(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記変調手段および前記復調手段は、DPSK(Differential Phase Shift Keying)に基づいて変調および復調を実行することを特徴とする請求項1に記載の送受信システム。
【背景技術】
【0002】
従来の送受信システムの構成を
図5に示す。
図5において、送信装置10は、結合器11、発振器12,14、逓倍器13、および、ミキサ15を有する。また、受信装置20は、ミキサ21、分周器22、および、発振器23,24を有している。
【0003】
ここで、送信装置10の発振器12は、周波数の安定が高く、また、位相雑音が少ない、「高安定低位相雑音特性」を有し、周波数f
Lo1の信号を発生して出力する。逓倍器13は発振器12から出力される信号を逓倍し、周波数f
plの信号を結合器11に出力する。発振器14は、発振器12から出力される信号Lo1の周波数f
Lo1をη倍し、周波数f
Lo2の信号としてミキサ15に供給する。結合器11は、周波数f
inを有する入力信号に対して、逓倍器13から供給される周波数f
plの信号をパイロット信号として結合(付加)してミキサ15に供給する。ミキサ15は、結合器11から出力されるパイロット信号が結合された入力信号を、発振器14から供給される周波数f
Lo2の信号によってアップコンバートし、周波数f
ifの信号として送信する。
【0004】
受信装置20では、ミキサ21が、送信装置10から送信された周波数f
ifの信号を入力し、発振器24から供給される周波数f
Lo4の信号によってダウンコンバートし、周波数f
plの信号を出力する。分周器22は、出力信号に含まれているパイロット信号を抽出し、α倍(0<α<=1)に分周することで周波数f
refの信号を出力する。発振器23は、分周器22から出力された信号の周波数をβ倍し、周波数f
Lo3の信号を出力する。発振器24は、発振器23から出力される信号Lo3の周波数f
Lo3をγ倍し、周波数f
Lo4の信号としてミキサ21に供給する。また分周期22には周波数f
plの信号を取り出す装置が含まれることもある。
信号の関係を以下に示す。
f
in=f
out
f
in<f
if
f
Lo1<f
Lo2
f
Lo3<f
Lo4
f
re<f
Lo3
【0005】
以上の構成により、送信装置10において、周波数f
ifのアップコンバート用信号を生成した信号と同じ信号から生成した周波数f
plの信号をパイロット信号として付加して送信し、受信装置20において、パイロット信号に基づいてダウンコンバート用信号を生成することができる。このため、送信装置10と受信装置20において同じ信号に基づいてアップコンバートおよびダウンコンバートを行うことから、元の信号を精度良く取り出すことが可能になる。
【0006】
一方、特許文献1には、送信側では、互いの周波数差が基準周波数に等しい周波数fp1s,fp2sのパイロット信号を主信号に付加して変調して送信し、受信側では、周波数fIF22の主信号と周波数fP1r’、fP2r’のパイロット信号とに分波したのち、周波数fP1r’のパイロット信号と周波数fP2rのパイロット信号との周波数差から周波数fREF2の基準周波数信号を再生するともに、この基準周波数信号をもとに周波数fP2r’のパイロット信号を修正した周波数fP2rのパイロット信号を生成して、この周波数fP2rのパイロット信号によって周波数fIF22の主信号からパイロット信号成分を完全に除去して、乱れのない主信号成分を得る技術が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、所定の位相値を入力されて利得を調節し累積して出力させるループフィルタ200と、ループフィルタ200の出力値に利得値を与えてこの値をフィードバックさせて加算した後出力させる電圧制御発振部300と、正弦波および余弦波を求めてこれをA/D変換器100の出力信号に乗算するディロテータ400と、相関度をシンボル単位で計算して出力する相関度計算手段600と、任意の周波数オフセット偏差範囲を設定して順次に発生された周波数オフセットに応じる位相信号を発生させて前記ループフィルタ200に出力し、これにより補正されたシンボルに対する前記相関度計算手段600の出力値に応じて周波数オフセットの近似値を最終的に決定し、最終決定された周波数推定値に応じて周波数オフセットを補正する周波数オフセット推定手段700とからなる技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、
図5に示す従来技術では、受信装置20のミキサ21は、入力信号を発振器24からの周波数f
Lo4の信号でダウンコンバートし、ダウンコンバートされた信号に含まれているパイロット信号を逓倍することで、周波数f
Lo4の信号を生成し、ミキサ21に供給している。このため、ミキサ21、分周器22、および、発振器23,24によって構成されるループをパイロット信号が巡るため、ループの位相特性および振幅特性によっては、装置の動作が不安定になる場合がある。また、分周器22は、入力信号は除外して、パイロット信号だけを抽出する構成とする必要があることから、回路構成が複雑になるという問題点もある。
【0010】
一方、特許文献1に開示された技術では、周波数差から基準周波数信号を生成することから、高い周波数になった場合に、動作が不安定になる場合がある。また、特許文献2に開示された技術では、入力信号または出力信号に含まれているパイロットシンボルを取り出すための復調器が必要になることから回路の構成が複雑になることや遅延時間がかかるという問題点がある。
【0011】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、簡単な回路構成で、動作の安定性が高い送受信システム、送信装置、および、受信装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、送信装置から受信装置に対してパイロット信号を含む信号を送信する送受信システムにおいて、前記送信装置は、隣接する区間の信号の特性変化によって情報を表す変調方式により、所定の周波数の信号を変調する変調手段と、前記変調手段によって変調された前記所定の周波数の信号をパイロット信号として入力信号に付加する付加手段と、前記パイロット信号が付加された前記入力信号の周波数を、前記所定の周波数の信号と同じ信号から生成された基準信号
の周波数に基づいてアップコンバートするアップコンバート手段と、前記アップコンバート手段によってアップコンバートされた信号を送信する送信手段と、を有し、前記受信装置は、前記送信手段によって送信された信号を受信する受信手段と、前記受信手段によって受信された信号の周波数を
、前記基準信号
の周波数に基づいてダウンコンバートするダウンコンバート手段と、前記ダウンコンバート手段によってダウンコンバートされた信号
を入力し、入力した信号の隣接する区間の信号の特性変化から前記パイロット信号
を復調し、前記所定の周波数の信号を得る復調手段と、
前記所定の周波数
に基づいて前記基準信号を生成して前記ダウンコンバート手段に供給する生成手段と、を有することを特徴とする。
このような構成によれば、簡単な回路構成で、動作の安定性が高い送受信システムを提供することができる。
【0013】
また、本発明は、前記変調手段および前記復調手段は、DPSK(Differential Phase Shift Keying)に基づいて変調および復調を実行することを特徴とする。
このような構成によれば、位相差に基づいて変調および復調を実行することができることから、伝送路特性によらずかつ簡単な回路構成で動作の安定性をさらにたかめることができる。
【0014】
また、本発明は、受信装置に対してパイロット信号を含む信号を送信する送信装置において、隣接する区間の信号の特性変化によって情報を表す変調方式により、所定の周波数の信号を変調する変調手段と、前記変調手段によって変調された前記所定の周波数の信号をパイロット信号として入力信号に付加する付加手段と、前記パイロット信号が付加された前記入力信号の周波数を、前記所定の周波数の信号と同じ信号から生成された基準信号
の周波数に基づいてアップコンバートするアップコンバート手段と、前記アップコンバート手段によってアップコンバートされた信号を送信する送信手段と、を有することを特徴とする。
このような構成によれば、簡単な回路構成で、動作の安定性が高い送信装置を提供することができる。
【0015】
また、本発明は、送信装置から送信されたパイロット信号を含む信号を受信する受信装置において、
隣接する区間の信号の特性変化によって情報を表す変調方式により所定の周波数の信号を変調し、得られた信号をパイロット信号として入力信号に付加し、前記パイロット信号が付加された前記入力信号の周波数を、前記所定の周波数の信号と同じ信号から生成された基準信号の周波数に基づいてアップコンバートして送信する前記送信装置から送信された信号を受信する受信手段と、前記受信手段によって受信された信号の周波数を前記基準信号の周波数に基づいてダウンコンバートするダウンコンバート手段と、前記ダウンコンバート手段によってダウンコンバートされた信号を入力し、入力した信号の隣接する区間の信号の特性変化から前記パイロット信号を復調し、前記所定の周波数の信号を得る復調手段と、前記所定の周波数に基づいて前記基準信号を生成して前記ダウンコンバート手段に供給する生成手段と、を有する。
このような構成によれば、簡単な回路構成で、動作の安定性が高い受信装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡単な回路構成で、動作の安定性が高い送受信システム、送信装置、および、受信装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
(A)本発明の実施形態の構成の説明
図1は、本発明の実施形態に係る送受信システムを構成する送信装置の構成例を示すブロック図であり、また、
図2は、本発明の実施形態に係る送受信システムを構成する受信装置の構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、送信装置10は、結合器11、発振器12,14、ミキサ15、分周器16、および、DPSK(Differential Phase Shift Keying)変調器18を有している。ここで、結合器11は、図示しない上位の装置から供給される周波数f
inの入力信号(主信号)に対して、DPSK変調器18から供給されるパイロット信号を結合(付加)して出力する。発振器12は、周波数f
Lo1の信号を発生して発振器14、分周器16、および、クロック発生器17に供給する。発振器14は、例えば、PLL(Phase Locked Loop)回路によって構成され、発振器12から供給された信号の周波数f
Lo1を、η倍し、周波数f
Lo2の信号としてミキサ15に出力する。ミキサ15は、発振器14から供給される周波数f
Lo2の信号によって、結合器11から供給される信号をアップコンバートし、周波数f
ifの信号として出力する。
【0020】
分周器16は、発振器12から供給される周波数f
Lo1の信号を分周して、周波数f
mplの被変調信号を生成してDPSK変調器18に出力する。クロック発生器17は、発振器12から供給される周波数f
Lo1の信号から、周波数f
clkのクロック信号を生成してDPSK変調器18に出力する。DPSK変調器18は、分周器16から入力される被変調信号を、クロック発生器17から供給されるクロック信号に基づいてDPSK変調してパイロット信号として結合器11に出力する。このパイロット信号は、結合器11によって主信号である入力信号に付加される。
【0021】
図2は、受信装置20の構成例を示す図である。この
図2に示すように、受信装置20は、ミキサ21、発振器23,24、同期回路30、および、LPF(Low Pass Filter)40を有している。また、同期回路30は、分配器31、遅延器32、位相シフタ33、ミキサ34,35、判定器36、LPF37,38、および、周波数変換器39を有している。
【0022】
ここで、ミキサ21は、送信装置10から送信された周波数f
ifの信号を、発振器24から供給される周波数f
Lo4の信号によってダウンコンバートすることで、周波数f
outの信号を生成して出力する。発振器23は、例えば、PLL回路等によって構成され、LPF40から供給される信号の周波数f
refをβ倍して周波数f
Lo3の信号として出力する。発振器24は、例えば、PLL回路等によって構成され、発振器23から供給される信号の周波数f
Lo3をγ倍して周波数f
Lo4の信号として出力する。同期回路30は、ミキサ21から出力されるダウンコンバートされた信号に含まれる周波数f
plのパイロット信号に対してDPSK復調を施して被変調信号を取り出し、LPF40に供給する。LPF40は、同期回路30から出力される被変調信号の高調波成分を減衰して出力する。
【0023】
同期回路30の分配器31は、ミキサ21から出力される信号を分配して遅延器32、ミキサ34、および、ミキサ35にそれぞれ供給する。遅延器32は、分配器31から供給された信号をDPSK変調信号の1シンボル区間(詳細は後述する)分だけ遅延してミキサ34と位相シフタ33に供給する。位相シフタ33は、遅延器32から出力される信号の位相を90°だけシフトして出力する。ミキサ34は、分配器31から供給される信号と、遅延器32によって1シンボル区間分遅延された信号を乗算して得られるI(In-Phase(同相))成分を出力する。ミキサ35は、分配器31から供給される信号と、遅延器32によって1シンボル区間分遅延されるとともに、位相シフタ33によって90°だけ位相がシフトされた信号とを乗算して得られるQ(Quadrature(直交位相))成分を出力する。LPF37は、ミキサ34から出力されるI成分に含まれる高周波成分を減衰して出力する。LPF38は、ミキサ35から出力されるQ成分に含まれる高周波成分を減衰して出力する。判定器36は、LPF37から出力されるI成分と、LPF38から出力されるQ成分とに基づいてビット判定を行い、判定結果に基づいて被変調信号を生成して出力する。周波数変換器39は、判定器36から出力された信号の周波数をf
refに変換して出力する。LPF40は、周波数変換器39から出力される信号に含まれている高調波成分を減衰して発振器23に供給する。
【0024】
(B)本発明の実施形態の動作の説明
つぎに、本発明の実施形態の動作について説明する。まず、送信装置10の動作について説明する。送信装置10の発振器12は、周波数f
Lo1の信号を生成し、発振器14、分周器16、および、クロック発生器17に供給する。分周器16は、発振器12から供給される周波数f
Lo1の信号を分周して周波数f
refの被変調信号を生成し、DPSK変調器18に供給する。クロック発生器17は、発振器12から供給される信号の周波数f
Lo1を逓倍することで、クロック信号を発生し、DPSK変調器18に供給する。発振器14は、発振器12から出力される信号の周波数f
Lo1をη倍して周波数f
Lo2の信号を生成してミキサ15に供給する。
【0025】
DPSK変調器18は、クロック発生器17から供給されるクロック信号に対して、分周器16から供給される被変調波に基づいてDPSK変調を施す。
図3は、DPSK変調器18の動作原理を説明するための模式図である。
図3(A)は、被変調波の一例を示し、横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示している。
図3(B)は、変調によって得られる信号の一例を示し、横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示している。なお、
図3(A)および
図3(B)において、横軸の数字はDPSKのシンボル区間を示している。
図3(A)の例では、被変調波は、“L”または“H”の状態を周期的に繰り返す信号とされている。具体的には、シンボル区間0〜2の間では“L”の状態を有し、シンボル区間2〜3の間では“H”の状態を有し、それ以降のシンボル区間でも“L”または“H”の状態を周期的に繰り返している。
図3(B)は、
図3(A)に示す被変調波が入力された場合において、DPSK変調器18から出力される変調波の一例を示している。
図3(A)のシンボル区間7〜8の間では被変調波は“L”の状態であるので、その場合には、DPSK変調器18から出力される変調波は、
図3(B)に示すように、その直前のシンボル区間6〜7の信号と同じ位相(位相差が0°)の信号が出力される。また、
図3(A)のシンボル区間2〜3の間では被変調波は“H”の状態であるので、その場合には、DPSK変調器18から出力される変調波は、
図3(B)に示すように、その直前のシンボル区間1〜2の信号と位相差が180°の信号が出力される。このように、DPSK変調器18は、被変調波が“L”の場合には直前のシンボル区間と同じ位相の信号を出力し、被変調波が“H”の場合には直前のシンボル区間と位相差が180°の信号を出力する。
【0026】
DPSK変調器18から出力される信号は、結合器11によって、入力信号に対して、パイロット信号として付加される。結合器11から出力される信号は、発振器14から出力される周波数f
Lo2の信号により、ミキサ15によってアップコンバートされ、周波数f
ifの信号として出力される。
【0027】
つぎに、
図2を参照して、受信装置20の動作を説明する。受信装置20では、送信装置10から送信された信号をミキサ21においてダウンコンバートし、周波数f
outの信号として出力する。より詳細には、受信装置20の動作の動作開始時には、発振器24は、予め決められた信号を生成し、ミキサ21に供給する。ミキサ21は、送信装置10から送信された周波数f
ifの信号を、発振器24から供給される周波数f
Lo4の信号によってダウンコンバートし、周波数f
outの信号を出力する。
【0028】
分配器31は、ミキサ21から出力される信号を入力して分配し、遅延器32、ミキサ34、および、ミキサ35にそれぞれ供給する。遅延器32は、分配器31から出力される信号を1シンボル区間分だけ遅延し、位相シフタ33およびミキサ34に供給する。位相シフタ33は、遅延器32から供給される信号を90°遅延して出力する。この結果、ミキサ34には、分配器31から出力される信号と、遅延器32から供給される1シンボル区間だけ遅延された信号が供給される。一方、ミキサ35には、分配器31から出力される信号と、遅延器32から供給されて1シンボル区間だけ遅延されるとともに位相シフタ33によってさらに90°遅延された信号が供給される。
【0029】
例えば、被変調波が“L”の場合において、分配器31から出力される信号がsinωtであるとすると、遅延器32から出力される1シンボル区間前の信号は位相が同じであるのでsinωtとなり、また、位相シフタ33から出力される信号は90°位相がシフトしているので、cosωtとなる。ここで、ωは角周波数を示し、tは時間を示す。この場合、ミキサ34は、分配器31から出力される信号sinωtと、遅延器32から出力される信号sinωtとを乗算するので、ミキサ34からは1/2cos2ωtの信号が出力される。一方、ミキサ35は、分配器31から出力される信号sinωtと、位相シフタ33から出力される信号cosωtとを乗算するので、ミキサ35からは1/2sin2ωtの信号が出力される。
【0030】
また、被変調波が“H”の場合において、分配器31から出力される信号がsinωtであるとすると、遅延器32から出力される1シンボル区間前の信号は位相差が180°であるので−sinωtとなり、また、位相シフタ33から出力される信号は90°位相が遅れているので−cosωtとなる。この場合、ミキサ34は、分配器31から出力される信号sinωtと、遅延器32から出力される信号−sinωtとを乗算するので、ミキサ34からは−1/2cos2ωtの信号が出力される。一方、ミキサ35は、分配器31から出力される信号sinωtと、位相シフタ33から出力される信号−cosωtとを乗算するので、ミキサ35からは−1/2sin2ωtの信号が出力される。
【0031】
LPF37は、ミキサ34から出力される信号に含まれる高調波成分を減衰して判定器36に出力する。また、LPF38は、ミキサ35から出力される信号に含まれる高調波成分を減衰して判定器36に出力する。判定器36は、LPF37およびLPF38から出力される信号が1/2cos2ωtおよび1/2sin2ωtである場合にはプラスの信号を出力し、LPF37およびLPF38から出力される信号が−1/2cos2ωtおよび−1/2sin2ωtである場合にはマイナスの信号を出力する。この結果、被変調波が“L”の場合(例えば、
図3(A)のシンボル区間7〜8の場合)には、LPF37およびLPF38から出力される信号は1/2cos2ωtおよび1/2sin2ωtであるので、
図4に示すように、プラスの信号が出力される。また、被変調波が“H”の場合(例えば、
図3(A)のシンボル区間2〜3の場合)には、LPF37およびLPF38から出力される信号は−1/2cos2ωtおよび−1/2sin2ωtであるので、
図4に示すように、マイナスの信号が出力される。
【0032】
周波数変換器39は、判定器36から出力される信号の周波数がf
refになるように周波数を調整した後、LPF40に供給する。LPF40は、判定器36から出力される信号に含まれている高調波成分を減衰した後、発振器23に供給する。
【0033】
発振器23は、LPF40から供給される信号の周波数f
refをβ倍することで周波数f
Lo3の信号を生成して出力する。発振器24は、発振器23から供給される信号の周波数f
Lo3をγ倍することで周波数f
Lo4の信号を生成して出力する。ここで、発振器24は、同期回路30からの信号の供給が開始されると、予め設定された周波数の信号の出力を停止するとともに、発振器23から供給される周波数f
Lo3の信号に基づいて周波数f
Lo4の信号を生成して出力する。ミキサ21は、送信装置10から受信した信号を、発振器24から供給される周波数f
Lo4の信号によってダウンコンバートし、周波数f
outの信号を生成して出力する。
【0034】
ところで、
図2に示す構成例では、同期回路30は、DPSK変調方式を用いていることから、1シンボル区間前の信号と、現在のシンボル区間の信号とに基づいて、被変調波を復調することができるため、伝送系の影響を受けることなく、被変調波を得ることができる。
図5に示す従来例では、ミキサ21から出力される信号をそのまま使用することから、フィードバックループにおける位相特性と振幅特性が不安定な状況とならないように、各種パラメータを設定および調整する必要がある。一方、本実施形態では、時間的に前後するシンボル区間における信号特性(
図3の例では位相特性)の差異から被変調波を復調し、この被変調波に基づいてダウンコンバートを行うようにしたので、フィードバックループにおける位相特性と振幅特性が、復調される被変調波の特性には直ちに影響を与えないことから、フィードバックループにおける位相特性と振幅特性の設計を柔軟に行うことができる。
【0035】
また、本実施形態の受信装置20では、隣接するシンボル区間の信号特性の差異に基づいて、被変調波信号を復調するようにしたので、復調の対象となるパイロット信号以外の信号(主信号)が含まれている場合でも、そのまま復調を行うことができる。このため、パイロット信号以外の信号を減衰するための回路構成が不要になることから、装置の構成を簡略化することができる。
【0036】
(E)変形実施形態の説明
以上の実施形態は一例であって、本発明が上述したような場合のみに限定されるものでないことはいうまでもない。例えば、以上の実施形態における各部位の周波数は一例であって、本発明が前述した周波数のみに限定されるものではなく、例示した周波数以外の周波数を選択することも可能である。
【0037】
また、以上の実施形態では、DBPSK(Differential Binary Phase Shift Keying)を例に挙げて説明を行ったが、本発明はこのような変調方式のみに限定されるものではなく、例えば、DQPSK(Differential Quaternary Phase Shift Keying)を用いるようにしてもよい。あるいは、以上の説明では、DPSK方式によって変調を行うようにしたが、隣接するシンボル区間で信号の特性が異なればよく、位相だけではなく、例えば、振幅や周波数が異なるようにしてもよい。