特許第6080439号(P6080439)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6080439
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】チューブ
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/12 20060101AFI20170206BHJP
【FI】
   F16L11/12 J
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-192770(P2012-192770)
(22)【出願日】2012年9月3日
(65)【公開番号】特開2014-47878(P2014-47878A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】砂川 武司
(72)【発明者】
【氏名】保本 浩
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−55219(JP,U)
【文献】 実開平6−50853(JP,U)
【文献】 特開平9−282947(JP,A)
【文献】 特開2006−234117(JP,A)
【文献】 特開2005−131164(JP,A)
【文献】 特開2010−132210(JP,A)
【文献】 特開2005−131814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置に配設されるチューブであって、
該チューブ上に表示され該装置の所定位置で引き回し経路の制御のために固定部材で固定されるべき位置を示す固定位置表示を備え
該固定位置表示は、該固定位置表示が固定されるべき位置を示すものであることを示す文字と、該チューブの長さ方向に直交する直線と、固定先情報と、を含むことを特徴とするチューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体が流れるチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
産業機械や製造装置には水やエアといった各種の流体を用いるものが多い。例えば、半導体デバイスの製造工程において、半導体ウェーハを研削して薄化するグラインダと呼ばれる研削装置や、薄化された半導体ウェーハをチップ状に分割するダイサーと呼ばれる切削装置においては、装置の所要箇所にエアや加工液、吸引力等を伝達する配管が張り巡らされることが知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0003】
より具体的には、切削装置は、少なくとも半導体ウェーハを吸引保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持された半導体ウェーハを切削する切削ブレードを含むエアベアリング式のスピンドルユニットと、切削された半導体ウェーハを洗浄する洗浄装置とを備えている。
【0004】
また、研削装置は、少なくとも半導体ウェーハを吸引保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持された半導体ウェーハを研削する研削ホイールを含むエアベアリング式のスピンドルユニットと、研削された半導体ウェーハを洗浄する洗浄装置とを備えている。
【0005】
更に、これらの切削装置や研削装置では、チャックテーブルに半導体ウェーハを吸引するための負圧を発生させるエア吸引源や、エアベアリングに高圧エアを供給するエア供給源、洗浄装置に洗浄液を供給する洗浄液供給源等を備えるとともに、流体の吸引源や供給源からそれぞれの作用箇所へ流体を導くための配管が設けられている。
【0006】
このような切削装置や研削装置における各種流体の配管としては、直径数mm〜数十mm程度の柔軟性を有するチューブが一般的に用いられており、適切な長さに切断されたチューブが装置内の適所に接続されている。
【0007】
そして、このような流体を流すためのチューブは、通常リールに巻かれた状態で蓄積されており、リールから引き出したチューブを目的の長さに切断して使用することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−321562号公報
【特許文献2】特開昭55−112761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した切削装置や研削装置などの各種加工装置には、液体、気体など各種の流体を個別に流動させるために、複数本のチューブが張り巡らされることとなる。そして、各チューブが絡まないようにする目的や、整頓の目的ために、複数のチューブを所定の結束位置で結束したり、例えば加工装置の骨組み等の所定位置に固定することが必要になる。
【0010】
ここで、所定の長さに切断したチューブについて加工装置内において引き回す、つまりはチューブを取り付けて張り巡らした状態にする際に、所定の結束位置での結束や、所定位置での固定が確実に行われる場合には、チューブの長さが不足する、或いは、余剰するといった不具合が生じることはない。
【0011】
しかしながら、作業者が例えば所定の結束位置から離れた位置で結束を行った場合には、チューブが巡る経路(チューブの軌跡)が変更することになるため、チューブの長さが不足する、或いは、余剰するといった不具合が生じる可能性がある。
【0012】
この不具合は、作業者の作業ばらつきによって発生の度合いもばらつくものであり、そもそも、リールから引き出して切断した際のチューブの長さについても作業者によって若干のばらつきが存在することが想定される。
【0013】
このことから、従来は、余裕を持ってチューブを所定の長さよりも長く引き出して切断し、長めのチューブを引き回した後、余剰部分をカットすることとしていた。
【0014】
ところが、余剰部分は廃棄することになるため非常に非経済的であり、また、廃棄のためのコスト発生や自然環境保護への配慮にも欠けることになる。特に、1台の加工装置に数十〜数百ものチューブを使用する加工装置にとっては、廃棄されるチューブも大量となり、大きな問題となる。
【0015】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、チューブの余剰分の発生をなくし、廃棄分を削減可能とする経済的なチューブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に記載の発明によると、装置に配設されるチューブであって、チューブ上に表示され装置の所定位置で引き回し経路の制御のために固定部材で固定されるべき位置を示す固定位置表示を備え、該固定位置表示は、該固定位置表示が固定されるべき位置を示すものであることを示す文字と、該チューブの長さ方向に直交する直線と、固定先情報と、を含むことを特徴とするチューブが提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、装置において固定すべき位置を示す固定位置表示が表示されているため、作業者によって過剰に引き回しが多くなり過剰にチューブを使用することが防止される。
【0018】
従って、余剰分として廃棄するチューブが削減可能となって経済的であり、また、廃棄のためのコスト発生を防ぐことや、自然環境保護への配慮も実現できることになる。
【0019】
さらに、固定位置表示が表示されているため、チューブを組み付ける作業者にとって作業し易い構成が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】切削装置の外観斜視図である。
図2】ダイシングテープを介して環状フレームで支持された半導体ウェーハの斜視図である。
図3】本発明のチューブの原理を説明する図である。
図4】固定位置表示の他の実施形態について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は配管に本発明のチューブを利用した切削装置2の外観斜視図を示している。切削装置2の前面側には、オペレータが加工条件等の装置に対する指示を入力するための操作手段4が設けられている。装置上部には、オペレータに対する案内画面や後述する撮像手段によって撮像された画像が表示されるCRT等の表示手段6が設けられている。
【0022】
図2に示すように、ダイシング対象の発光デバイスウェーハW(以下、単に「ウェーハW」とも称する)の表面においては、第1のストリート(分割予定ライン)S1と第2のストリートS2とが直交して形成されており、第1のストリートS1と第2のストリートS2とによって区画されてLED等の多数のデバイスDがウェーハW上に形成されている。
【0023】
ウェーハWは粘着テープであるダイシングテープTに貼着され、ダイシングテープTの外周縁部は環状フレームFに貼着されている。これにより、ウェーハWはダイシングテープTを介してフレームFに支持された状態となり、図1に示したウェーハカセット8中にウェーハが複数枚(例えば25枚)収容される。ウェーハカセット8は上下動可能なカセットエレベータ9上に載置される。
【0024】
ウェーハカセット8の後方には、ウェーハカセット8から切削前のウェーハWを搬出するとともに、切削後のウェーハをウェーハカセット8に搬入する搬出入手段10が配設されている。ウェーハカセット8と搬出入手段10との間には、搬出入対象のウェーハが一時的に載置される領域である仮置き領域12が設けられており、仮置き領域12には、ウェーハWを一定の位置に位置合わせする位置合わせ手段14が配設されている。
【0025】
仮置き領域12の近傍には、ウェーハWと一体となったフレームFを吸着して搬送する旋回アームを有する搬送手段16が配設されており、仮置き領域12に搬出されたウェーハWは、搬送手段16により吸着されてチャックテーブル18上に搬送され、このチャックテーブル18に吸引されるとともに、複数の固定手段(クランプ)19によりフレームFが固定されることでチャックテーブル18上に保持される。
【0026】
チャックテーブル18は、回転可能且つX軸方向に往復動可能に構成されており、チャックテーブル18のX軸方向の移動経路の上方には、ウェーハWの切削すべきストリートを検出するアライメント手段20が配設されている。
【0027】
アライメント手段20は、ウェーハWの表面を撮像する撮像手段22を備えており、撮像により取得した画像に基づき、パターンマッチング等の処理によって切削すべきストリートを検出することができる。撮像手段22によって取得された画像は、表示手段6に表示される。
【0028】
アライメント手段20の左側には、チャックテーブル18に保持されたウェーハWに対して切削加工を施す切削手段(切削ユニット)24が配設されている。切削手段24はアライメント手段20と一体的に構成されており、両者が連動してY軸方向及びZ軸方向に移動する。
【0029】
切削手段24は、回転可能なスピンドル26の先端に切削ブレード28が装着されて構成され、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能となっている。切削ブレード28は撮像手段22のX軸方向の延長線上に位置している。
【0030】
25は切削が終了したウェーハWを洗浄装置27まで搬送する搬送手段であり、洗浄装置27では、ウェーハWを洗浄するとともにエアノズルからエアを噴出させてウェーハWを乾燥する。
【0031】
次に図3を参照して、本発明のチューブの原理を説明する。チューブ11は、例えば、柔軟性を呈する樹脂から形成されており、チューブ11上にはチューブ11を固定する位置を表示するための固定位置表示13が印字されている。
【0032】
固定位置表示13は直線、破線、鎖線、数字、英文字、漢字、片仮名、平仮名、図形等で構成することができ、これらを組み合わせてなるものであってもよい。
【0033】
本実施形態の固定位置表示13は、チューブ11の長さ方向に直交する直線13aと、直線13aの近傍に配置される「固」の文字13bと、を有して構成される。
【0034】
固定位置表示13の直線13aを目安に、結束バンド52を用いて装置フレーム23に対しチューブ11を括り付けることによって、チューブ11の所定の箇所(固定位置表示13の箇所)が、所定の結束位置(装置フレーム23)において結束される。
【0035】
加えて、固定位置表示13の「固」の文字13bによって、作業者は、直線13aが固定位置を示すものであることを認識することができる。このように、文字13bについては観念を想起させるものが使用されることが好ましい。
【0036】
以上のように、装置内部に配設されるチューブ11であって、チューブ11上に表示され装置内部の所定位置において結束バンド52(固定部材)で固定されるべき位置を示す固定位置表示13を備えた構成とする。
【0037】
これにより、チューブ11を装置内部に引き回す作業を行う際に、作業者は、固定位置表示13を確認するとともに、当該固定位置表示13の箇所において所定の位置にチューブ11を固定(又は結束)することができる。
【0038】
そして、このように所定の位置において固定(又は結束)されたチューブ11については、予め設計された理想的な引き回しが実現されることになる。このため、引き回した際に長さが足りなくなるといった状況も発生しないこととなり、余分に長いチューブ11を準備する必要も無くなる。
【0039】
加えて、余剰分として廃棄するチューブが削減可能となって経済的であり、また、廃棄のためのコスト発生を防ぐことや、自然環境保護への配慮も実現される。
【0040】
なお、固定位置表示13の直線13aと文字13bの両方を同一の色で印字することで、印字コスト削減を図ることが可能となる。また、直線13aと文字13bの両方を印字するほか、いずれか一方を印字することとしてもよい。固定位置表示13は、インクジェット方式などによって印字することで表示されることとするほか、チューブ11に所定のレーザービームを照射することによって表示されることとしてもよい。
【0041】
また、固定位置表示13が印字されるべきチューブ11の長さ方向の位置は、例えば、実際の装置において各チューブを組み付けるとともに、実際に結束バンド52を用いて適正な状態となるように結束するとともに、その結束された位置を最適な固定位置としてマーキングし、その後、チューブを取り外してマーキングされた固定位置のチューブ端部からの距離を実測することによって取得することができる。
【0042】
このほか、例えば、コンピュータを用いたシミュレーションによって加工装置のモデルに対してチューブを張り巡らすとともに、最適な結束位置をシミュレーションすることによって、固定位置を取得することとしてもよい。
【0043】
図4は、他の実施形態として固定先情報13cを含む固定位置表示13Aを印字する例について示すものである。固定先情報13cは、固定位置表示13Aが配置される箇所において、チューブ11Aが固定されるべき対象を示すものである。
【0044】
具体的には、例えば、「A3」の表記では装置右置の垂直フレーム15の下側から3番目の位置に固定することを表し、「A4」の表記では装置右置の垂直フレーム15の下側から4番目の位置に固定することを表している。
【0045】
また、固定位置表示13Aでは、固定先情報13cに加え、複数の小円マークからなる小円マーク列13dを有している。この小円マーク列13dによって、固定先情報13cのみの場合と比較して、固定位置表示13Aの位置をより容易に見つけることが可能となる。
【0046】
なお、上記の実施形態において、チューブ11の色については、特に限定されるものではないが、固定位置表示を視認しやすくするために、固定位置表示の色とコントラストの強い色が採用されることが好ましい。
【0047】
また、固定位置表示を視認しやすくするため、固定位置表示が配置される箇所についてのみチューブ11の色が所定の色に設定される、つまり、例えば、固定位置表示の印字部分についてのみ固定位置表示の色とコントラストの強い色による領域を形成することとしてもよい。
【0048】
また、上述した実施形態では、本発明のチューブを切削装置の配管に適用した例について説明したが、本発明のチューブの使用はこれに限定されるものではなく、例えば研削装置、研磨装置等の他の加工装置の配管にも同様に適用である。
【符号の説明】
【0049】
11 チューブ
13 固定位置表示
13a 直線
13b 文字
52 結束バンド
図1
図2
図3
図4