(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
LSI高性能化のために微細化が進められ、ゲート長が短くなってきている。ゲート長が短くなったため、ソース・ドレイン領域の拡散深さを浅くする必要が生じている。たとえば、ゲート長が30nm程度のデバイス(トランジスタ)であれば、ソース・ドレイン部の拡散深さは15nm程度となり、非常に浅い拡散が必要となる。
【0003】
従来、このような拡散層形成には、イオン注入が用いられ、たとえばB
+やBF
2++を0.2〜0.5keVという非常に低加速で注入する方法が用いられる。しかしイオン注入された原子はこのままでは抵抗を下げることができない。またイオン注入された領域ではシリコン基板中に格子間シリコンや原子空孔などの点欠陥が生じる。
【0004】
このため、イオン注入後には、原子の活性化(抵抗を下げる)と欠陥回復のためにアニールを行うが、このアニールにより、イオン注入された原子は拡散し不純物分布が広がってしまう。さらにアニールだけでなくイオン注入により生じた点欠陥により不純物拡散が増速する現象も知られている。
【0005】
以上に述べた拡散の広がりを考慮しても、深さ15nm以下で、イオン注入用マスク直下横方向で10nm以下の浅いpn接合を形成できるようにするために、非常に短時間で高エネルギーを照射するアニール方法が検討され、採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
このアニール方法としては、キセノン等の希ガスを封入したフラッシュランプを使用したアニール等が挙げられる。このランプは数十J/cm
2以上の高エネルギーを0.1〜100ミリ秒のパルス光として照射する方法である。このためイオン注入により形成した不純物分布をほとんど変化させずに活性化させることが可能である。
【0007】
しかしながら、この高エネルギーを用いるがゆえに、シリコン基板中の熱応力が大きくなりシリコン基板の割れやスリップといったダメージが生じることが考えられ、実際にこれに対する検討がされている。
【0008】
例えば、特許文献2には、半導体基板中にダメージを招かずに、浅い不純物拡散領域を形成するために、半導体基板に対してアクセプタまたはドナーとなる物質と、半導体基板に対してアクセプタまたはドナーにならない物質とを有する物質を半導体基板に注入することが記載されている。
【0009】
上記のように、熱処理によって点欠陥等の結晶欠陥が回復することは知られていた。しかしながら、この回復過程の詳細については知られていなかったため、従来の方法では精密な欠陥制御を行うことは困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、結晶欠陥の回復過程を評価することができる半導体基板の評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明では、結晶欠陥を有する半導体基板に対して前記結晶欠陥を回復するための欠陥回復熱処理を施した半導体基板の評価方法であって、
前記欠陥回復熱処理を、フラッシュランプアニールで行い、
前記フラッシュランプアニールの処理条件を制御することによって、回復途中の半導体基板の結晶欠陥を測定する工程と、
該測定の結果に基づいて、前記結晶欠陥の回復メカニズムを解析する工程と
を有することを特徴とする半導体基板の評価方法を提供する。
【0013】
このような半導体基板の評価方法であれば、結晶欠陥の回復過程を正確に評価することができる。特に、欠陥回復熱処理をフラッシュランプアニール(FLA)で行い、その処理条件を制御することによって、結晶欠陥の回復する過程の状態を凍結して測定することができるので、回復過程での結晶欠陥の挙動を捕らえることができる。この欠陥挙動を把握することによって、どのような欠陥回復熱処理が精密な欠陥制御を行う上で有効であるかを評価することができる。
【0014】
また、前記測定する工程において、更に、前記結晶欠陥の回復後も測定することが好ましい。
【0015】
このような半導体基板の評価方法であれば、結晶欠陥の回復途中と回復後の半導体基板の状態を比較することができるので、より詳細に結晶欠陥の回復過程を評価することができる。
【0016】
また、前記変更するフラッシュランプアニールの処理条件を、熱処理時間又は照射エネルギーとすることが好ましい。
【0017】
このような半導体基板の評価方法であれば、欠陥回復挙動をより詳細に観察することができる。特に、熱処理時間を変更することによって、時間を追って欠陥回復挙動を観察することができる。
【0018】
また、前記結晶欠陥を、半導体基板にイオン注入することによって発生したイオン注入欠陥とすることが好ましい。
【0019】
本発明は、半導体基板にイオン注入することによって発生した点欠陥等のイオン注入欠陥の回復過程を評価するのに特に好適である。
【0020】
また、前記測定する工程において、ルミネッセンス法により得られる前記結晶欠陥に起因する発光線が消失する前の状態を少なくとも一回測定し、更に、前記発光線が消失した後の状態を測定することが好ましい。
【0021】
このような半導体基板の評価方法であれば、次工程(回復メカニズムを解析する工程)において、どのような処理条件のときに、半導体基板の結晶欠陥がどのように消失していくのかを解析することができる。
【0022】
このとき、前記ルミネッセンス法を、カソードルミネッセンス法とすることが好ましい。
【0023】
本発明において、例えば、シリコン半導体基板を評価する際には、このような方法を用いることが好ましい。
【0024】
また、前記解析する工程において、前記発光線の強度の変化を観察することによって回復メカニズムを解析することが好ましい。
【0025】
このような解析工程を有する評価方法であれば、欠陥回復挙動をより詳細に観察することができるので、回復メカニズムをより詳細に解析することができる。
【0026】
また、前記半導体基板を、シリコン半導体基板とすることが好ましい。
【0027】
本発明は、結晶欠陥を有するシリコン半導体基板の欠陥回復過程を評価するのに特に好適である。
【発明の効果】
【0028】
本発明の半導体基板の評価方法であれば、結晶欠陥の回復過程を正確に評価することができる。特に、欠陥回復熱処理をフラッシュランプアニールで行うことによって、結晶欠陥の回復途中を測定することができるので、回復過程での結晶欠陥の挙動を捕らえることができる。また、ルミネッセンス法を用いて半導体基板を測定することによって、回復過程での結晶欠陥の挙動をより詳細に捕らえることもできる。この欠陥挙動を把握することによって、どのような欠陥回復熱処理が精密な欠陥制御を行う上で有効であるかを評価することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明をより詳細に説明する。
上記のように、結晶欠陥の回復過程を評価することができる半導体基板の評価方法が求められている。
【0031】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、結晶欠陥を有する半導体基板に対して前記結晶欠陥を回復するための欠陥回復熱処理を施した半導体基板の評価方法であって、
前記欠陥回復熱処理を、フラッシュランプアニールで行い、
前記フラッシュランプアニールの処理条件を制御することによって、回復途中の半導体基板の結晶欠陥を測定する工程と、
該測定の結果に基づいて、前記結晶欠陥の回復メカニズムを解析する工程と
を有する半導体基板の評価方法が、上記課題を解決できることを見出し、本発明の半導体基板の評価方法を完成させた。
【0032】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
[結晶欠陥を有する半導体基板を準備する工程]
まず、シリコン半導体基板、例えば、ボロン等のドーパントをドープしたP型シリコンウェーハを準備する。次に、このウェーハ表面に不純物拡散層を形成する。不純物拡散層は、例えば、ボロン等のドーパントをイオン注入することによって形成することができる。このイオン注入により点欠陥等のイオン注入欠陥がシリコン半導体基板中に形成される。
【0034】
[結晶欠陥を測定する工程]
次に、欠陥回復熱処理を施した半導体基板の結晶欠陥を測定する。本発明では、欠陥回復熱処理を、フラッシュランプアニールで行い、フラッシュランプアニールの処理条件を制御することによって、回復途中の半導体基板の結晶欠陥を測定する。本発明であれば、結晶欠陥の回復途中の状態を測定することができるので、従来明らかとされていなかった回復過程での結晶欠陥の挙動を捕らえることができる。
【0035】
本発明における欠陥回復熱処理の方法としては、キセノン等の希ガスを封入したフラッシュランプを使用したアニール等が挙げられるが、フラッシュランプアニールはこれに限定されず、非常に短時間で高エネルギーを照射するものであればよい。
【0036】
また、回復途中の半導体基板の結晶欠陥の測定は、1回だけでもよいが、複数のフラッシュランプの処理条件でアニールを行い、測定を複数回行ってもよい。複数回測定することによって、結晶欠陥の挙動をより詳細に捕らえることができる。
【0037】
このとき、測定する工程において、更に、結晶欠陥の回復後も測定することが好ましい。これにより、結晶欠陥の回復途中と回復後の半導体基板の状態を比較することができるので、より詳細に結晶欠陥の回復過程を評価することができる。
【0038】
また、測定する工程において、更に、欠陥回復熱処理を施す前の半導体基板の結晶欠陥も測定することが好ましい。これにより、結晶欠陥の発生直後、結晶欠陥の回復途中及び結晶欠陥の回復後の半導体基板の状態を比較することができるので、より詳細に結晶欠陥の回復過程を評価することができる。
【0039】
このとき、変更するフラッシュランプアニールの処理条件を、熱処理時間又は照射エネルギーとすることが好ましい。これにより、欠陥回復挙動をより詳細に観察することができる。特に、熱処理時間を変更することによって、時間を追って欠陥回復挙動を観察することができる。
【0040】
測定する工程において用いることができる測定方法としては、例えば、カソードルミネッセンス(CL)法等のルミネッセンス法を挙げることができる。
【0041】
この場合、測定する工程において、ルミネッセンス法により得られる結晶欠陥に起因する発光線(例えば、CL法により得られる転位に起因するD1、D2、D3線等)が消失する前の状態を少なくとも一回測定し、更に、発光線が消失した後の状態を測定することが好ましい。これにより、後述する回復メカニズムを解析する工程において、どのような処理条件のときに、半導体基板の結晶欠陥がどのように消失していくのかを解析することができる。
【0042】
ルミネッセンス法の中でも、シリコン半導体基板を測定する際には、カソードルミネッセンス法を用いることが特に好ましい。カソードルミネッセンス法であれば、電子線をプローブとして、高い空間分解能で試料の応力・歪分布、欠陥分布、キャリア分布を評価することができる。カソードルミネッセンスとは電子線を試料に照射したときに放出される紫外・可視・近赤外領域の発光のことである。
【0043】
このCL法における発光のメカニズムは材料によって異なるが、半導体の場合は、(1)電子・正孔対の生成、(2)キャリアの拡散、(3)発光再結合の3つが存在する。シリコンの場合は、バンドギャップ(約1.1eV)に相当するTOフォノン線(TO線)が強く観察される。これは、シリコンが間接遷移型半導体であるためのフォノン放出を伴うバンド間遷移である。結晶欠陥や不純物がバンドギャップ内にエネルギー準位を形成するとバンド間遷移発光以外にこの欠陥や不純物を介した発光(D1、D2、D3線等)が生じる。
【0044】
装置としては、一般的に電子線源として走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、これに試料からの発光を検出する検出器・分光器、さらに格子振動を押さえて発光強度を得るためのステージ冷却などの機構が具備されているものを使用することが好ましい。電子線源としてSEMを使用する装置概要からも分かる通り、CL法の特徴としては、SEM像との比較が可能、広範囲波長の発光スペクトルが得られる、高分解能、加速電圧を変化させることで深さ分析が可能な点がある。
【0045】
ここで、結晶欠陥を有するシリコン半導体基板に対して、この欠陥の回復と活性化のために欠陥回復熱処理を施した後、カソードルミネッセンス法を用いて、CLスペクトル(発光スペクトル)を得た場合について説明する。
図1は、イオン注入直後、結晶欠陥の回復途中及び結晶欠陥の回復後のシリコン半導体基板をそれぞれ、カソードルミネッセンス法で測定した結果、得られたCLスペクトルである。
図1において、縦軸は発光強度、横軸は波長である。
図1に示すように、フラッシュランプアニールの熱処理時間を変更することによって、欠陥回復過程を段階的に測定することができる。
【0046】
[回復メカニズムを解析する工程]
次に、上記の測定の結果に基づいて、結晶欠陥の回復メカニズムを解析する。本発明では、上記のように回復途中の半導体基板の結晶欠陥を測定することによって、回復過程での結晶欠陥の挙動を捕らえることができ、回復メカニズムを解析することができる。上述の測定する工程において、更に、イオン注入直後や結晶欠陥の回復後の半導体基板についても測定することによって、本工程でより詳細に回復メカニズムを解析することができる。
【0047】
測定する工程において、カソードルミネッセンス法等のルミネッセンス法を用いた場合は、ルミネッセンス法によって得られた発光線の強度の変化を観察することによって回復メカニズムを解析することが好ましい。欠陥回復熱処理が進むにつれて、結晶欠陥が回復していくので、それに伴ってルミネッセンス法によって得られた結晶欠陥に起因する発光線の強度も相対的に減少する。従って、どのような処理条件のとき、結晶欠陥がどのように消失していくのか、又は、結晶欠陥の残留を確実に防止できるのかを発光線の強度を観察することによって評価することができる。
【0048】
ここで、
図1のCLスペクトルから回復メカニズムを解析する方法について説明する。
図1に示すように、イオン注入直後は、シリコンのバンド端発光に起因するTO線以外に転位に起因するD1、D2、D3線等も観察され、複雑なスペクトルを示す。しかしながら、アニールが進むにつれて、結晶欠陥が回復していくため、特性発光に違いが出てくる。即ち、結晶欠陥に起因する発光線の強度が相対的に減少する。結晶欠陥の回復が達成されると、特性発光がなくなる。このように特性発光挙動から欠陥の挙動を解析することによって、欠陥回復熱処理を施した半導体基板を評価することができる。
【0049】
本発明であれば、フラッシュランプアニールを用いることで、欠陥回復過程の状態を凍結し、従来のアニール手法では見られなかった、欠陥挙動を捕らえることが可能になる。そのため、どのような欠陥回復熱処理が精密な欠陥制御を行う上で有効であるか評価することができる。更に、欠陥回復過程を段階的に測定することもできるので、使用する半導体基板ごとに、最適な熱処理時間や照射エネルギー等の処理条件を検討することもできる。
【0050】
[本発明の用途]
本発明は、半導体基板の結晶欠陥、特に、接合を形成する際に発生したイオン注入欠陥の回復過程を評価するのに好適である。特に、ソース/ドレインやゲート電極、WELLなどのように高濃度イオン注入がなされた半導体基板に欠陥回復熱処理を施した際の、欠陥回復過程(欠陥挙動)を評価するのに好適である。従って、本発明は、表面に不純物拡散層を形成する半導体基板を製造する際に適応することができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0052】
[欠陥回復挙動と熱処理時間の関係について]
(実施例1)
試料としてリンをドープした直径200mmのN型シリコンウェーハを用いた。このシリコンウェーハの抵抗率は10Ω・cmである。このウェーハにボロンを10keVで1×10
13atoms/cm
2のイオン注入を行った。次に、
図1に示すように、まず、カソードルミネッセンス法を用いてイオン注入直後のウェーハのCLスペクトルを得た。次に、このウェーハに、予備加熱550℃でキセノンランプを光源としたフラッシュランプアニールを施した。この際、二種類の処理条件(照射エネルギー22J/cm
2、照射時間0.6ミリ秒、照射温度1100℃及び照射エネルギー22J/cm
2、照射時間1.2ミリ秒、照射温度1100℃)でアニールを施した。次に、
図1に示すように、二種類の処理条件でアニールを施した後のウェーハのCLスペクトルをそれぞれ得た。
【0053】
図1は、イオン注入後のFLAによる結晶欠陥の回復過程を示したCLスペクトルである。このようにイオン注入直後から、アニールが進むにつれて発光中心が減少していく過程が見られる。イオン注入直後は、結晶性が乱れ、CLスペクトル(TO線)の強度は弱く、また、多くの発光欠陥が観察される。FLAを短時間行うとイオン注入後と比べてCLスペクトルに見られる発光のうち、結晶欠陥に起因する発光(D1線〜D3線)が少なくなり、さらにアニールを行うと特性発光が観察されなくなる。このように本発明では、時間を追って欠陥回復挙動を観察することが可能である。これにより、半導体基板の結晶欠陥の回復過程を評価することができる。
【0054】
[アニール手法によるCLスペクトルの違いについて]
(実施例2:フラッシュランプアニールを用いた評価方法)
試料としてリンをドープした直径200mmのN型シリコンウェーハを用いた。このシリコンウェーハの抵抗率は10Ω・cmである。このウェーハにボロンを10keVで5×10
13atoms/cm
2のイオン注入を行い、予備加熱550℃でキセノンランプを光源としたフラッシュランプアニール(アニール条件は、照射エネルギー22J/cm
2、1.2ミリ秒、照射温度1100℃)を施した。この後、イオン注入欠陥を評価した。
【0055】
(比較例1:RTA処理を用いた評価方法)
試料としてリンをドープした直径200mmのN型シリコンウェーハを用いた。このシリコンウェーハの抵抗率は10Ω・cmである。このウェーハにボロンを10keVで5×10
13atoms/cm
2のイオン注入を行い、1000℃/30秒で急速加熱・急速冷却熱処理(RTA処理)を施した。この後、イオン注入欠陥を評価した。
【0056】
実施例2及び比較例1ではまず、イオン注入欠陥を透過型電子顕微鏡(TEM)観察により評価したが、TEMではイオン注入した領域に欠陥は観察されなかった。次に、
図2に示すように、カソードルミネッセンスを用いて評価を行った。
図2は、欠陥回復熱処理をフラッシュランプアニールで行ったシリコン半導体基板と急速加熱・急速冷却熱処理で行ったシリコン半導体基板をそれぞれ、CL法で測定した結果、得られたCLスペクトルである。
図2において、縦軸は発光強度、横軸は波長である。実施例2では、TO線(波長が1120nm付近のピークに相当)以外にも、ブロードな特徴ある発光が観察されるが、比較例1では、TO線以外は観察されなかった。
【0057】
TEM観察による評価と、CLを用いた評価との検出感度の違いは、以下の理由によるものと考えられる。すなわち、TEMは観察領域が狭い上に、点欠陥を像として捉えることが難しい一方で、CLは走査型電子顕微鏡(SEM)を用いているため観察領域(特に深さ方向)が大きく、また原理的に深い準位の発光中心を検出するため、検出感度が高い。
【0058】
上記のように、欠陥回復熱処理をRTA処理で行った比較例1では、TO線以外は観察されず、欠陥回復挙動を観察することができなかったため、半導体基板の結晶欠陥の回復過程を評価することができなかった。一方、欠陥回復熱処理をフラッシュランプアニールで行った実施例2では、TO線の他に、多数の発光線を観察した。これらの発光線は、欠陥回復過程でのイオン注入欠陥挙動を示している。これにより、半導体基板の結晶欠陥の回復過程を評価することができた。
【0059】
特に、実施例1よりイオン注入量の多い実施例2では、同じ条件(照射エネルギー22J/cm
2、1.2ミリ秒、照射温度1100℃)であっても、多くの発光欠陥が観察されている。従って、実施例1、2の結果より、イオン注入量の異なる半導体基板に対して、欠陥回復熱処理を施す場合、結晶欠陥の回復を達成するための最適な熱処理時間は異なるということも評価できた。
【0060】
また、実施例2及び比較例1の結果より、結晶欠陥の回復過程を評価(特に回復途中を測定)するためには、欠陥回復熱処理を、フラッシュランプアニールで行う必要があるということがわかる。
【0061】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。