(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された技術では、電力を伝送するためのコイルにおける電力の損失が大きいため、電力を効率良く伝送できないという問題点がある。また、
図11に示す第3実施形態では、コイルの軸を中心として回転された場合に、電力を伝送するためのコイルが位置ズレを生じて特性が変化することから、電力を効率良く伝送できないという問題点がある。
【0005】
そこで、本発明は、回転された場合であっても電力を効率良く伝送できる無線電力伝送システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、送電装置から受電装置に対して交流電力を伝送する無線電力伝送システムにおいて、前記送電装置は、所定の距離を隔てて配置され、当該所定の距離を含む合計幅が近傍界であるλ/2π以下であり、共通する中心軸に対して回転対称の形状をそれぞれ有する第1および第2電極と、前記第1および第2電極と交流電力発生部の2つの出力端子とをそれぞれ電気的に接続する第1および第2接続線と、前記第1および第2電極と前記交流電力発生部の2つの出力端子の少なくとも一方の間に挿入される第1インダクタと、を有し、前記受電装置は、所定の距離を隔てて配置され、当該所定の距離を含む合計幅が近傍界であるλ/2π以下であり、共通する中心軸に対して回転対称の形状をそれぞれ有する第3および第4電極と、前記第3および第4電極と負荷の2つの入力端子とをそれぞれ電気的に接続する第3および第4接続線と、前記第3および第4電極と前記負荷の2つの入力端子の少なくとも一方の間に挿入される第2インダクタと、を有し、前記送電装置と前記受電装置の電極は近傍界であるλ/2π以下の距離を隔てて対向配置され、前記第1および第2電極と前記第1インダクタによって構成されるカプラの共振周波数と、前記第3および第4電極と前記第2インダクタによって構成されるカプラの共振周波数が
等しくなるように設定さ
れ、前記第1電極は板状の多角形または円形形状を有し、前記第2電極は前記第1電極を囲むように配置された板状の多角形または円形の環状形状を有するとともに前記第1電極と同一平面上に中心軸が一致するように配置され、前記第3電極は板状の多角形または円形形状を有し、前記第4電極は前記第3電極を囲むように配置された板状の多角形または円形の環状形状を有するとともに前記第3電極と同一平面上に中心軸が一致するように配置され、前記第1および第2電極と前記第3および第4電極は近傍界であるλ/2π以下の距離を隔てて対向配置されている、ことを特徴とする。
このような構成によれば、回転された場合であっても電力を効率良く伝送することができる。
【0008】
また、本発明の一側面は、前記第1乃至第4電極の少なくとも一つは半径方向の切り欠きを有することを特徴とする。
このような構成によれば、特性変化を招くことなく、電極を取り付けるための切り欠きを設けることができる。
【0009】
また、本発明の一側面は、前記第1電極および前記第3電極の少なくとも一方は円環形状を有することを特徴とする。
このような構成によれば、特性変化を招くことなく、電極を取り付けるための貫通孔を設けることができる。
【0010】
また、本発明の一側面は、前記第1乃至第4電極の少なくとも一つは軸方向に延伸する立体構造を有することを特徴とする。
このような構成によれば、立体形状を有する部材を電極として用いることができる。
【0011】
また、本発明の一側面は、前記第1および第2電極は多角形または円形の筒形状を有し、前記第3および第4電極は前記第1および第2電極をそれぞれ囲むように配置された多角形または円形の筒形状を有するとともに前記第1および第2電極と中心軸が一致するように配置され、前記第1および第3電極と前記第2および第4電極は近傍界であるλ/2π以下の距離を隔てて対向配置されていることを特徴とする。
このような構成によれば、軸方向に回転された場合であっても伝送効率の低下を確実に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、回転された場合であっても電力を効率良く伝送できる無線電力伝送システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】直列共振を利用する無線電力伝送システムを構成する送電装置の詳細な構成例を示す図である。
【
図2】直列共振を利用する無線電力伝送システムの構成例を示す図である。
【
図3】
図2に示す無線電力伝送システムの等価回路である。
【
図4】
図2に示す無線電力伝送システムの伝送効率および反射損の周波数特性を示す図である。
【
図5】
図2に示す送電用カプラのインピーダンスのスミスチャートを示す図である。
【
図6】
図2に示す受電用カプラを90度回転させた場合の状態を示す図である。
【
図7】
図6に示す無線電力伝送システムの伝送効率および反射損の周波数特性を示す図である。
【
図8】
図6に示す送電用カプラのインピーダンスのスミスチャートを示す図である。
【
図9】本発明の実施形態の構成例を示す斜視図である。
【
図10】
図9に示す実施形態をZ方向から眺めた平面図である。
【
図11】
図9に示す無線電力伝送システムの伝送効率および反射損の周波数特性を示す図である。
【
図12】
図9に示す送電用カプラのインピーダンスのスミスチャートを示す図である。
【
図13】
図9に示す実施形態の電界分布を示す図である。
【
図15】
図9に示す受電用カプラを反時計方向に90度回転させた場合の状態を示す図である。
【
図16】
図15に示す無線電力伝送システムの伝送効率および反射損の周波数特性を示す図である。
【
図17】
図15に示す送電用カプラのインピーダンスのスミスチャートを示す図である。
【
図18】本発明の変形実施態様の一例を示す図である。
【
図19】
図18に示す無線電力伝送システムの伝送効率および反射損の周波数特性を示す図である。
【
図20】
図18に示す送電用カプラのインピーダンスのスミスチャートを示す図である。
【
図21】
図18に示す受電用カプラを反時計方向に90度回転させた場合の状態を示す図である。
【
図22】
図21に示す無線電力伝送システムの伝送効率および反射損の周波数特性を示す図である。
【
図23】
図21に示す送電用カプラのインピーダンスのスミスチャートを示す図である。
【
図24】本発明の他の変形実施態様の一例を示す図である。
【
図25】
図24に示す無線電力伝送システムの伝送効率および反射損の周波数特性を示す図である。
【
図26】
図24に示す送電用カプラのインピーダンスのスミスチャートを示す図である。
【
図27】
図24に示す受電用カプラを反時計方向に90度回転させた場合の状態を示す図である。
【
図28】
図27に示す無線電力伝送システムの伝送効率および反射損の周波数特性を示す図である。
【
図29】
図27に示す送電用カプラのインピーダンスのスミスチャートを示す図である。
【
図30】本発明の他の変形実施態様の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
(A)直列共振を利用した無線伝送システムの説明
以下では、直列共振を利用した無線伝送システムについて説明した後に、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
図1は直列共振を利用した無線電力伝送システムを構成する送電用カプラの詳細な構成例を示している。この図に示すように、直列共振を利用した無線電力伝送システムでは、送電用カプラ110は、矩形の板状形状を有する絶縁部材(誘電体基板)によって構成される回路基板118の表(おもて)面118A上に、矩形形状を有する導電性部材によって構成される電極111,112が配置されて構成される。回路基板118の裏面118Bには、この
図1の例では、電極等は配置されていない。具体的な構成例としては、例えば、ガラスエポキシ基板やガラスコンポジット基板等によって構成される回路基板118上に、銅等の導電性の薄膜によって電極111,112が形成される。電極111,112は、所定の距離d1だけ離れた位置に平行に配置されている。また、距離d1を含む電極111,112の幅Dは、これらの電極から放射される電界の波長をλとした場合に、λ/2πで示される近傍界よりも狭くなるように設定されている。
【0017】
回路基板118の電極111,112の短手方向の端部には、インダクタ113,114の一端がそれぞれ接続されている。また、インダクタ113,114の他端は、接続線115,116の一端にそれぞれ接続されている。接続線115,116は、電極111,112の領域およびこれらに挟まれる領域を回避するように配置されるとともに、これらの領域から遠ざかる方向(
図1の左下方向)に伸延するように配置されている。より詳細には、電極111,112のそれぞれの矩形領域と、これら2つの電極111,112によって挟まれた領域を回避して配置されるとともに、これらの領域から遠ざかる方向に伸延するように配置されている。このように配置することで、電極111,112と接続線115,116の間の干渉を少なくすることができるので、伝送効率の低下を防止できる。接続線115,116は、例えば、同軸ケーブルまたは平衡ケーブルによって構成されている。なお、接続線115,116の他端は、図示しない交流電力発生部の出力端子にそれぞれ接続されている。接続線115,116によって送電用カプラ110に交流電力発生部が接続されることにより、送電装置が構成される。
【0018】
送電用カプラ110は、電極111,112が所定の距離d1を隔てて配置されることによって形成されるキャパシタのキャパシタンスCと、インダクタ113,114のインダクタンスLによる直列共振回路を構成するので、これらによる固有の共振周波数f
Cを有している。
【0019】
受電用カプラ120は、送電用カプラ110と同様の構成とされ、回路基板128の表面128A上に、矩形形状を有する導電性部材によって構成される電極121,122およびインダクタ123,124が配置され、インダクタ123,124の他端に接続線125,126が接続されて構成される。電極121,122によって形成されるキャパシタのキャパシタンスCと、インダクタ123,124のインダクタンスLによる直列共振回路の共振周波数f
Cは送電用カプラ110と略同じに設定される。接続線125,126は、例えば、同軸ケーブルまたは平衡ケーブルによって構成されている。受電用カプラ120の接続線125,126の他端には、図示しない負荷が接続される。接続線125,126によって受電用カプラ120に負荷が接続されることにより、受電装置が構成される。
【0020】
図2は、送電用カプラ110と受電用カプラ120を対向配置した状態を示す図である。この図に示すように、送電用カプラ110と受電用カプラ120は、回路基板118,128の表面118A,128Aが対向するように距離d2を隔て、回路基板118,128が平行になるように配置される。
【0021】
図3は、
図2に示す無線電力伝送システム1の等価回路を示す図である。この
図3において、交流電力発生部211は、共振周波数に対応する周波数の交流電力を生成して出力する。電源部負荷212は、接続線115,116および接続線125,126の特性インピーダンスと等しい値を示し、Z0の値を有している。インダクタ213はインダクタ113,114に対応し、L1の素子値を有している。抵抗214は、送電側回路、主にインダクタに付随する抵抗を示し、R1の素子値を有している。キャパシタ215は、電極111,112の間に生じる素子値C1のキャパシタである。キャパシタ221は、電極121,122の間に生じる素子値C2のキャパシタである。インダクタ222はインダクタ123,124に対応し、L2の素子値を有している。抵抗223は、受電側回路、主にインダクタに付随する抵抗を示し、R2の素子値を有している。負荷224は、交流電力発生部211から出力され、送電用カプラおよび受電用カプラを介して伝送された電力が供給される。キャパシタ241は、電極111,112と電極121,122の間に生じるキャパシタを示し、Cm1の素子値を有している。なお、負荷224は、例えば、整流装置および二次電池等によって構成されている。もちろん、これ以外であってもよい。
【0022】
つぎに、
図2に示す直列共振を利用した無線電力伝送システムの動作について説明する。
図4は、
図2に示す無線電力伝送システムの送電用カプラ110と受電用カプラ120を20cm隔てて対向配置した場合(d2=20cmの場合)における送電用カプラ110から受電用カプラ120への伝送効率η21(=|S21|
2)と、反射損η11(=|S11|
2)の周波数特性を示す図である。この図において横軸は伝送する交流電力の周波数(MHz)を示し、縦軸は伝送効率を示している。
図4に示す例では、27MHz周辺において、伝送効率約95%を達成していることが分かる。なお、
図2では、例えば、インダクタ113,114,123,124は、それぞれ、巻き数が13回、インダクタンス値が2.8μHとされ、回路基板118,128のサイズ(DとL)は250×250mmとされ、電極111,112および電極121,122間のギャップd1は34.4mmとされている。
【0023】
図5は、
図2に示す直列共振を利用した無線電力伝送システムの送電用カプラ110のインピーダンスS11のスミスチャートを示している。この場合、測定器のポートインピーダンスは接続線路の特性インピーダンスZ0(実数値)と等しい値に設定している。これらの図に示すように、
図2に示す無線電力伝送システムでは、送電用カプラ110および受電用カプラ120のインピーダンスの軌跡は、スミスチャートの円の中心付近を通過することから、この付近において伝送を行うように設定することにより反射を抑えて効率良く電力を伝送することができる。
【0024】
図6は、
図2に示す無線電力伝送システムの受電用カプラ120を反時計方向に90度回転させて配置した状態を示している。
図7は、
図6に示す配置状態における、送電用カプラ110から受電用カプラ120への伝送効率η21と、反射損η11の周波数特性を示す図である。
図7に示すように、伝送効率η21は0となり、反射損η11は1に近い値となるため、送電用カプラ110に入力された電力の殆どが反射され、受電用カプラ120には伝送されない。また、
図8に示すように、入力インピーダンスS11が低い状態となってインピーダンスが整合しない状態となる。このため、
図2に示す無線電力伝送システムでは、
図6に示すように送電用カプラ110と受電用カプラ120とが直交する状態では、電力を伝送することができない。以上から、
図2に示す無線電力伝送システムでは、送電用カプラ110と受電用カプラ120とが軸を中心として回転された場合には特性の劣化を招くことになる。
【0025】
(B)本発明の実施形態の説明
つぎに、
図9および
図10を参照して、本発明の実施形態に係る無線電力電送システムの構成例について説明する。
図9は実施形態の斜視図であり、
図10は
図9に示す実施形態をZ方向から眺めた平面図である。
図9および
図10に示す実施形態では、円形状の中心電極311、円環状の環状電極312、インダクタ313,314、および、接続線315,316によって送電用カプラ310が構成され、円形状の中心電極321、円環状の環状電極322、インダクタ323,324、および、接続線325,326によって受電用カプラ320が構成される。
図9および
図10の例では、送電用カプラ310と受電用カプラ320を構成する各素子のサイズは同じとされている。もちろん、各素子のサイズが異なっても、共振周波数が同じになるように調整することで、電力を伝送することができる。なお、
図9および
図10の例では、電極だけが示されているが、
図1および
図2と同様に、ガラスエポキシ基板やガラスコンポジット基板等によって形成される基板または基材上に電極を形成するようにすることができる。
【0026】
ここで、中心電極311は、半径r1の円形形状を有する板状の導電性部材(例えば、銅、アルミニウム等の部材)によって構成される。環状電極312は、外周の半径がr2であり幅wの円環形状を有する板状の導電性部材によって構成される。なお、中心電極311と環状電極312は同一平面上に配置され、中心電極311の外周と環状電極312の内周間の距離はd1とされている。インダクタ313の一端は中心電極311に接続され、他端は接続線315の一端に接続される。インダクタ314の一端は環状電極312に接続され、他端は接続線316の一端に接続される。接続線315,316は、例えば、同軸ケーブルまたは平衡ケーブルによって構成されている。接続線315,316の他端は、図示しない交流電力発生部の出力端子にそれぞれ接続されている。接続線315,316によって送電用カプラ310に交流電力発生部が接続されることにより、送電装置が構成される。なお、中心電極311と環状電極312によって形成されるキャパシタのキャパシタンスCと、インダクタ313,314のインダクタンスLによる直列共振回路の共振周波数はf
Cとされる。
【0027】
中心電極321は、半径r1の円形形状を有する板状の導電性部材によって構成される。環状電極322は、外周の半径がr2であり幅wの円環形状を有する板状の導電性部材によって構成される。中心電極321と環状電極322は同一平面上に配置され、中心電極321の外周と環状電極322の内周間の距離はd1とされている。また、中心電極311と環状電極312が配置される平面と、中心電極321と環状電極322が配置される平面は略平行に保たれる。インダクタ323の一端は中心電極321に接続され、他端は接続線325の一端に接続される。インダクタ324の一端は環状電極322に接続され、他端は接続線326の一端に接続される。接続線325,326は、例えば、同軸ケーブルまたは平衡ケーブルによって構成されている。接続線325,326の他端は、図示しない負荷の入力端子にそれぞれ接続されている。接続線325,326によって受電用カプラ320に負荷が接続されることにより、受電装置が構成される。なお、中心電極321と環状電極322によって形成されるキャパシタのキャパシタンスCと、インダクタ323,324のインダクタンスLによる直列共振回路の共振周波数f
Cは送電用カプラ310と同じになるように設定される。
【0028】
図11は、
図9および
図10に示す無線電力伝送システムの送電用カプラ310と受電用カプラ320を20cm隔てて対向配置した場合(d2=20cmの場合)における送電用カプラ310から受電用カプラ320への伝送効率η21(=|S21|
2)と、反射損η11(=|S11|
2)の周波数特性を示す図である。より詳細には、中心電極311,321の半径r1は7cmであり、環状電極312,322の外周の径r2は24cmであり、環状電極312,322の幅wは1.5cmであり、d1は15.5cmに設定している。また、インダクタ313,314,323,324は、それぞれ、巻き数が13回、インダクタンス値が2.8μHとなるよう設定している。この
図11において横軸は伝送する交流電力の周波数(MHz)を示し、縦軸は伝送効率を示している。
図9に示す例では、27MHz周辺において、伝送効率約96%を達成している。
【0029】
図12は、
図9および
図10に示す無線電力伝送システムの送電用カプラ310のインピーダンスS11のスミスチャートを示している。この場合、測定器のポートインピーダンスは接続線路の特性インピーダンスZ0(実数値)と等しい値に設定している。これらの図に示すように、
図9および
図10に示す無線電力伝送システムでは、送電用カプラ310のインピーダンスの軌跡は、スミスチャートの円の中心付近を通過することから、この付近において伝送を行うように設定することにより反射を抑えて効率良く電力を伝送することができる。
【0030】
すなわち、
図9に示す実施形態では、中心電極311および環状電極312と、中心電極321および環状電極322とは、電界共振結合されており、中心電極311および環状電極312から中心電極321および環状電極322に対して電界によって交流電力が伝送される。つまり、
図9に示す実施形態では、中心電極311および環状電極312と、中心電極321および環状電極322とは、近傍界であるλ/2πよりも短い距離d2だけ隔てて配置されているので、中心電極311および環状電極312から放射される電界成分が支配的である領域に中心電極321および環状電極322が配置される。また、中心電極321と環状電極322の間に形成されるキャパシタおよびインダクタ313,314による共振周波数と、中心電極321と環状電極322の間に形成されるキャパシタおよびインダクタ323,324による共振周波数とは略等しくなるように設定されている。このように、中心電極311および環状電極312と、中心電極321および環状電極322とは、電界共振結合されていることから、送電用カプラ310から受電用カプラ320に対して電界によって交流電力が効率よく伝送される。
【0031】
図13は
図9に示す実施形態の実施形態の電界分布を示す図であり、
図14は
図10の電界分布を示している。これらの図において図中の矢印の方向は電界の方向を示し、矢印の大きさは電界の大きさを示している。これらの図に示すように、送電用カプラ310および受電用カプラ320の周辺の電界は、これらのカプラの中心軸に対して軸対称に形成される。このため、送電用カプラ310および受電用カプラ320を、軸を中心としていずれの方向に回転させても、特性の劣化が少ない。
【0032】
図15は
図9に示す実施形態において、受電用カプラ320を半時計方向に90度回転させた状態を示す図である。また、
図16は
図15に示す状態における送電用カプラ310から受電用カプラ320への伝送効率η21と、反射損η11の周波数特性を示す図であり、
図17は同状態における送電用カプラ310のインピーダンスS11のスミスチャートである。
図16に示すように27MHzにおける伝送効率は約96%であり、
図9に示す状態からの特性の劣化はない。また、
図17に示すように、入力インピーダンスについても
図9に示す状態からの変化はない。
【0033】
以上に説明したように、本発明の実施形態によれば、送電用カプラ310から受電用カプラ320に対して電力を9割以上の高い効率で無線伝送することができる。また、本発明の実施形態によれば、軸を中心として電極を回転した場合であっても、特性変化を僅少とすることができる。
【0034】
(C)変形実施形態の説明
以上の実施形態は一例であって、本発明が上述したような場合のみに限定されるものでないことはいうまでもない。例えば、以上の実施形態では、真円の中心電極311,321および真円の環状電極312,322を用いるようにしたが、例えば、
図18に示すように、中心電極311,321が外周から中心に向かって伸びる切り欠き311a,321aを有するとともに、環状電極312,322が一部に切り欠き312a,322aを有するようにしてもよい。
図19は、
図18に示す実施形態の伝送効率η21と、反射損η11の周波数特性を示し、また、
図20は入力インピーダンスS11のスミスチャートである。これらの図と
図11および
図12との比較から、切り欠きを設けた場合でも特性の変化は殆ど生じない。このため、このような切り欠きを設けても、伝送効率が劣化することは殆どない。
【0035】
図21は
図18の受電用カプラ320を反時計方向に90度回転させた状態を示す図である。このような状態では、切り欠き311a,321aおよび切り欠き312a,322aの位置が一致しない状態となる。しかしながら、このような状態であっても特性の変化は殆ど生じない。より詳細には、
図22は
図21に示す実施形態の伝送効率η21と、反射損η11の周波数特性を示し、また、
図23は入力インピーダンスS11のスミスチャートである。これらの図と
図19および
図20との比較から、受電用カプラ320を回転させた場合でも特性の変化は殆ど生じない。もちろん、送電用カプラ310を回転させた場合も同様である。なお、
図18の例では、中心電極311,321および環状電極312,322の全てに切り欠きを設けるようにしたが、これらの少なくとも1つに設けるようにしてもよい。
【0036】
図24は、他の変形実施形態を示している。すなわち、
図24は、中心電極311,321に貫通孔311b,321bをそれぞれ設けることにより、中心電極311,321を環状とした実施形態を示している。この例では、中心電極311,321の中心に半径r3の貫通孔311b,321bがそれぞれ形成されている。なお、その他の構成は
図9と同様とされている。
図25は、
図24に示す実施形態の伝送効率η21と、反射損η11の周波数特性を示し、また、
図25は入力インピーダンスS11のスミスチャートである。これらの図と
図11および
図12との比較から、中心電極311,321に貫通孔311b,321bを設けた場合でも特性の変化は殆ど生じない。このため、このような貫通孔311b,321bを設けても、伝送特性が劣化することは殆どない。
【0037】
図27は
図24の受電用カプラ320を反時計方向に90度回転させた状態を示す図である。
図24の実施形態では、貫通孔311b,321bは軸対称となるように形成されているため、送電用カプラ310および受電用カプラ320によって形成される電界は、
図13および
図14と同様に軸対称となる。このため、
図27に示すように、受電用カプラ320を回転させた場合でも、特性の変化は殆ど生じない。より詳細には、
図28は
図27に示す実施形態の伝送効率η21と、反射損η11の周波数特性を示し、また、
図29は入力インピーダンスS11のスミスチャートである。これらの図と
図25および
図26との比較から、受電用カプラ320を回転させた場合でも特性の変化は殆ど生じない。もちろん、送電用カプラ310を回転させた場合も同様である。なお、
図24の例では、中心電極311,321の双方に貫通孔を設けるようにしたが、これらの少なくとも1つに設けるようにしてもよい。また、前述のように中心電極311,321および環状電極312,322の少なくとも1つに必要に応じて切り欠きを設けるようにしてもよい。
【0038】
また、以上の各実施形態では、中心電極311と中心電極321および環状電極312と環状電極322をそれぞれ同じサイズを有するようにしたが、これらが異なるサイズを有するようにしてもよい。また、中心電極311,321および環状電極312,322は真円としたが、例えば、楕円であったり、多角形であったりしてもよい。また、中心電極311と環状電極312および中心電極321と環状電極322はそれぞれ同一平面上に配置するようにしたが、例えば、これらが軸方向にずれて配置されるようにしてもよい。また、中心電極311,321および環状電極312,322は平板形状ではなく、湾曲したり、屈曲したりした形状であってもよいし、球形等の立体形状であってもよい。さらに、軸方向に延伸された立体形状を有するようにしてもよい。また、切り欠きまたは貫通孔を有する状態で、軸方向に延伸された立体形状を有するようにしてもよい。
【0039】
また、以上の各実施形態では、接続線315と中心電極311の間および接続線316と環状電極312の間の双方にインダクタ313,314を挿入するようにしたが、これらのいずれか一方にのみインダクタを挿入するようにしてもよい。同様に、受電用カプラ320では、接続線325と中心電極321の間および接続線326と環状電極322の間の双方にインダクタ323,324を挿入するようにしたが、これらのいずれか一方にのみ挿入するようにしてもよい。また、以上の実施形態では、インダクタとしては、導体線を円柱状に巻回して構成するようにしたが、例えば、マイクロストリップラインで使用されるような、平面上を蛇行する形状を有するものや、平面上で螺旋形状を有するものによって構成するようにしてもよい。
【0040】
また、以上の各実施形態では、円形の電極と環状の電極を有するようにしたが、例えば、
図30に示すように円筒形の電極によって構成することも可能である。この
図30の例は、送電用カプラ410と受電用カプラ420を有している。ここで、送電用カプラ410を構成する電極411,412は、半径r1の円筒形状を有する導電性部材によって構成される。なお、
図30の例では円筒形状の部材を用いているが、矩形の導電性部材を半径r1となるように湾曲させて構成してもよい。その場合、導電性部材の端部は接触しても接触しなくてもよい。電極411,412は、軸方向(図のX方向)に所定の距離d1だけ離れた位置に平行に配置されている。また、距離d1を含む電極411,412の幅Dは、これらの電極から放射される電界の波長をλとした場合に、λ/2πで示される近傍界よりも狭くなるように設定されている。電極411,412は、図示しない絶縁材(例えば、誘電体基板)を介して固定される。また、電極411,412は、インダクタ413,414および接続線415,416を介して交流電源部417に接続される。なお、電極411,412およびインダクタ413,414によって送電用カプラ410が構成される。
【0041】
受電用カプラ420を構成する電極421,422は、半径r2(<r1)の円筒形状を有する導電性部材によって構成される。なお、
図30の例では円筒形状の部材を用いているが、矩形の導電性部材を半径r2となるように湾曲させて構成してもよい。その場合、導電性部材の端部は接触しても接触しなくてもよい。電極421,422は、軸方向(図のX方向)に所定の距離d2だけ離れた位置に平行に配置されている。また、電極421,422は、電極411,412と中心軸が一致するように配置される。また、距離d2を含む電極421,422の幅Dは、電極411,412から放射される電界の波長をλとした場合に、λ/2πで示される近傍界よりも狭くなるように設定されている。電極421,422は、図示しない絶縁材(例えば、誘電体基板)を介して固定される。電極421,422と電極411,412の間隔はd3とされている。また、電極421,422は、インダクタ423,424および接続線425,426を介して負荷427に接続される。これら、電極421,422およびインダクタ423,424によって受電用カプラ420が構成される。なお、
図30に示す電極411,412とインダクタ413,414によって構成される共振回路の共振周波数と、電極421,422とインダクタ423,424によって構成される共振回路の共振周波数は同じに設定され、動作原理は
図1の場合と同様である。
図30に示す実施形態によれば、送電用カプラ410から受電用カプラ420に対して効率良く電力を伝送することができるとともに、送電用カプラ410または受電用カプラ420が中心軸周りに回転した場合であっても、伝送特性が低下することが少ない。なお、
図30では、電極411,412,421,422は円形の筒状としたが、多角形の筒状としてもよい。また、
図30の例では、電極411,412の方が電極421,422よりも軸方向の長さが長い構成としたが、これらが同じであるか、あるいは、電極421,422の方が電極411,412よりも軸方向の長さが長い構成としてもよい。