特許第6082654号(P6082654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6082654
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】研削方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 41/06 20120101AFI20170206BHJP
   B24B 49/02 20060101ALI20170206BHJP
   H01L 21/304 20060101ALN20170206BHJP
【FI】
   B24B41/06 L
   B24B49/02 Z
   !H01L21/304 631
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-107897(P2013-107897)
(22)【出願日】2013年5月22日
(65)【公開番号】特開2014-226749(P2014-226749A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087099
【弁理士】
【氏名又は名称】川村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100063174
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 功
(74)【代理人】
【識別番号】100124338
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 健
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真司
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−264913(JP,A)
【文献】 特開2011−245610(JP,A)
【文献】 特開2012−111008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 41/06
B24B 49/02
H01L 21/304
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状ワークを保持面で保持する保持テーブルと、研削砥石が環状に配置された研削ホイールが装着され該保持テーブルが保持した該板状ワークを研削する研削手段と、該板状ワークに接触する該研削砥石の研削面と該保持テーブルの該保持面との平行度を相対的に調整する平行度調整手段と、該保持テーブルに保持される該板状ワークの厚みを測定する厚み測定手段と、該厚み測定手段による板状ワークの厚み測定を制御する制御部と、該厚み測定手段によって測定した該板状ワークの厚みを記憶する記憶部とを少なくとも備える研削装置を用いた研削方法であって、
該板状ワークは、基台となる第1の板状ワークと、第2の板状ワークとにより構成され、該第1の板状ワークの一方の面と該第2の板状ワークの一方の面との間に貼り合わせ部材を介在させて貼り合わせて形成されており、
該第1の板状ワークの他方の面を該保持テーブルで保持するワーク保持工程と、
該厚み測定手段を用いて該保持テーブルが保持した該第1の板状ワークの外周部分と中央部分と該第1の板状ワークの半径の中点となる部分との少なくとも3箇所の測定位置で該第1の板状ワークの厚みを測定し、該記憶部に該第1の板状ワークの径方向の厚みを記憶させる第1の厚み測定工程と、
該記憶部が記憶する該第1の板状ワークの径方向の厚みによって該平行度調整手段を用いて該保持テーブルが保持する該第1の板状ワークの一方の面と該研削面との平行度を調整する平行度調整工程と、を備え、
該平行度調整工程の後に該第2の板状ワークを研削する研削方法。
【請求項2】
前記厚み測定手段は、前記制御部で第2の板状ワークのみの厚みを測定可能に制御し、
前記平行度調整工程の後、該厚み測定手段で該第2の板状ワークのみの厚みを測定しつつ前記研削手段によって研削し、該第2の板状ワークを所定の厚みにする請求項1記載の研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状ワークの厚みを測定し、その測定結果に基づいて板状ワークを研削する研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
研削装置において板状ワークを研削する際は、保持テーブルに保持された板状ワークの上方から板状ワーク全体の厚みを測定しながら研削することによって板状ワークの厚みに厚み差(ばらつき)が発生しないようにしている。板状ワークの厚みを測定する手段としては、例えば、非接触式の厚み測定手段がある。厚み測定手段は、複数の光学系のセンサを備え、保持テーブルに保持された板状ワークの上方から径方向における複数箇所で測定することにより、板状ワークの径方向の厚み分布を測定することができる(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【0003】
板状ワークとしては、例えば、2枚の板状ワークを貼り合わせ部材で貼り合わせて構成されているものがある。このような貼り合わせワークにおいては、下側にある第1の板状ワークが保持テーブルで保持されるとともに、上側にある第2の板状ワークが研削される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−264913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記したような第1の板状ワークの径方向における厚みに厚み差があると、この厚み差に反して第1の板状ワークの上側に貼り合わせた第2の板状ワークについても厚み差が生じてしまう。すなわち、第1の板状ワークの径方向における厚みに厚い部分があると、その上側に貼られた第2の板状ワークの厚みは薄くなり、また、第1の板状ワークの径方向における厚みに薄い部分があると、その上側に貼られた第2の板状ワークの厚みは厚くなる。そのため、上側にある第2の板状ワークを均一な厚みに研削することが困難となっている。
【0006】
本発明は、上記の事情にかんがみてなされたものであり、下側の板状ワークの径方向における厚みの厚み差に影響されることなく、上側の板状ワークの厚みを均一に研削できるようにすることに発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、板状ワークを保持面で保持する保持テーブルと、研削砥石が環状に配置された研削ホイールが装着され該保持テーブルが保持した該板状ワークを研削する研削手段と、該板状ワークに接触する該研削砥石の研削面と該保持テーブルの該保持面との平行度を相対的に調整する平行度調整手段と、該保持テーブルに保持される該板状ワークの厚みを測定する厚み測定手段と、該厚み測定手段による板状ワークの厚み測定を制御する制御部と、該厚み測定手段によって測定した該板状ワークの厚みを記憶する記憶部とを少なくとも備える研削装置を用いた研削方法であって、該板状ワークは、基台となる第1の板状ワークと、第2の板状ワークとにより構成され、該第1の板状ワークの一方の面と該第2の板状ワークの一方の面との間に貼り合わせ部材を介在させて貼り合わせて形成されており、該第1の板状ワークの他方の面を該保持テーブルで保持するワーク保持工程と、該厚み測定手段を用いて該保持テーブルが保持した該第1の板状ワークの外周部分と中央部分と該第1の板状ワークの半径の中点となる部分との少なくとも3箇所の測定位置で該第1の板状ワークの厚みを測定し、該記憶部に該第1の板状ワークの径方向の厚みを記憶させる第1の厚み測定工程と、該記憶部が記憶する該第1の板状ワークの径方向の厚みによって該平行度調整手段を用いて該保持テーブルが保持する該第1の板状ワークの一方の面と該研削面との平行度を調整する平行度調整工程と、を備え、該平行度調整工程の後に該第2の板状ワークを研削する。
【0008】
上記厚み測定手段は、上記制御部で第2の板状ワークのみの厚みを測定可能に制御し、平行度調整工程の後、該厚み測定手段で該第2の板状ワークのみの厚みを測定しつつ研削手段によって研削し、該第2の板状ワークを所定の厚みにすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、研削装置を用いた研削方法であって、ワーク保持工程を実施した後、第1の厚み測定工程を実施することにより、厚み測定手段が、制御部の制御に基づいて貼り合わせワークの基台となる第1の板状ワークの中央部分と外周部分と第1の板状ワークの半径の中点となる部分との少なくとも3箇所を測定することができるため、第1の板状ワークの径方向における厚み分布を記憶部に記憶させることができる。
その後、平行度調整工程を実施することにより、記憶部に記憶された厚み分布に基づいて平行度調整手段が保持テーブルを傾けて研削手段の研削面と保持テーブルに保持された第1の板状ワークの上面との平行度を調整することができるため、第1の板状ワークの径方向における厚みの厚み差に影響されることなく第1の板状ワークの上側にある第2の板状ワークを均一な厚みに研削することができる。
【0010】
上記制御部は、第2の板状ワークのみの厚みを測定可能に制御できるため、上記平行度調整工程を実施した後、厚み測定手段で第2の板状ワークのみの厚み分布を測定しつつ研削手段によって第2の板状ワークを研削することができる。したがって、第1の板状ワークの上側にある第2の板状ワークの厚みを把握しているため、第1の板状ワークの径方向における厚みの厚み差に影響されることなく第2の板状ワークを均一な厚みで、かつ所定の厚みに研削することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】研削装置の構成を示す斜視図である。
図2】保持テーブル、研削手段及び厚み測定手段を略示的に示す断面図である。
図3】ワーク保持工程を示す断面図である。
図4】第1の厚み測定工程を示す断面図である。
図5】平行度調整工程の第1例を示す断面図である。
図6】平行度調整工程の第2例を示す断面図である。
図7】第2の厚み測定工程を示す断面図である。
図8】平行度調整の例を示す断面図及びグラフである。
図9】平行度調整の例を示す断面図及びグラフである。
図10】平行度調整の例を示す断面図及びグラフである。
図11】平行度調整の例を示す断面図及びグラフである。
図12】平行度調整後の状態を示す断面図及びグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示す研削装置1は、Y軸方向にのびる装置ベース2を有し、装置ベース2の上面中央には回転可能なターンテーブル3が配設されている。ターンテーブル3には、板状ワークを保持する保持テーブル10が少なくとも3つ配設されている。図2に示すように、保持テーブル10は、多孔質部材11を有しており、この多孔質部材11の上面が板状ワークの一方の面を保持する保持面12となっている。多孔質部材11の下部には吸引源14に連通する吸引口13が形成されている。
【0013】
図1に示すように、研削装置1は、保持テーブル10に対する板状ワークの着脱が行われる着脱領域P1と、研削加工が行われる研削領域P2とを有している。複数の保持テーブル10は、ターンテーブル3によって自転及び公転可能に支持されている。保持テーブル10は、ターンテーブル3の回転によって公転し、着脱領域P1と研削領域P2との間を移動することができる。
【0014】
装置ベース2のY軸方向前部には、研削前の板状ワークが収容されるカセット4aと、研削後の板状ワークが収容されるカセット4bとを備えている。また、カセット4a及びカセット4bに対面する位置には、カセット4aからの被加工物の搬出を行うとともにカセット4bへの被加工物の搬入を行う搬送手段5が配設されている。搬送手段5の可動範囲には、被加工物を仮置きするための仮置き手段6と、研削後の板状ワークに付着した研削屑を洗浄する洗浄手段9が配設されている。
【0015】
仮置き手段6の近傍には、仮置き手段6に仮置きされた研削前の板状ワークを着脱領域P1に位置する保持テーブル10に搬送する第1の搬送手段7aが配設されている。また、洗浄手段9の近傍には、着脱領域P1に位置する保持テーブル10に保持された研削後の板状ワークを洗浄手段9に搬送する第2の搬送手段7bが配設されている。
【0016】
装置ベース2のY軸方向後部には、Z軸方向にのびるコラム8aが立設されている。コラム8aの前方において第1の研削送り手段30aを介して第1の研削手段20aが配設されている。また、コラム8aに隣接してコラム8bが立設されており、コラム8bの前方において第2の研削送り手段30bを介して第2の研削手段20bが配設されている。
【0017】
図1及び図2に示すように、第1の研削手段20aは、Z軸方向に軸心を有するスピンドル21と、スピンドル21を回転可能に支持するハウジング22と、スピンドル21に連結されたモータ23と、スピンドル21の下端にマウント24を介して装着されたホイール25と、ホイール25の下部に環状に固着された粗研削用の研削砥石26aと、を備えている。なお、第2の研削手段20bは、砥石が仕上げ研削用の研削砥石26bとなっている点以外は第1の研削手段20aと同様の構成となっている。
【0018】
第1の研削送り手段30aは、Z軸方向にのびるボールネジ31と、ボールネジ31の一端に接続されたモータ32と、ボールネジ31と平行にのびるガイドレール33と、一方の面がハウジング22に連結された昇降板34と、を備えている。昇降板34の他方の面に一対のガイドレール33が摺接するとともに中央部に形成されたナットにボールネジ31が螺合している。そして、モータ32がボールネジ31を駆動することにより、昇降板34とともにハウジング22を昇降させ、ホイール25を昇降させることができる。なお、第2の研削送り手段30bも第1の研削送り手段30aと同様の構成となっている。
【0019】
研削領域P2には、第1の研削手段20aの下方に位置する保持テーブル10に保持された板状ワークの厚みを測定する接触式の厚み測定ゲージ16が配設されている。厚み測定ゲージ16は、高さの基準面となる保持テーブル10の保持面12の高さ位置を測定するテーブルハイトゲージ160と、保持テーブル10に保持された板状ワークの上面の高さ位置を測定するワークハイトゲージ161と、を備えている。そして、テーブルハイトゲージ160が測定した測定値とワークハイトゲージ161が測定した測定値との差を板状ワークの厚みとして求めることができる。なお、厚み測定ゲージ16は、第2の研削手段20b側にも配設されている。
【0020】
図2に示すように、保持テーブル10の側部において保持テーブル10の傾きを調整する平行度調整手段15が配設されている。平行度調整手段15は、保持テーブル10の外周側を上下動させることにより保持テーブル10を傾けることができ、板状ワークに接触する研削砥石26bの研削面と保持テーブル10の保持面12との平行度を相対的に調整することができる。
【0021】
図1に示すように、第2の研削手段20bの近傍には、保持テーブル10に保持された板状ワークの厚みを測定する非接触式の厚み測定手段17が配設されている。図2に示す厚み測定手段17は、光学系の第1のセンサ170、第2のセンサ171及び第3のセンサ172を備えており、保持テーブル10の保持面12に保持される板状ワークの上方から板状ワークの厚みを複数箇所において測定することができる。すなわち、第1のセンサ170、第2のセンサ171及び第3のセンサ172は、板状ワークに向けて測定光(赤外光)を出射し、表面と裏面とでそれぞれ反射した反射光の干渉光を解析することにより、板状ワークの厚みを測定することができる。厚み測定手段17としては、光源としてSLD(Super Luminescent Diode)を備えた、例えば、株式会社キーエンスが提供する分光干渉式ウェハ厚み計「SI-F80Rシリーズ」を使用することができる。なお、厚み測定手段17は、第2の研削手段20b側だけではなく、第1の研削手段20a側にも配設するようにしてもよい。
【0022】
図1及び図2に示すように、研削装置1には、平行度調整手段15及び厚み測定手段17を制御する制御部40と、厚み測定手段17が測定した板状ワークの厚みを記憶する記憶部41とを備えている。制御部40及び記憶部41は、厚み測定手段17の第1のセンサ170、第2のセンサ171及び第3のセンサ172のそれぞれに接続されている。制御部40は、第1のセンサ170、第2のセンサ171及び第3のセンサ172から出射される測定光の波長、周波数等を板状ワークの材質に応じて変えるように厚み測定手段17を制御することができる。
【0023】
次に、研削装置1において板状ワークを研削する一連の加工工程について説明する。図2に示す板状ワーク50は、第1の板状ワーク51と、第2の板状ワーク54とを貼り合わせ部材を介して貼り合わせることにより形成されている。第1の板状ワーク51は、その上面52と反対側にある面が保持テーブル10の保持面12に載置される下面53となっており、第2の板状ワーク54の基台として機能する。第1の板状ワーク51は、例えばシリコンなどにより形成されている。また、第2の板状ワーク54は、その上面55が研削される面となっており、上面55と反対側にある面が第1の板状ワーク51の上面52と貼り合わせる下面56となっている。第2の板状ワーク54は、例えばリチウムタンタレート、シリコンなどにより形成されている。貼り合わせ部材としては、例えば酸化膜、ポリビニルアルコール(PVA)やエポキシなどの樹脂を使用することができる。
【0024】
(1)ワーク保持工程
図1に示した搬送手段5は、カセット4aから研削前の貼り合わせワーク50を取り出して仮置き手段6に搬送する。第1の搬送手段7aは、仮置き手段6において位置決めされた貼り合わせワーク50を着脱領域P1で待機する保持テーブル10に搬送する。
【0025】
具体的には、図3に示すように、第1の板状ワーク51の下面53を下側に向けて貼り合わせワーク50を保持テーブル10に載置する。貼り合わせワーク50を保持テーブル10に載置したら、吸引源14が作動することにより、吸引口13を通じて吸引力を保持面12に作用させる。このようにして、貼り合わせワーク50を保持テーブル10の保持面12において吸引保持する。なお、図示する保持テーブル10の保持面12は、中央部から外周側にかけて下方に傾斜した円錐面となっているが、実際は肉眼で認識することができない程度の僅かな傾斜である。
【0026】
(2)第1の厚み測定工程
ワーク保持工程を実施した後、図4に示すように、厚み測定手段17によって第1の板状ワーク51の厚みを複数箇所において測定する。第1の板状ワーク51の厚みを測定する複数箇所とは、例えば、第1の板状ワーク51の中心に近い中央部分の第1の測定点Aと、第1の板状ワーク51の外周縁に近い外周部分である第2の測定点Bと、第1の板状ワーク51の半径の中点部分となる第3の測定点Cとの少なくとも3つの測定点となっている。なお、本実施形態の第1の厚み測定工程は、図1に示した第2の研削手段20bによる仕上げ研削前に行うものとするが、第1の研削手段20aによる粗研削前に行ってもよい。
【0027】
制御部40は、第1の板状ワーク51のみの厚みを測定するように非接触式の厚み測定手段17から出射される測定光18の波長を制御し、厚み測定手段17となる保持テーブル10の上方に配置された第1のセンサ170と、第2のセンサ171と、第3のセンサ172とによって第1の板状ワーク51の下面53に達する測定光18を第2の板状ワーク54の上面55側から出射する。例えば、第1のセンサ170によって第1の測定点Aに向けて測定光18を出射し、第2のセンサ171によって第2の測定点Bに測定光18を出射し、第3のセンサ172によって第3の測定点Cに向けて測定光18を出射する。測定光18としては、例えば第2の板状ワーク54を通過し、第1の板状ワーク51の上面52で一部が反射し、残りが第1の板状ワーク51を通過し第1の板状ワーク51の下面53(保持テーブル10の保持面12)で反射する測定光を用いる。上面52で反射した反射光と保持面12で反射した反射光とは、波長ごとに互いに干渉し、干渉光の大きさは第1の板状ワーク51の厚みに対応している。干渉光を各センサに備えたCCDにおいて受光し、受光波形から光強度スペクトル分布を得た後、制御部40は、光強度スペクトル分布にFFTなどの波形解析を行うことで、第1の板状ワーク51の厚みを算出し、記憶部41に記憶する。
【0028】
(3)平行度調整工程
第1の厚み測定工程を実施した後、記憶部41に記憶された第1の板状ワーク51の3つの測定点における厚み値に基づいて保持テーブル10の傾きを調整する。例えば、図5(a)に示す貼り合わせワーク50aでは、下側にある第1の板状ワーク51の最も中央部分に近い側が薄く、外周部分が最も厚くなっていることから、平行関係にすべき研削手段の研削面H1と第1の板状ワーク51の上面52における基準面H2とが平行となっていない。ここで、研削面H1とは、第2の板状ワーク54の上面55と接触する研削砥石26bの下面を指す。基準面H2とは、第1の板状ワーク51の上面52を指し、研削面H1と対比できるように図示したものである。
【0029】
図5(b)に示すように、図4に示した記憶部41に記憶された第1の板状ワーク51の3つの測定点における厚み値に基づき、制御部40は平行度調整手段15を作動させる。平行度調整手段15は、基準面H2が研削面H1と平行となるように、正面視において保持テーブル10の外周右側を上げる。こうして図5(b)に示すように、研削面H1と基準面H2とが平行となった時点で、平行度調整工程を終了する。
【0030】
また、図6に示す貼り合わせワーク50bでは、下側にある第1の板状ワーク51の最も中央に近い側が最も厚く、外周部分が最も薄くなっていることから、平行関係にすべき研削砥石26bの研削面H1と第1の板状ワーク51の上面52における基準面H2とが平行になっていない。
【0031】
図6(b)に示すように、図4に示した記憶部41に記憶された第1の板状ワーク51の厚み分布に基づき、制御部40は平行度調整手段15を作動させる。平行度調整手段15は、基準面H2が研削面H1と平行となるように、正面視において保持テーブル10の外周左側を下げる。こうして図6(b)に示すように、研削面H1と基準面H2とが平行となった時点で、平行度調整工程を終了する。
【0032】
平行度調整工程を実施した後、保持テーブル10に保持された第2の板状ワーク54を研削砥石26bで押圧しながら仕上げ研削を行い厚み測定ゲージ16によって測定した第2の板状ワーク54の厚みが所定の厚みに達しているときは、仕上げ研削を終了する。その後、ターンテーブル3が回転し、第2の研削手段20bの下方に位置する保持テーブル10を着脱領域P1に移動させる。第2の搬送手段7bは、保持テーブル10から板状ワークを搬出するとともに洗浄手段9に搬送し、洗浄手段9によって板状ワークを洗浄する。そして、搬送手段5は、洗浄済みの板状ワークをカセット4bに収容する。
【0033】
(4)第2の厚み測定工程
上記平行度調整工程を実施した後、図7に示すように、第2の板状ワーク54に対して仕上げ研削をしながら、第2の板状ワーク54のみの厚みを測定する第2の厚み測定工程を実施してもよい。
【0034】
具体的には、厚み測定手段17によって貼り合わせワーク50cの第2の板状ワーク54の厚みを測定する。このとき、制御部40は、第2の板状ワーク54のみの厚みを測定するように非接触式の厚み測定手段17から出射される測定光18の波長を制御する。厚み測定手段17は、第1のセンサ170と、第2のセンサ171と、第3のセンサ172とによって、第2の板状ワーク54に測定光18を第2の板状ワーク54の上面55側から出射する。測定光18としては、例えば、第2の板状ワーク54の上面55で一部が反射し、残りが第2の板状ワーク54の下面56(第1の板状ワーク51の上面51)で反射する測定光を用いる。第2の板状ワーク54の上面55で反射した反射光と第1の板状ワーク51の上面51で反射した反射光とは、波長ごとに互いに干渉し、干渉光の大きさは第2の板状ワーク54の厚みに対応している。干渉光を各センサに備えたCCDにおいて受光し、受光波形から光強度スペクトル分布を得た後、制御部40は、光強度スペクトル分布にFFTなどの波形解析を行うことで、第2の板状ワーク54の厚みを算出し、記憶部41に記憶する。
【0035】
以下では、第1の板状ワーク51の3つの測定点における厚さ値に対応して第2の研削手段20bのスピンドル22と保持テーブル10の保持面12との相対的な位置関係を調整し仕上げ研削を行う複数の例について図8図12を参照しながら説明する。なお、図8図12に示す貼り合わせワーク50d〜50hにおいても、図7で示した第1の測定点A1と、第2の測定点B1と、第3の測定点C1との少なくとも3つの測定点で厚みを測定するものとする。
【0036】
図8(a)に示す貼り合わせワーク50dは、図8(b)に示すように、第1の板状ワーク51の最も中央に近い側である第1の測定点A1が最も厚く、外周に向けて徐々に薄くなっている。この場合は、図8(a)に示すように、第2の研削手段20bのスピンドル22を相対的に保持テーブル10の保持面12の傾きと同方向に保持面12よりも大きく傾けることにより、第2の板状ワーク54の厚さが均一になるように仕上げ研削することができる。
【0037】
図9(a)に示す貼り合わせワーク50eは、図9(b)に示すように、第1の板状ワーク51の最も中央に近い側である第1の測定点A1が最も薄く、外周に向けて徐々に厚くなっている。この場合は、図9(a)に示すように、第2の研削手段20bのスピンドル22を相対的に保持テーブル10の保持面12の傾きと同方向に保持面12よりも小さく傾けることにより、第2の板状ワーク54の厚さが均一になるように仕上げ研削することができる。
【0038】
図10(a)に示す貼り合わせワーク50fは、図10(b)に示すように、第1の板状ワーク51の第3の測定点C1を中心として中央部分及び外周部分にかけて厚みが徐々に厚くなっている。この場合は、図10(a)に示すように、第2の研削手段20bのスピンドル22を正面視において保持テーブル10の保持面12に対して相対的に前後方向手前側に大きく傾けることにより、第2の板状ワーク54の厚さが均一になるように仕上げ研削することができる。
【0039】
図11(a)に示す貼り合わせワーク50gは、図11(b)に示すように、第1の板状ワーク51の第3の測定点C1を中心として中央部分及び外周部分にかけて第2の板状ワーク54の厚みが徐々に薄くなっている。この場合は、図11(a)に示すように、第2の研削手段20bのスピンドル22を正面視において保持テーブル10の保持面12に対して相対的に前後方向奥側に大きく傾けることにより、第2の板状ワーク54の厚さが均一になるように仕上げ研削することができる。
【0040】
図8図11においてそれぞれ測定した第1の板状ワーク51の厚み分布は、図7に示した記憶部41によって記憶される。制御部40は、記憶部41に記憶された厚み分布に基づいて保持テーブル10に保持される第1の板状ワーク51の基準面H2が研削手段の研削面H1と平行になるよう平行度調整手段15を作動させる。
【0041】
平行度調整手段15が保持テーブル10の傾きを調整することによって、図12(a)に示すように、研削砥石26bの研削面H1が第1の板状ワーク51の基準面H2に対して平行となり、その状態で研削が行われると、同図(b)に示すように、第2の板状ワーク54は3つの測定点で厚みの差はなく、第2の板状ワーク54の厚みが均一になっていると判断できる。そして、第2の板状ワーク54の厚みが所定の厚みになった時点で第2の研削手段20bによる仕上げ研削を終了する。
【0042】
板状ワークの厚み分布を測定することができるのは、厚み測定手段17の構成に限定されるものではない。例えば、厚み測定手段として、旋回機構などの移動機構と板状ワークの厚みを測定する光学系のセンサを1つだけ備え、移動機構によりセンサを板状ワークの上方において半径方向に走査させる構成のものでもよい。
【0043】
以上のように、ワーク保持工程を実施した後、第1の厚み測定工程を実施することにより、厚み測定手段17は、制御部40の制御により貼り合わせワーク50の第1の板状ワーク51の中央部分となる第1の測定点Aと、外周部分となる第2の測定点Bと、第1の板状ワーク51の半径の中点となる第1の測定点Cとの少なくとも3つの測定点を測定することによって第1の板状ワーク51の径方向における厚み分布を認識し、記憶部41に記憶させることができる。
その後、平行度調整工程を実施することにより、記憶部41に記憶された厚み分布に基づいて平行度調整手段15が保持テーブル10を傾けて研削手段の研削面と保持テーブル10に保持された第1の板状ワーク51の上面52との平行度を調整することができるため、第1の板状ワーク51の径方向における厚みに厚み差が生じていたとしても第1の板状ワーク51の上側にある第2の板状ワーク54を均一な厚みに研削することが可能となる。
【0044】
上記制御部40は、第2の板状ワーク54のみの厚みを測定可能に制御できるため、上記平行度調整工程を実施した後、制御部40の制御により厚み測定手段17が第2の板状ワーク54のみの厚みを測定しつつ、研削手段によって第2の板状ワーク54を研削することができる。
このように、第1の板状ワーク51の上側にある第2の板状ワーク54の厚み分布を把握できるため、第1の板状ワーク51の径方向における厚みに厚み差が生じていたとしても第2の板状ワーク54を均一な厚みで、かつ所定の厚みに研削することが可能となる。
【符号の説明】
【0045】
1:研削装置 2:装置ベース 3:ターンテーブル 4a,4b:カセット
5:搬送手段 6:仮置き手段 7a:第1の搬送手段 7b:第2の搬送手段
8a,8b:コラム 9:洗浄手段
10:保持テーブル 11:多孔質部材 12:保持面 13:吸引口 14:吸引源
15:平行度調整手段 16:厚み測定ゲージ 160:テーブルハイトゲージ
161:ワークハイトゲージ 17:厚み測定手段 170:第1のセンサ
171:第2のセンサ 172:第3のセンサ 18:測定光
20a:第1の研削手段 21:ハウジング 22:スピンドル 23:モータ
24:マウント 25:ホイール 26a,26b:砥石 20b:第2の研削手段
30a:第1の研削送り手段 30b:第2の研削送り手段 31:ボールネジ
32:モータ 33:ガイドレール 34:昇降板
40:制御部 41:記憶部
50,50a,50b,50c,50d,50e,50f,50g,
50h:貼り合わせワーク
51:第1の板状ワーク 52:上面 53:下面
54:第2の板状ワーク 55:上面 56:下面
H1:研削面 H2:基準面
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8
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図10
図11
図12