特許第6085510号(P6085510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6085510表面処理金属材及びそれを用いたコネクタ、端子、積層板、シールドテープ、シールド材、プリント配線板、プリント回路板、金属加工部材、及び、電子機器
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  • 特許6085510-表面処理金属材及びそれを用いたコネクタ、端子、積層板、シールドテープ、シールド材、プリント配線板、プリント回路板、金属加工部材、及び、電子機器 図000010
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6085510
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】表面処理金属材及びそれを用いたコネクタ、端子、積層板、シールドテープ、シールド材、プリント配線板、プリント回路板、金属加工部材、及び、電子機器
(51)【国際特許分類】
   C25D 3/56 20060101AFI20170213BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20170213BHJP
   C25D 7/06 20060101ALI20170213BHJP
   H01R 13/03 20060101ALI20170213BHJP
   H05K 3/38 20060101ALI20170213BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
   C25D3/56 D
   C25D7/00 H
   C25D7/00 J
   C25D7/00 G
   C25D7/06 A
   H01R13/03 D
   H05K3/38 B
   H05K9/00 W
【請求項の数】23
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-75186(P2013-75186)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-198882(P2014-198882A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2015年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】新井 英太
(72)【発明者】
【氏名】福地 亮
【審査官】 宮本 靖史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−087388(JP,A)
【文献】 特開2010−270353(JP,A)
【文献】 特開2003−253469(JP,A)
【文献】 特開昭63−238296(JP,A)
【文献】 特開2011−149067(JP,A)
【文献】 特開2010−234638(JP,A)
【文献】 特開2002−151841(JP,A)
【文献】 渡辺 徹,めっき膜の構造制御,日本金属学会誌,日本,公益社団法人日本金属学会,2002年 4月24日,第66巻,第4号,339−349頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/00 − 7/12
C22C 5/00 − 25/00
C22C 27/00 − 28/00
C22C 30/00 − 30/06
C22C 35/00 − 45/10
H05K 3/10 − 3/26
H05K 3/38
H05K 9/00
H01R 13/00 − 13/08
H01R 13/15 − 13/35
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材表面にNi−Zn合金めっき層が形成された表面処理金属材であって、前記Ni−Zn合金めっき層が繊維状に形成されている表面処理金属材。
【請求項2】
x軸をNi−Zn合金めっき層におけるNi及びZnの合計付着量(μg/dm2)とし、y軸を前記Ni及びZnの合計付着量(μg/dm2)におけるNiの付着量(μg/dm2)を示すNi比率(%)として描かれたNi及びZn合計付着量−Ni比率グラフにおいて、
y=0.06875x−37.50000、
y=0.00069x+78.79570、
y=−0.00076x+21.43939、
y=−0.03462x+86.53846、
x=25000、
の5つの直線で囲まれた領域内にある請求項1に記載の表面処理金属材。
【請求項3】
前記Ni及びZn合計付着量−Ni比率グラフにおいて、
y=0.06875x−37.50000、
y=0.00069x+78.79570、
y=0.06500x−307.00000、
y=−0.00076x+21.43939、
y=−0.03462x+86.53846、
の5つの直線で囲まれた領域内にある請求項2に記載の表面処理金属材。
【請求項4】
前記Ni及びZn合計付着量−Ni比率グラフにおいて、
y=0.00069x+78.79570、
y=0.06500x−307.00000、
y=−0.00186x+73.60465、
y=0.00200x+35.00000、
x=25000、
の5つの直線で囲まれた領域内にある請求項2に記載の表面処理金属材。
【請求項5】
前記Ni及びZn合計付着量−Ni比率グラフにおいて、
y=0.06500x−307.00000、
y=−0.00186x+73.60465、
y=0.03375x−282.50000、
y=0.00049x+23.51220、
の4つの直線で囲まれた領域内にある請求項2に記載の表面処理金属材。
【請求項6】
前記Ni及びZn合計付着量−Ni比率グラフにおいて、
y=0.00200x+35.00000、
y=0.03375x−282.50000、
y=−0.00051x+32.65823、
x=25000、
の4つの直線で囲まれた領域内にある請求項2に記載の表面処理金属材。
【請求項7】
前記Ni及びZn合計付着量−Ni比率グラフにおいて、
y=0.06500x−307.00000、
y=0.00049x+23.51220、
y=−0.00051x+32.65823、
y=−0.00076x+21.43939、
x=25000、
の5つの直線で囲まれた領域内にある請求項2に記載の表面処理金属材。
【請求項8】
前記金属材表面とNi−Zn合金めっき層との間に、下地層及び/又は粗化処理層が形成された請求項1〜7のいずれかに記載の表面処理金属材。
【請求項9】
60度光沢度が10〜80%である請求項1〜8のいずれかに記載の表面処理金属材。
【請求項10】
60度光沢度が10%未満である請求項1〜8のいずれかに記載の表面処理金属材。
【請求項11】
前記Ni−Zn合金めっき層上に、クロム層若しくはクロメート層、及び/又は、シラン処理層で構成された防錆処理層が形成された請求項1〜10のいずれかに記載の表面処理金属材。
【請求項12】
前記金属材が、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレス、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、金、金合金、銀、銀合金、白金属、白金族合金、クロム、クロム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、タングステン、タングステン合金、モリブデン、モリブデン合金、鉛、鉛合金、タンタル、タンタル合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金、錫、錫合金、インジウム、インジウム合金、亜鉛、又は、亜鉛合金で形成されている請求項1〜11のいずれかに記載の表面処理金属材。
【請求項13】
前記金属材が、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレス、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、亜鉛、又は、亜鉛合金で形成されている請求項12に記載の表面処理金属材。
【請求項14】
前記金属材が、チタン銅、リン青銅、コルソン合金、丹銅、黄銅、洋白またはその他銅合金で形成されている請求項13に記載の表面処理金属材。
【請求項15】
前記金属材が、金属条、金属板、又は、金属箔である請求項1〜14のいずれかに記載の表面処理金属材。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載の表面処理金属材を用いたコネクタ。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれかに記載の表面処理金属材を用いた端子。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれかに記載の表面処理金属材と樹脂基板とを積層して構成した積層板。
【請求項19】
請求項18に記載の積層板を備えたシールドテープ又はシールド材。
【請求項20】
請求項18に記載の積層板を備えたプリント配線板。
【請求項21】
請求項18に記載の積層板を備えたプリント回路板。
【請求項22】
請求項1〜15のいずれかに記載の表面処理金属材を用いた金属加工部材。
【請求項23】
請求項1〜15のいずれかに記載の表面処理金属材を用いた電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理金属材及びそれを用いたコネクタ、端子、積層板、シールドテープ、シールド材、プリント配線板、プリント回路板、金属加工部材、及び、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材として銅箔を用い、その表面に特定のめっき処理を施すと、銅箔表面の色調が変化することが知られている。このようなめっき処理による銅箔表面の色調の調整に関する技術として、例えば、特許文献1では、片面に黒色化処理面を備える表面処理銅箔であって、銅箔層の片面に粗化処理層を設け、その粗化処理層上に硫酸ニッケルメッキ層を設け、その両面に亜鉛−ニッケル合金層を設けたことを特徴とする黒色化処理面を備える表面処理銅箔が開示されている。そして、このような構成により、黒色化処理面から粉落ちすることなく良好な黒色を持ち、且つ、通常の銅エッチングプロセスで加工可能な表面処理銅箔を提供することができると記載されている。
【0003】
また、特許文献2では、未処理電解銅箔の表面に黒色化処理面を備える表面処理銅箔であって、前記未処理電解銅箔は、三次元表面構造解析顕微鏡を用いて測定した表面粗さRaが45nm以下の表面を備え、当該表面に黒色化処理面を設けたことを特徴とした黒色化表面処理銅箔が開示されている。そして、このような構成により、プラズマディスプレイパネルの電磁波遮蔽に用いる導電性メッシュのエッチングが終了し、メッシュ回路間に露出した接着剤層の表面が曇りを生じる現象を改善できる黒色化表面処理銅箔を提供することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−98659号公報
【特許文献2】WO2007/007870号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電子機器内部には種々の電子部品が複雑に組み込まれるようになっており、例えば、電子部品の筐体に使用される金属板や金属箔表面の色分けが内部構造の美観や、部品の認識性の向上に役立っている。しかしながら、従来の表面処理では、色調が美観的にも、種々の部品との認識性の観点からも、満足できるものとは云えず、着色された樹脂等で金属を覆うことが多い。そのため導電性を有さない等、不都合になることがある。
そこで、本発明は、簡便な手段によって作製可能な、良好な美観性及び認識性を有する表面が形成された表面処理金属材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、金属材表面に、繊維状のNi−Zn合金めっき層を形成することで、簡便な手段によって、良好な美観性及び認識性を有する金属材表面を形成することができることを見出した。
【0007】
以上の知見を基礎として完成された本発明は一側面において、金属材表面にNi−Zn合金めっき層が形成された表面処理金属材であって、前記Ni−Zn合金めっき層が繊維状に形成されている表面処理金属材である。
【0008】
本発明の表面処理金属材は一実施形態において、x軸をNi−Zn合金めっき層におけるNi及びZnの合計付着量(μg/dm2)とし、y軸を前記Ni及びZnの合計付着量(μg/dm2)におけるNiの付着量(μg/dm2)を示すNi比率(%)として描かれたNi及びZn合計付着量−Ni比率グラフにおいて、
y=0.06875x−37.50000、
y=0.00069x+78.79570、
y=−0.00076x+21.43939、
y=−0.03462x+86.53846、
x=25000、
の5つの直線で囲まれた領域内にある。
【0009】
本発明の表面処理金属材は別の一実施形態において、前記Ni及びZn合計付着量−Ni比率グラフにおいて、
y=0.06875x−37.50000、
y=0.00069x+78.79570、
y=0.06500x−307.00000、
y=−0.00076x+21.43939、
y=−0.03462x+86.53846、
の5つの直線で囲まれた領域内にある。
【0010】
本発明の表面処理金属材は更に別の一実施形態において、前記Ni及びZn合計付着量−Ni比率グラフにおいて、
y=0.00069x+78.79570、
y=0.06500x−307.00000、
y=−0.00186x+73.60465、
y=0.00200x+35.00000、
x=25000、
の5つの直線で囲まれた領域内にある。
【0011】
本発明の表面処理金属材は更に別の一実施形態において、前記Ni及びZn合計付着量−Ni比率グラフにおいて、
y=0.06500x−307.00000、
y=−0.00186x+73.60465、
y=0.03375x−282.50000、
y=0.00049x+23.51220、
の4つの直線で囲まれた領域内にある。
【0012】
本発明の表面処理金属材は更に別の一実施形態において、前記Ni及びZn合計付着量−Ni比率グラフにおいて、
y=0.00200x+35.00000、
y=0.03375x−282.50000、
y=−0.00051x+32.65823、
x=25000、
の4つの直線で囲まれた領域内にある。
【0013】
本発明の表面処理金属材は更に別の一実施形態において、前記Ni及びZn合計付着量−Ni比率グラフにおいて、
y=0.06500x−307.00000、
y=0.00049x+23.51220、
y=−0.00051x+32.65823、
y=−0.00076x+21.43939、
x=25000、
の5つの直線で囲まれた領域内にある。
【0014】
本発明の表面処理金属材は更に別の一実施形態において、前記金属材表面とNi−Zn合金めっき層との間に、下地層及び/又は粗化処理層が形成されている。
【0015】
本発明の表面処理金属材は更に別の一実施形態において、60度光沢度が10〜80%である。
【0016】
本発明の表面処理金属材は更に別の一実施形態において、60度光沢度が10%未満である。
【0017】
本発明の表面処理金属材は更に別の一実施形態において、前記Ni−Zn合金めっき層上に、クロム層若しくはクロメート層、及び/又は、シラン処理層で構成された防錆処理層が形成されている。
【0018】
本発明の表面処理金属材は更に別の一実施形態において、前記金属材が、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレス、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、金、金合金、銀、銀合金、白金属、白金族合金、クロム、クロム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、タングステン、タングステン合金、モリブデン、モリブデン合金、鉛、鉛合金、タンタル、タンタル合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金、錫、錫合金、インジウム、インジウム合金、亜鉛、又は、亜鉛合金で形成されている。
【0019】
本発明の表面処理金属材は更に別の一実施形態において、前記金属材が、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレス、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、亜鉛、又は、亜鉛合金で形成されている。
【0020】
本発明の表面処理金属材は更に別の一実施形態において、前記金属材が、チタン銅、リン青銅、コルソン合金、丹銅、黄銅、洋白またはその他銅合金で形成されている。
【0021】
本発明の表面処理金属材は更に別の一実施形態において、前記金属材が、金属条、金属板、又は、金属箔である。
【0022】
本発明は別の一側面において、本発明の表面処理金属材を用いたコネクタである。
【0023】
本発明は更に別の一側面において、本発明の表面処理金属材を用いた端子である。
【0024】
本発明は更に別の一側面において、本発明の表面処理金属材と樹脂基板とを積層して構成した積層板である。
【0025】
本発明は更に別の一側面において、本発明の積層板を備えたシールドテープ又はシールド材である。
【0026】
本発明は更に別の一側面において、本発明の積層板を備えたプリント配線板である。
【0027】
本発明は更に別の一側面において、本発明の積層板を備えたプリント回路板である。
【0028】
本発明は更に別の一側面において、本発明の表面処理金属材を用いた金属加工部材である。
【0029】
本発明は更に別の一側面において、本発明の表面処理金属材を用いた電子機器である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、簡便な手段によって作製可能な、良好な美観性及び認識性を有する金属材表面が形成された表面処理金属材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】Ni及びZn合計付着量−Ni比率グラフである。
図2】実施例28のSEM表面観察写真である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
〔表面処理表面処理金属材の形態及び製造方法〕
本発明において使用する金属材としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレス、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、金、金合金、銀、銀合金、白金属、白金族合金、クロム、クロム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、亜鉛、又は、亜鉛合金等が挙げられ、さらに公知の金属材料も使用することができる。また、JIS規格やCDA等で規格されている金属材料も使用することができる。
【0033】
銅としては、典型的には、JIS H0500やJIS H3100に規定されるリン脱酸銅(JIS H3100 合金番号C1201、C1220、C1221)、無酸素銅(JIS H3100 合金番号C1020)及びタフピッチ銅(JIS H3100 合金番号C1100)、電解銅箔などの95質量%以上、より好ましくは99.90質量%以上の純度の銅が挙げられる。Sn、Ag、Au、Co、Cr、Fe、In、Ni、P、Si、Te、Ti、Zn、B、MnおよびZrの中の一種以上を合計で0.001〜4.0質量%含有する銅又は銅合金とすることもできる。
【0034】
銅合金としては、更に、チタン銅、リン青銅、コルソン合金、丹銅、黄銅、洋白、その他銅合金等が挙げられる。また、銅または銅合金としてはJIS H 3100〜JIS H3510、JIS H 5120、JIS H 5121、JIS C 2520〜JIS C 2801、JIS E 2101〜JIS E 2102に規格されている銅または銅合金も、本発明に用いることができる。なお、本明細書においては特に断らない限りは、金属の規格を示すために挙げたJIS規格は2001年度版のJIS規格を意味する。
【0035】
チタン銅は典型的には、Ti:0.5〜5.0質量%を含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる組成を有する。チタン銅は更に、Fe、Co、V、Nb、Mo、B、Ni、P、Zr、Mn、Zn、Si、Mg及びCrの中の1種類以上を合計で2.0質量%以下含有しても良い。
【0036】
リン青銅は典型的には、リン青銅とは銅を主成分としてSn及びこれよりも少ない質量のPを含有する銅合金のことを指す。一例として、りん青銅はSnを3.5〜11質量%、Pを0.03〜0.35質量%含有し、残部銅及び不可避的不純物からなる組成を有する。リン青銅は、Ni、Zn等の元素を合計で1.0質量%以下含有しても良い。
【0037】
コルソン合金は典型的にはSiと化合物を形成する元素(例えば、Ni、Co及びCrの何れか一種以上)が添加され、母相中に第二相粒子として析出する銅合金のことをいう。一例として、コルソン合金はNiを1.0〜4.0質量%、Siを0.2〜1.3質量%含有し、残部銅及び不可避的不純物から構成される組成を有する。別の一例として、コルソン合金はNiを1.0〜4.0質量%、Siを0.2〜1.3質量%、Crを0.03〜0.5質量%含有し、残部銅及び不可避的不純物から構成される組成を有する。更に別の一例として、コルソン合金はNiを1.0〜4.0質量%、Siを0.2〜1.3質量%、Coを0.5〜2.5質量%含有し、残部銅及び不可避的不純物から構成される組成を有する。更に別の一例として、コルソン合金はNiを1.0〜4.0質量%、Siを0.2〜1.3質量%、Coを0.5〜2.5質量%、Crを0.03〜0.5質量%含有し、残部銅及び不可避的不純物から構成される組成を有する。更に別の一例として、コルソン合金はSiを0.2〜1.3質量%、Coを0.5〜2.5質量%含有し、残部銅及び不可避的不純物から構成される組成を有する。コルソン合金には随意にその他の元素(例えば、Mg、Sn、B、Ti、Mn、Ag、P、Zn、As、Sb、Be、Zr、Al及びFe)が添加されてもよい。これらその他の元素は総計で2.0質量%程度まで添加するのが一般的である。例えば、更に別の一例として、コルソン合金はNiを1.0〜4.0質量%、Siを0.2〜1.3質量%、Snを0.01〜2.0質量%、Znを0.01〜2.0質量%含有し、残部銅及び不可避的不純物から構成される組成を有する。
【0038】
本発明において、丹銅とは、銅と亜鉛との合金であり亜鉛を1〜20質量%、より好ましくは亜鉛を1〜10質量%含有する銅合金のことをいう。また、丹銅は錫を0.1〜1.0質量%含んでも良い。
【0039】
本発明において、黄銅とは、銅と亜鉛との合金で、特に亜鉛を20質量%以上含有する銅合金のことをいう。亜鉛の上限は特には限定されないが60質量%以下、好ましくは45質量%以下、あるいは40質量%以下である。
【0040】
本発明において、洋白とは銅を主成分として、銅を60質量%から75質量%、ニッケルを8.5質量%から19.5質量%、亜鉛を10質量%から30質量%含有する銅合金のことをいう。
【0041】
本発明において、その他銅合金とはZn、Sn、Ni、Mg、Fe、Si、P、Co、Mn、Zr、CrおよびTiの内一種または二種以上を合計で8.0%以下含み、残部が不可避的不純物と銅からなる銅合金をいう。
【0042】
アルミニウム及びアルミニウム合金としては、例えばAlを40質量%以上含むあるいは、80質量%以上含む、あるいは99質量%以上含むものを使用することができる。例えば、JIS H 4000〜JIS H 4180、JIS H 5202、JIS H 5303あるいはJIS Z 3232〜JIS Z 3263に規格されているアルミニウム及びアルミニウム合金を用いることができる。例えば、JIS H 4000に規格されているアルミニウムの合金番号1085、1080、1070、1050、1100、1200、1N00、1N30に代表される、Al:99.00質量%以上のアルミニウム又はその合金等を用いることができる。
【0043】
ニッケル及びニッケル合金としては、例えばNiを40質量%以上含むあるいは、80質量%以上含む、あるいは99.0質量%以上含むものを使用することができる。例えば、JIS H 4541〜JIS H 4554、JIS H 5701またはJIS G 7604〜 JIS G 7605、JIS C 2531に規格されているニッケルまたはニッケル合金を用いることができる。また、例えば、JIS H4551に記載の合金番号NW2200、NW2201に代表される、Ni:99.0質量%以上のニッケル又はその合金等を用いることができる。
【0044】
鉄合金としては、例えばステンレス、軟鋼、炭素鋼、鉄ニッケル合金、鋼等を用いることができる。例えばJIS G 3101〜JIS G 7603、JIS C 2502〜JIS C 8380、JIS A 5504〜JIS A 6514またはJIS E 1101〜JIS E 5402−1に記載されている鉄または鉄合金を用いることができる。ステンレスは、SUS301、SUS 304、SUS310、SUS 316、SUS 430、SUS 631(いずれもJIS規格)などを用いることができる。軟鋼は、炭素が0.15質量%以下の軟鋼を用いることができ、JIS G3141に記載の軟鋼等を用いることができる。鉄ニッケル合金は、Niを35〜85質量%含み、残部がFe及び不可避不純物からなり、具体的には、JIS C2531に記載の鉄ニッケル合金等を用いることができる。
【0045】
亜鉛及び亜鉛合金としては、例えばZnを40質量%以上含むあるいは、80質量%以上含む、あるいは99.0質量%以上含むものを使用することができる。例えば、JIS H 2107 〜 JIS H 5301に記載されている亜鉛または亜鉛合金を使用することができる。
【0046】
鉛及び鉛合金としては、例えばPbを40質量%以上含むあるいは、80質量%以上含む、あるいは99.0質量%以上含むものを使用することができる。例えば、JIS H 4301 〜 JIS H 4312、またはJIS H 5601に規格されている鉛または鉛合金を用いることができる。
【0047】
マグネシウム及びマグネシウム合金としては、例えばMgを40質量%以上含むあるいは、80質量%以上含む、あるいは99.0質量%以上含むものを使用することができる。例えば、JIS H 4201〜JIS H 4204、JIS H 5203〜JIS H 5303、JIS H 6125に規格されているマグネシウム及びマグネシウム合金を用いることができる。
【0048】
タングステン及びタングステン合金としては、例えばWを40質量%以上含むあるいは、80質量%以上含む、あるいは99.0質量%以上含むものを使用することができる。例えば、JIS H 4463に規格されているタングステン及びタングステン合金を用いることができる。
【0049】
モリブデン及びモリブデン合金としては、例えばMoを40質量%以上含むあるいは、80質量%以上含む、あるいは99.0質量%以上含むものを使用することができる。
【0050】
チタン及びチタン合金としては、例えばTiを40質量%以上含むあるいは、80質量%以上含む、あるいは99.0質量%以上含むものを使用することができる。例えば、JIS H 4600〜JIS H 4675、JIS H 5801に規格されているチタン及びチタン合金を用いることができる。
【0051】
タンタル及びタンタル合金としては、例えばTaを40質量%以上含むあるいは、80質量%以上含む、あるいは99.0質量%以上含むものを使用することができる。例えば、JIS H 4701に規格されているタンタル及びタンタル合金を用いることができる。
【0052】
ジルコニウム及びジルコニウム合金としては、例えばZrを40質量%以上含むあるいは、80質量%以上含む、あるいは99.0質量%以上含むものを使用することができる。例えば、JIS H 4751に規格されているジルコニウム及びジルコニウム合金を用いることができる。
【0053】
錫及び錫合金としては、例えばSnを40質量%以上含むあるいは、80質量%以上含む、あるいは99.0質量%以上含むものを使用することができる。例えば、JIS H 5401に規格されている錫及び錫合金を用いることができる。
【0054】
インジウム及びインジウム合金としては、例えばInを40質量%以上含むあるいは、80質量%以上含む、あるいは99.0質量%以上含むものを使用することができる。
【0055】
クロム及びクロム合金としては、例えばCrを40質量%以上含むあるいは、80質量%以上含む、あるいは99.0質量%以上含むものを使用することができる。
【0056】
銀及び銀合金としては、例えばAgを40質量%以上含むあるいは、80質量%以上含む、あるいは99.0質量%以上含むものを使用することができる。
【0057】
金及び金合金としては、例えばAuを40質量%以上含むあるいは、80質量%以上含む、あるいは99.0質量%以上含むものを使用することができる。
【0058】
白金族とはルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金の総称である。白金族及び白金族合金としては、例えばPt、Os、Ru,Pd,Ir及びRhの元素群から選択される少なくとも1種以上の元素を40質量%以上含むあるいは、80質量%以上含む、あるいは99.0質量%以上含むものを使用することができる。
【0059】
本発明において使用する金属材の形状としては、特に制限はないが、最終的な電子部品の形状に加工されていてもよいし、部分的にプレス加工がなされた状態にあってもよい。形状加工が行われておらず、板や箔の形態にあってもよい。形状加工前にめっきを行う「前めっき」の場合は、プレス加工後に未処理部分が残存し、形状加工後にめっきを行う「後めっき」の場合は表面全体について美観を調整できるということに留意しながら、どの形状加工段階で表面処理を行うかを、美観を付与すべき部分との兼ね合いで適宜決定すればよい。
以下、金属材として銅箔を用いた場合を例に挙げ、これを本発明の表面処理銅箔として詳細に説明する。
【0060】
本発明で金属材として用いる銅箔は、電解銅箔或いは圧延銅箔いずれでもよい。また、当該銅箔は、樹脂基板と接着させて積層板を作製し、エッチングにより除去することで回路が形成された電子部品を作製することに適した銅箔であってもよい。当該銅箔の厚さについても特に制限はなく、例えば、用途別に適した厚さに適宜調節して用いることができる。例えば、1〜5000μm程度あるいは2〜1000μm程度とすることができ、特に回路を形成して使用する場合には35μm以下、シールドテープ用としては18μm以下といった薄いものから、電子機器内部のコネクタやシールド材、カバー等として用いる場合には70〜1000μmといった厚い材料にも適用することができ、特に上限の厚みを定めるわけではない。
【0061】
本発明の表面処理箔は、当該箔の表面にNi−Zn合金めっき層が形成されることで構成されている。Ni−Zn合金めっき層は、例えば電気めっき、無電解めっき及び浸漬めっきのような湿式めっき等により得ることができる。コストの観点から電気めっきが好ましい。当該Ni−Zn合金めっき層の付着量は25000μg/dm2を超えても色は発現するが、生産性の面から上限を設けた。
【0062】
本発明の表面処理銅箔は、x軸をNi−Zn合金めっき層におけるNi及びZnの合計付着量(μg/dm2)とし、y軸を前記Ni及びZnの合計付着量(μg/dm2)におけるNiの付着量(μg/dm2)を示すNi比率(%)として描かれたNi及びZn合計付着量−Ni比率グラフにおいて、
y=0.06875x−37.50000、
y=0.00069x+78.79570、
y=−0.00076x+21.43939、
y=−0.03462x+86.53846、
x=25000、
の5つの直線で囲まれた領域内にあるのが好ましい。
銅箔に所定の表面処理を行うことで、銅箔表面が変色することは知られているが、本発明では、表面処理としてNi−Zn合金めっき処理に限定し、さらに、このNi−Zn合金めっき層におけるNi及びZnの合計付着量(μg/dm2)と、Ni及びZnの合計付着量(μg/dm2)におけるNiの付着量(μg/dm2)を示すNi比率(%)とを制御している。このように、Ni−Zn合金めっき層におけるNi及びZnの合計付着量(μg/dm2)と、Ni比率(%)とを制御することで、単に銀色のめっきやヤケめっきによる黒色化ではなく、粉落ちの少ない赤茶色、灰色、黒、濃紺といった様々な色を発現させることができる。従って、簡便な手段によって、良好な美観性及び認識性を有する銅箔表面を形成することが可能となる。
【0063】
上記4つの直線で囲まれた領域内にある本発明の表面処理銅箔は、図1に示すように、赤茶色表面領域、黒色表面領域、濃紺色表面領域、灰色表面領域を有している。これらの表面領域は、いずれもNi−Zn合金めっき層におけるNi及びZnの合計付着量(μg/dm2)と、Ni及びZnの合計付着量(μg/dm2)におけるNiの付着量(μg/dm2)を示すNi比率(%)とを制御することで、それぞれ良好な美観性及び認識性を有する表面となっている。
【0064】
赤茶色表面領域は、Ni及びZn合計付着量−Ni比率グラフにおいて、
y=0.06875x−37.50000、
y=0.00069x+78.79570、
y=0.06500x−307.00000、
y=−0.00076x+21.43939、
y=−0.03462x+86.53846、
の5つの直線で囲まれた領域である。当該赤茶色表面領域を形成する銅箔表面のめっき条件を以下に示す。
めっき浴組成:Zn3〜15g/L、Ni15〜60g/L
pH:3.5〜5.5
温度:25〜55℃
電流密度Dk:0.2〜3.0A/dm2
めっき時間:1.2〜75秒
【0065】
黒色表面領域は、Ni及びZn合計付着量−Ni比率グラフにおいて、
y=0.06500x−307.00000、
y=−0.00186x+73.60465、
y=0.03375x−282.50000、
y=0.00049x+23.51220、
の4つの直線で囲まれた領域である。当該黒色表面領域を形成する銅箔表面のめっき条件を以下に示す。
めっき浴組成:Zn3〜15g/L、Ni15〜60g/L
pH:3.5〜5.5
温度:25〜55℃
電流密度Dk:0.2〜3.0A/dm2
めっき時間:4〜150秒
【0066】
濃紺色表面領域は、Ni及びZn合計付着量−Ni比率グラフにおいて、
y=0.00200x+35.00000、
y=0.03375x−282.50000、
y=−0.00051x+32.65823、
x=25000、
の4つの直線で囲まれた領域である。当該濃紺色表面領域を形成する銅箔表面のめっき条件を以下に示す。
めっき浴組成:Zn3〜15g/L、Ni15〜60g/L
pH:3.5〜5.5
温度:25〜55℃
電流密度Dk:0.2〜3.0A/dm2
めっき時間:8〜400秒
【0067】
灰色表面領域は、図1のグラフにおける上部領域と下部領域とがある。上部灰色表面領域は、Ni及びZn合計付着量−Ni比率グラフにおいて、
y=0.00069x+78.79570、
y=0.06500x−307.00000、
y=−0.00186x+73.60465、
y=0.00200x+35.00000、
x=25000、
の5つの直線で囲まれた領域である。当該上部灰色表面領域を形成する銅箔表面のめっき条件を以下に示す。
めっき浴組成:Zn3〜15g/L、Ni15〜60g/L
pH:3.5〜5.5
温度:25〜55℃
電流密度Dk:0.2〜3.0A/dm2
めっき時間:8〜400秒
【0068】
下部灰色表面領域は、Ni及びZn合計付着量−Ni比率グラフにおいて、
y=0.06500x−307.00000、
y=0.00049x+23.51220、
y=−0.00051x+32.65823、
y=−0.00076x+21.43939、
x=25000、
の5つの直線で囲まれた領域である。当該下部灰色表面領域を形成する銅箔表面のめっき条件を以下に示す。
めっき浴組成:Zn3〜15g/L、Ni15〜60g/L
pH:3.5〜5.5
温度:25〜55℃
電流密度Dk:0.2〜3.0A/dm2
めっき時間:8〜400秒
【0069】
Ni−Zn合金めっき層は、図2に示すような繊維状に形成されている。このような構成によれば、簡便な手段によって、粉落ちが少なく光を良好に吸収するため、様々な色を発現する。従って、良好な美観性及び認識性を有する金属材表面が形成された表面処理金属材を提供する
【0070】
金属材と表面処理層との間には、Zn−Niめっきのめっきを阻害しない限り、下地層を設けてもよい。
【0071】
金属材と表面処理層との間には、粗化処理層やエッチング、研磨等による無光沢化加工、平滑めっき等による光沢化加工を設けてもよい。これらの加工によって、色味だけではなく、仕上がりの光沢度も容易に調整することが可能になる。光沢度が低い場合には、全体としてくすんだ色味となり、落ち着いた雰囲気を醸すという好ましい効果がある。また、光沢度が高い場合には、全体として光輝き、鮮やかで、爽やかな印象を観察者に与えるという好ましい効果がある。
【0072】
表面処理層上の最表層には、防錆効果を高めるために、さらに、クロム層若しくはクロメート層、及び/又は、シラン処理層で構成された防錆処理層を形成してもよい。
【0073】
本発明の表面処理金属材を樹脂基板に貼り合わせてシールドテープ又はシールド材等の積層板を製造することができる。また、必要であればさらに当該金属材を加工して回路を形成することにより、プリント配線板、プリント回路板等を製造することができる。樹脂基板としては、例えば、リジッドPWB用に紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂等を使用し、FPC用やテープ用としてポリエステルフィルムやポリイミドフィルム、液晶ポリマー(LCP)、PETフィルム等を使用する事ができる。
また、本発明の表面処理金属材は放熱板、構造板、シールド材、シールド板、補強材、カバー、筐体、ケース、箱などに使用して金属加工部材を作製することができる。また、本発明の表面処理金属材を当該放熱板、構造板、シールド材、シールド板、補強材、カバー、筐体、ケース、箱などに使用して作製した金属加工部材を電子機器に用いることができる。
【実施例】
【0074】
実施例1〜107、及び、比較例1〜24として、銅箔(JX日鉱日石金属製JIS H3100 合金番号C1100、厚み18μm)を準備した。これらの圧延銅箔の光沢度は170であった。次に、当該銅箔上に表1〜5の条件によって表面処理を行い、Ni−Zn合金めっき層を形成した。
【0075】
実施例108〜115として、それぞれ表6に記載の所定厚みを有する金属材を準備し、当該金属材上に表6の条件によって表面処理を行い、Ni−Zn合金めっき層を形成した。ここで、実施例110のステンレス等の不動態膜を形成してめっきを阻害する材料については、黒色Ni−Znめっき前に、塩酸60g/L、塩化ニッケル六水和物120g/L、温度20〜40℃、電流条件5〜10A、めっき時間10〜20秒でニッケルストライクめっきを下地膜として形成しておいてもよい。
【0076】
実施例116〜118として、それぞれ表7に記載の光沢度を有する圧延銅箔(厚み18μm)を準備した。次に、当該銅箔上に表7の条件によって表面処理を行い、Ni−Zn合金めっき層を形成した。
【0077】
実施例119〜122として、実施例1〜107で用いた圧延銅箔上に表7に記載の下地処理を行い、次に当該銅箔上に表7の条件によって表面処理を行い、Ni−Zn合金めっき層を形成した。
表7の下地処理において、「銅粗化」の処理としては、以下の(1)及び(2)を順に行うことで粗化粒子を形成した:
(1)Cu:10g/L、H2SO4:60g/L、温度:35℃、電流密度:50A/dm2、めっき時間:1.5秒
(2)Cu:23g/L、H2SO4:80g/L、温度:40℃、電流密度:8A/dm2、めっき時間:2.5秒
表7の下地処理において、「ダル加工」の処理としては、被めっき材の最終冷間圧延の圧延ロールに算術平均粗さRaの大きい圧延ロール(Raが0.20μm以上である圧延ロール)を用いて圧延を行うことを意味する。圧延ロールの研削時に当該粗さになるように調整すればよい。粗さの調整には公知の方法を用いることができる。当該圧延ロールを使用して圧延することで、被圧延材の表面粗さを調整し、光沢の少ない表面に仕上げることができる。
表7の下地処理において、「高光沢めっき」の処理としては、Cu:90g/L、H2SO4:80g/L、ポリエチレングリコール:20mg/L、ビス(3−スルフォプロピル)ジスルファイド2ナトリウム:50mg/L、ジアルキルアミノ基含有重合体混合物:100mg/L、温度:55℃、電流密度:2A/dm2、めっき時間:200秒のめっき処理を行った。
表7の下地処理において、「ソフトエッチング」の処理としては、H22:20g/L、H2SO4:160g/L、温度:40℃、浸漬時間:5分のエッチング処理を行った。
【0078】
上述のようにして作製した各サンプルについて、各種評価を下記の通り行った。
(1)金属箔表面の色差(ΔL、Δa、Δb、ΔE)の測定;
HunterLab社製色差計MiniScan XE Plusを使用して、金属箔表面の色差(ΔL、Δa、Δb、ΔE)を測定した。ここで、色差(ΔE)は、黒/白/赤/緑/黄/青を加味し、L*a*b表色系を用いて示される総合指標であり、ΔL:白黒、Δa:赤緑、Δb:黄青として、下記式で表される。
【数1】
【0079】
本発明において、金属箔表面の赤茶色表面領域は目安として、ΔLが−75〜−30、Δaが5〜20、Δbが0〜25である。
本発明において、金属箔表面の黒色表面領域は目安として、ΔLが−75〜−60、Δaが−2〜5、Δbが−2〜5である。
本発明において、金属箔表面の濃紺色表面領域は目安として、ΔLが−65〜−50、Δaが−3〜3、Δbが−10〜5である。
本発明において、金属箔表面の灰色表面領域は目安として、ΔLが−40〜65、Δaが−2〜5、Δbが−2〜5である。
なお、色差計によって色は数値化することが可能であるが、色の領域分けは個人によって感覚が異なるため、上記数値範囲はあくまでも目安であり、赤茶色の領域にある金属箔も黒く見えることは十分にあり得る。
【0080】
(2)光沢度;
JIS Z8741に準拠した日本電色工業株式会社製光沢度計ハンディーグロスメーターPG−1を使用し、入射角60度で測定した。
【0081】
(3)Ni及びZnの合計付着量(μg/dm2)及びNi比率(%);
金属箔表面のNi−Zn合金めっき層における、Ni及びZnの合計付着量(μg/dm2)、及び、Ni及びZnの合計付着量(μg/dm2)におけるNiの付着量(μg/dm2)を示すNi比率(%)をそれぞれ求めた。ここで、Ni付着量はサンプルを濃度20質量%の硝酸で溶解してICP発光分析によって測定し、Zn付着量はサンプルを濃度7質量%の塩酸にて溶解して、原子吸光法により定量分析を行うことで測定した。
【0082】
(4)金属箔表面形態;
金属箔表面に繊維状のめっきが形成されていたか否かを、SEM表面観察写真(日立社製S−4700で撮影、倍率10000倍)で観察した。
上記各試験の条件及び試験結果を表1〜6及び図1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【0087】
【表5】
【0088】
【表6】
【0089】
【表7】
【0090】
(評価結果)
実施例1〜122は、それぞれNi−Zn合金めっき層が繊維状に形成されており、それぞれ良好な美観性及び認識性を有する赤茶色表面、黒色表面、濃紺色表面、灰色表面を示した。
一方、比較例1〜24は、それぞれNi−Zn合金めっき層が繊維状に形成されておらず、銅色或いは銀色を示し、美観性及び認識性が実施例に比べると劣っていた。
図2に、実施例28のSEM表面観察写真(日立社製S−4700で撮影、倍率10000倍)を示す。このように、本発明においては、金属箔表面が繊維状にめっきされている。
図1
図2