特許第6080151号(P6080151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ADEKAの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6080151
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】パン生地
(51)【国際特許分類】
   A21D 2/18 20060101AFI20170206BHJP
   A21D 2/26 20060101ALI20170206BHJP
   A21D 13/00 20170101ALI20170206BHJP
【FI】
   A21D2/18
   A21D2/26
   A21D13/00
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-139409(P2012-139409)
(22)【出願日】2012年6月21日
(65)【公開番号】特開2014-59(P2014-59A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年4月1日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 佳奈子
(72)【発明者】
【氏名】白羽根 みき
【審査官】 川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−261308(JP,A)
【文献】 特開平11−308971(JP,A)
【文献】 特開2004−129578(JP,A)
【文献】 特開平11−056217(JP,A)
【文献】 特開平04−207144(JP,A)
【文献】 特開2011−010574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D 2/18
A21D 2/26
A21D 13/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉類100質量部に対し、B型粘度計で、25℃、60rpmの条件下で測定したときのキサンタンガム1質量%水溶液の粘度が1000mPa・s以上である高粘度キサンタンガムを、0.001〜1質量部、グルコマンナンを、0.0005〜2質量部及びマルトース生成α―アミラーゼを、5〜300ppm含有するパン生地であって、上記キサンタンガム、グルコマンナン及びマルトース生成α―アミラーゼを油中水型可塑性油脂組成物の形態で含有し、上記キサンタンガムを、該油中水型可塑性油脂組成物の油相に含有するパン生地。
【請求項2】
請求項に記載のパン生地焼成であるパン類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成直後のソフトでしとり感がある食感を、経日的に維持でき、老化しやすい冷蔵温度での老化を防止したパン類を提供できるパン生地に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵温度(−5〜15℃)で流通、保管及び摂取するパンとしてサンドイッチが広く知られている。サンドイッチは、食パン等を用い、組み合わせる具材が要冷蔵のものを使用した場合は衛生面から冷蔵温度で流通、保管及び摂取することが必要である。
一方、嗜好の変化により菓子パンに要冷蔵のクリームを組み合わせたパンがヒット商品として登場してきており、このようなパンも衛生面から冷蔵温度で流通、保管及び摂取することが必要である。
【0003】
また老化した澱粉食品は再加熱すると老化前の状態に戻ることが知られている。そのため、食パン等フィリングのないパンの場合は、美味しく摂取するために、トーストしてから摂取することが通常行われている。ところが、最近は、消費者の嗜好の変化や生活パターンの変化等により、トーストする時間がなかったり、冷蔵で長時間保管することが増えてきている。
しかし、上記の冷蔵温度は、澱粉の老化が最も進む温度帯であり、そのためパンがぱさついたり、硬くなったりしてしまうという問題があった。
この冷蔵温度におけるパンの老化防止に関する先行技術として乳化剤、糖類、多糖類、澱粉、酵素等を用いる方法が検討されている。
【0004】
特許文献1には、SFIが特定値であり、発酵乳と特定の乳化剤を組み合わせた油中水型乳化物を用いたパンの製造法が記載されている。しかし、特許文献1に記載の製造法で得られたパンは冷蔵温度での老化を防止する効果が満足できるものではなく、そのためソフトさやしとり感を維持することができなかった。また特許文献1に記載の製造法で得られたパンは、乳化剤の使用により風味が悪く、くちゃつき感があり、口どけの良い食感が得られないという問題点もあった。
【0005】
特許文献2には、トレハロースを含有する油中水型乳化油脂組成物を用いたパン類が記載されている。しかし、特許文献2に記載のパン類は、冷蔵温度での老化を防止する効果が不十分であった。
【0006】
特許文献3には、麹粉末、デンプン糖を含むパン類製造用油脂組成物を用いたパン類が記載されている。しかし、特許文献3に記載のパン類は、冷蔵温度での老化を防止する効果が不十分であった。また特許文献3に記載のパン類は、くちゃつき感があり、口どけの良い食感が得られず、麹粉末由来のリパーゼにより、油脂が分解され、風味が悪化するという欠点があった。
【0007】
特許文献4には、化工澱粉、アミラーゼ類、増粘剤を含有し、且つ乳化剤を含まない油脂組成物を用いたパン類が記載されている。しかし、特許文献4に記載のパン類は、冷蔵温度での老化を防止する効果が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−98666号公報
【特許文献2】特開2002−153208号公報
【特許文献3】特開2005−295920号公報
【特許文献4】特開2006−211969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明は、かかる実情に鑑み、焼成直後のソフトでしとり感がある食感を、経日的に維持でき、老化しやすい冷蔵温度での老化を防止したパン類を製造できるパン生地を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、口どけが良好で、ボリュームのあるパン類を製造できるパン生地を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成すべく種々鋭意検討した結果、高粘度キサンタンガムを用いたパン生地により上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、澱粉類100質量部に対し、B型粘度計で、25℃、60rpmの条件下で測定したときのキサンタンガム1質量%水溶液の粘度が1000mPa・s以上である高粘度キサンタンガムを、0.001〜1質量部、及びマルトース生成α―アミラーゼを、5〜300ppm含有するパン生地であって、上記キサンタンガム及びマルトース生成α―アミラーゼを可塑性油脂組成物の形態で含有するパン生地に関するものである。
また、本発明は、上記パン生地を焼成したパン類に関するものである。
また、本発明は、B型粘度計で、25℃、60rpmの条件下で測定したときのキサンタンガム1質量%水溶液の粘度が1000mPa・s以上である高粘度キサンタンガムを、0.01〜20質量部、及びマルトース生成α―アミラーゼを、50〜6000ppm含有する製パン用可塑性油脂組成物に関するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のパン生地により、焼成直後のソフトでしとり感がある食感を経日的に維持でき、老化しやすい冷蔵温度での老化を防止したパン類を製造することができる。
また本発明のパン生地により、口どけが良好で、ボリュームのあるパン類を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のパン生地について詳細に説明する。
本発明のパン生地は、B型粘度計で、25℃、60rpmの条件下で測定したとき
のキサンタンガム1質量%水溶液の粘度が1000mPa・s以上、好ましくは1200〜2500mPa・sである高粘度キサンタンガムを含有する。
本発明において、上記の測定条件で測定したときのキサンタンガムの粘度が1000mPa・sよりも低いと口どけが悪いパン類となってしまうので好ましくない。
尚、通常のキサンタンガムは、B型粘度計で、25℃、60rpmの条件下で測定したときの1質量%水溶液の粘度が100〜800mPa・S程度である。
【0015】
上記高粘度キサンタンガムは、通常のキサンタンガムを不溶性溶媒へ分散させて加熱したり、又は粉末状態のまま加熱する等の、無水条件下で加熱するという物理的加工を施すことによって得ることができる。
【0016】
キサンタンガムは、微生物であるキサントモナス カンペストリス(Xanthomonas campestris)が生産する多糖類であり、β−1,4−D−グルカンの主鎖骨格に、D−マンノース、D−グルクロン酸、D−マンノースからなる側鎖が結合したアニオン性の多糖類である。
主鎖に結合したD−マンノースのC6位はアセチル化されていることが多く、末端のD−マンノースはピルビン酸塩となっている。
上記の高粘度キサンタンガムは、ピルピン酸の含量が高含量で、アセチル基の含量が低含量であるキサンタンガムを生産する菌株であるpathovar cynarae CFBP 19、juglandis CFBP 176、pelargonii CFBP 64、phaseoli CFBP 412、ATOC 17915、celebenois ATCC 19046、corylina CFBP 1847等を用いることにより得ることができる。
【0017】
上記高粘度キサンタンガムとしては、市販品を用いることができ、該市販品としては、伊那食品工業(株)製、商品名:ウルトラキサンタンV−T、ウルトラキサンタンV−7T、ダニスコ社製、商品名:GRINSTED Xanthan MAS−SH等が挙げられる。
【0018】
本発明のパン生地において、上記の高粘度キサンタンガムを含有することによりボリュームのあるパン類を製造することができる。また焼成直後のソフトでしとり感がある食感を経日的に維持でき、老化しやすい冷蔵温度での老化を防止したパン類を製造することができる。
【0019】
本発明のパン生地は、澱粉類100質量部に対し、上記の高粘度キサンタンガムを0.001〜1質量部、好ましくは0.003〜0.5質量部、より好ましくは0.005〜0.3質量部含有する。
本発明において、澱粉類100質量部に対し、上記の高粘度キサンタンガムの含有量が0.001質量部よりも少ないとボリュームの無いパン類となるので好ましくなく、1質量部よりも多いと食感の硬いパン類となるので好ましくない。
【0020】
上記澱粉類としては、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉等の小麦粉類、ライ麦粉、大麦粉、米粉等のその他の穀粉類、アーモンド粉、へーゼルナッツ粉、カシュ―ナッツ粉、オーナッツ粉、松実粉等の堅果粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉、米澱粉等の澱粉や、これらの澱粉をアミラーゼ等の酵素で処理したものや、α化処理、分解処理、エーテル化処理、エステル化処理、架橋処理、グラフト化処理等の中から選ばれた1種又は2種以上の処理を施した化工澱粉等が挙げられる。
【0021】
本発明では、上記澱粉類中、好ましくは上記小麦粉類を50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、最も好ましくは100質量%使用する。
【0022】
本発明のパン生地は、上記高粘度キサンタンガムをパン生地に直接添加してもよいが、後述する可塑性油脂組成物中に含有させ、可塑性油脂組成物の形態で、パン生地に添加してもよい。
【0023】
本発明のパン生地は、グルコマンナンを含有することがパン類にしとりのある食感を付与できる点で好ましい。
【0024】
本発明のパン生地は、澱粉類100質量部に対し、グルコマンナンを好ましくは0.0005〜2質量部、より好ましくは0.00075〜1質量部、最も好ましくは0.001〜0.5質量部含有する。
本発明において、澱粉類100質量部に対し、グルコマンナンの含有量が0.0005質量部よりも少ないとしとり感がある食感を経日的に維持する効果が不十分であり、2質量部よりも多いとボリュームの無いパン類となりやすい。
【0025】
本発明のパン生地は、上記グルコマンナンをパン生地に直接添加してもよいが、後述する可塑性油脂組成物中に含有させ、可塑性油脂組成物の形態で、パン生地に添加してもよい。
【0026】
本発明のパン生地において、上記の高粘性キサンタンガムと上記のグルコマンナンの質量比率が好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは1:4〜9:1、一層好ましくは1:3〜9:1、最も好ましくは1:1〜9:1となるように含有させることが望ましい。
本発明のパン生地において、上記の高粘性キサンタンガムと上記のグルコマンナンの質量比率が1:9よりも上記のグルコマンナンの質量が多いとボリュームの無いパン類となりやすく、9:1よりも上記の高粘性キサンタンガムの質量が多いと食感の硬いパン類となりやすい。
【0027】
本発明のパン生地は、アミラーゼ類を含有することが好ましい。アミラーゼ類を含有することにより焼成直後のソフトな食感を経日的に維持することができる。
【0028】
本発明で用いる上記アミラーゼ類としては、α―アミラーゼ、マルトース生成α―アミラーゼ、β―アミラーゼ、グルコアミラーゼ、イソアミラーゼの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、α―アミラーゼ及び/又はマルトース生成α―アミラーゼを用いることが好ましく、マルトース生成α―アミラーゼを用いることが最も好ましい。
【0029】
また上記アミラーゼ類は、至適温度が好ましくは50〜85℃、より好ましくは60〜85℃である。
【0030】
上記アミラーゼ類としては、市販の動植物、カビ、細菌、遺伝子組み換え等から得られたアミラーゼ製剤を用いることも可能である。本発明では、特にBacillus等の細菌由来、Malt等の穀物由来、及びAspergillus等のカビ由来のアミラーゼ類を用いることが好ましく、細菌由来のアミラーゼ類を用いることがより好ましい。
【0031】
α−アミラーゼ製剤としては、例えばクライスターゼL1、ビオザイム(登録商標)A、(以上アマノエンザイム社製)、ビオテックス(登録商標)L#3000、ビオテックス(登録商標)TS、スピターゼ(登録商標)HS、スピターゼ(登録商標)CP−40FG、スピターゼ(登録商標)CP3、スピターゼ(登録商標)L、スピターゼ(登録商標)XP−404、ネオスピターゼPK−2、T−50(以上、ナガセケムテックス社製)、グリンドアミル(登録商標)A(ダニスコジャパン社製)、BAN、ファンガミル(登録商標)(以上、ノボザイムズジャパン社製)、フクタミラーゼ(登録商標)30、フクタミラーゼ(登録商標)50、フクタミラーゼ(登録商標)10L、リクィファーゼL45(以上、エイチビーアイ社製)、VERON Soft+、VERONVERON M4、Sternzyme A6003(以上、樋口商会社製)、ユニアーゼ(登録商標)BM−8(ヤクルト薬品工業社製)、ソフターゲン(登録商標)・3H(タイショウテクノス社製)、ベイクザイムAN301登録商標)、Mat L Classic(登録商標)、Mycolase(登録商標)、ベイクザイム(登録商標)P500(DSM社製)、スミチーム AS(登録商標)、スミチームL(登録商標)(以上、新日本化学工業社製)等が挙げられる。
【0032】
マルトース生成α―アミラーゼ製剤としては、例えばコクラーゼ(登録商標)(三菱化学フーズ社製)、Novamyl 10000BG、NovamylL(登録商標)、マルトゲナーゼ(登録商標)(以上、ノボザイムズジャパン社製)、グリンドアミル(登録商標)MAX−LIFE100(ダニスコジャパン社製)等が挙げられる。
【0033】
β―アミラーゼ製剤としては、例えばオプチマルトBBA(ジェネンコア協和社製)、β−アミラーゼ#1500、β−アミラーゼL、β−アミラーゼ#1500S(以上、ナガセケムテックス社製)、ハイマルトシン(登録商標)G 、ハイマルトシン(登録商標)GL(以上、エイチビィアイ社製)、ユニアーゼ(登録商標)L(ヤクルト薬品工業社製)、GODO−GBA(合同清酒社製)等が挙げられる。
【0034】
グルコアミラーゼ製剤としては、例えばグルクザイム(登録商標)AF6(アマノエンザイム社製)、AMG(登録商標)(ノボザイムズジャパン社製)等が挙げられる。
【0035】
イソアミラーゼ製剤としては、例えばプルラナーゼ「アマノ」3、クライスターゼPL45(以上アマノエンザイム社製)、プロモザイム(登録商標)(ノボザイムズジャパン社製)等が挙げられる。
【0036】
上記のアミラーゼ類の酵素活性は、次のようにして測定することができる。
上記のα−アミラーゼの酵素活性の単位は、可溶性澱粉溶液を基質に酵素を作用させ、1分間に1マイクロモルのグルコースに相当する還元糖を生成する酵素量を1単位と定義する。還元糖の測定は、還元糖の定量法第2版(福井作蔵著 学会出版センター)に記載の方法により行なう。
上記のマルトース生成α―アミラーゼの酵素活性の単位は、マルトトリオースを基質に酵素を作用させ、1分間に1マイクロモルのマルトースを生成する酵素量を1単位と定義する。マルトースの測定は、還元糖の定量法第2版(福井作蔵著 学会出版センター)を参照して行う。
上記のβ−アミラーゼの酵素活性の単位は、可溶性澱粉溶液を基質に酵素を作用させ、1分間に1マイクロモルのマルトースに相当する還元糖を生成する酵素量を1単位と定義する。還元糖の測定は、還元糖の定量法第2版(福井作蔵著 学会出版センター)に記載の方法により行なう。
上記のグルコアミラーゼの酵素活性の単位は、マルトースを基質に酵素を作用させ、1分間に1マイクロモルのグルコースに相当する還元糖を生成する酵素量を1単位と定義する。還元糖の測定は、還元糖の定量法第2版(福井作蔵著 学会出版センター)に記載の方法により行なう。
上記のイソアミラーゼの酵素活性の単位は、アミロペクチンを基質に酵素を作用させ、1分間に1マイクロモルのグルコースに相当する還元糖を生成する酵素量を1単位と定義する。還元糖の測定は、還元糖の定量法第2版(福井作蔵著 学会出版センター)に記載の方法により行なう。
【0037】
本発明のパン生地は、原料となるアミラーゼ類の酵素製剤の酵素活性の強さによって異なるが、澱粉類100質量部に対し、上記のアミラーゼ類を好ましくは5ppm〜300ppm、より好ましくは20ppm〜150ppm、最も好ましくは30ppm〜100ppmとなるように含有させる。
【0038】
本発明のパン生地は、澱粉類100gに対し、上記のアミラーゼ類を好ましくは18〜250単位、より好ましくは30〜180単位となるように含有させる。
本発明において、澱粉類100gに対し、上記のアミラーゼ類の含有量が18単位よりも少ないと冷蔵温度での老化を防止することができず、パン類がぱさついたり、硬くなったりしやすく、250単位よりも多いとパン類がケービングを起こしたり、腰持ちが悪かったり、形状を維持することができにくくなる。
【0039】
本発明のパン生地は、上記アミラーゼ類をパン生地に直接添加してもよいが、後述する可塑性油脂組成物中に含有させ、可塑性油脂組成物の形態で、添加してもよい。
【0040】
本発明のパン生地は、食用油脂を含有することが好ましい。
上記食用油脂としては、特に制限されるものではないが、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、ハイエルシン菜種油、キャノーラ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、落花生油、ゴマ油、オリーブ油、カカオ脂、サル脂、牛脂、豚脂、乳脂、魚油、鯨油等の各種の植物油脂及び動物油脂、並びにこれらに完全水素添加、分別及びエステル交換から選択された一又は二以上の処理を施した加工油脂や、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)等が挙げられる。本発明のパン生地では、これらの食用油脂の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0041】
上記食用油脂は、通常、食用油脂を含有する食品の形態で用いられる。その代表的な例としては、マーガリン、ショートニング、バター等の可塑性油脂組成物や、流動状ショートニング、粉末油脂、純生クリーム・ホイップ用クリーム(コンパウンドクリーム)・植物性ホイップ用クリーム、クリームチーズ、チョコペースト等をあげることができる。本発明では、上記可塑性油脂組成物の形態で食用油脂を用いることが好ましい。
上記の食用油脂を含有する食品が乳化物である可塑性油脂組成物の場合、その乳化形態は、油中水型、水中油型、及び二重乳化型の何れでも構わないが、油中水型乳化物の形態で使用することが好ましい。
【0042】
本発明のパン生地は、澱粉類100質量部に対し、上記食用油脂を、好ましくは3〜50質量部、より好ましくは4〜40質量部、最も好ましくは5〜30質量部含有する。食用油脂の含有量が3質量部よりも少ないと、食用油脂に期待される効果、即ちパン生地の伸展性向上効果やグルテン膜の保護効果が得られず、得られるパン類が硬くなりやすいので好ましくない。また、50質量部よりも多いと、パン生地のグルテン膜の構造が脆弱になりやすく、十分な窯伸びが得られにくく、更には得られるパン類の食感が、ねちゃつきやすいので好ましくない。
尚、食用油脂の含有量は、上記食用油脂を含有する食品の形態で使用する場合は、その純油脂含量で計算する。
【0043】
次に本発明のパン生地において、上記高粘度キサンタンガム、グルコマンナン及びアミラーゼ類を、可塑性油脂組成物の形態で含有させる場合について説明する。
上記の可塑性油脂組成物中の上記高粘度キサンタンガムの含有量は、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは、0.02〜10質量%、最も好ましくは0.1〜5質量%である。
上記の可塑性油脂組成物中の上記高粘度キサンタンガムの含有量が0.01質量%よりも少ないとボリュームのないパン類となりやすく、また冷蔵温度での老化を防止することができにくいため、パン類がぱさついたり、硬いパン類となりやすく、20質量%よりも多いと食感の硬いパン類となりやすい。
【0044】
上記の可塑性油脂組成物中の上記グルコマンナンの含有量は、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは、0.015〜10質量%、最も好ましくは0.02〜5質量%である。
上記の可塑性油脂組成物中の上記グルコマンナンの含有量が0.01質量%よりも少ないとしとり感がある食感を経日的に維持する効果が不十分となりやすく、20質量%よりも多いとボリュームの無いパン類となりやすい。
【0045】
上記の可塑性油脂組成物中の上記アミラーゼ類の含有量は、好ましくは50ppm〜6000ppm、より好ましくは200ppm〜3000ppm、最も好ましくは300ppm〜2000ppmとなるように含有させる。
上記アミラーゼ類の含有量は、上記の可塑性油脂組成物100gに対して酵素活性が好ましくは300〜2500単位、より好ましくは500〜1800単位となるように添加する。
上記の可塑性油脂組成物100gに対して、アミラーゼ類の含有量が300単位よりも少ないと冷蔵温度での老化を防止することができず、パン類がぱさついたり、硬くなったりしやすく、2500単位よりも多いとパン類がケービングを起こしたり、腰持ちが悪かったり、形状を維持することができにくくなる。
【0046】
上記の可塑性油脂組成物中の上記食用油脂の含有量は、好ましくは28〜98質量%、より好ましくは48〜93質量%、最も好ましくは68〜88質量%である。
【0047】
上記の可塑性油脂組成物は水を含有してもよい。
上記の水は、水道水や天然水等の水や、上記の可塑性油脂組成物で含有させるその他の材料に由来する水分も含めたものとする。上記の水の含有量は上記の可塑性油脂組成物中、好ましくは70質量%以下、より好ましくは55質量%以下、最も好ましくは40質量%以下である。
【0048】
上記の可塑性油脂組成物は必要によりその他の材料を含有しても良い。その他の材料としては、乳化剤(グリセリンモノ脂肪酸エステル・グリセリン酢酸脂肪酸エステル・グリセリン乳酸脂肪酸エステル・グリセリンコハク酸脂肪酸エステル・グリセリン酒石酸脂肪酸エステル・グリセリンクエン酸脂肪酸エステル・グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル・ソルビタン脂肪酸エステル・ショ糖脂肪酸エステル・ショ糖酢酸イソ酪酸エステル・ポリグリセリン脂肪酸エステル・ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル・プロピレングリコール脂肪酸エステル・ステアロイル乳酸カルシウム・ステアロイル乳酸ナトリウム・ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等の合成乳化剤、大豆レシチン・卵黄レシチン・大豆リゾレシチン・卵黄リゾレシチン・酵素処理卵黄・乳脂肪球皮膜蛋白質等の天然乳化剤)、増粘安定剤(高粘性キサンタンガムではないキサンタンガム・アルギン酸・アルギン酸塩・アルギン酸エステル・グアガム・ローカストビーンガム・カラギーナン・アラビアガム・ペクチン・プルラン・タマリンドシードガム・結晶セルロース・カルボキシメチルセルロース・メチルセルロース・寒天・ゼラチン・ファーセルラン・タラガム・カラヤガム・トラガントガム・ジェランガム・大豆多糖類等)、酵素類(プロテアーゼ・アミログルコシダーゼ・プルラナーゼ・ペントサナーゼ・セルラーゼ・リパーゼ・ホスフォリパーゼ・カタラーゼ・リポキシゲナーゼ・アスコルビン酸オキシダーゼ・スルフィドリルオキシダーゼ・ヘキソースオキシダーゼ・グルコースオキシダーゼ等)、乳や乳製品(カゼイン・ホエー・クリーム・脱脂粉乳・発酵乳・牛乳・全粉乳・ヨーグルト・練乳・加糖練乳・全脂練乳・脱脂練乳・濃縮乳・純生クリーム・ホイップ用クリーム(コンパウンドクリーム)・植物性ホイップ用クリーム等)、チーズ類(ナチュラルチーズ・プロセスチーズ・クリームチーズ等)、デキストリン、原料アルコール、焼酎・ウイスキー・ウオッカ・ブランデー等の蒸留酒、ワイン・日本酒・ビール等の醸造酒、各種リキュール、無機塩類、食塩、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、ハーブ、豆類、小麦蛋白や大豆蛋白といった植物蛋白、卵類、糖類や甘味料、β―カロチン・カラメル・紅麹色素等の着色料、トコフェロール・茶抽出物等の酸化防止剤、保存料、苦味料、酸味料、pH調整剤、日持ち向上剤、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、調味料、香辛料、香料、野菜類・肉類・魚介類等の食品素材、コンソメ・ブイヨン等の植物及び動物エキス、食品添加物等を使用することができる。
【0049】
その他の材料は、本発明の目的を損なわない限り、任意に使用することができるが、上記可塑性油脂組成物中、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
【0050】
上記可塑性油脂組成物が乳化物である場合、油相と水相の割合は、質量比率で、好ましくは油相:水相=28:72〜98:2、より好ましくは油相:水相は48:52〜93:7である。
【0051】
上記の可塑性油脂組成物の製造方法は、まず、食用油脂を加温し、これに高粘性キサンタンガム、必要によりグルコマンナン、その他の材料を添加し、油相とする。また、水に必要によりその他の成分を添加し、水相とする。上記の油相を加熱溶解し、必要により水相を加え、混合し、油脂組成物とする。
そして、次に殺菌処理するのが望ましい。殺菌方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。
次に、冷却し、可塑化し、可塑性油脂組成物を得る。本発明において、上記の冷却は好ましくは−0.5℃/分以上、より好ましくは−5℃/分以上とする。この際、徐冷却より急速冷却の方が好ましい。冷却する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えばボテーター、コンビネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターの組み合わせ等が挙げられる。
【0052】
また、上記の可塑性油脂組成物を製造する際の何れかの製造工程で、窒素、空気等を含気させても、含気させなくても構わない。
尚、本発明で用いるアミラーゼ類は上記の油相及び/又は水相に含有させても良いし、上記の製造方法により得られた可塑性油脂組成物に添加混合しても良いが、熱安定性に欠けるアミラーゼ類は、上記の製造方法により得られた可塑性油脂組成物に添加混合することが好ましい。
【0053】
本発明のパン生地において上記可塑性油脂組成物を用いる場合、澱粉類100質量部に対し、上記可塑性油脂組成物を好ましくは1〜20質量部含有させる。
特に本発明のパン生地において上記可塑性油脂組成物は練り込み用として用いることが好ましい。
【0054】
本発明のパン生地は糖類を含有することが好ましい。
上記糖類としては、特に制限されるものではないが、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖等が挙げられる。本発明で用いるパン生地では、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
尚、上記糖類は、加糖練乳、ジャム、果汁、フルーツソース、チョコペースト等の上記糖類を含有する食品の形態で用いることもできる。
【0055】
本発明のパン生地は、上記澱粉類100質量部に対し、上記糖類を固形分として好ましくは3〜30質量部、より好ましくは5〜25質量部含有する。3質量部よりも少ないと、得られるパン類が硬くなりやすいので好ましくない。また、糖類の含有量が30質量部よりも多いと、パン生地がベトついた物性になりやすく、更にはパン生地中の酵母の発酵が抑制されやすくなり、得られるパン類は、ボリュームが小さなものになりやすい。尚、糖類の含有量は、上記糖類を含有する食品を使用する場合は、その純糖類含量で計算する。
【0056】
本発明のパン生地は水を含有する。
上記水は、天然水や水道水の他に、水分を含有する食品の形態、たとえば牛乳等の乳や乳製品、卵類、液糖、水と油脂を含有する乳化物の形態である場合には、該乳化物に含まれる水分も含むものとする。
本発明のパン生地は、上記澱粉類100質量部に対し、上記水を好ましくは50〜100質量部、より好ましくは60〜80質量部含有する。50質量部よりも少ないと、得られるパン類のソフト感が持続しないので好ましくない。100質量部よりも多いと、パン生地がべたつきやすくなり、作業性が悪化するため好ましくない。
【0057】
本発明で用いるパン生地は、通常のパン生地に使用可能な成分(以下、その他の成分という)を特に限定せず使用することができる。
【0058】
上記のその他の成分としては、例えば、乳化剤(グリセリンモノ脂肪酸エステル・グリセリン酢酸脂肪酸エステル・グリセリン乳酸脂肪酸エステル・グリセリンコハク酸脂肪酸エステル・グリセリン酒石酸脂肪酸エステル・グリセリンクエン酸脂肪酸エステル・グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル・ソルビタン脂肪酸エステル・ショ糖脂肪酸エステル・ショ糖酢酸イソ酪酸エステル・ポリグリセリン脂肪酸エステル・ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル・プロピレングリコール脂肪酸エステル・ステアロイル乳酸カルシウム・ステアロイル乳酸ナトリウム・ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等の合成乳化剤、大豆レシチン・卵黄レシチン・大豆リゾレシチン・卵黄リゾレシチン・酵素処理卵黄・乳脂肪球皮膜蛋白質等の天然乳化剤)、増粘安定剤(高粘性キサンタンガムではないキサンタンガム・アルギン酸・アルギン酸塩・アルギン酸エステル・グアガム・ローカストビーンガム・カラギーナン・アラビアガム・ペクチン・プルラン・タマリンドシードガム・結晶セルロース・カルボキシメチルセルロース・メチルセルロース・寒天・グルコマンナン・ゼラチン・ファーセルラン・タラガム・カラヤガム・トラガントガム・ジェランガム・大豆多糖類)、酵素類(プロテアーゼ・アミログルコシダーゼ・プルラナーゼ・ペントサナーゼ・セルラーゼ・リパーゼ・ホスフォリパーゼ・カタラーゼ・リポキシゲナーゼ・アスコルビン酸オキシダーゼ・スルフィドリルオキシダーゼ・ヘキソースオキシダーゼ・グルコースオキシダーゼ)、乳や乳製品(カゼイン・ホエー・クリーム・脱脂粉乳・発酵乳・牛乳・全粉乳・ヨーグルト・練乳・全脂練乳・脱脂練乳・濃縮乳・純生クリーム・ホイップ用クリーム(コンパウンドクリーム)・植物性ホイップ用クリーム)、チーズ類(ナチュラルチーズ・プロセスチーズ・クリームチーズ)、デキストリン、原料アルコール、焼酎・ウイスキー・ウオッカ・ブランデー等の蒸留酒、ワイン・日本酒・ビール等の醸造酒、各種リキュール、無機塩類、食塩、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、ハーブ、豆類、小麦蛋白や大豆蛋白といった植物蛋白、卵類、甘味料、β―カロチン・カラメル・紅麹色素等の着色料、トコフェロール・茶抽出物等の酸化防止剤、保存料、苦味料、酸味料、pH調整剤、日持ち向上剤、果実、調味料、香辛料、香料、野菜類・肉類・魚介類等の食品素材、コンソメ・ブイヨン等の植物及び動物エキス、食品添加物等を使用することができる。
【0059】
本発明のパン生地は、本発明の目的を損なわない限り、上記のその他の成分を任意に使用することができるが、パン生地で用いる穀粉類100質量部に対し、合計で200質量部以下、より好ましくは100質量部以下、最も好ましくは70質量部以下となる範囲で含有させる。
【0060】
本発明のパン生地は速成法、ストレート法、中種法、液種法、サワー種法、湯種法、酒種法、ホップ種法、中麺法、チョリーウッド法、連続製パン法、冷蔵生地法、冷凍生地法等の製パン法を適宜選択して製造することができ、ストレート法又は中種法で製造することが好ましい。尚、上記冷凍生地法としては、混涅直後に冷凍する板生地冷凍法、分割丸め後に生地を冷凍する玉生地冷凍法、成形後に生地を冷凍する成形冷凍法、最終発酵(ホイロ)後に生地を冷凍するホイロ済み冷凍法等の種々の方法が採用できる。
【0061】
本発明のパン生地は、パン生地であれば特に制限はないが、例えば食パン生地、菓子パン生地、デニッシュ・ペストリー生地、パイ生地、ドーナツ生地として用いることができる。尚、上記のデニッシュ・ペストリー生地とパイ生地は、ロールイン用油脂を折り込む前の生地を指すものとする。
【0062】
本発明のパン類は、穀粉類100質量部に対し、B型粘度計で、25℃、60rp
mの条件下で測定したときのキサンタンガム1質量%水溶液の粘度が1000mPa・s以上である高粘度キサンタンガムを0.001〜1質量部含有するパン生地を必要によりフロアータイム、分割、ベンチタイム、成形、ホイロをとり、焼成することにより得ることができる。
【実施例】
【0063】
以下に、パン生地の製造に用いる可塑性油脂組成物の製造例及び比較製造例、並びに本発明の実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。尚、製造例1、2、4、5、8及び9並びに実施例1、2、4、5、8、9及び12は参考例です。
【0064】
(製造例1〜10、比較製造例1〜5)
<可塑性油脂組成物の製造>
表1と表4に記載の配合で以下の製造方法により製造例1〜10及び比較製造例1〜5の可塑性油脂組成物を製造した。
【0065】
先ず、パームオレイン(ヨウ素価65)のエステル交換油、パーム油を60℃前後に加温し、マルトース生成α―アミラーゼ(細菌由来、至適温度60〜85℃)以外の原料であるグリセリンモノ脂肪酸エステル、レシチン、高粘度キサンタンガム、グルコマンナン、通常のキサンタンガムを添加し混合した油相と、水からなる水相を混合攪拌し油中水型の乳化物とし、殺菌し、急冷可塑化工程(冷却速度−20℃/分以上)にかけ、急冷可塑化することにより可塑性油脂組成物を得た。マルトース生成α―アミラーゼを用いる場合は、得られた可塑性油脂組成物に添加し、均一に混合した。
【0066】
高粘度キサンタンガムは、GRINSTED Xanthan MAS−SH:ダニスコ社製、B型粘度計で、25℃、60rpmの条件下で測定したとき、キサンガンガムの1質量%水溶液の粘度が、1800mPa・sのもの、通常のキサンタンガムは、エコーガムKO−B:大日本住友製薬製、B型粘度計で、25℃、60rpmの条件下で測定したとき、キサンタンガムの1質量%水溶液の粘度が、500mPa・sのもの、マルトース生成α―アミラーゼは10000単位/gのものを用いた。
【0067】
(実施例1〜10、比較例1〜5)
<食パンの配合と製法 中種法>
製造例1〜10及び比較製造例1〜5の可塑性油脂組成物を練り込み用油脂として用い、以下の配合と製法にて実施例1〜10及び比較例1〜5の食パン生地を製造し、これを焼成して食パンを得た。
【0068】
<中種生地配合>
強力粉 70質量部
イーストフード 0.1質量部
イースト 2.2質量部
水 40質量部
<本捏生地配合>
強力粉 30質量部
砂糖 6質量部
食塩 1.8質量部
脱脂粉乳 2質量部
可塑性油脂組成物 5質量部
水 24質量部
【0069】
<製法>
中種生地配合の全原料を、縦型ミキサーにて低速3分、中速2分ミキシングし、中種生地(捏ね上げ温度=26℃)を得た。得られた中種生地は28℃、相対湿度80%にて4時間の中種醗酵を取った。
次いで可塑性油脂組成物以外の本捏配合原料を添加し、縦型ミキサーにて低速3分、中速3分ミキシングし、可塑性油脂組成物を添加、低速3分、中速4分ミキシングし、実施例1〜10及び比較例1〜5の食パン生地(捏ね上げ温度=27℃)を得た。得られた実施例1〜10及び比較例1〜5の食パン生地は30分フロアタイムをとり、分割(380g)、20分ベンチタイムを取った後、モルダーで成型しワンローフ型に入れた。38℃、相対湿度80%、60分のホイロを取った後、200℃のオーブンで25分焼成し、食パンを得た。
【0070】
(実施例11)
<食パンの配合と製法 ストレート法>
製造例3の可塑性油脂組成物を練り込み用油脂として用い、以下の配合と製法にて実施例11の食パン生地を製造し、これを焼成して食パンを得た。
【0071】
<配合>
強力粉 100質量部
イーストフード 0.1質量部
イースト 2質量部
食塩 2質量部
砂糖 6質量部
脱脂粉乳 2質量部
可塑性油脂組成物 5質量部
水 67質量部
【0072】
<製法>
可塑性油脂組成物以外の原料を、縦型ミキサーにて低速2分、中速4分、高速1分ミキシングし、可塑性油脂組成物を添加、低速2分、中速4分ミキシングし、実施例11の食パン生地(捏ね上げ温度=27℃)を得た。得られた実施例11の食パン生地は120分フロアタイム(90分でパンチ)をとり、分割(380g)、20分ベンチタイムを取った後、モルダーで成型しワンローフ型に入れた。38℃、相対湿度80%、60分のホイロを取った後、200℃のオーブンで25分焼成し、食パンを得た。
【0073】
(実施例12)
<食パンの配合と製法 中種法>
以下の配合と製法により実施例12の食パン生地を製造し、これを焼成して食パンを得た。
【0074】
<中種生地配合>
強力粉 70質量部
イーストフード 0.1質量部
イースト 2.2質量部
水 40質量部
<本捏生地配合>
強力粉 30質量部
砂糖 6質量部
食塩 1.8質量部
脱脂粉乳 2質量部
バター 5質量部
高粘度キサンタンガム 0.1質量部
グルコマンナン 0.03質量部
アミラーゼ 30ppm
水 24質量部
【0075】
<製法>
中種生地配合の全原料を、縦型ミキサーにて低速3分、中速2分ミキシングし、中種生地(捏ね上げ温度=26℃)を得た。得られた中種生地は28℃、相対湿度80%にて4時間の中種醗酵を取った。
次いでバター以外の本捏配合原料を添加し、縦型ミキサーにて低速3分、中速3分ミキシングし、バターを添加、低速3分、中速4分ミキシングし、実施例12の食パン記事生地(捏ね上げ温度=27℃)を得た。得られた実施例12の食パン生地は30分フロアタイムをとり、分割(380g)、20分ベンチタイムを取った後、モルダーで成型しワンローフ型に入れた。38℃、相対湿度80%、60分のホイロを取った後、200℃のオーブンで25分焼成し、食パンを得た。
【0076】
<評価方法及び評価基準>
(体積)
焼成した食パンを室温で1時間置き、熱が取れた後、ポリエチレン袋に密封し、25℃で24時間保管し、3Dレーザースキャナー(株式会社アステックス製)にて体積(ml)を測定した。結果を表2と表5に示した。
【0077】
(食感)
焼成した食パンを室温で1時間置き、熱が取れた後、ポリエチレン袋に密封し、25℃で24時間保管し、冷蔵庫(5℃)で24時間保管後、25℃で6時間保管した後の食感を食感1として評価した。
焼成した食パンを室温で1時間置き、熱が取れた後、ポリエチレン袋に密封し、25℃で24時間保管し、冷蔵庫(5℃)で48時間保管後、25℃で6時間保管した後の食感を食感2として評価した。
食感の評価方法は、パネラー10人にて食パンのしとり、ソフトさ、口溶けに関し、それぞれ良好な順に3点2点1点の3段階評価をおこない、その合計点数を評価とした。◎:25点以上、○:24〜20点、△:19〜15点、×:14点以下
結果を表2と表5に示した。
【0078】
(硬さ)
焼成した食パンを室温で1時間置き、熱が取れた後、ポリエチレン袋に密封し、25℃で24時間保管し、冷蔵庫(5℃)で24時間保管後、25℃で6時間保管した後の硬さを硬さ1として評価した。
焼成した食パンを室温で1時間置き、熱が取れた後、ポリエチレン袋に密封し、25℃で24時間保管し、冷蔵庫(5℃)で48時間保管後、25℃で6時間保管した後の硬さを硬さ2として評価した。
硬さは、レオメーター(株式会社レオテック製)にてテーブルスピード6cm/分で圧縮弾性測定用のプランジャー(No.3、直径3センチの円盤)が、3cm厚の食パンに1.5cm進入したときの応力値を1サンプルにつき3回測定し、その平均値を求め、これを硬さの評価とした。結果を表3と表6に示した。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
【表5】
【0084】
【表6】