(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
半導体製造分野やその関連分野、各種金属材料、単結晶材料、光学系材料等の表面処理分野では、多量のフッ酸や無機・有機の含フッ素化合物が使用されることから、多量のフッ素含有廃水が生じる。
【0003】
フッ素含有廃水中のフッ素濃度を排水基準以下にするために、廃水中のフッ素は、通常、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、塩化カルシウム等のカルシウム化合物と反応させてフッ化カルシウムとすることにより固定化され、除去される。
【0004】
フッ素含有廃水中のフッ素濃度を低減するためのフッ化カルシウムの固定化方法として、例えば、特許文献1には、フッ素含有廃水に水酸化カルシウムを添加する工程と、生成した化合物をフッ素含有廃水から分離する工程とを複数回繰り返す方法が開示されている。
特許文献2には、フッ素とカルシウム化合物とを反応させるための直列2段の反応槽を用いる方法が開示されている。この方法において、1段目の反応槽では、フッ化物イオンに対して等量未満のカルシウム化合物でフッ化物イオンを粗く除去する。2段目の反応槽で、1段目の反応槽で残留するフッ化物イオンに対して等量以上のカルシウム化合物を添加することで、フッ化物イオン濃度が15mg/mL未満となるようにする。
特許文献3〜5には、フッ素含有廃水とカルシウム化合物とを反応させた後、凝集剤を加え、沈降分離して得られる汚泥の一部を反応槽へ返送することにより、沈降分離槽上部より排出される廃水中のフッ化物イオン濃度を低減する方法が開示されている。
【0005】
一般に、フッ化カルシウムをフッ酸製造用として利用するには、フッ化カルシウム粒子が、純度:固形分換算で90質量%以上、体積平均粒子径:15〜50μm、粒度分布幅(d90/d10):4以下、脱水後のケーキ含水率:30質量%以下、シリカ及びリン酸塩分の合計含有率:固形分換算で3質量%以下という、高品質である必要がある。
しかし、特許文献1〜5に開示される方法は、単に、廃水中のフッ素含有率を低減することを目的とするもので、得られたフッ化カルシウムを再利用することを目的としていない。そのため、これらの方法で製造されたフッ化カルシウムは、フッ酸製造用の原料として使用しにくい。すなわち、これらの方法により得たフッ化カルシウムの純度は、固形分換算で50〜80質量%と低く、未反応のカルシウム化合物を含み、さらに、シリカ、リン酸塩、硫酸塩、鉄化合物、アルミニウム化合物等の不純物を多く含むこともある。また、フッ化カルシウムの粒子径が小さく、脱水後のケーキ含水率が40〜60質量%と多いこともある。
それゆえ、特許文献1〜5に開示される方法で得られたフッ化カルシウムのほとんどは、産業廃棄物として処理されてきた。
【0006】
一方、フッ素資源である天然蛍石(フッ酸製造用の天然蛍石は、フッ化カルシウム純度が固形分換算で97質量%以上である。)は、枯渇する可能性が懸念されている。そのため、フッ素含有廃水中から、フッ酸製造用の原料になり得る再生フッ化カルシウムを製造する方法の開発が期待されている。
【0007】
近年、フッ素含有廃水から高純度のフッ化カルシウムを得る方法が開発されてきている。代表的には、晶析法と、炭酸カルシウム中の炭酸イオンとフッ素イオンの塩交換による方法が挙げられる。
【0008】
晶析法とは、例えば、特許文献6,7に開示されるように、フッ化カルシウムを含有する種晶の表面にフッ化カルシウムの結晶を徐々に成長させることで、純度が高く、粒子径が大きいフッ化カルシウム粒子を得る方法である。
しかし、特許文献6,7に開示される方法で得たフッ化カルシウムは、粒子径が0.5〜1mmと大きいため、フッ酸製造用の原料としてそのまま使いにくく、フッ酸製造用の原料として用いるためには、例えば、粉砕処理をする必要がある。
【0009】
特許文献8には、フッ化カルシウムの溶解度が比較的大きな酸性領域で晶析を行う方法及びその方法に用いられる装置(ベンチプラント)が開示されている。
特許文献9には、晶析槽、凝集槽及び固液分離槽を備え、該晶析槽内の撹拌翼近傍におけるカルシウム剤添加手段と、該固液分離槽から該晶析槽へのフッ化カルシウムを含む汚泥の返送手段とを有する、廃水からフッ化カルシウムを晶析させる装置が開示されている。
しかし、これらいずれの装置も、晶析したフッ化カルシウムが晶析槽の底部から回収される構造であるため、晶析槽の底部に堆積するようにフッ化カルシウム粒子を大きく晶析させる必要がある。そのためには、晶析槽をできるだけ大きくし、晶析槽内の反応液の滞留時間を増やすことで、晶析反応を長時間行うことになる。その結果、巨大な装置を導入するための設備費やスペースを要したり、晶析槽を大きくしない場合にはフッ化カルシウムの生産効率や品質が低くなったりする。
なお、特許文献8,9に開示される装置では、晶析槽の底部に堆積する程度に結晶が大きくならなかったフッ化カルシウムは、晶析槽の上部から流出する。特許文献8,9では、この晶析槽の上部から流出したフッ化カルシウムは、凝集剤を加えて凝集させ沈降分離した後、反応系外に排出され廃棄されるか、又は再び晶析槽へ返送されて種晶として使用されており、フッ酸製造用の原料として使用されていない。
【0010】
特許文献10,11には、炭酸カルシウム中の炭酸イオンとフッ素イオンの塩交換によりフッ素イオンを回収する方法が開示されている。この方法では、粒度を揃えた天然炭酸カルシウムにフッ素含有廃水を通すことにより、天然炭酸カルシウムの骨格をほぼ保ったままフッ化カルシウムが生成される。
しかし、この方法では、フッ酸製造用の原料として使用しにくい、粒子径の小さいフッ化カルシウムフロックが生じやすい。また、炭酸カルシウムが残存したりすることもあり、この炭酸カルシウムが、下式(1)に示すように、フッ酸の製造の際、硫酸と反応し多量の炭酸ガスと水を発生させる。
CaCO
3+H
2SO
4→CaSO
4+CO
2+H
2O ・・・(1)
その結果、この方法では、フッ酸の収率が低下したり、処理が不安定になったり、装置が腐食したりすることがある。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1の実施態様>
(装置)
図1に、本発明の第1の実施態様に係る製造方法に用いられる装置の概略図を示す。
第1の実施態様に用いる装置1は、反応槽10と、凝集剤添加槽30と、沈降分離槽40とを備える。また、反応槽10には、反応液を撹拌するために、撹拌翼20が備えられる。また、装置1は、反応槽10内の反応液にフッ酸含有廃水を加えるためのフッ酸含有廃水管21と、反応槽10の反応液にカルシウム化合物を加えるためのカルシウム化合物管22と、凝集剤添加槽30内の反応液に高分子凝集剤を加えるための高分子凝集剤管32とを備える。また、装置1は、反応液を、反応槽10から凝集剤添加槽30へ送るための、反応液送り管31を備える。また、装置1は、反応液を、凝集剤添加槽30から沈降分離槽40へ送るための、反応液送り管41を備える。また、装置1は、沈降分離槽40から上澄み液52を排出するための上澄み液排出管42と、フッ化カルシウムの凝集物を沈降分離槽40から装置1外に抜き出すための沈降凝集物抜出管43と、フッ化カルシウムの凝集物を沈降分離槽40から反応槽10に返送するための沈降凝集物返送管44とを備える。
以下、装置1の各槽について詳述する。
【0018】
[反応槽]
反応槽10の材質は、フッ酸濃度2質量%以下のフッ酸含有廃水と後述の(A)工程における反応液のpHに耐え得るものであれば、特に制限されない。例えば、ポリ塩化ビニル製、ポリエチレン製、ポリプロピレン製、エポキシ樹脂製、有機繊維のFRP製等の反応槽が挙げられる。中でも、加工性とコスト面から、ポリ塩化ビニル製が好ましい。
反応槽10の容量は、後述する反応液の反応槽10における平均滞留時間及びフッ酸含有廃水の供給流量の好ましい範囲内において、後述の式(8)により設定される。例えば、特定の平均滞留時間において、フッ酸含有廃水の供給流量を遅くすれば、反応槽10の容量を小さくすることができる。
【0019】
撹拌翼20の形状としては、特に限定されず、プロペラ翼、パドル翼、タービン翼等が挙げられる。中でも、プロペラ翼は、単位動力あたりの反応液の循環力を大きくでき、反応液をより均一に混合できるので好ましい。
なお、反応液を均一に混合するために、反応槽10の内面に邪魔板を設置してもよい。
【0020】
[凝集剤添加槽]
凝集剤添加槽30の材質は、フッ酸濃度2質量%以下のフッ酸含有廃水と後述の(A)工程における反応液のpHに耐え得るものであれば、特に制限されない。例えば、ポリ塩化ビニル製、ポリエチレン製、ポリプロピレン製、エポキシ樹脂製、有機繊維のFRP製等が挙げられる。中でも、加工性とコスト面から、ポリ塩化ビニル製が好ましい。
凝集剤添加槽30の容量は、凝集剤添加槽30内の反応液の平均滞留時間及び反応槽10から送られてくる反応液の流量により設定される。例えば、特定の平均滞留時間において、凝集剤添加槽30への反応液の供給流量を遅くすれば、凝集剤添加槽30の容量を小さくすることができる。
なお、凝集剤添加槽30内の反応液の平均滞留時間は0.5〜10分が好ましく、1〜5分がより好ましい。平均滞留時間が前記下限値以上であれば、反応液と凝集剤とが充分混合できる。一方、前記上限値以下であれば、一旦生成した凝集物が壊れることを防げる。
【0021】
凝集剤添加槽30には、反応液と高分子凝集剤とを充分に混合するために、撹拌翼33が備えられる。撹拌翼33の形状としては、特に限定されず、プロペラ翼、パドル翼等が挙げられる。タービン翼は反応液に対してせん断力が大きいので好ましくない。また、上述の反応槽10と同様、反応液を均一に混合するために、凝集剤添加槽30の内面に邪魔板を設置してもよい。
【0022】
[沈降分離槽]
沈降分離槽40の材質は、汚泥処理等の固液分離で通常用いられる沈降分離機に使用されるものであって、フッ酸濃度2質量%以下のフッ酸含有廃水と後述の(A)工程における反応液のpHに耐え得るものであれば、特に制限されない。例えば、ポリ塩化ビニル製、ポリエチレン製、ポリプロピレン製、エポキシ樹脂製、有機繊維のFRP製等が挙げられる。中でも、加工性とコスト面から、ポリ塩化ビニル製の沈降分離槽が好ましい。
沈降分離槽40としては、汚泥処理等の固液分離で通常用いられる、重力、遠心力又は静電力等を利用する固液分離機であれば、特に制限されない。中でも、簡便かつ省電力で固液分離ができる、重力を利用する沈降分離機が好ましい。
【0023】
例えば、固液分離機として重力を利用する沈降分離機を利用する場合、沈降分離槽の容積よりも断面積が重要となる。断面積が大きいほど、沈降分離槽40内の上澄み液の上昇速度が遅くなるため、小さな凝集物であっても上澄み液に同伴し排出されることはなく、沈降しやすくなる。
具体的には、上澄み液の上昇速度が0.5〜20m/時間になるような大きさの断面積を有する沈降分離機を使用するのが好ましい。より好ましい上澄み液の上昇速度は、2〜15m/時間である。
なお、上澄み液の上昇速度が前記下限値以上であれば、沈降分離槽40の容積を小さくできる。一方、前記上限値以下であれば、小さな凝集物であっても上澄み液に同伴し排出されることはなく、充分に沈降できる。
【0024】
(再生フッ化カルシウムの製造方法)
本実施態様の再生フッ化カルシウムの製造方法は、上記
図1の装置1を用いて、(A)工程、(B)工程、(C)工程、(D)工程、(E)工程により行われる。
以下、
図1を参照しながら、本実施態様の再生フッ化カルシウムの製造方法の各工程を説明する。
【0025】
[(A)工程]
(A)工程は、あらかじめフッ化カルシウム粒子を存在させた反応槽に、フッ酸の濃度が2質量%以下であるフッ酸含有廃水とカルシウム化合物とを加え、0.2kW/m
3以上の撹拌動力で撹拌することにより、新たにフッ化カルシウムを晶析させ、フッ化カルシウム粒子を含有する反応液を得る工程であって、前記反応液のpHが1.5〜4.0であり、かつ前記反応液中のフッ化カルシウムの濃度が2〜15質量%である、フッ化カルシウム粒子を含有する反応液を得る工程である。
本実施態様では、フッ酸含有廃水は、フッ酸含有廃水管21から反応槽10に供給される。また、カルシウム化合物は、カルシウム化合物管22から反応槽10内の反応液に加えられる。
【0026】
フッ酸含有廃水中のフッ酸とカルシウム化合物、例えば、炭酸カルシウムとの反応を、下式(2)に示す。
2HF+CaCO
3→CaF
2+H
2O+CO
2 ・・・(2)
この反応で生じたフッ化カルシウムは、主としてあらかじめ存在させたフッ化カルシウム粒子の表面に晶析し、該粒子の粒子径を大きくさせる。
(A)工程において、フッ酸の濃度、撹拌動力、反応液のpH、反応液中のフッ化カルシウムの濃度は、高品質な再生フッ化カルシウムを、効率よく生産するために重要である。
以下、(A)工程の各構成について、説明する。
【0027】
{フッ酸含有廃水}
本実施態様において、フッ酸含有廃水中のフッ酸の濃度は2質量%以下である。より好ましくは、フッ酸含有廃水中のフッ酸濃度は1質量%以下である。
フッ酸濃度が前記上限値より高いと、反応槽10内でフッ化カルシウムの過飽和領域が局所的に発生し、フッ化カルシウムの微細粒子が生成しやすくなる。フッ化カルシウムの微細粒子が生成すると、脱水後のケーキ含水率が大きくなり、また、再生フッ化カルシウム中のフッ化カルシウム粒子の粒度分布幅(d90/d10)が拡がる。
フッ酸含有廃水のフッ酸の濃度は、フッ酸含有廃水を反応槽10に加える段階で前記上限値以下であればよい。フッ酸含有廃水の原廃水のフッ酸の濃度が前記上限値を超えている場合には、反応槽10に加える段階のフッ酸含有廃水中のフッ酸の濃度が、前記上限値以下になるように水、塩酸水溶液又は硫酸水溶液等で希釈すればよい。
なお、本明細書においてフッ化カルシウムの微細粒子とは、後述する反応槽10内にあらかじめ存在させておいたフッ化カルシウム粒子や沈降分離槽40から返送したフッ化カルシウム粒子よりも体積平均粒子径が小さい、例えば、1μm以下のものである。
【0028】
フッ酸含有廃水の由来としては、特に限定されず、例えば、各種の含フッ素有機化合物の製造設備より排出されるフッ酸を含む廃水、フロンの回収破壊で排出される塩酸とフッ酸を含む廃水、フッ酸製造設備より排出されるフッ酸とケイフッ化水素酸を含む廃水、ガラスエッチング処理設備より排出される、塩酸、フッ酸、ケイフッ化水素酸を含む廃水等が挙げられる。
【0029】
フッ酸含有廃水中のSi濃度は、0.2質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、0.1質量%以下である。
Si濃度が前記上限値より高いと、再生フッ化カルシウム中のSiO
2含有率が高くなる。特に、Siが廃水中にケイフッ化水素酸(H
2SiF
6)として存在する場合、下式(3)の反応により生成したSiO
2が、廃水中にコロイド状態で安定して存在できなくなり、ゲル化してしまう。
H
2SiF
6+3CaCO
3→3CaF
2+SiO
2+H
2O+3CO
2 ・・・(3)
そのため、再生フッ化カルシウム中にSiO
2が不純物として残留しやすくなる。SiO
2を多量に含有する再生フッ化カルシウムをフッ酸製造用の原料として用いると、下式(4)に示す反応により、フッ酸の損失が生じやすくなる。
SiO
2+4HF→SiF
4+2H
2O ・・・(4)
【0030】
フッ酸含有廃水は、塩酸や硫酸を含有していてもよい。
塩酸は、カルシウム化合物、例えば、炭酸カルシウムと反応すると、下式(5)により塩化カルシウムが生成する。
2HCl+CaCO
3→CaCl
2+H
2O+CO
2 ・・・(5)
この塩化カルシウムは水に対する溶解度が高いので、本実施態様により得られる再生フッ化カルシウムには混入しにくい。
【0031】
硫酸がカルシウム化合物、例えば、炭酸カルシウムと反応すると、下式(6)に示すように、硫酸カルシウムが析出し、再生フッ化カルシウム中に混入することがある。
H
2SO
4+CaCO
3→CaSO
4+H
2O+CO
2 ・・・(6)
しかし、フッ酸の製造工程においては、下式(7)に示すように、副産物として硫酸カルシウムが生成し、該工程の際、この硫酸カルシウムはフッ酸と分離される。
CaF
2+H
2SO
4→CaSO
4+2HF ・・・(7)
このとき、前記式(6)の反応の結果混入した硫酸カルシウムも、前記式(7)の反応で生成した硫酸カルシウムと一緒に、フッ酸と分離される。また、再生フッ化カルシウム中に硫酸カルシウムが混入していても、前記式(7)の反応の進行にほとんど影響はない。したがって、硫酸カルシウムを含有する再生フッ化カルシウムをフッ酸製造用の原料に用いてもほとんど問題はない。
【0032】
本実施態様において、反応液の反応槽10における平均滞留時間は、5〜120分が好ましく、より好ましくは10〜60分である。
なお、フッ酸含有廃水の供給流量は、下式(8)により算出される。
Z=(X/Y)×60 ・・・(8)
Z:フッ酸含有廃水の供給流量(m
3/時間)
X:反応槽10の容量(m
3)
Y:反応液の反応槽10における平均滞留時間(分)
【0033】
例えば、反応槽10の容量が40m
3の場合、フッ酸含有廃水の供給流量は20〜480m
3/時間が好ましく、より好ましくは40〜240m
3/時間である。
反応槽10の容量が5Lの場合、フッ酸含有廃水の供給流量は2.5〜60L/時間が好ましく、より好ましくは5〜30L/時間である。
フッ酸含有廃水の供給流量が前記上限値よりも速いと、反応液の反応槽10における平均滞留時間が短くなり、フッ酸とカルシウム化合物との反応時間が不足し、フッ酸を充分にフッ化カルシウムに転換できなくなる。すると、フッ化カルシウムが晶析しにくくなり、所望の体積平均粒子径の再生フッ化カルシウムが得られにくくなる。一方、フッ酸含有廃水の供給流量を前記下限値よりも遅くすると、反応液の反応槽10における平均滞留時間が長くなり、再生フッ化カルシウムの生産効率が下がる。
【0034】
{カルシウム化合物}
カルシウム化合物としては、特に限定されず、炭酸カルシウム(CaCO
3)、水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)、塩化カルシウム(CaCl
2)等が挙げられ、これらの組合せでもよい。中でも、反応槽10内の反応液のpHが調整しやすい、炭酸カルシウムが好ましい。
【0035】
供給するカルシウム化合物の態様としては、粉末状のものを用いてもよく、カルシウム化合物粉末を水に分散させたスラリー状、又はカルシウム化合物を溶解した水溶液を用いてもよい。中でも、カルシウム濃度の高い領域が局所的に発生してフッ化カルシウムの微細粒子が発生し、その結果として、再生フッ化カルシウム中のフッ化カルシウム粒子の粒度分布幅(d90/d10)が拡がらないようにするためには、カルシウム化合物粉末を水に分散させたスラリー状、又はカルシウム化合物を溶解した水溶液が好ましい。
【0036】
カルシウム化合物の種類と供給量は、反応液のpHが1.5〜4.0になるように調整する。
フッ酸含有廃水は、塩酸や硫酸等の強酸を含むことが多いため、pHが1.5よりも低い場合が多い。カルシウム化合物として炭酸カルシウムや水酸化カルシウムを用いれば、反応槽10内の反応液のpHを上昇させることができる。
一方、塩化カルシウムを用いれば、反応液のpHに影響を与えずに、フッ酸との反応に必要なカルシウムイオンを供給できる。
したがって、カルシウム化合物の種類とその供給量を適宜調節することにより、反応槽10内の反応液のpHが1.5〜4.0になるように調整しながら、フッ酸との反応に必要なカルシウムイオンを供給できる。
【0037】
カルシウム化合物粉末の粒子サイズは、未反応のカルシウム化合物が再生フッ化カルシウムに残存するのを防ぐため、体積平均粒子径が50μm以下であることが好ましく、より好ましくは20μm以下である。
【0038】
{反応液のpH}
本実施態様では、フッ酸含有廃水の流量に応じてカルシウム化合物を供給して、反応槽10内の反応液のpHを調整する。
反応槽10内の反応液のpHの設定は、良好な晶析を進ませるため、また、再生フッ化カルシウムに不純物が含まないようにするために重要である。
【0039】
本実施態様において、反応槽10内の反応液のpHは、1.5〜4.0である。より好ましくは、2.0〜3.5である。
反応槽10内の反応液のpHが前記下限値より低いと、反応液に対するフッ化カルシウムの溶解度が上昇し、フッ化カルシウムが析出しにくく、未反応のフッ化物イオンが残存しやすくなり、その結果、再生フッ化カルシウムの生産量が低下する。一方、反応槽10内の反応液のpHが前記上限値より高いと、フッ化カルシウム以外の化合物も析出しやすくなり、再生フッ化カルシウム中の不純物の含有率が上昇する。特に、反応槽10内の反応液のpHが4.0を超えると、SiO
2が、反応液中にコロイド状態で安定して存在できなくなり、ゲル化してしまい、再生フッ化カルシウム中に不純物として残存する。
【0040】
なお、硫酸カルシウムは、反応槽10内の反応液のpHが変化しても溶解度があまり変化せず、反応槽10内の反応液に溶解度以上の量が存在していれば二水和物(CaSO
4・2H
2O)として析出し、再生フッ化カルシウムに混入してしまう。しかし、前述したように、フッ酸の製造工程において、硫酸カルシウムはフッ酸と分離され、また、前記式(7)の反応の進行にほとんど影響がない。したがって、反応液中に硫酸カルシウムが析出しても、本実施態様により製造した再生フッ化カルシウムを用いたフッ酸の製造に対する影響は、極めて小さい。
また、リン酸塩は、溶解度が大きいリン酸二水素カルシウム(Ca(H
2PO
4)
2)として存在するために、析出したとしても極僅かである。
以上の効果により、シリカ及びリン酸塩分の合計含有率の小さい再生フッ化カルシウムが得られる。
【0041】
{反応液中のフッ化カルシウム粒子の濃度]
本実施態様では、製造開始時には、晶析のための種晶として反応槽10内にあらかじめフッ化カルシウム粒子を存在させておく。
その後、後述の(E)工程により、沈降分離槽40の底部から回収した沈降凝集物51の一部が返送され、該沈降凝集物51に含まれるフッ化カルシウム粒子が、反応槽10内 の反応液中で新たな種晶になる。
つまり、フッ酸とカルシウム化合物が反応して生成したフッ化カルシウムが、あらかじめ存在させた又は返送されたフッ化カルシウム粒子の表面に晶析し、該フッ化カルシウム粒子の粒子径が徐々に大きくなる。
【0042】
反応槽10内の反応液中のフッ化カルシウム粒子の濃度は、2〜15質量%に維持される。より好ましくは、5〜10質量%である。
反応槽10内の反応液中のフッ化カルシウム粒子の濃度が前記下限値より小さいと、粒子径の大きい再生フッ化カルシウムが得られない。一方、濃度が前記上限値を超えると、反応槽10中の反応液の粘度が高くなり、反応液を撹拌しにくくなる。
【0043】
反応槽10内の反応液中のフッ化カルシウム粒子の濃度の測定方法としては、まず、反応槽10内の反応液の一部を採取し、洗浄し、脱水してケーキを得、これを110℃で6時間乾燥して粉末を得る。次いで、この粉末中のCaF
2含有率(質量%)を、実施例(「CaF
2」)に記載する方法と同様の方法で求める。反応槽10内の反応液中のフッ化カルシウム粒子の濃度は、下式(9)により算出する。
S=(P×T)/R ・・・(9)
S:反応槽10内の反応液中のフッ化カルシウム粒子の濃度(質量%)
P:採取した反応液から得た乾燥粉末の質量(g)
T:CaF
2含有率(質量%)
R:採取した反応液の質量(g)
【0044】
反応槽10内の反応液中のフッ化カルシウム粒子の濃度を2〜15質量%に維持するため、製造開始時には、反応槽10にフッ化カルシウム粒子をあらかじめ必要量加えておく。その後は、後述の(E)工程により、沈降分離槽40の底部から回収したフッ化カルシウム粒子の凝集物の一部を反応槽10に返送して、反応液中のフッ化カルシウム粒子の濃度を2〜15質量%に維持する。
【0045】
{撹拌動力}
本実施態様において、反応槽10内の反応液の撹拌条件は、良好な晶析を進行させるため、また、再生フッ化カルシウム中のフッ化カルシウム粒子の粒度分布幅(d90/d10)が拡がる原因となるフッ化カルシウムの微細粒子の発生を抑制するために、重要である。
【0046】
本実施態様の反応槽10内の反応液の撹拌は、撹拌動力の下限値が、0.2kW/m
3以上となるように行う。より好ましくは、0.3kW/m
3以上である。前記下限値以上であれば、フッ化カルシウムの微細粒子の発生を抑制して良好な粒度分布幅(d90/d10)を有する再生フッ化カルシウムを生産することができる。
微細粒子の発生を抑制するためには撹拌動力は強力であればあるほどよいが、撹拌動力が強すぎると、反応槽10や撹拌翼20に大きな負荷がかかり、また、反応液が反応槽10からあふれる可能性もあるため、撹拌動力の上限値は1kW/m
3以下が好ましい。
【0047】
{反応温度}
反応槽10内の反応液の温度としては、10〜50℃が好ましく、より好ましくは20〜40℃である。
温度が下がるとフッ化カルシウムの飽和溶解度も下がる。そのため、温度が前記下限値よりも低いと、フッ化カルシウムの微細粒子が発生しやすくなり、再生フッ化カルシウム中のフッ化カルシウム粒子の粒度分布幅(d90/d10)が拡がる可能性が高まる。一方、温度が前記上限値を超えると、ポリ塩化ビニル等の安価な樹脂製の反応槽が採用できなくなる。
【0048】
[(B)工程]
(B)工程は、(A)工程で得られたフッ化カルシウム粒子を含有する反応液を反応槽10から凝集剤添加槽30に送り、該凝集剤添加槽30において高分子凝集剤と共に撹拌することにより、フッ化カルシウム粒子の凝集物を得る工程である。
(A)工程では、定常状態において、フッ化カルシウム粒子が、15〜50μmの体積平均粒子径まで成長できる。(B)工程は、高分子凝集剤を添加することによって該粒子を、後述する沈降分離槽40で沈降できる程度の大きさにまで凝集させる工程である。
本実施態様では、反応槽10から流れ出た反応液は、反応液送り管31を通って凝集剤添加槽30に送られる。また、高分子凝集剤は、高分子凝集剤管32から凝集剤添加槽30内の反応液に加えられる。
【0049】
高分子凝集剤としては、特に限定されず、アニオン系、ノニオン系等の高分子凝集剤が使用できる。
アニオン系としては、ポリアクリル酸ナトリウム、マレイン酸共重合物、ポリアクリルアミドの部分加水分解物等が挙げられる。
ノニオン系としては、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリビニルホルムアミド、ポリビニルアセトアミド、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。
【0050】
高分子凝集剤の添加する量としては、特に限定されないが、凝集剤添加槽30内の反応液中での濃度が、0.1〜100mg/Lとなるように添加するのが好ましい。
前記下限値以上であれば、充分な凝集効果が得られる。一方、前記上限値以下であれば、沈降分離槽40の底部から抜き出されたフッ化カルシウムの凝集物の脱水性が良好となり、また、沈降分離槽40からの上澄み液52中のCOD(化学的酸素要求量)が上昇するおそれが減る。
【0051】
後の沈降分離槽40における分離性を向上する目的で、塩化第二鉄(FeCl
3)及びポリ塩化アルミニウム等の無機凝結剤を、凝集剤添加槽30内の反応液に添加してもよい。
しかし、これらの無機凝結剤は再生フッ化カルシウム中に不純物として混入することになるため、その添加量はできるだけ少なくした方がよい。
【0052】
[(C)工程]
(C)工程は、(B)工程で得たフッ化カルシウム粒子の凝集物を含む反応液を凝集剤添加槽30から沈降分離槽40に送り、該沈降分離槽40において該凝集物を沈降させ、沈降凝集物51を得る工程である。
本実施態様では、凝集剤添加槽30から流れ出た反応液は、反応液送り管41を通って沈降分離槽40に送られる。また、沈降分離槽40でフッ化カルシウムの凝集物が沈降した後の上澄み液52は、上澄み液排出管42から装置1外へ排出される。
【0053】
なお、上澄み液排出管42から装置1外へ排出された上澄み液52は、カルシウム化合物やアルカリ金属塩等を添加して中和処理し、固液分離により固形物を除去した後、環境基準を満たしていることを確認し、廃棄する。
また、(A)工程で添加するカルシウム化合物及び(B)工程で添加する高分子凝集剤の量が、フッ酸含有廃水の供給量に比べ非常に少なければ、沈降分離槽上澄み液の排出流量は上述のフッ酸含有廃水の供給流量に近い値となる。
【0054】
[(D)工程]
(D)工程は、沈降分離槽40の底部から、沈降凝集物51を回収し、中和剤により中和し、乾燥する工程である。
本実施態様では、該沈降凝集物51は、沈降凝集物抜出管43から装置1外へ抜き出すことにより回収する。
まず、回収した凝集物はpH1.5〜4の酸性であるため、中和剤を添加し中和する。中和剤としては、水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液等のアルカリ金属塩水溶液が挙げられる。中でも、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液又はこれらの混合液が好ましい。水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液は、未反応分が不純物として残留しにくいので、再生フッ化カルシウムの純度を低下させるおそれが少ない。
次いで、固液分離機(例えば、フィルタープレスや遠心分離機等)で濾過又は脱水を行い、必要により、固形物を洗浄して濾過又は脱水を再度行う。濾過又は脱水後、得られたケーキ状の固形分をさらに乾燥することにより再生フッ化カルシウムが得られる。乾燥は、例えば、110℃で6時間行う。乾燥機は、通常用いられる乾燥機でよい。
【0055】
[(E)工程]
(E)工程は、沈降分離槽40の底部から回収した沈降凝集物51の一部を、反応槽10に返送する工程である。
本実施態様では、該沈降凝集物51の一部は、沈降凝集物返送管44を通って反応槽10へ返送される。
返送した沈降凝集物51に含まれるフッ化カルシウム粒子は、反応槽10内の反応液中で、新たな種晶になる。返送は、反応槽10内の反応液中のフッ化カルシウム粒子の濃度が2〜15質量%になるように行う。
【0056】
(第1の実施態様による作用効果)
本発明では、反応槽における晶析反応の条件、特に、フッ酸含有廃水中のフッ酸の濃度、反応液のpH、反応液中のフッ化カルシウム粒子の濃度、撹拌動力を限定した。
中でも、フッ酸含有廃水中のフッ酸の濃度を限定することにより、充分な体積平均粒子径を有し、粒度分布幅(d90/d10)が狭い、再生フッ化カルシウムが得られる。
また、反応槽内の反応液のpHを限定することにより、フッ化カルシウム粒子の表面で晶析を徐々に進ませ、フッ化カルシウム粒子の粒子径を徐々に大きくさせることができると共に、未反応のフッ化物イオンが残存するのを防ぎ、再生フッ化カルシウムに不純物が含まないようにするという作用が得られる。該作用により、フッ化カルシウム純度が高く、充分な体積平均粒子径を有し、ケーキ含水率が低い再生フッ化カルシウムが得られる。また、フッ酸含有廃水中のフッ化物イオンの回収率も高い。
また、反応槽内の反応液中のフッ化カルシウム粒子の濃度を限定することにより、充分な体積平均粒子径を有し、粒度分布幅(d90/d10)が狭く、ケーキ含水率が低い再生フッ化カルシウムが得られる。
また、反応槽内の反応液の撹拌動力を限定することにより、充分な体積平均粒子径を有し、粒度分布幅(d90/d10)が狭い、再生フッ化カルシウムが得られる。
また、本発明では、沈降分離槽の底部から回収した沈降凝集物の一部を反応槽へ返送することにより、フッ酸含有廃水の供給時間の経過と共に徐々にフッ化カルシウム粒子の粒子径が大きくなり、充分な体積平均粒子径を有する再生フッ化カルシウムが得られる。沈降凝集物の反応槽への返送を行わずに、充分な体積平均粒子径を有する再生フッ化カルシウムを得ることは困難である。
これらのことは、後述の実施例で示されている。
【0057】
すなわち、本発明の第1の実施態様によれば、フッ酸含有廃水から、フッ酸製造用に利用できる高品質の再生フッ化カルシウムを製造することができる。
具体的には、フッ酸含有廃水中のフッ化物イオンの回収率が95%以上であり、得られた再生フッ化カルシウムが、フッ化カルシウム純度が固形分換算で90質量%以上であり、体積平均粒子径が15〜50μmであり、粒度分布幅(d90/d10)が4以下であり、脱水後のケーキ含水率が30質量%以下であり、シリカ及びリン酸塩分の合計含有率が固形分換算で3質量%以下である再生フッ化カルシウムを容易に製造できる。
したがって、本発明の第1の実施態様によれば、資源の枯渇が危ぶまれている天然蛍石を使用せずに、フッ酸を製造することができる再生フッ化カルシウムをリサイクルすることができる。
【0058】
また、本発明の第1の実施態様においては、装置を簡易化かつ小型化することができる。
例えば、後述する実施例で用いた反応槽は、ポリ塩化ビニル製の容器に、通常装着される邪魔板とプロペラ翼が付されているもので、特殊なものではない。
また、反応槽における晶析反応を効率的に行えるため、反応槽内での反応液の平均滞留時間が短くすむ。したがって、反応槽を特に大きくする必要はない。
また、本発明の第1の実施態様によれば、沈降分離槽上澄み液中のフッ化物イオン濃度を充分に下げることができる。したがって、本発明の第1の実施態様によれば、フッ化物イオンを排水基準以下まで除去するためのさらなる装置を必要とすることなく、沈降分離槽の上澄み液を排出することができる。
よって、本発明の第1の実施態様によれば、高品質の再生フッ化カルシウムが簡易かつ小型の装置により得られるため、経済的に再生フッ化カルシウムを製造することができる。
【0059】
また、本発明の第1の実施態様においては、反応液の平均滞留時間が短くても、高品質の再生フッ化カルシウムが製造でき、しかも、フッ酸含有廃水中のフッ化物イオンの回収率が高い。
すなわち、本発明の第1の実施態様による再生フッ化カルシウムの製造は、生産効率が高いといえる。
【0060】
<第2の実施態様>
(装置)
図2に、本発明の第2の実施態様に係る製造方法に用いられる装置の概略図を示す。
なお、
図1と同様の構成部材については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
第2の実施態様に用いる装置2は、第1反応槽11と、第2反応槽12と、凝集剤添加槽30と、沈降分離槽40とを備える。また、第1反応槽11と第2反応槽12には、反応液を撹拌するために、それぞれ撹拌翼20,25が備えられる。また、装置2は、第1反応槽11内の反応液にフッ酸含有廃水を加えるためのフッ酸含有廃水管21と、第1反応槽11の反応液にカルシウム化合物を加えるためのカルシウム化合物管22と、第2反応槽12の反応液にカルシウム化合物を加えるためのカルシウム化合物管24と、凝集剤添加槽30内の反応液に高分子凝集剤を加えるための高分子凝集剤管32とを備える。また、装置2は、反応液を、第1反応槽11から第2反応槽12へ送るための、反応液送り管23を備える。また、装置2は、反応液を、第2反応槽12から凝集剤添加槽30へ送るための、反応液送り管31を備える。また、装置2は、反応液を、凝集剤添加槽30から沈降分離槽40へ送るための、反応液送り管41を備える。また、装置2は、沈降分離槽40から上澄み液52を排出するための上澄み液排出管42と、フッ化カルシウムの凝集物を沈降分離槽40から装置2外に抜き出すための沈降凝集物抜出管43と、フッ化カルシウムの凝集物を沈降分離槽40から第1反応槽11に返送するための沈降凝集物返送管44とを備える。
なお、第2の実施態様で用いられる各槽の詳細は、上述の第1の実施態様と同じである。
【0061】
(再生フッ化カルシウムの製造方法)
本実施態様の再生フッ化カルシウムの製造方法は、上記
図2の装置2を用いて、(A)工程、(B)工程、(C)工程、(D)工程、(E)工程により行われる。
以下、
図2を参照しながら、本実施態様の再生フッ化カルシウムの製造方法の各工程を説明する。
【0062】
[(A)工程]
本実施態様では、フッ酸含有廃水はフッ酸含有廃水管21から第1反応槽11に供給される。また、第1反応槽11から流れ出た反応液は、反応液送り管23を通って第2反応槽12に送られる。また、第1反応槽11で加えられたカルシウム化合物とは別に、新たにカルシウム化合物がカルシウム化合物管24から第2反応槽12内の反応液に加えられる。また、第2反応槽12から流れ出た反応液は、反応液送り管31を通って凝集剤添加槽30に送られる。
また、反応槽内での反応液の平均滞留時間については、第1反応槽11と第2反応槽12における反応液の平均滞留時間を合算して求める。
その余の点は、上述の第1の実施態様の(A)工程と同様である。
【0063】
[(B)工程〜(E)工程]
本実施態様の(B)工程〜(E)工程は、上述の第1の実施態様と同様である。
【0064】
(第2の実施態様による作用効果)
第2の実施態様によれば、上述の第1の実施態様により得られる作用効果と同様の作用効果が得られる。
また、第2の実施態様によれば、個々の反応槽を小さくすることができる。
【0065】
<その他の実施態様>
(A)工程においては、反応槽10又は第1の反応槽11内の反応液中のフッ化カルシウム粒子の濃度を2〜15質量%に維持する方法として、沈降分離槽40の底部から回収したフッ化カルシウム粒子の凝集物に加えて、別に作製したフッ化カルシウム粒子を添加してもよい。
また、反応槽は、3基以上を直列につないでもよい。反応槽をさらに増やすことにより、個々の反応槽をさらに小さくすることができる。
【0066】
(E)工程においては、沈降凝集物返送管44を用いず、沈降分離槽40の底部から回収したフッ化カルシウム粒子の凝集物を別の貯槽に貯めておき、この貯槽から反応槽10又は第1の反応槽11へ供給してもよい。こうすれば実質的に返送しているのと同じである。
【実施例】
【0067】
以下に実施例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
(評価方法)
下記実施例及び比較例で得た再生フッ化カルシウムの特性を、以下の方法により評価した。
【0068】
[沈降分離槽上澄み液中のフッ化物イオン濃度、フッ化物イオン回収率]
フッ酸含有廃水及び沈降分離槽上澄み液中のフッ化物イオン濃度は、まず、該上澄み液をJIS K0102に記載の水蒸気蒸留法に基づいて、フッ素を含有する留出液を得、JIS K0102に記載のイオン電極法に基づいて、該留出液中のF量を測定し、該フッ素量から該上澄み液中のフッ化物イオン濃度に換算することにより求めた。
また、フッ化物イオン回収率は、下式(10)により算出される。
K=(L×J−U×V)/(L×J) ・・・(10)
K:フッ化物イオン回収率(%)
L:フッ酸含有廃水中の全フッ化物イオン濃度(質量%)
J:フッ酸含有廃水の供給流量(mL/分)
U:沈降分離槽上澄み液中のフッ化物イオン濃度(質量%)
V:沈降分離槽上澄み液の排出流量(mL/分)
しかし、本実施例においては、カルシウム化合物と高分子凝集剤を加える量はフッ酸含有廃水に対し極めて少ないため、フッ酸含有廃水の供給流量と沈降分離槽上澄み液の排出流量は近似できる(J≒V)。したがって、本実施例では、フッ化物イオンの回収率を、下式(11)により算出した。
K≒(L−U)/L ・・・(11)
K:フッ化物イオン回収率(%)
L:フッ酸含有廃水中の全フッ化物イオン濃度(質量%)
U:沈降分離槽上澄み液中のフッ化物イオン濃度(質量%)
【0069】
[体積平均粒子径、粒度分布幅(d90/d10)]
沈降分離槽の底部から回収された凝集物中のフッ化カルシウム粒子の粒度分布を、島津製作所製の粒度分布測定装置LA−950V2型を用いて測定した。粒度分布曲線において積算体積分率が50%となる粒子径(メジアン径)を体積平均粒子径とした。
また、粒子径の小さい方から積算体積分率が10%となる粒子径d10と、積算体積分率が90%となる粒子径d90から、粒度分布幅(d90/d10)を求めた。粒度分布幅(d90/d10)が小さいほど、粒度分布が狭いことを意味する。
【0070】
[ケーキ含水率]
後述する(D)工程で得たケーキ25gを、オーブンを用いて110℃で6時間乾燥し、乾燥粉末を得た。乾燥減量(25−乾燥粉末の重量(g))をケーキ中の含水量(M)(g)とした。ケーキ含水率は、下式(12)により求めた。
N=(M/25)×100 ・・・(12)
N:ケーキ含水率(%)
M:ケーキ中の含水量(g)
【0071】
[再生フッ化カルシウムの組成分析]
再生フッ化カルシウムに含まれる以下の成分の含有率を分析した。
「CaF
2」
上記乾燥粉末2gを用いて、JIS K1468−2に記載の水蒸気蒸留法に基づいて、Fを含有する留出液を得た。この留出液中に含有されるF量を、JIS K0102に記載のランタン−アリザリンコンプレキソン吸光光度法で測定し、乾燥粉末2g中に含まれるF量(g)を求め、乾燥粉末中のCaF
2含有率を、下式(13)により算出した。
CaF
2含有率(質量%)=[{F量(g)×(78/38)}/2]×100 ・・・(13)
【0072】
「CaCO
3」
上記乾燥粉末1gに、希酢酸水溶液を加え、未溶解残渣を濾別して得た濾液に対してキレート滴定を行い、この濾液中のCa量を測定し、乾燥粉末1g中に含まれるCa量(g)を求め、乾燥粉末中のCaCO
3含有率を、下式(14)により算出した。
CaCO
3含有率(質量%)={Ca量(g)×(100/40)}×100 ・・・(14)
【0073】
「SiO
2」
上記乾燥粉末0.2gに、Na
2CO
3粉末とK
2CO
3粉末を加えて加熱溶融し(アルカリ溶融法)、溶融物を酸に溶解した後、この溶解液中のSi量をICP分析で測定し、乾燥粉末0.2g中に含まれるSi量(g)を求め、乾燥粉末中のSiO
2含有率を、下式(15)により算出した。
SiO
2含有率(質量%)=[{Si量(g)×(60/28)}/0.2]×100 ・・・(15)
【0074】
「P
2O
5」
上記乾燥粉末0.2gに、Na
2CO
3粉末とK
2CO
3粉末を加えて加熱溶融し(アルカリ溶融法)、溶融物を酸に溶解した後、この溶解液中のP量をICP分析で測定し、乾燥粉末0.2g中に含まれるP量(g)を求め、乾燥粉末中のP
2O
5量を、下式(16)により算出した。
P
2O
5量(質量%)=[{P量(g)×(142/62)}/0.2]×100 ・・・(16)
【0075】
「S」
上記乾燥粉末をプレス成型して、直径30mm×厚さ3mmの円盤状のペレットを作製し、蛍光X線分析により乾燥粉末中のS含有率を求めた。
【0076】
(実施例1〜8及び比較例1〜4)
図1に示す装置を用いて、以下の実施例1〜8及び比較例1〜4に記載するとおりに、再生フッ化カルシウムを製造した。
【0077】
[実施例1]
以下の(A)工程〜(E)工程により、再生フッ化カルシウムを製造した。
【0078】
「(A)工程」
反応槽として、ポリ塩化ビニル製であり、液容積が8.6L(内径:204mm、底部から液出口までの高さ:264mm)であり、内面に邪魔板が4枚付いているものを使用した。また、撹拌翼として、直径80mmのプロペラ翼を装着した。
反応槽には、5質量%のフッ化カルシウム粒子の凝集物(体積平均粒子径:7μm、粒度分布幅(d90/d10):4.1)を含む反応液8.6Lをあらかじめ加えておいた。
プロペラ翼を930rpmで撹拌しつつ(反応液の撹拌動力:0.5kW/m
3)、反応槽にフッ酸含有廃水(フッ酸:0.3質量%、H
2SiF
6:0.19質量%(Si濃度として0.037質量%)、塩酸:0.9質量%、全フッ化物イオン濃度として0.435質量%)を17.2L/時間で供給した。これと同時に、反応槽には、体積平均粒子径5μmの炭酸カルシウム粉末を水に分散して30質量%に調整した炭酸カルシウムスラリーを、反応槽内のpHを2.7に維持するように、連続的に加えた。
反応液の反応槽内の平均滞留時間を30分、反応液の温度を常温(25℃)に設定した。
以上の条件で、フッ酸と炭酸カルシウムの反応により生成したフッ化カルシウムを、フッ化カルシウム粒子の表面に晶析させた。
【0079】
「(B)工程」
反応槽から流れ出た反応液は、凝集剤添加槽(ポリ塩化ビニル製、液容積:0.3L、撹拌翼:パドル翼)に送った。
凝集剤添加槽内の反応液に、該反応液に対して7mg/Lとなるように、アニオン系高分子凝集剤(ポリアクリルアミドの部分加水分解物)を添加して、晶析させたフッ化カルシウム粒子を凝集させた。
【0080】
「(C)工程」
沈降分離槽(ポリ塩化ビニル製、液容積8.6L、内径104mm)には、上述で反応槽に入れたものと同じ5質量%のフッ化カルシウムのスラリー(体積平均粒子径:7μm、粒度分布幅(d90/d10):4.1)を含む反応液8.6Lをあらかじめ加えておいた。さらに、該反応液に対して7mg/Lとなるように、(B)工程で用いたものと同じアニオン系高分子凝集剤(ポリアクリルアミドの部分加水分解物)も添加しておいた。また、製造開始後すぐにフッ化カルシウム粒子が反応槽へ返送されるように、沈降分離槽の底部にはフッ化カルシウム粒子の凝集物を沈降させておいた。
製造開始後、凝集剤添加槽から流れ出た反応液が沈降分離槽に送られ、沈降分離槽の底部には、凝集したフッ化カルシウム粒子の凝集物が新たに沈降した。
沈降分離槽の底部に沈降した凝集物中のフッ化カルシウム粒子の体積平均粒子径(μm)及び粒度分布幅(d90/d10)を、経時的に測定した。測定結果を
図3に示す。
【0081】
「(E)工程」
沈降分離槽の底部に沈降したフッ化カルシウム粒子の凝集物を回収し、その一部を反応槽に返送した。該返送は、反応槽内の反応液中のフッ化カルシウム粒子の濃度が5質量%を維持するように行った。
【0082】
「(D)工程」
反応開始後20〜50時間の間に沈降分離槽の底部から抜き出されたフッ化カルシウム粒子の凝集物に水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを8とした後、フィルタープレスにより脱水し、ケーキを作製した。該ケーキの一部を用い、ケーキ含水率(質量%)を測定した。
次いで、該ケーキを110℃で6時間乾燥して、再生フッ化カルシウムを得た。該再生フッ化カルシウムの一部を用い、組成分析を行った。
【0083】
「評価結果」
以上の結果、フッ酸含有廃水の供給開始後、再生フッ化カルシウムの体積平均粒子径は徐々に大きくなり、フッ酸含有廃水の供給開始20時間後には21μmに達し、安定した(
図3)。
また、粒度分布幅(d90/d10)は2.8であった(表2)。
また、ケーキ含水率は25質量%であった(表2)。
また、組成分析の結果、CaF
2:92.7質量%、CaCO
3:2.0質量%、SiO
2:0.5質量%、P
2O
5:0.5質量%、S:0.8質量%であった(表2)。
また、沈降分離槽の上澄み液中のフッ化物イオン濃度は20mg/Lであった。この値から、フッ化物イオン回収率は99.5%[{(0.435−0.0020)/0.435}×100]と推定された(表2)。
【0084】
[実施例2]
反応槽の撹拌翼の回転数を750rpm(撹拌動力:0.3kW/m
3)に替えた以外は、実施例1と同様にして再生フッ化カルシウムを製造し、評価を行った。
【0085】
[実施例3]
反応槽の撹拌翼の回転数を1050rpm(撹拌動力:0.8kW/m
3)に替えた以外は、実施例1と同様にして再生フッ化カルシウムを製造し、評価を行った。
【0086】
[実施例4]
反応槽内の反応液のpHを3.3に替えた以外は、実施例1と同様にして再生フッ化カルシウムを製造し、評価を行った。
【0087】
[実施例5]
反応槽内の反応液のpHを3.8に替えた以外は、実施例1と同様にして再生フッ化カルシウムを製造し、評価を行った。
【0088】
[実施例6]
沈降分離槽の底部から回収した沈降凝集物の反応槽への返送を、反応液中のフッ化カルシウム粒子の濃度が2質量%を維持するように行った以外は、実施例1と同様にして再生フッ化カルシウムを製造し、評価を行った。
【0089】
[実施例7]
沈降分離槽の底部から回収した沈降凝集物の反応槽への返送を、反応液中のフッ化カルシウム粒子の濃度が10質量%を維持するように行った以外は、実施例1と同様にして再生フッ化カルシウムを製造し、評価を行った。
【0090】
[実施例8]
沈降分離槽の底部から回収した沈降凝集物の反応槽への返送を、反応液中のフッ化カルシウム粒子の濃度が15質量%を維持するように行った以外は、実施例1と同様にして再生フッ化カルシウムを製造し、評価を行った。
【0091】
[比較例1]
反応槽の撹拌翼の回転数を500rpm(撹拌動力:0.1kW/m
3)に替えた以外は、実施例1と同様にして再生フッ化カルシウムを製造し、評価を行った。
【0092】
[比較例2]
反応槽内の反応液のpHを1.3に替えた以外は、実施例1と同様にして再生フッ化カルシウムを製造し、評価を行った。
【0093】
[比較例3]
反応槽内の反応液のpHを4.3に替えた以外は、実施例1と同様にして再生フッ化カルシウムを製造し、評価を行った。
【0094】
[比較例4]
沈降分離槽の底部から回収した沈降凝集物の反応槽への返送を、反応液中のフッ化カルシウム粒子の濃度が1質量%を維持するように行った以外は、実施例1と同様にして再生フッ化カルシウムを製造し、評価を行った。
【0095】
実施例1〜8及び比較例1〜4における再生フッ化カルシウムの製造条件を、表1にまとめる。
また、実施例1〜8及び比較例1〜4における、沈降分離槽上澄み液中のフッ化物イオン濃度、フッ化物イオン回収率、並びに、再生フッ化カルシウムの体積平均粒子径、粒度分布幅(d90/d10)、ケーキ含水率及び組成分析の評価結果を、表2に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
反応槽の撹拌動力が0.2kW/m
3よりも低い比較例1で製造された再生フッ化カルシウムは、フッ化カルシウム粒子の体積平均粒子径が11μmと小さく、粒度分布幅(d90/d10)が4.9と大きかった。また、該再生フッ化カルシウムは、ケーキ含水率が34質量%と高かった。
反応槽内の反応液のpHが1.5よりも低い比較例2では、フッ化カルシウムが充分に晶析されず、反応液中に未反応のまま残ったフッ化物イオンが460mg/Lと多く、フッ化物イオンの回収率が89.4質量%と低かった。また、製造された再生フッ化カルシウムは、フッ化カルシウム粒子の体積平均粒子径が13μmと小さかった。また、該再生フッ化カルシウムは、ケーキ含水率が33質量%と高かった。
反応槽内の反応液のpHが4.0よりも高い比較例3で製造された再生フッ化カルシウムは、フッ化カルシウム純度が固形分換算で88.5質量%と低く、ケーキ含水率が32質量%と高かった。
反応槽内の反応液中のフッ化カルシウム粒子の濃度が2質量%よりも低い比較例4で製造された再生フッ化カルシウムは、フッ化カルシウム粒子の体積平均粒子径が12μmと小さかった。また、該再生フッ化カルシウムは、粒度分布幅(d90/d10)が4.5と大きく、ケーキ含水率が35質量%と高かった。
【0099】
これに対し、実施例1〜8で製造された再生フッ化カルシウムはいずれも、純度が固形分換算:90質量%以上、体積平均粒子径:15〜50μm、粒度分布幅(d90/d10):4以下、脱水後のケーキ含水率:30質量%以下、シリカ(SiO
2)及びリン酸塩(P
2O
5)の合計含有率:固形分換算で3質量%以下、をすべて満たしていた。
また、実施例1〜8は、いずれもフッ化物イオンの回収率が99質量%以上と高く、沈降分離槽の上澄み液中のフッ化物イオンの濃度が22mg/L以下と低かった。
【0100】
(実施例9〜12及び比較例5)
次に、
図2に示す装置を用いて、以下の実施例9〜12及び比較例5に記載するとおりに、再生フッ化カルシウムを製造した。
【0101】
[実施例9]
以下の(A)工程〜(E)工程により、再生フッ化カルシウムを製造した。
【0102】
「(A)工程」
上記実施例1と同じ邪魔板及びプロペラ翼付き反応槽を2個連続して設け、それぞれ第1反応槽と第2反応槽とした。それぞれの反応槽には、10質量%のフッ化カルシウムの凝集物(体積平均粒子径:7μm、粒度分布幅(d90/d10):4.1)を含む反応液8.6Lをあらかじめ加えておいた。
第1及び第2反応槽のプロペラ翼を930rpmで撹拌しつつ(反応液の撹拌動力:0.5kW/m
3)、第1反応槽にフッ酸含有廃水(フッ酸:0.3質量%、H
2SiF
6:0.19質量%(Si濃度として0.037質量%)、塩酸:0.9質量%、全フッ化物イオン濃度として0.435質量%)を17.2L/時間で供給した。第1反応槽から流れ出た反応液は、第2反応槽に送った。これと同時に、各反応槽には、体積平均粒子径5μmの炭酸カルシウム粉末を水に分散して30質量%に調整した炭酸カルシウムスラリーを、第1反応槽内のpHを2.7に、第2反応槽内のpHを3.0に維持するように、連続的に加えた。
第1反応槽と第2反応槽の合計の反応液の平均滞留時間を60分、反応液の温度を常温(25℃)に設定した。
以上の条件で、フッ酸と炭酸カルシウムの反応により生成したフッ化カルシウムを、フッ化カルシウム粒子の表面に晶析させた。
【0103】
「(B)工程」
また、第2反応槽から流れ出た反応液は、凝集剤添加槽(ポリ塩化ビニル製、液容積:0.3L、撹拌翼:パドル翼)に送った以外は、上記実施例1と同様にして、(B)工程を行った。
【0104】
「(C)工程」
上記実施例1と同様にして、(C)工程を行った。
体積平均粒子径の測定結果を、
図4に示す。
【0105】
「(E)工程」
沈降分離槽の底部に沈降したフッ化カルシウム粒子の凝集物を抜き出し、その一部を第1反応槽に返送した。該返送は、反応液中のフッ化カルシウム粒子の濃度が10質量%を維持するように行った以外は、上記実施例1と同様にして、(E)工程を行った。
【0106】
「(D)工程」
上記実施例1と同様にして、(D)工程を行った。
【0107】
「評価結果」
以上の結果、フッ酸含有廃水の供給開始後、再生フッ化カルシウムの体積平均粒子径は徐々に大きくなり、フッ酸含有廃水の供給開始60時間後には23μmに達し、安定した(
図4)。
また、粒度分布幅(d90/d10)は3.0であった(表4)。
また、ケーキ含水率は24質量%であった(表4)。
また、組成分析の結果、CaF
2:92.7質量%、CaCO
3:1.9質量%、SiO
2:0.5質量%、P
2O
5:0.5質量%、S:0.8質量%であった(表4)。
また、沈降分離槽の上澄み液中のフッ化物イオン濃度は16mg/Lであった。この値から、フッ化物イオン回収率が99.6%[{(0.435−0.0016)/0.435}×100]と推定された(表4)。
【0108】
[実施例10]
組成の異なるフッ酸含有廃水(フッ酸:1.0質量%、H
2SiF
6:0.47質量%(Si濃度として、0.091質量%)、塩酸:0.9質量%、全フッ化物イオン濃度として1.322質量%)を用いた以外は、実施例9と同様にして再生フッ化カルシウムを製造し、評価を行った。
【0109】
[実施例11]
組成の異なるフッ酸含有廃水(フッ酸:2.0質量%、H
2SiF
6:0.95質量%(Si濃度として、0.185質量%)、塩酸:0.9質量%、全フッ化物イオン濃度として2.652質量%)を用いた以外は、実施例9と同様にして再生フッ化カルシウムを製造し、評価を行った。
【0110】
[実施例12]
第1反応槽内の反応液のpHを1.5に替えた以外は、実施例9と同様にして再生フッ化カルシウムを製造し、評価を行った。
【0111】
[比較例5]
組成の異なるフッ酸含有廃水(フッ酸:2.5質量%、H
2SiF
6:2.00質量%(Si濃度として、0.389質量%)、塩酸:0.9質量%、全フッ化物イオン濃度として3.958質量%)を用いた以外は、実施例9と同様にして再生フッ化カルシウムを製造し、評価を行った。
【0112】
実施例9〜12及び比較例5における再生フッ化カルシウムの製造条件を、表3にまとめる。
また、実施例9〜12及び比較例5における、沈降分離槽上澄み液中のフッ化物イオン濃度、フッ化物イオン回収率、並びに、再生フッ化カルシウムの体積平均粒子径、粒度分布幅(d90/d10)、ケーキ含水率及び組成分析の評価結果を、表4に示す。
【0113】
【表3】
【0114】
【表4】
【0115】
フッ酸含有廃水中のフッ酸の濃度が2質量%よりも高い比較例5で製造された再生フッ化カルシウムは、フッ化カルシウム粒子の体積平均粒子径が14μmと小さかった。また、該再生フッ化カルシウムは、フッ化カルシウム純度が固形分換算で88.8質量%と低く、粒度分布幅(d90/d10)が4.8と大きく、ケーキ含水率が35質量%と高く、SiO
2とリン酸塩(P
2O
5)の合計含有率が4.5質量%と高かった。
【0116】
これに対し、実施例9〜12で製造された再生フッ化カルシウムはいずれも、純度が固形分換算:90質量%以上、体積平均粒子径:15〜50μm、粒度分布幅(d90/d10):4以下、脱水後のケーキ含水率:30質量%以下、シリカ(SiO
2)及びリン酸塩(P
2O
5)の合計含有率:固形分換算で3質量%以下、をすべて満たしていた。
また、実施例9〜12は、いずれもフッ化物イオンの回収率が99質量%以上と高く、沈降分離槽の上澄み液中のフッ化物イオンの濃度が102mg/L以下であり、比較例260mg/Lに比べて低かった。