【実施例】
【0030】
以下、実施例を挙げて本実施形態の床版の効果について説明する。ただし、本発明がこれに限られることはない。
【0031】
(実施例1、2および比較例1〜3)
水、セメント、膨張材、骨材(細骨材および粗骨材)、混和剤を
図2に示す配合により混合し、実施例1、2および比較例1〜3のコンクリートを調製した。図中水、セメント、膨張材、骨材(細骨材および粗骨材)の単位量はコンクリート1m
3あたりの値(kg)である。また、混和剤はAE減水剤であり、図の値はセメント重量に対する重量比である。なお、膨張材としては低添加型の石灰系膨張材を用いている。
【0032】
実施例1、2および比較例3では骨材として軽量骨材を用い、比較例1、2では通常の骨材を用いた。さらに、実施例1、2では膨張材を使用し、比較例1〜3では膨張材を使用しなかった。
【0033】
(輪荷重走行試験)
図2の配合により調製した実施例および比較例のコンクリートを用いて床版を模擬した供試体30を作成し、輪荷重走行試験を行った。
【0034】
図3はこの供試体30について示す図である。
図3(a)は供試体30の平面を示す図であり、
図3(b)、(c)はそれぞれ
図3(a)の線A−A、線B−Bによる断面図である。図に示すように、供試体30は長方形状の平板体であり、内部に補強筋40を配置したものである。
【0035】
輪荷重走行試験は、
図4(a)に示す試験装置10を用いて行った。
この試験装置10は、レール22に沿ってスライド可能なスライドステージ21上に供試体30を配置し、このスライドステージ21をレール22に沿って往復移動させつつ、別に設けたフレーム11に配置した負荷部13から供試体30に輪荷重を負荷するものである。
負荷部13の先端には車輪が設けられる。この車輪はスライドステージ21の移動に伴い供試体30上を相対移動する(
図4(b)、(c)の矢印参照)。負荷部13は、この車輪を介して供試体30に輪荷重を負荷するようになっている。
【0036】
図4(b)はスライドステージ21上の供試体30を上面から見た図である。供試体30は、平面の長辺に沿った支持部30a、30aで単純支持するとともに、短辺に沿った支持部30b、30bで弾性支持し、スライドステージ21上に配置した。
【0037】
詳しくは後述するが、供試体の一部については試験条件を変えて、湛水状態を模擬した条件下で試験を行っている。この条件を
図4(c)に示す。
図4(c)は、
図4(b)と同様、スライドステージ21上の供試体30を上面から見た図である。図に示すように、この条件では、供試体30上の外周に沿って土手状に盛上部41を設け、その内側で5mm程度の厚みの湛水層43を設けて湛水させた。この湛水層43としては、布に水分を含ませたものを用いた。
この試験条件を以降水中条件というものとし、これに対し、前記の
図4(b)に示した試験条件を気中条件というものとする。
【0038】
輪荷重走行試験は、実施例1、2、および比較例3については、初期荷重を98.0kNとして、走行20万回までは走行10万回ごとに29.4kNずつ荷重を増加させ、走行20万回以降は走行5万回ごとに29.4kNずつ荷重を増加させた。
比較例1、2については、初期荷重を98.0kNとして、走行20万回ごとに29.4kNずつ荷重を増加させた。なお、走行回数は、試験装置10の負荷部13の車輪が移動範囲の一端から他端まで移動した場合を1回として数えている。
【0039】
また、実施例2、比較例1、3については
図4(b)に示す気中条件にて試験を行った。
一方、実施例1、比較例2については、
図4(b)に示す気中条件で走行10万回を与えた後に、
図4(c)に示す水中条件で7日間湛水させた後、その条件で以降の輪荷重走行試験を実施した。
【0040】
以上の条件で、各供試体がせん断破壊するまで走行を繰り返した。各供試体は、ひび割れの発生とその進展によりせん断破壊に至っていた。各供試体の疲労耐久性は、せん断破壊までの走行回数により評価した。この走行回数としては、荷重98.0kNの一定載荷とした場合の等価走行回数を用いた。等価走行回数Neqの算出式は以下の通りである。
Neq=Σ(Pi/98)
m×Ni
ここで、Pi(kN)は実際に載荷した荷重であり、Ni(回)は荷重Piでの走行回数である。mは等価換算のための係数であり、ここでは、12.76を用いている。
【0041】
以上の輪荷重走行試験の試験結果を
図5、
図6に示す。
図5は横軸を等価走行回数(回)とし、縦軸を供試体のたわみ量(mm)としたグラフである。また、
図6(a)は、実施例1、2、比較例1、2、3について終局までの等価走行回数を示すとともに、この等価走行回数について、比較例1、2、3のそれぞれを基準とした場合の比を示したものである。また、
図6(b)は、比較例1を基準とした場合の、実施例1、2等の終局までの等価走行回数の比をグラフ化したものである。
【0042】
図5、
図6に示すように、普通コンクリートによる供試体を用いた比較例1、2では、気中条件による比較例1は約990万回で終局し、水中条件による比較例2は約290万回で終局した。また、軽量コンクリートによる供試体を用いて気中条件による試験を行った比較例3では約2300万回で終局した。ここで、終局とは、コンクリートがせん断疲労破壊し、一部が破砕されて落下した状態を指している。なお、軽量コンクリートで高い疲労耐久性が得られているのは、軽量骨材が保水性に優れることから、その内部養生効果により微細なひび割れがない緻密なコンクリートとなり損傷の進展が抑制されたことが理由の一つとして考えられる。
【0043】
一方、軽量骨材と膨張材を用いたコンクリートによる供試体を用いた実施例1、2では、水中条件による実施例1は約5200万回で終局し、気中条件による実施例2は約3億3000万回で終局した。
これは、普通コンクリートによる供試体を用いた気中条件による比較例1に対し、それぞれ、約5倍、約33倍、水中条件による比較例2に対し、約18倍、約110倍の疲労耐久性の高さを示し、軽量コンクリートによる供試体を用いた気中条件による比較例3に対し、それぞれ、約2倍、約14倍の疲労耐久性の高さを示している。
【0044】
また
図5より、実施例1、2では、比較例1、2、3と比較し、等価走行回数が増加しても、たわみが増加していない。このことは膨張材により与えられるケミカルプレストレスに伴いコンクリートの引張強度が増加する効果によるものと考えられる。
【0045】
以上により、本実施形態のように軽量骨材と膨張材を用いたコンクリートによる床版が、高い耐水性を有する、つまり雨水等の水が滞水している場合であっても高い疲労耐久性が得られることが確認できた。すなわち、この床版の水中条件での疲労耐久性(実施例1参照)が、普通コンクリートを用いた床版の水中条件における疲労耐久性(比較例2参照)をはじめ、普通コンクリートや軽量コンクリートを用いた床版の気中条件における疲労耐久性(比較例1、3参照)を大きく超えることが確認された。
この理由の一つとしては、膨張材により与えられるケミカルプレストレスに伴いコンクリートの引張強度が増加する効果により、ひび割れが生じにくくなり、水分の進入が抑えられていたと考えられる。
【0046】
以上説明したように、軽量骨材と膨張材を使用したコンクリートを用いることで、高い耐水性を有し、軽量かつ床版としての使用目的に応じた強度や施工性を有するコンクリートが得られる。従って、前記の床版31を、耐水性が高く、かつ、軽量で十分な強度を有するように形成できる。床版31の上部の防水層33についても、ある程度の劣化が許容できて交換の頻度を低減でき、コスト減につながる。さらには、防水層33を省略した場合や、防水層33の機能が消失した場合でも、上記の試験結果から、普通コンクリートや軽量コンクリートによる床版よりも高い疲労耐久性が得られることがわかる。また、道路構造3の長寿命化により補修や更新の頻度も下がり、ライフサイクルコストの軽減も期待できる。
【0047】
以上、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。