特許第6078785号(P6078785)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078785
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】水力発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03B 7/00 20060101AFI20170206BHJP
【FI】
   F03B7/00
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-213809(P2012-213809)
(22)【出願日】2012年9月27日
(65)【公開番号】特開2014-40825(P2014-40825A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2015年7月28日
(31)【優先権主張番号】特願2012-163439(P2012-163439)
(32)【優先日】2012年7月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】593178454
【氏名又は名称】株式会社北陸精機
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】後藤 眞宏
(72)【発明者】
【氏名】浪平 篤
(72)【発明者】
【氏名】高木 強治
(72)【発明者】
【氏名】滝口 孝明
【審査官】 松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭09−005500(JP,Y1)
【文献】 登録実用新案第3173245(JP,U)
【文献】 特開2003−269315(JP,A)
【文献】 特開2007−321664(JP,A)
【文献】 特開平10−238449(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0182159(US,A1)
【文献】 特開2011−074921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路の中に流路を塞ぐように設置され水流を受けて回転するランナと、このランナにより駆動されて発電を行う発電機と、前記ランナを保持したランナ保持枠と、前記ランナを覆うように設けられ前記水路の水流が前記ランナの下方のブレードに流れ込むようにガイドするとともに、上流側の水位を調節する水位調節カバーとを備え、前記水位調節カバーは、前記ランナを覆い前記ランナに沿って揺動することにより前記水路の水深方向の位置を調節可能に設けられ、前記水位調節カバーより、前記ランナの上流側の前記水路の水位と前記ランナに流入する水量を調整して、前記ランナを回転させ発電を行うことを特徴とする水力発電装置。
【請求項2】
前記水位調節カバーは、前記水路のほぼ全幅に亘り位置し、前記水路の水深方向の位置を調整可能に設けられている請求項1記載の水力発電装置。
【請求項3】
前記水位調節カバーは、前記ランナ保持枠に取り付けられたカバー駆動用モータにより前記ランナと同軸に揺動して、前記水路の底面に対する先端部の位置を調整可能に設けられている請求項1記載の水力発電装置。
【請求項4】
前記水位調節カバーの先端部には、前記水路の水流を前記ランナの前記ブレード方向へガイドする上部ガイド板が設けられている請求項3記載の水力発電装置。
【請求項5】
前記ランナ保持枠は、前記水路の両岸に設けられたランナ保持アームの先端部に取り付けられ、前記ランナとともに上方に退避可能に設けられ、前記ランナ保持枠を上方へ退避させる駆動装置を備え、前記駆動装置により前記ランナ保持アームを揺動させて前記水路から上方へ退避可能に設けられている請求項1記載の水力発電装置。
【請求項6】
前記ランナ保持枠の上流側には、前記ランナに流入するゴミを除去するスクリーンが設けられ、前記スクリーンは前記ランナ保持枠とともに前記水路の上方に退避可能に設けられている請求項5記載の水力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、農業用又は工業用水路等の開水路中に設置される小形の水力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、開水路は水流による水路の損傷を少なくするため、流速を遅くする勾配の部分を長くし、落差工によって流れる水のエネルギーを減勢している。従って、水路の流水エネルギーを回収するには、落差工に水力発電装置を設置する場合が多い。
【0003】
このような農業用又は工業用の開水路に設置される小形の水力発電装置として、例えば、特許文献1に開示されている用水路用水力発電装置が提案されている。この水力発電装置は、は、農業用水路等の小さい落差工の下流側水路底面に設置されるもので、落差工のある越流堰の下流側に固定されている。水車ユニットは、複数のべーンを有する周知のものであり、ランナの上流側に、給水開口が位置し、給水開口は、ランナの軸の高さ位置よりやや下方に位置している。この給水開口の上下方向の幅は、可動上枠を上下動させることで調整可能に形成されている。この水力発電装置は、用水路の越流堰を超えた水が用水路固定枠のスクリーンを通って落下し、給水開口からランナの下面を流れ、ベーンを有するランナを回転させ、その回転が無端チェーンを介して発電機に伝達され、発電するものである。
【0004】
また、特許文献2に開示された定水量開放型水車発電装置は、水路の水流の形状や流速に応じて、定流量ガイドを上下させて吸込口の位置を調整することによって、一定の流量の水を吸込口から取り入れて、水車ランナへ導水し、発電する構造としている。さらに、吸水口から取り入れられた流水はノズルから噴射され、ランナのベーンに噴射された水が一定の角度で入るような形状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−269315号公報
【特許文献2】特開2004−68655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記背景技術の特許文献1,2に開示された発電装置の場合、水路の段差部分である落差工に設置しなければならず、落差の程度や幅により調整が必要となり、設置が難しいものであった。しかも、水路を流れる水は、低勾配の部分の水流も運動エネルギーを持っており、そのエネルギーは未利用になっており、水路を流れる水の全エネルギーを有効に利用しているものではなかった。
【0007】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で、水路の大規模な土木工事を必要とせず、落差工のない水路に容易に設置することができ、水路を流れる水のエネルギーを有効に利用して発電することが出来る水力発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、水路の中に流路を塞ぐように設置され水流を受けて回転するランナと、このランナにより駆動されて発電を行う発電機と、前記ランナを保持したランナ保持枠と、前記ランナを覆うように設けられ前記水路の水流が前記ランナの下方のブレードに流れ込むようにガイドするとともに上流側の水位を調節する水位調節カバーとを備え、前記水位調節カバーは、前記ランナを覆い前記ランナに沿って揺動することにより前記水路の水深方向の位置を調節可能に設けられ、前記水位調節カバーより、前記ランナの上流側の前記水路の水位と前記ランナに流入する水量を調整して、前記ランナを回転させ発電を行う水力発電装置である。
【0009】
前記水位調節カバーは、前記水路のほぼ全幅に亘り位置し、前記水路の水深方向の位置を調整可能に設けられているものである。
【0010】
前記水位調節カバーは、前記ランナ保持枠に取り付けられたカバー駆動用モータにより前記ランナと同軸に揺動して、前記水路の底面に対する先端部の位置を調整可能に設けられている。
【0011】
前記水位調節カバーの先端部には、前記水路の水流を前記ランナの前記ブレード方向へガイドする上部ガイド板が設けられている。
【0012】
前記ランナ保持枠は、前記ランナとともに上方に退避可能に設けられ、前記ランナ保持枠を上方へ退避させる駆動装置を備えている。
【0013】
前記ランナ保持枠は、前記水路の両岸に設けられたランナ保持アームの先端部に取り付けられ、前記駆動装置により前記ランナ保持アームを揺動させて、前記水路から上方へ退避可能に設けられている。
【0014】
前記ランナ保持枠の上流側には、前記ランナに流入するゴミを除去するスクリーンが設けられ、前記スクリーンは前記ランナ保持枠とともに前記水路の上方に退避可能に設けられている。
【発明の効果】
【0015】
この発明の水力発電装置によれば、落差工のない水路の任意の位置に設置することができ、水路の改修などの大規模な土木工事を必要とせず、水路を流れる水のエネルギーを有効に利用して発電することができる。しかも、勾配がある水路であれば、水路に設置する数は任意であり、一定の流量でも効率よく発電することができる。
【0016】
特に、この発明の水力発電装置は、水車自体や水位調節カバーが水路を塞ぐことにより、上流水位を上昇させ、上下流水位差を生じさせ、ランナに流れ込む水流の落差を高めて、流水の運動エネルギー及び位置エネルギーを効率よくランナから発電機に伝達して発電することができる。これにより、落差工のない水路の適宜の位置に水力発電装置を設置して、効率の良い発電を行うことができる。
【0017】
さらに、ランナを覆うように設けられた水位調節カバーによって、ランナに流れ込む水の水位を調節しながら発電することができ、水力発電装置自体で上下流に位置エネルギー差を生じさせることから、落差工のない水路の任意の位置に設置して、安定に発電することができる。
【0018】
その他、水力発電装置の上流水位を感知して、ランナを上方に退避させる上下用ジャッキ装置を備えているので、水路からの溢水を防止することができる。また、上流から水力発電装置に流れ込むゴミを捕獲して、ランナへの侵入を阻止するとともに、ランナの上方への退避と同時に、ゴミを下流に放流するようにしたので、ゴミ詰まりによる発電効率の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この発明の一実施形態の水力発電装置の左側面図である。
図2】この実施形態の水力発電装置の下流側から見た縦断面図である。
図3】この実施形態の水力発電装置のランナ保持枠上面部材の背面図である。
図4】この実施形態のランナの拡大左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1図4はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態の水力発電装置10は、水路12のコンクリート製の両岸12aに、H鋼等による台座13が敷設され、台座13上にH鋼等によるコ字形の固定枠14が立設されている。固定枠14の両岸12aに掛け渡された梁部14a上には、後述する水車であるランナ20を、水路12から引き上げる駆動装置としての上下用ジャッキ装置16が取り付けられている。
【0021】
上下用ジャッキ装置16は、雌ネジ部材18を備え、雌ネジ部材18には、垂直方向に設けられた雄ネジ軸部材26が螺合している。雄ネジ軸部材26の下端部は連結部材24に揺動可能に連結している。連結部材24は、ランナ20を保持した一対の鋼材から成るランナ保持アーム22の下流側先端より僅かに上流側の間に架け渡され、連結部材24の両端が、各ランナ保持アーム22に固定されている。一対のランナ保持アーム22の上流側端部は、揺動軸22aにより軸支され、下流側の先端側が上下用ジャッキ装置16により揺動可能に設けられている。
【0022】
雌ネジ部材18は、上下用ジャッキ装置16の手動ハンドル28に連結されて回動自在に取り付けられているとともに、上下用ジャッキ装置16の上下動用駆動モータ30に連結され、回動可能に設けられている。これにより、雌ネジ部材18は、手動ハンドル28により回転して雄ネジ軸部材26を上下動させるとともに、上下動用駆動モータ30によっても回転して、雄ネジ軸部材26を上下動させる。
【0023】
上下用ジャッキ装置16は、ランナ保持アーム22の揺動により、自身も揺動可能に梁部14aに軸支され、雄ネジ軸部材26の下端部も連結部材24に軸支され、揺動可能に設けられている。また、雄ネジ軸部材26は、上下用ジャッキ装置16の上方に突設された挿通部材32に挿通ガイドされ、上下動する。
【0024】
一対のランナ保持アーム22の下流側先端部には、コ字形のランナ保持枠36が取り付けられ、コ字形の両側中央部に、ランナ20が軸支された回転軸38を軸支した軸受け40が取り付けられている。ランナ20の外周側には、等間隔に円弧状のブレード42が固定され、後述する水流を受けてランナ20を回転させる。
【0025】
ランナ20の回転軸38の一方の端部には、スプロケット44が固定され、発電機50側のスプロケット46との間にチェーン48が掛け渡されている。発電機50は、ランナ保持枠36の上方から水平に一体的に延出した上面部材36aに設置され、スプロケット46との間で、増速機52を介して連結されている。
【0026】
ランナ保持枠36には、ランナ20の上流側に位置してランナ20を覆った水位調節カバー54が設けられている。水位調節カバー54は、ランナ20の上方であって、ランナ20に沿ってほぼ180度の円弧状の範囲を覆うように設けられている。水位調節カバー54は、ランナ20の上流側下方に下端縁54aが位置し、水位調節カバー54は回転軸38と同軸にランナ保持枠36に軸支されている。さらに、水位調節カバー54は、ランナ20に対して同軸に揺動可能に設けられ、下端縁54aの位置を、ランナ20の上流側下方で上下方向に調節可能に設けられている。
【0027】
ランナ保持枠36の上面部材36aの中央部上流側には、水位調節カバー54を回動させるためのカバー駆動用モータ56が設けられ、カバー駆動モータ56の回転軸から延長された回転軸に、ウォーム58が固定されている。ウォーム58は、ホイール60に螺合し、ホイール60は、カバー駆動軸62に固定されている。カバー駆動軸62の両端部には、平歯車64が固定され、平歯車64の歯が、水位調節カバー54の上端面に設けられたラック66に歯合し、水位調節カバー54を揺動し、先端部54aを上下動可能に設けられている。
【0028】
ランナ保持枠36の上流側には、水路12全体に渡されたスクリーン68が取り付けられている。スクリーン68は、水路12の幅とほぼ等しく、水路上部から底面12bにかけて設置され、スクリーン68の下端部がやや下流側に傾斜して設置され、ランナ20にゴミ等が流入しないように形成されている。スクリーン68は、上端部が台座13に設けられた揺動軸68aに軸支され、ランナ保持枠36とともに、ランナ保持アーム22により上下方向に揺動可能に設けられている。
【0029】
水位調節カバー54の下端部54aには、ランナ20の下方に向いて下流側に傾斜した上部ガイド板70が一体に固定され、水路12の水の流れを、ランナ20のブレード42方向にガイドしている。水路12の底面12bにも、ランナ20の下部に向かって、上流側から下流側に向かって徐々に上方に傾斜した下部ガイド板72が固定されている。
【0030】
固定枠14の上流側には、水路12の底面12bに届くように設置された水位計34が設けられ、水力発電装置10が設置された箇所の上流側の水位を常時計測可能に設けられている。水位計34による水位情報は、水位調節カバー54の位置を調節する際にも利用される。
【0031】
次に、この実施形態の水力発電装置10の動作について説明する。水路12に設置された水力発電装置10には、図4に示すように、水路12内の水Wが上流側から流入する。このとき、水路12には、水力発電装置10のランナ保持枠36が幅一杯に位置して、ランナ20が、図2に示すように、水路幅に近い幅で少なくともブレード42が水中に位置するように流れに対向して位置している。
【0032】
この状態で水路12は、水力発電装置10のランナ20等により流路が塞がれた状態となり、上流側の水位が上昇する。上昇する水位は、水力発電装置10に流入する水と流出する水の流量が等しくなる流速になるまで上昇し安定になる。これにより、図4に示すように、水路12の水力発電装置10の上流側の水位が高く下流側が低い水位となり、水力発電装置10に流入する水Wの水圧及び流速が高められる。このときの水位調節カバー54の位置は、上流側の水Wが効率よくランナ20に流れ込む位置に設定する。水位調節カバー54の位置調節は、カバー駆動用モータ56によりウォーム58を回転させ、ホイール60を介してカバー駆動軸62を回転させ、カバー駆動軸62の両端部の平歯車64により、水位調節カバー54のラック66を移動させることにより行う。
【0033】
水路12の水Wは、水力発電装置10の水位調節カバー54により堰き止められて、水位調節カバー54の上部ガイド板70によりがイドされて、上部ガイド板70の下側に流れ込み、水路12の底面12bの下部ガイド板72により、水路底面12b付近の水流がランナ20の下方に位置したブレード42に向かって流れる。これにより、ランナ20のブレード42には流速が増した水Wが効率よく当たり、水流の位置エネルギー及び運動エネルギーがブレード42に伝達され、ランナ20を高速で回転させる。
【0034】
ランナ20の回転は、回転軸38を経てスプロケット44、チェーン48、スプロケット46を介して、増速機52に伝わり、増速されて発電機50を回転させ発電を行う。
【0035】
この水力発電装置10による発電出力Pは以下のように求められる。ランナ20の上流部の比エネルギーE、下流部の比エネルギーE、水路12の高さH、有効落差He、上流部の水深H、下流部の水深H、上流部の流速v、下流部の流速v、水流量Q、重力加速度gとすると、
=H+v/(2g) (1)
=H+v/(2g) (2)
であるので、有効落差Heは、式(1)、(2)より
He=E−E
=(H+v/(2g))−(H+v/(2g))
=(H−H)−1/(2g)・(v−v) (3)
となる。
【0036】
よって、創出エネルギーPoは、Po=9.8HeQと表すことができる。出力Pは、水車効率をηとすると、
P=Poη (4)
となり、式(3)、(4)より、水力発電装置10の前後の水路12の水位と流速、流量から出力Pを、求めることができる。
【0037】
なお、この水力発電装置10には、水位計34が設けられ、水位調節カバー54の位置を適切に制御することができ、さらに上流側の水位が上昇しすぎると、水路12から水があふれる恐れがあるため、ランナ20等を退避させることができる。ランナ20の退避は、水位が一定以上になると、図示しない制御装置により警報等が発せられ、上下用ジャッキ装置16の手動ハンドル28を手動で回して、または上下動用駆動モータ30を駆動して、ランナ20とともにランナ保持枠36を上昇させることにより行う。ランナ20の退避動作は、手動ハンドル28又は上下動用駆動モータ30の回転により、雌ネジ部材18を回転させ、雌ネジ部材18に対して雄ネジ軸部材26を上昇させる。雄ネジ軸部材26の上昇により、連結部材24とともにランナ保持アーム22が持ち上げられて、ランナ保持アーム22の先端部に固定されたランナ保持枠36が上方に揺動する。このとき、雄ネジ軸部材26は、アーム部材22の揺動に伴って上昇するため、自身も揺動する。
【0038】
ランナ保持アーム22の上方への揺動により、ランナ保持枠36が上昇すると、ランナ保持枠36に取り付けられたスクリーン68も上昇する。スクリーン68は、水路12の両岸12aに軸支された揺動軸68aを中心に揺動して、水路下端部側が上昇する。これにより、スクリーン68の上流側の面が水路12の底面12bと対面するように上昇するので、スクリーン68の上流側面に付着したゴミは水路12内に落下し、水Wの流れとともに下流に流される。
【0039】
この実施形態の水力発電装置10によれば、水路12を水力発電装置10により塞ぐことにより、上流水位が上昇し、上下流水位差を生じさせ、ランナ20に流れ込む水流の落差を高めて、運動エネルギーを効率よくランナ20から発電機50に伝達して発電することができる。これにより、落差工のない水路12の適宜の位置に水力発電装置10を設置することができ、勾配のある水路12を流れる水流の位置エネルギーや運動エネルギーを有効に利用して、水力発電を行うことができる。さらに、ランナ20を覆うように設けられた水位調節カバー54によって、ランナ20に流れ込む水量を調節しながら発電することができる。特に、水力発電装置10自体で上下流に位置エネルギー差を生じさせることから、落差工のない水路12の任意の位置に設置することができる。
【0040】
その他、水力発電装置10の上流水位を感知して、ランナ20を上方に退避させる上下用ジャッキ装置16を備えているので、水路12からの溢水を防止することができる。また、上流から水力発電装置10に流れ込むゴミを捕獲して、ランナ20への侵入を阻止するとともに、ランナ20の上方への退避と同時に、ゴミを下流に放流するようにしたので、ゴミ詰まりによる発電効率の低下を防止することができる。
【0041】
なお、この発明の発電装置は上記実施形態に限定されず、ランナの大きさやブレードの数は適宜設定されるものであり、水位調節カバーの形状も適宜設定し得るものである。ランナ保持枠も、ランナ保持アームによる揺動式に上下する他、固定枠に設けられた駆動装置により上下するものでも良い。
【符号の説明】
【0042】
10 水力発電装置
12 水路
14 固定枠
16 上下用ジャッキ装置
18 雌ネジ部材
20 ランナ
22 ランナ保持アーム
26 雄ネジ軸部材
30 上下動用駆動モータ
36 ランナ保持枠
42 ブレード
50 発電機
54 水位調節カバー
70 上部ガイド板
72 下部ガイド板
図1
図2
図3
図4