(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記3種以上の昇温速度が、少なくとも2℃/min、5℃/min、10℃/minの3種である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂の粘度挙動予測方法。
請求項1〜5のいずれか1項に記載した熱硬化性樹脂の粘度挙動予測方法により、任意の昇温速度における熱硬化性樹脂の粘度挙動を予測し、その組成を決定したことを特徴とする熱硬化性樹脂の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述したサーマルコンプレッションボンディング工法では、
図18(b)に示すICチップの加熱圧着工程において、アンダーフィルのボイド抑制と、良好な半田接続とを両立させることが困難であるという問題があった。
【0008】
すなわち、
図18(b)に示すICチップの加熱圧着工程において、一次硬化されたアンダーフィルの粘度が低すぎると、アウトガスの発生を抑えることができず、ボイドが生じやすくなってしまう。このため、ICチップの加熱圧着工程では、アンダーフィルの粘度の高さによって、アウトガスが発生するか否かが決まり、アウトガスが発生した場合はボイドが生じてしまう。
【0009】
その反面、
図18(b)に示すICチップの加熱圧着工程において、アンダーフィルの粘度が高すぎると、半田ボールと基板端子との接続がアンダーフィルによって阻害されてしまう。アンダーフィルは、溶融した半田が濡れ広がるまでは増粘を開始しない粘度挙動を呈することが望ましい。半田が濡れ広がる前に、アンダーフィルが先に増粘を開始すると、半田の濡れ広がりが阻害されてしまい接触不良が生じるのである。
【0010】
現在、ノンコンダクティブペーストに求められる条件として、例えば、実装タクトが4secの条件の場合、昇温速度は1800℃/min(約30℃/sec)で260℃まで昇温するが、現状のノンコンダクティブペーストの組成では、ボイドが発生してしまう。ボイドの抑制には、半田溶融温度220℃付近で樹脂が高粘度であることが有利であると考えられる。しかし、従来の方法では、評価サンプルであるノンコンダクティブペーストを、3℃/minの昇温速度の下、レオメータで測定した温度依存性粘度データを元に粘度挙動を予測するしかなく、ボイドを抑制することすらできなかった。
【0011】
上述したように、サーマルコンプレッションボンディング工法においては、アンダーフィルを、ボイド抑制と半田接続とが両立するような粘度挙動を呈する組成にする必要があるが、現状では、実装工程中の温度挙動に追従して、アンダーフィルの粘度挙動を測定する手段がなく、任意の昇温速度におけるアンダーフィルの粘度挙動を予測することができなかった。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、サーマルコンプレッションボンディング工法を行ったときの熱硬化性樹脂の粘度挙動を予測することができ、アンダーフィルのボイド発生を抑えつつ、良好な半田接続が得られる、熱硬化性樹脂の粘度挙動予測方法、シミュレーションソフトウエア、熱硬化性樹脂の製造方法、及びこの製造方法により製造したアンダーフィルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)上記目的を達成するために、本発明の熱硬化性樹脂の粘度挙動予測方法は、任意の昇温速度における熱硬化性樹脂の粘度挙動を予測するための、熱硬化性樹脂の粘度挙動予測方法であって、評価サンプルとしての熱硬化性樹脂を用意し、3種以上の昇温速度の下で、前記熱硬化性樹脂の発熱量ピークをそれぞれ測定する反応速度測定工程と、前記3種以上の昇温速度の下で、前記熱硬化性樹脂の粘度挙動をそれぞれ測定する粘度挙動測定工程と、前記反応速度測定工程で得られた前記昇温速度別の測定データを、Kamalモデル式にフィッティングし、前記昇温速度別に、前記熱硬化性樹脂の熱量と時間及び熱量と温度のフィッティングカーブを得て、前記熱硬化性樹脂の材料によって定まる前記Kamalモデル式のパラメータを算出する反応速度フィッティング工程と、前記反応速度フィッティング工程で算出されたKamalモデル式のパラメータ、及び前記粘度挙動測定工程で得られた前記昇温速度別の測定データを、Castro−Macoskoモデル式にフィッティングし、前記昇温速度別に、前記熱硬化性樹脂の粘度と時間及び粘度と温度のフィッティングカーブを得て、前記熱硬化性樹脂の材料によって定まる前記Castro−Macoskoモデル式のパラメータを算出する粘度挙動フィッティング工程と、前記粘度挙動フィッティング工程で得られた前記昇温速度別の各フィッティングカーブに基づいて、任意の昇温速度における前記熱硬化性樹脂の仮想粘度挙動をシミュレーションにより算出する仮想粘度挙動算出工程と、を含むようにしてある。
【0014】
(2)好ましくは、上記(1)の熱硬化性樹脂の粘度挙動予測方法において、前記反応速度測定工程では、前記熱硬化性樹脂の発熱量ピークを示差走査熱量測定装置により測定するとよい。
【0015】
(3)好ましくは、上記(1)又は(2)の熱硬化性樹脂の粘度挙動予測方法において、前記粘度挙動測定工程では、前記熱硬化性樹脂の粘度挙動を粘弾性測定装置により測定するとよい。
【0016】
(4)好ましくは、上記(1)〜(3)のいずれかの熱硬化性樹脂の粘度挙動予測方法において、前記反応速度フィッティング工程で用いられる前記Kamalモデル式が、下記式(A)のKamalモデル式を二重に重ねた下記式(B)の修正Kamalモデル式とするとよい。
【数1】
但し、A
1、E
1、A
2、E
2、m、nは、熱硬化性樹脂の材料毎に決定されるパラメータである。
【数2】
但し、A
1、E
1、A
2、E
2、m、n、B
1、F
1、B
2、F
2、p、q、T
bは、熱硬化性樹脂の材料毎に決定されるパラメータである。
【0017】
(5)好ましくは、上記(1)〜(4)のいずれかの熱硬化性樹脂の粘度挙動予測方法において、前記3種以上の昇温速度が、少なくとも2℃/min、5℃/min、10℃/minの3種とするとよい。
【0018】
(6)上記目的を達成するために、本発明の熱硬化性樹脂の製造方法は、上記(1)〜(5)のいずれかの熱硬化性樹脂の粘度挙動予測方法により、任意の昇温速度における熱硬化性樹脂の粘度挙動を予測し、その組成を決定するようにしてある。
【0019】
(7)上記目的を達成するために、本発明のアンダーフィルは、上記(6)に記載の熱硬化性樹脂の製造方法により、任意の昇温速度における粘度挙動を予測し、その組成を決定したアンダーフィルであって、前記アンダーフィルは、電子部品を実装する前に基板上に塗布され、該アンダーフィルを介して、前記電子部品が前記基板上に熱圧着されるサーマルコンプレッションボンディングに用いられ、所定の昇温速度で前記サーマルコンプレッションボンディングを実施した場合、前記電子部品を接続する半田の溶融開始後に、前記アンダーフィルの粘度増加が開始されるような粘度挙動を持たせた構成としてある。
【0020】
(8)好ましくは、上記(7)のアンダーフィルにおいて、昇温速度が約3000℃/minのときの粘度増加が、約150〜260℃の間で開始されるような粘度挙動とするとよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の熱硬化性樹脂の粘度挙動予測方法、シミュレーションソフトウエア、熱硬化性樹脂の製造方法、及びこの製造方法により製造したアンダーフィルによれば、サーマルコンプレッションボンディング工法を行ったときの熱硬化性樹脂の粘度挙動を予測することができ、アンダーフィルのボイド発生を抑えつつ、良好な半田接続が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る熱硬化性樹脂の粘度挙動予測方法、シミュレーションソフトウエア、熱硬化性樹脂の製造方法、及びこの製造方法により製造したアンダーフィルについて、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
<装置構成>
まず、本実施形態に係る熱硬化性樹脂の粘度挙動予測方法を実施するための装置について、
図1及び
図2を参照しつつ説明する。
【0025】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂の粘度挙動予測方法では、評価サンプルとしての熱硬化性樹脂について、3種の昇温速度の下で、反応速度と粘度挙動とを実際に測定し、この測定結果を、本実施形態に係る専用のシミュレーションソフトウエアで解析することにより、前記熱硬化性樹脂の各昇温速度別の粘度挙動に関するフィッティングカーブを生成する。これら粘度挙動に関するフィッティングカーブに基づいて、任意の昇温速度における前記熱硬化性樹脂の粘度挙動を予測する。
【0026】
図1において、10は、3種の昇温速度の下で、前記熱硬化性樹脂の反応速度を測定するための示差走査熱量(DSC:Differential scanning calorimetry)測定装置である。示差走査熱量測定装置10は、3種の昇温速度の下で、前記熱硬化性樹脂の温度依存性の発熱量ピークを測定する。このような示差走査熱量測定装置10としては、例えば、NETZSCH社製の「DSC204F1 Phoenix(登録商標)」を使用することができる。
【0027】
また、20は、3種の昇温速度の下で、前記熱硬化性樹脂の粘度挙動を測定するためのレオメータ(粘弾性測定装置)である。レオメータ20は、3種の昇温速度の下で、前記熱硬化性樹脂の温度依存性の粘度挙動を測定する。このようなレオメータ20としては、例えば、Thermo SCIENTIFIC社製の「HAAKE MARSIII(商標)」を使用することができる。
【0028】
これら示差走査熱量測定装置10及びレオメータ20の測定データは、それぞれコンピュータ30に入力され、このコンピュータ30にインストールされた本実施形態のシミュレーションソフトウエアにより解析される。
図2に示すように、コンピュータ30は、入出力バス31に接続されたCPU(Central Processing Unit)32、RAM(Random Access Memory)33、ROM(Read Only Memory)34及び入出力インターフェース回路35を備えている。
【0029】
コンピュータ30の入出力インターフェース回路35には、液晶ディスプレイなどの画像表示装置30A、キーボードやマウスなどの入力装置30Bが接続されているほか、上述した示差走査熱量測定装置10及びレオメータ20が接続されている。また、RAM33には、本実施形態のシミュレーションソフトウエアが消去可能に記憶されており、このシミュレーションソフトウエアは、CPU32により実行される。
【0030】
ユーザは、コンピュータ30を通じて、示差走査熱量測定装置10及びレオメータ20の測定条件を設定し、これら示差走査熱量測定装置10及びレオメータ20に、前記熱硬化性樹脂の反応速度及び粘度挙動の実測を行わせる。示差走査熱量測定装置10及びレオメータ20の測定結果は、入出力インターフェース回路35を介してコンピュータ30に入力され、本シミュレーションソフトウエアに従ったコンピュータ30の解析処理の結果が、画像表示装置30Aに出力される。
【0031】
なお、本実施形態では、汎用のコンピュータ30のRAM33に、本シミュレーションソフトウエアを事後的にダウンロードする構成としているが、この構成に限定されるものではなく、本実施形態のシミュレーションソフトウエアをROM34に記憶させて、コンピュータ30を本実施形態の粘度挙動予測方法の専用機としてもよい。
【0032】
<シミュレーションソフトウエア>
次に、コンピュータ30のRAM33に記憶された本実施形態のシミュレーションソフトウエアの構成について、
図3を参照しつつ説明する。
【0033】
図3において、本実施形態のシミュレーションソフトウエア40は、主として、反応速度フィッティング手段41と、粘度挙動フィッティング手段42と、仮想粘度挙動算出手段43とを含む構成となっている。
【0034】
<<反応速度フィッティング手段>>
反応速度フィッティング手段41は、フィッティング演算処理手段41Aと、フィッティングカーブ生成手段41Bと、パラメータ算出手段41Cとを含む構成となっている。フィッティング演算処理手段41Aは、
図1に示す示差走査熱量測定装置10からの各昇温速度別の測定データを、Kamalモデル式にフィッティングする演算処理を行う。フィッティングカーブ生成手段41Bは、フィッティング演算処理手段41Aの演算処理の結果に基づいて、各昇温速度別に、前記熱硬化性樹脂の熱量と時間及び熱量と温度のフィッティングカーブを生成する。パラメータ算出手段41Cは、前記熱硬化性樹脂の材料によって定まるKamalモデル式のパラメータを算出する。
【0035】
<<粘度挙動フィッティング手段>>
粘度挙動フィッティング手段42は、フィッティング演算処理手段42Aと、フィッティングカーブ生成手段42Bと、パラメータ算出手段42Cとを含む構成となっている。フィッティング演算処理手段42Aは、反応速度フィッティング手段41が算出したKamalモデル式のパラメータ、及び
図1に示すレオメータ20からの各昇温速度別の測定データを、Castro−Macoskoモデル式にフィッティングする演算処理を行う。フィッティングカーブ生成手段42Bは、フィッティング演算処理手段42Aの演算処理の結果に基づいて、各昇温速度別に、前記熱硬化性樹脂の粘度と時間及び粘度と温度のフィッティングカーブを生成する。パラメータ算出手段42Cは、前記熱硬化性樹脂の材料によって定まるCastro−Macoskoモデル式のパラメータを算出する。
【0036】
<<仮想粘度挙動算出手段>>
仮想粘度挙動算出手段43は、粘度挙動演算処理手段43Aと、フィッティングカーブ生成手段43Bとを含む構成となっている。粘度挙動演算処理手段43Aは、粘度挙動フィッティング手段42が生成した前記熱硬化性樹脂の粘度と時間及び粘度と温度のフィッティングカーブに基づいて、前記3種以外の任意の昇温速度における前記熱硬化性樹脂の仮想粘度挙動をシミュレーションにより算出する。フィッティングカーブ生成手段43Bは、粘度挙動演算処理手段43Aの算出結果に基づいて、任意の昇温速度における前記熱硬化性樹脂の仮想粘度挙動を示すフィッティングカーブを生成する。
【0037】
<<その他>>
なお、示差走査熱量測定装置10及びレオメータ20には、通常、専用の測定・解析ソフトウエアが用意されているが、本実施形態のシミュレーションソフトウエア40が、示差走査熱量測定装置10及びレオメータ20の測定データを解析し、
図6(a)や
図7に示すような測定結果をコンピュータ30に生成させるプログラムを含んでもよい。
【0038】
<熱硬化性樹脂の粘度挙動予測方法>
次に、上述した示差走査熱量測定装置10、レオメータ20、コンピュータ30を用いた本実施形態の熱硬化性樹脂の粘度挙動予測方法について、
図4〜
図14を参照しつつ詳述する。
【0039】
<<本測定方法の技術的意義>>
サーマルコンプレッションボンディング工法は、一般に、1800〜3000℃/minの高速昇温で行われ、使用するアンダーフィル(熱硬化性樹脂)の粘度挙動によってはボイドが発生してしまい、また、半田の接続不良が生じてしまう問題がある。すなわち、1800〜3000℃/minの高速昇温に対して、使用するアンダーフィルの粘度を高くするとボイドの発生を抑えることができるが、半田の接続不良が生じやすくなる。これと逆に、1800〜3000℃/minの高速昇温に対して、使用するアンダーフィルの粘度を低くすると半田の接続不良が生じなくなるが、ボイドが発生しやすくなる。
【0040】
このため、サーマルコンプレッションボンディング工法に使用するアンダーフィルの開発には、高速昇温時の粘度制御が必要となるが、サーマルコンプレッションボンディング工法の昇温速度は1800〜3000℃/minとあまりにも高く、従来の一般的な粘度測定装置であるレオメータは、昇温速度10℃/minの測定が限界であり、昇温速度1800〜3000℃/minで粘度を実測することは到底できない。さらに、アンダーフィルは、昇温時にゲル化が始まることによる粘度上昇も起きるので、10℃/minといった低速昇温時の挙動から、1800〜3000℃/minの高速昇温時の粘度を予測することは極めて困難である。
【0041】
そこで、本実施形態の熱硬化性樹脂の粘度挙動予測方法では、アンダーフィルの高速昇温時の硬化を加味した粘度予測を行っている。すなわち、アンダーフィルの硬化度依存を求めるために、示差走査熱量測定装置10によって、3種の昇温速度別に測定した結果をKamalモデル式にフィッティングする。次いで、アンダーフィルの昇温速度依存を求めるために、レオメータ20によって前記3種の昇温速度別に測定した結果をCastro−Macoskoモデル式にフィッティングする。その後、アンダーフィルの硬化度と昇温速度とを組み合わせ、これら挙動を統合して加味した粘度挙動の予測を可能とした。
【0042】
<<反応速度測定工程>>
図4は、評価サンプルとしての熱硬化性樹脂の反応速度測定工程の手順を示すフローチャートである。この反応速度測定工程では、3種以上の昇温速度の下で、前記熱硬化性樹脂の反応速度をそれぞれ測定する。本実施形態では、前記熱硬化性樹脂に、出願人であるナミックス株式会社製のプレアプライドアンダーフィルマテリアル「XS8448−196」を使用し、2℃/min、5℃/min、10℃/minの3種の昇温速度の下、
図1に示す示差走査熱量測定装置10によって、前記熱硬化性樹脂の発熱量ピークをそれぞれ測定している(
図4のステップS1)。
【0043】
示差走査熱量測定装置10による3種の昇温速度の各測定データは、それぞれコンピュータ30に入力される(
図4のステップS2)。コンピュータ30は、差走査熱量測定装置10の専用ソフトウエア、又は本実施形態のシミュレーションソフトウエアのプログラムに従い、各測定データの0値を補正して、
図6(a)に示すような熱量と温度との関係(温度依存性反応速度)を表すグラフを生成する。
図6(a)の測定結果によれば、2℃/min、5℃/min、10℃/minのいずれの昇温速度の場合も、小さい初期ピークは出ているが、昇温速度が高くなるにつれ、ピーク温度も高くなるという一般的な反応速度カーブを描いていることが分かる。
【0044】
ここで、3種以上の昇温速度の下で、前記熱硬化性樹脂の反応速度をそれぞれ測定する意義は、前記熱硬化性樹脂の粘度の温度依存性と、昇温速度依存性とを考慮した単一式にするために、両者を可変させた際の可変量と粘度変化との関係を同定するためである。4種、5種、6種・・・と昇温速度を変えた測定データが多いほど同定制度は上がると期待されるが、実際は3種の昇温速度の測定データがあれば、期待される同定式が得られる。
【0045】
また、前記熱硬化性樹脂の発熱量ピークを測定する意義は、前記熱硬化性樹脂は、温度及び時間を与えることで、樹脂の反応基が開環して硬化剤と反応を始める硬化現象が起きるため、その粘度が増加していく。前記熱硬化性樹脂の発熱量ピークは、硬化現象が最も進む温度及び時間を示唆する。したがって、前記熱硬化性樹脂の発熱量ピークから、温度、時間、粘度の関係性を明らかにし、硬化による粘度変化を知ることができる。
【0046】
<<粘度挙動測定工程>>
図5は、前記熱硬化性樹脂の粘度挙動測定工程の手順を示すフローチャートである。この粘度挙動測定工程では、2℃/min、5℃/min、10℃/minの3種の昇温速度の下、
図1に示すレオメータ20によって、前記熱硬化性樹脂の粘度挙動をそれぞれ測定している(
図5のステップS1)。前記熱硬化性樹脂は樹脂ペーストの状態とし、レオメータ20の諸条件としては、歪み0.5%で1Hz、40φパラレルコーンでGap500μmにて測定を行った。
【0047】
レオメータ20による3種の粘度挙動の各測定データは、それぞれコンピュータ30に入力される(
図5のステップS2)。コンピュータ30は、レオメータ20の専用ソフトウエア、又は本実施形態のシミュレーションソフトウエアのプログラムに従い、
図7に示すような粘度と温度との関係(温度依存性粘度)を表すグラフを生成する。
【0048】
<<反応速度フィッティング工程>>
図8は、前記熱硬化性樹脂の粘度挙動予測方法の反応速度フィッティング工程、粘度挙動フィッティング工程及び仮想粘度挙動算出工程の手順を示すフローチャートである。これら工程は、いずれもコンピュータ30が、本実施形態のシミュレーションソフトウエアのプログラムに従い、上述した反応速度測定工程及び粘度挙動測定工程の測定データに基づいて処理する。
【0049】
図8のステップS21〜23に、反応速度フィッティング工程の手順を示す。ステップS21〜23の前処理として、コンピュータ30は、
図4の反応速度測定工程で得られた測定データをゼロライン補正し、各昇温速度別の総熱量値が可能な限り相違ないデータを調整する。仮に、各昇温速度別の総熱量値に相違が生じた場合は、前記熱硬化性樹脂に未硬化部が存在することになるため、精度の低下が予測される。
【0050】
次いで、ステップS21に進み、コンピュータ30は、
図4の反応速度測定工程で得られた各昇温速度別の測定データを、下記式(1)のKamalモデル式にフィッティングする。Kamalモデル式は、昇温速度一定、質量一定(単位質量あたりに換算)の条件下で測定された熱硬化性樹脂の発熱量と温度(又は時間)の関係である反応速度曲線をモデル化した式である。
【数3】
但し、A
1、E
1、A
2、E
2、m、nは、熱硬化性樹脂の材料毎に決定されるパラメータである。
【0051】
ここで、発明者らは、当初、上記式(1)を用いて反応速度測定工程の測定データをフィッティングしたが、上記式(1)に対して、測定データを収束誤差範囲内に収めることができずに発散してしまった。この要因としては、各昇温速度別の総熱量値の相違があったためと考えられる。各昇温速度別の総熱量値を
図6(b)に示す。同図(b)に示すように、各昇温速度別の総熱量値は、約8%〜5%程度のばらつきがあることが分かる。
【0052】
そこで、本実施形態では、各昇温速度別の総熱量値にばらつきがある場合や、発熱量ピークが複数あってノイズが多い場合などに対応すべく、上記式(1)のKamalモデル式を2重に重ねた下記式(2)の修正Kamalモデル式によってフィッティングすることを試みた。
【数4】
但し、A
1、E
1、A
2、E
2、m、n、B
1、F
1、B
2、F
2、p、q、T
bは、熱硬化性樹脂の材料毎に決定されるパラメータである。
【0053】
上記式(1)のKamalモデル式は、6個のパラメータでフィッティングするものであったが、本実施形態の上記式(2)の修正Kamalモデル式は、その2倍の12個のパラメータでフィッティングするものである。この結果、より柔軟に複雑なモデルをフィッティングすることが可能となる。
【0054】
次いで、
図8のステップS22に進み、コンピュータ30は、各昇温速度別の反応速度のフィッティングカーブを生成する。上記式(2)の修正Kamalモデル式により生成した、各昇温速度別の反応速度のフィッティングカーブを
図9(a)、(b)に示す。
図9(a)は、
図5のステップS1で得られた前記熱硬化性樹脂の熱量と時間(時間依存性反応速度)の実測データと、
図8のステップS22で得られたフィッティングカーブを示すグラフである。
図9(b)は、
図5のステップS1で得られた前記熱硬化性樹脂の熱量と温度(温度依存性反応速度)の実測データと、
図8のステップS22で得られたフィッティングカーブを示すグラフである。
【0055】
図9(a)、(b)に示すように、反応速度の実測データとフィッティングカーブとを比較すると、両者は、ピーク付近での熱量値の差異は多少あるが、立ち上がり、立ち下りでの挙動はほぼ一致しており、フィッティングカーブに問題ない。
【0056】
次いで、
図8のステップS23に進み、コンピュータ30は、ステップS21及びS22のフィッティング結果に基づいて、前記熱硬化性樹脂の材料によって定まる上記(2)の修正Kamalモデル式のパラメータA
1、E
1、A
2、E
2、m、n、B
1、F
1、B
2、F
2、p、q、T
bを算出する。これらパラメータの一覧を
図10に示す。
【0057】
<<粘度挙動フィッティング工程>>
図8のステップS24〜26に、粘度挙動フィッティング工程の手順を示す。まず、コンピュータ30は、ステップS24において、ステップS23で算出された上記式(2)の修正Kamalモデル式のパラメータ、及び
図5の粘度挙動測定工程(ステップS11、S12)で得られた各昇温速度別の測定データを、下記式(4)のCastro−Macoskoモデル式にフィッティングする。ここで、下記式(4)のCastro−Macoskoモデル式は、下記式(3)のMacoskoモデル式の熱可塑性パートに、Castroモデル式を適用したものである。下記式(3)のMacoskoモデル式は、一定昇温速度条件下で測定された、熱硬化性樹脂の粘度と時間との関係を表す粘度成長曲線をモデル化した式である。
【数5】
但し、B、T
B、τ
*、r、ω、α
gel、E、Fは、熱硬化性樹脂の材料毎に決定されるパラメータである。
【0058】
次いで、
図8のステップS25に進み、コンピュータ30は、各昇温速度別の粘度挙動のフィッティングカーブを生成する。上記式(4)のCastro−Macoskoモデル式により生成した、各昇温速度別の粘度挙動のフィッティングカーブを
図11(a)、(b)に示す。
図11(a)は、
図4のステップS11で得られた前記熱硬化性樹脂の熱量と時間(時間依存性粘度)の実測データと、
図8のステップS25で得られたフィッティングカーブを示すグラフである。
図11(b)は、
図4のステップS11で得られた前記熱硬化性樹脂の熱量と温度(温度依存性粘度)の実測データと、
図8のステップS25で得られたフィッティングカーブを示すグラフである。
図11(a)、(b)に示すように、粘度挙動の実測データとフィッティングカーブとを比較すると、両者はほぼ一致しており、フィッティングカーブに問題ない。
【0059】
次いで、
図8のステップS26に進み、コンピュータ30は、ステップS24及びS25のフィッティング結果に基づいて、前記熱硬化性樹脂の材料によって定まる上記(4)のCastro−Macoskoモデル式のパラメータB、T
B、τ
*、r、ω、α
gel、E、Fを算出する。これらパラメータの一覧を
図12に示す。
【0060】
<<仮想粘度挙動算出工程>>
図8のステップS27、S28に、仮想粘度挙動算出工程の手順を示す。ステップS27において、コンピュータ30は、ステップS24〜S26で得られた昇温速度別の各フィッティングカーブに基づいて、任意の昇温速度における前記熱硬化性樹脂の仮想粘度挙動をシミュレーションにより算出する。その後、ステップS28に進み、コンピュータ30は、ステップS27の算出結果に基づいて、任意の昇温速度における前記熱硬化性樹脂の仮想粘度挙動を表すフィッティングカーブを生成する。
【0061】
ここで、仮想粘度挙動算出工程のステップS27で行われるシミュレーションの処理について、
図13及び
図14に示す仮想粘度挙動算出サブルーチンを参照しつつ説明する。
図13は前半の反応速度パート、
図14は後半の粘度挙動パートの処理を示す。
【0062】
まず、
図13のステップS31において、コンピュータ30は、ユーザの入力に従って評価サンプルの任意の昇温速度を選定する。ここでいう「任意の昇温速度」とは、例えば、レオメータ20では測定することができない1800〜3000℃/minの高速昇温であってもよい。
【0063】
次いで、ステップS32に進み、コンピュータ30は、Kamalモデル式(本実施形態では、上述した修正Kamalモデル式)の各パラメータに、任意の昇温速度に応じた仮数値を代入する。そして、ステップS33に進み、コンピュータ30は、
図4の反応速度測定工程(ステップS1)と同じ時間の熱量をKamalモデル式から算出する。
【0064】
その後、ステップS34において、コンピュータ30は、Kamalモデル式の熱量の算出結果と、
図4の反応速度測定工程(ステップS1)の熱量の測定データとを比較し、これら値の一致率が良好か否か(許容範囲か否か)を判断する。一致率が良好でないと判別した場合(NO)は、ステップS36に進み、コンピュータ30は、Kamalモデル式の各パラメータに代入する仮数値を増減させ、ステップS32〜S35の処理を繰り返す。一方、一致率が良好であると判別した場合(YES)は、ステップS37に進み、コンピュータ30は、Kamalモデル式の各パラメータを決定する。
【0065】
次いで、
図14のステップS41に進み、コンピュータ30は、Castro−Macoskoモデル式の各パラメータに、任意の昇温速度に応じた仮数値を代入する。そして、ステップS42に進み、コンピュータ30は、
図5の粘度挙動測定工程(ステップS11)と同じ時間の粘度をCastro−Macoskoモデル式から算出する。
【0066】
その後、ステップS43において、コンピュータ30は、Castro−Macoskoモデル式の熱量の算出結果と、
図5の粘度挙動測定工程(ステップS11)の粘度の測定データとを比較し、これら値の一致率が良好か否か(許容範囲か否か)を判断する。一致率が良好でないと判別した場合(NO)は、ステップS45に進み、コンピュータ30は、Castro−Macoskoモデル式の各パラメータに代入する仮数値を増減させ、ステップS41〜S44の処理を繰り返す。一方、一致率が良好であると判別した場合(YES)は、ステップS46に進み、コンピュータ30は、Castro−Macoskoモデル式の各パラメータを決定する。
【0067】
次いで、ステップS47に進み、コンピュータ30は、
図13のステップS37で決定したKamalモデル式の各パラメータと、ステップS46で決定したCastro−Macoskoモデル式の各パラメータを、Castro−Macoskoモデル式にフィッティングし、仮想粘度挙動のフィッティングカーブを生成する(ステップS48)。生成されたフィッティングカーブは、例えば、後述する
図16のように、コンピュータ30の画像表示装置30Aに表示される(
図8のステップS27)。
【0068】
<<<仮想粘度挙動の再現性の検証>>>
本実施形態では、任意の昇温速度をレオメータ20で測定可能な3℃/minに設定して、コンピュータ30が算出した仮想粘度挙動の再現性を検証した。すなわち、コンピュータ30には、ステップS24〜S26で得られた昇温速度別の各フィッティングカーブに基づいて、昇温速度3℃/minの条件で前記熱硬化性樹脂の仮想粘度挙動を算出させ、一方で、レオメータ20を用いて、昇温速度3℃/minの条件で前記熱硬化性樹脂の粘度挙動を実際に測定し、予測した仮想粘度挙動のフィッティングカーブと、実測データとを比較した。
【0069】
この比較結果を
図15(a)、(b)に示す。
図15(a)は、粘度と時間の関係(時間依存性粘度)の実測データ、及び予測した仮想粘度挙動のフィッティングカーブを示すグラフであり、同図(b)は粘度と温度の関係(温度依存性粘度)の実測データ、及び予測した仮想粘度挙動のフィッティングカーブを示すグラフである。これらグラフのうち、昇温速度3℃/minの実測データと、そのフィッティングカーブとに注目すると、コンピュータ30により算出した昇温速度3℃/minのフィッティングカーブが、実測データとほぼ一致していることが分かる。
【0070】
<<<高速昇温への適用>>>>
現在、サーマルコンプレッションボンディング工法で用いられているノンコンダクティブペーストに求められる条件として、例えば、タクト4Secの実装条件の場合、昇温速度は1800℃/min(約30℃/sec)で260℃まで昇温するが、現状ではタクトの際にボイドが発生している問題がある。本発明者らが鋭意検討した結果、ボイド抑制には、半田溶融温度である220℃付近で樹脂が高粘度であることが有利と考えるが、現状の測定方法では3℃/minの温度依存性粘度の実測データを元に検討するほかに手段がなく、粘度の判断も困難であった。
【0071】
そこで、本実施形態の熱硬化性樹脂の粘度挙動予測方法により、昇温速度1800℃/minを予測した仮想粘度挙動のフィッティングカーブを
図16に示す。比較のために、3℃/min、500℃/min、3000℃/minの予測結果も示す。粘度は200℃付近から上昇するが、昇温速度1800℃/minを予測した仮想粘度挙動のフィッティングカーブによれば、200℃付近でも増粘せずに非常に低粘度であり、ボイドが発生するものと考えられる。したがって、ボイドの発生を抑える熱硬化性樹脂の開発には、図中の矢印に示すように200℃付近での粘度を上げるような改良の方向性が示唆される。
【0072】
このように、本実施形態に係る熱硬化性樹脂の粘度挙動予測方法によれば、アンダーフィルとしての熱硬化性樹脂の開発工数を大幅に短縮することができ、熱硬化性樹脂のメカニズムを考慮した改善、及び新たな優位性を持つ樹脂材料の開発を展開することが可能となる。