特許第6083922号(P6083922)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6083922
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】波形表示装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 13/20 20060101AFI20170213BHJP
【FI】
   G01R13/20 N
   G01R13/20 L
【請求項の数】2
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2010-272722(P2010-272722)
(22)【出願日】2010年12月7日
(65)【公開番号】特開2011-123070(P2011-123070A)
(43)【公開日】2011年6月23日
【審査請求日】2012年12月21日
【審判番号】不服2015-22860(P2015-22860/J1)
【審判請求日】2015年12月25日
(31)【優先権主張番号】12/631,968
(32)【優先日】2009年12月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スティブン・ケィ・サリバン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティ・エル・ベイス
(72)【発明者】
【氏名】テランス・アール・ビール
(72)【発明者】
【氏名】ポール・エム・ゲーラッチ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリ・エイ・マーチン
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・エス・ウォーカ
【合議体】
【審判長】 中塚 直樹
【審判官】 清水 稔
【審判官】 関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−344454(JP,A)
【文献】 特開2005−62102(JP,A)
【文献】 特開2009−236765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
関心のある時間区間を設定し、トリガ基準を設定するユーザが操作可能なインタフェースと、
被測定信号を受ける入力端子と、
上記入力端子に結合され、上記被測定信号を受けて、上記被測定信号からデジタル・データを生成するアナログ・デジタル変換回路と
上記被測定信号の上記デジタル・データを、上記関心のある時間区間より長い時間を有する連続するデータ・レコードとして記憶する取込みメモリと、
上記トリガ基準に基いて上記被測定信号中の複数のトリガ・イベントを検出し、上記データ・レコード内に複数それぞれのトリガ・イベント情報アイテムを生成するトリガ・ユニットと、
上記トリガ基準に基づいて上記複数のトリガ・イベント情報アイテムをトリガ・リストとして記憶するトリガ・リスト・メモリと、
上記トリガ・リスト・メモリ中の上記トリガ・イベント情報アイテムに基いて、上記取込みメモリ中の上記デジタル・データを特定する制御ユニットと、
上記トリガ・イベント情報アイテムの1つにそれぞれ対応し、連続する上記データ・レコードの一部分である上記関心のある時間区間内の上記被測定信号に関する波形を複数表示する表示デバイスと
を具え、
上記表示デバイスが、上記取込みメモリ中の上記データ・レコードの全長に対応するバーを表示し、該バーが、上記トリガ・リスト中の上記トリガ・イベント情報アイテムに基いて、上記取込みメモリ中の上記データ・レコードの全長に対する上記トリガ・イベントの位置を更に表示すると共に、上記インターフェースが上記トリガ・イベントに関する上記関心のある時間区間の幅及び位置を調整する手段を有し、
上記表示デバイスが、上記バーを利用して選択された複数のトリガ・イベントに関連し、上記トリガ・リスト中の上記トリガ・イベント情報アイテムに対応する上記時間区間における複数の波形から得られる合成波形を更に表示することを特徴とする波形表示装置。
【請求項2】
関心のある時間区間を設定すると共に、トリガ基準を設定するステップと、
被測定信号を受けるステップと、
上記被測定信号をデジタル・データに変換するステップと、
上記被測定信号の上記デジタル・データを上記関心のある時間区間より長い時間を有する連続するデータ・レコードとして記憶するステップと、
上記トリガ基準に基づいて上記被測定信号中の複数のトリガ・イベントを検出し、上記トリガ・イベントにそれぞれ対応するトリガ・イベント情報アイテムを生成するステップと、
上記トリガ・イベント情報アイテムをトリガ・リスト・メモリ中にトリガ・リストとして記憶するステップと、
上記トリガ・リストに基いて上記トリガ・イベントに対応する上記取込みメモリ中の上記デジタル・データを特定するステップと、
上記トリガ・イベント情報アイテムの1つにそれぞれ対応し、連続する上記データ・レコードの一部分である上記関心のある時間区間をそれぞれ含む上記複数のトリガ・イベントに関する波形を表示するステップと、
上記取込みメモリ中の上記データ・レコードの全長に対応するバーを表示し、該バーが、上記トリガ・リスト中の上記トリガ・イベント情報アイテムに基いて、上記取込みメモリ中の上記データ・レコードの全長に対する上記トリガ・イベントの位置を表示すると共に、ユーザの入力に応じて、上記トリガ・イベントに関する上記関心のある時間区間の幅及び位置を変更するステップと
を具え、
表示される上記波形が、上記バーを利用して選択された複数のトリガ・イベントに関連し、上記トリガ・リスト中の上記トリガ・イベント情報アイテムに対応する上記時間区間における複数の波形から得られる合成波形であることを特徴とする波形表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には試験及び測定装置に関し、特には、デジタル・ストレージ・オシロスコープにおける信号取込み(アクイジション)に関する。
【背景技術】
【0002】
最新のデジタル・オシロスコープは、被試験電気信号を取込み、取り込んだ信号に対応するデジタル・データをデータ・レコードとして蓄積できる。こうしたオシロスコープは、被試験電気信号を取込みながら、1つ又は複数の波形を表示するのに利用できる。加えて、被試験電気信号の取込みが既に止まっていても、データ・レコードから先に蓄積されたデジタル・データをオシロスコープの表示装置上で波形として見ることができる。古いオシロスコープは、表示可能な時間量に対応して、一般に比較的小さいデータ・レコードを取り込むものであったが、メモリ速度、メモリ容量、プロセッサ速度の分野における進歩によって、オシロスコープは、新しいほど、こうした分野における機能が改善されている。ほとんどのオシロスコープが今や非常に大きなデータ・レコードを蓄積する容量を持っており、これは一度に無理なく表示できる時間よりも長い時間に対応するものとなっている。
【0003】
データ・レコードが大きくなった結果、ユーザは更なる機能を利用可能となっている。例えば、多くのオシロスコープは、水平又は垂直コントロールをユーザが調整でき、これによって表示装置上の波形の位置を変更できる。加えて、オシロスコープによっては、ユーザが波形全体をスクロール(しかもデータ・レコードを取り込んだ後で)することができるものもある。しかし、データ・レコードは、今や一度に表示できるよりも大幅に長い時間を表すので、ユーザが関心のある時間の区間は、取り込んだレコード全体に比較して短いことがあり、データ・レコード全体をスクロールするのは実用的ではない。このため、関心のある時間区間を発見し、分析するのが困難になっている。更には、レコード全体には、表示されている1つのイベントとは別の関心のある他の複数イベントが含まれているかもしれない。
【0004】
オシロスコープによっては、データ・レコード中の関心あるイベントにフラグを立てる検索機能を持つものがある。しかし、メモリ容量の急激な進歩によって、データ・レコードのサイズは拡大し続けており、これによって従来の検索技術では滞る又は速度が低下することとなる。更に、こうした検索機能は、ユーザが慣れたコントローラ又はインタフェースとは異なるものを必要とする。
【0005】
短い時間を見る場合には、オシロスコープは最高サンプル・レートでアナログ信号をサンプリングする。こうした波形のレコード長は短い。例えば、4Gサンプル毎秒のサンプル・レートで50n秒を見ると、レコード長は200サンプルである。非常に少数のサンプルが必要なだけであるが、オシロスコープの取込みメモリはとても大きく、例えば、4千サンプルの長さである。オシロスコープは、ユーザが50n秒の時間だけ見たいと思っても、常に4千サンプルをフルに取り込むように設計できてしまっている。この余分なデータを取り込むことによって、ユーザは取込み処理を止めることができ、元の50n秒の時間区間以外の信号の部分を見ることになる。しかし、全レコードを取り込むには非常に時間がかかる。4Gサンプル毎秒で4千サンプルを取込むには、10m秒かかる。こうした場合、波形の描画レートは、毎秒100波形未満に制限される。
【0006】
波形スループット(処理量)を高くするために、ユーザは、1000サンプルのレコード長のような、短いレード長を指定できる。しかし、もしユーザが取込み処理を停止し、装置が1000サンプルしか取り込んでいなければ、オシロスコープが1000サンプルよりも圧倒的に長いレコード長の取込みメモリを持っていても、ユーザが見ることができるのは短い時間に制限されてしまう。テラス・アール・ビール等による米国特許出願公開第2007/0226406号公報は、複数の短い波形を長いメモリに書き込む(できればオーバーラップする)方法を開示している。しかし、この技術を用いると、短い波形間の情報は失われてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0226406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
長いレコードの取込みレートよりもずっと高いレートで波形を表示しながら、ユーザが短い期間を見ることを要求しても、長いレコードを取り込む方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の観点はここにある。
(1)関心のある時間区間を設定し、トリガ基準を設定するユーザが操作可能なインタフェースと、被測定信号を受ける入力端子と、上記入力端子に結合され、上記被測定信号を受けて、上記被測定信号からデジタル・データを生成するアナログ・デジタル変換回路と、上記被測定信号の上記デジタル・データを、上記関心のある時間区間より長い時間を有する連続するデータ・レコードとして記憶する取込みメモリと、上記トリガ基準に基いて上記被測定信号中の複数のトリガ・イベントを検出し、上記データ・レコード内に複数それぞれのトリガ・イベント情報アイテム(項目)を生成するトリガ・ユニットと、上記トリガ基準に基づいて上記複数のトリガ・イベント情報アイテムをトリガ・リストとして記憶するトリガ・リスト・メモリと、上記トリガ・リスト・メモリ中の上記トリガ・イベント情報アイテムに基いて、上記取込みメモリ中の上記デジタル・データを特定する制御ユニットと、上記トリガ・イベント情報アイテムの1つにそれぞれ対応し、連続するデータ・レコードの一部分(subset)である上記関心のある時間区間に広がる上記被測定信号に関する波形を複数表示する表示デバイスとを具える波形表示装置である。
(2)第1観点の波形表示装置において、上記トリガ基準は上記デジタル・データの蓄積を停止した後に変更されても良く、その後、上記トリガ・ユニットは、上記取込みメモリ中の上記被測定信号のデジタル・データを読んで、変更されたトリガ基準に基いて1つ又は複数のトリガ・イベントを検出し、トリガ・イベント情報をトリガ・リストとして生成しても良い。
(3)第1観点の波形表示装置が、インタフェースを介して設定されるプリ・トリガ及びポスト・トリガ条件に基いてトリガ・イベントのいくつかを除去する手段を更に具えても良い。
(4)第1観点の波形表示装置が、トリガ・リスト中のトリガ・イベント情報に対応するトリガ・イベントの一部分(subset)を選択することによって、トリガ・イベントのいくつかを除去する手段を更に具えても良い。
(5)第1観点の波形表示装置において、上記表示デバイスが、トリガ・リスト中のトリガ・イベント情報に基づいて、取込みメモリのデータ・レコード長と比較した上記トリガ・イベントの位置を表示する。
(6)第1観点の波形表示装置において、表示デバイスが、上記時間区間についての上記トリガ・リスト中の上記トリガ・イベント情報に対応する複数のトリガ・イベントに関する複数の波形から得られた合成波形を表示する。
(7)第6観点の波形表示装置において、上記インタフェースが、上記合成波形を生成するのに用いられる上記トリガ・リスト中の上記トリガ・イベント情報に対応する上記複数のトリガ・イベントの範囲の幅を変更する手段を有している。
(8)第6観点の波形表示装置において、上記インタフェースが、上記合成波形を生成するのに用いられる上記トリガ・リスト中の上記トリガ・イベント情報に対応する上記複数のトリガ・イベントの範囲の位置を変更する手段を有している。
(9)第6観点の波形表示装置において、上記インタフェースが、トリガ・リストから選択されたトリガ・イベントを、一時的に選択から外す手段を有している。
(10)関心のある時間区間を設定すると共に、トリガ基準を設定するステップと、被測定信号を受けるステップと、上記被測定信号をデジタル・データに変換するステップと、上記被測定信号の上記デジタル・データを上記関心のある時間区間より長い時間を有する連続するデータ・レコードとして記憶するステップと、上記トリガ基準に基づいて上記被測定信号中の複数のトリガ・イベントを検出し、上記トリガ・イベントにそれぞれ対応するトリガ・イベント情報アイテムを生成するステップと、上記トリガ・イベント情報アイテムをトリガ・リスト・メモリ中にトリガ・リストとして記憶するステップと、上記トリガ・リストに基いて上記トリガ・イベントに対応する上記取込みメモリ中の上記デジタル・データを特定するステップと、上記トリガ・イベント情報アイテムの1つにそれぞれ対応し、連続するデータ・レコードの一部分である上記関心のある時間区間をそれぞれ含む上記複数のトリガ・イベントに関する波形を表示するステップとを具える波形表示方法である。
(11)第10観点の波形表示方法において、上記トリガ基準は上記デジタル・データの蓄積を停止した後に変更されても良く、その後、上記トリガ・ユニットは、上記取込みメモリ中の上記被測定信号のデジタル・データを読んで、変更されたトリガ基準に基いて1つ又は複数のトリガ・イベントを検出し、トリガ・イベント情報をトリガ・リストとして生成しても良い。
(12)第10観点の波形表示方法が、プリ・トリガ及びポスト・トリガ条件を設定するステップと、上記プリ・トリガ及びポスト・トリガ条件に基いて上記トリガ・イベントのいくつかを除去するステップを更に具えている。
(13)第10観点の波形表示方法が、トリガ・リスト中のトリガ・イベント情報に対応するトリガ・イベントの一部分(subset)を選択することによって、トリガ・イベントのいくつかを除去するステップを更に具えても良い。
(14)第10観点の波形表示方法が、トリガ・リスト中のトリガ・イベント情報に基づいて、取込みメモリのデータ・レコード長と比較した上記トリガ・イベントの位置を表示するステップを更に具えている。
(15)第10観点の波形表示方法において、上記表示される波形は、上記時間区間についての上記トリガ・リスト中の上記トリガ・イベント情報に基いて、複数のトリガ・イベントに関する複数の波形から得られた合成波形である。
(16)第15観点の波形表示方法が、上記合成波形を生成するのに用いられる上記トリガ・リスト中のトリガ・イベント情報に基いて上記複数のトリガ・イベントの範囲の幅を変更するステップ更に具えている。
(17)第15観点の波形表示方法が、上記合成波形を生成するのに用いられる上記トリガ・リスト中のトリガ・イベント情報に基いて上記複数のトリガ・イベントの範囲の位置を変更するステップ更に具えている。
(18)第15観点の波形表示方法が、上記トリガ・リスト中のトリガ・イベントを強調表示するステップと、トリガ・リストから強調表示されたトリガ・イベントを、一時的に選択から外すステップと更に具えている。
【0010】
比較的短いユーザの関心のある時間区間についての被測定信号の波形を高スループットで表示する装置及び方法は、必要な時に、関心のある時間区間の外の波形を表示するために、長い取込みメモリに被測定信号を取込む。
【0011】
特に、本発明は、オシロスコープ、ロジック・アナライザなどのような波形表示装置に関する。1つの実施形態では、ユーザの関心がある時間区間及びトリガ基準を設定するインタフェースと、被測定信号を受ける入力端子を含む。アナログ・デジタル変換回路は、入力端子と結合し、被測定信号を受けて被測定信号からデジタル・データを生成する。取込みメモリは、被測定信号のデジタル・データを蓄積するが、取込みメモリは、全メモリ長を用いて関心のある時間区間についてのデータに比較して、非常に多数のデータを蓄積する。表示デバイスは、被測定信号に関する1つ又は複数の波形を表示するが、これら波形はオーバーラップしても良い。トリガ・ユニットは、トリガ基準に基いて被測定信号中の1つ又は複数のトリガ・イベントを検出し、トリガ・イベント情報を生成する。トリガ・リスト・メモリは、トリガ基準に基づいて、トリガ・イベント情報をトリガ・リストとして蓄積する。制御ユニットは、CPUのようなコントローラを含み、トリガ・リストに基いてトリガ・イベントに対応する取込みメモリ中のデジタル・データを特定し、上記時間区間についてのトリガ・イベントに関する波形を表示する。
【0012】
1つの実施形態では、トリガ・ユニットは、デジタル・トリガ回路を含み、取込みメモリ中に蓄積された被測定信号のデジタル・データを読んで、トリガ基準に基づいて被測定信号中の1つ又は複数のトリガ・イベントを検出し、トリガ・イベント情報をトリガ・リストとして生成する。
【0013】
トリガ・リストは、多数のトリガ・イベント情報を有し、ユーザが関連する波形を無理なく観測するの必要なものより多いことがある。こうした場合、インタフェースを介して設定されるプリ・トリガ及びポスト・トリガ条件に基いて、検出したトリガ・イベントのいくつかを除去しても良い。これに代えて、トリガ・リスト中のトリガ・イベントの任意の一部分(subset)を選択することによって、トリガ・イベントのいくつかを除去しても良い。
【0014】
1つの実施形態では、表示デバイスは、取込みメモリのデータ・レコード長に比較したトリガ・リスト中のトリガ・イベントの位置を表示する。取込みメモリのデータ・レコード長は、バーとして表示され、トリガ・イベントの位置は、このバー上に示される。更に、ビュー・ウィンドウがバ―上に表示され、表示デバイスのスクリーン上に波形を表示するのに、取込みメモリ中のデータ・レコードのどの部分が使われているかを示す。
【0015】
1つの実施形態では、表示デバイスは、上記時間区間についてのトリガ・リスト中のトリガ・イベント情報に対応するトリガ・イベントに関する複数の波形から得られる合成波形を表示する。合成波形は、表示デバイスのスクリーン上の各画素に、どの程度の頻度で波形データが現れるかに基づくグレースケール表示で表示される。例えば、オレゴン州ビーバートンのテクトロニクス社で製造されるDPOシリーズ・オシロスコープは、こうした被測定信号の合成波形を提供する。本発明による波形表示装置は、特に、短い関心のある時間区間についてのトリガ・リストを用いることによって、長いレコードの従来のオシロスコープの取込みレートに比較して格段に高いレートで合成波形を表示可能にする。ユーザは、どのくらいの数の波形、そしてどの波形を合成波形を生成するのに使用するかを変更できる。
【0016】
本発明は、別の見方によれば、波形表示方法に関する。関心のある時間区間及びトリガ基準が設定され、被測定信号を受けてデジタル・データに変換され、取込みメモリに蓄積される。被測定信号中の1つ以上のトリガ・イベントがトリガ基準に基づいて検出され、トリガ・イベントに対応するトリガ・イベント情報を生成する。トリガ基準に基づくトリガ・イベント情報は、トリガ・リスト・メモリ中にトリガ・リストとして蓄積される。そして、トリガ・イベントに対応する取込みメモリ中のデジタル・データが、トリガ・リストに基いて特定され、時間区間におけるそのトリガ・イベントに関する波形を表示する。
【0017】
本発明は、更なる見方によれば、被測定信号をデジタル・データとして受けてメモリ中にこれらを蓄積し、波形を表示する方法である。例えば、被測定信号のデジタル・データはオシロスコープ又はロジック・アナライザによって事前に取り込まれ、そしてパソコン(PC)がそのデジタル・データを受けて、ハードディスク・ドライブ(HDD)、フラッシュ・メモリなどでも良いメモリ中にそれらを蓄積する。関心のある時間区間及びトリガ基準が設定され、被測定信号中の1つ以上のトリガ・イベントがトリガ基準に基づいて検出され、トリガ・イベント情報を生成する。トリガ基準に基づくトリガ・イベント情報は、トリガ・リスト・メモリ中に蓄積される。トリガ・イベントに対応するメモリ中のデジタル・データがトリガ・リストに基いて特定され、時間区間におけるそのトリガ・イベントに関する波形を表示する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の実施形態による取込み及びトリガ・ユニット、制御ユニット、表示ユニット及び制御パネル(インタフェースの一部)を含む波形表示装置のブロック図である。
図2図2は、従来から既知の関心のある時間区間及びプリ/ポスト・トリガ間の関係を示す図である。
図3図3は、本発明の実施形態に沿った取込み処理中におけるトリガ・イベントを示す図である。
図4図4は、取込み処理が実行中において主に生じる処理の流れを示す本発明によるフローチャートの例である。
図5図5は、取込み処理が終わった後における処理の流れを示す本発明によるフローチャートの例である。
図6A図6Aは、本発明によるの実施形態に沿ったパン及びズーム動作のためのビュー・ウィンドウ及びトリガ・イベントを含むバー表示の例である。
図6B図6Bは、本発明によるの実施形態に沿ったパン及びズーム動作のためのビュー・ウィンドウ及びトリガ・イベントを含むバー表示の例である。
図6C図6Cは、本発明によるの実施形態に沿ったパン及びズーム動作のためのビュー・ウィンドウ及びトリガ・イベントを含むバー表示の例である。
図6D図6Dは、本発明によるの実施形態に沿ったパン及びズーム動作のためのビュー・ウィンドウ及びトリガ・イベントを含むバー表示の例である。
図7図7は、本発明の実施形態に沿った合成波形の表示の例である。
図8図8は、本発明の実施形態に沿った個々の波形とそれらそれぞれのトリガ・イベントとの関連を示す合成波形の表示の例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の実施形態の例による波形表示装置100のブロック図であり、取込み及びトリガ・ユニット101、制御ユニット200、表示ユニット300及び制御パネル400が含まれる。波形表示装置100は、典型的にはデジタル・オシロスコープであっても良い。図1のオシロスコープ100には、本願で説明する種々の実施形態での利用に適した2つのチャンネル又は入力があるが、説明する本発明の観点は、4つ又は任意数の入力を持つオシロスコープにも等しく適用可能である。
【0020】
複数のアナログ・デジタル変換回路(ADC)103は、2つの入力端子(2チャンネル)からの被測定信号をデジタル・データ(デジタル・サンプル)に変換する。取込み(アクイジション)メモリ104は、ユーザが関心を持つかもしれないデータ長よりも大幅に長い量のデジタル・データを蓄積する。取込みメモリ104は、1つのブロックとして図示しているが、取込みメモリ104は複数のディスクリート・メモリを含んでも良いと理解すべきである。
【0021】
取込み及びトリガ・ユニット101は、複数のチャンネルそれぞれについて同様の回路を持っている。簡単のため、第1チャンネルの回路についてのみ以下で説明する。ライブ・トリガ回路106は、ADC103からデジタル・データを受けて、被測定信号中の1つ又は複数のトリガ・イベントを検出する。これに代わる実施形態としては、ライブ・トリガ回路106がアナログのトリガ回路で、ADC103の前の複数の入力端子102の1つに結合されて、アナログ信号である被測定信号を受けるようにしても良いと理解すべきである。ライブ・トリガ回路106は、ユーザが設定した第1トリガ基準に基づいて、被測定信号中の全てのライブ・トリガ・イベントを検出できる。ライブ・トリガ回路106がトリガ・イベントを検出すると、タイム・スタンプ発生回路110は、トリガ・イベントそれぞれのタイム・スタンプを生成する。
【0022】
ポスト取込みトリガ回路108は、取込みメモリ中に蓄積された被測定信号のデジタル・データを受ける。ポスト取込みトリガ回路108は、ユーザが設定した第2トリガ基準に基づいて、デジタル・データ中の全てのポスト取込みトリガ・イベントを検出できる。ユーザは、取込みを中止した後に第2トリガ基準を設定しても良い。ポスト取込みトリガ回路108がトリガ・イベントを検出すると、タイム・スタンプ発生回路112は、トリガ・イベントそれぞれのタイム・スタンプを生成する。
【0023】
トリガ回路106及び108は、2つの独立した回路として示しているが、ライブ・トリガ回路機能及びポスト取込み回路機能の両方を、例えば、異なる時間に提供する1つのハードウェアとして実現されても良い。これに代えて、ライブ・トリガ回路106及びポスト取込み回路108を互いに別々とし、それぞれが他方と同様な回路を含むようにしても良い。トリガ回路106及び108は、例えば、サリバン等による米国特許7,352,167号に開示されているようなデジタル・トリガ回路でも良い。
【0024】
オシロスコープ100がライブ・トリガ・モードにあるときは、スイッチ114はタイム・スタンプ発生回路110からタイム・スタンプを受けて、トリガ・イベント除去回路116に供給する。これの代わりに、オシロスコープ100がポスト取込みトリガ・モードにあるときは、スイッチ114はタイム・スタンプ発生回路112からタイム・スタンプを受けて、トリガ・イベント除去回路116に供給する。ライブ及びポスト取込みトリガ・モードは、詳しくは後述する。トリガ・イベント除去回路116は、ステート・マシン118の制御の下で、タイム・スタンプを通過させるか又は除去し、通過させたタイム・スタンプをトリガ・リスト・メモリ128に供給する。トリガ・リスト・メモリ128は、通過タイム・スタンプをトリガ・リストとして蓄積する。ステート・マシン118は、FPGA(Field Programmable Gate Array)で実現しても良く、詳細な動作は後述する。トリガ・リスト・メモリ128は、循環(circular)メモリでもよく、もし満杯になると、古いものからデータが順次廃棄される。図1は、取込みメモリ104及びトリガ・リスト・メモリ 128を別々に示しているが、トリガ・リスト・メモリ128は取込みメモリ104の一部としても良い。
【0025】
制御ユニット200は、動作可能に取込み及びトリガ・ユニット101及び表示ユニット300に結合されており、取込み及びトリガ・ユニット101が供給するサンプルされたデータのストリームを、表示ユニット300で波形を表示するように処理する。制御ユニット200は、CPU202、メモリ204及び入出力(I/O)回路206を含むパソコンと同様なハードウェアを有する。メモリ204は、ハードディスク・ドライブ(HDD)、フラッシュ・メモリ及びRAMのいずれか、又はこれら全てを含んでいても良い。RAMは、通常、CPU202が処理するデータを一時的に蓄積するのに利用される。HDD又はフラッシュ・メモリは、データ及びパソコンで使用されるようなOS(operating software)を含むソフトウェアを大量に蓄積でき、これによって、オシロスコープ100はパソコンと同様なグラフィカル・ユーザ・インタフェースを提供できる。
【0026】
I/O回路206は、種々の要素と制御ユニット200との間の通信機能を提供する。例えば、I/O回路206は、キーパッド210、ポインティング・デバイス(マウス)208、制御パネル400、タッチ・スクリーンの表示デバイス302、外部パソコン(図示せず)などのユーザによる制御ユニット200への入力及び出力に適した周辺デバイスとの連結機能を有していても良い。制御ユニット200は、こうしたユーザの入力に応答して、種々の機能を実行するように取込み及びトリガ・ユニット101の動作を制御する。
【0027】
制御ユニット200は、波形データを表示ユニット300に供給する。表示ユニット300は、表示回路304を有し、これは表示メモリ(図示せず)を含み、波形データをラスタ画像データに処理して、表示デバイス302のスクリーン上で波形を表示する。表示デバイス302は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)としても良い。
【0028】
制御パネル400は、オシロスコープ100のユーザ・インタフェースの一部を構成し、ユーザがオシロスコープ100を制御できるようにする。もしユーザが「Run/Stop」ボタン402を押すと、オシロスコープ100は被測定信号の取込みを開始し、次に「Run/Stop」ボタン402を押すと、取込みが停止する。トリガ制御エリア419によって、ユーザはトリガ条件を制御でき、また、種々のインジケータ436〜448があって、種々のトリガ状態を示す。もしエッジ・ボタン420が押されると、オシロスコープ100は、エッジ・トリガのトリガ基準によって被測定信号をトリガするが、このとき、ポジティブ又はネガティブのスロープ・ボタン430及び432の一方を押すことによって、立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジが選択される。レベル制御ノブ434は、エッジ・トリガの閾値レベルを調整するのに利用される。また、「Advanced(アドバンスド:上級)」ボタン428を押すと、表示スクリーン上にトリガ・メニューの種々の選択肢が示され、ユーザは、複雑なトリガ基準を設定できる。アドバンスド・トリガ基準は、例えば、米国テクトロニクス社が製造するDPO70000Bシリーズ・オシロスコープにあるPinpoint(登録商標)トリガ機能であっても良い。
【0029】
水平制御エリア403には、水平ポジション制御ノブ404及びスケール制御ノブ406がある。表示スクリーン上に表示された波形は、ポジション制御ノブ404を回すことによって左右に動く。スケール制御ノブ406を回すと、表示スクリーンの水平軸スケールが変更される。
【0030】
ユーザは、ユーザの関心がある時間区間を定めるのにもスケール制御ノブ406を用いることができる。図2は、表示デバイス302のスクリーン上の表示例を示し、ここでは、スクリーンの水平及び垂直軸はそれぞれ10ディビジョン(div:目盛)あり、事前に取り込んだか又は取込み中の波形を表示していても良い。ユーザは、ユーザの関心がある時間区間をスクリーンの幅で見ることができる。もしユーザが、スケール制御ノブ406を回して水平時間軸スケールを変更すると、1ディビジョン当たりの水平時間が変更され、1つのトリガ・イベントについて、ユーザの関心がある時間区間の長さが変更される。もしユーザが水平ポジション制御ノブ408を回すと、スクリーン上のトリガ・マーカの位置が変化して、プリ・トリガとポスト・トリガ間の比率が変化し、トリガ・イベントに関するプリ・トリガ及びポスト・トリガ条件が定まる。プリ・トリガ及びポスト・トリガ条件は、プリ・トリガ領域及びポスト・トリガ領域それぞれのサンプル数又は時間長で表すようにしても良い。制御パネルの他の動作については、本発明による動作と合わせて後述する。
【0031】
従来のオシロスコープでは、データを取込みメモリに蓄積する処理は、多くの場合、ポスト・トリガ条件が満たされると直ぐに停止し、取込みメモリに蓄積した1セットの取込みデータ(典型的にはメモリの全長を使用)は、波形表示を生成するために処理される。この大量のデータは、表示のスループット(処理率)を悪化させる。本発明では、取込み処理は、各トリガ・イベントに関するポスト・トリガ条件が満たされても通常は停止せず、ある別の条件が満たされるまで続く。従って、本発明によるオシロスコープは、1回の取込み処理で、トリガ・リストに基づいて、取込みメモリから複数セットの波形データを供給し、波形表示を形成できる。このとき、波形データの各セットは、もしユーザが短い時間区間を設定すれば、取込みメモリの全長に比較して大幅に短い長さのものにできる。これによって、大きな取込みメモリのメモリ長全部を利用しながら、高いスループットで波形を表示可能になる。
【0032】
図3は、取込み処理中におけるトリガ・イベントの時間グラフである。図3では、丸はトリガ回路106で認識されたが、除去回路116で除去されたトリガ・イベントを示す。三角はトリガ回路106で認識され、除去回路116で除去されずにトリガ・リストに記録されたトリガ・イベントを示す。
【0033】
ステート・マシン118は、4つのカウンタ120、122、124及び126を有すると考えられる。第1カウンタ120は、上述したプリ・トリガ条件で定める所定のサンプル数に達するまでサンプル・クロックをカウントすることによって、トリガA1の前における初期マイナー・プリ・トリガ・ホールドオフを提供する。第2カウンタ122は、メモリ104の取込みレコードの最大サンプル数から、ポスト・トリガ条件で定まるサンプル数を引いて得られる数より少ない所定サンプル数に達するまでサンプル・クロックをカウントすることによって、トリガA4前のメジャー・プリ・トリガ・ホールドオフを提供する。第3カウンタ124は、プリ・トリガ条件及びポスト・トリガ条件で定まるサンプル数の合計より少ない所定サンプル数に達するまでサンプル・クロックをカウントすることによって、マイナー・ステディ・ステート(Steady State:定常状態)トリガ・ホールドオフを提供する。第4カウンタ126は、ポスト・トリガ条件で定まるサンプル数に達するまでサンプル・クロックをカウントすることによって、トリガA4に続くメジャー・ポスト・トリガ時間を提供する。上述の4つのカウンタのサンプル・クロックのカウント数は、大雑把なガイドラインとして説明したもので、調整可能である。加えて、関連するメニューを表示スクリーン上に用意することで、ユーザが4つのカウンタ120、122、124及び126に設定するサンプル数を調整しても良い。
【0034】
また、取込みメモリ104中の取込みレコードに広くトリガ・イベントが分布するように、各トリガ・イベントに続いて所定のホールドオフ時間を与える別のホールドオフ回路を設けても良い。
【0035】
図4及び図5は、本発明による実施形態のフローチャートである。最初に、ユーザは、ユーザが関心のある時間区間及び所望トリガ基準を含む初期設定を設定する。この初期設定は、更に、プリ及びポスト・トリガ条件を含んでいても良い。ユーザが「Run/Stop」ボタン402を押す(ステップ14)と、オシロスコープは、被測定信号のデジタル・データの取込みを開始し、これらを取込みメモリ104に記録する(ステップ16)。取込みを開始すると、取込み開始タイム・スタンプがメモリ204に別途記録される。ライブ・トリガ回路106は、被測定信号中のトリガ・イベントを検出し、タイム・スタンプ発生回路110は対応するタイム・スタンプを生成する(ステップ18)。タイム・スタンプは、トリガ・イベント情報のアイテム(Item:項目)である。トリガ除去回路116は、トリガ・イベントに対応するタイム・スタンプをいくらか除去し(ステップ20)、通過したタイム・スタンプは、もし「Run/Stop」ボタン402が再度押されなければ(ステップ24)、メジャー・ポスト・トリガ条件が満たされる(ステップ26)まで、トリガ・リストとしてトリガ・リスト・メモリ128に蓄積される。そして、トリガ・リストが完成する(ステップ28)。これは、取込み開始時のタイム・スタンプが記録され、サンプル・クロックの周波数が既知なので、各デジタル・データと取り込んだときに決定できる。このため、制御ユニット200は、トリガ・イベントのタイム・スタンプを用いて、トリガ・リスト中のトリガ・イベント情報に基づき、トリガ・イベントに対応するデータを特定できる。ステップ32では、オシロスコープ100は、長い取込みメモリ中の関心のある時間区間以外も含む被測定信号の長いデータ・レコードを取込みながら、トリガ・リスト中にトリガ・イベント情報として記録されたトリガ・イベントに関する比較的短い関心のある時間区間についての全ての波形を高スループットで表示する。ステップ32の後、「Run/Stop」ボタン402が再度押されてステップ24で取込みを停止するまで、ステップ16からステップ32までの処理は繰り返される。もし「Run/Stop」ボタン402が押され、ステップ24で取込みが停止すると、処理はステップ14に戻る。
【0036】
ステップ14において、もし「Run/Stop」ボタン402が取込みを開始するために押されないと、ユーザは、ユーザの関心がある時間区間、トリガ基準又はプリ及びポスト・トリガ条件の設定を変更できる(図5のステップ34)。すると、制御ユニット200は、ポスト取込み回路108を制御し、取込みメモリ104からデータを読み(ステップ36)、「Post Acq(ポスト取込み)」インジケータ448(図1参照)が点灯してポスト取込みモードにあることを示す。トリガ除去回路116は、トリガ・イベントに対応するタイム・スタンプをいくらか除去し(ステップ40)、トリガ・イベントの通過したタイム・スタンプは、変更した設定に基づく新しいトリガ・リストとしてトリガ・リスト・メモリ128に記録される(ステップ42)。制御ユニット 200は、新しいトリガ・リスト中のトリガ・イベント情報に基づき、トリガ・イベントのタイム・スタンプを用いて、トリガ・イベントに対応するデータを特定する(ステップ44)。ステップ45では、オシロスコープ100が、関心のある比較的短い時間区間について、トリガ・イベント情報として新しいトリガ・リスト中に記録されたトリガ・イベントに関する波形の全てを、変更した設定に基づいて被測定信号のデータを新たに取り込むことなく、変更した設定に基づく高いスループットで表示する。これは、被測定信号のデータを新たに取り込む前に、変更した設定に基づく波形をプレビューするので、「プレビュー・モード」とも呼ばれる。
【0037】
ステップ45におけるプレビュー・モードでの波形表示の後、処理はステップ14に戻る。もしユーザが「Run/Stop」ボタン402を再度押してステップ14での取込み開始すると、トリガ・イベントはステップ34で変更された設定に従って検出される。ステップ14で「Run/Stop」ボタン402が押されないと、処理はステップ34に戻る。ユーザの関心がある時間区間、トリガ基準や、プリ及びポスト・トリガ条件の設定がステップ34で再び変更されると、オシロスコープ100は、被測定信号の新しいデータを取り込むことなく、変更した設定に基づいて再び波形をプレビューする。図4及び5に示したフローチャートは、オシロスコープ100の電源を切ると終了する。
【0038】
上述のように、本発明によるオシロスコープは、取込みが停止していても、トリガ設定変更を表示波形に素早く反映させる。一方、従来のオシロスコープは、取込みが停止していると、トリガ設定変更を表示波形に反映させることはない。
【0039】
本発明によるオシロスコープ100は、対応するトリガ・イベント情報としてトリガ・リスト中に記録された1つ又は複数のトリガ・イベントに関する1つ又は複数の波形を、取込みが停止していても、互いに別々の波形として、又は、合成表示モードにおいて複数波形から得られた合成波形としてスクリーン上で表示する。図1を参照すると、合成波形表示エリア449には、合成波形を生成するのに用いるトリガ・イベントを変更するパン(Pan)及びズーム制御ノブ450及び452がある。図6Aを参照すると、初期設定では、トリガ・イベントB8、つまり、トリガ・リストの最後のトリガ・イベントが選択され、トリガ・イベントB8に関する波形が表示される。このとき、メイン・ビュー・ウィンドウ62の幅は、関心のある時間区間及び表示デバイス302の表示スクリーン上の表示エリアに対応し、バー60は、取込みメモリ104中の全データ・レード長に対応する。左のトリガ・イベントB3を選択するように、ノブ450を左に回すと、メイン・ビュー・ウィンドウ62は左にシフトする。このとき、メイン・ビュー・ウィンドウ62の幅は同じままに維持され、メイン・ビュー・ウィンドウ62中のトリガ位置(図2参照)もまた同じ位置に維持される。従って、波形も高いスループットで表示される。
【0040】
加えて、本発明によるオシロスコープは、トリガ・リストにトリガ・イベント情報として記録されたトリガ・イベントのいくつかに関係する複数波形から導いた合成波形を表示しても良い。ズーム制御ノブ452によって、ユーザは合成波形を生成するのに用いるトリガ・イベントの拡大又は縮小を制御できる。ズーム・アウト(縮小)の場合では、図6Cに示すように、トリガ・リスト中のメイン・ビュー・ウィンドウ62周辺のより多くのトリガ・イベントが、サブ・ビュー・ウィンドウ64及び66で選択され、これら選択されたトリガ・イベントに関する複数の波形から合成波形が得られる。図6Dは、パン制御ノブ450で右に動かす(pan)動作によって、図6Cの場合に比較してビュー・ウィンドウを右に移動させた場合を示す。
【0041】
パン(左右移動)及びズーム(拡大・縮小)動作の繰り返しによって、ユーザは、異常なイベントを素早く発見できる。例えば、ズーム・アウト動作によって異常なイベントが見つかった場合では、ユーザは、その異常イベントまでどのくらいの近さなのかを、そのイベントを表示するのに必要なズーム制御ノブ452の回転量に応じて知ることができる。そこで、ユーザがパン制御ノブ450を回転させ、そのパン動作でメイン・ビュー・ウィンドウの位置がその異常イベントに近くなるのか否か決定するため、ズーム制御ノブ452を再び回転させる。この繰り返し動作で、2、3又は1つのビュー・ウィンドウでその異常イベントを表示させる結果となり、そうしてユーザはそのイベントを特定する。パン及びズーム動作の繰り返しには、取込みメモリ中の全てのトリガ・イベントから得られた合成波形の表示は必要なく、これは従来のオシロスコープの動作と異なることに注意されたい。
【0042】
更に、メイン・ビュー・ウィンドウ62は、マウス208でマウス・カーソル70を使って動かすことができる。ビュー・ウィンドウは、キーパッド210のCTRLキーを押しながらマウス・カーソル70でドラッグすることで、別のサブ・ビュー・ウィンドウとしてコピーし、ビュー・ウィンドウの合計数を増やして、選択トリガ・イベントを増加させることができる。
【0043】
マウス・カーソル70は、トリガ・イベントをハイライトにして、キーパッド210のDelete(削除)キーを押すことによって、バー60上のトリガ・リスト中のトリガ・イベントの任意のサブセット(部分集合)の選択を一時的に外すのにも用いることができる。
【0044】
図7は、合成波形の例を示し、これはグレースケールを用いて、各画素にどのくらいの頻度でデータが現れるかに関する情報を視覚的に伝える。オレゴン州ビーバートンのテクトロニクス社が製造する従来のDPOシリーズ・オシロスコープは、これまで本発明によるトリガ・リストを用いていないが、被測定信号の合成波形表示は提供できる
【0045】
図8を参照すると、バー60には、他のものに混じって、メイン・トリガ・イベント・インジケータ830に先行するトリガ・イベント・インジケータ805、810及び820が含まれる。トリガ・イベント・インジケータ805、810及び820のそれぞれは、矩形ウィンドウ、つまり、ボックスで囲まれるとハイライト(強調表示)され、これら特定のトリガ・イベント・インジケータがユーザによって選択されたことを示す。テキストや直ぐ後ろの領域の色を変更するといった他のハイライト方法を用いても良い。表示スクリーン302には、3つの個別の波形805’、810’及び820’から構成される合成波形を表示しているところが示され、これらのそれぞれは、トリガ・イベント・インジケータ805、810及び820がそれぞれ示すトリガ・イベントに関係する。図8に示されるように、スクリーン幅は、ユーザの関心のある時間区間に対応する。つまり、トリガ・イベント・インジケータ805、810及び820を選択することによって、ユーザはCPU202にこれら3つのトリガ・イベントに関する波形データを見つけさせ、選択させ、表示させる。本発明による装置での利点として、従来のデジタル・ストレージ・オシロスコープの動作とは違って、表示スクリーン302上で観測するようにバー60に示されるトリガ・イベントのどれか又は全てを選択できる。
【0046】
特定の実施形態を説明してきたが、本発明の原理はこれら実施形態に限定されないことが理解されよう。例えば、本発明による波形表示装置は、ロジック・アナライザでも良く、このときロジック・アナライザが各チャンネルに比較器を有し、デジタル・データとして論理「1」及び「0」を生成し、取込みメモリ104がそのデジタル・データを蓄積する。トリガ・イベントは、上述の実施形態ではタイム・スタンプとして蓄積されたが、トリガ・イベントは他の形式の情報として蓄積されても良い。例えば、取込みメモリのアドレス位置がトリガ・イベント情報のために利用されても良い。被測定信号のデジタル・データがオシロスコープ又はロジック・アナライザによって事前に取り込まれていたら、パソコン(PC)が、PCのHDDのようなメモリにそのデータをコピーすることによって、本発明による波形装置となり得る。そしてPCが上述した処理を実行しても良い。本発明の原理から離れることなく、変形及び改造を行っても良い。
【符号の説明】
【0047】
100 波形表示装置
101 取込み及びトリガユニット
102 入力端子
103 ADC
104 取込みメモリ
106 ライブ・トリガ回路
108 ポスト取込みトリガ回路
110、112 タイム・スタンプ発生回路
116 トリガ・イベント除去回路
118 ステート・マシン
120 第1カウンタ
122 第2カウンタ
124 第3カウンタ
126 第4カウンタ
128 トリガ・リスト・メモリ
200 制御ユニット
202 CPU
204 メモリ
206 I/O
300 表示ユニット
302 表示デバイス
304 表示回路
400 制御パネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8