(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ドリフト構造(120)とともに第1のpn接合(pn1)を形成するボディ区域(115)を含むトランジスタセル(TC)であって、第1の制御信号(C1)が第1の閾値(Vthx)を越えると前記ドリフト構造(120)と第1の負荷電極(310)間の接続部の一部を形成する反転チャネル(115x)を前記ボディ区域(115)内に形成するように構成された、トランジスタセル(TC)と、
その後縁が前記第1の制御信号(C1)の後縁に対して遅延される第2の制御信号(C2)を生成するように構成された遅延ユニット(400)と、
前記第2の制御信号(C2)が前記第1の閾値(Vthx)より低い第2の閾値(Vthy)を下回ると前記ドリフト構造(120)内に反転層(120y)を形成するように構成されたエンハンスメントセル(EC)であって、前記反転層(120y)は少数電荷キャリアエミッタとして効果的である、エンハンスメントセル(EC)とを含む半導体装置。
前記エンハンスメントセル(EC)は、前記ドリフト構造(120)とともに別の第1のpn接合(pn1)を形成する電荷キャリア輸送区域(117)を含む、請求項1に記載の半導体装置。
前記エンハンスメントセル(EC)は、前記第2の制御信号(C2)が前記第1の閾値(Vthx)を越えると前記第1の負荷電極(310)から電気的に切断される二次反転層(117y)を前記電荷キャリア輸送区域(117)内に形成するように構成される、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の半導体装置。
前記エンハンスメントセル(EC)は、前記電荷キャリア輸送区域(117)とユニポーラホモ接合を形成するとともに前記二次反転層(117y)を遮断する高ドープ第2の遮断区域(113)を含む、請求項5に記載の半導体装置。
前記エンハンスメントセル(EC)は、前記電荷キャリア輸送区域(117)とpn接合を形成するとともに前記第1の負荷電極(310)と電気的に接続されるいかなるドープ区域も欠く、請求項5または6に記載の半導体装置。
前記第1のゲート構造(150)は、第1のゲート電極(155)と、前記ボディ区域(115)と前記ドリフト構造(120)から前記第1のゲート電極(155)を分離する第1のゲート誘電体(151)とを含み、
前記第1のゲート誘電体(151)は幅が増加された嘴部分(151c)を含み、
前記嘴部分(151c)は、前記第1の制御信号(C1)の低レベル(VL)時に前記ボディ区域(115)から前記別の反転層(120x)の少なくとも一部を切断する、請求項8または9に記載の半導体装置。
前記エンハンスメント層(EC)の前記反転層(120y)は、前記第2の制御信号(C2)が前記第2の閾値(Vth2)を下回ると、前記トランジスタセル(TC)の前記ボディ区域(115)に直接隣接する、請求項1に記載の半導体装置。
前記ドリフト構造(120)は、低ドープドリフト区域(121)と、前記ドリフト区域(121)と前記ボディ区域(125)間に挟まれた高ドープ障壁区域(125)とを含む、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の半導体装置。
前記第1の経路(410)は第1の内部抵抗(411)を含み、前記第2の経路(420)は前記第1の内部抵抗(411)より大きな第2の内部抵抗(422)を含む、請求項19に記載の半導体装置。
2つのスイッチング素子(711、712)を含むハーフブリッジ回路(710)を含む電力モジュールであって、前記スイッチング素子(711、712)の少なくとも1つは、
ドリフト構造(120)とともに第1のpn接合(pn1)を形成するボディ区域(115)を含むトランジスタセル(TC)であって、第1の制御信号(C1)が第1の閾値(Vthx)を越えると前記ドリフト構造(120)と第1の負荷電極(310)間の接続部の一部を形成する反転チャネル(115x)を前記ボディ区域(115)内に形成するように構成された、トランジスタセル(TC)と、
その後縁が前記第1の制御信号(C1)の後縁に対して遅延される第2の制御信号(C2)を生成するように構成された遅延ユニット(400)と、
前記第2の制御信号(C2)が前記第1の閾値(Vthx)より低い第2の閾値(Vthy)を下回ると前記ドリフト構造(120)内に反転層(120y)を形成するように構成されたエンハンスメントセル(EC)であって、前記反転層(120y)は少数電荷キャリアエミッタとして効果的である、エンハンスメントセル(EC)とを含む電力モジュール。
第2の制御信号(C2)が第2の閾値(Vthy)を下回ると、ドリフト構造(120)内に反転層(120y)を形成するように構成されたエンハンスメントセル(EC)であって、前記反転層(120y)は少数電荷キャリア導体として効果的である、エンハンスメントセル(EC)と、
その後縁が前記第2の制御信号(C2)の後縁に対して遅延される第1の制御信号(C1)を生成するように構成された遅延ユニット(400)と、
前記ドリフト構造(120)とともに第1のpn接合(pn1)を形成するボディ区域(115)を含むトランジスタセル(TC)であって、前記第1の制御信号(C1)が前記第2の閾値(Vthy)より高い第1の閾値(Vthx)を越えると前記ドリフト構造(120)と第1の負荷電極(310)間の接続部の一部を形成する反転チャネル(115x)を前記ボディ区域(115)内に形成するように構成された、トランジスタセル(TC)とを含む半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な説明では、実施形態の一部をなす添付図面であって本発明が実施され得る特定の実施態様を例示として示す添付図面を参照する。本発明の趣旨と範囲から逸脱することなく他の実施形態を利用し得ることと構造的または論理的変更をなし得ることとを理解すべきである。例えば、一実施形態について例示または説明される特徴は、さらに別の実施形態をもたらすために他の実施形態に対しまたはそれに関連して使用され得る。本発明はこのような修正および変形を含むように意図されている。これらの例は特定の言語を使用して説明されるが、特定の言語は添付の特許請求範囲を制限するものと解釈されてはでない。図面はスケーリングされていなく、例示目的のためだけである。明確のために、同じまたは同様な要素は、別途記載のない限り、様々な図面内の対応する参照符号により示された。
【0011】
用語「有する」、「含む」、「備える」、「なる」などは、開放型であり、述べられた構造、要素または特徴の存在を示すが、追加要素または特徴を排除するものではない。単数形式の冠詞は文脈が明確に指示しない限り単数の物だけでなく複数の物を含むように意図されている。
【0012】
用語「電気的に接続された」は、電気的に接続された要素間の恒久的低オーム性接続、例えば、当該要素間の直接接触、または金属および/または高ドープ半導体を介した低オーム性接続を指す。用語「電気的に接続された」は、信号送信に適合化された1つまたは複数の介在要素が電気的に接続された素子(例えば、第1の状態において低オーム性接続を与え第2の状態において高オーム性電気的減結合を一時的に与えるように制御可能な素子)間に設けられ得るということを含む。
【0013】
添付図面は、ドーピングタイプ「n」または「p」の隣に「−」または「+」を示すことにより相対的ドーピング濃度を示す。例えば、「n
−」は「n」ドーピング領域のドーピング濃度より低いドーピング濃度を意味し、一方「n
+」ドーピング領域は「n」ドーピング領域より高いドーピング濃度を有する。同じ相対的ドーピング濃度のドーピング領域は必ずしも同じ絶対的ドーピング濃度を有しない。例えば、2つの異なる「n」ドーピング領域が同じまたは異なる絶対的ドーピング濃度を有し得る。
【0014】
図1Aは、例えばMGD(MOSゲート制御ダイオード:MOS gated diode)、RC−IGBT、またはMGDまたはRC−IGBT機能に加えて電子回路をさらに含む装置であり得る半導体装置500の一部を示す。
【0015】
半導体装置500は、その半導体部分が半導体ボディ100内に形成されるトランジスタセルTCとエンハンスメントセルECとを含む。半導体ボディ100は、単結晶シリコン(Si)、炭化珪素(SiC)、ゲルマニウム(Ge)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、窒化ガリウム(GaN)、砒化ガリウム(GaAs)または任意の他のA
IIIB
V半導体などの結晶質半導体材料から形成される。
【0016】
トランジスタセルTCはFET(電界効果トランジスタ:field effect transistor)セルであり、導電性の第1のゲート電極155と、半導体ボディ100から第1のゲート電極155を分離する第1のゲート誘電体151とを有する第1のゲート構造150を含む。各トランジスタセルTCはさらにボディ区域115とソース区域110を含み、ボディ区域115は、ドリフト構造120と第1のpn接合pn1を形成しソース区域110と第2のpn接合pn2を形成する。ボディ区域115とソース区域110は、第1の負荷端子L1を形成してもよいしそれへ電気的に接続または結合されてもよい第1の負荷電極310へ電気的に接続される。ドリフト構造120は、第2の負荷端子L2を形成してもよいしそれへ電気的に接続または結合され得る第2の負荷電極320へ電気的に接続または結合される。
【0017】
エンハンスメントセルECはまたFETセルであり、各エンハンスメントセルECは、第2のゲート電極165を有する第2のゲート構造160と、半導体ボディ100から第2のゲート電極165を電気的に分離する第2のゲート誘電体161とを含む。第2のゲート構造160はドリフト構造120に直接隣接する。
【0018】
第1および第2のゲート構造150、160は、半導体ボディ100の外形の外側に形成されるプレーナゲート構造であり得る。図示の実施形態によると、第1および第2のゲート構造150、160は前面側から半導体ボディ100内に延在するトレンチ構造である。
【0019】
第1および第2のゲート構造150、160は異なる、同様の、または同一の寸法を有し得る。一実施形態によると、第2のゲート構造160とドリフト構造120との界面領域は、第1のゲート構造150とドリフト構造120との界面領域より著しくより大きい(例えば、少なくとも2倍大きい)かもしれない。
【0020】
第1および第2のゲート電極155、165は、多結晶シリコンなどの導電材料からなる均質構造であってもよいし、1つまたは複数の金属含有層を含む層構造を有してもよい。一実施形態によると、第1および第2のゲート電極155、165は同じ材料で設けられ得る。
【0021】
第1および第2のゲート誘電体151、161は、半導体酸化物などの1つの誘電体材料からなる均質構造であってもよいし、誘電体材料の2つ以上の層を含む層構造を有してもよい。誘電体材料は、一例として熱成長半導体酸化物例えば熱成長酸化珪素、蒸着半導体酸化物例えば蒸着酸化珪素、窒化珪素、酸窒化珪素を含み得る。一実施形態によると、第1および第2のゲート誘電体151、161は同じ材料で設けられ得る。
【0022】
ボディ区域115は、ドリフト構造120およびソース区域110の第1の導電型の反対の第2の導電型を有するドープ領域である。ボディ区域115はドリフト構造120からソース区域110を分離する。
【0023】
トランジスタセルTCとエンハンスメントセルECに加えて、半導体装置500はさらに、例えばトランジスタセルTCとエンハンスメントセルECの制御と異なるやり方で制御されるセル、または半導体装置500の負荷電流にも不飽和にも寄与しないアイドルセルを含み得る。
【0024】
以下の説明は、第1の導電型がn型であり第2の導電型がp型であるnチャネルFETセルを有する実施形態に言及する。同様な考察は、第1の導電型がp型であり第2の導電型がn型であるpチャネルFETセルに基づく実施形態に当てはまる。
【0025】
図1Aは、第1のゲート電極155の電位を変化させる第1の制御信号C1によるトランジスタセルTCの制御に関わる。第1の制御信号C1が第1の閾値を越えると、トランジスタセルTCは第1のゲート構造150に沿って反転チャネル115xを形成する。反転チャネル115xはドリフト構造120からそれぞれのソース区域110へボディ区域115を貫通する、ドリフト構造120は単極電荷キャリア流れを通じて第1の負荷電極310へ接続される。反転チャネル315xは第1の制御信号C1が第1の閾値を下回るとターンオフされる。
【0026】
図1Bは、第2のゲート電極165の電位を変化させる第2の制御信号C2によるエンハンスメントセルECの制御に関わる。第2の制御信号C2が第1の閾値未満の第2の閾値を下回ると、エンハンスメントセルECはドリフト構造120内の第2のゲート構造160に沿って反転層120yを形成する。
【0027】
反転層120yは、ボディ区域115の導電型のドープ領域を介し第1の負荷電極310へ電気的に接続される。ドープ領域は、以下に詳細に説明するようにトランジスタセルTCのボディ区域115または追加電荷キャリアキャリア輸送区域であり得る。反転層120yは、第1のpn接合pn1のバイポーラ導通モードにおいてボディ区域115の全電荷キャリアエミッタ効率に寄与する。反転層120yは第2の制御信号C2が第2の閾値を越えるとターンオフされる。
【0028】
第1の制御信号C1は、その前縁および後縁が第1の制御信号C1の最小スイッチングサイクルと比較して急峻なほぼ矩形信号であり得る。遅延ユニット400は第1の制御信号C1から第2の制御信号C2を導出してもよいし、ゲート信号から第1および第2の制御信号C1、C2の両方を導出してもよい。遅延ユニット400は、第1の制御信号C1の当該後縁に対して第2の制御信号C2の後縁を遅延させる。
【0029】
図1Cのタイムチャートは、第1のpn接合pn1に基づくダイオード機能を有する
図1Aおよび
図1Bの半導体装置500の不飽和サイクルを示す。
【0030】
t=t0で、第1のpn接合pn1は、第1および第2の負荷端子L1、L2間の正電圧VL1L2で順方向バイアスされる。第2の閾値電圧Vthy未満の第1の制御信号C1の低レベルVLはトランジスタセルTCをターンオフする。第2の閾値電圧Vthy未満の第2の制御信号C2の低レベルVLはエンハンスメントセルEC内の反転層120yをターンオンする。半導体装置500は、両タイプの電荷キャリアがドリフト構造120内の電荷キャリアプラズマに寄与し反転層120yがホールエミッタ効率および電荷キャリアプラズマ密度を増加する強化型バイポーラ導通モードにある。強化型バイポーラ導通モードでは、ダイオード両端の順方向電圧VF1は低く、半導体ボディ100の蓄積電荷Qssは高い。
【0031】
t=t1で、第1の制御信号C1は、反転チャネル115xがトランジスタセルTCのボディ区域115内に形成される第1の閾値電圧Vthxより高い高レベルVHへ変化する。反転チャネル115xは、トランジスタセルTC内の第1のpn接合pn1をバイパスし、ドリフト構造120内への電荷キャリアの注入を禁じる。その代りに、反転チャネル115xは、ドリフト構造120と第1の負荷端子L1間の単極電荷キャリア流れを助長する。
【0032】
蓄積電荷Qssだけでなくドリフト構造120内の電荷キャリアプラズマ密度も著しく低下する不飽和期間が始まる。はじめに、反転チャネル115xはさらに、第1および第2の負荷端子L1、L2間の電圧VL1L2をある程度低減し得る。次に、低減された電荷キャリアプラズマ密度は、VL1L2が順方向電圧VF1より高い値まで増加する程度までドリフト構造120内の導電率を低下する。
【0033】
第2の制御信号C2は、エンハンスメントセルECがドリフト構造120内の反転層120yをターンオフするように第1の制御信号C1に直ちに追随し得る。エンハンスメントセルECがボディ区域115の導電型のドープ区域を介し二次反転層を形成する限り、このような二次反転層は、第1の負荷端子L1への接続が無いままであり、半導体装置500の遮断能力への影響が無い、または少ない影響があるだけである。
【0034】
t=t2で、第1の制御信号C1は第2の閾値電圧Vthy未満の低レベルVLへ急峻に下がる。不飽和期間は、トランジスタセルTCの反転チャネル115xがターンオフされて終わる。第1のpn接合pn1がもはやバイパスされない状態で、半導体装置500がその全遮断能力を回復する安全期間が始まる。ボディ区域115はドリフト構造120中へ電荷キャリアを注入することを再開し得、電荷キャリアプラズマ密度は再び増加し得る。
【0035】
遅延ユニット400が第1の制御信号C1の後縁に対して第2の制御信号C2の後縁を遅延させるので、第2の制御信号C2は、エンハンスメントセルECがドリフト構造120内に反転層120yを直ちに形成しないように第2の閾値Vthyを直ちに下回らない。したがって、蓄積電荷Qssだけでなく電荷キャリアエミッタ効率もt=t2で始まる一定期間の間低いままである。
【0036】
t=t3で、順方向バイアスは逆方向バイアスへ変化し、負の阻止電圧Vblkが第1および第2の負荷電極L1、L2間に印加される。反転チャネル115xがターンオフされるので、半導体装置500は全阻止電圧Vblkを直ちに維持し得る。第2の制御信号C2がt2〜t3の安全期間中に第2の閾値電圧Vthyを下回らないように第2の制御信号C2が十分に緩やかに下がれば、蓄積電荷Qssは半導体装置500が整流するときに依然として低い。逆回復電流およびスイッチング損失は、同期制御されるトランジスタおよびエンハンスメントセルを有する装置内よりも低い。
【0037】
半導体装置500は、整流前のトランジスタセルTCの安全なターンオフと、不飽和期間の終了と整流の開始間の安全期間中の低い電荷キャリアエミッタ効率と、当該ダイオードの強化型バイポーラ導通モードの高い電荷キャリアエミッタ効率とを共存させる。換言すれば、不飽和期間と安全期間を含む不飽和サイクルは、順方向阻止能力の迅速な再確立と高い不飽和効率とを両立させる。
【0038】
第2の閾値電圧は、安全期間中に負電圧レベルが第1のゲート電極155へ印加されるように負電圧であり得る。結果として、0Vの不飽和電圧を有する装置と比較して、半導体装置500は寄生ターンオン事象に対してより頑強である。3レベル手法以外に、半導体装置500は、一般的でない3レベルゲートドライバの代わりにより一般的な2レベルゲートドライバが使用されるように追加の不飽和レベル無しに済ます。
【0039】
t=t4で、第2の制御信号C2は第2の閾値電圧Vthyを下回る。第1および第2の負荷電極L1、L2間の電圧VL1L2が変化してt=t4後にだけ順方向バイアスへ戻ると、半導体装置500は低い順方向電圧VF1を有する強化型バイポーラ導通モードに直ちに変化し得る。
【0040】
安全期間中、第2の制御信号C2の遅延された後縁は「エンハンスメントセルECがドリフト構造120内に反転層120yを形成しない」という効果をもたらす。一方、第1の制御信号C1の無遅延後縁は「トランジスタセルTCがドリフト構造120内に別の反転層を形成する」という効果をもたらし得る。別の反転層はホールエミッタ効率を局所的に増加し得、t1〜t2の不飽和期間の影響をある程度阻止し得る。この効果は、エンハンスメントセルECに対するトランジスタセルTCの合計面積比が低ければ、無視可能かもしれない。
【0041】
エンハンスメントおよびトランジスタセルEC、TCは一様にまたは非一様に分散され得る。半導体ダイオードまたはRC−IGBTを参照する実施形態によると、エンハンスメントセルECの分布密度はトランジスタおよびエンハンスメントセルTC、ECを含むトランジスタセルアレイの端までの距離が短くなるにつれて低下し得る。逆遮断型IGBTに関しては、エンハンスメントセルの分布密度は、トランジスタセルアレイの端までの距離が短くなるにつれて増加し得る。
【0042】
図1Dは、エンハンスメントセルECとエンハンスメントセルECの外側のトランジスタセルTCとを含むトランジスタセルアレイ610を有する半導体装置500を示す。トランジスタおよびエンハンスメントセルTC、ECを含まない端領域690は、トランジスタセルアレイ610を囲みチップ端を画定する半導体ボディ100の側面103からトランジスタセルアレイ610を分離する。トランジスタセルアレイ610はさらに、例えばゲート接続、例えばゲートパッド、ゲートランナ、ゲートリングまたはゲートフィンガへ割り当てられたアイドル領域650に隣接する。
【0043】
端領域690およびアイドル領域650までの距離が短くなるにつれて、順方向バイアスpn接合(例えば、順方向バイアス半導体ダイオード)または逆方向バイアスRC−IGBTの場合には、エンハンスメントセルECの分布密度は、アイドル領域650および端領域690の電荷キャリアによる洪水現象(flooding)を低減するために徐々にまたは段階的に低下し得る。
【0044】
図2A〜2Eは、安全期間中に低い電荷キャリアエミッタ効率を有するトランジスタセルTCと、ボディ区域115の導電型の電荷キャリア輸送区域117を含むエンハンスメントセルECとを表す。電荷キャリア輸送区域117は、ドリフト構造120と別の第1のpn接合pn1を形成し、ドリフト構造120内の反転層120yと第1の負荷電極310とを電気的に接続する。電荷キャリア輸送区域117は、トランジスタセルTCのボディ区域115に直接隣接してもよいし、ボディ区域115から離されて形成されてもよい。
【0045】
第1および第2のゲート構造150、160は、第1の面101からトランジスタセルTCの半導体部分とエンハンスメントセルECとを含む半導体ボディ100内へ延在する。第1の面101に対する法線は垂直方向を定義する。第1の面101と平行な方向は水平方向である。
【0046】
トランジスタセルTCは、第1のゲート構造150に沿ってドリフト構造120内にいかなる別の反転層120xも形成されないようにまたは短い別の反転層120xだけが形成されるように、またはドリフト構造120内の別の反転層120xが第1の負荷電極310への接続無しに形成されるように、形成され得る。以下の実施形態の説明は
図1A〜1Bの実施形態の説明を包含しそれに続くものである。
【0047】
図2Aにおいて、トランジスタセルTCの第1のゲート構造150は、エンハンスメントセルECの第2のゲート構造160より低度にドリフト構造120と重なる。第1のゲート構造150とドリフト構造120間の界面領域は第2のゲート構造160とドリフト構造120間の界面領域の最大で2分の1である。第1のゲート構造150に沿ってドリフト構造120内に形成された反転層120xは、第2のゲート構造160に沿ってドリフト構造120内に形成された反転層120yより著しく短いまたは狭い。図示の実施形態によると、第1のゲート構造150の垂直方向延在部は第2のゲート構造160の垂直方向延在部より小さい。
【0048】
一実施形態によると、第1および第2のゲート構造150、160は2つの異なる連続トレンチエッチで形成され、第2のゲート構造160の合計トレンチエッチ時間は第1のゲート構造150より長い。ドリフト構造120が、ボディ区域115に隣接するより高い濃度でドープされた障壁区域125を含む場合、第2のゲート構造160は障壁区域125を貫通し得、第1のゲート構造150は障壁区域125内で終了し得る。別の実施形態によると、第1および第2のゲート構造150、160の異なる垂直方向延在部は、第2のゲート構造160が第1のゲート構造150より広く形成される単一のトレンチエッチング工程で実現される。
【0049】
図2Bは、第1のゲート誘電体151が、ボディ区域115から第1のゲート電極150を分離する第1の部分151aとドリフト構造120から第1のゲート電極155を分離する第2の部分151bとを含むトランジスタセルTCを表す。第2の部分151bは、ドリフト構造120内の別の反転層120xの形成が第1の制御信号C1の低レベルにおいて抑制されるように形成される。例えば、第2の部分151bは第1の部分151aとは別の材料から形成され得る。一実施形態によると、第1および第2の部分151a、151bは同じ材料(例えば、熱成長半導体酸化物)から形成され得、第2の部分151bの厚さは第1の部分151aの厚さより少なくとも50%(例えば、少なくとも100%)厚い。
【0050】
図2Cにおいて、遮断部122は、少なくとも第1の制御信号C1が半導体装置500のデータシートで低レベルに規定された最大許容電圧範囲を越えない場合、第1のゲート構造150の一部に沿ってドリフト構造120内に形成される別の反転層120xの少なくとも一部をボディ区域115xから切断する。遮断部122はドリフト構造120内にまたはそれに沿ってかつ第1のpn接合pn1近くに形成される。
【0051】
図2Dは、嘴部分151cを有する第1のゲート誘電体151を示す。嘴部分151cは、嘴部分151cの外側の第1のゲート誘電体151の部分より厚い。嘴部分151cはドリフト構造120内に反転層を形成するための閾値電圧を局所的に低減する。嘴部分151cは
図2Cの遮断部122として効果的であり得る。
【0052】
ドリフト構造120は、低ドープドリフト区域121と、ドリフト区域121とボディ区域115との間に挟まれたより高い濃度でドープされた障壁区域125とを含み得る。嘴部分151cは隣接障壁区域125に直接隣接し得る。嘴部分151cは、第1のゲート構造150内に、ドリフト構造120内に、またはその両方に延在し得る。
【0053】
図2Eは、第1のゲート構造150に直接隣接するドリフト構造120の一部分に形成された高ドープ遮断区域123を有するトランジスタセルTCを示す。高ドープ遮断区域123はドリフト構造120内に反転層を形成するための閾値電圧を局所的に増加する。高ドープ遮断区域123は局所閾値電圧を第1の制御信号C1の最低レベル未満へシフトし得る。
【0054】
安全期間中に全遮断能力を回復するために、エンハンスメントセルECは、第2の制御信号C2が第1の閾値(トランジスタセルTCが反転チャネル115xを形成する)を越えた場合でもドリフト構造120と第1の負荷電極310とを接続する反転チャネルを形成しない。エンハンスメントセルECは、電荷キャリア輸送区域117内に二次反転層を全く形成しなくてもよいし、第1の負荷電極310への接続が無いような二次反転層だけを形成してもよい。
【0055】
図3Aにおいて、エンハンスメントセルECは、電荷キャリア輸送区域117と、第1の負荷電極310から誘電体構造210内の開口を通って電荷キャリア輸送区域117中に延在するコンタクト構造305とを含む。第2の制御信号C2が第1の閾値を越えると、エンハンスメントセルECは電荷キャリア輸送区域117内の第2のゲート構造160に沿って二次反転層117yを形成する。
【0056】
エンハンスメントセルECは、ドリフト構造120から分離されたいかなるドープ区域も持たなく、ドリフト構造120の導電型を有し、第1の負荷電極310へ電気的に接続される。換言すれば、エンハンスメントセルECは、二次反転層117yが第1の負荷電極310と電気的に接続され得るいかなるドープ区域も持たない。
【0057】
電荷キャリア輸送区域117は、誘電体構造210との界面に沿った第2のゲート構造160の第1の端部分に直接隣接する半導体ボディ100の部分を埋める。二次反転層117yはドリフト構造120から誘電体構造210へ電荷キャリア輸送区域117を貫通する。
【0058】
図3Bにおいて、エンハンスメントセルECは、第1のコンタクト構造305を介し第1の負荷電極310へ電気的に接続されたドープ領域112を含む。エンハンスメントセルECはさらに、第2のゲート構造160に沿って形成された高ドープの第2の遮断区域113であって電荷キャリア輸送区域117とユニポーラホモ接合を形成する高ドープの第2の遮断区域113を含む。第2の遮断区域113は、二次反転層117yを形成するための閾値電圧を局所的に増加し、第2の制御信号C2の最高許容レベルより高い値(すなわち、高レベルを越えた値)へシフトする。ドープ領域112は、トランジスタセルTCが反転チャネル115xを形成する場合でもドリフト構造120から切断されたままである。
【0059】
電荷キャリア輸送区域117から第2のゲート電極165を分離する第2のゲート誘電体161の第1の部分はドリフト構造120から第2のゲート電極165を分離する第2の部分より厚いかもしれない。
【0060】
図4Aは、その半導体ボディ100が結晶質半導体材料、例えばSi、SiC、Ge、SiGe、GaN、GaAsまたは任意の他のA
IIIB
V半導体に基づく不飽和(desaturable)半導体ダイオード501に関する。
【0061】
前面側では、半導体ボディ100は、ほぼ平面で有り得るまたは同一平面部により架設された平面により与えられ得る第1の面101を有する。対向する裏側の平坦な第2の面102は第1の面101と平行である。
【0062】
第1と第2の面101、102間の最小距離は半導体ダイオード501の規定電圧遮断能力を達成するように選択される。同距離は少なくとも20μmであり得る。例えば、第1と第2の面101、102間の距離は、約1200Vの阻止電圧に対し規定された半導体ダイオード501では90μm〜110μmの範囲内であり得る。より高い遮断能力を有する半導体ダイオード501に関係する他の実施形態は、数100μmの厚さを有する半導体ボディに100を提供し得る。
【0063】
断面に垂直な面では、半導体ボディ100は、数ミリメートルの範囲内の辺長を有する矩形形状を有し得る。第1の面101に対する法線は垂直方向を定義し、垂直方向に対する直交方向は水平方向である。
【0064】
半導体ボディ100は、第1の導電型のドリフト構造120と、ドリフト構造120と第2の面102との間に挟まれた台座(pedestal)層130とを含む。
【0065】
示された実施形態では、第1の導電型はn型であり、第2の導電型はp型である。以下に概説される同様な考察は、第1の導電型がp型であり第2の導電型がn型である実施形態に当てはまる。
【0066】
ドリフト構造120は、低ドープドリフト区域121と、ドリフト区域121と台座層130との間に挟まれたより高い濃度でドープされたバッファ区域または電界停止区域129とを含み得る。ドリフト区域121内のドーパント濃度は、その垂直方向延在部の少なくとも一部の第1の面101までの距離の増加とともに徐々にまたは段階的に増加または低下し得る。他の実施形態によると、ドリフト区域121内のドーパント濃度はほぼ一様であり得る。ドリフト区域121内の平均ドーパント濃度は1E12cm
−3〜1E15cm
−3の間例えば5E12cm
−3〜5E13cm
−3の範囲内であり得る。バッファ区域または電界停止区域129内の平均ドーパント濃度は、ドリフト区域121内の平均ドーパント濃度より少なくとも5倍、例えば少なくとも10倍高い。
【0067】
台座層130は、ドリフト区域121と同じ導電型を有し、ドリフト構造120とユニポーラホモ接合を形成する。第2の面102に沿った台座層130の最大ドーパント濃度は、第2の面102に直接隣接する金属構造とのオーム接触を保証するように十分に高い。
【0068】
トランジスタセルTCの半導体部分は、ドリフト構造120と第1のpn接合pn1を形成するボディ区域115と、ボディ区域115と第2のpn接合pn2を形成するソース区域110とを含む。エンハンスメントセルECの半導体部分は、ドリフト構造120と別の第1のpn接合pn1を形成する電荷キャリア輸送区域117を含む。電荷キャリア輸送区域117中の合計ドーパント量(実効ドーズ量)は、半導体装置500に規定される動作条件において、電荷キャリア輸送区域117とドリフト構造120間の第1のpn接合pn1から延在する空乏領域が第1の面101へ達するまたは第1の面101から半導体ボディ100内に延在するコンタクト構造へ達するのを電荷キャリア輸送区域117が防止するように設定され得る。例えば、電荷キャリア輸送区域117内の合計ドーパント量は、約5E12cm
−2のp型注入ドーズ量と、注入された領域の一部を除去するコンタクト溝の後続エッチとの結果であり得る。
【0069】
示された実施形態では、電荷キャリア輸送区域117のうちの少なくともいくつかはボディ区域115のうちの1つとそれぞれ直接隣接する。他の実施形態によると、電荷キャリア輸送区域117はボディ区域115から分離され得る。電荷キャリア輸送区域115は第1の面101に直接隣接し得、第1の面101とドリフト構造120間に挟まれ得る。
【0070】
ドリフト構造120は、ボディ区域115とドリフト区域121間におよび/または電荷キャリア輸送区域117とドリフト構造120間に挟まれた障壁区域125を含み得る。障壁区域125は第1の導電型を有する。障壁区域125はドリフト区域121とユニポーラホモ接合を形成し得る。障壁区域125内の平均ドーパント濃度はドリフト区域121内の平均ドーパント濃度より少なくとも10倍高い。一実施形態によると、障壁区域125内の平均ドーパント濃度は、1E16cm
−3〜1E18cm
−3の範囲例えば1E17cm
−3〜5E17cm
−3の範囲であり得る。ドーパントは燐(P)、砒素(As)、セレン(Se)および/または硫黄(S)原子/イオンであり得る。障壁区域125は、ボディ区域115および電荷キャリア輸送区域117へ向けられた側に、ドリフト区域121のドーパント濃度を有する低ドープ部を含んでも含まなくてもよい。
【0071】
第1のpn接合pn1が順方向バイアスされると、電荷キャリア輸送区域117だけでなくボディ区域115も障壁区域125を介しドリフト区域121内に少数電荷キャリアを注入する。障壁区域125内のドーピングが高ければ高いほどボディおよび電荷キャリアの輸送区域115、117のエミッタ効率は低くなる。電荷キャリア輸送区域117だけでなくボディ区域115もアノード領域として効果的である。台座層130はカソード領域として効果的である。
【0072】
第1および第2のゲート構造150、160は第1の面101から半導体ボディ100内に少なくともドリフト構造120まで延在し得る。示された実施形態によると、第1および第2のゲート構造150、160はドリフト構造120内に延在する。第1のゲート構造150は、導電性第1のゲート電極155と、半導体ボディ100から第1のゲート電極155を分離する第1のゲート誘電体151とを含む。第2のゲート構造160は、導電性第2のゲート電極165と、半導体ボディ100から第2のゲート電極165を分離する第2のゲート誘電体161とを含む。
【0073】
第1のゲート誘電体151の厚さは一様であり得る。他の実施形態によると、第2の面102へ向けられた第1のゲート誘電体151の第2の部分は第1の面101へ向けられた第1の部分より厚いかもしれない。
【0074】
第1のゲート電極155および第2のゲート電極165は均質な構造であってよよいし、1つまたは複数の金属含有層を含む層構造を有してもよい。一実施形態によると、第1および第2のゲート電極155、165の少なくとも1つは高ドープ多結晶シリコン層を含み得る。第1および第2のゲート電極155、165は同じ材料からなり得、同じ構成を有し得、同じ蒸着およびパターン化処理から生じ得る。
【0075】
第1および第2のゲート誘電体151、161のそれぞれは、半導体酸化物(例えば、熱成長または蒸着酸化珪素)、半導体窒化物(例えば、蒸着または熱成長窒化珪素)、または酸窒化半導体(例えば、酸窒化珪素)を含み得るまたはそれからなり得る。第1および第2のゲート誘電体151、161は同じ材料からなり得、同じ構成を有し得、同じ蒸着およびパターン化処理から生じ得る。隣接ゲート構造150、160間の半導体ボディ100の一部は、ボディ区域115、ソース区域110、電荷キャリア輸送区域117、ドリフト区域121の一部、および妥当な場合は障壁区域125を含むメサ部170を形成する。
【0076】
第1のゲート構造150と、ソースおよびボディ区域110、115を含む隣接メサ部170の隣接部分とがトランジスタセルTCを形成する。第2のゲート構造160と、電荷キャリア輸送区域117を含む隣接メサ部170の隣接部分とがエンハンスメントセルECを形成する。
【0077】
半導体ダイオード501のトランジスタセルTCは、ボディ区域115へ接続されるとともに順方向バイアスモードでホールエミッタ効率を強化する反転層をドリフト構造120内に形成しないように配置され得る。トランジスタセルTCは例えば
図2A〜2Eを参照して説明したトランジスタセルTCのうちの任意のものを具現化し得る。
【0078】
半導体ダイオード501のエンハンスメントセルECは、電荷キャリア輸送区域117内に反転チャネル(第1の閾値を越えた正電圧が第2のゲート構造160へ印加されると少数電荷キャリアがドリフト構造120と第1の負荷電極310間を流れ得る)を形成しないように配置され、
図3Aおよび3Bを参照して説明したエンハンスメントセルECのうちの任意のものを具現化し得る。
【0079】
示された実施形態によると、電荷キャリア輸送区域117は、第1の面101と電荷キャリア輸送区域117間で、当該メサ部170が少なくとも第2のゲート構造160に沿って第1の導電型のいかなるドープ領域も持たないように、第1の面101において第2のゲート構造160に直接隣接し得る。誘電体構造210は、電荷キャリア輸送区域117と第2のゲート構造160間の界面の垂直突起の両側の第1の面101上にそれぞれ形成され得る。第2のゲート構造160の外側端の第1の面101に沿った第1の導電型のドープ領域が無い結果、電荷キャリア輸送区域117を通る電子経路が禁じられる。
【0080】
第1の面101と、第1および第2のゲート構造150、160の底部との間の距離は1μm〜30μm(例えば、3μm〜7μm)の範囲であり得る。メサ部170の横方向幅は0.05μm〜10μm(例えば、0.15μm〜1μm)の範囲であり得る。第1の面101と第1のpn接合pn1間の距離は0.5μm〜5μm(例えば、1μm〜1.5μm)の範囲であり得る。
【0081】
半導体ダイオード501のアノード電極を形成する第1の負荷電極310は、ボディ区域115、ソース区域110および電荷キャリア輸送区域117へ電気的に接続される。第1の負荷電極310は半導体ダイオード501のアノード端子Aを形成してもよいしそれへ電気的に結合されてもよい。
【0082】
第2の負荷電極320は第2の面102および台座層130に直接隣接する。第2の負荷電極320は半導体ダイオード501のカソード端子Kを形成してもよいし、それへ電気的に接続されてもよい。
【0083】
第1および第2の負荷電極310、320のそれぞれは、主構成成分としてアルミニウム(Al)、銅(Cu)、またはアルミニウムまたは銅の合金(例えば、AlSi、AlCuまたはAlSiCu)からなり得るまたはそれを含み得る。他の実施形態によると、第1および第2の負荷電極310、320のうちの少なくとも1つは、主構成成分としてニッケル(Ni)、チタン(Ti)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)および/またはパラジウム(Pd)を含み得る。例えば、第1および第2の負荷電極310、320のうちの少なくとも1つは2つ以上の副層を含み得る。各副層は、主構成成分としてNi、Ti、Ag、Au、Pt、W、およびPdのうちの1つまたは複数(例えば、シリサイド、窒化物、および/または合金)を含む。
【0084】
誘電体構造210は第1の負荷電極310と半導体ボディ100間に挟まれ得る。誘電体構造210は、半導体酸化物(例えば、酸化珪素)、半導体窒化物(例えば、窒化珪素)、または酸窒化半導体(例えば、酸窒化珪素)のうちの1つまたは複数の層(半導体ボディ100上に熱成長された層または蒸着層であり得る)を含み得る。コンタクト構造305は、誘電体構造210の開口を貫通し、第1の負荷電極310とソース区域110、ボディ区域115および電荷キャリア輸送区域117とを電気的に接続する。
【0085】
第1および第2のゲート電極155、165は遅延ユニット400へ電気的に接続または結合される。遅延ユニット400は、第1のゲート電極155へ印可された第1の制御信号C1の当該後縁に対して、第2のゲート電極165へ印可された第2の制御信号C2の後縁を遅延させる。一実施形態によると、第1の制御信号C1は、ゲート端子Gを介しまたは内部ゲート駆動回路のドライバ出力を介し遅延ユニット400へ供給され得る。
【0086】
示された実施形態によると、遅延ユニット400は、ゲート端子Gまたは内部ゲート駆動回路のドライバ出力へ電気的に接続され得る。遅延ユニット400は第1の制御信号C1および第2の制御信号C2の両方を出力する。
【0087】
トランジスタセルTCは、第1の制御信号C1が正の第1の閾値電圧Vthxを越えると、ソース区域110とドリフト構造120間にMOSゲート制御反転チャネルを形成する。第1の閾値電圧Vthxは一例として5.5〜6.5Vであり得る。
【0088】
エンハンスメントセルECは、第2の制御信号C2が第1の閾値電圧Vthxを越えた場合に、ドリフト構造120を第1の負荷電極310へ接続する反転チャネルを形成しない。その代りに、エンハンスメントセルECは、第2の制御信号C2が第2の閾値Vthy(一例として−5.5V〜−6.5Vであり得る)を下回ると、第2のゲート構造160に沿ったドリフト構造120内に反転層を形成する。
【0089】
第1の制御信号C1は交互に高レベル(約+15Vであり得る)と低レベル(約−15Vであり得る)となり得る。第2の制御信号C2は、同じ高レベルおよび低レベルを有する同様な信号であり得る。
【0090】
トランジスタセルTCは、第1の制御信号C1が第2の閾値Vthyを下回ると、ドリフト構造120内の第1のゲート構造150に沿って別の反転層を形成してもよいししなくてもよい。
【0091】
示された実施形態では、第1のゲート誘電体151は嘴部分151cを含み、嘴部分151cでは第1のゲート誘電体151は嘴部分151cの外側より広い。嘴部分151cの幅は、いかなる反転層も第1の制御信号C1の最低許容信号レベルでは嘴部分に沿って形成されないように選択される。
【0092】
第1および第2の制御信号C1、C2が導出されるゲート信号は矩形信号であり得る。第1の制御信号C1は、その端がゲート信号内の当該端に対して若干遅延され得るほぼ矩形の信号であり得る。第2の制御信号C2は、その後縁が第1の制御信号C1の当該後縁に対して著しく遅延されるほぼ矩形の信号である。第2の制御信号C2の前縁は第1の制御信号C1の当該前縁に対して若干遅延され得る。一実施形態によると、もっぱら、第2の制御信号C2の後縁は第1の制御信号C1の当該後縁に対して遅延される。
【0094】
第1の制御信号C1は、交互に負の低レベルVGLと正の高レベルVGHとなる矩形信号である。第2の制御信号C2は第1の制御信号C1の前縁に追随する。後縁において、遅延ユニット400は第1の制御信号C1に対し第2の制御信号C2を遅延させる。
【0095】
t=t0で、
図4Aの半導体ダイオード501は順方向バイアスされ、半導体ダイオード501を通る負荷電流に寄与する両タイプの電荷キャリアを有するバイポーラ導通モードとなる。エンハンスメントセルECは活性状態であり、電荷キャリア輸送区域117を介し第1の負荷電極310(アノード電極として効果的である)へ接続されるp型反転層を形成する。エンハンスメントセルECはドリフト構造120内の電荷キャリアプラズマ密度だけでなくアノードエミッタ効率も著しく向上し、バイポーラ導通モードを強化する。ドリフト区域121内の高密度電荷キャリアプラズマの結果、強化型バイポーラ導通モードではアノードカソード間電圧VAKは第1のpn接合pn1の低順方向電圧VF1と高蓄積電荷Qssにより規定される。
【0096】
t1〜t2間に、不飽和パルスがゲート端子Gへ印加される。トランジスタセルTCは、ボディ区域115を通る反転チャネル(第1のpn接合pn1をバイパスする)を直ちに形成する。同時に、エンハンスメントセルECの反転層はスイッチオフされる。電荷キャリアプラズマ密度と蓄積電荷Qssは低下する。
【0097】
t=t2で、不飽和パルスは終了し、半導体ダイオード501が阻止電圧を直ちに維持することができるようにトランジスタセルTCが反転チャネルをターンオフすることにより安全期間が始まる。同時に、遅延ユニット400は、エンハンスメントセルECの反転層を所定期間の間無効に保つ。エンハンスメントセルECのアノード効率は、電荷キャリアプラズマ密度と蓄積電荷Qssが低度にだけ増加するように低いままである。その結果、安全期間中、順方向電圧VF2は強化型バイポーラ導通モードよりも高い。
【0098】
半導体ダイオード501が逆方向バイアスへ変化した後だけ第2の制御信号C2が第2の閾値電圧Vthyを下回るように遅延ユニット400の時定数が選択されれば、残りの蓄積電荷Qssは整流時に低く、スイッチング損失は第2の制御信号C2の後縁の遅延の無い基準ダイオードと比較して著しく低減される。
【0099】
図5AはRC−IGBT502を表す。RC−IGBT502の台座層130は、第2の導電型の第1の区域131と第1の導電型の第2の区域132とを含む。第1および第2の区域131、132はドリフト構造120から第2の負荷電極320へ延在する。第1の区域131は、IGBTモードの導通段階にドリフト構造120内に少数電荷キャリアを注入する裏側エミッタ区域として効果的である。第2の区域132は、RC(逆導通)モード中に裏側エミッタ区域をバイパスするコレクタショート(collector short)として効果的である。
【0100】
第1の区域131は、RC−IGBT502の二相性(bimodal)領域内の第2の区域132と交互に切り替わり得る。二相性領域に加えて、RC−IGBT502は、第2の導電型のパイロット区域を有するパイロット領域を含み得る。パイロット区域の水平延長部分は第1の区域131の水平延長部分より大きい。第1および第2の区域131、132内の、そして妥当な場合はパイロット区域内のドーパント濃度は第2の負荷電極320に対する低オーム接触を保証するように十分に高い。例えば、pドープ区域131、132内の第2の面102に沿った最大ドーパント濃度は少なくとも1E16cm
−3(例えば、少なくとも5E17cm
−3)であり得、nドープ区域131、132内の最大ドーパント濃度は少なくとも1E18cm
−3(例えば、少なくとも5E19cm
−3)であり得る。
【0101】
第1および第2の区域131、132は、トランジスタおよびエンハンスメントセルTC、ECを含むトランジスタセルアレイを通って第1の水平方向に沿って延在するストライプであり得る。他の実施形態によると、第1の区域131は第2の区域132により形成されたグリッド内に点状に埋め込まれ得、その逆も同様である。
【0102】
さらなる詳細に関し、
図4Aの半導体ダイオード501の説明を参照すると、第1の負荷電極310はエミッタ電極Eを形成するまたはそれに電気的に接続または結合され、第2の負荷電極320はコレクタ端子Cを形成するまたはそれへ電気的に接続される。
【0103】
図5Bは、
図5Aに示すRC−IGBTの
図1Cのタイムチャートを示す。第1の制御信号C1は、交互に負の低レベルVLと正の高レベルVHとなる矩形信号である。第2の制御信号C2は第1の制御信号C1の前縁に直ちに追随する。後縁において、遅延ユニット400は第1の制御信号C1に対し第2の制御信号C2を遅延させる。
【0104】
t=t0で、
図5AのRC−IGBT502は逆方向バイアスされ、第1のpn接合pn1により形成された内部RCダイオードは順方向バイアスされ、RC−IGBT502はバイポーラ導通モードとなる。両タイプの電荷キャリアはRC−IGBT502を通る逆電流に寄与する。エンハンスメントセルECは活性状態であり、電荷キャリア輸送区域117を介し第1の負荷電極310(エミッタ電極として効果的である)へ接続されるp型反転層を形成する。エンハンスメントセルECは、RCダイオードのp型アノード領域のエミッタ効率を増加し、バイポーラのRCモードを強化する。ドリフト区域121内の高い電荷キャリアプラズマ密度は、高い蓄積電荷Qssを生じ、コレクタエミッタ間電圧VCEはRCダイオードの低順方向電圧VF1により規定される。
【0105】
t=t1で、不飽和パルスが第1の制御信号C1へ印加される。トランジスタセルTCはボディ区域115を通る反転チャネルを直ちに形成する。反転チャネルは、RCダイオードの第1のpn接合pn1をバイパスする。エンハンスメントセルECはドリフト構造120内のp型反転層をスイッチオフする。結果として、電荷キャリアプラズマ密度と蓄積電荷Qssは低下する。
【0106】
t=t2で、第1の制御信号C1は、RC−IGBT502が阻止電圧を直ちに維持し得るようにトランジスタセルTCの反転チャネルをターンオフする低レベルVLへ直ちに戻る。第2の制御信号C2の後縁の遅延は、「エンハンスメントセルECがドリフト構造120内のp型反転層を所定期間の間形成しない」という効果がある。当該期間の間、エンハンスメントセルECのエミッタ効率は、t=t2から始まって、電荷キャリアプラズマ密度と蓄積電荷Qssが低度にだけ増加するように低いままである。その結果、安全期間中、RCダイオードの順方向電圧VF2の絶対値は強化RCモードよりも著しく高い。
【0107】
RC−IGBT502がt=t3で逆方向バイアスから順方向バイアスへ変化する前に第2の制御信号C2が第2の閾値電圧Vthyを下回らないように所定期間が選択されれば、整流時の残留蓄積電荷Qssは、スイッチング損失が第2の制御信号C2の後縁の遅延の無い基準RC−IGBTと比較して著しく低減されるように低い。
【0108】
図4Aおよび
図5Aの実施形態では、電荷キャリア輸送区域117はボディ区域115に直接隣接する。1つの電荷キャリア輸送区域117と1つのボディ区域115が同じメサ部170内にそれぞれ形成される。
【0109】
図6は、電荷キャリア輸送区域117から分離されて形成されたボディ区域115を有する実施形態を表す。
【0110】
2つの隣接トランジスタセルTCの半導体部分は、隣接する第1のゲート構造150間のトランジスタメサ部170a内に形成される。2つの隣接エンハンスメントセルECの電荷キャリア輸送区域117は、隣接する第2のゲート構造160間のダイオードメサ部170b内に形成され得る。加えて、RC−IGBT502は、第1の負荷電極310への直接電気的接続の無いアイドルメサ部170cを有するアイドルセルICを含み得る。アイドルメサ部170cは、一例として、2つの第1のゲート構造150間または2つの第2のゲート構造160間の第1および第2のゲート構造150、160間に形成され得、第1の負荷電極310への電気的接続の無いPドープ領域118を含んでもよいし含まなくてもよい。
【0111】
一実施形態によると、アイドルメサ部170cは、第1の面101からドリフト構造120内に延在するフィールド電極構造180に直接隣接し得る。フィールド電極構造180は、フィールド電極185と、半導体ボディ100からフィールド電極185を電気的に分離するフィールド誘電体181とをそれぞれ含み得る。フィールド電極構造180は、第1および第2のゲート構造150、160のうちの少なくとも1つの寸法と同様または同一の水平および垂直方向寸法を有し得る。
【0112】
フィールド電極185は、多結晶シリコンなどの導電材料からなる均質構造であってもよいし、1つまたは複数の金属含有層をそれぞれ含む層構造を有してもよい。一実施形態によると、フィールド電極185は第1および第2のゲート電極155、165のうちの少なくとも1つと同じ材料で設けられ得る。
【0113】
フィールド誘電体181は、半導体酸化物などの1つの誘電体材料からなる均質構造であってもよいし、2つ以上の層の誘電体材料を含む層構造を有してもよく、誘電体材料は、一例として熱成長半導体酸化物(例えば、熱成長酸化珪素)、蒸着半導体酸化物(例えば、蒸着酸化珪素、窒化珪素、酸窒化珪素)を含む。一実施形態によると、フィールド誘電体181は第1および第2のゲート誘電体151、161のうちの少なくとも1つと同じ材料で設けられ得る。フィールドまたはゲート構造150、160、180のアイドルメサ部170cおよび隣接部分はアイドルセルICを形成する。
【0114】
エンハンスメントおよびトランジスタセルEC、TCは並んで形成され少なくとも1つの水平方向に沿って交互に配置され得る。
図7A〜7Cは、エンハンスメントセルECの少なくともいくつかがトランジスタセルTCとともに垂直方向に積層される実施形態を表す。
【0115】
図7Aでは、RC−IGBT502は、第1の面101と第2のゲート構造160間の第2のゲート構造160の垂直突起内に第2のゲート構造160および第1のゲート構造150を含む複合ゲート構造190を含む。補助誘電体205は第1のゲート構造150と第2のゲート構造160とを分離する。補助誘電体205は第1のpn接合pn1と位置がほぼ合わせられ得る。
【0116】
一実施形態によると、第1の部分では第1のゲート構造150がトランジスタセルTCの反転チャネルとドリフト構造120との接続を促進するためにドリフト構造120と重なるように、第2の部分では第2のゲート電極165がp型反転層とボディ区域115との接続を促進するためにボディ区域115と重なるように、第1の誘電体205と第1の面101との距離は、断面に垂直な水平方向で交互に切り替わる。
【0117】
別の実施形態によると、トランジスタセルTCを含む第1の部分では第1のゲート構造150がトランジスタセルTCの反転チャネルとドリフト構造120との接続を促進するためにドリフト構造120と重なるように、エンハンスメントセルECを含む第2の部分では第2のゲート電極165がp型反転層とボディ区域115との接続を促進するためにボディ区域115と重なるように、第1の誘電体205と第1の面101との距離は断面に垂直な水平方向で交互に切り替わらない。セル毎に、上および下側部分内の電極同士は、例えば第1の誘電体205内の開口によりまたは例えばメタライゼーション面内のワイヤ接続により互いに電気的に接続または結合され得る。
【0118】
図7BのRC−IGBT502は膨らんだ第2のゲート構造160だけでなく膨らんだ複合ゲート構造190も含む。ゲート構造160、180間のメサ部170は、ソース区域110とボディ区域115と電荷キャリア輸送区域117とを含む広い部分と、同広い部分とドリフト構造120の隣接する部分との間の狭い部分とを含む。非強化モードの間、ゲート構造160、190の膨らんだ部分はボディ区域115と電荷キャリア輸送区域117を遮蔽し、例えば不飽和サイクルの安全期間中の非強化バイポーラ導通モード内のアノードエミッタ効率をさらに低下する。
【0119】
図7Cの実施形態によると、複合ゲート構造190は互いに直接隣接しそれらの間の活性メサ部170aを画定する。示された実施形態によると、ボディ区域115を通る反転チャネルがドリフト区域121へ接続され得るように補助誘電体205が第1の面101から十分に離間されるトランジスタセルTCと、ドリフト区域121内に形成された反転層がボディ区域115へ接続され得るように補助誘電体205が第1の面の十分近くに形成されるエンハンスメントセルECとを画定するために補助誘電体205は異なる距離に形成される。
【0120】
図8A〜8Cは遅延ユニット400の実施形態を表す。遅延ユニット400は、ゲートノードへ電気的に接続または結合される第1の経路410とゲートノードへ電気的に接続または結合される第2の経路420とを含み得る。ゲートノードはゲート端子Gまたは内部ゲート駆動回路のドライバ出力であり得る。第1の経路410は、ゲート端子Gを介しまたは内部ゲート駆動回路を介しゲートノードへ印可されるゲート信号VGにほぼ追随する第1の制御信号C1を出力する。第1の制御信号C1は、矩形信号であり得るゲート信号VGの最小パルス長だけゲート信号に対し若干遅延され得る。第2の経路420はゲート信号に応答して第2の制御信号C2を出力し、第2の制御信号C2の後縁は、第1の制御信号C1の当該後縁に対して著しく遅延される。
【0121】
図8Bは、
図8Aの信号VG、C1、C2のタイムチャートを示す。第2の制御信号C2の後縁は、ゲート信号VGにほぼ追随する第1の制御信号C1の後縁に対してΔtだけ遅延される。
【0122】
図8Cは、遅延ユニット400の実施形態を示す。第1の経路410は、トランジスタセルのゲート導体配線の固有抵抗であり得る第1の内部抵抗411を含む。第2の経路420は、エンハンスメントセルのゲート配線の固有線路抵抗に加えて個別抵抗体素子を含み得る第2の内部抵抗422を含む。加えて、第2の経路420は、第2の内部抵抗422と並列に電気的に接続された整流素子423を含み得、ゲート信号VGの前縁の第2の内部抵抗422をバイパスする。第2の内部抵抗422は第1の内部抵抗411より大きい。整流素子423は、半導体ボディ100から第1の負荷電極を分離する層間絶縁膜内に蒸着された多結晶シリコンに基づく半導体ダイオードであり得る。
【0123】
図8Dは、
図8Cの遅延ユニット400により出力される第1および第2の制御信号C1、C2を示す。
【0124】
図9A〜9Cは、非逆導通型IGBT503を表す。IGBT503の台座層130はドリフト構造120の導電型と反対の導電型を有する隣接層であり得る。他の実施形態によると、台座層130はドリフト構造120の導電型のマイクロチャネルを含み得、マイクロチャネル(例えば、遮断モード中に完全に空乏化されるマイクロチャネル)は非逆導通型IGBT503の逆方向遮断能力に悪影響を与えない。前の実施形態の遅延ユニット400以外に、非逆導通型IGBT503の遅延ユニット400は、第2の制御信号C2の当該後縁に対して第1の制御信号C1の後縁を遅延させる。さらなる詳細については、前図のRC−IGBT502の説明が参照される。
【0125】
図9Bは、
図9AのIGBT503のトランジスタおよびエンハンスメントセルTC、ECの振る舞いへの遅延ユニット400の影響を示す。第2の制御信号C2は、交互に負の低レベルVLと正の高レベルVHとなる矩形信号であり得る。第1の制御信号C1は第2の制御信号C2の前縁に直ちに追随し得る。遅延ユニット400は第2の制御信号C2の当該後縁に対して第1の制御信号C1の後縁を遅延させる。
【0126】
t=t0で、
図9Aの非逆導通型IGBT503はコレクタおよびエミッタ端子C、E間の正のコレクタエミッタ間電圧VCEで順方向バイアスされる。IGBT503のバイポーラ導通モードは低コレクタエミッタ飽和電圧VCEsatを生じる。
【0127】
t=t1で、第2の制御信号C2は第2の閾値Vthy未満に直ちに下がる。エンハンスメントセルECはドリフト構造120内にp型反転層を形成することにより活性状態となる。p型反転層とボディおよび電荷キャリア輸送区域115、117を通して、ホールは、電荷キャリアプラズマ密度と蓄積電荷Qssが低下するようにエミッタ側へ能動的に排出される。同時に、遅延ユニット400は、トランジスタセルTCのMOSゲート制御チャネルが依然として活性状態となるように第1の制御信号C1の後縁を第1の閾値Vthxより高く維持する。電荷キャリアプラズマ密度の低下のために、コレクタエミッタ間電圧VCEは若干増加する。
【0128】
t=t2で、第1の制御信号C1が第1の閾値Vthxを下回ると、IGBT503はIGBTモードのバイポーラ導通期間(オン状態)からIGBTモード(オフ状態)の遮断期間へ変化し、コレクタエミッタ間電圧VCEは印加された阻止電圧Vblkに一致する。
【0129】
遅延ユニット400は、第1の経路が第2の制御信号C2を出力し第1の経路が第1の制御信号C1を出力する
図8A〜8Dに関して論述されたようなRC−IGBTの遅延ユニット400のうちの任意のものであり得る。
【0130】
一実施形態によると、少なくともIGBTオン状態の終了段階では、印加ゲート信号は、IGBT503のスイッチング速度より著しく高い速度で高レベルVHと低レベルVL間で変化し得る。パルスパターンは、第1の制御信号C1を第1の閾値Vthxより高く維持し得るが、第2の制御信号C2を第2の閾値Vthy未満までパルス化する。
【0131】
図10Aは、スイッチング装置711として使用される前述の実施形態のRC−IGBT502または逆遮断型IGBT503の1つを有するスイッチドモード電源701に関する。ゲート駆動回路720は出力端子Goutにゲート信号を生成する。ゲート信号はスイッチング装置711のゲート端子Gへ供給される。スイッチング装置711は、第1の電圧と第1の周波数f1でソースから受信されたエネルギーを誘導素子741(例えば、変圧器巻線またはストレージチョーク)内に格納することと、蓄積エネルギーを第2の周波数f2および/または第2の電圧レベルV2で負荷742へ解放することとを制御する。ここで、f1および/またはf2は0Hzであり得る。ゲート信号は、負荷条件へ連続的に適応化され得る周波数の矩形信号であり得る。ゲート駆動回路720はさらに、例えばコレクタエミッタ間電圧が反転される前またはスイッチング装置711を通る負荷電流がターンオフされる前に不飽和パルスを出力し得る。
【0132】
スイッチドモード電源701はハードスイッチング型のものであり得る。別の実施形態によると、スイッチドモード電源は、スイッチング装置711の負荷端子C、Eの両端電圧が0Vであるまたは0V近くであるときだけスイッチングするスイッチング装置711との共振タイプのものであり得る。スイッチドモード電源701は一例としてバックまたはブースト変換器タイプのものであり得る。一実施形態によると、スイッチドモード電源はDC/DC変換器であり得る。
【0133】
図10Bは、その負荷電流経路がVddとGnd間に直列に接続される2つの半導体スイッチング装置711、712に基づく1つまたは複数のハーフブリッジ回路710を含む電子回路702を表す。半導体スイッチング装置711、712はRC−IGBTであり得る。半導体スイッチング装置711、712のうちの少なくとも1つは前図のRC−IGBT502のうちの1つあってもよいし、それを含んでもよい。ハーフブリッジ回路710または完全電子回路702は電力モジュール内に集積化され得る。例えば、半導体スイッチング装置711、712はDBC(直接銅張:direct bonded copper)基板などのパワーエレクトロニクス基板上に取り付けられ得る(例えば半田付けされ得る)。
【0134】
電子回路702は、第1の駆動端子Gout1に第1のゲート信号を第2の駆動端子Gout2に第2のゲート信号を生成し駆動するゲート駆動回路720を含み得る。第1および第2の駆動端子Gout1、Gout2は半導体スイッチング装置711、712のゲート端子Gへ電気的に結合または接続される。ゲート駆動回路720は、規則的スイッチングサイクル中に第1および第2のスイッチング装置711、712が交互にオン状態となるようにゲート信号を制御する。不飽和サイクル中に、ゲート駆動回路720は、スイッチング装置712、711の他方をターンオフすることにより整流を開始する前に、当該装置の逆導通型ダイオードを不飽和にするためにスイッチング装置711、712の一方へ不飽和パルスを供給し得る。
【0135】
図10Bでは、スイッチング装置711、712は、第1のスイッチング装置711のエミッタ端子Eと第2のスイッチング装置712のコレクタ端子Cとが切り替え端子Swへ電気的に接続されたn−IGBTである。別の実施形態によると、正電源電圧Vddと切り替え端子Sw間に電気的に接続された第1のスイッチング装置711はp−IGBTであり得る。
【0136】
図11A〜11Dは、上述のような半導体装置のトランジスタセルの強化部分によりゲート誘電体を形成する一連の工程を示す。
【0137】
半導体基板500aは、単結晶シリコンSi、SiC、Ge、SiGe、GaN、GaAsまたは別のA
IIIB
V半導体であり得る結晶質半導体材料の半導体層100aからなるまたはそれを含む。半導体基板500aは半導体層100aに加えて別の半導体および誘電体層を含み得る。一実施形態によると、半導体基板500aはシリコンウェーハである。半導体層100aは、シリコン結晶を切断することにより得られるシリコンディスク、または単結晶基板上にエピタキシーにより完全にまたは部分的に形成された半導体層のいずれかであり得る。半導体層100aは、異なる導電型または同じ導電型であるが平均ドーパント濃度が異なる2つ以上の副層を含み得る。
【0138】
半導体層100aは半導体基板500aの前面側にプレーナ加工面101aを形成する。加工面101aに対する法線は垂直方向を定義し、垂直方向に対する直交方向は水平方向である。
【0139】
ハードマスク層または積層が加工面101a上に形成(例えば、蒸着)され得る。開口が、トレンチエッチマスク602を形成するためにリソグラフィによりハードマスク層または積層内に形成され得る。トレンチエッチマスクを使用することにより、第1および第2のトレンチ150z、160zが半導体層100a内にエッチングされ得る。
【0140】
図11Aは、加工面101aから半導体層100a内に延在する第1および第2のトレンチ150z、160zだけでなくトレンチエッチマスク602も示す。トレンチエッチマスク602は、一例として、酸化珪素または窒化珪素からなる単層マスク、または多層マスク例えば熱成長酸化珪素層、蒸着または熱成長酸窒化珪素または窒化珪素層、およびTEOS(オルトケイ酸テトラエチル:tetraethyl orthosilicate)に基づく蒸着酸化珪素層を含む複合マスクであり得る。
【0141】
トレンチエッチマスク602は完全に除去され得、熱酸化処理は、第1および第2のトレンチ150z、160zを裏打ちするとともに加工面101aを覆う薄い補助酸化物層を形成し得る。補助酸化物層は除去され得、第1および第2のトレンチ150z、160zの端は丸くされ、第1および第2のトレンチ150z、160zの側壁は滑らかにされる。コンフォーマル犠牲酸化物層612が前面側に成長および/または蒸着され得る。犠牲酸化物層612と異なる材料からなるマスクライナ622が犠牲酸化物層上に蒸着され得る。
【0142】
図11Bは、第1および第2のトレンチ150z、160zを裏打ちする犠牲酸化物層612および犠牲酸化物層612を覆うマスクライナ622を示す。
【0143】
犠牲酸化物層612は1つまたは複数の半導体酸化物層(例えば、熱成長酸化珪素と蒸着酸化物)を含み得、蒸着酸化物は、例えば、前駆体材料としてTEOSを使用することにより形成された蒸着酸化珪素であり得る。別の実施形態によると、除去される代わりに、補助酸化物層は犠牲酸化物層612またはその一部を形成し得る。マスクライナ622は一例として窒化珪素層であり得る。
【0144】
その残り部分が第1のトレンチ構造150z内およびその周囲のマスクライナ622の部分を覆うとともに第2のトレンチ構造160z内およびその周囲のマスクライナ622の部分を露出させるマスクライナエッチマスクを形成するために補助マスク層がリソグラフィにより蒸着されパターン化され得る。第1のトレンチ150z内およびその周囲にウエットエッチマスク623を形成するためにドライエッチング工程がマスクライナ622の露出部分を除去する。次に、選択的ウエットエッチが、犠牲酸化物層612の露出部分を除去し得、ウエットエッチマスク623の端から始まり、ウエットエッチマスク623により覆われた犠牲酸化物層612の部分を除去し得る。犠牲酸化物層612のエッチの前、後または中に、マスクライナエッチマスクは除去される。
【0145】
図11Cは、ウエットエッチ後の犠牲酸化物層612の残り部分613を示す。残り部分613はウエットエッチマスク623の端から少し離れて形成される。凹部はウエットエッチマスク623の下を切り取る。ウエットエッチマスク623は除去され得、別の誘電体ライナ632が半導体層100aの露出部分上に蒸着および/または熱成長され得る。
【0146】
図11Dに示すように、別の誘電体ライナ632の一部は第2のトレンチ160z内に一様厚さの第2のゲート誘電体161を形成する。第1のトレンチ150z内では、別の誘電体ライナ632の一部が第1のトレンチ150zの上側部分に第1のゲート誘電体151の薄い第1の部分151aを、そして犠牲酸化物層612の残り部分613と組み合わせて第1のトレンチ150zの底部に第1のゲート誘電体151の第2の強化部分151bを形成する。
【0147】
図12A〜12Fは、第1のトレンチ150zのトレンチ側壁の選択部分に沿って第1のゲート誘電体161の嘴部分を設ける実施形態を表す。
【0148】
トレンチエッチマスク602は、
図11Aを参照して説明したように半導体層100a上に形成され得、トレンチエッチマスク602は窒化物含有層を含む複合マスクであり得る。第1および第2のトレンチ150z、160zを形成した後、トレンチエッチマスク602の副層が除去され得る。例えば、トレンチエッチマスク620は、半導体層100a上に蒸着または成長された酸化珪素または酸窒化層602a、酸化珪素または酸窒化層602a上に形成された窒化珪素層602b、および窒化珪素層602b上に蒸着されたTEOS酸化物層を含むONO(酸素−窒化物−酸素:oxygen−nitride−oxygen)マスクである。
【0149】
TEOS酸化物層を剥ぎ取った後、トレンチエッチマスク602の窒化珪素層602bおよび酸化珪素または酸窒化層602aは第1および第2のトレンチ150z、160z間の半導体層100aのメサ部170を覆う。
【0150】
図12Aは、メサ部170の上のトレンチエッチマスク602の残り部分603だけでなく第1および第2のトレンチ150z、160zも示す。トレンチエッチマスク602の残り部分603は窒化珪素層602bであってもよいし、それを含んでもよい。第1および第2のトレンチ150z、160zの露出側壁は、第1および第2のトレンチ150z、160zを裏打ちする犠牲酸化物ライナ614を形成するために熱酸化される。犠牲酸化物ライナ614の形成および除去は、第1および第2のトレンチ150z、160zの端を丸くし、トレンチ側壁を滑らかにする。
【0151】
マスクライナ622(例えば、窒化珪素層)が蒸着される。
【0152】
第1および第2のトレンチ150z、160zの外側で、マスクライナ622はトレンチエッチマスクの残り部分603を覆う。第1および第2のトレンチ150z、160z内では、マスクライナ622は
図12Bに示すようにトレンチ側壁上の犠牲酸化物ライナ614を覆う。
【0153】
異方性エッチング工程が、メサ部170の上および第1および第2のトレンチ150z、160zの底部のマスクライナ622の水平部分を除去する。トレンチエッチマスクの残り部分603はメサ部170をエッチングから遮蔽し得る。
【0154】
図12Cは、第1および第2のトレンチ150z、160zの底部の犠牲酸化物ライナ614の部分だけでなくメサ部170上のトレンチエッチマスク603の残り部分も露出させるスペーサマスクを形成するパターン化されたマスクライナ623を示す。補助マスク層が、第1のトレンチ150zを覆うまたは埋めるとともに第2のトレンチ160zを露出するマスクライナエッチマスク643を形成するためにリソグラフィにより蒸着されパターン化される。異方性乾式エッチが第2のトレンチ160z内のパターン化されたマスクライナ623の部分を除去する。
【0155】
図12Dでは、マスクライナエッチマスク643は第1のトレンチ150zを埋める。パターン化されたマスクライナ623の残り部分は第1のトレンチ150z内に選択的にウエットエッチマスク624を形成する。マスクライナエッチマスク643は、トレンチエッチマスクのいくつかの残り部分だけでなく第2のトレンチ160z内の犠牲酸化物ライナ614の部分も露出する。
【0156】
犠牲酸化物ライナ614の露出部分は除去され得る。次に、マスクライナエッチマスク643が除去され得る。ウエットエッチは第1のトレンチ150z内の犠牲酸化物ライナ614を窪ませる。この凹部は、加工面101aおよび溝の底のウエットエッチマスク624の外側端で始まる。
【0157】
図12Eは、第1のトレンチ150zの側壁の中央部分の
図12Dの犠牲酸化物ライナ614の残り部分615を示す。凹部はウエットエッチマスク624の下を切り取る。
【0158】
ウエットエッチマスク624は除去され得、別の酸化工程または蒸着工程が
図12Fに示すように第1および第2のゲート誘電体151、161を形成し得る。犠牲酸化物ライナ614の残り部分615は、第1のゲート誘電体151の嘴部分151cの少なくとも一部を形成する。
【0159】
図13A〜13Fは、第1のトレンチの側壁の部分に沿った多結晶シリコンスペーサ構造の酸化を表す。
【0160】
第1および第2のトレンチ150z、160zは、
図11Aを参照して説明したように半導体基板500aの半導体層100a内へエッチングされる。トレンチエッチは、窒化物含有層(例えば、窒化珪素層)からなるまたはそれを含むトレンチエッチマスクを使用する。第1および第2のトレンチ150z、160zを形成した後、トレンチエッチマスクの副層(例えば、TEOS酸化物などの酸化物含有部分)は
図12Aにまた示すように除去され得る。
【0161】
犠牲酸化物ライナ614が、第1および第2のトレンチ150z、160zの露出側壁上に熱成長され得、多結晶半導体材料(例えば、多結晶シリコン)が例えばプラズマエッチングを使用することにより蒸着され窪ませられ得る。
【0162】
図13Aは、第1および第2のトレンチ150z、160zの下部を埋めるとともに加工面101aと埋め込み多結晶半導体材料652の上端間の第1および第2のトレンチ150z、160zの上側部分の犠牲酸化物ライナ614の一部を露出する埋め込み多結晶半導体材料652を示す。
【0163】
メサ部170の垂直方向のトレンチエッチマスクの残り部分603、犠牲酸化物ライナ614の露出部分、および埋め込み多結晶半導体材料652を覆うマスクライナ622(例えば、窒化珪素層)が蒸着され得る。マスクライナエッチマスク643を形成するために、補助マスク材料がリソグラフィにより蒸着されパターン化され得る。
【0164】
図13Bは、第2のトレンチ160z内のマスクライナ622の一部を覆うマスクライナエッチマスク643であって第1のトレンチ150z内およびその周囲のマスクライナ622の一部を露出する開口643aを含むマスクライナエッチマスク643示す。
【0165】
開口643aを通して、異方性エッチが第1のトレンチ150z内およびその周囲のマスクライナ622の露出水平部分を除去する。
【0166】
図13Cは、第1のトレンチ150zの上部にスペーサマスク625を形成するマスクライナ622の残り部分を示す。スペーサマスク625は第1のトレンチ150z内の埋め込み多結晶半導体材料652を露出する。
【0167】
異方性エッチング工程例えばRIE(反応イオンエッチ)工程は、第1のトレンチ150z内の埋め込み多結晶半導体材料652の一部を除去し、犠牲酸化物ライナ614上で止まる。
【0168】
図13Dに示すように、第1のトレンチ150z内の埋め込み多結晶半導体材料652の残りがスペーサマスク625の垂直突起内に多結晶シリコンスペーサ672を形成する。
【0169】
異方性エッチング工程はまた、マスクライナエッチマスク643を除去し得る。代替的に、マスクライナエッチマスク643は別のエッチング工程において除去される。多結晶シリコンスペーサ672の少なくとも一部を酸化物スペーサ673に変換するために別の熱酸化が行われ得る。
【0170】
図13Eは、第1のトレンチ150zの側壁の一部に沿って形成された酸化物スペーサ673を示す。熱酸化は、第1のトレンチ150zの底部に沿った犠牲酸化物ライナ614の一部を強化し得る。
【0171】
マスクライナスペーサマスク625、第2のトレンチ160z内の埋め込み多結晶半導体材料652の残り、およびトレンチエッチマスクの残り603は除去され得る。犠牲酸化物ライナ614は除去され得、別の酸化工程または蒸着工程が、第1および第2のゲート誘電体151、161を形成する別の誘電体層632を形成し得る、酸化物スペーサ673は嘴部分151cの第1のゲート誘電体151の少なくとも一部を形成する。
【0172】
図13Fは、第1のゲート誘電体151を有する第1のトレンチ150zと第2のゲート誘電体161を有する第2のトレンチ160zを示す。第1のゲート誘電体151は垂直側壁の一部に沿って嘴部分151cを含む。第1のゲート誘電体151は第1のトレンチ150zの底部に強化部分を含み得る。
【0173】
図14A〜14Dは、ディープ損傷注入(deep damage implant)工程を使用することによる嘴部分を有するゲート誘電体の形成を表す。
【0174】
図14Aは、
図11Aを参照して説明したように半導体層100a上に注入マスク層を蒸着することにより、そしてリソグラフィにより注入マスク層をパターン化することにより形成された注入マスク683を示す。注入マスク683は、第1のトレンチの形成に割り当てられる第1の領域150xを露出し、第2のトレンチの形成に割り当てられる第2の領域160xを遮蔽する。損傷注入は注入マスク683内の開口683aを通じて行われる。損傷注入は一例としてアルゴン(Ar)、水素(H)またはヘリウム(He)イオンを使用し、加工面101aから一定距離に埋め込み損傷区域684を形成する。損傷注入は障壁区域の形成のための注入と重なり得る。代替的に、例えば、酸化速度を増進するためのフッ素(F)または別の元素が注入され得る。
【0175】
注入マスク683は除去され得る。トレンチエッチマスク層または積層が、トレンチマスク602を形成するためにリソグラフィにより蒸着されパターン化され得る。トレンチエッチマスク602を使用することにより、第1および第2のトレンチ150z、160zは半導体層100a内にエッチングされる。
【0176】
図14Bは、加工面101aから半導体層100a内に延在する第1および第2のトレンチ150z、160zを示す。第1のトレンチ150zは半導体層100a内の損傷区域684を横断する。
【0177】
トレンチエッチマスク602は除去され得、熱酸化工程がゲート誘電体または犠牲酸化物層612のいずれかを形成する。損傷区域684により形成された側壁部分に沿って、酸化速度は無損傷半導体材料により形成された側壁部分に沿った酸化速度よりも高い。
【0178】
図14Cは、第1および第2のトレンチ150z、160z間のメサ部170の上面だけでなく第1および第2のトレンチ150z、160zも裏打ちする犠牲酸化物層612を示す。損傷された半導体材料内のより高い酸化速度のおかげで、犠牲酸化物層612は、
図14Aの損傷区域684の位置と垂直方向延在部により画定された第1のトレンチ150zの側壁部分に沿って嘴部分685を含む。トレンチ側壁を滑らかにするために等方性エッチング工程が嘴部分685の外側の犠牲酸化物層612の薄い部分を除去し得る。別の酸化工程または蒸着工程は、第1および第2のゲート誘電体151、161を形成する別の誘電体層632を形成し得、嘴部分685は第1のゲート誘電体151の嘴部分151cの少なくとも一部を形成する。
【0179】
図14Dは、第1のゲート誘電体151を有する第1のトレンチ150zと第2のゲート誘電体161を有する第2のトレンチ160zとを示す。第1のゲート誘電体151は垂直側壁の一部に沿って嘴部分151cを含む。
【0180】
ここでは特定の実施形態が示され説明されたが、様々な代替および/または等価実施形態が本発明の範囲から逸脱することなく、図示され説明された特定の実施形態を置換し得るということが、当業者により理解される。本出願は、本明細書で論述された特定の実施形態への任意の適合化またはその変形もカバーするように意図されている。したがって、本発明は特許請求の範囲とその均等物だけにより制限されることが意図されている。