特許第6082720号(P6082720)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6082720
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】電力ケーブル接続装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 15/08 20060101AFI20170206BHJP
   H01R 13/639 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
   H02G15/08
   H01R13/639 Z
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-184945(P2014-184945)
(22)【出願日】2014年9月11日
(65)【公開番号】特開2016-59193(P2016-59193A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2016年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】横田 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】前田 誠
(72)【発明者】
【氏名】虎井 康男
(72)【発明者】
【氏名】田渕 貴久
(72)【発明者】
【氏名】小林 正三
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−284969(JP,A)
【文献】 特開2002−95124(JP,A)
【文献】 米国特許第4408092(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/08
H01R 13/639
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムブロックユニットと、
前記ゴムブロックユニットの内部に固定されたメス側接続端子と、
電力ケーブルの導体の端部に固定されるオス側接続端子とを備える接続構造であって、
前記メス側接続端子の側面に貫通孔を有し、
前記貫通孔にロックピンを保持し、
前記オス側接続端子の外周面にロック溝を有し、
前記ゴムブロックの弾性力により前記ロック溝に前記ロックピンが落とし込まれることで前記オス側接続端子と前記メス側接続端子が機械的に連結する機構を有した電力ケーブル接続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブル接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力ケーブル同士の接続には、拡径保持材によって拡径されたゴムブロックユニットに一方の電力ケーブルを挿通し先端部を延出させて他方の電力ケーブルと導体同士を接続した後、その導体接続部がゴムブロックユニット内に収まるようにゴムブロックユニットを規定の位置にスライドさせ、さらに拡径保持材を引き抜くことでゴムブロックユニットを収縮させて装着し、主絶縁を形成する方法が一般的に用いられている。
以上のようなゴムブロックユニットによる主絶縁形成後に、遮蔽処理、保護管組立、防食処理、防水コンパウンドの注入等の処理を施していた。
【0003】
以上のゴムブロックユニットは、電力ケーブルの導体接続部に対し規定の位置に精度よく装着されることが求められる。しかし、従来の一般的な方法では、電力ケーブルの接続現場においてマーキング作業が重要になり、長時間を要する作業工程が求められるほか、その作業にミスが生じるおそれもある。
また、ゴムブロックユニットを精度よく装着できたとしても、ゴムブロックユニットはゴムの収縮力のみで電力ケーブルに固定されているため、電力ケーブルの熱挙動により電力ケーブルに対して軸方向にずれるおそれがあり、それにより絶縁破壊が生じるおそれがある。
【0004】
特許文献1及び2に記載の発明にあっては、導体接続管とゴムブロックユニットの内部電極やケーブル絶縁体とゴムブロックユニットの内部電極との間で相補的な凹凸形状を構成して嵌め合わせることで、電力ケーブルとゴムブロックユニットとの相対位置のずれを阻止しようとする。
特許文献3には、ゴムブロックユニットとの固定ではないが、ケーブル絶縁体のシュリンクバック防止策として、円筒状導体カバーに設けた孔を通して釘又はネジをケーブル絶縁体に打ち込んで(ねじ込んで)固定する方法が記載されている。
【0005】
一方、特許文献4,5,6には、挿し込み式による電力ケーブルの接続方法が記載されている。
特に特許文献4,6には電力ケーブルの位置ずれを防止する機構が記載される。
特許文献4には、電力ケーブルの回転を防止すると共に電力ケーブルの抜けを防止することを目的とした機構が記載されている。かかる機構にあっては、絶縁ユニット内の埋込金具(メス端子)の挿入部に回転防止用溝(同文献中符号97)と引き抜け防止用の部分的な内フランジ(同文献中符号98)を形成する一方、電力ケーブルの導体端部に圧縮接続した導体接続管(オス端子)に回転防止用突起(同文献中符号111)を形成し、回転防止用溝に回転防止用突起を挿入して電力ケーブルの回転を防止するとともに、導体接続管に回転可能に係合する固定金具(同文献中符号90)を回転させて同固定金具に形成された部分的な外フランジ(同文献中符号63)を上記部分的な内フランジに係合させることで電力ケーブルの抜けを防止するようにロックする。固定金具の回転は止めビスなどで固定される。
特許文献6に記載の機構にあっては、電力ケーブルの端部の端子に径方向に押し出されるようにバネで付勢されたつめ(同文献中符号3)が設けられ、電力ケーブルの挿入に伴いこのつめがゴムブロックユニット内に固定された結合ブッシュ等に形成された窪み(同文献中符号7)に嵌め入れられることで固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−106014号公報
【特許文献2】特開平09−238422号公報
【特許文献3】特開2002−095124号公報
【特許文献4】特開2001−231146号公報
【特許文献5】特開平07−212953号公報
【特許文献6】特表平04−505246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電力ケーブル接続装置にあっては、構造が簡素で部品点数が少なく、複雑化、大型化を招くことなく必要な強度を有し、少ない工程で短時間に位置精度よく接続、電力ケーブル接続部の組立が可能であることが望まれる。
このような要求事項を考慮すると、上述した一般的な方法より挿し込み式による電力ケーブルの接続が好ましい。
しかし、特許文献4に記載の発明によると、オス端子やメス端子の構造が複雑化するとともに、固定金具やこの固定金具を固定するビスなど部品点数が多くなり、電力ケーブルを挿入した後に固定金具を回転させる工程、ビス止めする工程などの作業を要する。
特許文献6に記載の発明によると、つめやバネなど部品点数が多くなり、電力ケーブルの端部の端子につめやバネを取り付けるための空洞が必要となり、複雑化、大型化を招くことなく必要な強度を有することが難しい。
【0008】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、構造が簡素で部品点数が少なく、複雑化、大型化を招くことなく必要な強度を有し、少ない工程で短時間に位置精度よく接続、電力ケーブル接続部の組立が可能である電力ケーブル接続装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、ゴムブロックユニットと、
前記ゴムブロックユニットの内部に固定されたメス側接続端子と、
電力ケーブルの導体の端部に固定されるオス側接続端子とを備える接続構造であって、
前記メス側接続端子の側面に貫通孔を有し、
前記貫通孔にロックピンを保持し、
前記オス側接続端子の外周面にロック溝を有し、
前記ゴムブロックの弾性力により前記ロック溝に前記ロックピンが落とし込まれることで前記オス側接続端子と前記メス側接続端子が機械的に連結する機構を有した電力ケーブル接続装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ロックピンがロック溝に落とし込まれることで位置精度の確保、抜け防止機能が発揮され、ロックピンを付勢する弾性体はゴムブロックユニットが兼ねており、オス側接続端子にはロックピンを落とし込むロック溝を外周面に形成すればよく、オス側接続端子が導体端部に固定された電力ケーブルを、メス側接続端子が設置されたゴムブロックユニットの内部空間に挿入するのみで電気的接続とともに、位置決め及び抜け防止機能を持った機械的連結が完了するので、構造が簡素で部品点数が少なく、複雑化、大型化を招くことなく必要な強度を有し、少ない工程で短時間に位置精度よく接続、電力ケーブル接続部の組立が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る電力ケーブル接続装置を適用した電力ケーブル接続部の軸方向断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る電力ケーブル接続装置による接続の過程を示す接続工程図である。
図3】本発明の一実施形態に係る電力ケーブル接続装置に含まれるメス側接続端子の正面図(a)及び側面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0013】
本発明の一実施形態における電力ケーブル接続装置1を適用した電力ケーブル接続部100の軸方向断面図を図1に示す。図2に電力ケーブル接続装置1の要部が示される。本実施形態の電力ケーブル接続装置1は、2つの電力ケーブル30,30同士を接続する用途に構成されており、図2に示す主要構成は左右対称に構成されている。
【0014】
さて、本実施形態の電力ケーブル接続装置1は、ゴムブロックユニット10と、ゴムブロックユニット10の内部に固定されたメス側接続端子11と、電力ケーブル30の導体31の端部に固定されるオス側接続端子12と、メス側接続端子11のオス側接続端子12が挿入される凹部11aの側壁11b2に保持されたロックピン13とを備えて構成される。さらにメス側接続端子11及びロックピン13の詳細を図3に示した。
本実施形態においてロックピン13は、軸部13aと、これより大径のヘッド部13bとを有した構造が採用されており、側壁11b2に径方向(側壁11b2の厚み方向)に形成された貫通孔14に挿入されて軸部13aが凹部11a内に突出するように保持されている。
軸部13aが径方向外方に押されたならば、ヘッド部13bがゴムブロックユニット10の内周面を押圧して弾性変形させ、ゴムブロックユニット10の弾性力が凹部11aの内側(径方向内方)に軸部13aを押し返すように作用するように構成されている。
図3に示すように複数のロックピン13が側壁11b2の円周に沿って等間隔に配置されている。ロックピン13を複数とする場合は等間隔に配置することが好ましい。
【0015】
一方、オス側接続端子12の外周面にロック溝12a、案内面12b、マルチコンタクトバンド12cが形成されている。
マルチコンタクトバンド12cの後方に案内面12bが形成され、案内面12bの後方にロック溝12aが形成されている。ここで、後方とはオス側接続端子12の先端方向に対する逆方向である。
メス側接続端子11の凹部11aは、奥側の側壁11b1により囲まれた空間に、マルチコンタクトバンド12cが設けられたオス側接続端子12の先端部を受け容れる。これにより電気的接続が確保される。
ロックピン13が保持される開口側の側壁11b2の内径は、奥側の側壁11b1の内径よりが大径にされている。ヘッド部13bが側壁11b2に押し付けられたときロックピン13の軸部13aの先端が奥側の側壁11b1の内径範囲より外側に配置されることにより、オス側接続端子12をメス側接続端子11に挿入する時のマルチコンタクトバンド12cとロックピン13との干渉が防がれる。
【0016】
次に図2(a)→(b)→(c)に沿って接続方法や接続機構につき説明する。
ゴムブロックユニット10には、オス側接続端子12が固定された電力ケーブル30を受け容れメス側接続端子11まで案内する空間及び開口が形成された構造である。
まず、電力ケーブル30,30の接続作業現場に、ロックピン13及びメス側接続端子11が組み込まれたゴムブロックユニット10と、オス側接続端子12,12を持ち込む。
電力ケーブル30,30を段剥ぎ、導体口出し、外導削り、鏡面処理等必要な処理を施し、その導体31の端部にそれぞれオス側接続端子12を圧着(油圧ダイスによる圧縮接続など)する。
【0017】
次に、図2(a)に示すようにオス側接続端子12が固定された電力ケーブル30を、メス側接続端子11が設置されたゴムブロックユニット10の内部空間に挿入する。
この挿入の進行により、案内面12bがロックピン13の軸部13aに接触する。案内面12bは、後方ほど大径となるようにテーパー状に形成されている。したがって、さらに電力ケーブル30を押し込むことにより、図2(b)に示すようにロックピン13は案内面12bにより径方向外方に押し出され、すなわち、軸部13aが引き込む。このとき、ゴムブロックユニット10はロックピン13のヘッド部13bに押圧されて弾性変形し、弾性エネルギーを蓄えている状態である。
【0018】
さらに電力ケーブル30を押し込むことにより、ロックピン13の軸部13aの位置までロック溝12aが達し、図2(c)に示すようにロックピン13の軸部13aがゴムブロックユニット10の弾性力によりロック溝12aに落とし込まれる。これによりオス側接続端子12をメス側接続端子11から引抜き困難となるようにメス側接続端子11に機械的に連結する。
それとともに、図2(b)→(c)のようにマルチコンタクトバンド12cを有したオス側接続端子12の先端部が、奥側の側壁11b1により囲まれた空間に嵌め入れられて接続のための規定の位置(図2(c))に配置され、メス側接続端子11とオス側接続端子12とが電気的に接続する。
また、ゴムブロックユニット10の収縮力により、メス側接続端子11より開口側のゴムブロックユニット10の内周面と電力ケーブル30の外周面とが密着する。
【0019】
電力ケーブル30,30の接続作業現場に持ち込む電力ケーブル接続装置としては、ゴムブロックユニット10に対し、図1に示す金属遮蔽層22、圧着端子23、保護管24(24a,24b)、緩衝材25(コンパウンド,シリコーンゲル,非鉄ウールなど)、防食層26a,26bが施されたものとすることで、現場の作業効率を向上することができる。
この場合、図1に示す電力ケーブル接続部100の完成までの工程は次の通りである。
上述したように一方の電力ケーブル30(オス側接続端子12が付いている)をゴムブロックユニット10に挿入して接続し、さらにもう一方の電力ケーブル30(オス側接続端子12が付いている)を他端開口からゴムブロックユニット10に挿入して接続する。
その後、金属遮蔽層22と、電力ケーブル30の金属遮蔽層32とを圧着端子23で接続する。
最後に熱収縮チューブ27や防食テープ28により保護管24の端部と電力ケーブル30の防食層33との間をつないで遮水性能及び防食性能を確保する。これには従来の電力ケーブル接続部と同様の技術が適用可能である。なお、本実施形態では比較的長い保護管24aと、比較的短い保護管24bとを軸方向に接続して保護管24全体が構成される。
【0020】
以上の本実施形態の電力ケーブルの接続装置によれば、ロックピン13がロック溝12aに落とし込まれることで位置精度の確保、抜け防止機能が発揮され、ロックピン13を付勢する弾性体はゴムブロックユニット10が兼ねており、オス側接続端子12にはロックピン13を落とし込むロック溝12aを外周面に形成すればよく、オス側接続端子12が導体31端部に固定された電力ケーブル30を、メス側接続端子11が設置されたゴムブロックユニット10の内部空間に挿入するのみで電気的接続とともに、位置決め及び抜け防止機能を持った機械的連結が完了する。したがって、構造が簡素で部品点数が少なく、複雑化、大型化を招くことなく必要な強度を有し、少ない工程で短時間に位置精度よく接続、電力ケーブル接続部の組立が可能である。
【0021】
拡径保持材によって拡径されたゴムブロックユニットに一方の電力ケーブルを挿通し電力ケーブル同士を接続してからゴムブロックユニットを移動させる従来の方法に比較して、大幅に工程を削減することができる。従来のように拡径保持材を使用した場合は、ゴムブロックユニットの塑性変形や応力緩和により電力ケーブルの外周面を押圧する面圧の低下が問題となり、拡径保持材を廃棄処理しなければならないが、本実施形態によれば拡径保持材を使用しないので、この面圧の低下を防ぐことができ、さらに拡径保持材の引抜き作業の負担、拡径保持材の引抜きによる外傷のリスクもなく、廃棄処理も不要である。
ゴムブロックユニット10に対する電力ケーブル30の配置を位置精度よく確保するために、マーキングの作業は不要であり、ミスなく規定の位置に電力ケーブル30を配置することが容易である。
【0022】
挿し込み(スリップオン)による電力ケーブルの接続方式を採用し、接続端子にはマルチコンタクト方式を採用するので、低接触抵抗の接続が可能であるとともに着脱が容易であり、解体再接続時にはゴムブロックユニット10を割いてロックピン13をメス側接続端子11から引き抜くことでロックピン13によるロックが解除されるので、その後、電力ケーブルを取り外すことができる。
特に、ロックピン13及びロック溝12aによるロック機構は、ゴムブロックユニット10の弾性を活用したものであり、より複雑な機構に比べてコスト面、コンパクト化において有効である。
【符号の説明】
【0023】
1 電力ケーブル接続装置
10 ゴムブロックユニット
11 メス側接続端子
12 オス側接続端子
12a ロック溝
13 ロックピン
14 貫通孔
30 電力ケーブル
31 導体
100 電力ケーブル接続部
図1
図2
図3