特許第6077907号(P6077907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6077907拡散剤組成物および不純物拡散層の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6077907
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】拡散剤組成物および不純物拡散層の形成方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/225 20060101AFI20170130BHJP
   H01L 31/18 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   H01L21/225 R
   H01L31/04 440
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-72001(P2013-72001)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-197589(P2014-197589A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2015年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100134256
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 武司
(72)【発明者】
【氏名】宮城 忠
【審査官】 柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−253145(JP,A)
【文献】 特開2012−019162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/225
H01L 31/18
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物拡散成分を含有し、半導体基板への不純物拡散の形成に用いられる拡散剤組成物であって、
前記不純物拡散成分は、重量平均分子量が350〜5000であり、−O−Si−O−結合と−P(=O)n−結合[nは0または1]とを有し、
前記−O−Si−O−結合が下記式で表される2〜3官能性基を有する結合である拡散剤組成物。
【化1】
[式中、Rはそれぞれ独立に有機基または水酸基である。]
【請求項2】
前記不純物拡散成分は、下記式で表される骨格を有する請求項1に記載の拡散剤組成物。
【化2】
[式中、Xはそれぞれ独立に前記Rまたは架橋酸素であり(ただし、少なくとも1つのXは前記Rである)、Yはそれぞれ独立に前記R、架橋酸素であり、nは0または1である。]
【請求項3】
半導体基板に、請求項1または2に記載の拡散剤組成物を塗布してパターンを形成するパターン形成工程と、
前記拡散剤組成物中のリン原子を前記半導体基板に拡散させる拡散工程と、
を含むことを特徴とする不純物拡散層の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板に不純物拡散層を形成するための拡散剤組成物、および不純物拡散層の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池の製造において、半導体基板中に、たとえばN型の不純物拡散層を形成する場合には、N型の不純物拡散成分を含む拡散剤を半導体基板表面に塗布された拡散剤からN型の不純物拡散成分を拡散させて、N型不純物拡散層を形成していた。具体的には、まず、半導体基板表面に熱酸化膜を形成し、続いてフォトリソグラフィ法により所定のパターンを有するレジストを熱酸化膜上に積層し、当該レジストをマスクとして酸またはアルカリによりレジストでマスクされていない熱酸化膜部分をエッチングし、レジストを剥離して熱酸化膜のマスクを形成する。そしてN型の不純物拡散成分を含む拡散剤を塗布してマスクが開口している部分に拡散組成物膜が形成される。その部分を高温により拡散させてN型不純物拡散層を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−9627
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の塗布(印刷)型の拡散剤組成物は、通常、不純物拡散成分とバインダー、希釈溶剤とが独立して存在している。従来使用されていた不純物拡散成分は比較的低分子であるため、熱により容易に昇華する。そのため熱拡散工程において非塗布(印刷)部分に不純物拡散成分が飛散し、余計な不純物拡散が起こっていた。特に、近年の高効率太陽電池ではバックコンタクト型を採用される場合が多いため、P層とN層との間のコンタミネーションを極力避ける必要性が高まっており、熱処理により不純物拡散成分が非塗布(印刷)部分に飛散することを抑制する技術が重要となっている。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、拡散剤組成物を基板に塗布や印刷により形成した後に熱処理を実施したときに当該拡散剤組成物に含まれる不純物拡散成分が塗布部分から非塗布部分に飛散することを抑制することができる技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、半導体基板への不純物拡散成分の形成に用いられる拡散剤組成物であって、−O−Si−O−結合と−P(=O)n−結合[nは0または1]とを有し、
前記−O−Si−O−結合が下記式で表される2〜3官能性基を有する結合である。
【化1】
[式中、Rはそれぞれ独立に有機基または水酸基である。]
【0007】
上記態様の拡散剤組成物は下記式で表される骨格を有してもよい。
【化2】
[式中、Xはそれぞれ独立に前記Rまたは架橋酸素であり(ただし、少なくとも1つのXは前記Rである)、Yはそれぞれ独立に前記R、架橋酸素であり、nは0または1である。]
【0008】
本発明の他の態様は、不純物拡散層の形成方法である。当該不純物拡散層の形成方法は、半導体基板に、上述したいずれかの態様の拡散剤組成物を塗布してパターンを形成するパターン形成工程と、前記拡散剤組成物中のリン原子を前記半導体基板に拡散させる拡散工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明のさらに他の態様は、太陽電池である。当該太陽電池は、半導体基板と上述した態様の不純物拡散層の形成方法で形成された不純物拡散層とを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、拡散剤組成物を基板に塗布した後に熱処理を実施したときに不純物拡散成分が塗布部分から非塗布部分に飛散することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1(A)〜(D)は、実施の形態に係る不純物拡散層の形成方法を含む太陽電池の製造方法を説明するための工程断面図である。
図2図2(A)〜(D)は、実施の形態に係る不純物拡散層の形成方法を含む太陽電池の製造方法を説明するための工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態に係る拡散剤組成物は、半導体基板への不純物拡散成分の形成に好適に用いられる。当該半導体基板の用途として、太陽電池が好適である。
【0013】
実施の形態に係る拡散剤組成物は、−O−Si−O−結合と−P(=O)n−結合[nは0または1]とを有し、上記−O−Si−O−結合は下記式で表される2〜3官能性基を有する結合である。つまり、実施の形態に係る拡散剤組成物は、不純物拡散成分が、被膜または被膜パターン形成のためのバインダー成分としての機能も兼ね備えており、拡散制御性を高めることができる。また、2〜3官能性基を有することにより、不純物拡散成分にバインダー成分としての機能を付与(高分子量化)した場合にも不純物拡散成分の安定性が良好になる。以下、−O−Si−O−結合と−P(=O)n−結合[nは0または1]とを有し、上記−O−Si−O−結合は下記式で表される2〜3官能性基を有する結合である化合物について、不純物拡散成分(A)(以下(A)成分ということがある)として説明する。
【化3】
上式中、Rはそれぞれ独立に有機基または水酸基である。有機基としては、たとえば、置換基を有していても良いアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0014】
アルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれでもよい。
直鎖状のアルキル基としては、炭素数が1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10が最も好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基等が挙げられる。
【0015】
分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数が3〜20であることが好ましく、3〜15であることがより好ましく、3〜10が最も好ましい。具体的には、例えば、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基などが挙げられる。
【0016】
環状のアルキル基としては、炭素数3〜20が好ましく、炭素数3〜12がより好ましく、多環式でもよく、単環式でもよい。単環式の環状のアルキル基としては、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基であり、具体的にはシクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等から1個以上の水素原子を除いた基が挙げられる。多環式の環状のアルキル基としては、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基であり、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等から1個以上の水素原子を除いた基が挙げられる。
【0017】
アルコキシ基としては、炭素数1〜20であることが好ましく、アルコキシ基におけるアルキル基の部分は直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれでもよく、上記アルキル基と同様のものが挙げられる。
【0018】
アリール基は芳香族炭化水素基であり、炭素数6〜20が好ましく、例えばベンゼン、ビフェニル、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環から1個以上の水素原子を除いた基;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環から1個以上の水素原子を除いた基;等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
【0019】
アルケニル基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよく、炭素数が2〜10であることが好ましく、2〜5がより好ましい。直鎖状のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、ブチニル基などが挙げられる。分岐鎖状のアルケニル基としては、例えば、1−メチルプロペニル基、2−メチルプロペニル基などが挙げられる。
上記アルキル基、アリール基、アルケニル基はそれぞれ置換基を有していてもよく、当該置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基もしくはアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜5のアルケニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基等が挙げられる。
【0020】
実施の形態に係る拡散剤組成物における上記−O−Si−O−結合は2官能性基を有する結合であることが好ましい。2官能性基を有することで(A)成分の安定性が向上し、経時的な分子量の増大を抑制することができる。
【0021】
また−P(=O)n−結合において、nは1であることが好ましい。後述の製造方法における、2官能もしくは3官能のクロロシラン系化合物もしくはシラン化合物との反応に用いるものとして、リン酸骨格を有する化合物であるが、亜リン酸骨格を有する化合物よりも反応の進行が容易と考えられるためである。
【0022】
不純物拡散成分(A)における−O−Si−O−結合と−P(=O)n−結合とを含む骨格(以下、Si−O−P骨格と記載する場合がある)として、下記式で表される骨格が挙げられる。
【化4】
上式中、Xはそれぞれ独立に前記Rまたは架橋酸素であり(ただし、少なくとも1つのXは上述したRである)、Yはそれぞれ独立に上述したR、架橋酸素であり、nは0または1である。
【0023】
上記式中におけるXについて、少なくとも1つのXは上述したRである。不純物拡散成分(A)は、Xが2つともRである骨格を有していることが好ましく、不純物拡散成分(A)全体のうち、50〜100モル%有していることがより好ましい。Xが2つともRである骨格の(A)全体における割合が高いほど、耐湿性が向上し、不純物拡散成分(A)の安定性が向上する。
【0024】
実施の形態に係る拡散剤組成物における不純物拡散成分(A)の重量平均分子量は、350〜5000が好ましく、350〜3000がより好ましく、400〜2000がさらに好ましい。拡散剤組成物の重量平均分子量が上記範囲となることで、拡散コントラスト、塗布性もしくは印刷性、または溶剤溶解性が向上する。なお350より小さいと、拡散コントラストが低下し、5000より大きいと、塗布性または印刷性が不良となる。
【0025】
不純物拡散成分(A)は、例えば、NEW GLASS Vol.22 No.2 2007(p15〜20)、Journal of the Ceramic Society of Japan 111[3]2003(p171−175)、Journal of Non-crystalline Solids 306(2002)292-299、 特開2006−205725公報等に記載の製造方法を参考にすればよく、例えばジフェニルジクロロシラン等の2官能クロロシラン系化合物または3官能クロロシラン系化合物とリン酸等とを、不活性ガスの雰囲気中で反応させることにより、得ることができる。反応時の温度を調節することで、重量平均分子量を適宜設定することができる。
【0026】
また原料のクロロシラン系化合物の代わりに、例えば下記一般式(3)〜(4)の2〜3官能のシラン化合物等を用いてもよい。また適宜、下記一般式(5)の4官能のアルコキシシラン化合物を用いてもよい。これらのシラン化合物を用いた場合は、副生成物としての塩化水素が発生しないため好ましい。
31Si(OR32(OR33(OR34 (3)
4142Si(OR43(OR44 (4)
Si(OR21(OR22(OR23(OR24 (5)
[一般式(3)中、R31は、水素原子又は有機基を表す。R32、R33及びR34は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、アリール基を表す。e、f及びgは、0≦e≦3、0≦f≦3、0≦g≦3であって、かつe+f+g=3の条件を満たす整数である。]
[一般式(4)中、R41及びR42は、水素原子又は有機基を表す。R43及びR44は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、アリール基を表す。h及びiは、0≦h≦2、0≦i≦2であって、かつh+i=2の条件を満たす整数である。]
[一般式(5)中、R21、R22、R23及びR24は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、アリール基を表す。a、b、c及びdは、0≦a≦4、0≦b≦4、0≦c≦4、0≦d≦4であって、かつa+b+c+d=4の条件を満たす整数である。]
【0027】
上記一般式(3)〜(4)中、有機基は前記Rの有機基と同様であり、置換基を有していても良いアルキル基、アリール基、アルケニル基であることが好ましい。上記一般式(3)〜(5)中、アルキル基及びアリール基については前記Rで挙げた炭素数1〜5のアルキル基、アリール基と同様である。下記一般式(3)の2官能のシラン化合物の具体例としては、メチルジメトキシシラン、メチルメトキシエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルメトキシプロポキシシラン、メチルメトキシペンチルオキシシラン、メチルメトキシフェニルオキシシラン、エチルジプロポキシシラン、エチルメトキシプロポキシシラン、エチルジペンチルオキシシラン、エチルジフェニルオキシシラン、プロピルジメトキシシラン、プロピルメトキシエトキシシラン、プロピルエトキシプロポキシシラン、プロピルジエトキシシラン、プロピルジペンチルオキシシラン、プロピルジフェニルオキシシラン、ブチルジメトキシシラン、ブチルメトキシエトキシシラン、ブチルジエトキシシラン、ブチルエトキシプロポキシシシラン、ブチルジプロポキシシラン、ブチルメチルジペンチルオキシシラン、ブチルメチルジフェニルオキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジペンチルオキシシラン、ジメチルジフェニルオキシシラン、ジメチルエトキシプロポキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルメトキシプロポキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルエトキシプロポキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジペンチルオキシシラン、ジプロピルジフェニルオキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジブチルジプロポキシシラン、ジブチルメトキシペンチルオキシシラン、ジブチルメトキシフェニルオキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルエチルジプロポキシシラン、メチルエチルジペンチルオキシシラン、メチルエチルジフェニルオキシシラン、メチルプロピルジメトキシシラン、メチルプロピルジエトキシシラン、メチルブチルジメトキシシラン、メチルブチルジエトキシシラン、メチルブチルジプロポキシシラン、メチルエチルエトキシプロポキシシラン、エチルプロピルジメトキシシラン、エチルプロピルメトキシエトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルメトキシエトキシシラン、プロピルブチルジメトキシシラン、プロピルブチルジエトキシシラン、ジブチルメトキシエトキシシラン、ジブチルメトキシプロポキシシラン、ジブチルエトキシプロポキシシラン、フェニルジメトキシシラン、フェニルメトキシエトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、フェニルメトキシプロポキシシラン、フェニルメトキシペンチルオキシシラン、フェニルメトキシフェニルオキシシラン等が挙げられる。なお、上記具体例における炭素数3以上のアルキル基又はアルコキシ基については、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。ブチル(又はブトキシ)基について、好ましくはn−ブチル(n−ブトキシ)基である。以降の具体例についても同様である。
【0028】
下記一般式(4)の3官能のシラン化合物の具体例としては、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリペンチルオキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、エチルトリペンチルオキシシラン、エチルトリフェニルオキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリブトキシシラン、プロピルトリペンチルオキシシラン、プロピルトリフェニルオキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、ブチルトリブトキシシラン、ブチルトリペンチルオキシシラン、ブチルトリフェニルオキシシラン、メチルモノメトキシジエトキシシラン、エチルモノメトキシジエトキシシラン、プロピルモノメトキシジエトキシシラン、ブチルモノメトキシジエトキシシラン、メチルモノメトキシジプロポキシシラン、メチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、メチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、エチルモノメトキシジプロポキシシラン、エチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、エチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、プロピルモノメトキシジプロポキシシラン、プロピルモノメトキシジペンチルオキシシラン、プロピルモノメトキシジフェニルオキシシラン、ブチルモノメトキシジプロポキシシラン、ブチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、ブチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、メチルメトキシエトキシプロポキシシラン、プロピルメトキシエトキシプロポキシシラン、ブチルメトキシエトキシプロポキシシラン、メチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン、エチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン、プロピルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン、ブチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリペンチルオキシシラン等が挙げられる。
【0029】
下記一般式(5)の4官能のシラン化合物の具体例としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラペンチルオキシシラン、テトラフェニルオキシシラン、トリメトキシモノエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、トリエトキシモノメトキシシラン、トリメトキシモノプロポキシシラン、モノメトキシトリブトキシシラン、モノメトキシトリペンチルオキシシラン、モノメトキシトリフェニルオキシシラン、ジメトキシジプロポキシシラン、トリプロポキシモノメトキシシラン、トリメトキシモノブトキシシラン、ジメトキシジブトキシシラン、トリエトキシモノプロポキシシラン、ジエトキシジプロポキシシラン、トリブトキシモノプロポキシシラン、ジメトキシモノエトキシモノブトキシシラン、ジエトキシモノメトキシモノブトキシシラン、ジエトキシモノプロポキシモノブトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシモノエトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシモノブトキシシラン、ジプロポキシモノエトキシモノブトキシシラン、ジブトキシモノメトキシモノエトキシシラン、ジブトキシモノエトキシモノプロポキシシラン、モノメトキシモノエトキシモノプロポキシモノブトキシシラン等のテトラアルコキシシランが挙げられ、中でも反応性の点からテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましい。
【0030】
また、実施の形態に係る拡散剤組成物は、有機溶剤を含んでもよい。有機溶剤は特に限定されないが、たとえば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2−メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、4−メトキシブチルアセテート、2−メチル−3−メトキシブチルアセテート、2−エトキシブチルアセテート、4−エトキシブチルアセテート、4−プロポキシブチルアセテート、メチルイソブチルケトン、エチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート、エチル−3−プロポキシプロピオネート、プロピル−3−メトキシプロピオネート、イソプロピル−3−メトキシプロピオネート、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、アセト酢酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ベンジルメチルエーテル、ベンジルエチルエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、ブタノール、イソブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ガンマブチロラクトンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
以上説明した実施の形態に係る拡散剤組成物によれば、基板塗布後に不純物拡散処理として熱処理を実施したときに、熱処理後に残存する−O−Si−O−結合と不純物拡散成分としてのリン原子とが結合しているため、熱処理によって不純物拡散成分が飛散することを抑制することができる。このため、拡散剤組成物を塗布する部分と、拡散剤組成物を塗布しない部分との拡散コントラストを高めることができる。
【0032】
(不純物拡散層の形成方法、および太陽電池の製造方法)
図1(A)〜図1(D)、および図2(A)〜図2(D)を参照して、半導体基板に上述の拡散剤組成物を塗布により拡散組成物膜を形成、または印刷してパターンを形成する工程と、拡散剤組成物中のリン原子を半導体基板に拡散させる工程と、を含む不純物拡散層の形成方法と、これにより不純物拡散層が形成された半導体基板を備えた太陽電池の製造方法について説明する。図1(A)〜図1(D)、および図2(A)〜図2(D)は、実施形態に係る不純物拡散層の形成方法を含む太陽電池の製造方法を説明するための工程断面図である。
【0033】
まず、図1(A)に示すように、P型のシリコン基板などの半導体基板1を用意する。そして、図1(B)に示すように、周知のウェットエッチング法を用いて、半導体基板1の一方の主表面に、微細な凹凸構造を有するテクスチャ部1aを形成する。このテクスチャ部1aによって、半導体基板1表面の光の反射が防止される。続いて、図1(C)に示すように、半導体基板1のテクスチャ部1a側の主表面に、不純物拡散成分としてリン原子を含有する上述した態様の拡散剤組成物2を塗布する。
【0034】
拡散剤組成物2は、スピン塗布法、ロールコート印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等により半導体基板1の表面に塗布される(なお、塗布膜でなくパターンを形成する場合はスクリーン印刷法等の印刷法が好ましい)。このようにして不純物拡散剤層を形成した後、オーブンなどの周知の手段を用いて塗布した拡散剤組成物2を乾燥させる。
【0035】
次に、図1(D)に示すように、拡散剤組成物2が塗布された半導体基板1を電気炉内に載置して焼成する。焼成の後、電気炉内で拡散剤組成物2中のリン原子を半導体基板1の表面から半導体基板1内に拡散させる。拡散工程における拡散温度は、たとえば、800〜1000度の範囲である。なお、電気炉に代えて、慣用のレーザーの照射により半導体基板1を加熱してもよい。このようにして、リン原子が半導体基板1内に拡散してN型不純物拡散層3が形成される。
【0036】
次に、図2(A)に示すように、周知のエッチング法により、不要な酸化膜を除去する。そして、図2(B)に示すように、周知の化学気相成長法(CVD法)、たとえばプラズマCVD法を用いて、半導体基板1のテクスチャ部1a側の主表面に、シリコン窒化膜(SiN膜)からなるパッシベーション膜4を形成する。このパッシベーション膜4は、反射防止膜としても機能する。
【0037】
次に、図2(C)に示すように、たとえば銀(Ag)ペーストをスクリーン印刷することにより、半導体基板1のパッシベーション膜4側の主表面に表面電極5をパターニングする。表面電極5は、太陽電池の効率が高まるようにパターン形成される。また、たとえばアルミニウム(Al)ペーストをスクリーン印刷することにより、半導体基板1の他方の主表面に裏面電極6を形成する。
【0038】
次に、図2(D)に示すように、裏面電極6が形成された半導体基板1を電気炉内に載置して焼成した後、裏面電極6を形成しているアルミニウムを半導体基板1内に拡散させる。これにより、裏面電極6側の電気抵抗を低減することができる。以上の工程により、本実施の形態に係る太陽電池10を製造することができる。
【0039】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などの変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれるものである。上述の実施の形態と以下の変形例との組み合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【0040】
上述の実施の形態に係る拡散剤組成物は、スピンオン法、スプレー塗布法、インクジェット印刷法、ロールコート印刷法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法などの印刷法に採用することもできる。中でもロールコート印刷法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法が好ましい。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例を説明するが、これら実施例は、本発明を好適に説明するための例示に過ぎず、なんら本発明を限定するものではない。
【0042】
(実施例1)
2官能性基を有する結合である−O−Si−O−結合と−P(=O)n−結合[nは1]とを有する不純物拡散成分(A)(ドーパント成分)の原料として、ジフェニルジクロロシラン(信越化学工業製)とリン酸(純正化学製)を用いた。反応容器に回転攪拌羽根を取り付け、リン酸を投入し、系内を不活性ガスで置換した。室温にて攪拌しながらジフェニルジクロロシランを滴下し反応させた。なお、両者の混合比率(モル比)はリン酸:ジフェニルジクロロシラン=2:3(Si−ClとHO−Pが全量反応する比率)とした。
【0043】
反応終了後、反応容器を200℃まで加熱し、副生成物として発生した塩化水素を十分に脱気した。続いて、反応容器を室温まで自然冷却し、反応物を回収した。得られた反応物をメノー乳鉢で破砕し、2官能性基を有する結合である−O−Si−O−結合と−P(=O)n−結合[nは1]とを有するドーパント成分を得た。重量平均分子量は約2000であった。
【0044】
このドーパント成分1.0gをプロピレングリコールモノメチルエーテル9.0gに溶解させ、拡散剤組成物を調製し、P型(比抵抗:5〜15Ω・cm)のSi基板に半分の面積が塗布されるよう回転塗布した後、ホットプレートによる乾燥で溶剤を除去し、ドーパント成分を含む単層膜を形成した。
【0045】
ドーパント成分を含む単層膜が形成されたSi基板に対して電気炉で熱拡散(940℃、30分)を行い、リン原子をSi基板に拡散させN層を形成させた。希フッ酸にてSi基板表面の酸化膜を除去し、シート抵抗値測定を実施したところ、塗布部は14Ω/□、未塗布部は>18KΩ/□となり、拡散コントラストが非常に大きいものであった。
【0046】
(実施例2)
実施例1で用いたジフェニルジクロロシランをジフェニルジエトキシシラン(信越化学工業製)に変更したこと以外は実施例1と同様にドーパント成分を作製した。本実施例では、副生成物はエタノールである。50℃まで加熱しながら減圧処理を実施することによりドーパント成分からエタノールを除去した。重量平均分子量は約500であった。
【0047】
得られたドーパント成分1.0gをプロピレングリコールモノメチルエーテル9.0gに溶解させ拡散剤組成物を調製した後、実施例1と同様にSi基板に拡散剤組成物を塗布し、単層膜を形成した。単層膜形成後、電気炉で熱拡散(940℃、30分)を行い、リン原子をSi基板に拡散させN層を形成させた。希フッ酸にてSi基板表面の酸化膜を除去し、シート抵抗値測定を実施したところ、塗布部は14Ω/□、未塗布部は>18KΩ/□となり、拡散コントラストが非常に大きいものであった。
【0048】
(実施例3)
実施例1で用いたジフェニルジクロロシランをジフェニルジメトキシシラン(信越化学工業製)に変更したこと以外は実施例1と同様にドーパント成分を作製した。本実施例では、副生成物はメタノールである。50℃まで加熱しながら減圧処理を実施することによりドーパント成分からエタノールを除去した。重量平均分子量は約500であった。
【0049】
得られたドーパント成分1.0gをプロピレングリコールモノメチルエーテル9.0gに溶解させ拡散剤組成物を調製した後、実施例1と同様にSi基板に拡散剤組成物を塗布し、単層膜を形成した。単層膜形成後、電気炉で熱拡散(940℃、30分)を行い、リン原子をSi基板に拡散させN層を形成させた。希フッ酸にてSi基板表面の酸化膜を除去し、シート抵抗値測定を実施したところ、塗布部は14Ω/□、未塗布部は>18KΩ/□となり、拡散コントラストが非常に大きいものであった。
【0050】
(実施例4)
実施例1で用いたジフェニルジクロロシランをジメチルジクロロシラン(信越化学工業製)に変更したこと以外は実施例1と同様にドーパント成分を作製した。本実施例では、副生成物は塩化水素である。200℃まで加熱しながら副生成物として発生した塩化水素を十分に脱気した。重量平均分子量は約400であった。
【0051】
得られたドーパント成分1.0gをプロピレングリコールモノメチルエーテル9.0gに溶解させ拡散剤組成物を調製した後、実施例1と同様にSi基板に拡散剤組成物を塗布し、単層膜を形成した。単層膜形成後、電気炉で熱拡散(940℃、30分)を行い、リン原子をSi基板に拡散させN層を形成させた。希フッ酸にてSi基板表面の酸化膜を除去し、シート抵抗値測定を実施したところ、塗布部は17Ω/□、未塗布部は3,500Ω/□となり、拡散コントラストが非常に大きいものであった。
【0052】
(比較例1)
Si−O−P骨格を有するドーパント成分として、リン酸トリストリメチルシリル(東京化成製、分子量314.54)を用いた。これとPPSQ−E(小西化学工業製)とをプロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解させ、実施例1のサンプル中の珪素/リン比率と合うよう拡散剤組成物を調整した。この溶液を、P型(比抵抗:5〜15Ω・cm)のSi基板に半分の面積が塗布されるよう回転塗布した後、ホットプレートによる乾燥で溶剤を除去し、ドーパント成分を含む単層膜を形成した。
【0053】
ドーパント成分を含む単層膜が形成されたSi基板に対して電気炉で熱拡散(940℃、30分)を行い、リン原子をSi基板に拡散させN層を形成した。希フッ酸にてSi基板表面の酸化膜を除去し、シート抵抗値測定を実施したところ塗布部は25Ω/□、未塗布部は900Ω/□となり、実施例1〜4と比較して拡散コントラストが小さいものとなった。
(比較例2)
実施例1で用いたジフェニルジクロロシランをテトラエトキシシラン(信越化学工業製)に変更したこと以外は実施例1と同様にドーパント成分を作製したが、ゲル化してしまいドーパント成分を得ることはできなかった。
【符号の説明】
【0054】
1 半導体基板、1a テクスチャ部、2 拡散剤組成物、3 N型不純物拡散層、4 パッシベーション膜、5 表面電極、6 裏面電極、10 太陽電池
図1
図2