(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6086765
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】研削ホイール
(51)【国際特許分類】
B24D 7/06 20060101AFI20170220BHJP
B24D 7/00 20060101ALI20170220BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
B24D7/06
B24D7/00 Z
H01L21/304 631
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-49418(P2013-49418)
(22)【出願日】2013年3月12日
(65)【公開番号】特開2014-172147(P2014-172147A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2016年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】山本 節男
(72)【発明者】
【氏名】関家 臣之典
(72)【発明者】
【氏名】三原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亜樹
(72)【発明者】
【氏名】濱岡 俊
【審査官】
亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−238838(JP,A)
【文献】
実開平03−007467(JP,U)
【文献】
特表2001−524397(JP,A)
【文献】
特表平10−506580(JP,A)
【文献】
特開2002−009027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 7/00 − 7/14
B24D 5/00 − 5/14
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削手段のホイールマウントに装着される研削ホイールであって、
該ホイールマウントに装着される環状に形成された装着部と該装着部の反対側で環状に形成された自由端部とを有するホイール基台と、
該ホイール基台の該自由端部に配設されリング状に連なる複数の砥石と、を備え、
該複数の砥石のそれぞれは、ボンド材にダイアモンド砥粒を混入して焼結した研削砥石と、ボンド材のみを焼結した補助砥石とを含み、
該複数の砥石のそれぞれに含まれる該補助砥石は、互いにリング状に連なって該研削砥石を内側から補強し、又は互いにリング状に連なって該研削砥石を外側から補強し、
該研削砥石と、該補助砥石と、は、該ホイール基台からの高さが略同一であることを特徴とする研削ホイール。
【請求項2】
該砥石は、該研削砥石を内側と外側とから該補助砥石によってサンドイッチ状に挟み込んで構成される請求項1記載の研削ホイール。
【請求項3】
該砥石は、該補助砥石を内側と外側とから該研削砥石によってサンドイッチ状に挟み込んで構成される請求項1記載の研削ホイール。
【請求項4】
該ボンド材は、ビトリファイドボンドから構成される請求項1〜3の何れかに記載の研削ホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削装置の研削ホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI、LED等の数多くのデバイスが表面に形成され、且つ個々のデバイスが分割予定ライン(ストリート)によって区画されたウエーハは、研削装置によって裏面が研削されて所定の厚みに加工された後、レーザー加工装置によって個々のデバイスに分割され、分割されたデバイスは携帯電話やパソコン、照明器具等の電気機器に広く利用されている。
【0003】
また、IC、LSI、LED等のデバイスが形成されるシリコンウエーハ、サファイア基板、SiC基板はデバイスが形成される前に研削装置によって両面が平坦に研削され、更に必要に応じて研磨装置により研磨されて鏡面に加工される。
【0004】
研削装置は、ウエーハ等の被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を研削する研削砥石が配設された研削ホイールを回転可能に支持する研削手段と、研削領域に研削水を供給する研削水供給手段とを備えており、ウエーハ又は基板を高精度に所望の厚みに研削することができる。
【0005】
研削ホイールは、研削ユニットを構成するホイールマウントに装着される環状に形成された装着部と該装着部の反対側で環状に形成された自由端部とを有するホイール基台と、該ホイール基台の自由端部に間隔をおいて固着された複数のセグメント砥石とから構成され、セグメント砥石に研削水が供給される構成になっている(例えば、特開2006−198737号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−198737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、サファイア基板、SiC基板のようにモース高度が高い被加工物を研削すると、研削抵抗が大きく被加工物の研削面の面精度が悪化するという問題がある。そこで、研削抵抗を小さくするためにセグメント砥石の厚みを薄くすると、セグメント砥石に微細な振動(ビビリ振動)が生じて研削面にうねりが生じるという問題がある。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、研削抵抗が小さいとともにビビリ振動が生じることのない研削ホイールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、研削手段のホイールマウントに装着される研削ホイールであって、該ホイールマウントに装着される環状に形成された装着部と該装着部の反対側で環状に形成された自由端部とを有するホイール基台と、該ホイール基台の該自由端部に配設され
リング状に連なる複数の砥石と、を備え、該複数の砥石の
それぞれは、ボンド材にダイアモンド砥粒を混入して焼結した研削砥石と
、ボンド材のみを焼結した補助砥石とを含み、
該複数の砥石のそれぞれに含まれる該補助砥石は、互いにリング状に連なって該研削砥石を内側から補強し、又は互いにリング状に連なって該研削砥石を外側から補強し、該研削砥石と、該補助砥石と、は、該ホイール基台からの高さが略同一であることを特徴とする研削ホイールが提供される。
【0010】
好ましくは、砥石は、研削砥石を内側と外側とから補助砥石によってサンドイッチ状に挟み込んで構成される。或いは、砥石は、補助砥石を内側と外側とから研削砥石によってサンドイッチ状に挟み込んで構成される。好ましくは、ボンド材は、ビトリファイドボンドから構成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の研削ホイールによると、ホイール基台の自由端部に配設される砥石は、ボンド材にダイアモンド砥粒を混入して焼結した研削砥石と、研削砥石を内側又は外側から補強するボンド材のみを焼結した補助砥石とから構成されているので、研削砥石の厚みを薄くして研削抵抗を小さくできるとともに補助砥石によって研削砥石が補強され、微細な振動(ビビリ振動)が抑制されて研削面にうねりが生じるという問題を解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の研削ホイールを具備した研削装置の斜視図である。
【
図2】半導体ウエーハの表面に保護テープを貼着する様子を示す斜視図である。
【
図3】
図3(A)はホイール基台の底面図、
図3(B)は
図3(A)の3B−3B線断面図である。
【
図4】本発明実施形態にかかる研削ホイールの斜視図である。
【
図5】セグメント砥石の配列方法を模式的に示す図である。
【
図6】セグメント砥石の他の配列方法を模式的に示す図である。
【
図7】実施形態の研削ホイールを使用してウエーハの裏面を研削している様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1を参照すると、本発明の研削ホイールを具備した研削装置2の外観斜視図が示されている。4は研削装置2のベースであり、ベース4の後方にはコラム6が立設されている。コラム6には、上下方向に伸びる一対のガイドレール8が固定されている。
【0014】
この一対のガイドレール8に沿って研削ユニット(研削手段)10が上下方向に移動可能に装着されている。研削ユニット10は、スピンドルハウジング12と、スピンドルハウジング12を保持する支持部14を有しており、支持部14が一対のガイドレール8に沿って上下方向に移動する移動基台16に取り付けられている。
【0015】
研削ユニット10は、スピンドルハウジング12中に回転可能に収容されたスピンドル18と、スピンドル18を回転駆動するモータ20と、スピンドル18の先端に固定されたホイールマウント22と、ホイールマウント22に着脱可能に装着された研削ホイール24とを含んでいる。
【0016】
研削装置2は、研削ユニット10を一対の案内レール8に沿って上下方向に移動するボールねじ30とパルスモータ32とから構成される研削ユニット送り機構34を備えている。パルスモータ32を駆動すると、ボールねじ30が回転し、移動基台16が上下方向に移動される。
【0017】
ベース4の上面には凹部4aが形成されており、この凹部4aにチャックテーブル機構36が配設されている。チャックテーブル機構36はチャックテーブル38を有し、図示しない移動機構によりウエーハ着脱位置Aと、研削ユニット10に対向する研削位置Bとの間でY軸方向に移動される。40,42は蛇腹である。ベース4の前方側には、研削装置2のオペレータが研削条件等を入力する操作パネル44が配設されている。
【0018】
図2を参照すると、半導体ウエーハ11は、例えば厚さが700μmのシリコンウエーハからなっており、表面11aに複数のストリート(分割予定ライン)13が格子状に形成されているとともに、複数のストリート13によって区画された各領域にIC、LSI等のデバイス15が形成されている。
【0019】
このように構成された半導体ウエーハ11は、デバイス15が形成されているデバイス領域17と、デバイス領域17を囲繞する外周余剰領域19を備えている。また、半導体ウエーハ11の外周にはシリコンウエーハの結晶方位を示すマークとしてのノッチ21が形成されている。
【0020】
ウエーハ11の裏面11bの研削に先立って、ウエーハ11の表面11aには、保護テープ貼着工程により保護テープ23が貼着される。保護テープ23は、例えばポリエチレン塩化ビニル、ポリオリフィン等の一面に紫外線硬化型粘着材(糊層)を配設した紫外線硬化型粘着テープである。
【0021】
図3(A)を参照すると、
図4に示された研削ホイール24を構成するホイール基台26の底面図が示されている。
図3(B)は
図3(A)の3B−3B線断面図である。
図4に示すように、研削ホイール24のホイール基台26は、ホイールマウント22に装着される環状に形成された装着部26aと、装着部26aの反対側で同じく環状に形成された自由端部26bを有している。
図3(A)に示されるように、ホイール基台26の自由端部26bには所定深さの環状嵌合溝27が形成されている。
【0022】
図4に示すように、ホイール基台26の装着部26aには研削ホイール24をホイールマウント22に装着するためのねじ穴33と、ホイール基台26を上下方向に貫通する円周方向に所定間隔離間した複数の研削水供給孔31が形成されている。
【0023】
図5(A)及び
図4に示すように、第1実施形態の研削ホイール24では、ホイール基台26の自由端部26bには、研削砥石28aと、研削砥石28aを外側から補強する補助砥石28bを半径方向に密着させて環状嵌合溝27中にリング状に配設し、複数個の砥石28が接着剤により嵌合溝27中に固定されている。
【0024】
即ち、本実施形態の研削ホイール24では、砥石28が、ボンド剤にダイアモンド砥粒を混入して焼結した研削砥石28aと、ボンド剤のみを焼結した補助砥石28bとを含み、研削砥石28aを内側に補助砥石28bを外側に半径方向に密着させて配置し、複数の研削砥石28aと補助砥石28bとが嵌合溝27中にリング状に固定されている。本実施形態では、ボンド材としてビトリファイドボンドを採用した。
【0025】
図5(B)を参照すると、複数の砥石28の他の配列方法の模式図が示されている。本実施形態では、研削砥石28aを外側に補助砥石28bを内側にして半径方向に密着させて配置し、複数の研削砥石28a及び補助砥石28bを嵌合溝27中にリング状に固定している。
【0026】
図6(A)を参照すると、複数の砥石28の配列方法の他の実施形態が示されている。本実施形態では、研削砥石28aを内側と外側とから補助砥石28bによってサンドイッチ状に挟み込み、この組合せを嵌合溝27中に複数個配列してリング状に構成している。
【0027】
図6(B)を参照すると、複数の砥石28の配列方法の更に他の実施形態が示されている。本実施形態では、補助研削砥石28bを内側と外側とから研削砥石28aによってサンドイッチ状に挟み込み、この組合せを嵌合溝27中に複数個配列してリング状に構成している。
【0028】
以下、上述した各実施形態の砥石28を構成する研削砥石28a及び補助砥石28bの製造方法の一例について説明する。
【0029】
研削砥石28a及び補助砥石28bの製造方法
(1)粒径φ0.5μm(#8000)のダイアモンド砥粒と、SiO
2を主成分としNaO、B
2O
3、CaO等を副成分とするビトリファイドボンド材と、珪酸ナトリウム(ゲル状の無機質発泡剤)と、粒径φ50μm前後の有機物粒子「ポリスチレン(PS)系、ポリメタクリル酸エステル(PMMA)系の有機物粒子(商品名ガッツパール:ガッツ化成株式会社)」とを混練して造粒し顆粒物(粒径φ350μm〜φ50μm)を生成する。
(2)SiO
2を主成分としNaO、B
2O
3、CaO等を副成分とするビトリファイドボンド材と、珪酸ナトリウム(ゲル状の無機質発泡剤)と、粒径φ50μm前後の有機物粒子「ポリスチレン(PS)系、ポリメタクリル酸エステル(PMMA)系の有機物粒子(商品名ガッツパール:ガッツ化成株式会社)」とを混練して造粒し顆粒物(粒径φ350μm〜φ50μm)を生成する。
(3)セグメントを形成する枠体内に(1)の顆粒物と(2)の顆粒物とを層状に積層して充填し所定の形状に加圧成形する。
(4)焼結炉内に成形された顆粒物を搬入する。
(5)焼結炉内の温度を約2時間かけて650℃まで上昇させ、その後650℃を約6時間維持した後、約6時間かけて常温に戻して研削砥石28aと補助砥石28bとを一体に形成する。
(6)焼結炉内から一体になった研削砥石28aと補助砥石28bを搬出し、切断加工等によってセグメント形状に整形する。
【0030】
次に、本実施形態の研削ホイール24を使用したウエーハ11の研削方法について
図7を参照して説明する。
図7に示すように、研削ユニット10のスピンドル18の先端に固定されたホイールマウント22には、複数のねじ35により研削ホイール24が着脱可能に装着されている。研削ホイール24は、ホイール基台26の自由端部に研削砥石28aと補助砥石28bとを半径方向に密着させてリング状に固着して構成されている。
【0031】
研削装置のチャックテーブル38でウエーハ11の表面に貼着された保護テープ23側を吸着保持し、チャックテーブル38を矢印aで示す方向に例えば300rpmで回転しつつ、研削ホイール24を矢印bで示す方向に例えば6000rpmで回転させるとともに、研削ユニット送り機構34を駆動して研削ホイール24の研削砥石28a及び補助砥石28bをウエーハ11の裏面11bに接触させる。
【0032】
そして、研削ホイール24を所定の研削送り速度(例えば1μm/s)で下方に所定量研削送りしてウエーハ11の研削を実施する。接触式又は非接触式の厚み測定ゲージでウエーハ11の厚さを測定しながら、ウエーハ11を所望の厚さ、例えば100μmに研削する。
【0033】
上述した各実施形態の研削ホイール24によると、複数の砥石28は、ボンド材にダイアモンド砥粒を混入して焼結した研削砥石28aと、研削砥石28aを内側又は外側から補強する補助砥石28bとから構成されているので、研削砥石28aの厚みを薄くして研削抵抗を小さくできるとともに補助砥石28bによって研削砥石28aが補強され、微細な振動(ビビリ振動)が抑制されて研削面にうねりが生じるという問題を解消できる。
【符号の説明】
【0034】
10 切削ユニット(切削手段)
11 半導体ウエーハ
22 ホイールマウント
23 保護テープ
24 研削ホイール
26 ホイール基台
28 砥石
28a 研削砥石
28b 補助砥石
38 チャックテーブル