【文献】
醤油麹で焼き肉のタレ レシピ・作り方,楽天レシピ[オンライン], 2012.09.04, [検索日 2016.09.26], インターネット<http:recipe.rakuten.co.jp/recipe/1400004372>
【文献】
塩麹の10倍うまい!「しょうゆ麹」のまとめ,NAVERまとめ[オンライン], 2012.09.01, [検索日 2016.09.26], インターネット<http://matome.naver.jp/odai/2134633195413846001>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
家庭で焼肉をする際に、焼いてもジューシーで食感が柔らかい焼肉が好まれている。そのために、蛋白分解酵素を含有するパパイヤやパイナップルを肉料理に添えることで肉類を柔らかくする方法はよく知られている。しかしながら、パパイヤやパイナップルを利用することは、これらの果実を調理する必要がある等手間がかかることや焼肉の風味の変質等がおこることから、生肉を漬け込むことで柔らかくすることができる肉用調味料の開発が求められている。このために、蛋白分解酵素を含有するパパイヤやパイナップルの果汁や精製されたプロテアーゼ、パパイン、ブロメライン等の蛋白分解酵素製剤を調味料等に含有させる方法、日本酒用の米麹等の麹や微生物由来のプロテアーゼ等を含有する発酵物を用いる方法が提案されている。
例えば、柔らかで風味に優れた肉類や野菜の漬物を得るために、米麹、α化米及び調味料等を配合した肉類や野菜を漬けるための漬け床が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この方法は、焼肉のように生肉を購入後短時間で食するような場合、肉を漬け床に漬ける手間と柔らかくなるまでの時間を要する。また、食品衛生上問題となるような雑菌が繁殖する懸念がある。
【0003】
一方、果実酒や日本酒のような酒類、あるいは醤油等の発酵調味料にパイナップル果汁等の蛋白分解酵素を含有する果汁を添加した肉軟化剤が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、蛋白分解酵素の活性を維持するためには、加熱殺菌することができないため、食品衛生上問題となるような雑菌の繁殖を防止するためチルドで流通させる必要がある等の問題がある。また、生肉にまぶすことで肉質を柔らかくすることができる蛋白分解酵素を含有させた粉末調味料が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、粉末調味料のため、焼肉にまぶして使用したとしても、焼肉とは異なる唐揚げ様のものとなってしまい、また、肉が柔らかくなるまでに時間を有するという欠点がある。
【0004】
また、食肉を、プロテアーゼ等の蛋白質分解酵素活性がある生(なま)醤油等に漬け込んで軟化・調味する方法(例えば、特許文献4参照)、あるいは、生醤油を含有させることで肉を柔らかくする焼肉用調味料が提案されている(例えば、特許文献5参照)。これらは、生醤油の中に僅かに残存する蛋白分解酵素に肉を柔らかくする効果を期待しているが、生醤油中のプロテアーゼの残存量は1ヶ月諸味の量と比較して、4ヶ月経過した諸味では1/10程度の活性しかない(特許文献6参照)ため、肉を柔らかくする効果を期待するためには、長時間漬け込む必要があり、焼肉等生肉を漬け込んでから短時間で食したいような場合には問題がある。
【0005】
焼肉用の生肉を漬け込むことで、焼肉の食感を柔らかく、ジューシーにするために、上記のように植物性の蛋白質分解酵素や精製された蛋白分解酵素等の利用も図られているが、このような蛋白質分解酵素を利用した場合も、加熱により酵素活性が失活するため加熱殺菌処理することができず、チルド等の流通形態をとることが必須となり、保存安定性に問題がある。
【0006】
【特許文献1】特公昭57−14132号公報
【特許文献2】特許第2939385号公報
【特許文献3】特開平5−252911号公報
【特許文献4】特開昭61−271964号公報
【特許文献5】特開昭50−160496号公報
【特許文献6】特許第5041276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
焼肉用の生肉を短時間漬け込むことで、食する際に焼いても食感が柔らかく、ジューシーな焼肉となる焼肉用の漬け込み用調味液であり、且つ、該調味液の保存安定性を保つために調味液を加熱殺菌しても、生の焼肉を短時間漬け込むことで食感が柔らかく、ジューシーな焼肉とすることができる醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、焼肉用の生肉を短時間漬け込んで使用する焼肉用調味液において、醤油こうじを水分6.6重量%の乾燥米麹換算として1〜13重量%配合した醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液とすることで、該調味液に焼肉用の生肉を10分間程度漬け込んでから、生肉を焼いて食した場合、非常に肉質が柔らかく、ジューシーな焼肉を提供できることを知った。また、本発明の醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液は、該調味液の保存安定性を高めるために加熱殺菌処理を行っても、蛋白質分解酵素や精製された蛋白分解酵素等を利用した調味液とは異なり、10分程度漬け込んだ生肉を焼肉として食した場合、柔らかく、ジューシーな焼肉を提供できる調味液であることを知った。
これらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の醤油こうじを含有する加熱殺菌済みの醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液である。
【0010】
(1)米麹に醤油又は醤油と水を加えて発酵又は熟成させた醤油こうじを含む醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液であって、水分含量6.6重量%に換算した前記米麹を1〜13重量%含有させたことを特徴とする醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液。
(2)醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液の粘度が、500〜7500cpである(1)記載の醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液。
(3)醤油こうじ含有量が、60重量%以下である(1)及び(2)記載の醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、焼肉用の生肉をホットプレート等で加熱調理する前に、該生肉を10分間程度漬け込むことによって、漬け込んだ生肉を焼いて食した際、非常に肉質が柔らかく、ジューシーな焼肉とすることができる醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液を得ることができる。また、本発明によれば、漬け込んだ生肉を柔らかく、ジューシーな焼肉とすることができる特徴を有したままで、該調味液に対して一般的な加熱殺菌処理を行うことができるため、保存安定性に優れた醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
続いて、本発明について、さらに詳細に説明する。
本発明の醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液とは、米麹に醤油又は醤油と水を加えて発酵又は熟成させて得られる醤油こうじを含有する調味料である。
【0013】
醤油こうじとは、醤油製造用の大豆及び麦、米等の穀類を蒸煮し、麹菌を接種培養したこうじ(しょうゆの日本農林規格平成十六年九月十三日農林水産省告第千七百三号)とは異なり、後述する米麹等を醤油単独、あるいは、醤油と水の混合物に添加して発酵又は熟成させて製造したものである。さらに、醤油こうじの甘味や塩味等の食味を整えるために、醤油と米麹を混合して発酵又は熟成させた後、食塩、米粉、甘味料、旨味調味料、あるいはガム類等の増粘剤を添加してもよい。また、醤油と米麹を混合してから食塩、米粉、甘味料、旨味調味料、あるいは増粘剤を配合して発酵又は熟成させてもよい。
【0014】
米麹は、アスペルギルス属に属する麹菌を米に接種培養させたものである。麹菌としては、Aspergillus oryzae、Aspergillus kawachii等を適宜選択して用いることができる。米の種類は特に限定されず、うるち米、もち米等を適宜選択して用いることができる。好適には、清酒の製造のために一般的に市販されているうるち米由来の米麹を用いることもできる。
【0015】
米麹は、水分含量によって生米麹又は乾燥米麹と区別されることがある。水分含量が10重量%以上のものを生米麹、水分含量が10重量%未満のものを乾燥米麹と呼んでいる。水分含量が10重量%を超える米麹は、食品衛生上問題がある雑菌が繁殖する等の保存安定性に乏しいという欠点があるため、乾燥米麹を用いることが好ましい。あるいは、生米麹に全体の水分含有量が10重量%未満となるよう乾燥米麹を配合して用いることが好ましい。
【0016】
醤油こうじに配合する米麹の量は、醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液に対し、米麹の水分含有量6.6重量%換算で1〜13重量%である。調味対象となる肉の種類や、目標とする風味によって、米麹の配合量は前記の範囲において適宜調整することができる。米麹の量が1重量%を下回る場合、肉を短期間で柔らかくすることができない。また、米麹の量が13重量%を上回る場合、醤油こうじの量に比して米麹の量が多すぎるため、充分に混合することができず、発酵又は熟成が充分に進まない。
【0017】
醤油は、例えば通常の濃口醤油、淡口醤油、溜醤油、再仕込醤油、または白醤油の製造法に従って調製された熟成諸味を圧搾濾過後火入れして得られた醤油を用いることができる。さらに、醤油としては、熟成諸味を圧搾濾過して得られた生揚げ醤油、この生揚げ醤油からマイクロフィルター、精密濾過膜等を使用して微生物をとり除いた醤油等の生醤油があげられる。生醤油は、醤油独特の醤油臭が弱く、醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液に添加した場合、焼肉用調味液に副原料として配合される香味野菜等の風味を際立たせることができる。
【0018】
上記工程を経て得た醤油こうじは、そのまま醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液として用いることができるが、上記の醤油こうじに、焼肉用の調味液に一般的に使用されている醤油又は生醤油、甘味料、酸味料、香辛料、野菜、果汁、増粘剤等の焼肉の調味液に使用されるその他の原料を適宜組み合わせて配合することができる。なお、本発明の醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液に配合する醤油こうじの配合量は、60重量%以下とすることが好ましい。該調味液に60重量%を超えて醤油こうじを配合した場合、醤油こうじの風味が強くなりすぎ、焼肉用のたれとしての風味が弱くなる。
【0019】
本発明の醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液に配合される野菜としては、玉ねぎ、長ネギ、にんにく、生姜等があげられるが、好適には、香味野菜が使用される。これらの野菜は、焼肉用調味液に一般的に使用される粒径10mm以下の大きさにおろしたあるいはミジン切りにした生野菜粒子として用いることができる。また、これらの野菜を乾燥した粒径0.5〜5mmの乾燥野菜粒子として単独で又は生野菜と併用して、焼肉用調味液の製造の際に適宜配合して用いることもできる。
【0020】
本発明の醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液に配合される増粘剤としては、該調味液の粘度を500〜7500cpに調製することができるものであればよく、具体的には、でん粉、アジピン酸架橋でん粉等の加工でん粉、及びキサンタンガム等のガム類を一種又は2種を併用して用いることができる。
【0021】
これらの原料を混合あるいは溶解した後、チューブヒーター、プレートヒーター機等の加熱装置により、加熱処理をした調味液を容器に充填、密封し、40℃以下に冷却して製品とすることができる(熱充填法)。また、温水槽、スチーム機あるいはレトルト機等の加熱装置により、容器に充填後、容器ごと加熱殺菌し(間接加熱法)、40℃以下に冷却して製品とすることができる。すなわち、本発明の醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液は、上記の熱充填法もしくは間接加熱法で製造された醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液であり、容器内で加熱殺菌してあることが特徴である。本発明において、醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液を加熱殺菌することは重要であって、加熱殺菌を行わない場合、原料由来もしくは製造工程中に混入した微生物を殺菌することができないため、保存安定性が悪くなり、食品衛生上工業製品としての安全性を担保できない。
【0022】
次に本発明について実施例をあげて具体的に説明するが、本発明の範囲をこれら実施例によって限定するものではない。
【実施例1】
【0023】
(醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液に配合する醤油こうじ量の配合量の検討)
(醤油こうじの調製)
本発明に使用する醤油こうじは、表1の配合で製造した。すなわち、容量5Lのステンレス製カップに実測した水分含量が6.6重量%である市販の乾燥米麹760g(コーセーフーズ社製)を入れ、粒子がほぼバラバラになるまで両手でもみあわせて固まっている部分をほぐした。次いで、ほぐした米麹を入れたステンレス製カップに市販の濃口生醤油1600g(キッコーマン食品社製)を注ぎ入れ、オタマを用いて10分間生醤油と米麹をよく攪拌混合した後、室温で1週間静置し、熟成させた。次いで、室温で1週間静置した後の米麹と生醤油の混合物に、水1436gを入れて希釈してから、φ86タービン型攪拌翼をセットしたスリーワンモーターBL600(新東科学社製)にて350rpmで攪拌しながら、食塩160g、米粉40g及び増粘剤4gを少量ずつ添加することで、本発明に用いる醤油こうじを製造した。
上記のようにして製造した醤油こうじ中に含有する米麹は、水分含量が6.6重量%の乾燥米麹換算として19重量%であった。
【0024】
【表1】
【0025】
(漬け込み調味液の調製)
本発明の醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液は、上記の醤油こうじに、醤油、砂糖、みりん、野菜や果物のペースト等が配合された漬け込み調味液を混合して製造することができる。
漬け込み調味液の調製は、容量2Lのステンレス製カップに、表2に記載の配合量で醤油、砂糖、みりん、酒を入れてφ86タービン型攪拌翼をセットしたスリーワンモーターBL600(新東科学社製)にて250rpmで混合攪拌し、よく溶解した。次いで、表2に記載の配合量でりんご、マンゴー、にんにく及び生姜の可食部をミキサーにかけてあらかじめ粉砕したおろし状のペーストを、醤油、砂糖、みりん、酒の混合液中に攪拌しながら加えた。次いで、該調味液を攪拌しながら90℃まで加熱し、水あめを加えてから、さらに、90℃で10分間加熱した。最後に、黒胡椒を加えた後、室温まで冷却し、水で1Lとなるように調整して、漬け込み調味液を得た。
【0026】
【表2】
【0027】
(醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液への醤油こうじの配合量による焼肉の破断強度及び官能検査への影響)
(醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液の製造)
上記に記載した醤油こうじを、漬け込み調味液に表3の配合量で混合した後、加工でん粉(アセチル化アジピン酸架橋でん粉、松谷化学社製)を加え、次いで、φ86タービン型攪拌翼をセットしたスリーワンモーターBL600(新東科学社製)にて350rpmで攪拌しながら90℃まで加熱し、さらに、液温を90℃で10分間保持後、70℃まで冷却してから、水で1000gとなるように調製した。次いで、該調味液を70℃で500mlのポリエチレンテレフタレート製の容器に500ml充填し、栓をした後、室温まで放冷して、容器に充填した醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液を得た。なお、該調味液の粘度が1500cp程度となるように加工でん粉の添加量は、適宜調整した。
【0028】
(醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液の粘度測定方法)
醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液の試料をB型粘度計測定用のガラス管に所定量採り、B型粘度計で、ローターNo.3を用いて回転数30rpm、品温25℃で測定した。なお、上記条件で、測定範囲外となった場合、ローターのみNo.4に変更して粘度を測定した。
【0029】
(焼肉の破断強度の測定に用いる焼肉)
厚さ約5mm、縦約8cm、横約3.5cmに切られた市販のアメリカ産牛カルビ肉約100gを直径18cmのステンレス製のボールに入れて、醤油こうじを配合した醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液を肉重量の20重量%になるように添加してから、牛カルビ肉全体に該調味液が満遍なく絡むように菜箸でよくあえた。次いで、牛カルビ肉を該調味液と共に10分間静置した後、200℃のホットプレートで両面をそれぞれ25秒間焼いてから室温で10分間放置後、該牛カルビ焼肉の破断強度を測定した。
【0030】
(焼肉の破断強度の測定)
醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液で漬け込んでから、200℃のホットプレートで両面をそれぞれ25秒間焼いて得られた焼肉の破断強度は、クリープメーター(レオメーター;山電社製)を用いて測定した。具体的には、得られた焼肉をP−9(W18×60度くさび)形プランジャーを用いて、試料台上昇速度1mm/secで破断することにより破断荷重を測定し、この破断荷重(gf)を硬さの指標である破断強度とした。破断強度は、7枚の牛カルビ焼肉に対してそれぞれ1回ずつ測定し、最大値と最小値を除いた5枚の牛カルビ焼肉の破断強度の平均値で示した。
【0031】
(醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液に漬け込んだ牛カルビ焼肉の柔らかさと焼肉用調味液の風味の評価)
醤油こうじの配合量を変えた醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液に、上記と同様に、市販の牛カルビ肉を漬け込んでから、200℃のホットプレートで両面をそれぞれ25秒間焼いてから室温で10分放置後牛カルビ焼肉を食し、牛カルビ焼肉の柔らかさを評価した。焼肉の柔らかさの評価は、醤油こうじを配合していない漬け込み調味液に漬け込んだ焼肉の柔らかさに対して、非常に柔らかい場合を○、柔らかい場合を△、変わらない場合を×とした。
【0032】
また、一般的に焼肉用調味液に焼肉用のたれとしての風味(香味野菜や香辛料の香りや味等の風味)があるかどうかは、焼肉をおいしく食する為に非常に重要である。したがって、醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液においても、焼肉用のたれとしての風味があることが重要であり、醤油こうじを含有させた後の醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液の焼肉用のたれとしての風味の強さを評価した。評価は焼肉用のたれの風味において、風味が非常に強い場合を◎、風味がある場合を○、風味が弱い場合を△、風味がない場合×とした。
結果を表3に示した。
【0033】
【表3】
【0034】
表3の試験例1から5の結果より、本発明の醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液に水分含量が6.6重量%の乾燥米麹として米麹を1〜13重量%含有させた場合、該調味液に牛カルビ肉を漬け込んでから、200℃のホットプレートで両面をそれぞれ25秒間焼いて得られた牛カルビ肉の破断強度が減少し、また、食感も柔らかくなっていることが判った。また、比較例2に示すように、醤油こうじを60重量%より多く配合すると、焼肉用の調味液としての風味が感じられなくなり、醤油こうじの風味が強く味噌に似た風味に近く、焼肉用の調味液とは異なるものであった。
【実施例2】
【0035】
(粘度が異なる醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液の肉の柔らかさに対する影響)
(粘度が異なる醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液の製造)
表4に示した配合で、醤油こうじ400gと漬け込み用調味液600g、及び、加工でん粉(アセチル化アジピン酸架橋でん粉、松谷化学社製)を加えた混合液を、φ86タービン型攪拌翼をセットしたスリーワンモーターBL600(新東科学社製)を用いて350rpmで攪拌しながら90℃まで加熱し、さらに、液温を90℃で10分間保持後、70℃まで冷却してから、水で1000gとなるように調製した。次いで、該調味液を70℃で500mlのポリエチレンテレフタレート製の容器に500ml充填し、栓をした後、室温まで放冷して、比較例3、比較例4の醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液を得た。次いで、比較例3、比較例4の醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液を適宜混合することで粘度の異なる試験例6から9の醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液を得た。なお、該調味液の粘度は、実施例1と同様の方法で測定した。
【0036】
(醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液の粘度が肉への絡みやすさ、焼肉の柔らかさ及び風味に及ぼす影響)
厚さ約5mm、縦約8cm、横約3.5cmに切られた市販のアメリカ産牛カルビ肉約100gを直径18cmのステンレス製のボールに入れて、醤油こうじを配合した醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液を肉重量の20重量%になるように添加してから、牛カルビ肉全体に該調味液が満遍なく絡むように菜箸でよくあえた。次いで、牛カルビ肉を該調味液と共に10分間静置した後、200℃のホットプレートで両面をそれぞれ25秒間焼いてから室温で10分間放置後、該牛カルビ焼肉の柔らかさと各調味液の牛肉への絡みやすさ及び風味(焼肉のたれらしさ)への影響を評価した。なお、絡みやすさの評価は、該調味液と牛カルビ肉を菜箸であえる時、牛カルビ肉全体に調味液を絡めるために必要とした時間が20秒未満の場合を○(絡みやすい)、20秒以上〜35秒未満を△(やや絡みにくい)、35秒以上の場合×(絡みにくい)とした。
結果を表4に示した。
【0037】
【表4】
【0038】
表4の試験例6から9の結果から、焼肉用の肉に容易に満遍なく絡めることができ、さらに、焼肉の食感を柔らかくし、また、焼肉用のたれとして風味がよい醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液を得るためには、該調味液の粘度を500〜7500cpの範囲に調製することが必要であることが判った。
【実施例3】
【0039】
(醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液の鶏ささみ肉の破断強度への影響)
実施例1及び2で用いた市販の牛カルビ肉に変えて、市販の鶏ささみ肉を用いて検討した。表5の配合割合の醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液を用いて、市販の鶏ささみ肉100gをステンレス製のボールに入れ、各調味液を20g加えて、鶏ささみ肉に調味液が満遍なく絡むよう菜箸でよくあえた。次に、10分間静置した後、180℃のホットプレートで蓋をしながら両面をそれぞれ90秒間ずつ焼いた。次いで、焼いた鶏ささみ肉を室温で60分間放置した後、幅約1.5cm間隔で肉を切ってから、破断強度の測定を実施例1と同様の方法で行った。なお、破断強度を測定する際の鶏ささみ肉の厚さは約4.5mmであった。また、同様に焼いた鶏ささみ肉を室温で10分間放置後、幅約1.5cm間隔で肉を切ってから官能評価(肉の柔らかさ)を実施した。
結果を表5に示した。
【0040】
【表5】
【0041】
表5の試験例10及び11に示すように、実施例1及び2で用いた市販の牛カルビ肉に変えて、市販の鶏ささみ肉を用いても、本発明の醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液に10分間漬け込むことで、焼肉が柔らかくなることが判った。
【実施例4】
【0042】
(米麹の配合量が多い醤油こうじを用いた醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液)
(米麹の配合量が多い醤油こうじの製造)
米麹の配合量が多い醤油こうじの製造は、容量5Lのステンレス製カップに実測した水分含量が26.5重量%であった市販生米麹2000g(坂倉味噌醤油社製)を入れ、米粒子がほぼバラバラになるまで両手でもみあわせて固まっている部分をほぐした。次いで、ほぐした米麹を入れたステンレス製カップに濃口醤油2340g(キッコーマン食品社製)を注ぎ入れた後、オタマを用いて10分間醤油と生米麹をよく攪拌混合した。該混合物を10日間室温で静置することで、米麹の配合量が多い醤油こうじを製造し、試験に用いるまで、冷蔵保管した。
上記のようにして製造した醤油こうじ中に含有する米麹は、水分含量が6.6重量%の乾燥米麹に換算すると36.3重量%であった。
【0043】
【表6】
【0044】
(米麹の配合量が多い醤油こうじを用いた醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液の焼肉の破断強度及び官能検査)
米麹の配合量が多い醤油こうじを含有する醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液を用いて、市販の牛カルビ肉を用いた焼肉の破断強度及び官能検査の影響を評価した。すなわち、醤油こうじを製造する際に配合する米麹として36.3重量%(水分含量が6.6重量%である乾燥米麹に換算)になるように醤油と米麹の混合液に配合して発酵又は熟成させた醤油こうじを用いて実施例1と同様に表7の配合で本発明の醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液を製造した後、実施例1と同様に破断強度を測定し、さらに、官能検査を行った。
結果を表7に示した。
【0045】
【表7】
【0046】
表7の試験例12及び13の結果から、醤油こうじの製造の際に米麹の配合量を多くした醤油こうじを用いた場合でも、醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液に含まれる米麹の量を1〜13重量%(水分含量が6.6重量%である乾燥米麹に換算)に調製することで、牛カルビ焼肉の柔らかさや風味が良好であることが判った。また、比較例7に示すように、醤油こうじを該調味液中に過剰に配合すると味噌様の臭いが強くなり焼肉用調味液としての風味が損なわれることが判った。
【実施例5】
【0047】
(醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液の安定性)
実施例1記載の米麹低含有醤油こうじ400g、漬け込み調味液600gに加工でん粉(アセチル化アジピン酸架橋でん粉、松谷化学社製)を10g加え、次いで、φ86タービン型攪拌翼をセットしたスリーワンモーターBL600(新東科学社製)にて350rpmで攪拌しながら90℃まで加熱し、さらに、液温を90℃で10分保持した後、室温まで冷却し、水で1000gとなるように調製した。次いで、65℃で5分の加熱殺菌処理を行った後、65℃で500mlのポリエチレンテレフタレート製の容器に500ml充填し、栓をした後、室温まで放冷した。次いで、30℃で1ヶ月間保存した後に、容器より醤油こうじ含有加熱済焼肉用調味液をとりだし、保存安定性の試験を行った。保存安定性は、BCP加プレートを使用した乳酸菌測定の公定法とPDA培地を用いた酵母数測定を用いて判定し、また、焼肉のたれらしさを評価した。さらに、該調味液に市販の牛カルビ肉を漬け込んでから、実施例1と同様の方法で焼肉調理をして、焼肉の柔らかさを評価した。
【0048】
その結果、本発明の醤油こうじ含有加熱殺菌済焼肉用調味液を1ヶ月間30℃で保存しても、酵母、乳酸菌は検出されず、焼肉のたれとして好ましい風味を保ち保存安定性に優れていることが判った。さらに、加熱殺菌しているにもかかわらず、該調味液に牛カルビ肉を漬け込んだ場合、10分程度漬け込むだけで、柔らかいジューシーな焼肉を調理できることが判った。