【実施例】
【0034】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。
【0035】
〔実施例1〕
インジウム源として硝酸インジウムn水和物(In(NO
3)
3・nH
2O、関東化学社製、製品番号20298−08、純度99.9%以上)21.11gを、脱イオン水500.30gに混合してA液を調製した。
また、第1の沈殿剤として、アンモニア水(関東化学社製、特級28〜30%)9.15gを、脱イオン水233.70gに混合してB液を調製した。
そして、第2の沈殿剤として、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)水溶液(東京化成工業社製、製品番号T0964、濃度10%)330.75gを用い、C液とした。
【0036】
室温(25℃)でA液を攪拌しながら、B液をビュレットで5滴/秒の速度で約20分かけて加えた。滴下後の溶液のpHは7.3であった。引き続き、C液を5滴/秒の速度で添加した。C液添加後のpHは11.99であった。
【0037】
この懸濁液を室温(25℃)で40時間攪拌し熟成した。熟成後、得られた白色の沈殿物を濾過回収し、500mlのイオン交換水中で3分間攪拌後濾過する操作を3回繰り返して洗浄した。得られた固体を80℃で一晩乾燥させ未焼成の試料を得た。
【0038】
この試料を磁性皿に薄く広げ、1℃/minで700℃まで昇温後、5時間空気中で焼成し、酸化インジウム触媒を得た。
この触媒の比表面積は7.1m
2/gであった。なお、比表面積は、市販の装置(日本ベル社製、BELSORPmax)を用い、窒素吸着法で測定した(窒素吸着法については、小野嘉夫、鈴木勲、「吸着の科学と応用」、講談社サイエンティフィック、60頁(2003)を参照)。
【0039】
〔実施例2〕
硝酸インジウムn水和物を21.63g、脱イオン水を501.41gとした以外は、実施例1と同様にしてA液を調製した。
また、アンモニア水を9.16g、脱イオン水を231.03gとした以外は、実施例1と同様にしてB液を調製した。
そして、第2の沈殿剤として、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAOH)水溶液(東京化成工業社製、製品番号T0096、濃度10%)238.15gを用い、C液とした。
【0040】
室温(25℃)でA液を攪拌しながら、B液をビュレットで5滴/秒の速度で約20分かけて加えた。滴下後の溶液のpHは7.3であった。引き続き、C液を5滴/秒の速度で添加した。C液添加後のpHは12.07であった。
【0041】
この懸濁液を室温(25℃)で40時間攪拌し熟成した。熟成後、得られた白色の沈殿物を濾過回収し、500mlのイオン交換水中で3分間攪拌後濾過する操作を3回繰り返して洗浄した。得られた固体を80℃で一晩乾燥させ未焼成の試料を得た。
【0042】
この試料を磁性皿に薄く広げ、1℃/minで700℃まで昇温後、5時間空気中で焼成し、酸化インジウム触媒を得た。
この触媒の表面積は10.7m
2/gであった。
【0043】
〔実施例3〕
硝酸インジウムn水和物を21.23g、脱イオン水を500.90gとした以外は、実施例1と同様にしてA液を調製した。
また、アンモニア水を8.77g、脱イオン水を222.80gとした以外は、実施例1と同様にしてB液を調製した。
そして、第2の沈殿剤としてテトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAOH)水溶液(東京化成工業社製、製品番号T0096、濃度10%)402.04gを用い、C液とした。
【0044】
室温(25℃)でA液を攪拌しながら、B液をビュレットで5滴/秒の速度で約20分かけて加えた。滴下後の溶液のpHは7.3であった。引き続き、C液を5滴/秒の速度で添加した。C液添加後のpHは12.42であった。
【0045】
この懸濁液を室温(25℃)で40時間攪拌し熟成した。熟成後、得られた白色の沈殿物を濾過回収し、500mlのイオン交換水中で3分間攪拌後濾過する操作を3回繰り返して洗浄した。得られた固体を80℃で一晩乾燥させ未焼成の試料を得た。
【0046】
この試料を磁性皿に薄く広げ、1℃/minで700℃まで昇温後、5時間空気中で焼成し、酸化インジウム触媒を得た。
この触媒の表面積は12.8m
2/gであった。
【0047】
〔実施例4〕
硝酸インジウムn水和物を21.37g、脱イオン水を499.61gとした以外は、実施例1と同様にしてA液を調製した。
また、アンモニア水を8.89g、脱イオン水を222.39gとした以外は、実施例1と同様にしてB液を調製した。
そして、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)水溶液306.1gを用い、C液とした。
【0048】
室温(25℃)でA液を攪拌しながら、B液をビュレットで5滴/秒の速度で約20分かけて加えた。滴下後の溶液のpHは7.3であった。引き続き、C液を5滴/秒の速度で添加した。C液添加後のpHは11.26であった。
【0049】
この懸濁液を50℃で40時間攪拌し熟成した。熟成後、得られた白色の沈殿物を濾過回収し、500mlのイオン交換水中で3分間攪拌後濾過する操作を3回繰り返して洗浄した。得られた固体を80℃で一晩乾燥させ未焼成の試料を得た。
【0050】
この試料を磁性皿に薄く広げ、1℃/minで700℃まで昇温後、5時間空気中で焼成し、酸化インジウム触媒を得た(触媒No.N700−50℃)。
この触媒の表面積は10.6m
2/gであった。
【0051】
〔実施例5〕
硝酸インジウムn水和物を21.67g、脱イオン水を500.54gとした以外は、実施例1と同様にしてA液を調製した。
また、アンモニア水を8.98g、脱イオン水を311.34gとした以外は、実施例1と同様にしてB液を調製した。
そして、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)水溶液317.8gを用い、C液とした。
【0052】
室温(25℃)でA液を攪拌しながら、B液をビュレットで5滴/秒の速度で約20分かけて加えた。滴下後の溶液のpHは7.3であった。引き続き、C液を5滴/秒の速度で添加した。C液添加後のpHは11.31であった。
【0053】
この懸濁液を80℃で40時間攪拌し熟成した。熟成後、得られた白色の沈殿物を濾過回収し、500mlのイオン交換水中で3分間攪拌後濾過する操作を3回繰り返し洗浄した。得られた固体を80℃で一晩乾燥させ未焼成の試料を得た。
【0054】
この試料を磁性皿に薄く広げ、1℃/minで700℃まで昇温後、5時間空気中で焼成し、酸化インジウム触媒を得た。
この触媒の表面積は10.6m
2/gであった。
【0055】
〔比較例1〕
硝酸インジウムn水和物を21.33g、脱イオン水を500.37gとした以外は、実施例1と同様にしてA液を調製した。
また、アンモニア水を8.84g、脱イオン水を217.88gとした以外は、実施例1と同様にしてB液を調製した。
そして、第2の沈殿剤としてベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(BTMAOH)水溶液(東京化成工業製、製品番号B1070、濃度10%)261.65gを用い、C液とした。
【0056】
室温(25℃)でA液を攪拌しながら、B液をビュレットで5滴/秒の速度で約20分かけて加えた。滴下後の溶液のpHは7.3であった。引き続き、C液を5滴/秒の速度で添加した。C液添加後のpHは12.18であった。
【0057】
この懸濁液を室温(25℃)で40時間攪拌し熟成した。熟成後、得られた白色の沈殿物を濾過回収し、500mlのイオン交換水中で3分間攪拌後濾過する操作を3回繰り返し洗浄した。得られた固体を80℃で一晩乾燥させ未焼成の試料を得た。
【0058】
この試料を磁性皿に薄く広げ、1℃/minで700℃まで昇温後、5時間空気中で焼成し、酸化インジウム触媒を得た。
この触媒の表面積は11.6m
2/gであった。
【0059】
〔比較例2〕
硝酸インジウムn水和物を12.46g、脱イオン水を500.20gとした以外は、実施例1と同様にしてA液を調製した。
また、アンモニア水を9.20g、脱イオン水を230.10gとした以外は、実施例1と同様にしてB液を調製した。
そして、第2の沈殿剤としてエタノールアミン(EA)(東京化成工業社製、製品番号A0297、濃度99%以上)10.08gを用い、C液とした。
【0060】
室温(25℃)でA液を攪拌しながら、B液をビュレットで5滴/秒の速度で約20分かけて加えた。滴下後の溶液のpHは7.3であった。引き続き、C液を5滴/秒の速度で添加した。C液添加後のpHは9.65であった。
【0061】
この懸濁液を室温(25℃)で40時間攪拌し熟成した。熟成後、得られた白色の沈殿物を濾過回収し、500mlのイオン交換水中で3分間攪拌後濾過する操作を3回繰り返して洗浄した。得られた固体を80℃で一晩乾燥させ未焼成の試料を得た。
【0062】
この試料を磁性皿に薄く広げ、1℃/minで700℃まで昇温後、5時間空気中で焼成し、酸化インジウム触媒を得た。
この触媒の表面積は17.3m
2/gであった。
【0063】
〔比較例3〕
硝酸インジウムn水和物を21.16g、脱イオン水を500.39gとした以外は、実施例1と同様にしてA液を調製した。
また、沈殿剤として、アンモニア水(関東化学製特級28−30%)を23.21g、脱イオン水を311.15gに混合してB液を調製した。
【0064】
室温(25℃)でA液を攪拌しながら、B液をビュレットで5滴/秒の速度で約20分かけて加えた。この懸濁液を室温(25℃)で40時間攪拌し熟成した。B液を入れた直後のpHは8.55であり、40時間熟成後の懸濁液の最終pHは8.45であった。
熟成後、得られた白色の沈殿物を濾過回収し、500mlのイオン交換水中で3分間攪拌後濾過する操作を3回繰り返して洗浄した。得られた固体を80℃で一晩乾燥させ未焼成の試料を得た。
【0065】
この試料を磁性皿に薄く広げ、1℃/minで700℃まで昇温後、5時間空気中で焼成し、酸化インジウム触媒を得た。
この触媒の表面積は31.7m
2/gであった。
【0066】
〔エタノールの反応〕
実施例1〜3、比較例1および2で調製した触媒を用いて、エタノールの反応を行った。
石英製反応管に、それぞれの触媒(0.5g)を充填し、触媒充填部の温度を550℃に保持した。エタノールおよび希釈用の水蒸気(H
2O)、水素(H
2)および窒素(N
2)を、それぞれの分圧が、0.3、0.08、0.3、0.32となるように混合し、全ガス流量を12.8ml/min(25℃、1気圧換算)として、反応管に供給した。
【0067】
反応原料の供給を開始した後、所定時間ごとに、反応管出口のガスを、ガスクロマトグラフ装置で分析し、プロピレン収率を測定した。なお、プロピレン収率は、以下の式によって炭素収率に換算して算出した。
【0068】
プロピレン収率(%)=[(生成ガス中のプロピレン量(モル/min)×3)
/(エタノール供給量(モル/min)×2)]×100
【0069】
表1に、それぞれの触媒を使用した場合の、プロピレン収率を示した。
【0070】
【表1】
【0071】
表1の結果に示すように、実施例1〜実施例5では、長時間、高いプロピレン収率が得られた。一方、比較例1〜比較例3のように、式〈I)の化合物を含む第2の沈殿剤を用いない方法で調製した触媒では、より長時間の反応でプロピレン収率は急激に低下した。