特許第6078412号(P6078412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078412
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】熱電変換式発電装置
(51)【国際特許分類】
   H02N 11/00 20060101AFI20170130BHJP
   H01L 35/30 20060101ALI20170130BHJP
   H01L 35/14 20060101ALI20170130BHJP
   H01L 35/32 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   H02N11/00 A
   H01L35/30
   H01L35/14
   H01L35/32 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-86541(P2013-86541)
(22)【出願日】2013年4月17日
(65)【公開番号】特開2014-212590(P2014-212590A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2015年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】地主 孝広
(72)【発明者】
【氏名】冨永 昌尚
(72)【発明者】
【氏名】石島 善三
(72)【発明者】
【氏名】森 正芳
(72)【発明者】
【氏名】山上 武
(72)【発明者】
【氏名】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】山下 翔平
【審査官】 三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/084718(WO,A1)
【文献】 特開2011−238693(JP,A)
【文献】 特開2006−041222(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0005873(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 11/00
H01L 35/14
H01L 35/30
H01L 35/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して配設される加熱側の板部材と冷却側の板部材とを備え、内部が減圧される密閉容器と、
この密閉容器内に、前記加熱側の板部材と前記冷却側の板部材との間に配設された状態で収容される熱電変換モジュールとを備え、
前記加熱側の板部材が加熱されるとともに前記冷却側の板部材が冷却されて前記熱電変換モジュールに温度差が与えられることにより、該熱電変換モジュールが発電する熱電変換式発電装置において、
前記冷却側の板部材が可撓性を有する可撓性板部材からなり、
前記密閉容器内が減圧状態とされて発生する該密閉容器の内外の圧力差によって、前記可撓性板部材が加圧された状態で前記熱電変換モジュールに対し直接または緩衝材を介して当接した状態とされ、
前記可撓性板部材における前記熱電変換モジュールの周囲に、前記圧力差によって変形する変形部が形成され、該変形部は、前記密閉容器の内側に向けて突出する断面三角形状に形成されていることを特徴とする熱電変換式発電装置。
【請求項2】
冷却側の板部材に、該冷却側の板部材の可撓性を妨げない状態で冷却促進用の熱交換手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の熱電変換式発電装置。
【請求項3】
前記熱交換手段は、柔軟性を有する熱交換部材からなることを特徴とする請求項に記載の熱電変換式発電装置。
【請求項4】
前記熱交換手段は、複数の独立した熱交換部材が前記可撓性板部材からなる前記冷却側の板部材に対し点在的に接触して設けられていることを特徴とする請求項に記載の熱電変換式発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換モジュールに温度差を与えて熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電変換式発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電変換素子を用いて熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電技術が知られている。熱電変換素子は、離間した部位に温度差を与えることで高温部と低温部との間に電位差を生じさせるといったゼーベック効果を利用したもので、温度差が大きいほど発電量も大きくなる。このような熱電変換素子は、複数を接合した熱電変換素子モジュールという形態で用いられる。そして、熱電変換モジュールを加熱側の板部材と冷却側の板部材との間に挟み、加熱側の板部材を加熱するとともに冷却側の板部材を冷却することにより熱電変換モジュールに温度差を与えて、熱電変換モジュールから電気を得るといった熱電変換式発電装置が構成される(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−088408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の発電装置においては、上記のように熱電変換モジュールに与えられる温度差が大きいほど発電量が大きくなり、発電性能が向上することが知られている。熱電変換モジュールの温度差を大きくとる方策の1つとして、熱電変換モジュールを挟んで配設された加熱側および冷却側の板部材を、熱電変換モジュールに対し均一な状態で密着させ、これら板部材を介しての熱伝導度を高めることは有効である。
【0005】
例えば上記特許文献1のようにタイロッドやナットといった締結用の部材を用いて各板部材を熱電変換モジュールに加圧状態で密着させることは可能である。しかしながらこのような部材を用いると、均一な圧力で板部材を熱電変換モジュールに加圧することが難しく、また、装置の構成が複雑になったりコストが上がったりする。また、設計やデザインの自由度に制限が生じる場合があり、さらには、できるだけ軽量化を図りたい装置に装備させる場合には不利になるといった問題もある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その主たる課題は、熱電変換モジュールに温度差を与えるために熱電変換モジュールの側方に配設される冷却側の板部材を、装置が複雑かつ高コストになることなく熱電変換モジュールに対する密着性を向上させることができるとともに、設計やデザインの自由度の向上や軽量化が可能となる熱電変換式発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の熱電変換式発電装置は、互いに対向して配設される加熱側の板部材と冷却側の板部材とを備え、内部が減圧される密閉容器と、この密閉容器内に、前記加熱側の板部材と前記冷却側の板部材との間に配設された状態で収容される熱電変換モジュールとを備え、前記加熱側の板部材が加熱されるとともに前記冷却側の板部材が冷却されて前記熱電変換モジュールに温度差が与えられることにより、該熱電変換モジュールが発電する熱電変換式発電装置において、前記冷却側の板部材が可撓性を有する可撓性板部材からなり、前記密閉容器内が減圧状態とされて発生する該密閉容器の内外の圧力差によって、前記可撓性板部材が加圧された状態で前記熱電変換モジュールに対し直接または緩衝材を介して当接した状態とされ、前記可撓性板部材における前記熱電変換モジュールの周囲に、前記圧力差によって変形する変形部が形成され、該変形部は、前記密閉容器の内側に向けて突出する断面三角形状に形成されていることを特徴とする。本発明では、可撓性板部材が熱電変換モジュールに対し直接当接する場合の他に、可撓性板部材と熱電変換モジュールとの間に緩衝材を挟んだ場合も含み、このように可撓性板部材と熱電変換モジュールとの間に緩衝材を挟んだ場合を、上記のように可撓性板部材が熱電変換モジュールに対し緩衝材を介して当接すると言う。
【0008】
本発明によれば、密閉容器の内部が減圧されることにより冷却側の可撓性板部材が熱電変換モジュール側に加圧された状態で当接する。可撓性板部材は熱電変換モジュールの対向面に追従して変形して全面的に当接し、均一な加圧状態で密着した状態を得ることができる。タイロッドやナットといった締結用の部材を用いず、密閉容器を構成する冷却側の板部材を可撓性板部材とし、密閉容器内を減圧することで、熱電変換モジュールに対する該板部材の密着性を向上させることができる。また、ボルト・ナットといった締結用の部材を用いないため、設計やデザインの自由度の向上や軽量化が可能となる。また、熱電変換モジュールの可撓性板部材が当接する当接面が面一であったり平坦でなかったりした場合であっても、可撓性部材がその当接面に追従して変形し密着するため、板部材を熱電変換モジュールに均一に当接させるために組立精度や寸法精度を高める必要がなく、生産性向上やコスト低減が図られる。また、変形部が変形することで可撓性板部材における変形部の内側部分である熱電変換モジュールへの対向部分が熱電変換モジュール側に変形しやすくなり、熱電変換モジュールへの密着性がより向上する。
【0010】
また、本発明では、前記冷却側の板部材に、該冷却側の板部材の可撓性を妨げない状態で冷却促進用の熱交換手段が設けられている形態を含む。この形態によれば、冷却側の板部材の温度は熱交換手段に伝達して放熱され、冷却側の板部材による熱電変換モジュールの冷却効率が向上する。熱交換手段は冷却側の板部材の可撓性を妨げないため、熱電変換モジュールに対する冷却側の板部材の密着性向上といった本発明の作用効果は確保される。
【0011】
上記熱交換手段としては、柔軟性を有する熱交換部材や、複数の独立した熱交換部材が可撓性板部材からなる冷却側の板部材に対し点在的に接触して設けられている形態が挙げられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、熱電変換モジュールに温度差を与えるために熱電変換モジュールの側方に配設される冷却側の板部材を、装置が複雑かつ高コストになることなく熱電変換モジュールに対する密着性を向上させることができるとともに、設計やデザインの自由度の向上や軽量化が可能となるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る熱電変換式発電装置の全体斜視図である。
図2図1のII方向矢視図である。
図3図2のIII−III断面図である。
図4図2のIV−IV断面図である。
図5】同発電装置が備える密閉容器の筐体の構成を示す斜視図であって(a)分解状態、(b)組立状態である。
図6】同発電装置が備える熱電変換モジュールを示す正面図である。
図7】同発電装置において筐体の薄板に設けられる熱交換部材の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
[1]熱電変換式発電装置の構成
図1図4は、一実施形態の熱電変換式発電装置(以下、発電装置)1を示しており、図1は全体斜視図、図2図1のII方向矢視図、図3図4はそれぞれ図2のIII−III断面図、IV−IV断面図である。この発電装置1は全体が扁平な直方体状(図1図3図4でX方向が長手方向)に形成されており、水冷ジャケット3と、水冷ジャケット3内に収納された密閉容器2を備えている。
【0015】
密閉容器2は、扁平管状の筐体20内の中央部に同じく扁平管状の流通管25が収納された二重管構造を呈しており、筐体20と流通管25との間の空間は減圧空間29とされ、この減圧空間29のX方向両端の開口が封止カバー26で気密的に閉塞されている。水冷ジャケット3は密閉容器2の外形にほぼ沿った扁平管状に形成されたもので、その内部に収納された密閉容器2は、開口側の両端部が水冷ジャケット3の両端開口から突出している。
【0016】
筐体20は、図5に示すように、長方形状の外枠板部211と外枠板部211内を長手方向(X方向)に分かれた2つの孔213に仕切る内枠板部212とを有する一対の枠板210が、上下方向(Z方向)に間隔を空けて互いに平行に対面し、外枠板部211の長手方向に沿った端縁どうしが側板部215で連結され、長手方向の両端部に開口218を形成する開口管部217が形成された剛性部21と、この剛性部21の上下の枠板210の2つの孔213を塞ぐ長方形状の薄板(冷却側の板部材、可撓性板部材)22とから構成されている。薄板22は可撓性を有し、上下方向に弾性変形可能な板材により2つの孔213を覆う大きさに形成されている。薄板22は、剛性部21の外側から孔213の周囲(外枠板部211と内枠板部212の外面)にろう付け等の接合手段で接合されている。薄板22の材料としては、SUS444等のステンレスあるいはアルミニウム等の耐熱性、耐酸化性を有する金属板が好ましく、その厚さは、例えば0.1mm程度のものが用いられる。
【0017】
筐体20の内部に収納された流通管25は、筐体20の上下の枠板210と平行な上下一対の長方形状の主板部(加熱側の板部材)251の長手方向に沿った端縁どうしが筐体20の側板部215と平行な側板部252で連結されたもので、両端開口縁の外面が、筐体20の剛性部21の開口管部217の内面に、断面が内側にへこんだ断面U字状で全体としては長円状の封止カバー26を介して接合されている。
【0018】
流通管25の内部は加熱流体H(図3および図4参照)が一方の開口から他方の開口へ向けて流される加熱流路253を構成し、この加熱流路253には、加熱流体Hの熱を流通管25に伝えるフィン254が配設されている。フィン254は、例えば板材を折り曲げ加工して波板状に形成したものなどが用いられる。フィン254および封止カバー26は、それぞれろう付け等の接合手段で剛性部21および流通管25に接合されている。なお、フィン254は必要に応じて設けられ、フィン254を設けず加熱流路253内を空洞とする場合もある。
【0019】
密閉容器2を構成する筐体20の剛性部21、流通管25、封止カバー26は、薄板22と同様の材料が用いられる。このような密閉容器2の、筐体20の薄板22と流通管25の主板部251との間には、熱電変換モジュール4がそれぞれ配設されている。
【0020】
熱電変換モジュール4は、図6に示すように、平面状に並べられた複数の熱電変換素子41の、一方側の面および他方側の面を、長方形状の銅板等の金属板からなる電極42によりジグザグ状に直列に連結して構成されたもので、一方の面側の電極42が流通管25の主板部251の内面にろう付け等の接合手段で接合されている。また、熱電変換モジュール4の他方の面側の電極42は筐体20の薄板22の内面に対向し、薄板22と電極42との間には緩衝材5が挟まれて保持されている。すなわち薄板22は、熱電変換モジュール4に対し緩衝材5を介して当接している。
【0021】
緩衝材5は可撓性を有するシート状のものが好適であり、例えば薄いカーボンシート等が用いられる。なお、本実施形態では薄板22と熱電変換モジュール4との間に緩衝材5を挟み込んでいるが、緩衝材5は必要に応じて用いられ、薄板22が熱電変換モジュール4に直接当接する形態も選択され得る。
【0022】
熱電変換モジュール4を構成する熱電変換素子41は、耐熱温度が高い種類が用いられ、例えば、シリコン−ゲルマニウム系、マグネシウム−シリコン系、マンガン−シリコン系、珪化鉄系等が好適に用いられる。熱電変換モジュール4が収納された密閉容器2の減圧空間29は、剛性部21と薄板22とからなる筐体20、流通管25および封止カバー26によって気密的に封止されている。
【0023】
図4図4ではフィン254の図示略)に示すように、薄板22の熱電変換モジュール4の周囲部分には、流通管25側に突出する断面三角形状の変形部221が全周にわたって形成されている。この変形部221は、孔213の内周縁と熱電変換モジュール4との間に形成されている。
【0024】
上記密閉容器2は、水冷ジャケット3内に収納されている。上記のように水冷ジャケット3は密閉容器2の外形にほぼ沿った扁平管状に形成されたもので、密閉容器2は、両端の開口管部217が水冷ジャケット3の両端開口から突出している。水冷ジャケット3は、両端の開口縁に形成された内側に屈曲する封止枠部31が、密閉容器2における剛性部21の外枠板部211の外面に、ろう付け等の手段で気密的に接合されている。水冷ジャケット3内の空間、すなわち剛性部21と水冷ジャケット3との間に形成される空間が、冷却水が供給されて薄板22を冷却するための冷却空間32となっている。水冷ジャケット3における筐体20の各側板部215に対応する箇所の中央部には、冷却水の導入出口33が設けられている。
【0025】
密閉容器2内には、合計4つの熱電変換モジュール4が収納されているが、これら熱電変換モジュール4は直列に接続されている。そして、図1および図2に示す+・−の2本のリード線49から外部に電気が取り出される。リード線49は、密閉容器2の側板部215および水冷ジャケット3を貫通して外部に引き出され、側板部215および水冷ジャケット3のリード線貫通孔は気密的に塞ぐ処理がなされている。
【0026】
冷却空間32の熱電変換モジュール4に対応する箇所には、熱交換手段6が薄板22に接合されている。熱交換手段6は、冷却空間32に供給されて流れる冷却水が接触することで薄板22を放熱させて冷却を促進させるもので、薄板22の可撓性を妨げない状態で設けられている。
【0027】
熱交換手段6は、薄板22の可撓性を妨げないものとして柔軟性を有するフィン等の熱交換部材からなるものが挙げられる。また、硬いフィン等の熱交換部材であっても、複数の独立した熱交換部材が薄板22に対し点在的に接触して設けられて薄板22の可撓性を妨げないようになされていてもよい。
【0028】
そのような熱交換部材としては、例えば図7(a)に示すように針状の複数のフィン61であって、これらフィン61を薄板22に対し均等配置し、立てた状態で接合させた形態が挙げられる。また、図7(b)に示すように、薄板状の短いフィン62を薄板22に対し千鳥状にオフセット配置し、立てた状態で接合させた形態も採用可能である。
【0029】
上記密閉容器2は、所定箇所に形成された図示せぬ減圧封止口から減圧空間29の空気を吸引して減圧空間29を所定圧力(例えば1〜100Pa程度)に減圧し、減圧封止口を溶接するなどして気密的に封止した状態とされる。これにより密閉容器2においては、減圧空間29の圧力が外部の大気よりも低くなるという圧力差が生じ、この圧力差によって、筐体20の薄板22が熱電変換モジュール4側に加圧される力を受ける。
【0030】
[2]発電装置の作用
上記構成からなる発電装置1では、水冷ジャケット3の一方の導入出口33から冷却水を冷却空間32に導入し、他方の導入出口33から冷却水を排出させ、冷却空間32に冷却水を充満させた状態で流通させることにより、密閉容器2の薄板22を冷却する。また、流通管25内の加熱流路253に、一方の開口から他方の開口に向けて高温の加熱流体Hを流して流通管25を加熱する。薄板22は冷却水で冷却される熱交換手段6により冷却が促進される。冷却された薄板22の温度は熱電変換モジュール4の外面側に伝わり、熱電変換モジュール4の外面側が冷却され、一方、加熱された流通管25の主板部251の温度は熱電変換モジュール4の内面側に伝わり、熱電変換モジュール4の内面側が加熱される。
【0031】
本実施形態では、筐体20の薄板22が冷却側の板部材となり、流通管25の主板部36が加熱側の板部材を構成する。上記のようにして熱電変換モジュール4の外面側と内面側に温度差が与えられることで、熱電変換モジュール4は発電し、リード線49から電気が取り出される。
【0032】
本実施形態の発電装置1は、例えば工場やゴミ焼却炉で発生する排熱ガスや、自動車の排気ガスなどが、上記加熱流体Hとして利用される。
【0033】
[3]一実施形態の作用効果
上記一実施形態の発電装置1によれば、密閉容器2においては上記のように内部の減圧空間29が減圧されて外部と圧力差が生じることにより、筐体20の薄板22が熱電変換モジュール4側に加圧される。薄板22は緩衝材5を介して熱電変換モジュール4側に加圧された状態で当接する。
【0034】
ここで、薄板22および緩衝材5は可撓性を有しているため、薄板22は、熱電変換モジュール4の薄板22への対向面である電極42の表面に追従して変形して全面的に当接する。これにより薄板22は緩衝材5を介して均一な加圧状態で熱電変換モジュール4に密着した状態が得られ、密着性が向上する。その結果、熱電変換モジュール4の冷却側の電極42の冷却効率が高まり、ひいては熱電変換モジュール4に与えられる温度差が大きくなって発電性能が向上する。熱電変換モジュール4は薄板22から圧力を受けるが、間に挟まれた緩衝材5で保護される。
【0035】
また、タイロッドやナットといった締結用の部材を用いず減圧作用により冷却側の板部材である薄板22を熱電変換モジュール4に密着させるため、複雑かつ高コストになることなく熱電変換モジュール4に対して薄板22を均一な加圧状態で密着させることができる。そして、ボルト・ナットといった締結用の部材を用いないため、設計やデザインの自由度の向上や軽量化が可能となる。
【0036】
また、熱電変換モジュール4の薄板22が緩衝材5を介して当接する電極42の当接面が面一であったり平坦でなかったりした場合であっても、薄板22がその当接面に追従して変形し密着するため、筐体20側と熱電変換モジュール4側とを均一に当接させるために組立精度や寸法精度を高める必要がなく、その結果、生産性向上やコスト低減が図られる。
【0037】
本実施形態では、薄板22における熱電変換モジュール4の周囲部分に変形部221が形成されており、上記圧力差により変形部221が変形することで薄板22が熱電変換モジュール4側に変形しやすくなり、このため熱電変換モジュール4への密着性がより向上する。
【0038】
また、本実施形態では、冷却側の板部材である薄板22の温度は熱交換手段6に伝達して放熱され、薄板22による熱電変換モジュール4の冷却効率が向上する。熱交換手段6は薄板22の可撓性を妨げないため、熱電変換モジュール4に対する薄板22の密着性向上といった作用効果は確保される。
【0039】
なお、上記実施形態は本発明を具体化した一例であり、本発明はこの一実施形態に限定されず、本発明を包含する形態であれば具体的構成に関しては様々な変更が可能である。例えば上記一実施形態では、可撓性板部材は冷却側の板部材(薄板22)であったが、熱電変換モジュール4を挟んで配設されるもう一方の加熱側の板部材である流通管25の主板部251を可撓性板部材とする形態も採用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1…熱電変換式発電装置
2…密閉容器
22…筐体の薄板(冷却側の板部材、可撓性板部材)
221…変形部
251…流通管の主板部(加熱側の板部材)
4…熱電変換モジュール
5…緩衝材
6…熱交換手段
61,62…フィン(熱交換部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7