(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記格子は、前記第1の反射部分によって反射され前記基板によって受光される放射の平均強度が、前記第2の反射部分によって反射され前記基板によって受光される放射の平均強度に実質的に等しくなるように、構成される、請求項1又は2に記載の装置。
前記第2の反射部分の反射率は、使用時に前記第2の反射部分から反射するEUV放射が、前記基板上のレジスト内に形成される前記格子の像に測定可能な作用を有するのに十分に高い反射率である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
一連の第2の反射部分と交互に配置された一連の第1の反射部分を備える格子が設けられ、前記第2の反射部分の反射率は、前記第1の反射部分の少なくとも一部の反射率未満でありゼロより大きく、前記第1の反射部分の各々は、反射ラインと吸収ラインとを有する副格子を備え、前記第2の反射部分は、パターニングされていない区域を備える、パターニングデバイス。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[0038] 本明細書は、本発明の特徴を組み込んだ1つ以上の実施形態を開示する。開示される実施形態は本発明を例示するにすぎない。本発明の範囲は開示される実施形態に限定されない。
【0030】
[0039] 記載された実施形態、及び本明細書で「一実施形態」、「ある実施形態」、「例示的実施形態」などに言及した場合、それは記載された実施形態が特定の特徴、構造、又は特性を含むことができるが、それぞれの実施形態が必ずしも特定の特徴、構造、又は特性を含まないことがあることを示す。さらに、このようなフレーズは、必ずしも同じ実施形態に言及するものではない。さらに、ある実施形態に関連して特定の特徴、構造、又は特性について記載している場合、明示的に記載されているか、記載されていないかにかかわらず、このような特徴、構造、又は特性を他の実施形態との関連で実行することが当業者の知識にあることが理解される。
【0031】
[0040] 本発明の実施形態はハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はその任意の組合せで実施することができる。本発明の実施形態は、1つ以上のプロセッサで読み取り、実行することができる機械読み取り式媒体に記憶した命令として実施することもできる。機械読み取り式媒体は、機械(例えば、計算デバイス)で読み取り可能な形態で情報を記憶するか、又は伝送する任意の機構を含むことができる。例えば、機械読み取り式媒体は、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスク記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、電気、光、音響又は他の形態の伝搬信号(例えば、搬送波、赤外線信号、デジタル信号など)、及びその他を含んでもよい。さらに、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令を、本明細書では特定の行為を実行するものとして記述してもよい。しかしながら、このような記述は便宜的なものにすぎず、このような行為は実際には計算デバイス、プロセッサ、コントローラ、又はファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令などを実行する他のデバイスの結果であることを認識されたい。
【0032】
[0041] しかしながら、このような実施形態を詳述する前に、本発明の実施形態を実施することができる例示の環境を提示することが有用であろう。照明システム(イルミネータ)ILは放射ビームB(例えば、EUV放射)を調節するように構成され、支持構造(例えば、マスクテーブル)MTはパターニングデバイス(例えば、マスク又はレチクル)MAを支持するように構築され、パターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第1のポジショナPMに接続され、基板テーブル(例えば、ウェーハテーブル)WTは基板(例えば、レジストコートウェーハ)Wを保持するように構築され、基板を正確に位置決めするように構成された第2のポジショナPWに接続され、投影システム(例えば、反射投影システム)PSは基板Wのターゲット部分C(例えば、1つ以上のダイを含む)上にパターニングデバイスMAによって放射ビームBへ付与されたパターンを投影するように構成される。
【0033】
[0042] 照明システムは、放射の誘導、整形、又は制御を行うための、屈折、反射、磁気、電磁気、静電型等の光学コンポーネント、又はその任意の組合せなどの種々のタイプの光学コンポーネントを含んでいてもよい。
【0034】
[0043] 支持構造MTは、パターニングデバイスの方向、リソグラフィ装置の設計等の条件、例えばパターニングデバイスが真空環境で保持されているか否かに応じた方法で、パターニングデバイスMAを保持する。支持構造は、パターニングデバイスを保持するために、機械式、真空式、静電式等のクランプ技術を使用することができる。支持構造は、例えばフレーム又はテーブルでよく、必要に応じて固定式又は可動式でよい。支持構造は、パターニングデバイスが例えば投影システムなどに対して確実に所望の位置にくるようにしてもよい。
【0035】
[0044] 「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分にパターンを生成するように、放射ビームの断面にパターンを付与するのに使用することができる任意のデバイスを指すものとして広義に解釈されるべきである。放射ビームに付与されるパターンは、集積回路などのターゲット部分に生成されるデバイスの特定の機能層に相当する。
【0036】
[0045] パターニングデバイスは透過性又は反射性でよい。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレイ、及びプログラマブルLCDパネルがある。マスクはリソグラフィにおいて周知のものであり、これには、バイナリマスク、レベンソン型(alternating)位相シフトマスク、ハーフトーン型(attenuated)位相シフトマスクのようなマスクタイプ、さらには様々なハイブリッドマスクタイプも含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例として、小さなミラーのマトリクス配列を使用し、そのミラーは各々、入射する放射ビームを異なる方向に反射するよう個々に傾斜することができる。傾斜したミラーは、ミラーマトリクスによって反射する放射ビームにパターンを付与する。
【0037】
[0046] 照明システムのような投影システムは、使用する露光放射、又は真空の使用などの他の要因に合わせて適宜、例えば屈折光学システム、反射光学システム、磁気光学システム、電磁光学システム、静電光学システム等の光学コンポーネント、又はその任意の組合せなどの種々のタイプの光学コンポーネントを含んでいてもよい。他のガスは放射を吸収しすぎるため、EUV放射用には真空を使用することが望ましいことがある。したがって、真空壁及び真空ポンプを用いてビーム経路全体に真空環境を設けてもよい。
【0038】
[0047] 本明細書で示すように、装置は反射型である(例えば反射型マスクを使用する)。
【0039】
[0048] リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)又はそれ以上の基板テーブル(及び/又は2つ以上のマスクテーブル)を有するタイプでもよい。このような「マルチステージ」機械においては、追加のテーブルを並行して使用するか、又は1つ以上の他のテーブルを露光に使用している間に1つ以上のテーブルで予備工程を実行してもよい。
【0040】
[0049]
図1を参照すると、イルミネータILは、放射源SOから極端紫外線放射ビームを受光する。EUV光を生成する方法は、物質を少なくとも1つの元素、例えば、キセノン、リチウム又はスズを有し、EUV範囲の1つ以上の輝線を有するプラズマ状態に変換するステップを含むが、これに限定されない。多くの場合、レーザ生成プラズマ(「LPP」)と呼ばれるそのような1つの方法では、必要な輝線放出元素を有する物質の液滴、ストリーム又はクラスタなどの燃料をレーザビームで照射することで必要なプラズマを生成できる。放射源SOは、燃料を励起するレーザビームを提供するレーザ(
図1には示さず)を含むEUV放射システムの一部であってもよい。結果として得られるプラズマは、放射源内に配置された放射コレクタを用いて収集される出力放射、例えば、EUV放射を放出する。レーザ及び放射源は、例えば、CO
2レーザを用いて燃料励起のためのレーザビームを提供するときのように、独立した構成要素であってもよい。
【0041】
[0050] そのような例では、レーザは、リソグラフィ装置の一部を形成するとは考えられず、例えば、適切な誘導ミラー及び/又はビームエキスパンダを備えるビームデリバリシステムを用いて放射ビームはレーザから放射源へ渡される。別の例では、放射源は、例えば放射源が多くの場合DPP放射源と呼ばれる放電生成プラズマEUV生成装置であるときのように、放射源の一体化部分であってもよい。
【0042】
[0051] イルミネータILは、放射ビームの角度強度分布を調整するアジャスタを備えてもよい。一般的に、イルミネータの瞳面における強度分布の少なくとも外側及び/又は内側半径範囲(一般にそれぞれ、σ-outer及びσ-innerと呼ばれる)を調整することができる。さらに、イルミネータILは、ファセット型フィールド及び瞳ミラーデバイスなどの他の種々のコンポーネントを備えてもよい。イルミネータを用いて放射ビームを調節し、その断面に所望の均一性と強度分布とが得られるようにしてもよい。
【0043】
[0052] 放射ビームBは、支持構造(例えば、マスクテーブル)MT上に保持されたパターニングデバイス(例えば、マスク)MAに入射し、パターニングデバイスによってパターニングされる。パターニングデバイス(例えば、マスク)MAに反射した後、放射ビームBは投影システムPSを通過し、投影システムPSはビームを基板Wのターゲット部分C上に合焦させる。第2のポジショナPWと位置センサPS2(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ又は容量センサ)を用いて、基板テーブルWTは、例えば、様々なターゲット部分Cを放射ビームBの経路に位置決めできるように正確に移動できる。同様に、第1のポジショナPMと別の位置センサPS1を用いて、放射ビームBの経路に対してパターニングデバイス(例えば、マスク)MAを正確に位置決めできる。パターニングデバイス(例えば、マスク)MA及び基板Wは、マスクアライメント格子M1、M2及び基板アライメント格子P1、P2を使用して位置合わせすることができる。
【0044】
[0053] リソグラフィ装置は、アライメント格子(回折格子)の位置を測定するように構成され、それによって基板WとパターニングデバイスMAから投影されるパターンとを位置合わせすることができるアライメント装置ASを含む。アライメント装置ASは、アライメント格子から回折される放射を検出するように構成された複数の検出器を備えてもよい。アライメント装置ASはリソグラフィ装置の投影システムPSに隣接するように概略的に表されているが、アライメント装置の位置は任意の適切な位置でよい。アライメント装置ASは例えば、投影システムPSから離隔した位置(例えば、基板の露光が開始される前に基板全体のアライメントが測定されるいわゆるデュアルステージシステムの場合)に配置されてもよい。
【0045】
[0054] 図示の装置は、以下のモードのうち少なくとも1つにて使用可能である。
[0055] 1.ステップモードにおいては、支持構造(例えばマスクテーブル)MT及び基板テーブルWTは、基本的に静止状態に維持される一方、放射ビームに付与したパターン全体が1回でターゲット部分Cに投影される(すなわち単一静的露光)。次に、別のターゲット部分Cを露光できるように、基板テーブルWTがX方向及び/又はY方向に移動される。
[0056] 2.スキャンモードにおいては、支持構造(例えばマスクテーブル)MT及び基板テーブルWTは同期的にスキャンされる一方、放射ビームに付与されるパターンがターゲット部分Cに投影される(すなわち単一動的露光)。支持構造(例えばマスクテーブル)MTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影システムPSの拡大(縮小)及び像反転特性によって求めることができる。
[0057] 3.別のモードにおいては、支持構造(例えばマスクテーブル)MTはプログラマブルパターニングデバイスを保持して基本的に静止状態に維持され、基板テーブルWTを移動又はスキャンさせながら、放射ビームに付与されたパターンをターゲット部分Cに投影する。このモードでは、一般にパルス状放射源を使用して、基板テーブルWTを移動させるごとに、又はスキャン中に連続する放射パルスの間で、プログラマブルパターニングデバイスを必要に応じて更新する。この動作モードは、以上で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイなどのプログラマブルパターニングデバイスを使用するマスクレスリソグラフィに容易に適用できる。
【0046】
[0058] 上述した使用モードの組合せ及び/又は変形、又は全く異なる使用モードも利用できる。
【0047】
[0059]
図2は、放射源コレクタモジュールSOと、照明システムILと、投影システムPSとを含む装置10をより詳細に示す。放射源コレクタモジュールSOは、真空環境が放射源コレクタモジュールSOの密閉構造220内で維持されるように構築され配置されている。EUV放射放出プラズマ210は、放電生成プラズマ放射源によって形成できる。EUV放射は、内部で非常に高温のプラズマ210が生成されて電磁スペクトルのEUV範囲内の放射を放出するXeガス、Li蒸気又はSn蒸気などのガス又は蒸気によって生成できる。非常に高温のプラズマ210は、例えば、少なくとも部分的にイオン化されたプラズマを生成する電気放電によって生成される。例えば、Xe、Li、Sn蒸気又はその他の適切なガス又は蒸気の、例えば、10Paの部分圧力を用いて放射を効率的に生成できる。ある実施形態では、励起したスズ(Sn)のプラズマを提供してEUV放射が生成される。
【0048】
[0060] プラズマ210によって放出された放射は、放射源チャンバ211から、放射源チャンバ211の開口内又はその背後にあるオプションのガスバリア又は汚染物質トラップ230(幾つかの例では汚染物質バリア又はフォイルトラップとも呼ばれる)を介して、コレクタチャンバ212内に渡される。汚染物質トラップ230は、チャネル構造を含んでもよい。また汚染物質トラップ230は、バスバリア又はガスバリアとチャネル構造の組合せを含んでもよい。本明細書にさらに記載する汚染物質トラップ230は、少なくとも当技術分野で既知のチャネル構造を含む。
【0049】
[0061] コレクタチャンバ211は、いわゆるグレージング入射コレクタであってもよい放射コレクタCOを含んでもよい。放射コレクタCOは、上流側放射コレクタサイズ251と下流側放射コレクタサイズ252とを有する。コレクタCOを横切る放射は、格子スペクトルフィルタ240に反射して仮想放射源ポイントIFに合焦できる。仮想放射源ポイントIFは、普通、中間焦点と呼ばれ、放射源は、中間焦点IFが密封構造220の開口221又はその付近に位置するように構成されている。仮想放射源ポイントIFは、放射放出プラズマ210の像である。
【0050】
[0062] その後、放射は、パターニングデバイスMAでの放射ビーム21の所望の角分散とパターニングデバイスMAでの放射強度の所望の均一性とを提供するように構成されたファセット型フィールドミラーデバイス22とファセット型瞳ミラーデバイス24とを含んでもよい照明システムILを横切る。支持構造MTに保持されたパターニングデバイスMAで放射ビーム21が反射すると、パターン付ビーム26が形成され、パターン付ビーム26は、投影システムPSによって反射要素28、30を介して、ウェーハステージ又は基板テーブルWTによって保持された基板W上に結像される。
【0051】
[0063] 照明光学装置IL及び投影システムPS内には一般に図示するよりも多くの要素が存在していてもよい。リソグラフィ装置のタイプによっては、格子スペクトルフィルタ240がオプションとして存在してもよい。さらに、図に示すよりも多くのミラーが存在してもよい。例えば、投影システムPS内には、
図2に示す他に1〜6個の追加の反射要素があってもよい。
【0052】
[0064]
図2に示すコレクタCOは、コレクタ(又はコレクタミラー)の一例として、グレージング入射コレクタ253、254及び255を有する入れ子コレクタとして図示されている。グレージング入射コレクタ253、254及び255は光軸Oの周囲に軸を中心に対称に配置され、このタイプのコレクタCOは、望ましくはDPP放射源と多くの場合呼ばれる放電生成プラズマ放射源と組み合わせて使用される。
【0053】
[0065] あるいは、放射源SOは、
図3に示すLPP放射システムの一部であってもよい。レーザLAは、キセノン(Xe)、スズ(Sn)又はリチウム(li)の液滴又は領域又は蒸気などの燃料の上にレーザエネルギーを堆積して数十eVの電子温度の高度イオン化されたプラズマ210を生成する。これらのイオンの逆励起及び再結合中に生成されるエネルギー放射がプラズマから放出され、近垂直入射コレクタCOによって収集され、密閉構造220の開口221上に合焦する。
【0054】
[0066] リソグラフィ装置によって基板Wのターゲット部分に提供されるEUV放射の線量を測定することが望ましいことがある。本発明のある実施形態では、これは
図4の概略的に示した格子100を基板上に投影し、次いで格子の像の特性を測定することによって行ってもよい。
【0055】
[0067]
図4に示す線量測定格子100は、第1の反射部分102と、一連の第2の反射部分104とを備え、これらの反射部分は交互に配置されることによって格子を形成する。1対の反射部分102、104は、
図4の底部に拡大図で示されている。各反射部分はパターニングされず、単に所定の形状と反射率とを有する領域を含んでいるだけである。ある実施形態では、1対の反射部分102、104の格子方向(すなわち
図4のx方向)の長さは約16ミクロンである。あるいは、1対の反射部分の長さは、その他の任意の適切な長さでもよい。第1及び第2の反射部分が両方とも
図4の格子方向に同じ長さを有しているが、これらが異なる長さを有してもよい。
図4に示す線量測定格子100は8対の反射部分102、104を含んでいるが、格子は任意の適切な数の反射部分を含んでもよい。線量測定格子100は、吸収材料によって囲まれてもよい。
【0056】
[0068] 上記の寸法は、リソグラフィ装置によって格子が基板に投影される際に形成される像の寸法である。リソグラフィ装置の縮小率は4であってもよい。その結果、支持構造MT上の(又はパターニングデバイスMA上の)線量測定格子100の寸法は像の寸法の4倍になる。
【0057】
[0069] 第1の反射部分102の反射率は約60%であり、第2の反射部分104の反射率は約30%である。これらの反射率は、EUV放射を反射するために利用できる材料の特性によるものである。より詳細には、約60%の反射率は、EUV放射を反射するための従来の材料(例えば多層ミラー)を使用して可能な最高の反射率である。第2の反射部分104の反射率は、第1の反射部分102の反射率の1/2である。第1の反射部分102が異なる反射率を有する場合でも、第2の反射部分104の反射率は、依然として第1の反射部分の反射率の1/2になるように選択できる。
【0058】
[0070] 第2の反射部分104は、第1の反射部分102の反射率未満であり、ゼロより大きい任意の適切な反射率を有してもよい。第2の反射部分104の反射率は、相当量のEUV放射が(例えば基板W上のレジストを検出可能になるのに十分である)第2の反射部分から反射するのに十分に高い反射率でよい。第2の反射部分104の反射率は、第2の反射部分から反射する放射がレジスト内に形成される線量測定格子100の像に測定可能な作用を有するのに十分に高い反射率でよい。
【0059】
[0071] 第2の反射部分104の反射率は、第2の反射部分から反射するEUV放射によって基板上のレジストに生じる変化が、第1の反射部分から反射するEUV放射によってレジストに生じる変化と測定可能に異なる、第1の反射部分102の反射率と十分に異なる反射率でよい。EUV放射に対するレジストの非線形的な応答によって、レジストに供給されるEUV放射の線量に関する情報が得られる。EUV放射に起因するレジストの屈折率の変化を測定する以下に記載する方法を用いて、EUV放射の線量に関する情報を得てもよい。
【0060】
[0072] 線量測定格子100は、支持構造MT(
図1及び
図2を参照)上に提供される。使用時には、リソグラフィ装置によって基板Wに供給される放射線量を測定する必要がある場合は、支持構造MTは、放射ビームB、21が線量測定格子100に入射することによって、格子から反射する放射が基板Wに入射するように位置決めすることができる。それによって線量測定格子100を基板上に提供されるレジスト内に露光することができる。格子は例えば基板W上の複数の異なる位置で露光されてもよい。
【0061】
[0073] 任意選択で、レジスト内への格子の露光後に、基板Wをベークしてもよい。このベークを露光後ベークと呼んでもよい。露光後ベークは周知のプロセスであり、例えばEUV放射線量によって開始された光反応を触媒によって行い、完了するために使用されてもよい。露光後ベークはさらに、レジストの安定性を高めるなどの利点をもたらすことができる。露光後ベークは例えば、基板Wを1〜2分間約110℃まで加熱するステップを含んでもよい。露光後ベークは例えば、リソグラフィ装置と同じ製造プラントに配置されてもよい別個のベーク装置で実施されてもよい。
【0062】
[0074] 基板Wの露光後(及び必要ならば露光後ベークの後)、リソグラフィ装置のアライメント装置AS(
図1及び
図2を参照)によって線量測定格子100の位置が測定される。アライメント装置は、放射がアライメント格子から回折した後に検出器上に受光される位置を測定することによってアライメント格子P1、P2(
図1を参照)の位置を測定するように構成されてもよい。アライメント装置ASは、検出された回折放射に基づいてアライメント格子の中心であると考えられる位置を示すように構成されてもよい。参照の便宜上、この位置をアライメント格子の重心と呼んでもよい。アライメント装置ASは、同様に線量測定格子100の重心を測定することができる。
【0063】
[0075] 基板W上のレジストの屈折率は、レジストがEUV放射によって露光される際の露光線量に対して非線形的に変化する。この非線形的な屈折率の変化により、アライメント装置ASによって測定される基板W上のレジスト内に形成される露光線量格子100の像(例えば潜像)の重心は左又は右に移動する。露光線量格子100の像の左又は右への移動は、基板に投影されるEUV放射の線量に左右される。(移動方向はEUV放射の線量とレジストの特性とに左右されるが)例えば、測定された露光線量格子100の重心は、EUV放射の線量が増加すれば右に移動し、EUV放射の線量が減少すれば左に移動する。
【0064】
[0076] レジストの非線形応答は
図5のグラフに表されており、露光線量格子100の像に及ぼすこの非線形応答の作用は
図6に示されている。
【0065】
[0077]
図5は、レジストによって受光される線量の関数としてレジストの屈折率が変化する態様を示している。グラフは概略的なグラフであり、軸上の単位は任意単位である。図示のように、極めて少ないEUV放射線量がレジストに入射する場合は、レジスト線量の屈折率は変化しない。線量が増加すると、屈折率は増加する割合で高まる。屈折率が高まる割合は、屈折率の変化が約0.5に達するまで増加し、その後、屈折率の変化率は低下し始める。高線量では、屈折率の変化は1に向かう傾向がある。
【0066】
[0078] レジストの屈折率の非線形的な変化の作用は、
図6のグラフで示されている。
図6a及び
図6bは、
図4の底部に示す1対の反射部分102、104(すなわち露光線量格子100の1対の反射部分)による反射後の(この図ではx方向と表記されている)レジスト上の位置の関数としてレジストに供給される放射線量を示している。
図6c及び
図6dは、その線量を受光するとレジストが受ける屈折率の変化を示しており、この場合も放射線量はx方向の位置の関数として表されている。
【0067】
[0079] 先ず
図6aを参照すると、レジストの左側の領域は格子100の第1の反射部分102によって受光された放射を受光し、右側の領域は格子の第2の反射部分104によって受光された放射を受光する。さらに上述したように、第1の反射部分102の反射率は第2の反射部分104の反射率の2倍である。したがって、レジストの左側の領域によって受光されるEUV放射線量は、レジストの右側の領域によって受光されるEUV放射線量の2倍である。レジストの左側の領域は25単位の放射を受光するのに対して、右側の領域は12.5単位の放射を受光する。
【0068】
[0080]
図6aに示すレジストの屈折率に対する放射の作用は
図6cに示されている。再度
図5を参照すると、レジストが25単位の放射線量を受光すると、約0.95の屈折率の変化が生じることが分かる。同様に、レジストが12.5単位の放射線量を受光すると、約0.8の屈折率の変化が生じる。アライメント装置ASは、(以下、結像格子と呼ぶ)レジスト内で露光される格子の重心を判定する。結像格子は、0.8の屈折率の変化を受けた部分と交互に0.95の屈折率の変化を受けた部分を有する格子を備える。すなわち、結像格子の第2の部分104は結像格子の第1の部分102によって受光された線量の半分しか受光していないが、第2の部分が受ける屈折率の変化は、第1の部分が受ける屈折率の変化の約80%である。
【0069】
[0081] (検出された回折放射を使用して)アライメント装置ASが結像格子の位置を測定する方法は、結像格子の異なる部分が異なる屈折率の変化を受けた場合に、結像格子の測定された重心が格子の中心点(例えば結像パターンの縁部間の中間点)からのずれを生じるような方法である。この場合、測定された重心は概略的に点線で示されている。結像格子の第1の部分と第2の部分とがレジスト内で同じ屈折率の変化を受けた場合は、アライメント装置ASは、結像格子の重心を結像パターンの中心点として測定する。しかしながら、結像格子の第2の部分が受けた屈折率の変化が低減すると、それによって結像格子の測定された重心は左に移動される。測定された重心の左への移動は、異なる線量へのレジストの応答が非線形的な応答であるため、
図6cでは比較的僅かである。
【0070】
[0082]
図6b及び
図6dは、レジストによって受光される線量の差がかなり大幅な屈折率の変化を引き起こし、その結果、結像パターンの測定された重心の変位がかなり大きくなる対照的な状態を示している。
【0071】
[0083] 先ず
図6bを参照すると、格子の第1の部分102は15単位の線量を受光し、格子の第2の部分104は7.5単位の線量を受光する。これらの線量の作用は、
図5に示すグラフを用いて判定できる。
図6dを参照すると、結像格子の第1の部分は約0.85の屈折率の変化を受ける一方、結像格子の第2の部分は約0.45の屈折率の変化を受ける。(
図6cの屈折率の変化と比較して)より大きいこの屈折率の変化の差は、線量が高勾配である(すなわち線量の関数としての屈折率の変化率がより大きい)
図5の曲線部分にあることによる。線量の低減により結像格子の第1の部分102が受けた屈折率の変化と結像格子の第2の部分104が受けた屈折率の変化との差がより大きいため(差は約50%)、結像格子の測定された重心は
図6cの場合よりもさらに左に変位する。測定された重心は概略的に点線で示されている。
【0072】
[0084]
図6cと
図6dとを比較すると、結像格子の重心の位置を測定することによって、リソグラフィ装置によりレジストに供給される線量が示される。したがって、
図4の格子を基板に投影し、次いで結像されたパターンの位置を測定することで、リソグラフィ装置により基板に供給される放射線量が測定される。
【0073】
[0085] EUV放射に対するレジストの非線形応答は、EUV放射の線量が所与の倍率で増加すると、結像格子100の第1及び第2の部分102、104の屈折率は異なる倍率で変化するような応答である。この差は、アライメント装置ASによって測定された結像格子100の重心の変位によるものである。屈折率の変化はEUV放射の非線形関数であるため、重心の変位を測定することによって線量を判定することが可能である。
【0074】
[0086] 線量測定は非線形であるレジストの応答に左右されるため、レジストの応答が線形である線量範囲があれば、線量測定を行う際にこの範囲を避けてもよい。
【0075】
[0087] 線量測定は、例えば異なる測定線量のEUV放射をレジストに供給し、その結果生じる屈折率の変化を測定することによって較正されてもよい。これは例えば、専用の較正装置を使用して行ってもよい。
【0076】
[0088] ある実施形態では、リソグラフィ装置により供給される放射線量の測定中、
図5の曲線上の異なるポイントに対応するパターンをレジスト内に結像するため、
図4の格子100が異なる線量を用いて基板に投影されてもよい。例えば、一連の格子像が基板に投影されてもよく、各々の像は先行する像よりも高い線量で投影される。線量測定値を得るために
図4の格子を使用する別の方法を用いてもよい。
【0077】
[0089] 例えばリソグラフィ装置が所望の線量パラメータ内に確実に留まるようにするため、基板に供給される放射線量を測定することで線量の調整が可能になる。リソグラフィ装置により供給される線量は、線量の変動(すなわち経時による変化)をモニタリングするために周期的に測定されてもよい。線量の変動が検出されると、変動を補正するためにリソグラフィ装置のパラメータの調整を行ってもよい。
【0078】
[0090] 本発明の実施形態を使用して行われる放射線量の測定は、EUV放射ビームエネルギーを測定するために使用されるフォトダイオード又はその他のセンサを較正するために使用されてもよい。
【0079】
[0091] リソグラフィ装置の線量に関する異なるパラメータを測定するため、線量の測定は多様な方法で行われてもよい。例えば、リソグラフィ装置の露光スリット内の異なる位置での線量の変更を行ってもよい(露光スリットは露光スキャン中に照明される領域である)。線量の空間安定性及び経時安定性が測定されてもよい。
【0080】
[0092]
図4に示す格子100は互いに隣接して位置する対の矩形を備えているが、格子は任意の適切な形状を有してもよい。格子の第1の部分102は第1の反射率を有するパターニングされていない区域を含んでもよく、格子の第2の部分104は第2の反射率を有するパターニングされていない区域を含んでもよい。第2の反射率は第1の反射率よりも低い。
【0081】
[0093] 本発明の別の実施形態が
図7に概略的に示されている。別の実施形態は、各周期の格子が第1の反射部分112と、第2の反射部分114と、吸収部分115と、を備える格子110である。
図7には8周期の格子が示されているが、格子は任意の適切な数の周期を有してよい。格子110は吸収材料で囲まれてもよい。格子110は、投影システムの像側(すなわち基板テーブルWTが位置する側)での投影システムPS(
図1及び
図2を参照)の焦点面の位置を測定するために使用してもよい。この格子を焦点測定格子110と呼んでもよい。
【0082】
[0094]
図7の下部に単一周期の焦点測定格子110が拡大図で示されている。第1の反射部分112は、吸収ライン118と交互に配置された一連の反射ライン116を含む副格子である。反射ライン116は、投影システムの焦点面で形成される像内で解像できるのに十分に太い。反射ライン116の反射率は約60%であり、吸収ラインの反射率は無視し得る。第2の反射部分114は、反射率が約30%であるパターニングされていない区域を含んでいる。吸収部分115の反射率は実質的にゼロである。反射ライン116の反射率は任意の適切な反射率でよい。第2の反射部分114の反射率は、反射ライン116の反射率よりも低く、ゼロより大きい任意の適切な反射率でよい。第2の反射部分114の反射率は、使用時にそこから反射するEUV放射が(例えば基板のパターニング中に使用される強度でEUV放射が供給される際に)レジストに測定可能な作用を及ぼすのに十分に高い反射率でよい。第2の反射部分114の反射率は、使用時に第2の反射部分から反射するEUV放射が(例えば基板のパターニング中に使用される強度でEUV放射が供給される際に)レジスト内に形成される焦点測定格子110の像に測定可能な作用を及ぼすのに十分に高い反射率でよい。
【0083】
[0095] ある実施形態では、各周期の焦点測定格子110の格子方向(
図7のx方向)の長さは16ミクロンでよい。第2の反射部分114の長さは約6ミクロンでよく、第1の反射部分112の長さは約7ミクロンでよく、及び吸収部分115の長さは約3ミクロンでよい。焦点測定格子110の周期は8周期でよい。
【0084】
[0096] 格子及び格子コンポーネントの長さは任意の適切な長さでよい。任意の適切な格子周期を備えてもよい。
【0085】
[0097] 反射ライン116の幅は例えば50nmでよく、例えば50nmである吸収ライン118によって離間されてもよい。あるいは、ラインの幅は別の任意の適切な幅でよい。
図7には7本の反射ライン116が示されているが、それ以上のラインを備えてもよい。例えば、約70本の反射ラインを備えてもよい。
【0086】
[0098] 上記の寸法は、リソグラフィ装置によって格子が基板に投影される際に形成される像の寸法である。リソグラフィ装置の縮小率は4でよい。その結果、支持構造MT上の(又はパターニングデバイスMA上の)焦点測定格子110の寸法は像の寸法の4倍になる。
【0087】
[0099] 第2の部分114の反射率は、反射ライン116と吸収ライン118との平均反射率に実質的に一致するように選択される。すなわち、第2の反射部分114により反射される単位面積当たりの全放射は、第1の反射部分112により反射される単位面積当たりの全放射と実質的に等しい。したがって、例えば反射ライン116の反射率が80%である場合は、第2の反射部分114の反射率は40%となる。これは、反射ライン116が第1の反射部分112の表面積の半分を占めていることを前提にしている。反射ライン116が第1の反射部分112に占める比率が異なる場合は、それに応じて第2の反射部分114の反射率を調整できる。例えば、反射ラインの反射率が60%であり、第1の反射部分112の25%を占めている場合は、第2の反射部分の反射率は15%となる。第2の反射部分114の反射率は、第2の反射部分114から基板に投影される単位面積当たりの全放射が、第1の反射部分112から基板に投影される単位面積当たりの全放射に実質的に等しくなるように選択されてもよい。
【0088】
[00100] ある実施形態では、格子が基板に投影される際に生じることがある作用を補償するために、第1及び第2の反射部分112、114の反射率が修正されてもよい。例えば、パターニングデバイスMA上の構造によって焦点測定格子110の一部に陰影が生じることがある。
【0089】
[0101] 第1及び第2の反射部分112、114の反射率は、第1の反射部分112の像によって受光される単位面積当たりの平均放射強度が、第2の反射部分114の像によって受光される単位面積当たりの平均放射強度に実質的に等しくなるように選択されてもよい。焦点測定格子110は、第1の反射部分112によって反射され、基板Wによって受光される平均放射強度が、第2の反射部分114によって反射され、基板によって受光される放射の平均強度に実質的に等しくなるように構成されてもよい。
【0090】
[0102]
図7の焦点測定格子110は、リソグラフィ装置の投影システムの焦点面の位置を測定するために使用されてもよい。それができる方法の1つは、リソグラフィ装置を使用して焦点測定格子110を基板Wに投影することによるものであり、基板の位置は投影システムからその都度異なる距離にある。これはその都度異なるz方向位置(
図1を参照)にある基板と呼んでもよい。次にリソグラフィ装置のアライメント装置ASを使用して、基板W上のレジスト内に形成される像の位置を測定してもよい。測定された像の位置を使用して、リソグラフィ装置の投影システムの焦点面の位置を判定してもよい。像の位置が測定される前に、基板Wに露光後ベークを施してもよい。
【0091】
[0103] さらに上述のように、リソグラフィ装置のアライメント装置ASは、アライメント格子P1、P2(
図1を参照)によって回折される放射を検出することによって格子P1、P2の位置を測定するように構成されてもよい。アライメント装置は、アライメント格子の中心位置(本明細書では重心と呼ばれる)を判定するように構成されてもよい。
【0092】
[0104] アライメント装置によって測定される焦点測定格子110の像の重心位置は、格子が投影される際に基板がリソグラフィ装置の焦点面内にあったか否かに依存する。基板が実際に投影システムの焦点面内にあった場合は、第1の反射部分112の反射ライン116は、レジスト内に形成される像の鮮鋭に解像されたラインを形成する。基板がやや焦点外れの場合は、像内にラインは形成されるが、その輪郭は鮮鋭にはならない。基板がさらに焦点外れの場合は、ラインはさらにぼやけ、互いに同化してしまう。基板がそれ以上に焦点外れの場合は、ラインは互いにかすみ、単一のブロックになる。この単一ブロックによって受光された放射線量は、第2の反射部分114から受光された放射線量と同じになる。したがって、焦点測定格子110の像は、同じ屈折率を有する連続ブロックを含み、連続ブロックは第1及び第2の反射部分112、114によって反射される放射から形成される。格子110の像の測定された重心の位置は、これらの各々の場合によって異なる。
【0093】
[0105]
図7に示す格子110は、例えば
図8に示すように1対の格子の1つとして設けられてもよい。
図8を参照すると、焦点測定格子120は、
図7に示す格子に対応する左側の格子110aと、
図7に示す格子の鏡像である右側の格子110bと、を備える。左側の格子110aと右側の格子110bとは互いに離間されている。
【0094】
[0106] 格子は
図7について上述したと同様に機能する。しかしながら、2つの格子があるため、リソグラフィ装置のアライメント装置ASは、単一の格子位置の測定ではなく2つの格子位置を測定する。格子110aと110bとは互いに鏡像であるため、焦点面からの基板の変位は結像される各々の格子に逆の作用を及ぼす。したがって、基板が焦点面から離間すると、左側の結像格子の測定された重心は右に移動し、右側の結像格子の測定された重心は左に移動し得る。基板がリソグラフィ装置の投影システムから異なる距離にある場合に形成される結像格子の測定位置間の離間をモニタリングすることによって、基板の最良の焦点面を判定することもできる。リソグラフィ装置の投影システムの焦点面は、結像格子の離間距離が最大値(又は最小値)を超える面として特定してもよい。
【0095】
[0107]
図8に示すように2つの格子を備えることが有利であるのは、それによって結像格子の絶対位置ではなく結像格子間の離間を測定できることにより、格子のミスアライメントに起因する誤差をなくすることができることにある。
【0096】
[0108] 代替実施形態では、格子は
図8に示した向きとは逆の向きを有してもよい。すなわち、第2の反射部分124a、124bは第1の反射部分122a、122bよりも互いに近接して配置されてもよい。その場合は、結像格子の測定された位置間の離間は焦点の関数としての反対方向に変化する。
【0097】
[0109]
図7及び
図8に示した格子による利点は、格子によって得られる焦点の測定が、リソグラフィ装置によって基板に供給される放射線量に実質的に依存し得ることにある。これは、線量の変化により生じる誤差を受けることがある公知の幾つかの測定格子の場合にはない。EUV放射源によって生成される放射強度は大幅に変動することがあるため、これらの誤差はEUVリソグラフィ装置で特に顕著である。したがって、線量の変化に実質的に依存するようにリソグラフィ装置の焦点面の位置を測定できることは、EUVリソグラフィ装置では特に有利である。
【0098】
[0110] 露光に対するレジストの応答が非線形応答であるため、
図7及び
図8に示す格子は、可能な異なる線量の全てにおいて線量に依存する測定位置を提供できないことがある。したがって、較正方法を用いて、測定される格子位置が変化しない(又は焦点の測定には影響しないほど僅かしか変化しない)線量範囲を判定してもよい。
図9は、このような線量範囲を示すグラフである。
【0099】
[0111]
図9を参照すると、ライン120は、
図8に示すタイプの2つの格子間の測定離間距離(ミクロン)を放射線量D(mJ/cm
2で示す)の関数として示している。図から分かるように、測定離間距離は放射線量が変化するとかなり変化する。しかしながら、線量の関数としての変化は、焦点測定格子(ラインで示す)を使用した場合に見られるはずの線量の関数としての変化よりはかなり少ない。さらに、線量の関数としての変化は最大値を超える。最大値近くの領域では、線量の関数としての離間距離の変化は小さい。すなわち、線量の関数としての測定離間距離は、約22mJ/cm
2の線量と約26mJ/cm
2の線量との間では僅かしか変化しない。この範囲内の線量を用いて行われる焦点測定は、線量の変化による測定誤差を僅かしか、又は全く受けない。
図9に示す線量範囲は単なる一例であり、別の線量範囲を用いてもよい。例えば、異なるレジストでは線量範囲が異なってもよい。
【0100】
[0112]
図7及び
図8に示す格子は、公知の焦点測定格子よりもレジストの厚さの変化、又は処理の変化に起因する誤差を受けにくい。
【0101】
[0113] リソグラフィ装置によって供給される露光線量は
図4に示す格子を使用して測定してもよい。あるいは、フォトダイオードなどのセンサを使用して線量の粗測定を行ってもよい(粗測定の精度は、線量が確実に所定範囲内にあるのに十分な精度であればよい)。
【0102】
[0114]
図4には単一の格子100だけが示されているが、
図8に示したと同様に(例えば格子が互いに鏡像である)1対の格子を備えてもよい。これによって、線量の測定が格子のミスアライメントによる誤差を受けないという利点が得られる。
【0103】
[0115] 図示した格子は全てx方向に延びているが、横方向(例えばy方向)に延びる格子を備えてもよい。2方向以上に延びる格子を備えてもよい。
【0104】
[0116] 本発明の実施形態による格子は、支持構造MT上に備えてもよい(
図1及び
図2を参照)。このように格子が支持構造MT上に備えられると、これらの格子を常にリソグラフィ装置で使用できる。
【0105】
[0117] 追加的に又は代替的に、本発明の実施形態による格子をパターニングデバイスMA上に備えてもよい。例えば、格子をパターニングデバイス上のスクライブレーン内に備えてもよい。
【0106】
[0118] 本発明の実施形態による格子を形成する1つの方法が
図10に概略的に示されている。
図10は、
図7に示す単一周期の格子を断面図で示している。格子周期は多層ミラー130の上面に吸収材料を備えることによって形成される。第1の反射部分112は、吸収ライン118によって離隔された一連の反射ライン116を備えている。吸収ラインは吸収材料ライン131を設けることによって形成され、これらのラインは格子を形成するように配置されている。吸収材料ライン131は、これらに入射するEUV放射が実質的に完全にこれらのラインによって吸収されるのに十分に太い。吸収材料ライン131の間を通過するEUV放射は、(例えば60%の反射率で)多層ミラー130によって反射される。したがって、吸収材料ライン131間のスペースは反射ライン116として作用する。
【0107】
[0119] 第2の反射部分114は吸収材料層132によって提供される。吸収材料層132は、吸収材料を通過するEUV放射の一部が多層ミラー130によって反射され、吸収材料層を通過して戻るのに十分に薄い。EUV放射の一部は吸収材料層132によって吸収される。吸収材料層132の厚さは、入射するEUV放射の30%が第2の反射部分114によって反射されるように選択されてもよい。
【0108】
[0120] 格子周期の吸収部分115は、入射するEUV放射の実質的に全てが吸収材料によって吸収されるのに十分に厚い吸収材料層133から形成される。
【0109】
[0121] 多層ミラー130と吸収材料131〜133との複合作用によって、
図7に関してさらに上述したような反射率を有する格子周期が提供される。
【0110】
[0122]
図4に示す格子は、吸収材料ライン131の代わりに非吸収材料を備え、且つ吸収部分115を省くことによって形成されてもよい。
【0111】
[0123] 異なる厚さの吸収材料131〜133を備える1つの方法はエッチストップを使用する方法である。これが行われる場合、第1の吸収材料層を多層ミラー上に設けてもよい。次にエッチストップが第1の吸収材料層上に設けられ、その後でエッチストップ上に追加の吸収材料が備えられる。次に、リソグラフィパターニング及びエッチングを使用して所望の格子を形成してもよい。エッチストップによって停止された第1のエッチは、中間的な厚さの吸収層が必要な位置で使用され、エッチストップを貫いてエッチングする第2のエッチは吸収材料が必要ない位置で使用される。
【0112】
[0124] 代替方法では、エッチストップを使用する代わりに、所望の厚さの吸収材料を得るために、吸収材料の所与の部分がエッチング物質に接触する期間が選択されてもよい。例えば、中間的な厚さの吸収材料が必要な位置ではより短いエッチング時間を用いてもよく、吸収材料が必要ない位置ではより長いエッチング時間を用いてもよい。
【0113】
[0125] リソグラフィ装置の焦点面の位置を測定する公知の方法は、反射性格子を備える第1の反射部分と、反射区域を備える第2の反射部分と、を備える格子を使用する。この格子を使用して行われる焦点測定は、線量変化による誤差を生じることがある。ある実施形態では、
図4に示す格子を使用して、上記の公知の格子を使用して測定される焦点から線量変化の作用を除去又は軽減してもよい。これを達成できる1つの方法は、公知の焦点測定格子の近傍に
図4の格子を備える方法である。
図4の格子と焦点測定格子との測定位置は(同じ向きであるならば)両方とも線量変化に対する感度が同一である。したがって、線量に対する感度が低い焦点測定を行うために、
図4の格子の測定位置は焦点測定格子の測定位置から差し引かれてもよい。
【0114】
[0126] 本発明の実施形態は、基板のベーク後の格子位置の測定に言及してきた。ある実施形態では、格子位置が測定される前にベーク以外のプロセス、又はベークに加えたプロセスを基板に適用してもよい。ある実施形態では、基板に適用されたいずれかのプロセスなしで格子位置が測定されてもよい。
【0115】
[0127] 本発明の実施形態による格子を使用した測定は、1つ以上のフォトダイオードを使用して行われる線量測定と組み合わせて行われてもよい。
【0116】
[0128] 本発明の実施形態は、格子(100,110)が一連の第2の反射部分(104,114)と交互に配置された一連の第1の反射部分(102,112)を備え、第2の反射部分(104,114)の反射率が第1の反射部分(104,114)の少なくとも一部の反射率未満であり、ゼロより大きい点で共通している。露光線量格子100に関しては、第1の反射部分104の少なくとも一部は第1の反射部分104でよい。焦点測定格子110に関しては、第1の反射部分の少なくとも一部は反射ライン116でよい。
【0117】
[0129] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。例えば、これは、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用誘導及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。このような代替的用途に照らして、本明細書で「ウェーハ」又は「ダイ」という用語を使用している場合、それぞれ、「基板」又は「ターゲット部分」という、より一般的な用語と同義と見なしてよいことが当業者には認識される。本明細書に述べている基板は、露光前又は露光後に、例えばトラック(通常はレジストの層を基板に塗布し、露光したレジストを現像するツール)、メトロロジーツール及び/又はインスペクションツールで処理することができる。適宜、本明細書の開示は、以上及びその他の基板処理ツールに適用することができる。さらに基板は、例えば多層ICを生成するために、複数回処理することができ、したがって本明細書で使用する基板という用語は、既に複数の処理済み層を含む基板も指すことができる。
【0118】
[0130] 光リソグラフィの分野での本発明の実施形態の使用に特に言及してきたが、本発明はその他の用途、例えばインプリントリソグラフィでも使用することができ、文脈によっては、光リソグラフィに限定されないことを理解されたい。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイス内のトポグラフィが基板上に作成されたパターンを画定する。パターニングデバイスのトポグラフィは基板に供給されたレジスト層内に刻印され、電磁放射、熱、圧力又はそれらの組合せを印加することでレジストは硬化する。パターニングデバイスはレジストから取り除かれ、レジストが硬化すると、内部にパターンが残される。
【0119】
[0131] 「レンズ」という用語は、状況が許せば、屈折、反射、磁気、電磁気、及び静電型光学コンポーネントを含む様々なタイプの光学コンポーネントのいずれか1つ、又はその組合せを指すことができる。
【0120】
[0132] 「EUV放射」という用語は、5nm〜20nmの範囲内、例えば13nm〜14nmの範囲内、又は例えば6.7nm若しくは6.8nmなどの5nm〜10nmの範囲内の波長を有する電磁放射を包含するものと見なしてもよい。
【0121】
[0133] 以上、本発明の具体的な実施形態について説明してきたが、本発明は上記以外の方法でも実施できることを理解されたい。例えば、本発明は、上記開示した方法を記述する機械可読命令の1つ以上のシーケンスを含むコンピュータプログラム、又はそのようなコンピュータプログラムを内部に記憶したデータ記憶媒体(例えば、半導体メモリ、磁気又は光ディスク)の形態をとってもよい。上記説明は例示するものであって限定するものではない。したがって、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく上記の本発明を様々に修正できることは当業者には明らかであろう。
【0122】
[0134] 特許請求の範囲を解釈するには、「発明の概要」及び「要約書」の項ではなく、「発明を実施するための形態」の項を使用するよう意図されていることを理解されたい。「発明の概要」及び「要約書」の項は、本発明者が想定するような本発明の1つ以上の例示的実施形態について述べることができるが、全部の例示的実施形態を述べることはできず、したがって本発明及び添付の特許請求の範囲をいかなる意味でも限定しないものとする。
【0123】
[0135] 以上では、特定の機能の実施態様を例示する機能的構成要素及びその関係を用いて本発明について説明してきた。これらの機能的構成要素の境界は、本明細書では説明の便宜を図って任意に画定されている。特定の機能及びその関係が適切に実行される限り、代替的な境界を画定することができる。
【0124】
[0136] 特定の実施形態に関する以上の説明は、本発明の全体的性質を十分に明らかにしているので、当技術分野の知識を適用することにより、過度の実験をせず、本発明の全体的概念から逸脱することなく、このような特定の実施形態を容易に修正する、及び/又はこれらを様々な用途に適応させることができる。したがって、このような適応及び修正は、本明細書に提示された教示及び案内に基づき、開示された実施形態の同等物の意味及び範囲内に入るものとする。本明細書の言葉遣い又は用語は説明のためのもので、限定するものではなく、したがって本明細書の用語又は言葉遣いは、当業者には教示及び案内の観点から解釈されるべきことを理解されたい。
【0125】
[0137] 他の実施形態を以下の番号を付した条項によって提供する。
1.EUV放射ビームの断面にパターンを付与してパターニングされたEUV放射ビームを形成可能なパターニングデバイスを支持するように構成された支持構造と、前記パターニングされたEUV放射ビームを前記基板のターゲット部分に投影するように構成された投影システムと、を備え、
前記支持構造には、一連の第2の反射部分と交互に配置された一連の第1の反射部分を有する格子が設けられ、前記第2の反射部分の反射率が、前記第1の反射部分の少なくとも一部の反射率未満でありゼロより大きい、リソグラフィ装置。
2.前記第1の反射部分がパターニングされていない区域であり、前記第2の反射部分がパターニングされていない区域である、条項1に記載の装置。
3.前記第1の反射部分が矩形であり、前記第2の反射部分が矩形である、条項2に記載の装置。
4.前記第1の反射部分の各々が、反射ラインと吸収ラインとを有する副格子を備え、前記第2の反射部分がパターニングされていない区域を備える、条項1に記載の装置。
5.前記格子が、前記第1の反射部分と前記第2の反射部分との間に位置する一連の吸収部分をさらに備える、条項4に記載の装置。
6.前記格子が、前記第1の反射部分によって反射され、前記基板によって受光される放射の平均強度が、前記第2の反射部分によって反射され、前記基板によって受光される放射の平均強度に実質的に等しくなるように構成される、条項4に記載の装置。
7.前記第2の反射部分がミラー上方に位置する吸収材料層を備え、該吸収材料層が、一部の放射が前記ミラーから反射し、前記吸収材料層を通って戻るように一部のEUV放射を透過可能にする、条項1に記載の装置。
8.前記第2の反射部分の反射率が、前記第1の反射部分の少なくとも一部の反射率の約1/2である、条項1に記載の装置。
9.前記支持構造に、前記格子とは反対の向きの第2の格子が設けられる、条項1に記載の装置。
10.前記支持構造に、前記格子に対して横向きに延びる追加の格子が設けられる、条項1に記載の装置。
11.前記第2の反射部分の反射率が、使用時にEUV放射の大部分が前記第前記2の反射部分から反射するのに十分に高い反射率である、条項1に記載の装置。
12.前記第2の反射部分の反射率が、使用時に前記第2の反射部分から反射するEUV放射が、前記基板上のレジスト内に形成される前記格子の像に測定可能な作用を有するのに十分に高い反射率である、条項1に記載の装置。
13.格子が設けられたパターニングデバイスであって、
一連の第1の反射部分と、一連の第2の反射部分と、を備え、
前記一連の第1の反射部分が前記一連の第2の反射部分と交互に配置され、
前記第2の反射部分の反射率が前記第1の反射部分の少なくとも一部の反射率未満でありゼロより大きい、パターニングデバイス。
14.リソグラフィ装置によって基板に投影される放射線量の測定方法であって、
反射率が第1の反射部分の少なくとも一部の反射率未満でありゼロより大きい一連の第2の反射部分と交互に配置された一連の第1の反射部分を備える格子を照明するステップと、
前記リソグラフィ装置を使用して前記格子を基板上のレジスト内に結像するステップと、
前記リソグラフィ装置のアライメント装置を使用して前記結像格子の重心を測定するステップと、
を含む、方法。
15.前記第1の反射部分がパターニングされていない区域又は矩形であり、前記第2の反射部分がパターニングされていない区域又は矩形であるEUV放射を使用する、条項14に記載の方法。
16.リソグラフィ装置の焦点面の位置を測定する方法であって、
反射率が第1の反射部分の少なくとも一部の反射率未満でありゼロより大きい一連の第2の反射部分と交互に配置された一連の第1の反射部分を備える格子を、EUV放射を使用して照明するステップと、
前記リソグラフィ装置を使用して前記格子を基板上のレジスト内に結像するステップと、
前記リソグラフィ装置のアライメント装置を使用して前記結像格子の重心を測定するステップと、
を含む、方法。
【0126】
[0138] 本発明の幅及び範囲は、上記例示的実施形態のいずれによっても限定されず、特許請求の範囲及びその同等物によってのみ規定されるものである。