【実施例】
【0049】
(実施例1)MeDIP−chip法によるマーカー候補遺伝子の探索
本発明者らは、遺伝子転写開始点から上下1kb以内に存在するメチル化CpG部位が遺伝子の発現に重要であり、上記の領域にメチル化候補部位(candidate methylation site:CMS)が存在する遺伝子がマーカーとなり得ると考え、大腸癌細胞株HCT116を用いてMeDIP−chip法により、そのような遺伝子を探索した。
実施例1における具体的な操作手順は、各キットおよび試薬類に添付のマニュアルならびにHayashi H.ら,Hum Genet.,vol.120,701−711(2007)の記載に従って行った。
(1)MeDIP法
大腸癌細胞株HCT116からゲノムDNAをQIAamp DNA Microキット(QIAGEN)を用いて、添付マニュアルに従って抽出した。次いで、得られたゲノムDNA(6μg)を超音波処理装置UD−201(トミー精工社製)で20秒間処理して、ゲノムDNAを200〜800bpに断片化した。そして、断片化DNAを95℃で10分間加熱して変性させた後、4℃まで急冷して一本鎖ゲノムDNAを得た。
【0050】
上記で得られた変性ゲノムDNA(1μg)を300μlの免疫沈降用緩衝液(20mM Tris−HCL(pH8.0)、2mM EDTA(pH8.0)、150mM NaClおよび1% Triton X−100)で希釈した後、これらにProtein A Sepharoseビーズ(GEヘルスケア)の懸濁液103μlを添加して、4℃で30分間ローテーションし、プレクリアー処理を行った。そして、遠心分離後に上清を回収した。
なお、上記のビーズ懸濁液の組成は以下のとおりである。
免疫沈降用緩衝液 50μl
50% Protein A Sepharoseビーズ 50μl
BSA溶液(シグマ社) 1μl
tRNA溶液(シグマ社) 1μl
プロテアーゼ阻害剤(シグマ社) 1μl
【0051】
次いで、回収した上清に、あらかじめ4℃で30分間ローテーションした抗メチル化シトシン抗体BI−MECY−0500(Eurogentec社)の溶液を加えて、4℃で3時間ローテーションした。
なお、上記の抗体溶液の組成は以下のとおりである。
免疫沈降用緩衝液 450μl
50% Protein A Sepharoseビーズ 50μl
抗メチル化シトシン抗体 10μg
BSA溶液 1μl
tRNA溶液 1μl
プロテアーゼ阻害剤 1μl
【0052】
そして、遠心分離によりビーズを回収し、これを免疫沈降用緩衝液で2回洗浄し、さらに、TE緩衝液(10mM Tris−HCL(pH8.0)および1mM EDTA(pH8.0))で3回洗浄した後、溶出用緩衝液(25mM Tris−HCL(pH8.0)、10mM EDTA(pH8.0)、および0.5% SDS)を用いて溶出し、抗メチル化シトシン抗体とビーズとの複合体により沈降されたメチル化ゲノムDNAを得た。
上記のようにして得たメチル化ゲノムDNA溶液にDTTを終濃度250nMとなるように添加して、室温で30分間ローテーションした後、65℃で15分間インキュベートした。次いで、該溶液をフェノール/クロロホルム法およびエタノール沈殿法を用いて精製して、HCT116細胞由来のメチル化ゲノムDNAを得た。
【0053】
(2)IVT増幅
上記(1)で得たメチル化ゲノムDNAにCIP(Calf intestine phosphatase;New England Biolab社)を用いてDNA末端の脱リン酸化処理を行った後、TdT(Terminal transfer;ROCHE社)を用いて、該DNAの3’末端にdTTPを付加した。
次いで、このDNAにT7−ポリAプライマーをアニールさせて、DNAポリメラーゼI(Invitrogen社)を用いて2本鎖DNAを合成した。以下にT7−ポリAプライマーの配列を示す。
5'-GCATTAGCGGCCGCGAAATTAATACGACTCACTATAGGGAG(A)
18B-3'(配列番号83)
【0054】
上記で得たT7プロモーター配列を付加した2本鎖DNAを鋳型としてT7RNAポリメラーゼ(MEGAscript(登録商標)T7キット;Ambion社)による線形増幅を行った後、RNeasy Miniキット(QIAGEN社)を用いて精製して、cRNAを得た。
次いで、該cRNAを鋳型として、SuperScript(商標)II RT(Invitrogen社)およびランダムプライマー(Invitrogen社)を用いてcDNAを得た。
さらに、該cDNAにT7−ポリAプライマーをアニールさせ、DNAポリメラーゼIと反応させた後、さらにT4DNAポリメラーゼ(NEB社)と反応させて、2本鎖DNAを合成した。
【0055】
上記のT7プロモーター配列を付加した2本鎖DNAを鋳型として、T7RNAポリメラーゼ(MEGAscript(登録商標)T7キット)による線形増幅を行った後、RNeasy Miniキットを用いて精製し、cRNAを得た。
次いで、該cRNAを鋳型として、SuperScript(商標)II RT(Invitrogen社)およびランダムプライマー(Invitrogen社)を用いてcDNAを得た。
さらに、該cDNAにDNAポリメラーゼI、E.Coli DNAリガーゼ(Invitrogen社)およびRNase H(Ambion社)を用いて反応させて、2本鎖DNAを合成した。
上記の2本鎖DNAをRNase HおよびRNaseカクテル(Ambion社)と反応させてRNAを分解した後、QIAquick Purificationキット(QIAGEN社)を用いて精製して、2本鎖DNAを得た。
(3)マイクロアレイ解析
上記(2)のようにして、HCT116細胞由来のメチル化ゲノムDNAから増幅して得た2本鎖DNAをDNaseI(Invitrogen社)によって50〜100bpに断片化した後、Biotin-N11-ddATP(Perkin Elmer社)を用いてビオチン標識をした。
ビオチン標識されたDNA断片をGeneChip(登録商標)Human Promoter 1.0R Array(Affymetrix社)に接触させて、マイクロアレイのプローブとのハイブリダイゼーションを行った。接触後の染色、洗浄およびスキャン(シグナルの測定)は、Affymetrix社から提供されるマニュアルに従って行った。
上記で得られたシグナル測定値について550bpのウィンドウでウィルコクソン順位和検定を行い、得られた有意確率が0.01より小さい(p<0.01)の領域は、マイクロアレイのプローブとメチル化DNA断片とが特異的結合をした領域であると判断し、該領域をメチル化候補部位(CMS)とした。
その結果、HCT116細胞において、遺伝子転写開始点から上下1kb以内にCMSが存在する遺伝子は、3814遺伝子であった。
【0056】
(4)発現マイクロアレイ解析
上記の3814遺伝子のうち、HCT116細胞での発現が低いか、または認められない遺伝子を探索する目的でマイクロアレイ解析を行った。マイクロアレイとして、上記の3814遺伝子を含む38500種の遺伝子に対するプローブを搭載したGeneChip(登録商標)Human Genome U133 Plus 2.0 Array(Affymetrix社)を用いた。
TRIzol(Invitrogen社)を用いてHCT116細胞からmRNAを抽出し、該mRNAについて発現解析を行った。該解析から得られたGeneChip(登録商標)スコアが70未満であった遺伝子を、HCT116細胞のサイレンシング遺伝子とした。
その結果、サイレンシング遺伝子は、2410遺伝子であった。
【0057】
(実施例2)MassARRAY(登録商標)解析によるマーカー候補遺伝子の探索
本発明者らは、実施例1で得られた2410遺伝子から無作為に41遺伝子を抽出し、これらの遺伝子をマーカー候補遺伝子とした。そして、大腸癌組織と正常大腸粘膜組織におけるマーカー候補遺伝子のメチル化状態をMassARRAY(登録商標)解析(以下、「質量分析」ともいう)により解析した。
なお、表2にこれら41のマーカー候補遺伝子を示す。
また、実施例2における具体的な操作手順は、各キットおよび試薬類に添付のマニュアル、ならびにEhrich M.ら,Proc Natl Acad Sci USA,vol. 102,15785−15790(2005)およびCoolen MW.ら,Nucleic Acids Res,vol. 35,119(2007)の記載に従って行った。
【0058】
【表2】
【0059】
(1)検体試料および対照試料の作製
以下のようにして、大腸癌組織および正常大腸粘膜組織由来のゲノムDNAから、それぞれCRC(colorectal cancer)検体試料およびNormal検体試料を作製した。また、質量分析での検量線を作成するために、対照ゲノムDNAとしてヒト末梢血リンパ球ゲノムDNAを用いて、0%、25%、50%、75%および100%メチル化対照試料を作製した。
(i)大腸癌組織と正常大腸粘膜組織からのDNAの抽出
大腸癌患者から採取した大腸癌組織(112検体)および正常大腸粘膜組織(9検体)のそれぞれから、QIAamp DNA Microキット(QIAGEN社)を用いて各ゲノムDNAを抽出し、Bioruptor(COSMO BIO社製)により超音波切断した。なお、上記の大腸癌検体は、その切片を病理組織学的に観察した結果、該検体中の癌細胞含有率が40%以上のものである。
【0060】
(ii)0%、25%、50%、75%および100%メチル化DNAの作製
ヒト末梢血リンパ球ゲノムDNAをGenomiPhi v2 DNA amplificationキット(GEヘルスケアライフサイエンス社)により増幅した。この増幅産物は、非メチル化DNAからなる。次いで、該増幅産物をBioruptor(COSMO BIO社製)により超音波切断し、DNA断片(0%メチル化DNA)を得た。また、該DNA断片の一部を分取して、これにSssIメチラーゼ(New England Biolab社)を反応させることにより全てのシトシンをメチル化させて、メチル化DNA断片(100%メチル化DNA)を得た。そして、0%メチル化DNAと100%メチル化DNAとを所定の割合で混合して、25%、50%および75%メチル化DNAを得た。
【0061】
(iii)バイサルファイト処理
上記の(i)および(ii)で得た各DNA(1μg)を19μlの水に希釈し、これらに6N水酸化ナトリウム水溶液を1μl添加して終濃度0.3Nとし、37℃で15分間インキュベーションして変性させた。
そして、上記の各DNA溶液に3.6M重亜硫酸ナトリウム/0.6Mヒドロキノン溶液を120μl添加した後、95℃で30秒および50℃で15分を1サイクルとして、これを15サイクル繰り返すことにより、バイサルファイト処理をした。そして、各反応液をWizard(登録商標)DNA Clean-up System(Promega社)により脱塩し、TE緩衝液50μlで溶出し、非メチル化シトシンをウラシルに変換した各DNA溶液を得た。
上記の各DNA溶液に3N水酸化ナトリウム水溶液を5μl添加して、室温で5分間インキュベーションした後、エタノール沈殿法により各DNAを精製した。最終的に各DNAを80μlの水に溶解して、CRC検体試料およびNormal検体試料、ならびに0%、25%、50%、75%および100%メチル化対照試料を得た。
【0062】
(2)PCRおよびIVT増幅
この工程では、上記のバイサルファイト処理によって非メチル化シトシンをウラシルに変換した各DNAについて、メチル化シトシンおよびウラシルをPCR増幅法およびIVT増幅法により、それぞれグアニン(G)およびアデニン(A)に変換した。
なお、PCR増幅法に用いるプライマーセットがメチル化DNAおよび非メチル化DNAのいずれにも偏りなく増幅できることを上記で得た各対照試料を用いて、後述するMassARRAY(登録商標)解析にて確認した。表3に各マーカー候補遺伝子に対するプライマーセットの配列(配列番号1〜82)を示した。
【0063】
【表3】
【0064】
なお、下記のPCR反応においては、後のIVT反応のために、上記のプライマーセットのフォワードプライマーおよびリバースプライマーの5’末端に、それぞれ次のタグ配列およびT7プロモーター配列を付加したプライマーセットを用いた。
タグ配列 :5'-AGGAAGAGAG-3'
T7プロモーター配列:5'-CAGTAATACGACTCACTATAGGGAGAAGGCT-3'
PCR反応液は、下記の試薬類を混合して調製した。
10x Hot Starバッファー(QIAGEN社) 0.5μl
25mM dNTPミックス 0.04μl
Hot Star Taq(5U/μl)(QIAGEN社) 0.04μl
プライマーミックス 2μl
DNA溶液 1μl
水 1.42μl
トータル 5μl
【0065】
上記の反応液を用い、下記の条件でPCR反応を行った。
94℃で15分、
94℃で20秒、52℃で30秒、72℃で1分を45サイクル、
72℃で3分。
【0066】
上記で得た各PCR産物を、MassCLEAVE(商標)Reagentキット(SEQUENOM社)に含まれるSAP(Shrimp Alkaline Phosphatase)を用いて脱リン酸化処理した。次いで、これらに上記のキットを用いて調製した下記の反応液を添加し、37℃で3時間インキュベーションして、IVT反応およびウラシル(U)またはチミン(T)特異的切断反応を行った。そして、得られた各切断産物をClean Resin(SEQUENOM社)により精製し、質量分析用サンプルとした。
5x T7 R&DNAポリメラーゼバッファー 0.89μl
T Cleavageミックス 0.24μl
100mM DTT 0.22μl
T7 R&DNAポリメラーゼ 0.44μl
RNase A 0.06μl
RNaseフリーの水 3.15μl
トータル 5μl
【0067】
図1のAに示すように、RNase AによってIVT産物が切断される部位は、任意の塩基と該塩基に隣接するウラシル(U)またはチミン(T)との間であることがあらかじめ知られている。したがって、上記のようにして得た各切断産物の塩基配列および質量は、マーカー候補遺伝子の塩基配列から予測することが可能である。これにより、下記の質量分析で得られた各ピークについて、マーカー候補遺伝子のどの塩基配列の部分に由来するものであるかを同定できる。
【0068】
(3)質量分析機MassARRAY(登録商標)(SEQUENOM社)による解析
(i)検量線の作成
上記(2)で得た各検体試料由来の質量分析用サンプルを2回ずつ独立に質量分析を行った。得られた解析結果より、プライマーセットごとの検量線を作成し、相関係数を算出した。そして、上記のプライマーセットで増幅した各対照試料の質量分析から線形の検量線が得られた。これにより、各プライマーセットは、メチル化DNAおよび非メチル化DNAのいずれにも偏りなく増幅できることが確認できた。
(ii)各検体試料由来のサンプルの解析
上記(2)で得た各検体試料由来の質量分析用サンプルを用いて質量分析を行い、各切断産物のピークを得た。次いで、得られた各ピークがマーカー候補遺伝子のどの塩基配列の部分に由来するものであるかを同定した。そして、同一の塩基配列に由来する切断産物において、メチル化CpG部位を含む切断産物のピークとメチル化CpG部位を含まない切断産物のピークとの面積比からメチル化率を算出した。この計算について、
図1のCの左パネルを用いて例示すると、非メチル化切断産物のピーク(左)とメチル化切断産物のピーク(右)との面積比が1:3であった場合、この配列のDNA断片のメチル化率は、3/(1+3)=0.75より、75%となる。このようなメチル化率の計算を各切断産物について行い、各切断産物のメチル化率を算出した。なお、メチル化率は理論上、切断産物が有する全てのCpG部位がメチル化している場合は100%であり、全てのCpG部位が非メチル化状態である場合は0%である。
上記で得た各切断産物のメチル化率について、上記(i)で算出した相関係数が0.9より大きい切断産物についてのみ、以降のデータ解析に用いた。また、大腸癌組織の112検体のうち102検体(90%)以上が解析されていない切断産物のメチル化率は除外した。
そして、各マーカー候補遺伝子が有するCpG部位数と、これら遺伝子の各切断産物に含まれるCpG部位数とを考慮するために、各マーカー候補遺伝子のメチル化率は、除外されなかった切断産物のメチル化率を加重平均して算出した。
【0069】
(iii)カットオフ値の設定およびメチル化頻度の算出
上記で算出したメチル化率から各検体に含まれるマーカー候補遺伝子がメチル化陽性か否かを判断するためのカットオフ値を35%とした。したがって、ある遺伝子のメチル化率が35%より大きい場合、その遺伝子はメチル化陽性であると判断される。なお、この値は、大腸癌検体の癌細胞含有率が40%であることを考慮して決定された。
そして、大腸癌検体(112検体)および正常大腸粘膜検体(9検体)の各検体において、上記の41の各マーカー候補遺伝子がメチル化陽性であるか否かを、該カットオフ値(35%)および上記で算出したメチル化率に基づいて判断した。そして、各遺伝子についてメチル化陽性である検体数を大腸癌検体群および正常大腸粘膜検体群でそれぞれ計数し、全検体数に対するメチル化陽性検体の割合を次式より算出した。表4に得られた結果を示す。
メチル化陽性検体の割合(%)=(各群のメチル化陽性検体数/各群の検体総数)x100
【0070】
【表4】
【0071】
表4では、算出したメチル化陽性検体の割合に基づいて、上記の41遺伝子をグループA〜Cの3つに分類した。グループAは、正常大腸粘膜検体(Normal)のメチル化陽性検体の割合が0%で、かつ大腸癌検体(CRC)の該割合が10%以上の遺伝子群であり、グループBは、Normalのメチル化陽性検体の割合が0%より大きく、かつCRCとNormalとのメチル化陽性検体の割合の差が30%以上の遺伝子群であり、グループCは、Normalのメチル化陽性検体の割合が0%より大きく、かつCRCとNormalとのメチル化陽性検体の割合の差が30%未満の遺伝子群である。
表4に示した41遺伝子のうち、CRCとNormalとのメチル化陽性検体の割合の差が50%以上の遺伝子をマーカーになり得る遺伝子として選択し、表4の遺伝子シンボルに*を付して示した。
選択された遺伝子は、TSPYL、COL4A2、ADAMTS1、SPG20、TMEFF2、CIDEB、EDIL3、EFEMP1、PPP1R14A、UCHL1、HAND1、STOX2、THBD、ELMO1、IGFBP7、PPP1R3C、SFRP1、CDO1、FBN2およびZNF447である。
【0072】
また、メチル化率のカットオフ値を10%としてメチル化陽性の判断を行なった場合についても、各遺伝子のメチル化陽性検体の割合を算出した。この結果を表5に示す。この場合においても、CRCとNormalとのメチル化陽性検体の割合の差が50%以上の遺伝子を選択し、表5の遺伝子シンボルに*を付して示した。なお、グループA〜Cの定義は、上記と同じである。
選択された遺伝子は、EFHD1、STOX2、ELMO1、CHFR、DUSP26、MYOCD、FLJ23191、LOX、EPHB1、TLE4、TMEFF2、SPG20、EDIL3、PPP1R3C、FBN2、AOX1およびZNF447である。
【0073】
【表5】
【0074】
したがって、上記の2つのメチル化率のカットオフ値より選択されたマーカーになり得る遺伝子は、ADAMTS1、AOX1、CDO1、CHFR、CIDEB、COL4A2、DUSP26、EDIL3、EFEMP1、EFHD1、ELMO1、EPHB1、FBN2、FLJ23191、HAND1、IGFBP7、LOX、MYOCD、PPP1R14A、PPP1R3C、SFRP1、STOX2、THBD、TLE4、TMEFF2、SPG20、TSPYL、UCHL1およびZNF447である。
【0075】
上記の遺伝子のうち、以下の表6に示すものは、文献によりある種の癌細胞でメチル化することが既に報告されているものである。
【0076】
【表6】
【0077】
よって、本発明者らは、表6に示す遺伝子を除く、COL4A2、AOX1、DUSP26、EDIL3、EFHD1、ELMO1、STOX2およびZNF447を、癌細胞の存否を判定するために用い得るマーカー遺伝子として新たに同定した。
【0078】
(実施例3)マーカー遺伝子のメチル化とMSIとの相関の解析
MSIと大腸癌患者の予後との相関はこれまでにいくつもの報告があり、一般にMSIが高い症例と良好な予後とは相関すると言われている。さらに、32報の既報データ(計7642症例のうちMSI症例1277例)をまとめたPopat S.らの報告(J Clin Oncol、Vol.23、609‐613(2005))によって、大腸癌のMSIが高い症例の患者が統計学的に有意に良好な予後を示すことが知られている。
そこで、本発明者らは、上記の41遺伝子について、あるマーカー遺伝子のメチル化陽性検体の割合とMSIとの相関関係があるか否かを検討した。
【0079】
(1)MSIの判定
実施例2の(1)の(i)で得た大腸癌組織(112検体)のゲノムDNAを用いてMSIを解析するために、上記のNCIワークショップにより推奨された5つのMSIマーカー(BAT25、BAT26、D5S346、D2S123およびD17S250)についてシークエンス解析をした。
各検体のゲノムDNAに含まれる上記の5つのマーカーの塩基配列をALF express DNAシークエンサー(Pharmacia Biotech社製)およびAllele Linksソフトウェア(Pharmacia Biotech社製)により解析した。
5つのマーカーのうち2つ以上のマーカーでMSIを認める検体をMSI−H、1つのマーカーでMSIを認める検体をMSI−L、いずれのマーカーでもMSIを認めない検体をMSSと判定した。なお、MSIを認めたマーカーについては少なくとも2回の解析を行った。
【0080】
(2)マーカー遺伝子のメチル化とMSIとの相関の解析
実施例2における各マーカー遺伝子がメチル化陽性である群とMSI−Hの群とが相関するか否かを、フィッシャーの正確確率検定(Fisher's exact test)により解析した。
解析の結果、以下のとおり、ID4、LOXおよびMYOCDのマーカー遺伝子がメチル化している群がMSI−Hの群と強い相関を示した。なお、Pは上記の検定から算出された有意確率である。この結果を表7に示す。
【0081】
【表7】
【0082】
ID4では、メチル化検体20例のうち15例がMSI‐Hであり、非メチル化検体92例のうち3例がMSI‐Hであった(P = 6.9 x 10
-12)。
LOXでは、メチル化検体16例のうち15例がMSI‐Hであり、非メチル化検体96例のうち3例がMSI‐Hであった(P = 8.1 x 10
-15)。
MYOCDでは、メチル化検体16例のうち14例がMSI‐Hであり、非メチル化検体96例のうち4例がMSI‐Hであった(P = 1.4 x 10
-12)。
上記の結果より、大腸癌患者においてID4、LOXおよびMYOCDいずれか1つがメチル化している場合、MSIが高い傾向にあり、すなわち、予後が良好である可能性が高いと考えられる。よって、これらの3つのマーカー遺伝子のメチル化状態を解析することにより、大腸癌患者の予後を予測し得ると考えられる。
【0083】
(実施例4)メチル化特異的PCR(MSP)による大腸癌細胞の検出
【0084】
(1)検体試料の作製
以下のようにして、大腸癌細胞株HCT116とDLD−1、大腸癌患者から採取した大腸癌組織1〜7、および正常大腸粘膜組織由来のゲノムDNAから、それぞれHCT116試料、DLD−1試料、CRC検体試料1〜7およびNormal検体試料を作製した。
【0085】
(i)大腸癌細胞株、大腸癌組織および正常大腸粘膜組織からのDNAの抽出
HCT116、DLD−1、大腸癌組織1〜7、および正常大腸粘膜組織のそれぞれから、DNAをQIAmp DNA Microキット(QIAGEN社)を用いて添付マニュアルに従って抽出した。抽出した大腸癌細胞株、大腸癌組織および正常大腸粘膜組織のゲノムを含む各ゲノムDNAをBioruptor(COSMO BIO社製)により超音波切断した。
【0086】
(ii)バイサルファイト処理
上記の(i)で得た各DNA(1μg)を19μlの水に希釈し、これらに6N水酸化ナトリウム水溶液を1μl添加して終濃度0.3Nとし、37℃で15分間インキュベーションして変性させた。そして、上記の各DNA溶液に3.6M重亜硫酸ナトリウム/0.6Mヒドロキノン溶液を120μl添加した後、95℃で30秒および50℃で15分を1サイクルとして、これを15サイクル繰り返すことにより、バイサルファイト処理をした。そして、各反応液をWizard(登録商標)DNA Clean-up System(Promega社)により脱塩し、TE緩衝液50μlで溶出し、非メチル化シトシンをウラシルに変換した各DNA溶液を得た。
【0087】
上記の各DNA溶液に3N水酸化ナトリウム水溶液を5μl添加して、室温で5分間インキュベーションした後、エタノール沈殿法により各DNAを精製した。最終的に各DNAを80μlの水に溶解して、HCT116試料、DLD−1試料、CRC検体試料1〜7、およびNormal検体試料を得た。
【0088】
(2)対照試料の作製
(i)0%および100%メチル化DNAの作製
ヒト末梢血リンパ球ゲノムDNAをGenomiPhi v2 DNA amplificationキット(GEヘルスケアライフサイエンス社)により増幅した。この増幅産物は、非メチル化DNAからなる。次いで、該増幅産物をBioruptor(COSMO BIO社製)により超音波切断し、DNA断片(0%メチル化DNA)を得た。また、該DNA断片の一部を分取して、これにSssIメチラーゼ(New England Biolab社)を反応させることにより全てのシトシンをメチル化させて、メチル化DNA断片(100%メチル化DNA)を得た。
【0089】
(ii)バイサルファイト処理
上述の検体試料の作製におけるバイサルファイト処理と同様に、0%メチル化DNAおよび100%メチル化DNAを処理し、0%メチル化対照試料および100%メチル化対照試料を得た。
【0090】
(3)メチル化特異的PCR(MSP)
上記(1)および(2)で得られた検体試料および対照試料(バイサルファイト処理後のDNA)を用いて、MSPを行った。MSPで用いたPCR試薬の組成、プライマーセットおよびPCRの反応条件を以下に示す。
【0091】
<PCR試薬>
DDW(滅菌水) 15.25μl
10×PCR buffer with MgCl
2(Roche社) 2.5μl
1.25 mM dNTP mix 4μl
10μMセンスプライマー 1μl
10μMアンチセンスプライマー 1μl
Faststart Taq polymerase(Roche社) 0.25μl
検体試料 1μl
トータル 25μl
【0092】
<プライマーセット>
上記のMSPで用いたプライマーセットを表8に示す。なお、表8の三列目の欄における「M」はメチル化検出用プライマーを示し、「U」は非メチル化検出用プライマーを示す。
【0093】
【表8】
【0094】
<PCR反応条件>
95℃で6分、
95℃で30秒、X℃で30秒、72℃で30秒をYサイクル、
72℃で7分、
16℃で放置。
【0095】
なお、上記の反応条件において「X」および「Y」はそれぞれ、表8に示されるアニーリング温度およびサイクル数を表す。
【0096】
(3)メチル化特異的PCR(MSP)の結果解析
上述のMSPで得られた増幅産物を2%アガロースゲル電気泳動で確認した。また、アガロースゲル電気泳動の写真を画像処理ソフト(ImageJ)で解析することにより各バンドの強度を定量した。バンドの強度は、目的のバンドの強度から同じレーンのバックグラウンドの強度を差し引いた値とした。なお、後述のアガロースゲル電気泳動の結果を示す図およびバンド強度のグラフを示す図における符号を、以下に説明する。
【0097】
M: メチル化検出用プライマー
U: 非メチル化検出用プライマー
0%: 0%メチル化対照試料
100%: 100%メチル化対照試料
HCT116: HCT116試料
DLD1: DLD−1試料
N: Normal検体試料
1: CRC検体試料1
2: CRC検体試料2
3: CRC検体試料3
4: CRC検体試料4
5: CRC検体試料5
6: CRC検体試料6
7: CRC検体試料7
【0098】
<COL4A2>
COL4A2のプライマーセットを用いたMSPのアガロースゲル電気泳動の結果を
図2に示す。また、COL4A2のプライマーセットを用いたメチル化特異的PCRのアガロースゲル電気泳動のバンド強度のグラフを
図3に示す。
【0099】
図2および
図3から、100%メチル化対照試料、HCT116試料、DLD−1試料、CRC検体試料1〜4では、非メチル化検出用プライマーよりもメチル化検出用プライマーを用いたPCRにおいて強いバンドが検出された。一方、0%メチル化対照試料およびNormal検体試料では、メチル化検出用プライマーよりも非メチル化検出用プライマーを用いたPCRにおいて強いバンドが検出された。この結果から、生体試料中のCOL4A2遺伝子のメチル化の状態を、MSPにより解析することで、大腸癌細胞を検出できることが明らかとなった。
【0100】
<AOX1>
AOX1のプライマーセットを用いたMSPのアガロースゲル電気泳動の結果を
図4に示す。また、AOX1のプライマーセットを用いたメチル化特異的PCRのアガロースゲル電気泳動のバンド強度のグラフを
図5に示す。
【0101】
図4および
図5から、100%メチル化対照試料、HCT116試料、DLD−1試料、CRC検体試料2〜4および検体試料7では、非メチル化検出用プライマーよりもメチル化検出用プライマーを用いたPCRにおいて強いバンドが検出された。一方、0%メチル化対照試料およびNormal検体試料では、メチル化検出用プライマーよりも非メチル化検出用プライマーを用いたPCRにおいて強いバンドが検出された。この結果から、生体試料中のAOX1遺伝子のメチル化の状態をMSPにより解析することで、大腸癌細胞を検出できることが明らかとなった。
【0102】
<DUSP26>
DUSP26のプライマーセットを用いたMSPのアガロースゲル電気泳動の結果を
図6に示す。また、DUSP26のプライマーセットを用いたメチル化特異的PCRのアガロースゲル電気泳動のバンド強度のグラフを
図7に示す。
【0103】
図6および
図7から、100%メチル化対照試料、HCT116試料、DLD−1試料、CRC検体試料1、検体試料3、検体試料5および検体試料6では、非メチル化検出用プライマーよりもメチル化検出用プライマーを用いたPCRにおいて強いバンドが検出された。一方、0%メチル化対照試料およびNormal検体試料では、メチル化検出用プライマーよりも非メチル化検出用プライマーを用いたPCRにおいて強いバンドが検出された。この結果から、生体試料中のDUSP26遺伝子のメチル化の状態をMSPにより解析することで、大腸癌細胞を検出できることが明らかとなった。
【0104】
<ELM01>
ELM01のプライマーセットを用いたMSPのアガロースゲル電気泳動の結果を
図8に示す。また、ELM01のプライマーセットを用いたメチル化特異的PCRのアガロースゲル電気泳動のバンド強度のグラフを
図9に示す。
【0105】
図8および
図9から、100%メチル化対照試料、HCT116試料、DLD−1試料、CRC検体試料1、検体試料3、検体試料5および検体試料6では、非メチル化検出用プライマーよりも、メチル化検出用プライマーを用いたPCRにおいて強いバンドが検出された。一方、0%メチル化対照試料およびNormal検体試料では、メチル化検出用プライマーよりも非メチル化検出用プライマーを用いたPCRにおいて強いバンドが検出された。この結果から、生体試料中のELM01遺伝子のメチル化の状態をMSPにより解析することで、大腸癌細胞を検出できることが明らかとなった。
【0106】
<STOX2>
STOX2のプライマーセットを用いたMSPのアガロースゲル電気泳動の結果を
図10に示す。また、STOX2のプライマーセットを用いたメチル化特異的PCRのアガロースゲル電気泳動のバンド強度のグラフを
図11に示す。
【0107】
図10および
図11から、100%メチル化対照試料、HCT116試料、DLD−1試料、CRC検体試料1、検体試料2、検体試料5および検体試料6では、非メチル化検出用プライマーよりもメチル化検出用プライマーを用いたPCRにおいて強いバンドが検出された。一方、0%メチル化対照試料およびNormal検体試料では、メチル化検出用プライマーよりも非メチル化検出用プライマーを用いたPCRにおいて強いバンドが検出された。この結果から、生体試料中のSTOX2遺伝子のメチル化の状態をMSPにより解析することで、大腸癌細胞を検出できることが明らかとなった。
【0108】
<EDIL3>
EDIL3のプライマーセットを用いたMSPのアガロースゲル電気泳動の結果を
図12に示す。また、EDIL3のプライマーセットを用いたメチル化特異的PCRのアガロースゲル電気泳動のバンド強度のグラフを
図13に示す。
【0109】
図12および
図13から、100%メチル化対照試料、HCT116試料、DLD−1試料、CRC検体試料1、検体試料2、検体試料5および検体試料6では、非メチル化検出用プライマーよりもメチル化検出用プライマーを用いたPCRにおいて強いバンドが検出された。一方、0%メチル化対照試料およびNormal検体試料では、メチル化検出用プライマーよりも非メチル化検出用プライマーを用いたPCRにおいて強いバンドが検出された。この結果から、生体試料中のEDIL3遺伝子のメチル化の状態をMSPにより解析することで、大腸癌細胞を検出できることが明らかとなった。
【0110】
<ZNF447>
ZNF447のプライマーセットを用いたMSPのアガロースゲル電気泳動の結果を
図14に示す。また、ZNF447のプライマーセットを用いたメチル化特異的PCRの、アガロースゲル電気泳動のバンド強度のグラフを
図15に示す。
【0111】
図14および
図15から、100%メチル化対照試料、HCT116試料、DLD−1試料、CRC検体試料1、検体試料2、検体試料3および検体試料5では、非メチル化検出用プライマーよりも、メチル化検出用プライマーを用いたPCRにおいて強いバンドが検出された。一方、0%メチル化対照試料およびNormal検体試料では、メチル化検出用プライマーよりも非メチル化検出用プライマーを用いたPCRにおいて強いバンドが検出された。この結果から、生体試料中のZNF447遺伝子のメチル化の状態をMSPにより解析することで、大腸癌細胞を検出できることが明らかとなった。
【0112】
<EFHD1>
EFHD1のプライマーセットを用いたMSPのアガロースゲル電気泳動の結果を
図16に示す。また、EFHD1のプライマーセットを用いたメチル化特異的PCRのアガロースゲル電気泳動のバンド強度のグラフを
図17に示す。
【0113】
図16および
図17から、100%メチル化対照試料、HCT116試料、DLD−1試料、およびCRC検体試料7では、非メチル化検出用プライマーよりもメチル化検出用プライマーを用いたPCRにおいて強いバンドが検出された。一方、0%メチル化対照試料およびNormal検体試料では、メチル化検出用プライマーよりも非メチル化検出用プライマーを用いたPCRにおいて強いバンドが検出された。この結果から、生体試料中のEFHD1遺伝子のメチル化の状態を、MSPにより解析することで、大腸癌細胞を検出できることが明らかとなった。
【0114】
(実施例5)メチル化特異的PCR(MSP)による乳癌細胞の検出
【0115】
(1)検体試料の作製
市販されている二つのヒト正常乳腺上皮組織由来のゲノムDNAを、それぞれBioruptor(COSMO BIO社製)を用いて超音波処理した。超音波処理した各ヒト正常乳腺上皮組織由来のゲノムDNAを、実施例4と同様のバイサルファイト処理を行うことで正常乳腺上皮組織検体試料AおよびBを作製した。また、市販されているヒト乳癌組織由来のゲノムDNAを同様に処理して乳癌検体試料Cを作製した。
【0116】
(2)対照試料の作製
実施例4の対照試料の作製と同様の操作により、0%メチル化対照試料および100%メチル化対照試料を作製した。
【0117】
(3)メチル化特異的PCR(MSP)
上記(1)および(2)で得られた検体試料および対照試料を用いてMSPを行った。MSPで用いたPCR試薬の組成およびPCRの反応条件は、実施例4と同様である。また、プライマーは表8に示されるCOL4A2、AOX1およびSTOX2のプライマーを用いた。
【0118】
(3)メチル化特異的PCR(MSP)の結果解析
実施例4と同様に、アガロースゲル電気泳動およびバンドの強度を用い、増幅産物を解析した。なお、後述のアガロースゲル電気泳動の結果を示す図およびバンド強度のグラフを示す図における符号を、以下に説明する。
【0119】
M: メチル化検出用プライマー
U: 非メチル化検出用プライマー
0%: 0%メチル化対照試料
100%: 100%メチル化対照試料
A: 正常乳腺上皮組織検体試料A
B: 正常乳腺上皮組織検体試料B
C: 乳癌検体試料C
【0120】
<COL4A2>
COL4A2のプライマーセットを用いたMSPのアガロースゲル電気泳動の結果を
図18に示す。また、COL4A2のプライマーセットを用いたメチル化特異的PCRのアガロースゲル電気泳動のバンド強度のグラフを
図19に示す。
【0121】
図18および
図19から、100%メチル化対照試料および乳癌検体試料Cでは、非メチル化検出用プライマーよりもメチル化検出用プライマーを用いたPCRにおいて強いバンドが検出された。一方、0%メチル化対照試料、正常乳腺上皮組織検体試料Aおよび正常乳腺上皮組織検体試料Bでは、メチル化検出用プライマーよりも非メチル化検出用プライマーを用いたPCRにおいて強いバンドが検出された。この結果から、生体試料中のCOL4A2遺伝子のメチル化の状態をMSPにより解析することで、乳癌細胞を検出できることが明らかとなった。
【0122】
<AOX1>
AOX1のプライマーセットを用いたMSPのアガロースゲル電気泳動の結果を
図20に示す。また、AOX1のプライマーセットを用いたメチル化特異的PCRのアガロースゲル電気泳動のバンド強度のグラフを
図21に示す。
【0123】
図20および
図21から、100%メチル化対照試料および乳癌検体試料Cでは、非メチル化検出用プライマーよりもメチル化検出用プライマーを用いたPCRにおいて強いバンドが検出された。一方、0%メチル化対照試料、正常乳腺上皮組織検体試料Aおよび正常乳腺上皮組織検体試料Bでは、メチル化検出用プライマーよりも非メチル化検出用プライマーを用いたPCRにおいて強いバンドが検出された。この結果から、生体試料中のAOX1遺伝子のメチル化の状態をMSPにより解析することで、乳癌細胞を検出できることが明らかとなった。
【0124】
<STOX2>
STOX2のプライマーセットを用いたMSPの、アガロースゲル電気泳動の結果を
図22に示す。また、STOX2のプライマーセットを用いたメチル化特異的PCRのアガロースゲル電気泳動のバンド強度のグラフを
図23に示す。
【0125】
図22および
図23から、100%メチル化対照試料および乳癌検体試料Cでは、非メチル化検出用プライマーよりも、メチル化検出用プライマーを用いたPCRにおいて強いバンドが検出された。一方、0%メチル化対照試料、正常乳腺上皮検体試料Aおよび正常乳腺上皮組織検体試料Bでは、メチル化検出用プライマーよりも非メチル化検出用プライマーを用いたPCRにおいて強いバンドが検出された。この結果から、生体試料中のSTOX2遺伝子のメチル化の状態をMSPにより解析することで、乳癌細胞を検出できることが明らかとなった。
【0126】
本出願は、2009年7月3日に出願された日本国特許出願特願2009−158873号に関し、これらの特許請求の範囲、明細書、図面および要約書の全ては本明細書中に参照として組み込まれる。