3%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ1.69(s,12H),7.21−7.26(m,4H),7.34(d,J=4.0Hz,1H),7.38(d,J=1.9Hz,2H),7.46(dd,J=7.2,7.4Hz,1H),7.53−7.59(m,5H),7.72−7.73(m,3H),7.85−7.90(m,4H),7.95(d,J=8.0Hz,2H),8.18(d,J=8.4Hz,2H),9.86(s,1H).
参考例−3
【0062】
【化10】
【0063】
9−クロロ−11,11−ジメチルベンゾ[a]フルオレン(1.05g,3.78mmol)のトルエン(20mL)溶液に、アルゴン雰囲気下にて4−(フェニルアミノ)ベンズアルデヒド(745mg,3.78mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(174mg,0.19mmol)、テトラフェニルほう酸トリ(tert−ブチル)ホスホニウム(198mg,0.38mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド(1.09g,11.3mmol)を加え、18時間還流した。反応終了後、反応混合物に1M塩酸(100mL)と水(300nL)を加え酢酸エチル(300mL)で抽出した。さらに、水層を酢酸エチル(150mL)で再度抽出した。次いで合わせた有機層を水(400mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、乾燥剤を濾別し溶媒を減圧留去した。得られた残渣を自動設定中圧カラムクロマトグラフィーシステム(山善社製)で精製することで、黄色固体の4−{N−(11,11−ジメチルベンゾ[a]フルオレン−9−イル)−N−フェニルアミノ}ベンズアルデヒド(1.66g,23.4%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ1.55(s,6H),7.09−7.11(m,2H),7.16−7.24(m,4H),7.35−7.37(m,3H),7.46−7.50(m,1H),7.55−7.59(m,1H),7.70−7.76(m,3H),7.85−7.90(m,2H),7.96(d,J=8.1Hz,1H),8.19(d,J=8.7Hz,1H),9.83(s,1H).
参考例−4
【0064】
【化11】
【0065】
アルゴン雰囲気下、60%−油分散水素化ナトリウム(480mg,12.0mmol)を取り、THF(80mL)に懸濁した。この懸濁液を氷冷し、ピロール(833μL,12.0mmol)を滴下した後、15分撹拌した。反応溶液に塩化亜鉛(1.96g,14.4mmol)を加え、室温にて15分撹拌した。ここに4−ブロモ−{N−(11,11−ジメチルベンゾ[a]フルオレン−9−イル)−N−フェニル}アニリン(1.96g,4.0mmol)、2−(ビス−tert−ブチルホスフィノ)ビフェニル(John−Phos,150mg,0.5mmol)及び酢酸パラジウム(57mg,0.26mmol)を加え、80℃にて29時間撹拌した。放冷後、低沸分を減圧留去し、残渣に水を加え、クロロホルムにて有機物を抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、乾燥剤を濾別し溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製し、目的の2−[4−{N−(11,11−ジメチルベンゾ[a]フルオレン−9−イル)−N−フェニルアミノ}フェニル]ピロールを得た(662mg,35%)。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ1.68(s,6H),6.30(dd,J=2.6,6.1Hz,1H),6.47(m,1H),6.85(m,1H),7.04(m,1H),7.10(dd,J=2.0,8.2Hz,1H),7.15(d,J=8.7Hz,2H),7.13−7.21(m,3H),7.26−7.33(m,2H),7.38(d,J=8.7Hz,2H),7.45(ddd,J=1.1,6.9,8.1Hz,1H),7.55(ddd,J=1.4,6.9,8.4Hz,1H),7.66(d,J=8.2Hz,1H),7.83(d,J=8.4Hz,1H),7.86(d,J=8.4Hz,1H),7.94(brd,J=7.6Hz,1H),8.17(brd,J=8.6Hz,1H),8.38(brs,1H,NH).
参考例−5
【0066】
【化12】
【0067】
アルゴン雰囲気下、DMF(1.55mL,20mmol)及びクロロホルム(20mL)を取り、氷冷下に撹拌した。ここにオキシ塩化リン(1.86mL,20mmol)をゆっくり加え、同温で15分撹拌し、1.0M−Vilsmeier試薬を得た。
【0068】
アルゴン雰囲気下、参考例−4で得た2−[4−{N−(11,11−ジメチルベンゾ[a]フルオレン−9−イル)−N−フェニルアミノ}フェニル]ピロール(222mg,0.47mmol)をクロロホルム(10mL)に溶解し、氷冷した。ここに、先に調製した1.0M−Vilsmeier試薬(792μL,792mmol)を加え、室温にて30分撹拌した後、65℃にてさらに30分撹拌した。放冷後、反応混合物に1.0M−酢酸ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムにて有機物を抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、乾燥剤を濾別し溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製し、目的の5−[4−{N−(11,11−ジメチルベンゾ[a]フルオレン−9−イル)−N−フェニルアミノ}フェニル]ピロール−2−カルボアルデヒドを得た(139mg,55%)。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ1.69(s,6H),6.57(dd,J=2.6,4.0Hz,1H),7.01(dd,J=2.4,4.0Hz,1H),7.10(m,1H),7.12(dd,J=2.0,8.1Hz,1H),7.17(d,J=8.8Hz,2H),7.18−7.23(m,2H),7.29−7.34(m,3H),7.43−7.46(m,1H),7.46(d,J=8.8Hz,2H),7.56(ddd,J=1.3,6.8,8.5Hz,1H,m),7.69(d,J=8.1Hz,1H),7.85(d,J=8.4Hz,1H),7.88(d,J=8.4Hz,1H),7.95(brd,J=7.5Hz,1H),8.18(brd,J=8.5Hz,1H),9.37(brs,1H,NH),9.48(s,1H,CHO).
参考例−6
【0069】
【化13】
【0070】
アルゴン雰囲気下、水素化ナトリウム(300mg,7.5mmol)を取り、THF(30mL)に懸濁した。この懸濁液を氷冷し、ピロール(520μL,7.5mmol)を滴下した後、15分撹拌した。反応溶液に0.45M−塩化亜鉛−THF溶液(20mL,9.0mmol)を加え、室温にて15分撹拌した。ここに4−ブロモ−{N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニル}アニリン(1.10g,2.5mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン・テトラフルオロホウ酸塩(58mg,0.2mmol)及びパラジウム−dba錯体(46mg,0.05mmol)を加え、80℃にて24時間撹拌した。放冷後、低沸分を減圧留去し、残渣に水を加え、クロロホルムにて有機物を抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、乾燥剤を濾別し溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製し、目的の2−[4−{N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ}フェニル]ピロールを得た(270mg,25%)。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ1.41(s,6H),6.30−6.28(m,1H),6.47−6.45(m,1H),6.85−6.84(m,1H),7.03(tt,J=7.3,1.1Hz,1H),7.04(dd,J=8.2,2.0Hz,1H),7.13(d,J=8.7Hz,2H),7.15(dd,J=7.9,1.1Hz,2H),7.20(d,J=2.0Hz,1H),7.33−7.24(m,4H),7.37(d,J=8.7Hz,2H),7.38(d,J=7.5Hz,1H),7.58(d,J=8.2Hz,1H),7.63(d,J=7.5Hz,1H),8.38(brs,1H).
参考例−7
【0071】
【化14】
【0072】
アルゴン雰囲気下、DMF(1.55mL,20mmol)及びクロロホルム(20mL)を取り、氷冷下に撹拌した。ここにオキシ塩化リン(1.86mL,20mmol)をゆっくり加え、同温で15分撹拌し、1.0M−Vilsmeier試薬を得た。
【0073】
アルゴン雰囲気下、参考例−6で得た2−[4−{N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ}フェニル]ピロール(196mg,0.46mmol)をクロロホルム(10mL)に溶解し、氷冷した。ここに、先に調製した1.0M−Vilsmeier試薬(780μL,780mmol)を加え、室温にて30分撹拌した後、65℃にてさらに30分撹拌した。放冷後、反応混合物に1.0M−酢酸ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムにて有機物を抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、乾燥剤を濾別し溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製し、目的の5−[4−{N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ}フェニル]ピロール−2−カルボアルデヒドを得た(120mg,58%)。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ1.43(s,6H),6.57−6.55(m,1H),7.01−6.99(m,1H),7.07(dd,J=8.1,2.0Hz,1H),7.08(t,J=7.3Hz,1H),7.14(d,J=8.8Hz,2H),7.17(dd,J=8.6,1.1Hz,2H),7.21(d,J=2.0Hz,1H),7.40(d,J=7.0Hz,1H),7.45(d,J=8.8Hz,2H),7.61(d,J=8.2Hz,1H),7.65(d,J=7.0Hz,1H),9.39(brs,1H),9.47(s,1H).
試験例
Solaronix社製酸化チタンペースト(Ti−Nanoxide D,0.5mL)をFTOガラス基板上に取り、50μm程度の厚みに塗布した。これを電気炉にて焼成した(450℃,30分)。放冷後、基板を実施例−1に示す本発明のベンゾフルオレン化合物のエタノール溶液(0.5mM)に入れ、振盪恒温器を用いて40℃で2時間振盪した。基盤をアセトニトリルで洗浄後、乾燥し、半導体電極を得た。
【0074】
ヨウ化1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム(160mg,0.60mmol)、ヨウ化リチウム(13mg,0.10mmol)、4−tert−ブチルピリジン(68mg,0.50mmol)、ヨウ素(6.4mg,0.05mmol)及びグアニジンチオシアン酸塩(12mg,0.10mmol)を取り、無水アセトニトリル(1mL)を加え、電解質溶解液を調製した。
【0075】
先に作成した半導体電極及びプラチナを蒸着したITOガラスを、高分子製スペーサーを介して張り合わせ、間隙に電解質溶解液を10μL注入し、色素増感太陽電池素子を得た。色素増感太陽電池素子の電流密度−電圧特性はソーラーシミュレータ(AM1.5,100mW/cm)を用いて測定した。得られた電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(ff)、光電変換効率(η)を表1に示した。
【0076】
表1に示すその他の色素増感太陽電池素子も、有機色素に用いた化合物を表1に示す化合物に置き換えた以外は全く同じ方法で作製した。
【0077】
【表1】
【0078】
実施例−1と比較例−1、及び実施例−2と比較例−2は、それぞれ窒素上の置換基がベンゾフルオレニル基であるか、既報のフルオレニル基であるかの違いであり、これらを対比することにより、明らかにベンゾフルオレン構造の導入により光電変換効率が向上していることがわかる。