【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により、何等制限されるものではない。
【0053】
パーム分別油の製造
[製造例1]
ヨウ素価45のパーム中融点部を60℃で完全に融解させた後、25℃まで冷却し、10時間結晶を析出させた。続いて結晶部分を除去し、パーム分別油Aを得た。(SSS:0.15%、P2O:50%、PPO/POP=0.19)
【0054】
[製造例2]
ヨウ素価45のパーム中融点部を60℃で完全に融解させた後、26℃まで冷却し、10時間結晶を析出させた。続いて結晶部分を除去し、パーム分別油Bを得た。(SSS:0.5%、P2O:48%、PPO/POP=0.17)
【0055】
[製造例3]
ヨウ素価45のパーム中融点部を60℃で完全に融解させた後、27℃まで冷却し、10時間結晶を析出させた。続いて結晶部分を除去し、パーム分別油Cを得た。(SSS:0.7%、P2O:45%、PPO/POP=0.13)
【0056】
[製造例4]
ヨウ素価45のパーム中融点部100質量部に対して50質量部のアセトンを加え、17℃で10時間結晶を析出させた。続いて結晶部分を取り出し、パーム分別油Dを得た。(SSS:1.2%、P2O:70%、PPO/POP=0.17)
【0057】
[製造例5]
ヨウ素価45のパーム中融点部を60℃で完全に融解させた後、23℃まで冷却し、10時間結晶を析出させた。続いて結晶部分を除去し、パーム分別油Eを得た。(SSS:0.1%未満、P2O:50%、PPO/POP=0.19)
【0058】
加工油脂の製造
<加工油脂aの製造>
パーム油(ヨウ素価48)65質量部とパーム油をヨウ素価1未満となるまで硬化したパーム極度硬化油脂35質量部を70℃にて混合溶解して得た油脂配合物を、Naメチラートを触媒としてランダムエステル交換反応を行い、常法により精製してエステル交換油脂a’を得た。
尚、上記エステル交換に用いる油脂配合物におけるS/Uの質量比は2.1、炭素数18の飽和脂肪酸/炭素数16の飽和脂肪酸(以下、St/Pともいう)の質量比は0.47であり、炭素数14以下の飽和脂肪酸含量は3質量%未満、炭素数20以上の飽和脂肪酸含量は0.5質量%未満であった。
このエステル交換油脂a’からアセトン分別により高融点部と液状部を除去し、得られた中融点部を常法により精製して、加工油脂aとした。
尚、得られた加工油脂aのトリ飽和トリグリセリド含有量は2.7質量%、トリ不飽和トリグリセリドとモノ飽和ジ不飽和トリグリセリドの合計した含有量は6.8質量%、炭素数14以下の飽和脂肪酸含量は3質量%未満、炭素数20以上の飽和脂肪酸含量は0.5質量%未満であった。
【0059】
<加工油脂bの製造>
油脂配合物におけるパーム油65質量部及びパーム極度硬化油35質量部を、パーム油55質量部とパーム極度硬化油脂45質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、エステル交換油脂b’を得た。
尚、上記エステル交換に用いる油脂配合物におけるS/Uの質量比は2.6であり、St/Pの質量比は0.58であり、炭素数14以下の飽和脂肪酸含量は3質量%未満、炭素数20以上の飽和脂肪酸含量は0.5質量%未満であった。
このエステル交換油脂b’からドライ分別により高融点部を除去し、得られた低融点部を常法により精製して、加工油脂bとした。
尚、得られた加工油脂bのトリ飽和トリグリセリド含有量は9.4質量%、トリ不飽和トリグリセリドとモノ飽和ジ不飽和トリグリセリドの合計した含有量は25.8質量%、炭素数14以下の飽和脂肪酸含量は3質量%未満、炭素数20以上の飽和脂肪酸含量は0.5質量%未満であった。
【0060】
<加工油脂cの製造>
パーム油(ヨウ素価48)を、パーム油:アセトン=1:2の質量比率で50℃にて混合溶解し、続いて25℃まで冷却した後、結晶部(ステアリン画分)を濾別して液状部を得た。該液状部から常法によりアセトンを除去し、続いて常法により精製してヨウ素価55のパーム軟部油を得た。このパーム軟部油を原料油脂とし、Naメチラートを触媒としてランダムエステル交換反応を行い、常法により精製して加工油脂cとした。
【0061】
<加工油脂dの製造>
パーム油(ヨウ素価48)60質量部とパーム油をヨウ素価1未満となるまで硬化したパーム極度硬化油脂40質量部を70℃にて混合溶解して得た油脂配合物を、Naメチラートを触媒としてランダムエステル交換反応を行い、常法により精製して加工油脂dとした。
【0062】
[実施例1]
上記パーム分別油A75質量部と加工油脂a25質量部を60℃で溶解・混合し、本発明のハードバターA1とした。
続いて、得られたハードバターA1を19質量部、カカオマス(油分含有量55質量%)8質量部、ココアバター(SSS含量:1質量%)13.6質量部、全脂粉乳(油分含有量25質量%)14質量部、砂糖45.3質量部、香料0.1質量部をホバートミキサーに投入し、ビーターを用いて中速で3分間混合し、さらに、ロール掛け、コンチングして、チョコレート生地を得た。これをテンパリング処理後、型に流し込み、冷却し、離型して本発明のソフトチョコレートA2を得た。(ソフトチョコレートA2の油分のSFC:20℃で47、25℃で31、30℃で9、ソフトチョコレートA2の油分に占めるSUSの割合:59%)
【0063】
得られた本発明のハードバターA1は20℃の恒温機で保管し、製造から1週間後、1ヵ月後、3ヵ月後のハードバターA1を10人のパネラーが口に含み、「噛み出し」「口どけ」について評価を行った。
評価は下記評価基準に従って行い、10人のパネラーの合計点を評価点数とし、結果を下記のようにして[表1]に示した。
41〜50点:◎+、31〜40点:◎、21〜30点:○、11〜20点:△、0〜10点:×
【0064】
<評価基準>
・噛み出し
5点 きわめて良好である。
3点 良好である。
1点 やや不良である。
0点 不良である。
・口どけ
5点 きわめて良好な口どけである。
3点 良好である。
1点 やや不良である。
0点 不良である。
【0065】
また、得られた本発明ソフトチョコレートA2を20℃の恒温機で保管し、製造から1週間後、1ヵ月後、3ヵ月後、6ヵ月後、12ヵ月後の「噛み出し」「口どけ」「ブルーム」について評価を行った。
【0066】
「噛み出し」「口どけ」については、10人のパネラーにより下記評価基準に従って官能評価をさせ、10人のパネラーの合計点を評価点数とし、結果を下記のようにして[表2]に示した。
41〜50点:◎+、31〜40点:◎、21〜30点:○、11〜20点:△、0〜10点:×
【0067】
「ブルーム」については、目視により下記評価基準でブルームの状態を観察し、評価を行った。結果を[表2]に示した。
【0068】
<評価基準>
・噛み出し
5点 きわめて良好である。
3点 良好である。
1点 やや不良である。
0点 不良である。
・口どけ
5点 きわめて良好な口どけである。
3点 良好である。
1点 やや不良である。
0点 不良である。
・ブルームの評価基準
−:ブルームが見られずツヤがある
±:ブルームは見られないがツヤがない
+:一部にブルームが見られる
++:激しいブルームが見られる
【0069】
[実施例2]
上記パーム分別油B80質量部と加工油脂b20質量部を60℃で溶解・混合し、本発明のハードバターB1とした。
続いて、ハードバターA1に代えてハードバターB1を19質量部とした以外、実施例1と同様にして、チョコレート生地を得た。これをテンパリング処理後、型に流し込み、冷却し、離型して本発明のソフトチョコレートB2を得た。(ソフトチョコレートB2の油分のSFC:20℃で49、25℃で33、30℃で10、ソフトチョコレートB2の油分に占めるSUSの割合:59%)
得られたハードバターB1及びソフトチョコレートB2について、実施例1と同様に評価し、[表1]及び[表2]に示した。
【0070】
[実施例3]
上記パーム分別油A90質量部と加工油脂a10質量部を60℃で溶解・混合し、本発明のハードバターC1とした。
続いて、ハードバターA1に代えてハードバターC1を19質量部とした以外、実施例1と同様にして、チョコレート生地を得た。これをテンパリング処理後、型に流し込み、冷却し、離型して本発明のソフトチョコレートC2を得た。(ソフトチョコレートC2の油分のSFC:20℃で45、25℃で29、30℃で7、ソフトチョコレートC2の油分に占めるSUSの割合:61%)
得られたハードバターC1及びソフトチョコレートC2について、実施例1と同様に評価し、[表1]及び[表2]に示した。
【0071】
[実施例4]
上記パーム分別油A98質量部とショ糖脂肪酸エステル(HLB1)2質量部を60℃で溶解・混合し、本発明のハードバターD1とした。
続いて、ハードバターA1に代えてハードバターD1を19質量部とした以外、実施例1と同様にして、チョコレート生地を得た。これをテンパリング処理後、型に流し込み、冷却し、離型して本発明のソフトチョコレートD2を得た。(ソフトチョコレートD2の油分のSFC:20℃で46、25℃で30、30℃で8、ソフトチョコレートD2の油分に占めるSUSの割合:62%)
得られたハードバターD1及びソフトチョコレートD2について、実施例1と同様に評価し、[表1]及び[表2]に示した。
【0072】
[実施例5]
上記パーム分別油A1を98質量部とポリグリセリン脂肪酸エステル2質量部を60℃で溶解・混合し、本発明のハードバターE1とした。
続いて、ハードバターA1に代えてハードバターE1を19質量部とした以外、実施例1と同様にして、チョコレート生地を得た。これをテンパリング処理後、型に流し込み、冷却し、離型して本発明のソフトチョコレートE2を得た。(ソフトチョコレートE2の油分のSFC:20℃で46、25℃で30、30℃で8、ソフトチョコレートE2の油分に占めるSUSの割合:62%)
得られたハードバターE1及びソフトチョコレートE2について、実施例1と同様に評価し、[表1]及び[表2]に示した。
【0073】
[実施例6]
上記パーム分別油A80質量部、加工油脂a18質量部、ショ糖脂肪酸エステル(HLB1)2質量部を60℃で溶解・混合し、本発明のハードバターF1とした。
続いて、ハードバターA1に代えてハードバターF1を19質量部とした以外、実施例1と同様にして、チョコレート生地を得た。これをテンパリング処理後、型に流し込み、冷却し、離型して本発明のソフトチョコレートF2を得た。(ソフトチョコレートF2の油分のSFC:20℃で46、25℃で30、30℃で8、ソフトチョコレートF2の油分に占めるSUSの割合:59%)
得られたハードバターF1及びソフトチョコレートF2について、実施例1と同様に評価し、[表1]及び[表2]に示した。
【0074】
[実施例7]
上記パーム分別油A84質量部、加工油脂a15質量部、ショ糖脂肪酸エステル(HLB1)1質量部を60℃で溶解・混合し、本発明のハードバターG1とした。
続いて、ハードバターA1に代えてハードバターG1を19質量部とした以外、実施例1と同様にして、チョコレート生地を得た。これをテンパリング処理後、型に流し込み、冷却し、離型して本発明のソフトチョコレートG2を得た。(ソフトチョコレートG2の油分のSFC:20℃で45、25℃で29、30℃で7、ソフトチョコレートG2の油分に占めるSUSの割合:60%)
得られたハードバターG1及びソフトチョコレートG2について、実施例1と同様に評価し、[表1]及び[表2]に示した。
【0075】
[実施例8]
上記パーム分別油B80質量部、加工油脂c20質量部を60℃で溶解・混合し、本発明のハードバターH1とした。
続いて、ハードバターA1に代えてハードバターH1を19質量部とした以外、実施例1と同様にして、チョコレート生地を得た。これをテンパリング処理後、型に流し込み、冷却し、離型して本発明のソフトチョコレートH2を得た。(ソフトチョコレートH2の油分のSFC:20℃で37、25℃で27、30℃で7、ソフトチョコレートH2の油分に占めるSUSの割合:58%)
得られたハードバターH1及びソフトチョコレートH2について、実施例1と同様に評価し、[表1]及び[表2]に示した。
【0076】
[実施例9]
上記パーム分別油B80質量部、加工油脂d20質量部を60℃で溶解・混合し、本発明のハードバターI1とした。
続いて、ハードバターA1に代えてハードバターI1を19質量部とした以外、実施例1と同様にして、チョコレート生地を得た。これをテンパリング処理後、型に流し込み、冷却し、離型して本発明のソフトチョコレートI2を得た。(ソフトチョコレートI2の油分のSFC:20℃で44、25℃で35、30℃で13、ソフトチョコレートI2の
油分に占めるSUSの割合:58%)
得られたハードバターI1及びソフトチョコレートI2について、実施例1と同様に評
価し、[表1]及び[表2]に示した。
【0077】
[実施例10]
上記パーム分別油C98質量部、ショ糖脂肪酸エステル(HLB1)2質量部を60℃で溶解・混合し、本発明のハードバターJ1とした。
続いて、ハードバターA1に代えてハードバターJ1を19質量部とした以外、実施例1と同様にして、チョコレート生地を得た。これをテンパリング処理後、型に流し込み、冷却し、離型して本発明のソフトチョコレートJ2を得た。(ソフトチョコレートJ2の油分のSFC:20℃で43、25℃で29、30℃で7、ソフトチョコレートJ2の油分に占めるSUSの割合:62%)
得られたハードバターJ1及びソフトチョコレートJ2について、実施例1と同様に評価し、[表1]及び[表2]に示した。
【0078】
[実施例11]
上記本発明のハードバターA1を27質量部、カカオマス(油分含有量55%)8質量部、ココアバター5.6質量部、全脂粉乳(油分含有量25%)14質量部、砂糖45.3質量部、香料0.1質量部をホバートミキサーに投入し、ビーターを用いて中速で3分間混合し、さらに、ロール掛け、コンチングして、チョコレート生地を得た。
これをテンパリング処理後、型に流し込み、冷却し、離型して本発明のソフトチョコレートK2を得た。(ソフトチョコレートK2の油分のSFC:20℃で44、25℃で28、30℃で6、ソフトチョコレートK2の油分に占めるSUSの割合:50%)
得られたソフトチョコレートK2について、実施例1と同様に評価し、[表2]に示した。
【0079】
[実施例12]
上記本発明のハードバターA1を27質量部、カカオマス(油分含有量55%)8質量部、ココアバター9質量部、脱脂粉乳(油分含有量1%)10.6質量部、砂糖45.3質量部、香料0.1質量部をホバートミキサーに投入し、ビーターを用いて中速で3分間混合し、さらに、ロール掛け、コンチングして、チョコレート生地を得た。
これをテンパリング処理後、型に流し込み、冷却し、離型して本発明のソフトチョコレートL2を得た。(ソフトチョコレートL2の油分のSFC:20℃で46、25℃で29、30℃で8、ソフトチョコレートL2の油分に占めるSUSの割合:58%)
得られたソフトチョコレートL2について、実施例1と同様に評価し、[表2]に示した。
【0080】
[実施例13]
上記パーム分別油A1を100質量部を本発明のハードバターM1とした。
続いて、ハードバターA1に代えてハードバターM1を19質量部とした以外、実施例1と同様にして、チョコレート生地を得た。これをテンパリング処理後、型に流し込み、冷却し、離型して本発明のソフトチョコレートM2を得た。(ソフトチョコレートM2の油分のSFC:20℃で41、25℃で27、30℃で5、ソフトチョコレートM2の油分に占めるSUSの割合:62%)
得られたハードバターM1及びソフトチョコレートM2について、実施例1と同様に評価し、[表1]及び[表2]に示した。
【0081】
[比較例1]
上記パーム分別油D1を100質量部を比較例であるハードバターN1とした。
続いて、ハードバターA1に代えてハードバターN1を19質量部とした以外、実施例1と同様にして、チョコレート生地を得た。これをテンパリング処理後、型に流し込み、冷却し、離型して比較例であるチョコレートN2を得た。(チョコレートN2の油分のSFC:20℃で71、25℃で59、30℃で20、チョコレートN2の油分に占めるSUSの割合:71%)
得られたハードバターN1及びチョコレートN2について、実施例1と同様に評価し、[表1]及び[表2]に示した。
【0082】
[比較例2]
パーム分別中融点部(SSS:1.6%、P2O:50%、PPO/POP=0.16)100質量部を比較例であるハードバターO1とした。
続いて、ハードバターA1に代えてハードバターO1を19質量部とした以外、実施例1と同様にして、チョコレート生地を得た。これをテンパリング処理後、型に流し込み、冷却し、離型して比較例であるソフトチョコレートO2を得た。(ソフトチョコレートO2の油分のSFC:20℃で50、25℃で36、30℃で14、ソフトチョコレートO2の油分に占めるSUSの割合:62%)
得られたハードバターO1及びソフトチョコレートO2について、実施例1と同様に評価し、[表1]及び[表2]に示した。
【0083】
[比較例3]
上記パーム分別油E100質量部を比較例であるハードバターP1とした。
続いて、ハードバターA1に代えてハードバターP1を19質量部とした以外、実施例1と同様にして、チョコレート生地を得た。これをテンパリング処理後、型に流し込み、冷却し、離型して比較例であるソフトチョコレートP2を得た。(ソフトチョコレートP2の油分のSFC:20℃で39、25℃で25、30℃で3、ソフトチョコレートP2の油分に占めるSUSの割合:62%)
得られたハードバターP1及びソフトチョコレートP2について、実施例1と同様に評価し、[表1]及び[表2]に示した。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】