前記回転位置の決定を、前記膜厚測定により得られたSOI膜厚の面内分布の最大値を示す領域と、前記予め求めた薄膜化工程での面内取り代分布の最大値を示す領域とが一致する位置に決定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のSOIウェーハの製造方法。
前記回転位置の決定を、前記膜厚測定により得られたSOI膜厚の面内分布の最小値を示す領域と、前記予め求めた薄膜化工程での面内取り代分布の最小値を示す領域とが一致する位置に決定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のSOIウェーハの製造方法。
前記回転位置の決定を、前記膜厚測定により得られたSOI膜厚の面内分布、及び前記予め求めた薄膜化工程での面内取り代分布をもとに、前記回転位置を所定の角度ずつ変えた場合の薄膜化工程後のSOI膜厚の面内分布をそれぞれ計算し、該計算した薄膜化工程後のSOI膜厚の面内最大値と面内最小値の差が最小となる位置に決定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のSOIウェーハの製造方法。
前記薄膜化工程前のSOI膜厚を測定する工程及びその後に行う前記SOIウェーハを回転させる工程を、同一の装置内で行うことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のSOIウェーハの製造方法。
前記SOI層の形成を、少なくとも、イオンの注入により形成された微小気泡層を有するボンドウェーハと支持基板となるベースウェーハとを接合する工程と、前記微小気泡層を境界として前記ボンドウェーハを剥離して前記ベースウェーハ上に薄膜を形成する工程とを有するイオン注入剥離法によって行うことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のSOIウェーハの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、薄膜化工程後のSOI層の面内膜厚均一性が良好なSOIウェーハを製造できるSOIウェーハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明では、SOI層が形成されたSOIウェーハのSOI膜厚を調整する薄膜化工程を有するSOIウェーハの製造方法において、
(A1)前記SOI層が形成されたSOIウェーハの前記薄膜化工程前のSOI膜厚を測定する工程、
(A2)前記(A1)工程の膜厚測定により得られたSOI膜厚の面内分布、及び予め求めた前記薄膜化工程での面内取り代分布に基づいて、前記薄膜化工程を行う際の前記SOIウェーハの回転位置を決定し、該回転位置になるように前記SOIウェーハを中心軸まわりに回転させる工程、及び
(A3)前記(A2)工程で回転させたSOIウェーハのSOI層を薄膜化する工程、
を含むSOIウェーハの製造方法を提供する。
【0009】
このようなSOIウェーハの製造方法であれば、SOI膜厚を調整する薄膜化工程後のSOI層の面内膜厚均一性が良好なSOIウェーハを製造することができる。
【0010】
また、本発明では、SOI層が形成されたSOIウェーハのSOI膜厚を調整する薄膜化工程を有するSOIウェーハの製造方法において、
(B0)酸化性ガス雰囲気下で熱処理を行って前記SOI層の表面に熱酸化膜を形成する工程、
(B1)前記(B0)工程で熱酸化膜が形成されたSOIウェーハのSOI膜厚を、前記熱酸化膜付きのまま測定する工程、
(B2)前記(B1)工程の膜厚測定により得られたSOI膜厚の面内分布、及び予め求めた前記薄膜化工程での面内取り代分布に基づいて、前記薄膜化工程を行う際の前記SOIウェーハの回転位置を決定し、該回転位置になるように前記SOIウェーハを中心軸まわりに回転させる工程、及び
(B3)前記(B2)工程で回転させたSOIウェーハのSOI層表面の熱酸化膜除去及び前記SOI層のエッチングを含むバッチ式洗浄によって、前記SOI層のエッチング量を前記(B1)工程で得られたSOI膜厚に応じて制御しながら、前記SOI層を薄膜化する工程、
を含むSOIウェーハの製造方法を提供する。
【0011】
このようなSOIウェーハの製造方法であれば、SOI膜厚を調整する薄膜化工程の前にSOI層表面に形成した熱酸化膜を除去し、エッチングによって膜厚を調整することで、薄膜化工程後のSOI層の面内膜厚均一性が良好なSOIウェーハを製造することができる。
【0012】
また、本発明では、SOI層が形成されたSOIウェーハのSOI膜厚を調整する第一と第二の薄膜化工程を有するSOIウェーハの製造方法において、
(C0)酸化性ガス雰囲気下で熱処理を行って前記SOI層の表面に熱酸化膜を形成する工程、
(C1)前記(C0)工程で熱酸化膜が形成されたSOIウェーハのSOI膜厚を、前記熱酸化膜付きのまま測定する工程、
(C2)前記(C1)工程の膜厚測定により得られたSOI膜厚の面内分布、及び予め求めた前記第一の薄膜化工程での面内取り代分布に基づいて、前記第一の薄膜化工程を行う際の前記SOIウェーハの回転位置を決定し、該回転位置になるように前記SOIウェーハを中心軸まわりに回転させる工程、
(C3)前記(C2)工程で回転させたSOIウェーハのSOI層表面の熱酸化膜除去及び前記SOI層のエッチングを含むバッチ式洗浄によって、前記SOI層のエッチング量を前記(C1)工程で得られたSOI膜厚に応じて制御しながら、前記SOI層を最終のターゲット値より厚くなるように薄膜化する第一の薄膜化工程、
(C4)前記第一の薄膜化工程後のSOIウェーハのSOI膜厚を測定する工程、
(C5)前記(C4)工程の膜厚測定により得られたSOI膜厚の面内分布、及び予め求めた前記第二の薄膜化工程での面内取り代分布に基づいて、前記第二の薄膜化工程を行う際の前記SOIウェーハの回転位置を決定し、該回転位置になるように前記SOIウェーハを中心軸まわりに回転させる工程、及び
(C6)前記(C5)工程で回転させたSOIウェーハのSOI層のエッチングを含む洗浄によって、前記SOI層のエッチング量を前記(C4)工程で得られたSOI膜厚に応じて制御しながら、前記SOI層を最終のターゲット値となるように薄膜化する第二の薄膜化工程、
を含むSOIウェーハの製造方法を提供する。
【0013】
このようなSOIウェーハの製造方法であれば、SOI膜厚を調整する薄膜化工程の前にSOI層表面に形成した熱酸化膜を除去する第一の薄膜化工程と、エッチングによって狙いの膜厚に調整する第二の薄膜化工程の2段階の薄膜化工程によって、薄膜化工程後のSOI層の面内膜厚均一性がより良好なSOIウェーハを製造することができる。
【0014】
またこのとき、前記(C6)工程の洗浄を、枚葉式洗浄で行うことが好ましい。
【0015】
第二の薄膜化工程を枚葉式洗浄で行うことで、薄膜化工程後のSOI層の膜厚の制御性を更に向上させてSOIウェーハを製造することができる。
【0016】
またこのとき、前記回転位置の決定を、前記膜厚測定により得られたSOI膜厚の面内分布の最大値を示す領域と、前記予め求めた薄膜化工程での面内取り代分布の最大値を示す領域とが一致する位置に決定することが好ましい。
【0017】
またこのとき、前記回転位置の決定を、前記膜厚測定により得られたSOI膜厚の面内分布の最小値を示す領域と、前記予め求めた薄膜化工程での面内取り代分布の最小値を示す領域とが一致する位置に決定することが好ましい。
【0018】
またこのとき、前記回転位置の決定を、前記膜厚測定により得られたSOI膜厚の面内分布、及び前記予め求めた薄膜化工程での面内取り代分布をもとに、前記回転位置を所定の角度ずつ変えた場合の薄膜化工程後のSOI膜厚の面内分布をそれぞれ計算し、該計算した薄膜化工程後のSOI膜厚の面内最大値と面内最小値の差が最小となる位置に決定することが好ましい。
【0019】
このような基準で決定した回転位置になるようにSOIウェーハを回転させて薄膜化工程を行うことで、より確実に薄膜化工程後のSOI層の面内膜厚均一性が良好なSOIウェーハを製造することができる。
【0020】
またこのとき、前記薄膜化工程前のSOI膜厚を測定する工程及びその後に行う前記SOIウェーハを回転させる工程を、同一の装置内で行うことが好ましい。
【0021】
このように同一装置内で行えば、工程を簡略化することができる。
【0022】
またこのとき、前記SOI層の形成を、少なくとも、イオンの注入により形成された微小気泡層を有するボンドウェーハと支持基板となるベースウェーハとを接合する工程と、前記微小気泡層を境界として前記ボンドウェーハを剥離して前記ベースウェーハ上に薄膜を形成する工程とを有するイオン注入剥離法によって行うことが好ましい。
【0023】
このように、本発明のSOIウェーハの製造方法のSOI層の形成には、イオン注入剥離法を好適に用いることができる。
【0024】
またこのとき、前記薄膜化工程を、SC1溶液に浸漬することによって行うことが好ましい。
【0025】
このように、本発明のSOIウェーハの製造方法の薄膜化工程には、SC1溶液を好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明のSOIウェーハの製造方法であれば、例えばSOI層表面に形成した熱酸化膜を除去してSOI層の薄膜化を行う方法や、熱酸化膜除去と膜厚調整の2段階の薄膜化工程によってSOI層の薄膜化を行う方法において、SOI層の膜厚を高精度に制御しながら、薄膜化工程後のSOI層の面内膜厚均一性が良好なSOIウェーハを製造することができる。従って、このような方法であれば、極めて高いSOI層膜厚均一性が要求されるFD−SOIウェーハの製造方法として好適である。また、SOI膜厚の面内分布が向上するため、狙いのSOI膜厚を有するSOIウェーハの製造歩留が向上し、結果として、プロセスのコストを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
上述のように、SOI膜厚を調整する薄膜化工程後のSOI層の面内膜厚均一性が良好なSOIウェーハを製造できるSOIウェーハの製造方法の開発が求められていた。
【0029】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、薄膜化工程前のSOI層の面内分布には偏りがあり、また薄膜化工程での面内取り代分布にも偏りがあるため、例えば、薄膜化工程前のSOI層の膜厚が薄い箇所が薄膜化工程での取り代の大きい箇所となってしまった場合に、薄膜化工程後のSOI層の面内膜厚均一性が悪化することを見出した。更に、本発明者らはこのことから、薄膜化工程前のSOI膜厚を測定し、測定したSOI膜厚の面内分布と予め求めた薄膜化工程での面内取り代分布に基づいて、薄膜化工程を行う際のSOIウェーハの回転位置を決定し、このような回転位置になるようにSOIウェーハを中心軸まわりに回転させた状態で薄膜化工程を行うことで、薄膜化工程後のSOI層の面内膜厚均一性を改善できることを見出し、本発明を完成させた。
【0030】
即ち、本発明は、SOI層が形成されたSOIウェーハのSOI膜厚を調整する薄膜化工程を有するSOIウェーハの製造方法において、
(A1)前記SOI層が形成されたSOIウェーハの前記薄膜化工程前のSOI膜厚を測定する工程、
(A2)前記(A1)工程の膜厚測定により得られたSOI膜厚の面内分布、及び予め求めた前記薄膜化工程での面内取り代分布に基づいて、前記薄膜化工程を行う際の前記SOIウェーハの回転位置を決定し、該回転位置になるように前記SOIウェーハを中心軸まわりに回転させる工程、及び
(A3)前記(A2)工程で回転させたSOIウェーハのSOI層を薄膜化する工程、
を含むSOIウェーハの製造方法である。
【0031】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
本発明のSOIウェーハの製造方法の一例について、
図1のフロー図を参照しながら説明する。
図1のSOIウェーハの製造方法では、まずウェーハにSOI層を形成し、次に薄膜化工程前のSOI膜厚を測定する(
図1(A1))。次に、(A1)工程の膜厚測定により得られたSOI膜厚の面内分布、及び予め求めた薄膜化工程での面内取り代分布に基づいて、薄膜化工程を行う際のSOIウェーハの回転位置を決定し、決定した回転位置になるようにSOIウェーハを中心軸まわりに回転させる(
図1(A2))。次に、(A2)工程で回転させたSOIウェーハのSOI層を薄膜化する(
図1(A3))。
【0033】
以下、各工程についてさらに詳しく説明する。
[SOI層の形成]
本発明において、SOI層の形成方法は特に限定されないが、例えば、イオンの注入により形成された微小気泡層を有するボンドウェーハと支持基板となるベースウェーハとを接合する工程と、微小気泡層を境界としてボンドウェーハを剥離してベースウェーハ上に薄膜を形成する工程とを有するイオン注入剥離法によって行うことが好ましい。イオン注入剥離法であれば、極薄で比較的面内膜厚分布の小さいSOI層が形成されたSOIウェーハが得られる。
【0034】
[(A1)薄膜化工程前のSOI膜厚測定]
(A1)工程では、SOI層が形成されたSOIウェーハのSOI膜厚を調整する薄膜化工程前のSOI膜厚を測定する。薄膜化工程前のSOI膜厚測定は、特に限定されず、公知の方法で行えばよい。
【0035】
[(A2)SOIウェーハの回転位置の決定及びSOIウェーハの回転]
(A2)工程では、(A1)工程の膜厚測定により得られたSOI膜厚の面内分布、及び予め求めた薄膜化工程での面内取り代分布に基づいて、薄膜化工程を行う際のSOIウェーハの回転位置を決定し、決定した回転位置になるようにSOIウェーハを中心軸まわりに回転させる。
【0036】
SOI膜厚を調整する薄膜化工程での面内取り代分布を予め求める際には、例えば実際に後工程である薄膜化工程で使用する薄膜化手段(例えば、バッチ式洗浄機や枚葉式洗浄機など)を用いて、SOI膜厚がターゲット値となるように薄膜化を行い、薄膜化後にSOI膜厚測定を行って取り代分布を求めればよい。
【0037】
薄膜化工程を行う際のSOIウェーハの回転位置の決定は、(A1)工程の膜厚測定により得られたSOI膜厚の面内分布、及び予め求めた薄膜化工程での面内取り代分布に基づいて行われる。上述のように、例えば、薄膜化工程前のSOI層の膜厚が薄い箇所が薄膜化工程での取り代の大きい箇所となってしまった場合に、薄膜化工程後のSOI層の面内膜厚均一性が悪化することから、回転位置は薄膜化工程前のSOI層の膜厚と薄膜化工程での取り代との差分のばらつきがウェーハ面内で小さくなるように決定すればよい。回転位置を決定する基準として、より具体的には、例えば以下の3つの基準を挙げることができる。
【0038】
(基準1)
膜厚測定により得られたSOI膜厚の面内分布の最大値を示す領域と、予め求めた薄膜化工程での面内取り代分布の最大値を示す領域とが一致する位置を回転位置に決定する。
(基準2)
膜厚測定により得られたSOI膜厚の面内分布の最小値を示す領域と、予め求めた薄膜化工程での面内取り代分布の最小値を示す領域とが一致する位置を回転位置に決定する。
(基準3)
膜厚測定により得られたSOI膜厚の面内分布、及び予め求めた薄膜化工程での面内取り代分布をもとに、回転位置を所定の角度ずつ変えた場合の薄膜化工程後のSOI膜厚の面内分布をそれぞれ計算し、該計算した薄膜化工程後のSOI膜厚の面内最大値と面内最小値の差が最小となる位置を回転位置に決定する。
【0039】
例えば上記のいずれかの基準で決定した回転角度になるようにSOIウェーハを回転させて薄膜化工程を行うことで、薄膜化工程起因のSOI膜厚の面内分布を改善、あるいは面内分布の悪化を最小化することができる。また、もちろん回転位置の決定基準はこれらに限定されるものではなく、薄膜化工程前のSOI層の膜厚と薄膜化工程での取り代との差分のばらつきがウェーハ面内で小さくなるような任意の基準で回転位置を決定すればよい。
【0040】
このとき、薄膜化工程前のSOI膜厚を測定する工程((A1)工程)及びその後に行うSOIウェーハを回転させる工程((A2)工程)を同一の装置内で行えば、工程が簡略化できるため好ましい。より具体的には、(A1)工程で使用したSOI膜厚測定装置内にアライメント用のウェーハ回転機構が付属している場合に、SOI膜厚測定直後のウェーハ回収時に、測定したSOI膜厚の面内分布と予め求めた薄膜化工程での面内取り代分布に基づいてウェーハの回転位置を決定し、決定した回転位置になるようにSOI膜厚測定装置内のウェーハ回転機構を用いてウェーハを回転させた後、薄膜化工程で使用する洗浄機の洗浄用キャリア内に回収すれば、SOI膜厚測定と薄膜化工程前のウェーハの回転を同一装置内で行うことができ、作業の簡略化が可能となる。
【0041】
[(A3)回転させたSOIウェーハのSOI層の薄膜化]
(A3)工程では、(A2)工程で回転させたSOIウェーハのSOI層を薄膜化する。SOI膜厚を調整するSOI層の薄膜化の方法としては、バッチ式洗浄機を用いた洗浄(エッチング)による薄膜化を適用することが効果的であるが、これに限定されることなく、所望の取り代などに応じて、枚葉式洗浄機を用いた洗浄(エッチング)、犠牲酸化処理(バッチ処理、枚葉処理)、ガス(HCl等)によるガスエッチング、ドライエッチング、ウェットエッチング、水素やアルゴン等の還元性雰囲気熱処理によるSOI層の減厚を伴う平坦化処理等の種々の薄膜化方法を適用することができる。
【0042】
また、薄膜化工程は、SOIウェーハをSC1溶液(NH
4OHとH
2O
2の混合水溶液)に浸漬することによって行うことが好ましい。
【0043】
バッチ式洗浄機とSC1溶液を用いた洗浄(エッチング)の場合、水槽内の上下でSiエッチングの面内取り代分布の偏りが生じやすく、水槽上部に浸漬された部分のエッチング取り代は、水槽下部で浸漬された部分のエッチング取り代よりも小さくなる傾向がある。その原因としては循環ラインで加熱した薬液が水槽内下部から供給されることや、液面からウェーハを出し入れするために、浸漬時間がウェーハ面内で異なりウェーハ下部ほど浸漬時間が長くなることなどによる。
【0044】
このことから、薄膜化工程をバッチ式洗浄機とSC1溶液を用いた洗浄(エッチング)で行う場合は、薄膜化工程前のSOI膜厚測定により得られたSOI膜厚の面内分布と、上述のエッチングの面内取り代分布の偏りに基づいて、バッチ式洗浄機による洗浄前に例えばSOI膜厚の薄い部分がバッチ式洗浄機の水槽内上側になるように回転位置を決め、予めバッチ式洗浄の前にウェーハを回転させて洗浄用キャリアに仕込んで洗浄を行えば、バッチ式洗浄機による薄膜化工程後のSOI膜厚の面内分布を薄膜化工程前に比べて改善、あるいは薄膜化工程後の面内分布の悪化を最小化することができる。
【0045】
また、バッチ式洗浄機での面内取り代分布を予め調べてデータベース化しておけば、薄膜化工程前のSOI膜厚測定の結果をもとに、バッチ内の各々のSOIウェーハの回転位置を決定し、各々のウェーハを決定した回転位置となるように回転させた後、洗浄用キャリアに仕込んで洗浄を行うことができるため、各ウェーハの面内分布を高精度で改善できるとともに更に工程を簡略化することができる。
【0046】
また、ウェーハ浸漬型の枚葉式洗浄機ではバッチ式と同様に水槽内の上下でSiエッチングの面内取り代分布の偏りが生じやすいため、薄膜化工程前のSOI膜厚測定により得られたSOI膜厚の面内分布と、上述のエッチングの面内取り代分布の偏りに基づいて、枚葉式洗浄機による薄膜化前にSOI膜厚の薄い部分が枚様式洗浄機の水槽内上側になるように回転位置を決め、予め枚葉式洗浄の前にウェーハを回転させて洗浄用キャリアに仕込んで洗浄を行えば、枚葉式洗浄機による薄膜化工程後のSOI膜厚の面内分布を薄膜化工程前に比べて改善、あるいは薄膜化工程後の面内分布の悪化を最小化することができる。
【0047】
一方、ウェーハを水平に保持し、上部配管より薬液を注水する薬液注水型の枚葉式洗浄機では、薄膜化工程中にウェーハを連続的に回転させる方法が用いられる。このため、薄膜化工程での面内取り代分布が同心円状となり、薄膜化工程前のウェーハを決定した回転位置となるように中心軸まわりに回転させても面内膜厚分布への影響は小さいが、薄膜化工程中のウェーハの連続回転が偏心している場合では面内取り代分布が同心円からずれるために、薄膜化工程前のウェーハを所望の回転位置に回転させることで、薄膜化工程後のSOI膜厚の面内分布を薄膜化工程前に比べて改善、あるいは薄膜化工程後の面内分布の悪化を最小化することができる。
【0048】
以下、
図2を参照しながら本発明のSOIウェーハの製造方法をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図2は、実際に
図1のフローでSOIウェーハを製造した場合の各段階のSOI膜厚の面内分布、及び予め求めた薄膜化工程での面内取り代分布の例を示しており、
図2(a)は薄膜化工程前のSOI膜厚の面内分布、
図2(b)は予め求めた薄膜化工程での面内取り代分布、
図2(c)はウェーハ回転後のSOI膜厚の面内分布、
図2(d)は薄膜化工程後のSOI膜厚の面内分布を示す。
【0049】
まず、ウェーハにSOI層を形成し、次に(A1)工程として、薄膜化工程前のSOI膜厚を測定して
図2(a)のようなSOI膜厚の面内分布を得る。例えば、
図2(a)では、SOI膜厚の平均値は16.7nm、面内膜厚分布(膜厚Range:膜厚の面内最大値−面内最小値)は0.59nmであり、7時半の測定位置(ウェーハ上端を0度として時計回りに225度の位置)で最もSOI膜厚が薄いことが分かる。
【0050】
次に、(A2)工程として、薄膜化工程を行う際のウェーハの回転位置を決定するが、その前にSC1溶液を用いたバッチ式洗浄機でSOI膜厚が12.0nmとなるまで薄膜化した際の面内取り代分布を予め測定し、
図2(b)のような薄膜化工程での面内取り代分布を求めておく。例えば、
図2(b)では、平均取り代は4.7nm、面内取り代分布(取り代Range:取り代の面内最大値−面内最小値)は0.18nmであり、洗浄用キャリア内の上側で取り代が最も少ないことが分かる。
【0051】
次に、(A1)工程で得られたSOI膜厚の面内分布(
図2(a))と、上述のようにして求めた薄膜化工程での面内取り代分布(
図2(b))に基づいて、バッチ式洗浄を行う際のウェーハの回転位置を決定する。このとき、回転位置は例えば上述のような基準に基づいて任意に決定することができるが、ここでは、最もSOI膜厚が薄い7時半の測定位置を、取り代が最も少ない洗浄用キャリア内の上側に合わせた状態でバッチ式洗浄を行う場合を例に挙げる。この場合、最もSOI膜厚が薄い7時半の測定位置が洗浄用キャリア内の上側(0時の位置)になるように、時計回りに135度回転させる(
図2(c))。このときのウェーハの回転は、上述のように、(A1)工程に使用したSOI膜厚測定装置内で行ってもよいし、SOI膜厚測定装置から取り出してから別途行ってもよい。
【0052】
次に、(A3)工程として、
図2(c)のように時計回りに135度回転させた状態のウェーハを洗浄用キャリアに移載し、SOI膜厚が12.0nmとなるまでSC1溶液を用いたバッチ式洗浄機による薄膜化を行う。
薄膜化工程後のSOI膜厚分布を測定すると、
図2(d)のようにSOI膜厚の平均値は12.0nm、面内膜厚分布(膜厚Range)は0.56nmとなっており、このことから
図1のようなフローで薄膜化工程を行うことで、薄膜化工程前に比べて面内膜厚分布を改善させることができ、薄膜化工程後の面内膜厚均一性が良好なSOIウェーハを製造できることが分かる。
【0053】
以上説明したように、本発明のSOIウェーハの製造方法であれば、SOI膜厚を調整する薄膜化工程後のSOI層の面内膜厚均一性が良好なSOIウェーハを製造することができる。
【0054】
また、本発明では、SOI層が形成されたSOIウェーハのSOI膜厚を調整する薄膜化工程を有するSOIウェーハの製造方法において、
(B0)酸化性ガス雰囲気下で熱処理を行って前記SOI層の表面に熱酸化膜を形成する工程、
(B1)前記(B0)工程で熱酸化膜が形成されたSOIウェーハのSOI膜厚を、前記熱酸化膜付きのまま測定する工程、
(B2)前記(B1)工程の膜厚測定により得られたSOI膜厚の面内分布、及び予め求めた前記薄膜化工程での面内取り代分布に基づいて、前記薄膜化工程を行う際の前記SOIウェーハの回転位置を決定し、該回転位置になるように前記SOIウェーハを中心軸まわりに回転させる工程、及び
(B3)前記(B2)工程で回転させたSOIウェーハのSOI層表面の熱酸化膜除去及び前記SOI層のエッチングを含むバッチ式洗浄によって、前記SOI層のエッチング量を前記(B1)工程で得られたSOI膜厚に応じて制御しながら、前記SOI層を薄膜化する工程、
を含むSOIウェーハの製造方法を提供する。
【0055】
このようなSOIウェーハの製造方法の一例について、
図3のフロー図を参照しながら説明する。
図3のSOIウェーハの製造方法では、まずウェーハにSOI層を形成し、次に酸化性ガス雰囲気下で熱処理を行ってSOI層の表面に熱酸化膜を形成する(
図3(B0))。次に、薄膜化工程前のSOI膜厚を、熱酸化膜付きのまま測定する(
図3(B1))。次に、(B1)工程の膜厚測定により得られたSOI膜厚の面内分布、及び予め求めた薄膜化工程での面内取り代分布に基づいて、薄膜化工程を行う際のSOIウェーハの回転位置を決定し、決定した回転位置になるようにSOIウェーハを中心軸まわりに回転させる(
図3(B2))。次に、(B2)工程で回転させたSOIウェーハのSOI層表面の熱酸化膜除去及びSOI層のエッチングを含むバッチ式洗浄によって、SOI層のエッチング量を(B1)工程で得られたSOI膜厚に応じて制御しながら、SOI層を薄膜化する(
図3(B3))。
【0056】
[(B0)熱酸化膜の形成]
本発明において、熱酸化膜の形成は酸化性ガス雰囲気下で熱処理を行う方法であれば特に限定されず、公知の方法で行うことができる。
【0057】
なお、SOI層の形成、(B1)工程、及び(B2)工程は、それぞれ上述のSOI層の形成、(A1)工程、及び(A2)工程と同様に行えばよい。
【0058】
[(B3)回転させたSOIウェーハのSOI層の薄膜化]
(B3)工程では、(B2)工程で回転させたSOIウェーハのSOI層表面の熱酸化膜除去及びSOI層のエッチングを含むバッチ式洗浄によって、SOI層のエッチング量を(B1)工程で得られたSOI膜厚(例えば、面内平均値)に応じて制御しながら、SOI層を薄膜化する。SOI層のエッチングを含むバッチ式洗浄による薄膜化の具体的な方法は、特に限定されないが、上述のバッチ式洗浄機とSC1溶液を用いた洗浄(エッチング)を適用することが好ましい。
【0059】
このようなSOIウェーハの製造方法であれば、薄膜化工程の前にSOI層表面に形成した熱酸化膜を除去し、エッチングによって膜厚を調整することで、薄膜化工程後のSOI層の面内膜厚均一性が良好なSOIウェーハを製造することができる。
【0060】
また、本発明では、SOI層が形成されたSOIウェーハのSOI膜厚を調整する第一と第二の薄膜化工程を有するSOIウェーハの製造方法において、
(C0)酸化性ガス雰囲気下で熱処理を行って前記SOI層の表面に熱酸化膜を形成する工程、
(C1)前記(C0)工程で熱酸化膜が形成されたSOIウェーハのSOI膜厚を、前記熱酸化膜付きのまま測定する工程、
(C2)前記(C1)工程の膜厚測定により得られたSOI膜厚の面内分布、及び予め求めた前記第一の薄膜化工程での面内取り代分布に基づいて、前記第一の薄膜化工程を行う際の前記SOIウェーハの回転位置を決定し、該回転位置になるように前記SOIウェーハを中心軸まわりに回転させる工程、
(C3)前記(C2)工程で回転させたSOIウェーハのSOI層表面の熱酸化膜除去及び前記SOI層のエッチングを含むバッチ式洗浄によって、前記SOI層のエッチング量を前記(C1)工程で得られたSOI膜厚に応じて制御しながら、前記SOI層を最終のターゲット値より厚くなるように薄膜化する第一の薄膜化工程、
(C4)前記第一の薄膜化工程後のSOIウェーハのSOI膜厚を測定する工程、
(C5)前記(C4)工程の膜厚測定により得られたSOI膜厚の面内分布、及び予め求めた前記第二の薄膜化工程での面内取り代分布に基づいて、前記第二の薄膜化工程を行う際の前記SOIウェーハの回転位置を決定し、該回転位置になるように前記SOIウェーハを中心軸まわりに回転させる工程、及び
(C6)前記(C5)工程で回転させたSOIウェーハのSOI層のエッチングを含む洗浄によって、前記SOI層のエッチング量を前記(C4)工程で得られたSOI膜厚に応じて制御しながら、前記SOI層を最終のターゲット値となるように薄膜化する第二の薄膜化工程、
を含むSOIウェーハの製造方法を提供する。
【0061】
このようなSOIウェーハの製造方法の一例について、
図4のフロー図を参照しながら説明する。
図4のSOIウェーハの製造方法では、まずウェーハにSOI層を形成し、次に酸化性ガス雰囲気下で熱処理を行ってSOI層の表面に熱酸化膜を形成する(
図4(C0))。次に、第一の薄膜化工程前のSOI膜厚を、熱酸化膜付きのまま測定する(
図4(C1))。次に、(C1)工程の膜厚測定により得られたSOI膜厚の面内分布、及び予め求めた第一の薄膜化工程での面内取り代分布に基づいて、第一の薄膜化工程を行う際のSOIウェーハの回転位置を決定し、決定した回転位置になるようにSOIウェーハを中心軸まわりに回転させる(
図4(C2))。次に、(C2)工程で回転させたSOIウェーハのSOI層表面の熱酸化膜除去及びSOI層のエッチングを含むバッチ式洗浄によって、SOI層のエッチング量を(C1)工程で得られたSOI膜厚に応じて制御しながら、SOI層を最終のターゲット値より厚くなるように薄膜化する(第一の薄膜化工程;
図4(C3))。次に、第一の薄膜化工程後のSOIウェーハのSOI膜厚を測定する(
図4(C4))。次に、(C4)工程の膜厚測定により得られたSOI膜厚の面内分布、及び予め求めた第二の薄膜化工程での面内取り代分布に基づいて、第二の薄膜化工程を行う際のSOIウェーハの回転位置を決定し、該回転位置になるようにSOIウェーハを中心軸まわりに回転させる(
図4(C5))。次に、(C5)工程で回転させたSOIウェーハのSOI層のエッチングを含む洗浄によって、SOI層のエッチング量を(C4)工程で得られたSOI膜厚に応じて制御しながら、SOI層を最終のターゲット値となるように薄膜化する(第二の薄膜化工程;
図4(C6))。
【0062】
なお、SOI層の形成、(C1)工程、及び(C2)工程は、それぞれ上述のSOI層の形成、(A1)工程、及び(A2)工程と同様に行えばよい。また、(C0)工程は、上述の(B0)工程と同様に行えばよい。
【0063】
[(C3)回転させたSOIウェーハのSOI層の薄膜化(第一の薄膜化工程)]
(C3)工程では、(C2)工程で回転させたSOIウェーハのSOI層表面の熱酸化膜除去及びSOI層のエッチングを含むバッチ式洗浄によって、SOI層のエッチング量を(C1)工程で得られたSOI膜厚(例えば、面内平均値)に応じて制御しながら、SOI層を最終のターゲット値より厚くなるように薄膜化する。(C3)工程は、上述の(B3)工程と同様にして行えばよいが、第一の薄膜化工程では最終のターゲット値より厚くなるように薄膜化し、後述の第二の薄膜化工程で最終のターゲット値となるように薄膜化する。
【0064】
[(C4)第一の薄膜化工程後のSOI膜厚測定]
(C4)工程では、第一の薄膜化工程後のSOIウェーハのSOI膜厚を測定する。(C4)工程は、上述の(A1)工程と同様に行えばよい。
【0065】
[(C5)SOIウェーハの回転位置の決定及びSOIウェーハの回転]
(C5)工程では、(C4)工程の膜厚測定により得られたSOI膜厚の面内分布、及び予め求めた第二の薄膜化工程での面内取り代分布に基づいて、第二の薄膜化工程を行う際のSOIウェーハの回転位置を決定し、該回転位置になるようにSOIウェーハを中心軸まわりに回転させる。(C5)工程は、上述の(A2)工程と同様に行えばよい。
【0066】
[(C6)回転させたSOIウェーハのSOI層の薄膜化(第二の薄膜化工程)]
(C6)工程では、(C5)工程で回転させたSOIウェーハのSOI層のエッチングを含む洗浄によって、SOI層のエッチング量を(C4)工程で得られたSOI膜厚(例えば、面内平均値)に応じて制御しながら、SOI層を最終のターゲット値となるように薄膜化する。なお、(C6)工程の洗浄は、上述の(A3)工程と同様にして行えばよく、特に枚葉式洗浄で行うことが好ましい。
【0067】
このようなSOIウェーハの製造方法であれば、薄膜化工程の前にSOI層表面に形成した熱酸化膜を除去する第一の薄膜化工程と、エッチングによって狙いの膜厚に調整する第二の薄膜化工程の2段階の薄膜化工程によって、薄膜化工程後のSOI層の面内膜厚均一性がより良好なSOIウェーハを製造することができる。
【0068】
なお、以上説明した本発明のSOIウェーハの製造方法は、スマートカット法やSIMOX(Separation by IMplanted Oxygen)法、rTCCP(room−Temerature Controlled Cleave Process)法といった種々のSOIウェーハ製造方法に適用でき、これらの方法においても、薄膜化工程前に薄膜化工程を行う際の回転位置を決定し、決定した回転位置になるようにSOIウェーハを回転させることで、薄膜化工程後のSOI層の面内膜厚均一性を改善させることができる。
【0069】
以上のように、本発明のSOIウェーハの製造方法であれば、例えばSOI層表面に形成した熱酸化膜を除去してSOI層の薄膜化を行う方法や、熱酸化膜除去と膜厚調整の2段階の薄膜化工程によってSOI層の薄膜化を行う方法において、SOI層の膜厚を高精度に制御しながら、薄膜化工程後のSOI層の面内膜厚均一性が良好なSOIウェーハを製造することができる。従って、このような方法であれば、極めて高いSOI層膜厚均一性が要求されるFD−SOIウェーハの製造方法として好適である。また、SOI膜厚の面内分布が向上するため、狙いのSOI膜厚を有するSOIウェーハの製造歩留が向上し、結果として、プロセスのコストを低減することができる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例では、SOI層の最終のターゲット値を12.0nmとし、第一と第二の薄膜化工程によって薄膜化を行った。
【0071】
(実施例1)
まず、イオン注入剥離法を用いて作製されたSOI膜厚150nmのSOIウェーハ(直径300mm)を50枚用意し、このSOIウェーハに対して表1に示す酸化条件で熱処理を行ってSOI層の表面に熱酸化膜を形成した。次に、エリプソメーターを用いて、熱酸化膜を形成したSOIウェーハのSOI層と熱酸化膜の膜厚を測定した。結果を表1に示す。
【0072】
次に、膜厚測定により得られたSOI膜厚の面内分布と、予め求めた第一の薄膜化工程での面内取り代分布に基づいて、SOI層の面内膜厚で最も薄い領域が第一の薄膜化工程を行う洗浄槽内の上側(即ち、取り代が最小となる領域)になるように、SOI膜厚測定後に移載機(SOI膜厚測定装置外)でウェーハを時計回りに135度回転させてから洗浄用キャリアに移載した。
【0073】
次に、第一の薄膜化工程として、複数のウェーハを1つのバッチとして同一カセットに纏めるバッチ式の洗浄機を用いて、表1に示す洗浄条件で、SOI膜厚が(最終のターゲット値より厚い)13.0nmになるようにバッチ式洗浄を行った(酸化膜除去洗浄)。なお、洗浄は15%HF溶液を用いた洗浄(100sec)と、SC1溶液(NH
4OH水溶液(29%):H
2O
2水溶液(30%):H
2O=1:1:5;液温76℃)を用いた洗浄(240sec)を組み合わせて行った。
その後、第一の薄膜化工程後のSOI膜厚の測定を行った。結果を表1に示す。
【0074】
次に、第一の薄膜化工程後のSOI膜厚測定により得られたSOI膜厚の面内分布と、予め求めた第二の薄膜化工程での面内取り代分布に基づいて、SOI層の面内膜厚で最も薄い領域が第二の薄膜化工程を行う洗浄槽内の上側(即ち、取り代が最小となる領域)になるように、SOI膜厚測定後に移載機(SOI膜厚測定装置外)でそれぞれのウェーハを回転させてから洗浄用キャリアに移載した。
【0075】
次に、第二の薄膜化工程として、バッチ式の洗浄機を用いて、表1に示す洗浄条件でSC1溶液を用いてバッチ式洗浄を行った(膜厚調整洗浄)。バッチ式の膜厚調整洗浄では、第一の薄膜化工程後のSOI膜厚測定結果に基づき、SOI膜厚の面内平均値が0.1nm毎にSOIウェーハを収容する洗浄用キャリアを分割し、キャリア毎に膜厚調整洗浄のSC1浸漬時間を変えてターゲット値(12.0nm)まで薄膜化を行った。なお、SC1は第一の薄膜化工程と同様のものを使用した。
【0076】
その後、第二の薄膜化工程後のSOI膜厚の測定を行った。更に、測定した第二の薄膜化工程後のSOI膜厚の面内分布からSOI層が12.0nm±0.5nmとなったウェーハの割合(歩留)を算出した。結果を表1に示す。
【0077】
(実施例2)
第一の薄膜化工程を行う前のSOIウェーハの回転、及び第二の薄膜化工程を行う前のSOIウェーハの回転を、別途ウェーハの回転工程を設けずSOI膜厚測定装置内のウェーハ回転機構で行う以外は実施例1と同様の操作を行い、SOI層の薄膜化を行った。なお、第一の薄膜化工程及び第二の薄膜化工程を行う前のSOIウェーハの回転では、実施例1と同様に、SOI層の面内膜厚で最も薄い領域が薄膜化工程を行う洗浄槽内の上側(即ち、取り代が最小となる領域)になるように回転させた。
実験条件、各段階でのSOI膜厚測定結果、及び算出した歩留を表1に示す。
【0078】
(実施例3)
第一の薄膜化工程を行う前のSOIウェーハの回転、及び第二の薄膜化工程を行う前のSOIウェーハの回転を、別途ウェーハの回転工程を設けずSOI膜厚測定装置内のウェーハ回転機構で行い、また第二の薄膜化工程をウェーハ浸漬型の枚葉式洗浄で行う以外は実施例1と同様の操作を行い、SOI層の薄膜化を行った。なお、第一の薄膜化工程及び第二の薄膜化工程を行う前のSOIウェーハの回転では、実施例1と同様に、SOI層の面内膜厚で最も薄い領域が薄膜化工程を行う洗浄槽内の上側(即ち、取り代が最小となる領域)になるように回転させた。
また、ウェーハ浸漬型の枚葉式洗浄では、第一の薄膜化工程後のSOI膜厚測定結果に基づき、SOI膜厚に応じてウェーハ毎にSC1浸漬時間を変えてターゲット値(12.0nm)まで薄膜化を行った。なお、SC1は第一の薄膜化工程と同様のものを使用した。
実験条件、各段階でのSOI膜厚測定結果、及び算出した歩留を表1に示す。
【0079】
(比較例1)
第一の薄膜化工程を行う前のSOIウェーハの回転、及び第二の薄膜化工程を行う前のSOIウェーハの回転を行わない以外は実施例1と同様の操作を行い、SOI層の薄膜化を行った。実験条件、各段階でのSOI膜厚測定結果、及び算出した歩留を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
表1に示されるように、第一の薄膜化工程(酸化膜除去洗浄)後のSOI膜厚を比較すると、第一の薄膜化工程の前にウェーハを回転させた実施例1〜3では、第一の薄膜化工程後の膜厚Rangeが0.64nmとなっており、ウェーハを回転させなかった比較例1(膜厚Range=0.75nm)と比べて、SOI層の膜厚Rangeが改善していた。
【0082】
また、第二の薄膜化工程(膜厚調整洗浄)後のSOI膜厚を比較すると、第二の薄膜化工程の前にウェーハを回転させた実施例1〜3では、第二の薄膜化工程後の膜厚Rangeが0.61nmとなっており、ウェーハを回転させなかった比較例1(膜厚Range=0.79nm)と比べて、SOI層の膜厚Rangeが改善していた。
また、膜厚Rangeが改善した結果、SOI膜厚の規格(12.0nm±0.5nm)に対する製造歩留が向上した。
【0083】
なお、膜厚Rangeや歩留については、SOI膜厚測定のウェーハ回収時にSOI膜厚測定装置内でウェーハを回転させる場合(実施例2)と、SOI膜厚測定後に別途ウェーハを回転させる場合(実施例1)で差は見られなかった。
【0084】
以上のことから、本発明のSOIウェーハの製造方法であれば、SOI膜厚を調整する薄膜化工程後のSOI層の面内膜厚均一性が良好なSOIウェーハを製造できることが明らかとなった。
【0085】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。