【実施例】
【0028】
本発明を以下の実施例、比較例および試験例により具体的に説明する。
(使用材料)
以下の表1に示す各材料を用いて、コンクリート調製した。
なお、表1中に、各種ポルトランドセメント、高炉スラグ、フライアッシュ、膨張材、骨材および混和剤の品質及び物性も示す。
表1中、骨材の粗粒率は、骨材のふるい分け試験により、公称寸法が0.15、0.3、0.6、1.2、2.5、5、10、20、40および80mmの各ふるいに留まる累計残留百分率(%)の総和を求め、これを100で除した値を示す。
また、実績率とは、JIS A 0203「コンクリート用語」に規定されているように、容器に満たした骨材の絶対容積の、その容器の容積に対する百分率を示す。
【0029】
【表1】
【0030】
(コンクリートの調製1)
上記表1に示す各材料を用い、表2に示す配合割合で、各材料を混合して、コンクリートを調製した。
なお、水/結合材(W/B:水に対する、ポルトランドセメント、高炉スラグ及びフライアッシュの質量比)は30質量%とし、単位容量あたりの粗骨材かさ容積を0.358m
3/m
3とし、高性能AE減水剤を結合材量に対して1.2質量%と一定になるように配合し、得られる各コンクリートの目標スランプ値が21±1.5cm(JIS A 1101)であって、目標空気量が4.1±1.5容量%(JIS A 1128)となるように、単位水量及び高性能AE減水剤の配合量を変化させた。
【0031】
【表2】
【0032】
(コンクリートの調製2)
上記表1に示す各材料を用い、表3に示す配合割合で、各材料を混合して、コンクリートを調製した。
なお、水/結合材(W/B:水に対する、ポルトランドセメント、高炉スラグ及びフライアッシュの質量比)は40質量%とし、得られる各コンクリートの目標スランプ値12±2.5cm(JIS A 1101)、空気量4.5±1.5容量%(JIS A 1128)となるように各材料の配合量を決定した。
なお、膨張材は結合材に含まれない。
【0033】
表3に示すように、エトリンガイト−石灰複合系膨張材の量を、得られるコンクリート単位体積あたり10kg/m
3、15kg/m
3、20kg/m
3と変化させて得られた各コンクリートと、該膨張材を含有しないコンクリートと、該膨張材を含有しないポルトランドセメント単体から成るコンクリートを調製した。
【0034】
【表3】
【0035】
(試験例)
(試験例1)
上記「コンクリートの調製2」で調製した各コンクリートを温度20±2℃で打設後、1日静置して材齢1日で脱型し、その後温度20±2℃の水中養生を行なった。
前記水中養生を6日間実施し(材齢7日)、その後91日間、温度20±2℃、相対湿度60±5%の条件で乾燥させて、各コンクリート供試体を製造した。
【0036】
製造した各コンクリート供試体に一軸拘束試験(JIS A 6202 附属書2のB法)を実施した。
膨張材を含む(単位体積あたり10kg/m
3、15kg/m
3、20kg/m
3)各コンクリート供試体の乾燥期間91日(材齢98日)の乾燥収縮ひずみ値と、膨張材を含まないポルトランドセメント単体から成るコンクリート供試体の乾燥期間91日(材齢98日)の乾燥収縮ひずみ値との結果を
図1に示す。
図1の乾燥収縮ひずみ値の差は、各2試験体の平均値で表示した。
【0037】
図1より、膨張材を含む(単位体積あたり10kg/m
3、15kg/m
3、20kg/m
3)各コンクリート供試体の乾燥期間91日(材齢98日)の乾燥収縮ひずみ値と、膨張材を含まないポルトランドセメント単体から成るコンクリート供試体の乾燥期間91日(材齢98日)の乾燥収縮ひずみ値との差が150±50×10
−6となる、コンクリート供試体の各種ポルトランドセメントのC
3S量に対する単位膨張材量との関係を
図2に示す。
【0038】
図2より、高い乾燥収縮ひずみ抵抗性を有する最適な単位膨張材量は、低熱ポルトランドセメントは12.5kg/m
3であり、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメントは15kg/m
3であることがわかる。
【0039】
(試験例2)ひび割れ抵抗性試験A
上記「コンクリートの調製1」で調製した各コンクリートを用いて、各コンクリート試験体を製造して、ひび割れ抵抗性試験Aを実施した。
ひび割れ抵抗性試験Aは、
図3に示す装置を用いて実施した。
【0040】
具体的には、ネジ切りしたΦ32mmの鋼材の中央300mmの区間に、該鋼材の周囲にテフロン(登録商標)シートを巻きつけてコンクリートが付着することを防止し、該鋼材の両面(対抗する両側)、具体的には該区間のねじ山をやすり等で平滑にし、その直径方向の2箇所にひずみゲージを設置し、そのひずみゲージがコンクリート試験体の上下面になるように位置を固定し、前記鋼材の周囲に、「コンクリートの調製1」で製造した各コンクリートを温度20±2℃で打設した。
その後材齢7日まで封緘養生を行い、脱型して、100×100×1100mmの各コンクリート試験体を得た。
【0041】
ひび割れ抵抗性試験は、当該各コンクリート試験体を、ネジ切り加工したφ32mmの鋼材によって拘束して行った。
具体的には設置貼付したひずみゲージによって、鋼材のひずみを測定した。
前記各コンクリート試験体をアルミ二ウム製のテープにて、該試験体の側面を2面、具体的には上下面及び端面以外の側面(100×100mmの面)を覆った。
その後、温度20±2℃、相対湿度60±5%の環境下で静置し、各コンクリート試験体にひび割れが発生するまで、鋼材のひずみを測定した。
【0042】
ひび割れ抵抗性試験に用いたコンクリート試験体の、普通ポルトランドセメント、高炉スラグ、フライアッシュの混合質量割合とともに、ひび割れ発生材齢、鋼材拘束ひずみ(μ)及びコンクリート供試体の収縮拘束応力(N/mm
2)等のひび割れ抵抗性試験結果を表4及び
図4〜7に示す。なお、表4及び
図4〜7のひび割れ抵抗性試験結果は、各2試験体の平均値で表示した。
【0043】
【表4】
【0044】
また、表4及び
図4〜7の結果を、普通ポルトランドセメント、高炉スラグ、フライアッシュの結合材組合せで三角座標に表したものを
図8に示す。
上記表4及び
図4〜8より、ひび割れ発生材齢を乾燥収縮ひび割れ抵抗性の指標とすると、普通ポルトランドセメントとほぼ同等以上のひび割れ抵抗性となるのは、普通ポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末、フライアッシュの混質量割合がそれぞれ60質量%、20質量%、20質量%の場合、または70質量%、30質量%、0質量%であることが分かる。
【0045】
(試験例3)強度試験
試験例1のひび割れ抵抗性試験の結果より、CO
2を削減し、省資源を進めるという観点から、高いひび割れ抵抗性を有する3成分系結合材として、上記「コンクリートの調製2」により製造した各コンクリートを用いて、温度20±2℃で打設後、1日静置して材齢1日で脱型し、その後温度20±2℃で水中養生を行なって、材齢3日、7日、28日、56日及び91日の各コンクリート供試体を製造した。
各コンクリート供試体を用いて、強度試験を行った。但し、ポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末、フライアッシュの質量混合割合がそれぞれ60%、20%、20%の場合を対象に、圧縮強度(JIA A 1108)及び割裂引張強度試験(JIS A 1103)を実施した。
その結果を、
図9及び
図10に示す。
【0046】
図9及び
図10より、ポルトランドセメント、高炉スラグ、フライアッシュの低炭素型3成分混合系結合材にエトリンガイト−石灰複合系膨張材を加えた、表3に記載の各種コンクリートの圧縮強度および割裂引張強度は、ポルトランドセメントとして、早強ポルトランドセメントまたは普通ポルトランドセメントを用いた場合には、材齢28日までは、それぞれの普通ポルトランドセメントや早強ポルトランドセメント単体を用いた場合と比較して若干小さくなるが、長期材齢においては、強度が大きくなることがわかる。
【0047】
また、中庸熱ポルトランドセメントまたは低熱ポルトランドセメントを用いた場合には、圧縮強度および割裂引張強度は、材齢91日においても、中庸熱ポルトランドセメントや低熱ポルトランドセメント単体を用いた場合と比較して明らかに小さくなってしまうことがわかる。
【0048】
各種ポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末、フライアッシュの低炭素型3成分混合系結合材にエトリンガイト−石灰複合系膨張材を配合したコンクリートの圧縮強度および割裂引張強度は、当該膨張材を配合していない低炭素型3成分混合系結合材のコンクリートとほぼ同等であった。
【0049】
(試験例4)ひび割れ抵抗性試験B
上記「試験例3」で製造した各コンクリート供試体を用いて、乾燥収縮ひび割れ抵抗性試験Bを実施した。
なお、ひび割れ抵抗性試験Bは、上記ひび割れ抵抗性試験Aと同様にして、
図3に示す装置を用いて、同様に行なった。
その結果を
図11に示す。なお、
図11の結果は各2試験体の平均値で表示した。
【0050】
図11の結果より、ポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末、フライアッシュの低炭素型3成分混合系結合材にエトリンガイト−石灰複合系膨張材を配合した表3に記載のコンクリート(20−20−15又は12.5)は、ポルトランドセメント単体やポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末、フライアッシュの混合系結合材でありエトリンガイト−石灰複合系膨張材を含まないコンクリートと比較して、ひび割れ発生日数が顕著に長くなることがわかる。
【0051】
また、ポルトランドの種類に注目すると、エトリンガイト−石灰複合系膨張材が配合されているコンクリート供試体においては、普通ポルトランドセメント≒中庸熱ポルトランドセメント<早強ポルトランドセメント<低熱ポルトランドセメントの順にひび割れ抵抗性が高くなっている。
【0052】
さらに、ポルトランドセメント単体(0−0−0)と、膨張材を含まず高炉スラグとフライアッシュとをそれぞれ20質量%含む各コンクリート供試体とを比較すると、低熱ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメントではそのひび割れ抵抗性は、同種のポルトランドセメント単体のそれより小さくなる。一方、早強ポルトランドセメントではそのひび割れ抵抗性は、同種のポルトランドセメント単体のそれより大きくなる。よって、膨張材を含まず高炉スラグとフライアッシュとをそれぞれ20質量%含む早強ポルトランドセメントを低炭素型3成分混合系結合材に用いることは、そのひび割れ抵抗性を高める上で有利と言える。
【0053】
上記
図9〜11の結果より、長期高強度発現性および高い乾燥収縮ひび割れ抵抗性の双方を備えるコンクリートであって、CO
2の排出を抑制して環境に配慮したコンクリートは、ポルトランドセメントとして早強ポルトランドセメントを用い、上記特定の配合割合の早強ポルトランドセメント、高炉スラグ及びフライアッシュを含有する低炭素型3成分混合系結合材が有効であり、特にエトリンガイト−石灰複合系膨張材を上記特定の配合量で混合した本発明のコンクリートが有効であることがわかる。