【文献】
Christopher-Stine,L.,A Novel Autoantibody Recognizing 200-kd and 100-kd Proteins Is Associated With an Immune-Mediated Ne,ARTHRITIS & RHEUMATISM,2010年 9月,62/9,2757-66
【文献】
Patakamuri Govindaiah,Synthesis and characterization of poly(styrene-co-fluorescein O-methacrylate)/poly(N-isopropylacryla,Polymer,2011年10月13日,52/22,5058-5064
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記磁性材料が、マグネタイト、酸化ニッケル、フェライト、コバルト鉄酸化物、バリウムフェライト、炭素鋼、タングステン鋼、KS鋼、希土類コバルト磁石、またはヘマタイトである請求項1〜6のいずれか1項に記載の標的物質の検出方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の標識粒子は、標的物質を検出する標識粒子であって、磁性材料と蛍光材料を含む複合粒子の表面に熱応答性ポリマーを有する。このとき、さらに標的物質との結合性を有する結合性材料(生体分子等)を有することが好ましい。
【0010】
図1は、本発明の標識粒子を構成する熱応答性蛍光粒子10を模式化して示した側面図である。本実施形態においては、複合粒子11は、コアをなす磁性材料相(磁性材料粒子)1の表面を、シェルをなす透明材料相(蛍光シリカ相)2が被覆した形態を有する。そして、その複合粒子11の表面に熱応答性ポリマー3が配置されている。本実施形態においては、このようにコア/シェル型の複合粒子を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、海島状になった形態や、不定形に混ざり合った状態であってもよい。ただし、そのときにも、蛍光を外部から検出できるよう、蛍光材料相2の少なくとも一部は複合粒子の表面に露出していることが好ましく、粒子表面の過半が蛍光材料相で構成されていることがより好ましい。したがって、海島状の形態としては、磁性材料相が島部を構成し、蛍光材料相が海部を構成した形態が好ましい。類似の形態としては、前記磁性材料相がなすコアが多数内部に存在するコア分散型粒子が挙げられる。
【0011】
熱応答性ポリマー3は図示の便宜上、複合粒子2の表面から外方に向け、放射状に延びる形態で示したが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。ポリマーの表面吸着に係る形態は多様であり、不定形であることが一般的である。複雑に絡み合った構造であってもよく、あるいは、各分子またはいくつかの分子が収縮した粒子状の形態で複合粒子表面に固定化されていてもよい。ただし、少なくとも一部において複合粒子から発せられる蛍光が外部に到達しうる状態であることが好ましい。
図2以降はこの熱応答性ポリマーの相をハッチングで単純化して示している。
【0012】
図2は、熱応答性蛍光粒子10の加熱による凝集・分散性の変化を模式化して示した側面図である。図中左側の(1)は、加熱前の状態であり、熱応答性蛍光粒子10が系内で分散した状態を示している。これに対し、加熱することにより、図中右側(2)の凝集状態へと移行する。このように、加熱により凝集・分散性が変化する理由は必ずしも明らかではない。推定を含めて言うと、加熱によりポリマーが収縮し、隣接する複合粒子の接近可能距離がより短くなるため、その凝集が促されることが考えられる。本実施形態においては、加熱により、臨界溶液温度(CST)を超えると凝集が促され、それを下回ると分散が促される例を示したが、その逆であってもよい。つまり、臨界溶液温度(CST)を超えると分散が促され、それを下回ると凝集が促される態様であってもよい。
【0013】
図3は、本発明の蛍光標識粒子の一実施形態を模式的に示した側面図である。本実施形態においては、複合粒子11の表面に連結材料4が付与され、そこに結合性物質5が固定化されている例を示している。図示した形態では、あたかも熱応答性ポリマー3の外側(ポリマー先端)に連結材料4が配置されているかのように示しているものの、これは図示の便宜であり、このような配置状態となっている必要はない。むしろ、実際の蛍光標識粒子では、熱応答性ポリマー3が不定形に存在しており、そのなかに絡まった状態、あるいは吸着した状態等で任意に存在していればよい。逆に、分子設計性のよい材料によるのであれば、上記のように熱応答性ポリマーの先端に連結材料を導入してもよい。変更形態としては、連結材料4を用いずに、熱応答性ポリマー3に結合性物質5を導入してもよい。さらに、熱応答性ポリマーが標的物質との結合性を有する場合などにおいては、結合性物質を用いない蛍光標識粒子の例も挙げられる。
なお、結合性物質5を、後述する分散剤側の結合性物質6と区別して、粒子側結合性物質5と呼ぶことがある。
【0014】
図4は、本発明の蛍光標識粒子20が標的物質Sおよび分散剤30とともに連結構造物100を形成する状態を示した説明図である。蛍光標識粒子20に導入された粒子側結合性物質5は、標的物質Sとの結合性を有する。一方、本実施形態においては、系内に、分散剤30が導入されている。分散剤30は分散剤基剤7と分散剤側結合性物質6とで構成されている。この分散剤側結合性物質6も前記標的物質Sとの結合性を有する。したがって、系内に、蛍光標識粒子20と、標的物質Sと、分散剤30とが共存すると、標的物質Sを介して、蛍光標識粒子20と分散剤30とが連結した構造が形成される(連結構造物100)。この連結構造物100は、分散剤30の効果で系内において分散性を示しており、蛍光標識粒子20が凝集することを妨げる。なお、
図4では連結材料4および結合性物質5を1つだけ示しているが、簡略化したものであり、典型的には
図3のように多数のものが付与されていることが好ましい。
【0015】
図5は、上述の分散剤30の効果を利用した検出手法の一例を示した模式図である。
図5(1)が標的物質Sが存在した場合であるが、このときは、
図4で示したように標的物質Sを介した連結構造物100が形成され、これは検体液中で凝集することなく分散している。一方、標的物質Sが存在しない場合(
図5(2))、分散剤30と蛍光標識粒子20とが連結されることはなく、蛍光標識粒子20は独立して系内に存在する。このとき、加熱して液温を臨界溶液温度(CST)以上とすると、蛍光標識粒子20は凝集する。本実施形態においては、反応容器Bの右側面に磁石Mが設置されている。この磁力により、凝集して強い磁性を帯びた蛍光標識粒子20は引き寄せられ、磁石Mの近傍に集積される。一方、分散性の高い連結構造物100として液中に存在する
図5(1)の状態では、その蛍光標識粒子20の凝集は促されず、その磁性は小さい状態にとどまる。したがって、磁石Mが容器Bの側方にあっても、そちらに引き寄せられることはなく、分散状態が維持される。
【0016】
本実施形態においては、上記
図5の状態で標的物質Sの有無を区別した反応液(容器B)に励起光を照射する。そすると、標的物質Sを含む状態の
図5(1)では、蛍光は各蛍光標識粒子20からの発光にとどまり、液全体において多少の発光はあるものの、さほど強まらない。一方標的物質Sを含まない
図5(2)では、励起光を照射すると、加熱され磁石の近傍に引き寄せられた凝集状態にある蛍光標識粒子20が蛍光を発する。凝集状態にあり一部にまとまった蛍光標識粒子20の蛍光発光となり、きわめて顕著な状態でその蛍光を検出することが可能となる。
粒子の凝集と磁石近傍への集積は、蛍光材料相2を用いない従来の熱応答性磁性粒子でも生じる現象であり、それにより、例えば、オレンジ色のまとまった部分が観察される。しかしながら、凝集のない分散液もややオレンジ色を帯びており、標的物質の量が少ないときなどには、あまりはっきりした差として現れないことがある。これに対し、本発明に係る蛍光標識粒子によれば、蛍光によりその差を検出できるため、顕著な蛍光発光の変化を検出することができる。これを検出感度の差(標的物質の有無による吸光度または蛍光強度の差)で示すと、本発明の好ましい実施形態によれば、従来のものに対して、10倍から数百倍も向上させることもできる(ただし、この改善効果の例示により本発明が限定して解釈されるものではない。)。
【0017】
さらに本実施形態においては、蛍光標識粒子20を構成する蛍光材料相2が蛍光色素(分散層)2bを含有するシリカ(連続相)2aで構成されている。その詳細については後述するが、シリカ素材は通常磁性材料より比重が小さく水等の検体液の媒体に浮遊しやすくなる。その効果もあり、分散・凝集状態の変化がより鋭敏になり、さらに検出感度の向上をもたらしている。以下では、上記の優れた効果を有する本発明の蛍光標識粒子に用いられ材料について、さらに詳細に説明する。
なお、図示した形態は理解の便宜から各材料を模式化ないし誇張して示したものであり、同図に示された形態により本発明が限定して解釈されるものではない。
【0018】
[複合粒子]
(磁性材料)
本発明に用いることができる磁性材料は、特に制限はないが、粒子状のものであることが好ましい。具体的には、平均粒径が、0.5nm以上1000nm未満の磁性粒子であることが好ましく、平均粒径が3nm以上200nm未満であることが特に好ましい。磁性材料(素材)としては、例えば、マグネタイト、酸化ニッケル、フェライト、コバルト鉄酸化物、バリウムフェライト、炭素鋼、タングステン鋼、KS鋼、希土類コバルト磁石及びヘマタイト等の微粒子が挙げられる。
られる。
【0019】
(蛍光材料)
本発明においては、蛍光材料を含有する相が、透明材料からなる連続相2aと蛍光材料からなる分散相2bで構成されていることが好ましい。このとき当該透明材料は、シリカまたはポリスチレンを含むことが好ましい。
【0020】
・シリカ相
前記蛍光材料相として、蛍光シリカ相を形成する方法に特に制限はなく、任意の調製方法によって得られたるものであってもよい。例えば、Journal of Colloid and Interface Science,159,150−157(1993)に記載のゾル−ゲル法が挙げられる。本発明においては、国際公開2007/074722A1公報に記載された蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子の調製方法も参考になる。
【0021】
具体的に、蛍光材料として蛍光色素を用いる例について説明する。蛍光色素を含有するシリカ相は、蛍光色素とシランカップリング剤とを反応させ、共有結合、イオン結合その他の化学的に結合若しくは吸着させて得られた生成物に1種又は2種以上のシラン化合物を縮重合させシロキサン結合を形成させることにより調製することができる。これによりオルガノシロキサン成分とシロキサン成分とがシロキサン結合してなるシリカ相が得られる。一例としては、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル基、マレイミド基、イソシアナート基、イソチオシアナート基、アルデヒド基、パラニトロフェニル基、ジエトキシメチル基、エポキシ基、シアノ基等の活性基を有する又は付加した蛍光色素と、それら活性基と対応して反応する置換基(例えば、アミノ基、水酸基、チオール基)を有するシランカップリング剤とを反応させ、共有結合させて得られた生成物に1又は2種以上のシラン化合物を縮重合させシロキサン結合を形成させることにより調製することができる。
【0022】
前記シランカップリング剤としてAPS、シラン化合物としてテトラエトキシシラン(TEOS)を用いた場合を下記に例示する。
【0024】
前記活性基を有する又は付加した前記機能性化合物の具体例として、5−(及び−6)−カルボキシテトラメチルローダミン−NHSエステル(商品名、emp Biotech GmbH社製)、下記式でそれぞれ表されるDY550−NHSエステル又はDY630−NHSエステル(いずれも商品名、Dyomics GmbH社製)等のNHSエステル基を有する蛍光色素化合物を挙げることができる。
【0026】
前記置換基を有するシランカップリング剤の具体例として、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(APS)、3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル−トリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤を挙げることができる。中でも、APSが好ましい。
【0027】
前記縮重合させる前記シラン化合物としては特に制限はないが、TEOS、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPS)、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(APS)、3−チオシアナトプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、及び3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル−トリエトキシシランを挙げることができる。中でも、前記シリカ粒子内部のシロキサン成分を形成する観点からはTEOSが好ましく、前記シリカ粒子内部のオルガノシロキサン成分を形成する観点からはMPS又はAPSが好ましい。
【0028】
例えば、上記の材料を用い、前記磁性粒子をコアにするように反応系内に付与することで、球状もしくは球状に近い磁性材料/シリカの複合粒子を製造することができる。球状に近いシリカ粒子とは、例えば長軸と短軸の比が2以下の形状である。所望の平均粒径のシリカ粒子を得るためには、YM−10、YM−100(いずれも商品名、ミリポア社製)等の限外ろ過膜を用いて限外ろ過を行い、粒径が大きすぎたり小さすぎたりする粒子を除去するか、または適切な重力加速度で遠心分離を行い、上清または沈殿のみを回収することで可能である。
【0029】
蛍光複合粒子の平均粒径は、特に限定されないが、1nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましい。上限としては、1μm未満であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましい。
本発明において、前記平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)等の画像から無作為に選択した100個の標識試薬シリカ粒子の合計の投影面積から標識試薬シリカ粒子の占有面積を画像処理装置によって求め、この合計の占有面積を、選択した標識試薬シリカ粒子の個数(100個)で割った値に相当する円の直径の平均値(平均円相当直径)を求めたものである。
なお、前記平均粒径は、一次粒子が凝集してなる二次粒子を含む概念の後述する「動的光散乱法による粒度」とは異なり、一次粒子のみからなる粒子の平均粒径である。
【0030】
本明細書において、前記「動的光散乱法による粒度」とは、動的光散乱法により測定され、前記の平均粒径とは異なり、一次粒子だけでなく、一次粒子が凝集してなる二次粒子をも含めた概念であり、前記複合粒子の分散安定性を評価する指標となる。
動的光散乱法による粒度の測定装置としては、ゼータサイザーナノ(商品名;マルバーン社製)が挙げられる。この手法は、微粒子などの光散乱体による光散乱強度の時間変動を測定し、その自己相関関数から光散乱体のブラウン運動速度を計算し、その結果から光散乱体の粒度分布を導出するというものである。
【0031】
蛍光シリカ粒子は粒状物質として単分散であることが好ましく、粒度分布の変動係数いわゆるCV値は特に制限はないが、10%以下が好ましく、8%以下がより好ましい。
【0032】
・ラテックス相
本発明においては、その効果が顕著であることから、上記のシリカ微粒子を適用することが好ましいが、これに替え、あるいはこれに加え、複合粒子の蛍光材料相の連続相としてラテックス相を用いてもよい。ラテックス相をなす材料としては、ポリスチレン、スチレン−スルホン酸(塩)共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、アクリルニトリル−ブタジエン−スルホン酸共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体等からなる合成高分子粒子を挙げることができる。また、ラテックス相の色素の導入方法としては、特開2000−178309、特開平10−48215号、特開平8−269207号、特開平6−306108号などに記載の方法で行うことができる。なお、この種の粒子に対する蛍光物質(標識物質)の固定化は、適宜定法により行うことができる。例えば、特表2005−534907、特開2010−156642、特開2010−156640などを参照することができる。
【0033】
本発明においては、蛍光材料の相における蛍光材料の量は特に限定されないが、透明材料(連続相)の量を100質量部としたときに、0.05質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましい。上限としては、1.0質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下であることがより好ましい。
磁性材料の相と透明材料の相との比率は、磁性材料の相の作用により蛍光微粒子が検出のために所定位置に集まることが好ましい。一方、透明材料の相は、透明材料中に蛍光材料が特定の割合で存在し、これにより蛍光測定を効果的に行うことができることが好ましい。したがって、上記の透明材料の相と蛍光材料の相の比率、及び磁性材料の相と透明材料の相との比率は、上記の目的を満足するように設計することが好ましい。
また、磁性材料の相と蛍光材料の相の比率は、透明材料の相と蛍光材料の相の比率、及び磁性材料の相と透明材料の相の比率から求めることができる。
【0034】
(熱応答性ポリマー)
熱応答性ポリマーは、電荷を有する分子と結合しても構造変化しないことが好ましい。なお、温度応答性ポリマーとしては、臨界溶液温度(以下、CSTとも称する)を有するポリマーが好ましい。この臨界溶液温度(CST)とは、そこを境に当該ポリマーの特性や形態が変化する温度を意味する。熱応答性ポリマーは、下限臨界溶液温度(LCST)を示すものであっても、上限臨界溶液温度(UCST)を示すものであってもよい。熱応答性ポリマーが下限臨界溶液温度(LCST)を示す場合には、液温を上げると凝集し、下げると再分散するものが挙げられる。逆に、上限臨界溶液温度(UCST)を示す場合には、液温を下げると凝集し、上げると再分散するものが挙げられる。臨界溶液温度(CST)は10℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましい。上限としては、100℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましい。
【0035】
なお、下限臨界溶液温度及び上限臨界溶液温度は例えば以下のように決定することができる。まず、試料を吸光光度計のセルに入れ、1℃/分の速度で試料を昇温する。この間、550nmにおける透過率変化を記録する。ここで、ポリマーが透明に溶解しているときの透過率を100%、完全に凝集したときの透過率を0%としたとき、透過率が50%になるときの温度をLCSTとして求める。
【0036】
下限臨界溶液温度を有するポリマーとしては、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N、N−ジメチルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルモルホリン、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N、N−ジメチルメタクリルアミド、N−メタクリロイルピロリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルモルホリン等のN置換(メタ)アクリルアミド誘導体からなるポリマー;ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール部分酢化物、ポリビニルメチルエーテル、(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン)ブロックコポリマー、ポリオキシエチレンラウリルアミン等のポリオキシエチレンアルキルアミン誘導体;ポリオキシエチレンソルビタンラウレート等のポリオキシエチレンソルビタンエステル誘導体;(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)アクリレート、(ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)メタクリレート等の(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル)(メタ)アクリレート類;及び(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)アクリレート、(ポリオキシエチレンオレイルエーテル)メタクリレート等の(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)(メタ)アクリレート類等のポリオキシエチレン(メタ)アクリル酸エステル誘導体等が挙げられる。更に、これらのポリマー及びこれらの少なくとも2種のモノマーからなるコポリマーも利用できる。また、N−イソプロピルアクリルアミドとN−t−ブチルアクリルアミドのコポリマーも利用できる。(メタ)アクリルアミド誘導体を含むポリマーを使用する場合、このポリマーにその他の共重合可能なモノマーを、下限臨界溶液温度を有する範囲で共重合してもよい。
なかでも、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N、N−ジメチルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルモルホリン、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N、N−ジメチルメタクリルアミド、N−メタクリロイルピロリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルモルホリンからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーからなるポリマー又はN−イソプロピルアクリルアミドとN−t−ブチルアクリルアミドのコポリマーが好ましく利用できる。
【0037】
上限臨界溶液温度を有するポリマーとしては、アクロイルグリシンアミド、アクロイルニペコタミド、アクリロイルアスパラギンアミド及びアクリロイルグルタミンアミド等からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーからなるポリマーが利用できる。また、これらの少なくとも2種のモノマーからなるコポリマーであってもよい。これらのポリマーには、アクリルアミド、アセチルアクリルアミド、ビオチノールアクリレート、N−ビオチニル−N’−メタクロイルトリメチレンアミド、アクロイルザルコシンアミド、メタクリルザルコシンアミド、アクロイルメチルウラシル等、その他の共重合可能なモノマーを、上限臨界溶液温度を有する範囲で共重合してもよい。
【0038】
熱応答性ポリマーとしては、例えば、特許第4518767号明細書に記載されたものを好適に用いることができる。
【0039】
(複合粒子への熱応答性ポリマーの固定化)
熱応答性ポリマーの固定化は、多価アルコールまたは多価アルコール誘導体を介して行うことができる。この熱応答性ポリマーは、複合粒子表面に固定された多価アルコールまたは多価アルコール誘導体にグラフト重合されるか、またはそのポリマー末端または側鎖の官能基と、多価アルコールまたは多価アルコール誘導体の有する官能基との結合によって、固定しうる。その熱応答性ポリマー固定化複合粒子(熱応答性蛍光粒子)の平均粒径は、前記複合粒子より、熱応答性ポリマーの分だけ大きくなるが、その好ましい範囲はほぼ前記複合粒子として規定した範囲と同様である。
【0040】
多価アルコールは、構成単位に水酸基を少なくとも2個有することが好ましい。例えば、デキストラン、ポリビニルアルコール、マンニトール、ソルビトールが挙げられる。また、グリシジルメタクリレート重合体のようにエポキシ基を有し、開環後多価アルコール構造体を形成する化合物も使用できる。多価アルコール誘導体は、修飾により、カルボキシル、アミノ、エポキシ、チオール、メタクリルまたはアクリル等の反応性官能基や重合性基が導入された多価アルコールが使用できる。
【0041】
(連結材料)
連結材料は任意の材料であり、結合性物質の導入に必要な場合に適宜選定して用いることが好ましい。その種類は特に限定されないが、熱応答性ポリマーに組み込むことができ、結合性物質との結合性を有するものが好ましい。結合性物質に生体物質を用いることを考慮すると、例えば、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、一次抗体、二次抗体などが挙げられる。
【0042】
連結材料を熱応答性ポリマーに組み込む方法としては、国際公開第01/09141号パンフレットや特許第4518767号明細書の記載を参考にすることができる。具体的には、ビオチン等をメタクリル基やアクリル基等の重合性官能基と結合させて付加重合性モノマーとし、他のモノマーと共重合することにより行うことができる。別法としては、ポリマーの重合時にカルボン酸、アミノ基又はエポキシ基等の官能基を持つモノマーを他のモノマーと共重合させ、この官能基を介し、定法に従って抗体親和性物質(例えば、メロンゲル、プロテインA、プロテインG)をポリマーに結合させるような方法が利用できる。あるいは、ポリマーの重合時にカルボン酸、アミノ基又はエポキシ基等の官能基を有するモノマーを他のモノマーと共重合させ、これらの官能基に検出対象の抗原に対する抗体(結合性物質)を常法に従って直接結合させてもよい。このようにすることで、連結物質の使用を省略することができる。
【0043】
(粒子側結合性物質)
粒子側結合性物質は任意の材料であり、標的物質の種類に併せて必要に応じて適宜選定されればよい。前記複合粒子の表面に吸着又は結合させる生体分子(結合性物質)としては、例えば、抗原、抗体、DNA、RNA、糖、糖鎖、リガンド、受容体、タンパク質又はペプチドが挙げられる。ここで、リガンドとはタンパク質と特異的に結合する物質をいい、例えば、酵素に結合する基質、補酵素、調節因子、あるいはホルモン、神経伝達物質などをいい、低分子量の分子やイオンばかりでなく、高分子量の物質も含む。ここで用いる抗体は、いかなるタイプの免疫グロブリン分子であってもよく、Fab等の抗原結合部位を有する免疫グロブリン分子断片であってもよい。また、抗体は、モノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよいが、異なる抗原認識部位を有する2種類のモノクローナル抗体であることが好ましい。結合性物質を連結物質に結合させる手法は特に限定されず、この種の技術における定法により行うことができる。
【0044】
図4に示した例に即して好ましい材料を下表Aに示しておく。
【表A】
【0045】
[分散剤]
(分散剤基剤)
分散剤基剤は、例えば親水性の高分子化合物であり、ポリアニオン又はポリカチオンであることが好ましい。ポリアニオンとは複数のアニオン基を有する物質を意味し、ポリカチオンとは複数のカチオン基を有する物質を意味する。ポリアニオンの例として、DNA及びRNA等の核酸が挙げられる。これらの核酸は、核酸骨恪に沿って複数個のホスホジエステル基が存在することにより、ポリアニオンの性質を有する。また、ポリアニオンには、多数のカルボン酸官能基を含むポリペプチド(グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸からなるポリペプチド)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、及びアクリル酸やメタクリル酸を重合成分として含有するポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、及びヘパリン等の多糖等も含まれる。一方、ポリカチオンの例としては、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、ポリアルキルアミン、ポリエチレンイミンやポリプロピルエチレンイミン等が挙げられる。なお、ポリアニオン(カルボキシル基)やポリカチオン(アミノ基)の官能基数は、25個以上が好ましい。
【0046】
(分散剤側結合性物質)
分散剤側結合性物質は、標的物質の種類に併せて必要に応じて適宜選定されればよい。その種類は、前記分散剤基剤への導入を考慮して選定することが好ましい。具体的なものは、前記粒子側結合性物質として挙げたものと同義である。
【0047】
分散剤基剤と結合性物質の結合方法は、特に限定されないが、例えば、双方に、互いに親和性の物質(例えば、アビジン及びビオチン、グルタチオン及びグルタチオンSトランスフェラーゼ)を結合させ、これら物質を介して間接的に結合させる方法が挙げられる。両者を直接的に結合させる場合、官能基を介して結合させてもよく、例えば、官能基を用いる場合、ゴッシュらの方法(Ghosh et al:Bioconjugate Chem.、 1、 71−76、1990)のマレイミド−チオールカップリングに従って結合できる。具体的には、以下の2つの方法が挙げられる。その第1の方法では、まず、核酸の5’末端にメルカプト基(別名、スルフヒドリル基)を導入する一方、抗体に6−マレイミドヘキサノイックアシッドスクシンイミドエステル(例えば、「EMCS(商品名)」(同仁化学研究所社製))を反応させてマレイミド基を導入する。次に、これら2種の物質をメルカプト基及びマレイミド基を介して結合させる。第2の方法では、まず、第1の方法と同様にして核酸の5’末端にメルカプト基を導入し、このメルカプト基に更にホモ二官能性試薬であるN,N−1,2−フェニレンジマレイミドと反応させることによって核酸の5’末端にマレイミド基を導入する一方、抗体にメルカプト基を導入する。次に、これら2種の物質をメルカプト基及びマレイミド基を介して結合させる。
【0048】
この他に、核酸をタンパク質に導入する方法としては、例えば、Nucleic Acids Research 第15巻5275頁(1987年)及びNucleic Acids Research 第16巻3671頁(1988年)に記載された方法が知られている。これらの技術は核酸と抗体の結合に応用できる。
【0049】
[検出方法]
本発明の蛍光標識粒子を用いた好ましい検出方法においては、蛍光標識粒子20、分散剤30、および標的物質Sを含む検体を混合する。次いで、熱応答性ポリマーが凝集する条件下において、熱応答性ポリマーの分散の有無を判定する。このとき、励起光を検体に照射し、その蛍光発光により検出する。このときの蛍光標識粒子20、分散剤30、標的物質Sの挙動については、先に
図5に基づいて説明した。
【0050】
分散の有無(
図5の(1),(2))の判定は、本実施形態においては、励起光の照射とそれによる蛍光の検出によって行う。蛍光を目視または汎用のセンサーによって検出する観点からは、前記励起光源が、下記波長領域の励起光を発することが好ましい。前記励起光源としては、水銀ランプ、ハロゲンランプ及びキセノンランプが挙げられる。特にレーザダイオードまたは発光ダイオードから照射した励起光を用いることが好ましい。前記励起光源から特定の波長の光のみを透過するためのフィルタを備えていることがより好ましく、さらに、蛍光のみを目視等で検出する観点から、前記励起光を除去し蛍光のみを透過するフィルタを備えていることがさらに好ましい。さらに、蛍光を受光する光電子倍増管又はCCD検出器を備えることが特に好ましく、これにより目視では確認できない強度ないしは波長の蛍光も検出できる。また、その蛍光強度を測定できることから標的物質の定量もでき、高感度検出及び定量が可能となる。
【0051】
前記励起光の波長は、300nm以上であることが好ましく、400nm以上であることがより好ましく、500nm以上であることが特に好ましい。上限としては、700nm以下であることが好ましく、600nm以下であることがより好ましく、550nm以下であることが特に好ましい。この範囲の励起光とすることで、下記の範囲の蛍光を効率的に生成させることができ好ましい。
前記蛍光の波長は350nm以上であることが好ましく、450nm以上であることがより好ましく、530nm以上であることが特に好ましい。上限としては、800nm以下であることが好ましく、750nm以下であることがより好ましく、580nm以下であることが特に好ましい。この範囲とすることにより、目視での観察や汎用された検出器での検出がしやすくなり好ましい。
以下では、上記の優れた効果をもたらす蛍光標識粒子について、さらに詳細に説明する。なお、図示した形態は理解の便宜から各材料を模式化ないし誇張して示したものであり、これらの図に示された形態により本発明が限定して解釈されるものではない。
(標的物質)
標的物質としては、臨床診断に利用される物質が挙げられ、具体的には、体液、尿、喀痰、糞便中等に含まれるヒトイムノグロブリンG、ヒトイムノグロブリンM、ヒトイムノグロブリンA、ヒトイムノグロブリンE、ヒトアルブミン、ヒトフィブリノーゲン(フィブリン及びそれらの分解産物)、α−フェトプロテイン(AFP)、C反応性タンパク質(CRP)、ミオグロビン、ガン胎児性抗原、肝炎ウイルス抗原、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、ヒト胎盤性ラクトーゲン(HPL)、HIVウイルス抗原、アレルゲン、細菌毒素、細菌抗原、酵素、ホルモン(例えば、ヒト甲状腺刺激ホルモン(TSH)、インスリン等)、薬剤等が挙げられる。