【実施例】
【0039】
以下に実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0040】
なお参考例において、低次酸化チタンの組成式TiO
xにおけるxの値は、低次酸化チタンを充分に乾燥した後、熱重量分析装置に入れ、大気中で5℃/分の昇温速度で1000℃まで昇温することで二酸化チタンに酸化し、かかる酸化に伴う質量増加から求めた。
低次酸化チタンの比表面積は、窒素ガスの吸着等温線を測定し、BET法で解析することにより求めた。具体的には、約0.1gの試料を入れたサンプル管を、減圧下、200℃、12時間乾燥させ、乾燥後の質量を測定した。次いで試料を比表面積計(日本ベル(株)製、BELSORP-miniII)に装着して液体窒素に浸漬し、冷却完了後、吸着ガスとして窒素を用いて吸着等温線を測定した。得られた吸着等温線をBET等温線に変換し、BET等温線の近似直線の傾きと質量から比表面積を算出した。
担持した金属の平均粒子径は透過型電子顕微鏡(TEM)による写真から求めた。具体的には、担持した20個の金属の粒子径を測定し、その平均を算出した。なお、粒子径は、写真における金属の形状が円形のものはその直径を粒子径とし、楕円形のものは短径と長径の平均値を粒子径とした。
【0041】
(参考例1)
反応器(幅150mm、奥行き70mm、高さ50mm)の底部にチタン金属(純度99%以上)の板状電極(幅15mm、長さ100mm、厚み1mm)を固定した。板状電極の上部0.5mmの位置にチタン金属(純度99%以上)の中空電極(外径6mm、内径4mm、長さ100mm)を設置した。板状電極の上部端面から少なくとも20mm上が液面になるように反応器に80℃の水をいれた。反応器を恒温バスに浸漬し、水温を80℃で保持した。あらかじめ80℃に予熱した水を反応器に20ml/分で供給し、一方、中空電極からは20ml/分(液線速15.9mm/分)で反応器内の水を吸引し、放電場の水を置換できるようにした。
電極間に320Vの矩形のパルス電圧を印加し、放電時間2マイクロ秒、放電間隔1024マイクロ秒、放電電流5Aでパルスプラズマ放電させた。放電開始後、中空電極から吸引した水に黒色粒子が含まれることを確認した。パルスプラズマ放電を2時間行い、得られた黒色粒子を含む水をろ過し、黒色粒子を回収した。
水70mlを入れた100mlビーカーに回収した黒色粒子を入れ、超音波分散器を用いて分散させた後、30分間静置し、沈殿した大きな粒子をデカンテーションで取り除いた。浮遊していた黒色粒子をろ過で回収し、60℃にて3時間熱風乾燥し、黒色粒子1.32gを得た。
得られた黒色粒子の熱重量分析を行ったところ、低次酸化チタン(組成式:TiOx(x=1.76)であることが確認できた。
図1に示すX線回折スペクトルでは、亜酸化チタンに特徴的なピークが観察された。得られた低次酸化チタンのTEM写真を
図2に示す。得られた低次酸化チタンは粒子径が5〜20nmであった。
図3に得られた低次酸化チタンの窒素ガスの吸着等温線を示す(縦軸は窒素の吸着量(標準状態(0℃、1atm)において吸着した量の窒素が占める体積(cm
3(STP)g
-1))、横軸は平衡圧力を飽和蒸気圧で割った相対圧(P/P
0)である)。この吸着等温線をBET法で解析した結果、比表面積は92m
2/gであった。
【0042】
(参考例2)
反応器(幅150mm、奥行き70mm、高さ50mm)の底部にチタン金属(純度99%以上)の板状電極(幅15mm、長さ100mm、厚み1mm)を固定した。板状電極の上部にチタン金属(純度99%以上)の中空電極(外径6mm、内径4mm、長さ100mm)を設置した。板状電極の上部端面から少なくとも20mm上が液面になるように反応器に25℃の水をいれた。反応器を恒温バスに浸漬し、水温を25℃で保持した。あらかじめ25℃に調整した水を、反応器に12ml/分で供給し、一方、中空電極からは12ml/分で反応器内の水を吸引し、放電場の水を置換できるようにした。
電極間に320Vの矩形のパルス電圧を印加し、放電時間1024マイクロ秒、放電間隔1024マイクロ秒、放電電流は5Aでパルスプラズマ放電させた。放電開始後、中空電極から吸引した水に黒色粒子が含まれることを確認した。パルスプラズマ放電を2時間行い、得られた黒色粒子を含む水をろ過し、黒色粒子を回収した。水70mlを入れた100mlビーカーに回収した黒色粒子を入れ、超音波分散器を用いて分散させた後、30分間静置し、沈殿した大きな粒子をデカンテーションで取り除いた。浮遊する黒色粒子をろ過で回収し、60℃にて3時間熱風乾燥し、黒色粒子1.67gを得た。
得られた黒色粒子の熱重量分析を行ったところ、低次酸化チタン(組成式:TiOx(x=1.88)であることが確認できた。
図4に示すX線回折スペクトルでは亜酸化チタンに特徴的なピークが観察された。
図5に得られた低次酸化チタンの窒素ガスの吸着等温線を示す(縦軸は窒素の吸着量(標準状態(0℃、1atm)において吸着した量の窒素が占める体積(cm
3(STP)g
-1))、横軸は平衡圧力を飽和蒸気圧で割った相対圧(P/P
0)である)。この吸着等温線をBET法で解析した結果、比表面積は60m
2/gであった。
【0043】
[実施例1]
(1) 塩化白金酸(2質量%水溶液)8mlおよび水82mlをガラス製の反応器に入れて混合した。次いで、水10ml中に超音波分散器を用いて分散させた低次酸化チタン(組成式TiOx(x=1.88))150mg(比表面積60m
2/g)を添加し撹拌した。この混合液にメタノール100mlを添加した後、ラバーヒーターを用いて70℃に加熱して3時間撹拌した。この反応液をろ過して、回収した粒子を水に分散させた後、ろ過する操作を数回行って洗浄した。次いで、熱風乾燥機にて60℃、1時間乾燥し、白金(Pt)担持低次酸化チタン(以下、「触媒1」と称する)を得た。
得られた触媒1のPt担持量を誘導結合プラズマ法ICP発光分析で測定した。10mgの触媒1を10mlの王水に添加しPtを溶解させ、この溶液をICP発光分析装置に導入し、溶液中のPt濃度を測定した。溶解させた触媒1の重量と得られたPt濃度の比から求めたPt担持量は30質量%であった。
触媒1のX線回折スペクトルを
図6に示す(縦軸は強度、横軸は2θである)。45°付近のPt由来のピークをシェラーの式に適用した結果、Ptの結晶子径は7.8nmであった。
図7に示した触媒1のTEMイメージから、担持されたPtの平均粒子径は5〜10nmであった。
(2) Pt重量が4mgになるように秤量した触媒1をヘキサノール10mlに添加し、これを氷浴で30分分散させた液をグラッシーカーボン上に10マイクロリットル滴下した。滴下後、室温で10時間乾燥、さらに10分間減圧乾燥した。乾燥後、0.1wt%ナフィオン―エタノール分散液7マイクロリットルを触媒の滴下位置に滴下した。これを室温で10分乾燥して電極(以下、「電極1」と称する)を得た。回転電極を用いたサイクリックボルタンメトリ(CV)法で、上記で得られた電極1の触媒活性を測定した。電解液として0.1mol/lの過塩素酸水溶液を用い、対極に白金線を、参照極に標準水素電極を用いて0.045〜1.2Vの範囲の電位を、0.05V/秒で走査した。CV法の測定結果を
図8に示す(縦軸は電流量、横軸は標準水素電極の電位に対する電極1の電位(以下、「相対電位」と称する)である)。0.045V〜0.4Vにおける水素脱着に起因するピーク面積から求めた電極1におけるPtの有効比表面積は2.1m
2/gであった。0.045V〜1Vの範囲で走査した酸素還元電流値の測定結果を
図9に示す(縦軸は電流量、横軸は相対電位である)。Ptの有効比表面積あたりの0.9Vにおける酸素還元電流値(比活性)が1.2mA/cm
2、触媒1の単位質量あたりの0.9Vにおける酸素還元電流値(質量活性)が0.026A/mgであった
【0044】
[実施例2]
(触媒の製造)
実施例1の(2)で得られた触媒1に対して70質量%のケッチェンブラックを混合した(以下「触媒2」と称する)。触媒1に代えて触媒2を使用した以外は、実施例1の(2)と同様に触媒活性を測定した。CV法の測定結果を
図10(縦軸は電流量、横軸は相対電位である)、酸素還元反応の測定結果を
図11(縦軸は電流量、横軸は相対電位である)に示す。Ptの有効比表面積は10.4m
2/g、比活性は1.4mA/cm
2、質量活性が0.15A/mgであった。炭素の添加で導電性が向上し、市販のPt50質量%担持炭素よりも高い活性を示した。
【0045】
[比較例1]
触媒1に代えてPt50質量%担持炭素(田中貴金属社製、比表面積800m
2/g)を使用した以外は実施例1の(2)と同様にして、燃料電池用の電極としての触媒活性を測定した。この結果、比活性は0.20mA/cm
2、質量活性は0.13A/mgであった。このことは、低次酸化チタンを担体として用いることで高い比活性が得られることを示している。
【0046】
[比較例2]
(1) 比表面積が0.3m
2/gであるATRAVERDA社製低次酸化チタン(組成式TiOx(x=1.75))を用い、実施例1の(1)と同様にしてPt担持低次酸化チタン(以下、「触媒3」と称する)を得た。
触媒3のPt担持量は誘導結合プラズマ法で確認したところ、30質量%であった。X線回折スペクトルを
図12に示す(縦軸は強度、横軸は2θである)。45°付近のPt由来のピークをシェラーの式に適用した結果、Ptの結晶子径は7.8nmであった。また
図13に示した触媒3のTEM写真から求めた、担持されたPtの平均粒子径は5〜10nmであった。
(2) 実施例1の(2)と同様の方法で触媒3の触媒活性を測定した。CV測定の結果を
図14(縦軸は電流量、横軸は相対電位である)、酸素還元反応の測定結果を
図15(縦軸は電流量、横軸は相対電位である)に示す。Ptの有効比表面積は1.0m
2/g、比活性は0.80mA/cm
2、質量活性は0.008A/mgであった。
【0047】
[比較例3]
(1) 100mlのフラスコにて、2.78gの硫酸チタンを水に溶解させて、24質量%の水溶液を調製したのち、29.5mlの水でさらに希釈した。該希釈した水溶液を入れたフラスコを、水を張った超音波噴霧器を備えたトレー内に設置し、フラスコに超音波を照射してフラスコ内の水溶液からミストを発生させた。上記フラスコ内にアルゴンガスを流し、上記ミストを熱プラズマ反応炉(日本電子製、HF-HS97019)内に導入した。プラズマの出力は0.6kWとし、プラズマ内を通過したミストをイオン交換水に通し、ミスト内の粉末を上記イオン交換水内に捕集した。粉末を捕集したイオン交換水をろ過して、粉末1.02gを得た。得られた粉末を水素中1100℃にて還元し、0.89gの固体を得た。得られた固体をX線構造解析し、構造式:Ti
4O
7(組成式:TiOx、x=1.75)で示される低次酸化チタンであることを確認した。得られた低次酸化チタン54.5mgをジフェニルエーテル2.5mlに入れ、超音波分散機にて30分間混合し、上記低次酸化チタンの分散液を調製した。
また、白金アセチルアセトナート50.6mg及びヘキサデカンジオール260mgをジフェニルエーテル10mlに入れ、110℃窒素気流中で30分間混合し、白金錯体を含む溶液を調製した。かかる溶液に界面活性剤として85mlのオレイン酸及び80mlのオレイルアミン酸を加え、窒素気流中で220℃にて30分間混合したのち、1mlの水素化トリエチルホウ素リチウムテトラヒドロフラン溶液をさらに加え、窒素気流中で270℃にて30分間混合し、白金微粒子の分散液を調製した。
得られた白金微粒子の分散液を200℃まで徐冷し、上記した低次酸化チタンの分散液を混合したのち、再び270℃まで昇温し、窒素気流中で30分間混合した。かかる混合液を室温にてろ過し、得られた粉末をエタノールで洗浄した。かかる粉末を60℃にて乾燥後、電気炉にて400℃にて加熱処理によって有機物を除去して、Pt担持低次酸化チタン(以下、「触媒4」と称する)を得た。
触媒4をTEM観察したところ、低次酸化チタンの一次粒径は60nm程度であり、15〜30μm程度の凝集径で凝集していた。また、白金の粒径は140nm程度であった。
(2) 実施例1の(2)と同様の方法で触媒4の触媒活性を測定した。Ptの有効比表面積は3.0m
2/g、比活性は0.079mA/cm
2、質量活性は0.0008A/mgであった。