(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係るめっき装置において、取り付け不良、他の構造物との接触等によって、複数のクランプのうちの1つ以上が所定の設置位置からずれて傾き、クランプの間隔にばらつきが生じる場合がある。このような状態では、例えば無端ベルトが掛け渡されているプーリーに沿ってワークの搬送が方向転換される部分において、クランプ間隔が狭い部分でワークに必要以上の張力が加わり、ワークが切れてしまう可能性がある。
【0006】
近年では、電子機器の小型・高機能化の要請に伴い、フレキシブル回路基板の基材として用いられるポリイミド等の絶縁性基材の薄型化が進んでいる。そのため、特に厚さが25μm以下、特に厚さが12.5μmの基材では強度が低下し、クランプの僅かな位置ずれによって、従来の50μm程度の厚みの基材では起こらなかったワーク切れが発生して問題となっている。
【0007】
このようにして発生するワークの切れは、定期的にクランプの設置位置、設置間隔等を測定し、クランプの傾きを適宜調整することで防止できるが、測定及び調整には多大な時間を要するため生産性が低下する虞がある。
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、クランプ手段の傾きを検出してワークの切れを防止可能であり、生産性に優れた化学処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、搬送されるシート状のワークの表面に電気化学的処理を施す化学処理装置であって、回転駆動する無端ベルトに固定され、前記ワークの搬送方向
に直交する方向に突出して前記ワークの一端側を保持するクランプ手段と、前記ワークの搬送方向
に直交する方向に配列され、それぞれ前記クランプ手段の異なる部位を検出する複数のクランプ検出手段と、前記複数のクランプ検出手段の検出結果に基づいて、前記クランプ手段の傾きを検出する傾き検出手段とを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、クランプ手段の傾きを検出してワークの切れを防止可能であり、生産性に優れた化学処理装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0013】
図1は、実施形態に係る化学処理装置100の概略構成を例示する図である。
【0014】
図1に示すように、化学処理装置100は、ワーク供給装置1、ワーク回収装置2、前処理槽3、めっき槽4、後処理槽5、エンドレスベルト12、プーリー13,14、クランプ15を有し、被処理対象物であるワーク10の表面に電気めっき処理を施す。
【0015】
ワーク10は、長尺シート状の被処理対象物であり、例えば樹脂材料等の様々な材料で形成される。また、ワーク10は、電気めっき処理が施される場合にはカソードとして通電することが必要であり、例えば金属薄膜等の導電体からなるシード層が表面に形成されている。なお、シード層は、ワーク10の片面にめっき処理が施される場合には、ワーク10の片面に形成され、両面にめっき処理が施される場合には、ワーク10の両面に形成される。
【0016】
ワーク供給装置1は、化学処理装置100の化学処理ラインにワーク10を供給する供給手段である。ワーク供給装置1は、ロール状に巻き取られた状態のワーク10を複数の搬送ローラで送り出す。
【0017】
ワーク回収装置2は、化学処理装置100において化学処理が施されたワーク10を回収する回収手段である。ワーク回収装置2は、ワーク供給装置1とは逆に、ワーク10をロール状に巻き取って回収する。
【0018】
前処理槽3は、ワーク10に電気めっき処理の前処理を施す処理槽であり、例えば、ワーク10の表面を清浄化する処理や、ワーク10の表面の濡れ性を高める処理等が行われる。
【0019】
めっき槽4は、ワーク10に電気めっき処理を施す化学処理槽である。めっき槽4は、めっき液を貯留可能であり、めっき液にワーク10を浸漬させて表面に電気めっき処理を施す。なお、本実施形態では、化学処理槽としてめっき槽4が設置されている例について説明するが、例えば電解エッチング等の他の電気化学的処理を施す化学処理槽が設けられてもよい。
【0020】
めっき槽4は、ワーク10の搬送方向に沿って長く延びる直方体形状を有する。このような形状により、めっき槽4における電気めっき処理時間が確保され、一槽で十分な電気めっき処理を施すことが可能になり、生産性が向上する。めっき槽4は、
図1における右側面にスリット状の入口が設けられ、左側面に入口と同様にスリット状の出口が設けられている。ワーク10は、
図1における右側面の入口からめっき槽4に入り、めっき液に浸漬されて電気めっき処理が施された後に左側面の出口から排出される。
【0021】
後処理槽5は、電気めっき処理が施されたワーク10の後処理として、例えば洗浄等を行う処理槽である。後処理槽5における洗浄としては、例えば水洗や、薬液を用いた薬液洗浄等であってもよい。
【0022】
エンドレスベルト12は、例えばステンレス等で形成された無端状の金属ベルトであり、プーリー13,14に掛け渡されている。プーリー13,14は、少なくとも一方が回転駆動し、プーリー13,14の回転に伴ってエンドレスベルト12が従動して回転する。
【0023】
エンドレスベルト12には、所定間隔で複数のクランプ15が固定して設けられている。クランプ15は、ワーク供給装置1から送り出されるワーク10を保持し、エンドレスベルト12と共に回転してワーク10を搬送する。
【0024】
以上で説明した構成を有する化学処理装置100では、まず、ワーク供給装置1からワーク10が送り出され、エンドレスベルト12に設けられている複数のクランプ15がワーク10を保持する。ワーク10は、クランプ15に保持された状態で搬送され、前処理槽3、めっき槽4、後処理槽5を通って各処理が施される。一連の化学処理が施されたワーク10は、クランプ15から開放されてワーク回収装置2に巻き取られて回収される。以上の動作により、ワーク10の表面に電気めっき処理が施される。
【0025】
なお、エンドレスベルト12が掛け渡されるプーリーの数、設置位置等を変えることで、化学処理装置100の設置環境等に応じてワーク10の搬送経路を適宜変更してもよい。
【0026】
図2は、化学処理装置100におけるワーク10の搬送機構を例示する図である。
【0027】
図2に示す例では、ワーク10の上端側と下端側にそれぞれエンドレスベルト12が設けられている。2つのエンドレスベルト12は、それぞれプーリー21,22に掛け渡され、複数のクランプ15が所定の間隔で固定されている。
【0028】
クランプ15は、一端がエンドレスベルト12に固定され、他端がワーク10の搬送方向に略直交する方向に突出してワーク10の端部を保持する。クランプ15は、ワーク10の上端及び下端を保持し、エンドレスベルト12と共に回転してワーク10を搬送する。このように、クランプ15がワーク10の両端を保持する構成により、ワーク10にしわや弛み等の発生が防止され、より均一に電気めっき処理を行うことが可能になる。
【0029】
エンドレスベルト12は、モータ23によって回転駆動するプーリー21に従動して回転する。クランプ15によって両端が保持されるワーク10は、エンドレスベルト12の回転に伴って、プーリー21,22等によって形成されるエンドレスベルト12の移動経路に沿って搬送される。
【0030】
また、本実施形態に係る化学処理装置100には、クランプ15の傾きを検出する傾き検出機構が設けられている。
【0031】
図3は、本実施形態におけるクランプ15の傾き検出機構を例示する図であり、
図3(a)はエンドレスベルト12の外周側から見たクランプ15及び光センサ31,32の正面図、
図3(b)はクランプ15及び光センサ31,32の側面図である。
【0032】
図3に示すように、クランプ15は、一端がエンドレスベルト12に固定され、他端がエンドレスベルト12からワーク10の搬送方向に直交する方向に突出する平板状部材の固定部15a、固定部15aの他端側でワーク10を保持するクランプ部15bを有する。クランプ15は、エンドレスベルト12からワーク10の搬送方向(
図3(a)における矢印方向)に対して略直交する方向に突出し、クランプ部15bの先端に設けられている接触端子でワーク10の端部を挟み込んで保持する。なお、クランプ15の構成は、本実施形態において例示する構成に限らず、例えばさらに複数の部材で構成されてもよい。
【0033】
エンドレスベルト12の外周側であって、クランプ15に対向する位置には、クランプ検出手段の一例としての光センサ31,32が設けられている。光センサ31,32は、ワーク10の搬送方向に対して略直交する方向に配列され(
図3(a))、クランプ15から離間して設けられている(
図3(b))。光センサ31はクランプ10の固定部15a側、光センサ32はクランプ10のクランプ部15b側に設けられている。
【0034】
光センサ31,32は、それぞれ発光部、受光部を有し、発光部がクランプ15等に向かって光を照射し、受光部がクランプ15等からの反射光を受光する。光センサ31,32は、受光部が受光する反射光の強度に基づいて、それぞれの検出位置におけるクランプ15の有無を検出する。光センサ31,32は、反射光の強度が高く(あるいは低く)、検出位置にクランプ15が存在する場合には、ONの信号を傾き検出手段33に出力する。また、反射光の強度が低く(あるいは高く)、クランプ15が存在しない場合には、OFFの信号を傾き検出手段33に出力する。このような設定により、クランプ15がエンドレスベルト12の回転に伴って移動して光センサ31,32の検出位置に達すると、光センサ31,32から傾き検出手段33に出力される信号がOFFからONに変化する。
【0035】
傾き検出手段33は、光センサ31,32に接続され、光センサ31,32から出力される信号が入力される。傾き検出手段33は、光センサ31,32のそれぞれにおいて出力信号がOFFからONに変化する時間差に基づいて、ワーク10の搬送方向に直交する方向に対するクランプ15の長手方向の傾きを検出する。傾き検出手段33は、例えばROM等に記憶されたプログラムと、CPU,RAM等のハードウェアとの協働によって実現される。
【0036】
図4は、実施形態におけるクランプ15の傾き検出を説明する図である。
【0037】
図4(a)は、クランプ15が、エンドレスベルト12からワーク10の搬送方向に直交する方向に突出するように、エンドレスベルト12に正常に取り付けられ、正常な姿勢を保ったまま光センサ31,32の検出位置に到達した状態を示している。この状態では、各光センサ31,32からの出力信号はほぼ同時にOFFからONに変化する。このように、各光センサ31,32から出力される信号変化の時間差が所定の時間未満の場合、傾き検出手段33は、クランプ15の傾きが許容範囲内であり、クランプ15が正常な姿勢を保っていると判定する。
【0038】
図4(b)は、クランプ15が、取り付け不良、あるいは他の構造物との接触等によって傾いた状態で、光センサ31,32の検出位置に到達した状態を示している。この状態では、各光センサ31,32の出力信号がOFFからONに変化する時間に差異が生じる。このように、各光センサ31,32から出力される信号変化の時間差が所定の時間以上の場合には、傾き検出手段33は、クランプ15が許容範囲以上に傾いていると判定する。
【0039】
傾き検出手段33は、クランプ15の許容範囲以上の傾きを検出した場合には、ワーク10の搬送を停止し、例えば化学処理装置100に設けられている表示手段に、クランプ15に異常が発生したことを知らせる警告を表示させる。作業者は、表示手段に表示された警告によりクランプ15が傾いていることを認識し、クランプ15の傾きを修正することで、クランプ15の間隔のばらつきにより生じるワーク10の切れを防止できる。
【0040】
なお、クランプ検出手段は、クランプ15を検出可能であればよく、光センサに限るものではない。また、ワーク10の搬送経路において複数箇所でクランプ15の傾きを検出できるように、例えばワーク10の搬送方向に直交して配列される複数のクランプ検出手段を、ワーク10の搬送経路において複数箇所に設けてもよい。
【0041】
また、
図2に例示するようにクランプ15がワーク10の両端を保持する構成の場合、クランプ検出手段及び傾き検出手段で構成されるクランプ15の傾き検出機構は、ワーク10の上端側及び下端側の少なくとも一方に設けられる。
【0042】
以上で説明したように、本実施形態に係る化学処理装置100によれば、傾き検出手段33が光センサ31,32のクランプ検出結果に基づいて、クランプ15の傾きを検出する。傾き検出手段33は、クランプ15の傾きが許容範囲以上だった場合には、ワーク10の搬送を停止させ、クランプ間隔の狭い部分においてワーク10に必要以上に張力がかかることで発生するワーク10の切れを未然に防止することが可能になる。また、本実施形態に係る化学処理装置100によれば、クランプ15の異常を検出するために、定期的にクランプ15の設置間隔等を測定する必要がなくなるため、生産性が向上する。
【0043】
以上、実施形態に係る化学処理装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。