特許第6084711号(P6084711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6084711磁気記録膜形成用スパッタリングターゲット及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084711
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】磁気記録膜形成用スパッタリングターゲット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20170213BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20170213BHJP
   C22C 5/04 20060101ALI20170213BHJP
   C22C 30/02 20060101ALI20170213BHJP
   C22C 32/00 20060101ALI20170213BHJP
   G11B 5/851 20060101ALI20170213BHJP
   G11B 5/64 20060101ALI20170213BHJP
   B22F 3/00 20060101ALN20170213BHJP
   B22F 3/15 20060101ALN20170213BHJP
【FI】
   C23C14/34 A
   C22C38/00 303Z
   C22C5/04
   C22C30/02
   C22C32/00 Z
   G11B5/851
   G11B5/64
   !B22F3/00 E
   !B22F3/15 M
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-560124(P2015-560124)
(86)(22)【出願日】2015年9月18日
(86)【国際出願番号】JP2015076628
(87)【国際公開番号】WO2016047578
(87)【国際公開日】20160331
【審査請求日】2015年12月10日
(31)【優先権主張番号】特願2014-197407(P2014-197407)
(32)【優先日】2014年9月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093296
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100173901
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 一輝
(72)【発明者】
【氏名】荻野 真一
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−178210(JP,A)
【文献】 特開2012−178211(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/013920(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/094605(WO,A1)
【文献】 特開2016−030857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
C22C 5/04
C22C 30/02
C22C 32/00
C22C 38/00
G11B 5/64
G11B 5/851
B22F 3/00
B22F 3/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C及び/又はBNを含有するFePt系焼結体スパッタリングターゲットであって、該ターゲットのスパッタ面に対する垂直断面の研磨面においてAuCu合金粒子が占める面積率が0.5%以上15%以下であることを特徴とするスパッタリングターゲット。なお、当該AuCu合金は、Au−Cuの二元系状態図において、910℃に合金の液相が現われる組成範囲(Au:20〜80at%)の合金を意味する。
【請求項2】
スパッタリングターゲット全体の組成に対してAu及びCu合計含有量が1〜20mol%であることを特徴とする請求項1記載のスパッタリングターゲット。
【請求項3】
スパッタリングターゲット全体の組成に対してPt含有量が30〜70mol%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項4】
スパッタリングターゲット全体の組成に対してC含有量が5〜50mol%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項5】
スパッタリングターゲット全体の組成に対してBN含有量が5〜40mol%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項6】
Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Al、Ga、Siから選択した一種以上の金属酸化物をスパッタリングターゲット全体の組成に対してそれぞれ0.1〜20mol%含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項7】
相対密度が95%以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録メディアの磁性体薄膜、特に、熱アシスト磁気記録メディアの磁気記録層の成膜に使用される強磁性材スパッタリングターゲットに関し、マグネトロンスパッタ装置でスパッタした際に安定した放電が得られるパーティクル発生の少ないFePt系焼結体スパッタリングターゲットに関する。
【背景技術】
【0002】
HDD(ハードディスクドライブ)に代表される磁気記録媒体の分野では、記録を担う磁性薄膜の材料として、強磁性金属であるCo、Fe、あるいはNiをベースとした材料が用いられている。例えば、面内磁気記録方式を採用するハードディスクの記録層にはCoを主成分とするCo−Cr系やCo−Cr−Pt系の強磁性合金が用いられてきた。また、近年実用化された垂直磁気記録方式を採用するハードディスクの記録層には、Coを主成分とするCo−Cr−Pt系の強磁性合金と非磁性の無機物粒子からなる複合材料が多く用いられている。そしてハードディスク等の磁気記録媒体の磁性薄膜は、生産性の高さから、上記の材料を成分とする強磁性材スパッタリングターゲットをスパッタリングして作製されることが多い。
【0003】
一方、磁気記録媒体の記録密度は年々急速に増大しており、現状の100Gbit/inの面密度から、将来は1 Tbit/inに達すると考えられている。Tbit/inに記録密度が達すると、記録bitのサイズが10nmを下回るようになり、その場合熱揺らぎによる超常磁性化が問題となってくると予想され、現在、使用されている磁気記録媒体、例えば、Co−Cr基合金にPtを添加して結晶磁気異方性を高めた材料、また、これにさらにBを添加して磁性粒間の磁気結合を弱めたような媒体では十分ではないことが予想される。10nm以下のサイズで安定に強磁性として振る舞う粒子は、より高い結晶磁気異方性を持っている必要があるからである。
【0004】
上記のようなことから、L1構造を持つFePt相が超高密度記録媒体用材料として注目されている。また、L1構造を持つFePt相は耐食性、耐酸化性に優れているため、記録媒体としての応用に適した材料と期待されている。このFePt相は1573Kに規則−不規則変態点を持ち、通常合金を高温から焼き入れても急速な規則化反応によりL1構造を持つ。そして、FePt相を超高密度記録媒体用材料として使用する場合には、規則化したFePt相を磁気的に分離させた状態で出来るだけ高密度に方位をそろえて分散させるという技術の開発が求められている。このようなことからL1構造を有するFePt磁性相を非磁性材料で磁気的に分離されたグラニュラー構造磁性薄膜が熱アシスト磁気記録方式を採用した次世代ハードディスクの磁気記録媒体用として提案されている。
【0005】
このグラニュラー構造磁性薄膜は、磁性粒子同士が非磁性物質の介在により磁気的に絶縁される構造となっている。上記磁気記録層はFePt合金などの磁性相とそれを分離している非磁性相から構成されており、非磁性相の材料としてCやBNが有効であることが知られている。このような磁性薄膜を形成する場合、CターゲットとFePt合金ターゲットの複数のターゲットを用いるのではなく、Cを含有するFePt合金スパッタリングターゲットを用いるのが一般的である(例えば、特許文献1〜2)。以前、本発明者は、Cを含有するFePt系磁気記録膜形成用スパッタリングターゲット(特許文献3)や、BNを含有するFePt系磁気記録膜形成用スパッタリングターゲット(特許文献4)に関する発明を行った。
【0006】
CやBNを含有するFePt系スパッタリングターゲットは、通常、粉末焼結法を用いて作製される。ところが、FePt合金に対して、CやBNの熱膨張率が小さすぎるため、焼結温度を高くするほど、CやBNに掛かる圧縮応力が増大し、その結果、CやBNが物理的な欠陥を生じて、スパッタリング中にパーティクル発生の原因となることがあった。一方、焼結温度を低くしすぎると、ターゲットの密度が低くなるため、これが原因となって、パーティクルが発生するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−102387号公報
【特許文献2】特開2012−214874号公報
【特許文献3】国際公開WO2014/013920
【特許文献4】国際公開WO2014/065201
【特許文献5】特許第5041261号
【特許文献6】特許第5041262号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
FePt系合金などの磁性相とそれを分離している非磁性相から構成される磁気記録層を形成するためのスパッタリングターゲットであって、非磁性相の材料として、C及び/又はBNを利用したFePt系の焼結体スパッタリングターゲットを提供するものであり、スパッタリング時に発生するパーティクルを抑制した高密度のFePt系スパッタリングターゲットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明者は鋭意研究を行った結果、原料に融点の低いAuCu合金を焼結助剤として添加することで、従来よりも低い焼結温度でも、ターゲットの密度を上げることができ、その結果、CやBNに基づく欠陥や密度の低下に起因するスパッタリング中のパーティクルの発生を低減できることを見出した。
【0010】
このような知見に基づき、本発明は、
1)C及び/又はBNを含有するFePt系焼結体スパッタリングターゲットであって、該ターゲットのスパッタ面に対する垂直断面の研磨面においてAuCu合金粒子が占める面積率が0.5%以上15%以下であることを特徴とするスパッタリングターゲット、なお、当該AuCu合金は、Au−Cuの二元系状態図において、910℃に合金の液相が現われる組成範囲(Au:20〜80at%)の合金を意味する、
2)スパッタリングターゲット全体の組成に対してAu及びCu合計含有量が1〜20mol%であることを特徴とする上記1)記載のスパッタリングターゲット、
3)スパッタリングターゲット全体の組成に対してPt含有量が30〜70mol%であることを特徴とする上記1)又は2)に記載のスパッタリングターゲット。
4)スパッタリングターゲット全体の組成に対してC含有量が5〜50mol%であることを特徴とする上記1)〜3)のいずれか一に記載のスパッタリングターゲット。
5)スパッタリングターゲット全体の組成に対してBN含有量が5〜40mol%であることを特徴とする上記1)〜4)のいずれか一に記載のスパッタリングターゲット。
6)Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Al、Ga、Siから選択した一種以上の金属酸化物をスパッタリングターゲット全体の組成に対してそれぞれ0.1〜20mol%含有することを特徴とする上記1)〜5)のいずれか一に記載のスパッタリングターゲット。
7)相対密度が95%以上であることを特徴とする上記1)〜6)のいずれか一に記載のスパッタリングターゲット、を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のC及び/又はBNを含有するFePt系焼結体スパッタリングターゲットはスパッタリング時に発生するパーティクル量を著しく低減することができるという優れた効果を有する。そして、磁気記録媒体の磁性体薄膜、特にグラニュラー型の磁気記録層を効率的に成膜することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1の焼結体のレーザー顕微鏡像及び二値化した画像である。
図2】実施例1の焼結体のFE−EPMAで得られる元素マッピングである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一般に、金属材料は融点が低いほど軟化する温度も低くなるので、融点の低い材料を焼結助剤として添加することによって、低い焼結温度でも焼結体の密度を上げることが可能となる。FePt系焼結体スパッタリングターゲットに添加する焼結助剤の金属として、Au、AgもしくはCuをそれぞれ単独で添加することが知られている。
本発明者は、Au(融点:1064.4℃)とCu(融点:1064.6℃)からなるAuCu合金が、共晶反応によってその融点が910℃まで低下することに着目し、これを焼結助剤として用いることで、さらに低い焼結温度でも、高密度の焼結体を得ることができることを見出した。なお、本発明においてAuCu合金とは、Au−Cuの二元系状態図において、910℃に合金の液相が現れる組成範囲(Au:20〜80at%)の合金を意味する。
【0014】
なお、従来から、FePt系合金スパッタリングターゲットにAgやCuなどを添加することは知られている(例えば、特許文献3〜6)。しかし、これらは磁気特性を向上させる目的であり、焼結助剤として添加するものではなく、また、添加の方法もAgやCuを単独で添加したり、AgPt合金やCuPt合金を添加したりと、比較的融点の低いAuCu合金を添加するものではない。特に、特許文献5〜6には、純Au粉や純Cu粉よりも融点が高い、AuPt合金粉やCuPt合金粉を混合することで、焼結温度を高くすることができ、高密度のターゲットを得ることができると記載されており、本願発明のようにAuとCuを合金化させて融点を下げるという点で明らかに異なる。
【0015】
上記知見に基づき、本発明は、C及び/又はBNを含有するFePt系焼結体スパッタリングターゲットにおいて、該ターゲットのスパッタ面に対する垂直断面の研磨面におけるAuCu合金粒子が占める面積率が0.5%以上15%以下であることを特徴とするものである。本発明のC及び/又はBNを含有するFePt系焼結体スパッタリングターゲットはFePt系合金からなる強磁性材中にC及び/又はBNの非磁性材粒子が分散した組織を有する。ここで、垂直断面の組織を規定する理由は、原料に用いるCやBNが薄片状の形態を有しているため、一軸方向の加圧でホットプレスすると、垂直断面と水平断面とで組織の見え方が異なるためである。このとき、垂直断面は特徴ある地層のような層状に見えることから、垂直断面について規定している。
AuCu合金粒子の観察は、スパッタリングターゲットのスパッタ面に対する垂直断面をAuCu合金粒子が判別できるまで鏡面研磨し、レーザー顕微鏡を用いて視野60μm×80μmでスパッタリングターゲットの任意10箇所を観察して、それら平均の面積率を求める。なお、研磨にはSiC砥粒のエメリー紙を用いる。エメリー紙は、粒度が#240、#400、#600、#1000(JIS R6010)の物を順番に使って研磨をする。その後、仕上げとして粒径0.3μmのアルミナ砥粒を用いて湿式研磨を行う。面積率の算出方法は、以下の通りとする。
【0016】
まず、レーザー顕微鏡(キーエンス社製:VK−9710、倍率:対物レンズ20倍×デジタルズーム1倍)を用いて、ターゲットの垂直断面のレーザー顕微鏡像(視野:縦60μm×横80μm)を撮影する。次に、レーザー顕微鏡像と同じ場所FE−EPMAによって元素分析を実施し、AuCu合金を同定する。このとき、FE−EPMA像において、AuとCuとが同じ場所に検出される粒子を、AuCu合金粒子とする。AuCu合金粒子(合金相)は、FePt系合金相よりも色が暗く、C相やBN相よりも色が明るく撮影されるため、コントラストの差を利用することによってAuCu合金相のみを二値化して、デジタル的に区別することが可能である。なお、酸化物を添加した場合は、酸化物相はC相やBN相と同様にAuCu合金粒子よりも暗く撮影されることから、この場合もコントラスト差で容易に区別することが可能である。このようにして二値化したデータから、AuCu合金粒子の面積率を算出する。なお、二値化の際、面積が100ピクセル以下のものはノイズである可能性が高いことから、それらの値は二値化のデータには含めない。
【0017】
本発明のスパッタリングターゲットは、スパッタリングターゲット全体の組成に対してAu及びCuの合計含有量が1〜20mol%とするのが好ましい。Au及びCuの合計含有量が1mol%未満であると、AuCu合金の添加による焼結助剤としての効果が十分に得られないため、焼結体(スパッタリングターゲット)の密度を向上できず、パーティクルが発生しやすくなるため好ましくない。一方、Au及びCuの合計含有量が20mol%超であると、スパッタリングによって形成した磁性薄膜の特性制御が困難となるため好ましくない。
また、本発明のスパッタリングターゲットは、AuCuに対するCuのスパッタリングターゲット内の含有比率が20〜80mol%とするのが好ましい。AuCuに対するCuの含有比率が20mol%未満あるいは80mol%超であると、AuCu合金の融点低下の効果が十分に得られないため、焼結体(スパッタリングターゲット)の密度を向上できず、パーティクルが発生しやすくなるため好まし くない。
【0018】
本発明は、スパッタリングターゲット全体の組成に対してPt含有量を30mol%以上70mol%以下とするのが好ましい。Pt含有量を30mol%以上70mol%以下とすることで良好な磁気特性が得られる。また、スパッタリングターゲット全体の組成に対して、非磁性材料としてのC含有量を5mol%以上50mol%以下、BN含有量を5mol%以上40mol%以下とすることで、磁気的な絶縁を向上させることができる。C及びBN合計含有量は3vol%以上50vol%以下とするのが好ましい。これらの数値範囲内とすることでスパッタリング中のパーティクルを抑えつつ磁気的な絶縁を向上させることができる。
また、本発明は、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Al、Ga、Siから選択した一種以上の金属酸化物をスパッタリングターゲット全体の組成に対してそれぞれ0.1〜20mol%含有することが好ましい。これらの酸化物は、スパッタ後の膜の磁気特性を向上させるために有効な成分である。なお、本発明のFePt系焼結体スパッタリングターゲットにおいて、Pt、C及び/又はBN、AuCu、先述の酸化物を除き、残部はFeである。これらの成分はICP(誘導結合プラズマ)−OES法によって、それぞれの含有量を測定することができる。
【0019】
本発明のスパッタリングターゲットは、相対密度が95%以上であることが好ましい。これにより、成膜時の異常放電(アーキング)の発生が少なく、均一な薄膜を作製することができる。なお、本発明の相対密度は、ターゲットの実測密度を計算密度(理論密度ともいう)で割り返して求めた値である。計算密度は、ターゲットの構成成分が互いに拡散あるいは反応せずに混在していると仮定したときの密度であり、次式で計算される。
式:計算密度=Σ(構成成分の分子量×構成成分の原子量比)/Σ(構成成分の分子量×構成成分の原子量比/構成成分の文献値密度)ここで、Σは、ターゲットの構成成分の全てについて、和をとることを意味する。



【0020】
本発明のFePt系焼結体スパッタリングターゲットは、次の方法で作製することができる。
まず、各原料粉末(Fe粉末、Pt粉末、C粉末、BN粉末、AuCu合金粉末)を用意する。また、原料粉末として、予め熱処理やアトマイズ装置によって合金化した合金粉末(Fe−Pt粉末)を用いてもよい。Ptを含む合金粉末はその組成にもよるが、原料粉末中の酸素量を少なくするために有効である。また、AuCu合金粉末の代わりに、Au粉末とCu粉末をそれぞれ用いて、焼結中に合金化させてもよい。さらに、必要に応じて、上記に掲げた金属酸化物の各原料粉末を用意する。
【0021】
次に、金属粉末(Fe粉末、Pt粉末、Fe−Pt合金粉末)をボールミルや媒体撹拌ミルなどを用いて粉砕する。通常、このような金属の原料粉末は球状、塊状、その他不定形のものが使用されるが、これらをボールミルや媒体攪拌ミルを用いて粉砕することによって形状を薄片状にすることができる。このような薄片状の粉末を用いることによって焼結体の垂直断面方向に層状の構造を形成しFe−Pt合金相の結晶方向が安定し、放電の安定化にも寄与する。これらの原料粉末は、それぞれ平均粒径10〜100μmとするのが好ましい。
【0022】
そして、原料粉末を所望の組成になるように秤量し、粉砕処理して得られた金属粉末とAuCu合金粉末、C粉末及び/又はBN粉末とを乳鉢、媒体撹拌ミル、篩などを用いて混合する。添加成分である酸化物については、金属の原料粉末と一緒に投入したり、C粉末やBN粉末と一緒に投入したり、あるいは、金属の原料粉末とC粉末やBN粉末とを混合した段階で投入することができる。
【0023】
その後、この混合粉末をホットプレスで成型・焼結する。ホットプレス以外にも、プラズマ放電焼結法、熱間静水圧焼結法を使用することもできる。焼結時の保持温度は、スパッタリングターゲットの組成にもよるが、多くの場合、850〜900℃の温度範囲である。従来では、密度を高くするために800℃〜1400℃の温度範囲で焼結を行っていたが、本発明によれば、従来と同等の高密度を比較的低い焼結温度で実現することができる。
【0024】
次に、ホットプレスから取り出した焼結体に熱間等方加圧(HIP)加工を施す。熱間等方加圧加工は焼結体の密度向上に有効である。熱間等方加圧加工時の保持温度は、焼結体の組成にもよるが、多くの場合、850℃〜900℃の温度範囲とする。従来はホットプレスと同様に、密度を高くするために800℃〜1200℃の温度範囲で熱間等方加圧加工を行っていたが、本発明によれば、従来と同等の高密度を比較的低い焼結温度で実現することができる。
【0025】
このようにして得られた焼結体を旋盤などで所望の形状に加工することで、本発明のスパッタリングターゲットは作製できる。以上により、C及び/又はBNを含有するFePt系焼結体スパッタリングターゲットであって、高密度(特に密度95%以上)の
スパッタリングターゲットを作製することができる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例および比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例によって何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明に含まれる実施例以外の種々の変形を包含するものである。
【0027】
(実施例1)
原料粉末として、FePt合金粉末、C粉末、AuCu合金粉末を用意し、これらの粉末を60(45Fe−45Pt−5Au−5Cu)−40C(mol%)となるように秤量した。
次に、FePt合金粉末を粉砕媒体のジルコニウムボールと共に容量5Lの媒体撹拌ミルに投入し、2時間、回転数300rpmで処理した。そして、媒体撹拌ミルから取り出した粉末とAuCu合金粉末とC粉末とをV字型混合機で混ぜ合わせた後、さらに150μm目の篩を用いて混合し、この混合粉末をカーボン製の型に充填しホットプレスした。
【0028】
ホットプレスの条件は、真空雰囲気、昇温速度300℃/時間、保持温度850℃、保持時間2時間とし、昇温開始時から保持終了まで30MPaで加圧した。保持終了後はチャンバー内でそのまま自然冷却させた。
次にホットプレスの型から取り出した焼結体に熱間等方加圧加工を施した。熱間等方加圧加工の条件は、昇温速度300℃/時間、保持温度850℃、保持時間2時間とし、昇温開始時からArガスのガス圧を徐々に高めて、750℃で保持中は150MPaで加圧した。保持終了後は炉内でそのまま自然冷却させた。
【0029】
このようにして得られた焼結体の端部(スパッタ面に対する垂直断面に相当)を切り出し、これを鏡面研磨した後、研磨面をレーザー顕微鏡によって観察した。その顕微鏡像を図1の左図に示す。この図において、濃いグレーの領域がAuCu合金粒子に相当する。その後、これを二値化して、AuCu合金粒子の面積率(平均)を求めた。その結果、10.8%であった。なお、FE−EPMA像を用いて、これらの粒子がAuCu合金からなることを確認した(図2参照)。また、この焼結体の他の端部について、アルキメデス法を用いて密度を測定した結果、95.8%であった。
【0030】
次にこの焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ旋盤で切削加工した後、マグネトロンスパッタ装置(キヤノンアネルバ製C-3010スパッタリングシステム)に取り付け、スパッタリングを行った。スパッタリングの条件は、投入電力1kW、Arガス圧1.7Paとし、2kWhrのプレスパッタリングを実施した後、4インチ径のシリコン基板上に20秒間成膜した。そして基板上へ付着した粒子径が0.25μm以上のパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した。このときのパーティクル個数は65個であった。
【0031】
【表1】
【0032】
(比較例1)
原料粉末として、FePt合金粉末、C粉末、Au粉末を用意し、これらの粉末を60(45Fe−45Pt−10Au)−40C(mol%)となるように秤量した。
次に、FePt合金粉末を粉砕媒体のジルコニウムボールと共に容量5Lの媒体撹拌ミルに投入し、2時間、回転数300rpmで処理した。そして、媒体撹拌ミルから取り出した粉末とAu粉末とC粉末とをV字型混合機で混ぜ合わせた後、さらに150μm目の篩を用いて混合し、この混合粉末をカーボン製の型に充填し、実施例1と同様の条件でホットプレスした。次に、ホットプレスの型から取り出した焼結体に実施例1と同様の条件で熱間等方加圧加工を施した。
【0033】
このようにして得られた焼結体の端部について、アルキメデス法を用いて密度を測定した結果、93.2%であった。次にこの焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ旋盤で切削加工した後、マグネトロンスパッタ装置(キヤノンアネルバ製C-3010スパッタリングシステム)に取り付け、スパッタリングを行った。スパッタリングの条件は、実施例1と同様とした。基板上へ付着した粒子径が0.25μm以上のパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した結果、パーティクル個数は184個と実施例に比べて増加した。
【0034】
(比較例2)
原料粉末として、FePt合金粉末、C粉末、Cu粉末を用意し、これらの粉末を60(45Fe−45Pt−10Cu)−40C(mol%)となるように秤量した。
次に、FePt合金粉末を粉砕媒体のジルコニウムボールと共に容量5Lの媒体撹拌ミルに投入し、2時間、回転数300rpmで処理した。そして、媒体撹拌ミルから取り出した粉末とCu粉末とC粉末とをV字型混合機で混ぜ合わせた後、さらに150μm目の篩を用いて混合し、この混合粉末をカーボン製の型に充填し、実施例1と同様の条件でホットプレスした。次に、ホットプレスの型から取り出した焼結体に実施例1と同様の条件で熱間等方加圧加工を施した。
【0035】
このようにして得られた焼結体の端部について、アルキメデス法を用いて密度を測定した結果、93.5%であった。次にこの焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ旋盤で切削加工した後、マグネトロンスパッタ装置(キヤノンアネルバ製C-3010スパッタリングシステム)に取り付け、スパッタリングを行った。スパッタリングの条件は、実施例1と同様とした。基板上へ付着した粒子径が0.25μm以上のパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した結果、パーティクル個数は179個と実施例1と比べて大幅に増加した。
【0036】
(比較例3)
原料粉末として、FePt合金粉末、C粉末を用意し、これらの粉末を60(50Fe−50Pt)−40C(mol%)となるように秤量した。
次に、FePt合金粉末を粉砕媒体のジルコニウムボールと共に容量5Lの媒体撹拌ミルに投入し、2時間、回転数300rpmで処理した。そして、媒体撹拌ミルから取り出した粉末とC粉末とをV字型混合機で混ぜ合わせた後、さらに150μm目の篩を用いて混合し、この混合粉末をカーボン製の型に充填し、実施例1と同様の条件でホットプレスした。次に、ホットプレスの型から取り出した焼結体に実施例1と同様の条件で熱間等方加圧加工を施した。
【0037】
このようにして得られた焼結体の端部について、アルキメデス法を用いて密度を測定した結果、92.8%であった。次にこの焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ旋盤で切削加工した後、マグネトロンスパッタ装置(キヤノンアネルバ製C-3010スパッタリングシステム)に取り付け、スパッタリングを行った。スパッタリングの条件は、実施例1と同様とした。基板上へ付着した粒子径が0.25μm以上のパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した結果、パーティクル個数は261個と実施例1と比べて大幅に増加した。
【0038】
(実施例2)
原料粉末として、Fe粉末、Pt粉末、BN粉末、AuCu合金粉末を用意し、これらの粉末を66(54Fe−40Pt−3Au−3Cu)−34BN(mol%)となるように秤量した。
次に、Fe粉末、Pt粉末を粉砕媒体のジルコニウムボールと共に容量5Lの媒体撹拌ミルに投入し、2時間、回転数300rpmで処理した。そして、媒体撹拌ミルから取り出した粉末とAuCu合金粉末とBN粉末とをV字型混合機で混ぜ合わせた後、さらに150μm目の篩を用いて混合し、この混合粉末をカーボン製の型に充填し、実施例1と同様の条件でホットプレスした。次に、ホットプレスの型から取り出した焼結体に実施例1と同様の条件で熱間等方加圧加工を施した。
【0039】
このようにして得られた焼結体の端部(スパッタ面に対する垂直断面に相当)を切り出し、これを鏡面研磨した後、その研磨面をレーザー顕微鏡によって観察した結果、AuCu合金粒子の面積率は2.4%であった。また、このようにして得られた焼結体の他の端部について、アルキメデス法を用いて密度を測定した結果、95.4%であった。次に、この焼結体を実施例1と同様の条件で、スパッタリングを行った。基板上へ付着した粒子径が0.25μm以上のパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した結果、パーティクル個数は94個であった。
【0040】
(比較例4)
原料粉末として、Fe粉末、Pt粉末、BN粉末、Au粉末を用意し、これらの粉末を66(54Fe−40Pt−6Au)−34BN(mol%)となるように秤量した。
次に、Fe粉末、Pt粉末を粉砕媒体のジルコニウムボールと共に容量5Lの媒体撹拌ミルに投入し、2時間、回転数300rpmで処理した。そして、媒体撹拌ミルから取り出した粉末とAg粉末とBN粉末とをV字型混合機で混ぜ合わせた後、さらに150μm目の篩を用いて混合し、この混合粉末をカーボン製の型に充填し、実施例1と同様の条件でホットプレスした。次に、ホットプレスの型から取り出した焼結体に実施例1と同様の条件で熱間等方加圧加工を施した。
【0041】
このようにして得られた焼結体の端部について、アルキメデス法を用いて密度を測定した結果、93.9%であった。次にこの焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ旋盤で切削加工した後、マグネトロンスパッタ装置(キヤノンアネルバ製C-3010スパッタリングシステム)に取り付け、スパッタリングを行った。スパッタリングの条件は、実施例1と同様とした。基板上へ付着した粒子径が0.25μm以上のパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した結果、パーティクル個数は256個と実施例2と比べて大幅に増加した。
【0042】
(実施例3)
原料粉末として、Fe粉末、Pt粉末、C粉末、Au粉末、Cu粉末を用意し、これらの粉末を50(60Fe−30Pt−1.5Au−8.5Cu)−50C(mol%)となるように秤量した。
次に、Fe粉末、Pt粉末を粉砕媒体のジルコニウムボールと共に容量5Lの媒体撹拌ミルに投入し、2時間、回転数300rpmで処理した。そして、媒体撹拌ミルから取り出した粉末とAu粉末とCu粉末とC粉末とをV字型混合機で混ぜ合わせた後、さらに150μm目の篩を用いて混合し、この混合粉末をカーボン製の型に充填し、実施例1と同様の条件でホットプレスした。次に、ホットプレスの型から取り出した焼結体に実施例1と同様の条件で熱間等方加圧加工を施した。
【0043】
このようにして得られた焼結体の端部(スパッタ面に対する垂直断面に相当)を切り出し、これを鏡面研磨した後、その研磨面をレーザー顕微鏡によって観察した結果、AuCu合金粒子の面積率は4.8%であった。また、このようにして得られた焼結体の他の端部について、アルキメデス法を用いて密度を測定した結果、95.1%であった。次に、この焼結体を実施例1と同様の条件で、スパッタリングを行った。基板上へ付着した粒子径が0.25μm以上のパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した結果、パーティクル個数は82個であった。
【0044】
(比較例5)
原料粉末として、Fe粉末、Pt粉末、C粉末、Au粉末を用意し、これらの粉末を50(60Fe−30Pt−10Au)−50C(mol%)となるように秤量した。
次に、Fe粉末、Pt粉末を粉砕媒体のジルコニウムボールと共に容量5Lの媒体撹拌ミルに投入し、2時間、回転数300rpmで処理した。そして、媒体撹拌ミルから取り出した粉末とAu粉末とC粉末とをV字型混合機で混ぜ合わせた後、さらに150μm目の篩を用いて混合し、この混合粉末をカーボン製の型に充填し、実施例1と同様の条件でホットプレスした。次に、ホットプレスの型から取り出した焼結体に実施例1と同様の条件で熱間等方加圧加工を施した。
【0045】
このようにして得られた焼結体の端部について、アルキメデス法を用いて密度を測定した結果、93.3%であった。次にこの焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ旋盤で切削加工した後、マグネトロンスパッタ装置(キヤノンアネルバ製C-3010スパッタリングシステム)に取り付け、スパッタリングを行った。スパッタリングの条件は、実施例1と同様とした。基板上へ付着した粒子径が0.25μm以上のパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した結果、パーティクル個数は439個と実施例3と比べて大幅に増加した。
【0046】
(実施例4)
原料粉末として、Fe粉末、Pt粉末、BN粉末、Au粉末、Cu粉末を用意し、これらの粉末を80(20Fe−70Pt−9Au−1Cu)−20BN(mol%)となるように秤量した。
次に、Fe粉末、Pt粉末を粉砕媒体のジルコニウムボールと共に容量5Lの媒体撹拌ミルに投入し、2時間、回転数300rpmで処理した。そして、媒体撹拌ミルから取り出した粉末とAg粉末とCu粉末とBN粉末とをV字型混合機で混ぜ合わせた後、さらに150μm目の篩を用いて混合し、この混合粉末をカーボン製の型に充填し、実施例1と同様の条件でホットプレスした。次に、ホットプレスの型から取り出した焼結体に実施例1と同様の条件で熱間等方加圧加工を施した。
【0047】
このようにして得られた焼結体の端部(スパッタ面に対する垂直断面に相当)を切り出し、これを鏡面研磨した後、その研磨面をレーザー顕微鏡によって観察した結果、AuCu合金粒子の面積率は9.7%であった。また、このようにして得られた焼結体の他の端部について、アルキメデス法を用いて密度を測定した結果、96.0%であった。次に、この焼結体を実施例1と同様の条件で、スパッタリングを行った。基板上へ付着した粒子径が0.25μm以上のパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した結果、パーティクル個数は83個であった。
【0048】
(比較例6)
原料粉末として、Fe粉末、Pt粉末、BN粉末、Cu粉末を用意し、これらの粉末を80(20Fe−70Pt−10Cu)−20C(mol%)となるように秤量した。
次に、Fe粉末、Pt粉末を粉砕媒体のジルコニウムボールと共に容量5Lの媒体撹拌ミルに投入し、2時間、回転数300rpmで処理した。そして、媒体撹拌ミルから取り出した粉末とCu粉末とBN粉末とをV字型混合機で混ぜ合わせた後、さらに150μm目の篩を用いて混合し、この混合粉末をカーボン製の型に充填し、実施例1と同様の条件でホットプレスした。次に、ホットプレスの型から取り出した焼結体に実施例1と同様の条件で熱間等方加圧加工を施した。
【0049】
このようにして得られた焼結体の端部について、アルキメデス法を用いて密度を測定した結果、93.2%であった。次にこの焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ旋盤で切削加工した後、マグネトロンスパッタ装置(キヤノンアネルバ製C-3010スパッタリングシステム)に取り付け、スパッタリングを行った。スパッタリングの条件は、実施例1と同様とした。基板上へ付着した粒子径が0.25μm以上のパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した結果、パーティクル個数は307個と実施例4と比べて大幅に増加した。
【0050】
(実施例5)
原料粉末として、Fe粉末、Pt粉末、C粉末、AuCu粉末、SiO粉末を用意し、これらの粉末を77(35Fe−45Pt−10Au−10Cu)−8SiO−15C(mol%)となるように秤量した。
次に、Fe粉末、Pt粉末を粉砕媒体のジルコニウムボールと共に容量5Lの媒体撹拌ミルに投入し、2時間、回転数300rpmで処理した。そして、媒体撹拌ミルから取り出した粉末とAuCu合金粉末とSiO粉末とC粉末とをV字型混合機で混ぜ合わせた後、さらに150μm目の篩を用いて混合し、この混合粉末をカーボン製の型に充填し、実施例1と同様の条件でホットプレスした。次に、ホットプレスの型から取り出した焼結体に実施例1と同様の条件で熱間等方加圧加工を施した。
【0051】
このようにして得られた焼結体の端部(スパッタ面に対する垂直断面に相当)を切り出し、これを鏡面研磨した後、その研磨面をレーザー顕微鏡によって観察した結果、AuCu合金粒子の面積率は14.3%であった。また、このようにして得られた焼結体の他の端部について、アルキメデス法を用いて密度を測定した結果、97.1%であった。次に、この焼結体を実施例1と同様の条件で、スパッタリングを行った。基板上へ付着した粒子径が0.25μm以上のパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した結果、パーティクル個数は47個であった。
【0052】
(比較例7)
原料粉末として、Fe粉末、Pt粉末、C粉末、Au粉末、SiO粉末を用意し、これらの粉末を77(35Fe−45Pt−20Au)−8SiO−15C(mol%)となるように秤量した。
次に、Fe粉末、Pt粉末を粉砕媒体のジルコニウムボールと共に容量5Lの媒体撹拌ミルに投入し、2時間、回転数300rpmで処理した。そして、媒体撹拌ミルから取り出した粉末とAu粉末とSiO粉末とC粉末とをV字型混合機で混ぜ合わせた後、さらに150μm目の篩を用いて混合し、この混合粉末をカーボン製の型に充填し、実施例1と同様の条件でホットプレスした。次に、ホットプレスの型から取り出した焼結体に実施例1と同様の条件で熱間等方加圧加工を施した。
【0053】
このようにして得られた焼結体の端部について、アルキメデス法を用いて密度を測定した結果、93.6%であった。次にこの焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ旋盤で切削加工した後、マグネトロンスパッタ装置(キヤノンアネルバ製C-3010スパッタリングシステム)に取り付け、スパッタリングを行った。スパッタリングの条件は、実施例1と同様とした。基板上へ付着した粒子径が0.25μm以上のパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した結果、パーティクル個数は142個と実施例5と比べて大幅に増加した。
【0054】
(実施例6)
原料粉末として、Fe粉末、Pt粉末、C粉末、AuCu粉末、TiO粉末、Cr粉末を用意し、これらの粉末を73(53Fe−45Pt−1Au−1Cu)−1TiO−1Cr−25C(mol%)となるように秤量した。
次に、Fe粉末、Pt粉末を粉砕媒体のジルコニウムボールと共に容量5Lの媒体撹拌ミルに投入し、2時間、回転数300rpmで処理した。そして、媒体撹拌ミルから取り出した粉末とAuCu合金粉末とTiO粉末とCr粉末とC粉末とをV字型混合機で混ぜ合わせた後、さらに150μm目の篩を用いて混合し、この混合粉末をカーボン製の型に充填し、実施例1と同様の条件でホットプレスした。次に、ホットプレスの型から取り出した焼結体に実施例1と同様の条件で熱間等方加圧加工を施した。
【0055】
このようにして得られた焼結体の端部(スパッタ面に対する垂直断面に相当)を切り出し、これを鏡面研磨した後、その研磨面をレーザー顕微鏡によって観察した結果、AuCu合金粒子の面積率は0.8%であった。また、このようにして得られた焼結体の他の端部について、アルキメデス法を用いて密度を測定した結果、96.2%であった。次に、この焼結体を実施例1と同様の条件で、スパッタリングを行った。基板上へ付着した粒子径が0.25μm以上のパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した結果、パーティクル個数は59個であった。
【0056】
(比較例8)
原料粉末として、Fe粉末、Pt粉末、C粉末、Au粉末、TiO粉末、Cr粉末を用意し、これらの粉末を73(53Fe−45Pt−2Au)−1TiO−1Cr−25C(mol%)となるように秤量した。
次に、Fe粉末、Pt粉末を粉砕媒体のジルコニウムボールと共に容量5Lの媒体撹拌ミルに投入し、2時間、回転数300rpmで処理した。そして、媒体撹拌ミルから取り出した粉末とAg粉末とTiO粉末とCr粉末とC粉末とをV字型混合機で混ぜ合わせた後、さらに150μm目の篩を用いて混合し、この混合粉末をカーボン製の型に充填し、実施例1と同様の条件でホットプレスした。次に、ホットプレスの型から取り出した焼結体に実施例1と同様の条件で熱間等方加圧加工を施した。
【0057】
このようにして得られた焼結体の端部について、アルキメデス法を用いて密度を測定した結果、92.9%であった。次にこの焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ旋盤で切削加工した後、マグネトロンスパッタ装置(キヤノンアネルバ製C-3010スパッタリングシステム)に取り付け、スパッタリングを行った。スパッタリングの条件は、実施例1と同様とした。基板上へ付着した粒子径が0.25μm以上のパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した結果、パーティクル個数は227個と実施例6と比べて大幅に増加した。
【0058】
(実施例7)
原料粉末として、FePt合金粉末、BN粉末、Au粉末、Cu粉末、MnO粉末、Ta粉末を用意し、これらの粉末を78.5(45Fe−45Pt−4Au−6Cu)−0.5MnO−1Ta−20BN(mol%)となるように秤量した。
次に、FePt合金粉末を粉砕媒体のジルコニウムボールと共に容量5Lの媒体撹拌ミルに投入し、2時間、回転数300rpmで処理した。そして、媒体撹拌ミルから取り出した粉末とAu粉末とCu粉末とMnO粉末とTa粉末とBN粉末とをV字型混合機で混ぜ合わせた後、さらに150μm目の篩を用いて混合し、この混合粉末をカーボン製の型に充填し、実施例1と同様の条件でホットプレスした。次に、ホットプレスの型から取り出した焼結体に実施例1と同様の条件で熱間等方加圧加工を施した。
【0059】
このようにして得られた焼結体の端部(スパッタ面に対する垂直断面に相当)を切り出し、これを鏡面研磨した後、その研磨面をレーザー顕微鏡によって観察した結果、AuCu合金粒子の面積率は6.1%であった。また、このようにして得られた焼結体の他の端部について、アルキメデス法を用いて密度を測定した結果、95.2%であった。次に、この焼結体を実施例1と同様の条件で、スパッタリングを行った。基板上へ付着した粒子径が0.25μm以上のパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した結果、パーティクル個数は97個であった。
【0060】
(比較例9)
原料粉末として、FePt合金粉末、BN粉末、Cu粉末、MnO粉末、Ta粉末を用意し、これらの粉末を78.5(45Fe−45Pt−10Cu)−0.5MnO−1Ta−20BN(mol%)となるように秤量した。
次に、FePt合金粉末を粉砕媒体のジルコニウムボールと共に容量5Lの媒体撹拌ミルに投入し、2時間、回転数300rpmで処理した。そして、媒体撹拌ミルから取り出した粉末とCu粉末とMnO粉末とTa粉末とBN粉末とをV字型混合機で混ぜ合わせた後、さらに150μm目の篩を用いて混合し、この混合粉末をカーボン製の型に充填し、実施例1と同様の条件でホットプレスした。次に、ホットプレスの型から取り出した焼結体に実施例1と同様の条件で熱間等方加圧加工を施した。
【0061】
このようにして得られた焼結体の端部について、アルキメデス法を用いて密度を測定した結果、94.0%であった。次にこの焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ旋盤で切削加工した後、マグネトロンスパッタ装置(キヤノンアネルバ製C-3010スパッタリングシステム)に取り付け、スパッタリングを行った。スパッタリングの条件は、実施例1と同様とした。基板上へ付着した粒子径が0.25μm以上のパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した結果、パーティクル個数は398個と実施例7と比べて大幅に増加した。
【0062】
(実施例8)
原料粉末として、FePt合金粉末、C粉末、AuCu合金粉末、SiO粉末を用意し、これらの粉末を80(45Fe−45Pt−5Au−5Cu)−15SiO−5C(mol%)となるように秤量した。
次に、FePt合金粉末を粉砕媒体のジルコニウムボールと共に容量5Lの媒体撹拌ミルに投入し、2時間、回転数300rpmで処理した。そして、媒体撹拌ミルから取り出した粉末とAuCu合金粉末とSiO粉末とC粉末とをV字型混合機で混ぜ合わせた後、さらに150μm目の篩を用いて混合し、この混合粉末をカーボン製の型に充填し、実施例1と同様の条件でホットプレスした。次に、ホットプレスの型から取り出した焼結体に実施例1と同様の条件で熱間等方加圧加工を施した。
【0063】
このようにして得られた焼結体の端部(スパッタ面に対する垂直断面に相当)を切り出し、これを鏡面研磨した後、その研磨面をレーザー顕微鏡によって観察した結果、AuCu合金粒子の面積率は7.2%であった。また、このようにして得られた焼結体の他の端部について、アルキメデス法を用いて密度を測定した結果、97.3%であった。次に、この焼結体を実施例1と同様の条件で、スパッタリングを行った。基板上へ付着した粒子径が0.25μm以上のパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した結果、パーティクル個数は13個であった。
【0064】
(比較例10)
原料粉末として、FePt合金粉末、C粉末、Au粉末、SiO粉末を用意し、これらの粉末を80(45Fe−45Pt−10Au)−15SiO−5C(mol%)となるように秤量した。
次に、FePt合金粉末を粉砕媒体のジルコニウムボールと共に容量5Lの媒体撹拌ミルに投入し、2時間、回転数300rpmで処理した。そして、媒体撹拌ミルから取り出した粉末とAu粉末とSiO粉末とC粉末とをV字型混合機で混ぜ合わせた後、さらに150μm目の篩を用いて混合し、この混合粉末をカーボン製の型に充填し、実施例1と同様の条件でホットプレスした。次に、ホットプレスの型から取り出した焼結体に実施例1と同様の条件で熱間等方加圧加工を施した。
【0065】
このようにして得られた焼結体の端部について、アルキメデス法を用いて密度を測定した結果、92.2%であった。次にこの焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ旋盤で切削加工した後、マグネトロンスパッタ装置(キヤノンアネルバ製C-3010スパッタリングシステム)に取り付け、スパッタリングを行った。スパッタリングの条件は、実施例1と同様とした。基板上へ付着した粒子径が0.25μm以上のパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した結果、パーティクル個数は285個と実施例8と比べて大幅に増加した。
【0066】
(実施例9)
原料粉末として、FePt合金粉末、BN粉末、Au粉末、Cu粉末、SiO粉末を用意し、これらの粉末を85(45Fe−45Pt−4Au−6Cu)−10SiO−5BN(mol%)となるように秤量した。
次に、FePt合金粉末を粉砕媒体のジルコニウムボールと共に容量5Lの媒体撹拌ミルに投入し、2時間、回転数300rpmで処理した。そして、媒体撹拌ミルから取り出した粉末とAg粉末とCu粉末とSiO粉末とBN粉末とをV字型混合機で混ぜ合わせた後、さらに150μm目の篩を用いて混合し、この混合粉末をカーボン製の型に充填し、実施例1と同様の条件でホットプレスした。次に、ホットプレスの型から取り出した焼結体に実施例1と同様の条件で熱間等方加圧加工を施した。
【0067】
このようにして得られた焼結体の端部(スパッタ面に対する垂直断面に相当)を切り出し、これを鏡面研磨した後、その研磨面をレーザー顕微鏡によって観察した結果、AuCu合金粒子の面積率は5.9%であった。また、このようにして得られた焼結体の他の端部について、アルキメデス法を用いて密度を測定した結果、97.0%であった。次に、この焼結体を実施例1と同様の条件で、スパッタリングを行った。基板上へ付着した粒子径が0.25μm以上のパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した結果、パーティクル個数は31個であった。
【0068】
(比較例11)
原料粉末として、FePt合金粉末、BN粉末、Cu粉末、SiO粉末を用意し、これらの粉末を85(45Fe−45Pt−10Cu)−10SiO−5BN(mol%)となるように秤量した。
次に、FePt合金粉末を粉砕媒体のジルコニウムボールと共に容量5Lの媒体撹拌ミルに投入し、2時間、回転数300rpmで処理した。そして、媒体撹拌ミルから取り出した粉末とCu粉末とSiO粉末とBN粉末とをV字型混合機で混ぜ合わせた後、さらに150μm目の篩を用いて混合し、この混合粉末をカーボン製の型に充填し、実施例1と同様の条件でホットプレスした。次に、ホットプレスの型から取り出した焼結体に実施例1と同様の条件で熱間等方加圧加工を施した。
【0069】
このようにして得られた焼結体の端部について、アルキメデス法を用いて密度を測定した結果、93.8%であった。次にこの焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ旋盤で切削加工した後、マグネトロンスパッタ装置(キヤノンアネルバ製C-3010スパッタリングシステム)に取り付け、スパッタリングを行った。スパッタリングの条件は、実施例1と同様とした。基板上へ付着した粒子径が0.25μm以上のパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した結果、パーティクル個数は213個と実施例9と比べて大幅に増加した。
【0070】
(実施例10)
原料粉末として、Fe粉末、Pt粉末、C粉末、BN粉末、AuCu合金粉末を用意し、これらの粉末を60(50Fe−40Pt−5Au−5Cu)−30C−10BN(mol%)となるように秤量した。
次に、Fe粉末、Pt粉末を粉砕媒体のジルコニウムボールと共に容量5Lの媒体撹拌ミルに投入し、2時間、回転数300rpmで処理した。そして、媒体撹拌ミルから取り出した粉末とAuCu合金粉末とC粉末とBN粉末とをV字型混合機で混ぜ合わせた後、さらに150μm目の篩を用いて混合し、この混合粉末をカーボン製の型に充填し、実施例1と同様の条件でホットプレスした。次に、ホットプレスの型から取り出した焼結体に実施例1と同様の条件で熱間等方加圧加工を施した。
【0071】
このようにして得られた焼結体の端部(スパッタ面に対する垂直断面に相当)を切り出し、これを鏡面研磨した後、その研磨面をレーザー顕微鏡によって観察した結果、AuCu合金粒子の面積率は5.5%であった。また、このようにして得られた焼結体の他の端部について、アルキメデス法を用いて密度を測定した結果、95.9%であった。次に、この焼結体を実施例1と同様の条件で、スパッタリングを行った。基板上へ付着した粒子径が0.25μm以上のパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した結果、パーティクル個数は97個であった。
【0072】
(比較例12)
原料粉末として、Fe粉末、Pt粉末、C粉末、BN粉末、Au粉末を用意し、これらの粉末を60(50Fe−40Pt−10Au)−30C−10BN(mol%)となるように秤量した。
次に、Fe粉末、Pt粉末を粉砕媒体のジルコニウムボールと共に容量5Lの媒体撹拌ミルに投入し、2時間、回転数300rpmで処理した。そして、媒体撹拌ミルから取り出した粉末とAg粉末とC粉末とBN粉末とをV字型混合機で混ぜ合わせた後、さらに150μm目の篩を用いて混合し、この混合粉末をカーボン製の型に充填し、実施例1と同様の条件でホットプレスした。次に、ホットプレスの型から取り出した焼結体に実施例1と同様の条件で熱間等方加圧加工を施した。
【0073】
このようにして得られた焼結体の端部について、アルキメデス法を用いて密度を測定した結果、92.7%であった。次にこの焼結体を直径180.0mm、厚さ5.0mmの形状へ旋盤で切削加工した後、マグネトロンスパッタ装置(キヤノンアネルバ製C-3010スパッタリングシステム)に取り付け、スパッタリングを行った。スパッタリングの条件は、実施例1と同様とした。基板上へ付着した粒子径が0.25μm以上のパーティクルの個数をパーティクルカウンターで測定した結果、パーティクル個数は421個と実施例10と比べて大幅に増加した。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のC及び/又はBNを含有するFePt系焼結体スパッタリングターゲットは、スパッタリング時に発生するパーティクル量を提供することができるという優れた効果を有する。したがって、磁気記録媒体の磁性体薄膜、特にグラニュラー型の磁気記録層の成膜用強磁性材スパッタリングターゲットに有用である。
図1
図2