(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されるような包装箱は、通常、複数個が複数段に積上げられた状態で搬送や保管がされる。このとき、特に最下段の包装箱には非常に大きな積上げ荷重が作用するため、当該包装箱の両側壁がそれぞれ外側に向かって膨出するように変形するいわゆる胴膨れが生じやすい。具体的には、このような包装箱では、販売店で前記被収容物が陳列される際に当該被収容物のなるべく多くの部位が露出するように、前記切目線、すなわち、当該側壁を2つの領域に分離するような切断を誘導する切断誘導部が当該側壁を前後方向に横断する形状とされているため、この包装箱に前記積み上げ荷重が作用して胴膨れが生じた場合、両側壁が前記切断誘導部で折れて座屈しやすい。
【0006】
この胴膨れが発生すると、これら包装箱の積上げ状態が不安定となる。また、この胴膨れの発生は、包装箱の積上げ数を減らすことにより回避され得るが、こうすると搬送効率や保管効率が著しく低下する。
【0007】
本発明の目的は、被収容物の展示性を確保しながら、胴膨れの発生を抑制可能な包装箱を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明者らは、両側壁に形成されたそれぞれの切断誘導部が当該側壁を前後方向に横断しない形状とすること、すなわち、各側壁と前記前壁との境界又は各側壁と前記後壁との境界のいずれかが上下方向の全域にわたって前記切断誘導部によって分断されないようにすることにより、その分断されていない側の境界部分に柱が形成され、この柱で前記積み上げ荷重を受けて胴膨れの発生を抑制することに想到した。ただし、この場合であっても、前記被収容物を陳列する際に当該被収容物が十分に露出することが求められる。
【0009】
また、一般に、各側壁に前記切断誘導部が形成されていない場合、各側壁が座屈したときに最も外側に膨出する部位は、各側壁の上下方向の中央を通り前記底壁と平行な中央横断線上のうちの前後方向の中央の中心点付近であることが知られている。そのため、前記切断誘導部が当該側壁を前後方向に横断しない形状であっても、この切断誘導部が前記中心点を通る形状の場合、当該切断誘導部のうちの前記中心点付近の部位が座屈の起点となって、胴膨れが発生しやすくなるという懸念がある。
【0010】
そこで、本発明は、被収容物を収容可能な包装箱であって、略矩形の底壁と、前記底壁と略直交するように当該底壁の左側の端部に接続された略矩形の左側壁と、前記底壁と略直交するように当該底壁の右側の端部に接続されており、前記左側壁と同形状の右側壁と、前記底壁と略直交するように当該底壁の前側の端部に接続されており、前記左側壁の前端及び前記右側壁の前端の双方につながった前壁と、前記底壁と略直交するように当該底壁の後側の端部に接続されており、前記左側壁の後端及び前記右側壁の後端の双方につながった後壁とを備え、前記左側壁は、当該左側壁を2つの領域に分離するような切断を誘導する左側切断誘導部を有し、前記右側壁は、当該右側壁を2つの領域に分離するような切断を誘導する右側切断誘導部を有し、前記左側切断誘導部は、以下の条件(L1)、(L2)及び(L3)を満たす形状を有し、前記右側切断誘導部は、以下の条件(R1)、(R2)及び(R3)を満たす形状を有する包装箱。
(L1)前記左側壁のうち互いに隣接する二辺を結ぶ。
(L2)前記左側壁の前後方向の中央を通るとともに前記底壁と直交する左側中央縦断線を横切る。
(L3)前記左側中央縦断線のうち、当該左側壁の上下方向の中心点を通らない。
(R1)前記右側壁のうち互いに隣接する二辺を結ぶ。
(R2)前記右側壁の前後方向の中央を通るとともに前記底壁と直交する右側中央縦断線を横切る。
(R3)前記右側中央縦断線のうち、当該右側壁の上下方向の中心点を通らない。
【0011】
本発明によれば、前記左側切断誘導部は、前記左側壁のうち互いに隣接する二辺を結んでおり、かつ、前記左側中央縦断線を横切る形状を有するので、前記左側壁がこの左側切断誘導部で切断されたときに前記被収容物が十分露出し、当該被収容物の展示性が確保される。さらに、前記左側壁の前端及び後端のいずれか一方で前記積み上げ荷重を確実に受けることができ、かつ、前記左側壁への座屈の発生起点の形成が回避されるので、胴膨れの発生が抑制される。具体的には、前記左側切断誘導部は、前記左側壁のうち互いに隣接する二辺を結ぶ形状を有することから、前記左側壁の前端及び後端のいずれか一方は、当該左側切断誘導部によって分断されずに上下方向の全域にわたって連続的に延びる部位として残り、この残った部位が前記積み上げ荷重を受ける柱として機能する。そして、前記左側切断誘導部は、前記中心点を通らないことから、この左側壁への座屈の発生起点の形成が回避される。以上のことは、前記右側壁側についても同様である。
【0012】
より詳細には、前記左側切断誘導部は、前記左側中央縦断線のうち、前記中心点から当該左側壁の上下方向の寸法の4分の1だけ上に位置する上基準点よりも上側を横切るか、前記左側中央縦断線のうち、前記中心点から当該左側壁の上下方向の寸法の4分の1だけ下に位置する下基準点よりも下側を横切る形状を有し、前記右側切断誘導部は、前記右側中央縦断線のうち、前記中心点から当該右側壁の上下方向の寸法の4分の1だけ上に位置する上基準点よりも上側を横切るか、前記右側中央縦断線のうち、前記中心点から当該右側壁の上下方向の寸法の4分の1だけ下に位置する下基準点よりも下側を横切る形状を有することが好ましい。
【0013】
このようにすれば、胴膨れの発生がさらに抑制される。具体的には、前記左側切断誘導部は、前記中心点を含んだ中心点付近、すなわち、前記左側中央縦断線のうち前記上基準点と前記下基準点との間を通らないことから、この左側壁への座屈の発生起点の形成がさらに抑制される。このことは、前記右側壁側についても同様である。
【0014】
この場合において、前記左側切断誘導部は、前記左側壁の上下方向の中央を通るとともに前記左側中央縦断線と直交する左側中央横断線と交差しない形状を有し、前記右側切断誘導部は、前記右側壁の上下方向の中央を通るとともに前記右側中央縦断線と直交する右側中央横断線と交差しない形状を有することが好ましい。
【0015】
このようにすれば、胴膨れの発生が一層抑制される。一般に、前記左側壁に前記積み上げ荷重が作用した場合、当該左側壁は、前記左側中央横断線か前記左側切断誘導部で折れやすい。そのため、前記左側切断誘導部が前記左側中央横断線と交差する形状の場合、両者の交点が座屈発生の起点となる懸念があるのに対し、本発明の左側切断誘導部は、前記左側中央横断線と交差しない形状を有するので、前記左側壁への座屈発生の起点の形成が回避される。このことは、前記右側壁側についても同様である。
【0016】
さらにこの場合において、前記左側切断誘導部の一端は、前記左側壁の前端のうち前記左側中央横断線よりも上側にあり、前記左側切断誘導部の他端は、前記左側壁の上端のうち前記左側中央縦断線よりも後側にあり、前記右側切断誘導部の一端は、前記右側壁の前端のうち前記右側中央横断線よりも上側にあり、前記右側切断誘導部の他端は、前記右側壁の上端のうち前記右側中央縦断線よりも後側にあることが好ましい。
【0017】
このようにすれば、当該包装箱の前面側からの前記被収容物の視認性を確保しながら、当該包装箱内からの前記被収容物の左右方向へのこぼれ落ちが抑制される。具体的には、各切断誘導部での切断により、各側壁の前端のうちそれぞれの中央横断線よりも上側の部位の少なくとも一部が分離されるので、前面側からの前記被収容物の視認性が確保される。そして、各切断誘導部で切断した後においても、両側壁の少なくとも下半分の領域は残っているので、当該包装箱内からの前記被収容物の左右方向へのこぼれ落ちが抑制される。
【0018】
さらにまた、前記左側切断誘導部の他端は、前記左側壁の後端よりも前側にあり、前記右側切断誘導部の他端は、前記右側壁の後端よりも前側にあることが好ましい。
【0019】
このようにすれば、前記被収容物の展示性を維持しながら、胴膨れの発生がさらに抑制される。具体的には、前記左側切断誘導部の他端が前記左側壁の後端よりも前側にあるので、前記積み上げ荷重は、前記左側壁と前記後壁との境界部分に加え、前記左側壁のうち前記境界部分よりも前側の部位でも受けられる。このことは、前記右側壁側についても同様である。よって、胴膨れの発生が一層抑制される。
【0020】
また、本発明において、前記右側切断誘導部は、前記底壁の左右方向の中央を通り前記左側壁と平行な平面を対称面として、前記左側切断誘導部と面対称な形状を有することが好ましい。
【0021】
このようにすれば、胴膨れの発生がさらに抑制される。一般に、側壁に切断誘導部が形成されている場合、この部分に応力集中が発生するので、当該側壁はこの切断誘導部で折れやすい。そのため、各切断誘導部が前記対称面に対して面対称ではない場合、すなわち、包装箱に前記積み上げ荷重が作用したときに両側壁に発生する応力分布に不均一が生じる場合、両側壁のいずれか一方が先に座屈し、それに続いて他方が座屈することが懸念されるが、本発明では、各切断誘導部が前記対称面に対して面対称な形状であるので、両側壁に発生する応力分布が略等しくなり、胴膨れの発生が抑制される。
【0022】
また、本発明において、前記前壁の上端及び前記後壁の上端は、それぞれ前記左側壁の上端及び前記右側壁の上端と同じ高さ位置に設定されており、前記前壁の下端及び前記後壁の下端は、それぞれ前記底壁の上面に当接していることが好ましい。
【0023】
このようにすれば、胴膨れの発生がさらに抑制される。具体的には、前記前壁の上端及び前記後壁の上端は、それぞれ前記左側壁の上端及び前記右側壁の上端と同じ高さ位置に設定されており、前記前壁の下端及び前記後壁の下端は、それぞれ前記底壁の上面に当接していることから、当該包装箱に作用する積み上げ荷重は、各側壁に加え、前記前壁及び前記後壁によっても受けられる。よって、各側壁が負担する積み上げ荷重が低減されるので、胴膨れの発生が一層抑制される。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、被収容物の展示性を確保しながら、胴膨れの発生を抑制可能な包装箱を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一実施形態の包装箱10について、
図1〜
図5を参照しながら説明する。なお、以下の説明における上下、左右及び前後の各方向は、
図1に表示された方向に基づいている。
【0027】
本実施形態の包装箱10は、
図1に示すように、底壁20と、左側壁30と、右側壁40と、前壁50と、後壁60と、上壁70とを備えており、略直方体形状を呈する。左側壁30と前壁50とは、上下方向の全域にわたってつながっている。このことは、左側壁30と後壁60、右側壁40と前壁50、及び右側壁40と後壁60についても同様である。本実施形態では、包装箱10は、段ボールシート等の紙材料により形成されている。ただし、この包装箱10は、紙材料に限らず、種々の材料による形成が可能である。
【0028】
各壁により囲まれた空間Sに商品としての被収容物18が複数個収容される。この包装箱10は、後述の左側切断誘導部33、右側切断誘導部43及び切込線54等が切断されることにより、被収容物18を外部に露出させる態様、すなわち、販売店等で陳列される陳列態様となる(
図3を参照)。
【0029】
底壁20は、略矩形状である。本実施形態では、底壁20は、前後方向に長い矩形状を呈する。
【0030】
左側壁30は、底壁20と略直交するように当該底壁20の左側の端部から起立しており、略矩形状である。左側壁30は、前後方向に長い略矩形の左側壁本体31と、この左側壁本体31から上側に突出する左突出部32とを有する。本実施形態では、左突出部32は、前後方向に沿って等間隔で4箇所に形成されている。この左側壁30は、当該左側壁30を本体部30aと、販売店等で除去される被除去部30bとに2分するような切断を誘導する左側切断誘導部33を有する。
【0031】
左側切断誘導部33は、左側壁30を前後方向に横断しない形状、より具体的には、左側壁30の互いに隣接する二辺を結ぶ形状を有する。つまり、この包装箱10では、左側壁30の前端(左側壁30と前壁50との境界11)及び左側壁30の後端(左側壁30と後壁60との境界12)のいずれか一方は、左側切断誘導部33によって分断されずに上下方向の全域にわたって連続的に延びる部位として残り、この残った部位が前記積み上げ荷重を受ける柱として機能する。
【0032】
そして、左側切断誘導部33は、左側壁30の前後方向の中央を通るとともに底壁20と直交する左側中央縦断線LLを横切る形状を有する。より詳細には、この左側切断誘導部33は、左側壁30の中心点O付近、すなわち、左側中央縦断線LLのうち、当該左側壁30の上下方向の中心点Oから第一寸法L1だけ上に位置する上基準点P1よりも下側であって、前記中心点Oから第二寸法L2だけ下に位置する下基準点P2よりも上側の部分を避けた位置で左側中央縦断線LLを横切る形状を有する。つまり、左側切断誘導部33は、左側中央縦断線LLのうち上基準点P1よりも上側か、左側中央縦断線LLのうち下基準点P2よりも下側でこの左側中央縦断線LLを横切る形状を有する。ここで、第一寸法L1と第二寸法L2とは同一に設定される。本実施形態では、第一寸法L1及び第二寸法L2は、ともに左側壁30の上下方向の寸法Hの4分の1である。
【0033】
加えて、左側切断誘導部33は、左側壁30の上下方向の中央を通るとともに左側中央縦断線LLと直交する左側中央横断線TLと交差しない形状を有する。
【0034】
本実施形態では、左側切断誘導部33の一端(
図2における左端)は、左側壁30の前端のうち左側中央横断線TLよりも上側にあり、その他端(
図2における右端)は、左側壁30の上端のうち左側中央縦断線LLよりも後側で、かつ、当該左側壁30の後端よりも前側にある。つまり、本実施形態では、左側壁30の後端(左側壁30と後壁60との境界12)が柱となっている。そして、左側切断誘導部33は、その一端側から他端側に向かうにしたがって上側に傾斜した直線状を呈し、左側中央縦断線LLのうち上基準点P1の上側を横切る形状を有する。ただし、この左側切断誘導部33の形状は、これに限られない。なお、左側切断誘導部33としては、ミシン目や、断続的な切込線等が挙げられる。
【0035】
右側壁40は、底壁20と略直交するように当該底壁20の右側の端部から起立しており、略矩形状である。この右側壁40は、底壁20の左右方向の中央を通り左側壁30と平行な平面を対称面として、左側壁30と面対称となっている。すなわち、右側壁40は、左側壁本体31と同形状の右側壁本体41と、左突出部32と同形状の右突出部42と、左側切断誘導部33と同形状の右側切断誘導部43とを有する。この右側壁40は、左側壁30と面対称な形状であるため、当該右側壁40の説明は省略する。
【0036】
前壁50は、上下方向に長い矩形状である。この前壁50は、第一前壁形成片51と、第二前壁形成片52と、第三前壁形成片53とを有する。第一前壁形成片51は、左側壁30の前端につながっており、上下方向に長い矩形状である。
図2及び
図4に示すように、第一前壁形成片51は、その下端が底壁20の上面に当接し、かつ、その上端が各突出部32,42の上端と同じ高さとなるように設定されている。なお、
図4では、本実施形態の包装箱10の上に積まれた別の包装箱が破線で示されている。第二前壁形成片52は、右側壁40の前端につながっており、上下方向に長い矩形状である。この第二前壁形成片52も、
図2及び
図4に示すように、その下端が底壁20の上面に当接し、かつ、その上端が各突出部32,42の上端と同じ高さとなるように設定されている。第一前壁形成片51の左右方向の寸法と第二前壁形成片52の左右方向の寸法との和は、底壁20の左右方向の寸法と略同一となるように設定されている。つまり、
図1に示すように、第一前壁形成片51と第二前壁形成片52とにより、空間Sの前側が塞がれる。第三前壁形成片53は、底壁20の前端につながっており、左右方向に長い矩形状である。第三前壁形成片53は、第一前壁形成片51及び第二前壁形成片52の前側に位置し、その後面が第一前壁形成片51の前面及び第二前壁形成片52の前面と接着されている。
【0037】
前壁50は、当該前壁50を左右方向に横断する形状の切込線54を有する。具体的には、切込線54は、第一前壁形成片51を左右方向に横断する形状の第一切込線54aと、第二前壁形成片52を左右方向に横断する形状の第二切込線54bとを有する。本実施形態では、第一切込線54aの右側の端部の底壁20からの高さ位置と第二切込線54bの左側の端部の底壁20からの高さ位置とは一致するように設定されている。
【0038】
後壁60は、上下方向に長い矩形状である。この後壁60は、切込線が形成されていない点を除き、前壁50と同一の形状、具体的には、底壁20における前後方向の中央を通り前壁50と平行な平面を対称面として、前壁50と面対称な形状を有する。すなわち、後壁60は、第一前壁形成片51と同形状の第一後壁形成片61と、第二前壁形成片52と同形状の第二後壁形成片62と、第三前壁形成片53と同形状の第三後壁形成片63とを有する。ただし、この後壁60には切込線は形成されていない。
【0039】
上壁70は、左側壁本体31の上端につながった第一上壁形成片71と、右側壁本体41の上端につながった第二上壁形成片72とにより形成される。具体的には、第一上壁形成片71の左側の端部は、左側壁本体31とはつながっている一方で、左突出部32とはつながっておらず、第二上壁形成片72の右側の端部は、右側壁本体41とはつながっている一方で、右突出部42とはつながっていない。第一上壁形成片71の左右方向の寸法は、第一前壁形成片51及び第一後壁形成片61の同方向の寸法よりも小さく、第二上壁形成片72の左右方向の寸法は、第二前壁形成片52及び第二後壁形成片62の同方向の寸法よりも小さい。そのため、各上壁形成片71,72の間には隙間が形成されており、この隙間を通じて包装箱10内の被収容物18の視認が可能となっている。
【0040】
ここで、本実施形態の包装箱10を
図1に示す態様(搬送時や保管時の態様)から、
図3に示す陳列態様とする工程を説明する。
【0041】
まず、第一前壁形成片51のうち第一切込線54aより上側の部位の右端が当該部位の左端に対して外側に開くような外力を加えることにより、第一切込線54aに沿って第一前壁形成片51を切断する。そして、第一前壁形成片51のうち第一切込線54aより上側の部位と左側壁30との境界に沿って当該部位を切断する。なお、上記の各切断は逆の順に行われてもよい。これと同様の工程を第二前壁形成片52についても行う。
【0042】
続いて、左側壁30を左側切断誘導部33に沿って切断する。具体的には、左側切断誘導部33の前端から後端に向かって切断する。その後、左側壁30の本体部30aと第一上壁形成片71との境界に沿って切断することにより、左側壁30の被除去部30bと第一上壁形成片71とを除去する。同様に、右側切断誘導部43の前端から後端に向かって切断した後、右側壁40の本体部と第二上壁形成片72との境界に沿って切断することにより、右側壁40の被除去部と第二上壁形成片72とを除去する。
【0043】
以上の工程により、本実施形態の包装箱10は、前記陳列態様、すなわち、被収容物18の一部が露出する態様となる。
【0044】
図5は、これまで説明してきた包装箱10を形成するための箱形成部材10′を示すものである。つまり、この箱形成部材10′は、包装箱10を展開したものに相当する。
【0045】
図5に示すように、底壁20と左側壁30との境界には、底壁20に対する左側壁30の折り曲げを誘導する折曲誘導部21が形成されている。同様に、底壁20と右側壁40との境界、底壁20と第三前壁形成片53との境界、及び底壁20と第三後壁形成片63との境界にも、それぞれ折曲誘導部22〜24が形成されている。具体的には、各折曲誘導部21〜24は、押罫である。底壁20と左側壁30との境界に形成された折曲誘導部21は、第一前壁形成片51と第三前壁形成片53との間に形成されたスリットの頂部25と第一後壁形成片61と第三後壁形成片63との間のスリットの頂部26とを結ぶ直線よりも所定寸法だけ外側に形成されている。このことは、底壁20と右側壁40との境界に形成された折曲誘導部22についても同様である。
【0046】
左側壁30と第一前壁形成片51との境界11には、左側壁30に対する第一前壁形成片51の折り曲げを誘導する前側折曲誘導部34が形成され、左側壁30と第一後壁形成片61との境界12(柱)には、左側壁30に対する第一後壁形成片61の折り曲げを誘導する後側折曲誘導部35が形成され、左側壁30と第一上壁形成片71との境界には、左側壁30に対する第一上壁形成片71の折り曲げを誘導する上側折曲誘導部36が形成されている。なお、右側壁40側における各折曲誘導部、すなわち、底壁20を基準として各折曲誘導部34〜36と対称な位置に形成されたそれぞれの折曲誘導部の形状は、左側壁30側の各折曲誘導部34〜36と同形状であるので、その説明を省略する。
【0047】
前側折曲誘導部34は、断続的な切込線34aと、押罫部34bとを有する。切込線34aは、左側壁30と第一前壁形成片51との境界11の上端から第一切込線54aに至る形状を有し、押罫部34bは、第一切込線54aから境界11の下端に至る形状を有する。
【0048】
後側折曲誘導部35は、断続的な切込線35aと、押罫部35bとを有する。切込線35a及び押罫部35bは、それぞれ所定寸法に設定される。
【0049】
なお、前側折曲誘導部34は切込線34aを含むことから、第一前壁形成片51の折り曲げが容易であり、後側折曲誘導部35は切込線35aを含むことから、第一後壁形成片61の折り曲げが容易である。
【0050】
上側折曲誘導部36は、左側壁本体31の上端を画定する第一切込線36aと、左突出部32の上端を画定する第二切込線36bとを有する。第一切込線36aは、左側壁本体31と第一上壁形成片71との境界に沿って断続的に切り込まれた切込線である。第二切込線36bは、第一切込線36aよりも所定寸法だけ第一上壁形成片71側に位置するとともに当該第一切込線36aと平行に延びる線に沿って断続的に切り込まれた切込線である。第一切込線36a及び第二切込線36bは、左側壁30の前端から後端に向かって一定間隔で交互に並んでいる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の包装箱10では、左側切断誘導部33は、左側壁30のうち互いに隣接する二辺を結んでおり、かつ、左側中央縦断線LLを横切る形状を有するので、左側壁30がこの左側切断誘導部33で切断されたときに被収容物18が十分露出し、当該被収容物18の展示性が確保される。さらに、左側壁30の後端(左側壁30と後壁60との境界12)で前記積み上げ荷重を確実に受けることができ、かつ、左側壁30への座屈発生の起点の形成が回避されるので、胴膨れの発生が抑制される。具体的には、左側切断誘導部33は、左側壁30のうち互いに隣接する二辺(前側の辺及び上側の辺)を結ぶ形状を有することから、左側壁30の後端は、当該左側切断誘導部33によって分断されずに上下方向の全域にわたって連続的に延びる部位として残り、この残った部位が前記積み上げ荷重を受ける柱として機能する。そして、左側切断誘導部33は、中心点Oを通らないことから、この左側壁30への座屈の発生起点の形成が回避される。以上のことは、右側壁40側についても同様である。
【0052】
より詳細には、左側切断誘導部33は、中心点Oを含んだ中心点O付近、すなわち、左側中央縦断線LLのうち上基準点P1と下基準点P2との間を通らないことから、この左側壁30への座屈の発生起点の形成がさらに抑制される。このことは、右側壁40側についても同様である。
【0053】
また、上記実施形態の左側切断誘導部33は、左側中央横断線TLと交差しない形状を有するので、左側壁30への座屈発生の起点の形成が回避され、右側切断誘導部43は、右側中央横断線と交差しない形状を有するので、右側壁40への座屈発生の起点の形成が回避される。具体的には、一般に、左側壁30に前記積み上げ荷重が作用した場合、当該左側壁30は、左側中央横断線TLか左側切断誘導部33で折れやすいため、左側切断誘導部33が左側中央横断線TLと交差する形状の場合、両者の交点が座屈発生の起点となる懸念があるのに対し、本実施形態の左側切断誘導部33は、左側中央横断線TLと交差しないので、左側壁30への座屈発生の起点の形成が回避される。このことは、右側壁40側についても同様である。よって、胴膨れの発生が抑制される。
【0054】
さらに、左側切断誘導部33の一端は、左側壁30の前端のうち左側中央横断線TLよりも上側にあり、左側切断誘導部33の他端は、左側壁30の上端のうち左側中央縦断線LLよりも後側にあり、右側切断誘導部43の一端は、右側壁40の前端のうち右側中央横断線よりも上側にあり、右側切断誘導部43の他端は、右側壁40の上端のうち右側中央縦断線よりも後側にあるので、当該包装箱10の前面側からの被収容物18の視認性を確保しながら、当該包装箱10内からの被収容物18の左右方向へのこぼれ落ちが抑制される。具体的には、各切断誘導部33,43での切断により、各側壁30,40の前端のうちそれぞれの中央横断線よりも上側の部位の少なくとも一部が分離されるので、当該包装箱10の前面側からの被収容物18の視認性が確保される。そして、各切断誘導部33,43で切断した後においても、両側壁30,40の少なくとも下半分の領域は残っているので、当該包装箱10内からの被収容物18の左右方向へのこぼれ落ちが抑制される。
【0055】
さらに、左側切断誘導部33の他端は、左側壁30の後端よりも前側にあるので、前記積み上げ荷重は、左側壁30と後壁60との境界部分に加え、左側壁30のうち前記境界部分よりも前側の部位でも受けられる。このことは、右側壁40側についても同様である。よって、胴膨れの発生が一層抑制される。
【0056】
また、右側切断誘導部43は、底壁20の左右方向の中央を通り左側壁30と平行な平面を対称面として、左側切断誘導部33と面対称な形状を有するので、胴膨れの発生がさらに抑制される。一般に、側壁に切断誘導部が形成されている場合、この部分に応力集中が発生するので、当該側壁はこの切断誘導部で折れやすい。そのため、各切断誘導部33,43が前記対称面に対して面対称ではない場合、すなわち、包装箱10に前記積み上げ荷重が作用したときに両側壁30,40に発生する応力分布に不均一が生じる場合、両側壁30,40のいずれか一方が先に座屈し、それに続いて他方が座屈することが懸念されるが、本実施形態では、各切断誘導部33,43が前記対称面に対して面対称な形状であるので、両側壁30,40に発生する応力分布が等しくなり、胴膨れの発生が抑制される。
【0057】
また、前壁50の上端及び後壁60の上端は、それぞれ左側壁30の上端(左突出部32の上端)及び右側壁40の上端(右突出部42の上端)と同じ高さ位置に設定されており、前壁50の下端及び後壁60の下端は、それぞれ底壁20の上面に当接しているので、当該包装箱10に作用する積み上げ荷重は、各側壁30,40に加え、前壁50及び後壁60によっても受けられる。よって、各側壁30,40が負担する積み上げ荷重が低減されるので、胴膨れの発生が一層抑制される。
【0058】
なお、今回開示された各実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0059】
例えば、上記実施形態では、左側切断誘導部33の一端が左側壁30の前端にあり、左側切断誘導部33の他端が左側壁30の上端にある例を示したが、左側切断誘導部33の一端は、左側壁30の左側中央横断線TLよりも下側にあっても良い。具体的には、この左側切断誘導部33は、その一端が左側壁30の前端のうち左側中央横断線TLよりも下側にあるとともに、その他端が左側壁30の下端のうち左側中央縦断線LLよりも後側にあり、かつ、左側中央縦断線LLのうち下基準点P2よりも下側を横切る形状や、その一端が左側壁30の下端のうち左側中央縦断線LLよりも前側にあるとともに、その他端が左側壁30の後端のうち左側中央横断線TLよりも下側にあり、かつ、左側中央縦断線LLのうち下基準点P2よりも下側を横切る形状等であってもよい。このことは、右側切断誘導部43についても同様である。
【0060】
また、上記実施形態では、左側切断誘導部33が直線状である例を示したが、この左側切断誘導部33は、折れ線状や湾曲線状、あるいは、これらが混在したものであってもよい。一例として、左側切断誘導部33は、その前端から左側中央縦断線LLまでは左側中央横断線TLと平行であり、左側中央縦断線LLから後端に向かうにしたがって上側に向かう形状が挙げられる。ただし、この形状の場合、左側切断誘導部33のうち、その前端から左側中央横断線TLまでの部位と左側中央横断線TLから後端までの部位との交点が座屈発生の起点となることが懸念される。これに対し、上記実施形態のように左側切断誘導部33が直線状である場合、座屈発生の起点が形成されないので、左側切断誘導部33の形状としては直線状であることが好ましい。このことは、右側切断誘導部43についても同様である。
【0061】
また、上記実施形態では、底壁20が前後方向に長い矩形である例を示したが、底壁20は、左右方向に長い矩形や正方形であってもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、左突出部32の上端が前壁50の上端及び後壁60の上端と同じ高さ位置に設定された例を示したが、左側壁30の上端がその前後方向の全域にわたって前壁50の上端及び後壁60の上端と同じ高さ位置に設定されてもよい。このことは、右側壁40についても同様である。あるいは、前壁50の上端及び後壁60の上端が左突出部32及び右突出部42よりも低い高さ位置に設定され、左側壁30及び右側壁40のみで上方からの積み上げ荷重を受けるようにしても良い。
【0063】
また、第三前壁形成片53は省略されてもよい。この場合、第一前壁形成片51と第二前壁形成片52とが前後方向に重なる寸法に設定され、その重なった部分同士の接着により前壁50が形成される。このことは、後壁60側についても同様である。