特許第6086670号(P6086670)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6086670
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】研磨装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20170220BHJP
   B24B 37/20 20120101ALI20170220BHJP
   B24B 53/017 20120101ALI20170220BHJP
【FI】
   H01L21/304 622R
   H01L21/304 622F
   B24B37/20
   B24B53/017 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-173618(P2012-173618)
(22)【出願日】2012年8月6日
(65)【公開番号】特開2014-33123(P2014-33123A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】早川 晋
【審査官】 内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−056615(JP,A)
【文献】 特開2004−358606(JP,A)
【文献】 特開昭63−318260(JP,A)
【文献】 特開2003−179017(JP,A)
【文献】 特開2002−254295(JP,A)
【文献】 特開2003−086551(JP,A)
【文献】 特開2000−153446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/20
B24B 53/017
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を研磨する研磨装置であって、
被加工物を回転可能に保持するチャックテーブルと、
該チャックテーブルに保持された被加工物を研磨する研磨パッドを有する研磨手段と、
少なくとも該研磨手段と該チャックテーブルとを制御して、第1所定研磨時間の間該研磨手段で被加工物を研磨して所望量を研磨除去する制御手段と、を具備し、
該制御手段は、
該研磨パッドを新品に交換した交換タイミングを記憶し、
該研磨パッドが新品に交換された直後、被加工物を研磨する前に、該新品の研磨パッドをドレスボードでドレスした後、研磨加工と同一の加工条件で第2所定時間のならし研磨を被加工物に施し、次いで、該第1所定研磨時間の間該研磨手段でならし研磨を実施した被加工物と同一の被加工物を研磨することを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
前記制御手段は、被加工物の種類と研磨パッドの種類に応じて必要なならし研磨時間を示す表を有する請求項1記載の研磨装置。
【請求項3】
前記研磨パッドは不織布又は発砲ウレタン樹脂から構成され、被加工物はシリコンウエーハから構成され、
前記ならし研磨時間は、10〜1200秒である請求項1又は2記載の研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の被加工物を研磨する研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されて表面に形成された半導体ウエーハは、研削装置によって裏面が研削されて所定の厚みに加工された後、ダイシング装置によって個々のデバイスに分割され、分割されたデバイスは携帯電話、パソコン等の各種電気機器に利用されている。
【0003】
研削装置によってウエーハの裏面を研削すると、裏面に研削痕が残存するとともに微細なクラックが形成され、ダイシング装置によってダイシングされたデバイスの抗折強度を低下させるという問題がある。
【0004】
そこで、例えば特開2011−206881号公報に開示されたような研磨装置を使用して、ウエーハの裏面を所定時間研磨することにより、研削痕及び微細なクラックを除去してデバイスの抗折強度を向上させることが行われている。
【0005】
しかし、新品の研磨パッドに交換した直後に研磨加工する被加工物では、所定時間研磨しただけでは通常より研磨除去量が少なくなり、所望量を研磨除去できない。これは、新品の研磨パッドでは、研磨面のコンディションが整っておらず、最適な研磨が遂行されないためと推測される。
【0006】
そこで、従来は、所定時間被加工物に研磨加工を施した後、被加工物の厚みを測定して除去量の不足分に応じてその都度追加で研磨加工を施すようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−206881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の方法のように、新品の研磨パッドに交換した直後に研磨加工する被加工物に対して、所定時間研磨した後、被加工物の厚みを測定して除去量の不足分に応じて再度追加で研磨加工するのでは非常に手間が掛かるうえ、作業効率が悪いという問題がある。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、新品に交換直後の研磨パッドでも所望量を研磨除去できる研磨装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると、被加工物を研磨する研磨装置であって、被加工物を回転可能に保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を研磨する研磨パッドを有する研磨手段と、少なくとも該研磨手段と該チャックテーブルとを制御して、第1所定研磨時間の間該研磨手段で被加工物を研磨して所望量を研磨除去する制御手段と、を具備し、該制御手段は、該研磨パッドを新品に交換した交換タイミングを記憶し、該研磨パッドが新品に交換された直後、被加工物を研磨する前に、該新品の研磨パッドをドレスボードでドレスした後、研磨加工と同一の加工条件で第2所定時間のならし研磨を被加工物に施し、次いで、該第1所定研磨時間の間該研磨手段でならし研磨を実施した被加工物と同一の被加工物を研磨することを特徴とする研磨装置が提供される。
【0011】
好ましくは、制御手段は、被加工物の種類と研磨パッドの種類に応じて必要なならし研磨時間を示す表を有している。
【発明の効果】
【0012】
本発明の研磨装置によると、研磨パッドを新品に交換した直後に加工する被加工物においては、被加工物の種類と研磨パッドの種類に応じて決定される第2所定時間のならし加工を実施した後、第1所定時間の間研磨加工が施されるため、除去量の不足分が生じる恐れを低減できる。よって、作業効率を悪化させる恐れを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明実施形態に係る研磨装置の斜視図である。
図2】半導体ウエーハの表面に表面保護テープを貼着する様子を示す斜視図である。
図3】被加工物の種類と研磨パッドの種類に応じて設定されるならし加工時間を示す表の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、本発明実施形態に係る研磨装置2の外観斜視図が示されている。4は研磨装置2のベースであり、ベース4の後方にはコラム6が立設されている。コラム6には、上下方向に伸びる一対のガイドレール8が固定されている。
【0015】
この一対のガイドレール8に沿って研磨ユニット(研磨手段)10が上下方向に移動可能に装着されている。研磨ユニット10は、スピンドルハウジング12と、スピンドルハウジング12を保持する支持部14を有しており、支持部14が一対のガイドレール8に沿って上下方向に移動する移動基台16に取り付けられている。
【0016】
研磨ユニット10は、スピンドルハウジング12中に回転可能に収容されたスピンドル18と、スピンドル18を回転駆動するモータ20と、スピンドル18の先端に固定されたヘッドマウント22と、ヘッドマウント22に着脱可能に装着された研磨ヘッド24とを含んでいる。
【0017】
研磨ヘッド24は、基台25と、基台25に接着された研磨パッド26とから構成される。研磨パッド26は、不織布又は発砲ウレタン樹脂から形成されている。研磨ヘッド24は、研磨液を供給せずに実施するドライポリッシュ、又は研磨液を供給しながら実施する化学的機械研磨(CMP)の両方に適用することができる。
【0018】
研磨装置2は、研磨ユニット10を一対の案内レール8に沿って上下方向に移動するボールねじ28とパルスモータ30とから構成される研磨ユニット送り機構32を備えている。パルスモータ30を駆動すると、ボールねじ28が回転し、移動基台16が上下方向に移動される。
【0019】
ベース4の上面には凹部4aが形成されており、この凹部4aにチャックテーブル機構34が配設されている。チャックテーブル機構34はチャックテーブル36を有しており、チャックテーブル36は図示しない移動機構によりウエーハ着脱位置Aと、研磨ユニット10に対向する研磨位置Bとの間でY軸方向に移動される。
【0020】
38,40は蛇腹である。ベース4の前方側には、研磨装置2のオペレータが研磨条件等を入力する操作パネル42が配設されている。
【0021】
図2を参照すると、半導体ウエーハ11の表面に保護テープ23を貼着する様子を示す斜視図が示されている。半導体ウエーハ11は、表面11aと裏面11bとを有しており、表面11aにIC,LSI等のデバイス15が格子状に形成された分割予定ライン(ストリート)13によって区画されて形成されている。
【0022】
半導体ウエーハ11は、複数のデバイス15が形成されたデバイス領域17と、デバイス領域17を囲繞する外周余剰領域19とその表面11aに有している。半導体ウエーハ11はシリコンから形成されており、21はシリコンの結晶方位を示すマークとしてのノッチである。
【0023】
研磨装置2による研磨加工に先立って、半導体ウエーハ11の裏面11bを研削して半導体ウエーハ11を所定の厚みに加工する裏面研削ステップが実施される。この裏面研削ステップを実施する前に、図2に示すように、半導体ウエーハ11の表面11aには表面11aに形成されたデバイス15を保護するための表面保護テープ23が貼着される。
【0024】
研削装置のチャックテーブルで表面保護テープ23側を吸引保持しながら研削装置の研削ホイールにより半導体ウエーハ11の裏面11bが研削されて、半導体ウエーハ11は所定の厚みに研削加工される。
【0025】
研削を実施すると、半導体ウエーハ11の裏面11bに微細なクラック等の研削歪が残存するため、この研削歪を除去して半導体ウエーハ11の抗折強度を向上するために研磨装置2を使用した研磨が実施される。
【0026】
以下、研磨装置2の作用について概略的に説明する。ウエーハ着脱位置Aに位置付けられたチャックテーブル36で研削済みのウエーハ11の表面保護テープ23側を吸引保持し、図示しない移動機構によりチャックテーブル36を研磨ユニット10に対抗する研磨位置Bに移動する。
【0027】
研磨位置Bでは、半導体ウエーハ11の裏面11bの全面を研磨パッド26の研磨面で覆った状態で、チャックテーブル36を所定速度で回転させるとともに、研磨パッド26をチャックテーブルと同一方向に異なる周速で回転させ、半導体ウエーハ11の研削済みの裏面11bを研磨する。所定時間研磨を実施すると、ウエーハ11の裏面11bの所望量を研磨により除去することができる。
【0028】
ウエーハ11の研磨を継続して実施すると、研磨パッド26が摩耗する。よって、研磨パッド26が所定量以上摩耗すると望ましい研磨加工が実施できないため、研磨ヘッド24を新品の研磨パッド26が装着された研磨ヘッド24に交換する。
【0029】
このように新品の研磨パッド26が装着された研磨ヘッド24に交換した場合には、チャックテーブル36でドレスボードを吸引保持し、ドレスボードで新品の研磨パッド26のドレスを実施する。
【0030】
このようなドレスを実施しても、新品の研磨パッド26では、研磨面のコンディションが整っていないため、最適な研磨を遂行することができない。よって、本発明の研磨装置では、所定時間の研磨加工を実施する前に、研磨加工と同一加工条件のならし加工を実施する。
【0031】
このならし加工時間は、研磨パッド26の種類と被加工物の種類に応じて変化するため、例えば図3に示すように、研磨パッドA〜Cと被加工物1〜5に応じて最適なならし加工時間を実験により求め、図3に示した表の関係を操作パネル42により入力して研磨装置2の図示しないコントローラ(制御手段)のメモリに格納する。
【0032】
また、研磨パッド26を新品に交換すると、オペレータが操作パネル42を操作してその交換時期を入力し、研磨装置2のコントローラが研磨パッド26が新品に交換されたこと及びその時期を記憶する。
【0033】
よって、本発明の研磨装置2では、研磨パッド26が新品に交換された直後には、図3の表に応じて所定時間のならし研磨が被加工物に施される。ならし研磨実施後、予め定められた所定時間の研磨加工が被加工物に施され所望量を研磨により除去する。
【0034】
例えば、被加工物がシリコンウエーハ11の場合には、ならし研磨時間は研磨パッドの種類に応じて大きく変化し、例えば、ならし研磨時間は10〜1200秒の間であるのが好ましい。より好ましくは、100〜600秒の間である。
【0035】
研磨パッド及び被加工物の種類に応じて、ならし研磨を研磨パッドを新品に交換した直後の最初の被加工物のみに実施すればよい場合もあり、交換直後の複数枚の被加工物にならし研磨を実施するのが好ましい場合もある。
【0036】
例えば、図3に示した被加工物5の場合には、研磨パッドA〜Cの何れでもならし研磨に非常に長時間を要しているので、研磨パッド26を新品に交換直後の複数枚の被加工物にならし研磨を実施するのが好ましい。この場合、2枚目以降の被加工物に対しては、ならし研磨時間を短縮するのが好ましい。
【0037】
一方、研磨パッドAで被加工物1〜3をならし研磨する場合には、研磨パッド26を新品に交換直後の最初の被加工物にのみならし研磨を実施すれば十分である。ならし研磨実施後には、コントローラのメモリに格納された所定の研磨時間に基づいて、ならし研磨に引き続いて所定時間通常の研磨加工が実施される。
【符号の説明】
【0038】
2 研磨装置
10 研磨ユニット
11 半導体ウエーハ
24 研磨ヘッド
26 研磨パッド
36 チャックテーブル
42 操作パネル
図1
図2
図3