特許第6086913号(P6086913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6086913シリコン太陽電池の製造のための高速レーザ走査システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6086913
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】シリコン太陽電池の製造のための高速レーザ走査システム
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/382 20140101AFI20170220BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20170220BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20170220BHJP
   B23K 26/02 20140101ALI20170220BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20170220BHJP
   B23K 26/57 20140101ALI20170220BHJP
   H01L 31/068 20120101ALN20170220BHJP
【FI】
   B23K26/382
   B23K26/00 H
   B23K26/082
   B23K26/02 A
   B23K26/064 Z
   B23K26/57
   !H01L31/06 300
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-527221(P2014-527221)
(86)(22)【出願日】2012年8月20日
(65)【公表番号】特表2014-529509(P2014-529509A)
(43)【公表日】2014年11月13日
(86)【国際出願番号】US2012051590
(87)【国際公開番号】WO2013028623
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2015年8月10日
(31)【優先権主張番号】61/527,080
(32)【優先日】2011年8月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】ジー, ジェームズ エム.
(72)【発明者】
【氏名】フランクリン, ジェフリー エル.
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−142834(JP,A)
【文献】 特開2007−194636(JP,A)
【文献】 特開2008−254029(JP,A)
【文献】 特開2002−144055(JP,A)
【文献】 特開2004−344928(JP,A)
【文献】 特開2001−105164(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0239332(US,A1)
【文献】 米国特許第06720524(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/382
B23K 26/00
B23K 26/02
B23K 26/064
B23K 26/082
B23K 26/57
H01L 31/068
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池基板の表面へ電磁放射を供給する装置であって、
複数の反射ファセットおよび回転軸を有する多面鏡と、
前記回転軸に対して前記多面鏡を回転させるように構成されたアクチュエータと、
前記多面鏡の前記反射ファセットの少なくとも1つへ電磁放射を誘導するように位置決めされたレーザ光源と、
基板支持表面を有し、前記多面鏡の前記反射ファセットから反射された前記電磁放射を受け取るように基板を位置決めするように構成された基板位置決めデバイスと
1つまたは複数の位置決めセンサと、
前記1つまたは複数の位置決めセンサから信号を受け取るように構成されたシステムコントローラと、を備え
前記基板位置決めデバイスが、前記反射ファセットから反射された前記電磁放射が前記基板に誘導される間に、前記基板を直線的に輸送するように構成され、
前記1つまたは複数の位置決めセンサが、前記基板位置決めデバイスが前記基板を直線的に輸送するときに、前記基板の先端を検出するように構成され、
前記システムコントローラが、前記1つまたは複数の位置決めセンサから受け取った信号に基づいて前記レーザ光源、アクチュエータ、および基板位置決めデバイスの動作を制御する、装置。
【請求項2】
前記基板位置決めデバイスが、前記多面鏡の前記反射ファセットから反射される前記電磁放射の方向と実質的に直交する方向に前記基板を直線的に輸送する請求項に記載の装置。
【請求項3】
前記レーザ光源と前記多面鏡との間に位置決めされたビームシェーパをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
多面鏡を備え、前記多面鏡によって反射された電磁放射パルスを第1の方向に基板の表面を横切って走査するように構成されたレーザ走査デバイスと、
前記電磁放射パルスが前記基板の方へ誘導される間に、前記第1の方向と実質的に直交する第2の方向に前記基板を直線的に輸送するように構成された基板位置決めシステムと、
前記基板が前記レーザ走査デバイスへ向かう前記第2の方向に移動するときに前記基板の先端を検出するように構成された1つまたは複数の位置決めセンサと、
前記1つまたは複数の位置決めセンサから受け取った信号に基づいて前記レーザ走査デバイスおよび前記基板位置決めシステムの動作を制御するように構成されたシステムコントローラとを備えるレーザ走査モジュール。
【請求項5】
前記レーザ走査デバイスが、
レーザ光源と、
前記レーザ光源と前記多面鏡との間に位置決めされたビームシェーパとをさらに備える、請求項に記載のモジュール。
【請求項6】
前記レーザ走査デバイスが、前記多面鏡を所望の速度で回転させるように構成されたアクチュエータをさらに備える、請求項に記載のモジュール。
【請求項7】
太陽電池基板の表面へ電磁放射を供給する方法であって、
複数の反射面を有する多面鏡を回転軸の周りでアクチュエータにより回転させることと、
基板を第1の方向に基板位置決めデバイスにより平行移動させることと、
前記多面鏡が前記回転軸の周りを回転するときに前記複数の反射面へ電磁放射レーザ光源により供給することと
前記基板を第1の方向に平行移動しているときに、前記基板の先端を位置決めセンサにより検出すること、
前記位置決めセンサから信号をシステムコントローラにより受け取ることと、
前記位置決めセンサから受け取った信号に基づいて前記システムコントローラにより前記レーザ光源、アクチュエータ、および基板位置決めデバイスの動作を制御することと、を含み、
ある量の前記供給される電磁放射が、前記複数の反射面から前記基板の表面の方へ反射され、前記反射される電磁放射が、前記第1の方向と直交する第2の方向に前記基板の前記表面を横切って走査される、方法。
【請求項8】
前記基板の前記表面が、前記表面上に配置された1つまたは複数の材料層を有し、前記反射される電磁放射が前記基板の前記表面を横切って走査されるとき、前記1つまたは複数の層のそれぞれの一部分がアブレーションされる、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記反射される電磁放射が前記基板の前記表面を横切って走査されるとき、前記1つまたは複数の層を貫通して1列の孔が形成される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記反射される電磁放射が前記基板の前記表面を横切って走査されるとき、前記1つまたは複数の層を貫通して複数の列の孔が形成される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記基板が前記第1の方向に平行移動するときの前記基板の位置を使用して、前記電磁放射の供給を制御する、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記反射される電磁放射が前記基板の前記表面を横切って走査されるとき、前記基板の前記表面を損傷することなく、前記1つまたは複数の層を貫通して複数の孔が形成される、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、一般に、太陽電池の製造中に1つまたは複数の層内に孔をレーザドリル加工する装置および方法に関する。詳細には、この装置は、改善されたレーザドリル加工速度のための多面鏡を含む。さらに、この装置は、ドリル加工動作中に下にある太陽電池基板の損傷を防止するビームシェーパを含むことができる。
【背景技術】
【0002】
太陽電池とは、日光を直接電力に変換する光起電デバイスである。最も一般的な太陽電池材料はシリコンであり、それは単結晶または多(マルチ)結晶(multicrystalline)の基板の形をしており、ウエハと呼ばれることもある。発電用のシリコンベースの太陽電池を形成するための償却原価は、従来の方法を使用する発電コストより高いため、太陽電池の形成に必要なコストを低減させるための努力がなされてきた。
【0003】
現在広く使用されている1つの太陽電池設計は、前面、すなわち光を受け取る表面近くに形成されたp/n接合を有し、p/n接合は、光エネルギーが太陽電池内に吸収されると電子/正孔対を生成する。この従来の設計は、太陽電池の前側の第1の組の電気接点と、太陽電池の裏側の第2の組の電気接点とを有する。太陽電池の裏側に第2の組の電気接点を形成するには、導電層が下にある太陽電池基板に接触できるように、太陽電池基板の裏側を覆うパッシベーション層内に孔を形成しなければならない。
【0004】
一般的に、単一の太陽電池基板上で100,000個を超える接点(すなわち、裏側パッシベーション層内に形成された孔)が必要とされる。太陽電池の裏側パッシベーション層内に孔を形成する従来の手法は、太陽電池基板を横切るレーザビームを操るためにガルバノメータシステムを使用することを含む。しかし、これらの従来のシステムは、約20m/秒の速度に制限される。したがって、従来の手法では、従来の太陽電池を作り出すのに相当な時間が必要である。さらに、従来のレーザシステムを使用するときは、パッシベーション層内に孔をドリル加工しながら下にある太陽電池基板の損傷を防止するのが困難である。
【0005】
したがって、太陽電池基板のパッシベーション層内に孔をドリル加工するための改善された方法および装置が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一実施形態では、太陽電池基板の表面へ電磁放射を供給する装置は、複数の反射ファセットおよび回転軸を有する多面鏡と、回転軸に対して多面鏡を回転させるように構成されたアクチュエータと、多面鏡の反射ファセットの少なくとも1つへ電磁放射を誘導するように位置決めされたレーザ光源と、基板支持表面を有し、多面鏡の反射ファセットから反射された電磁放射を受け取るように基板を位置決めするように構成された基板位置決めデバイスとを備える。
【0007】
別の実施形態では、レーザ走査モジュールは、多面鏡を備え、多面鏡によって反射された電磁放射パルスを第1の方向に基板の表面を横切って走査するように構成されたレーザ走査デバイスと、電磁放射パルスが基板の方へ誘導される間に、第1の方向と実質的に直交する第2の方向に基板を直線的に輸送するように構成された基板位置決めシステムと、基板がレーザ走査デバイスへ向かう第2の方向に移動するときに基板の先端を検出するように構成された1つまたは複数の位置決めセンサと、1つまたは複数の位置決めセンサから受け取った信号に基づいてレーザ走査デバイスおよび基板位置決めシステムの動作を制御するように構成されたシステムコントローラとを備える。
【0008】
さらに別の実施形態では、太陽電池基板の表面へ電磁放射を供給する方法は、複数の反射面を有する多面鏡を回転軸の周りで回転させることと、基板を第1の方向に平行移動させることと、多面鏡が回転軸の周りを回転するときに複数の反射面へ電磁放射パルスを供給することとを含み、ある量の供給される電磁放射が、複数の反射面から基板の表面の方へ反射され、反射される電磁放射は、第1の方向と直交する第2の方向に基板の表面を横切って走査される。
【0009】
本発明の上記の特徴を詳細に理解できるように、上記で簡単に要約した本発明のより詳細な説明は、実施形態を参照することによって得ることができる。これらの実施形態のいくつかを、添付の図面に示す。しかし、本発明は他の等しく有効な実施形態も許容しうるため、添付の図面は本発明の典型的な実施形態のみを示しており、したがって本発明の範囲を限定すると見なすべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本明細書に記載の装置および方法を使用して形成できる太陽電池の横断面図である。
図2】本明細書に記載の実施形態によるレーザ走査装置の概略横断面図である。
図3】本明細書に記載の実施形態によるレーザ走査モジュールの概略側面図である。
図4】本明細書に記載の実施形態による基板位置決めシステム上に位置決めされた基板の概略上面図である。
図5】本明細書に記載の実施形態によるビームを伝搬するレーザ走査装置の概略図である。
図6】本明細書に記載の実施形態によるビーム成形を伴わないビームのガウス強度プロファイルの概略図である。
図7】本明細書に記載の実施形態によるビーム成形を伴うビームの強度プロファイルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態は、太陽電池の製造中に1つまたは複数の層内に孔をレーザドリル加工するために多面鏡およびビームシェーパを使用するレーザ走査装置を提供する。一実施形態では、この装置は、裏面電気接点の形成中に太陽電池の裏側パッシベーション層内に孔をレーザドリル加工するために使用される。この装置は、太陽電池の背面電気接点の形成の速度を改善するための多面鏡の使用を含む。この装置はまた、レーザドリル加工動作中に下にある太陽電池基板の損傷を防止するようにビームのプロファイルを調節するためのビームシェーパの使用を含むことができる。さらに、基板上に配置された材料層の効率的なレーザドリル加工を提供するように基板の直線移動の速度およびタイミングおよびレーザ走査装置の動作を閉ループで制御するレーザ走査モジュールが提供される。
【0012】
本明細書では、「レーザドリル加工」という用語は、レーザプロセスを使用して材料の少なくとも一部分を除去することを概略的に意味する。したがって、「レーザドリル加工」には、基板上に配置された材料層の少なくとも一部分のアブレーション、たとえば基板上に配置された材料層を貫通する孔を含むことができる。さらに、「レーザドリル加工」には、基板材料の少なくとも一部分を除去すること、たとえば基板内の貫通していない孔(止まり孔)または基板を貫通する孔を形成することを含むことができる。
【0013】
図1は、本明細書に記載の装置および方法を使用して形成できる太陽電池100の横断面図を示す。太陽電池100は太陽電池基板110を含み、太陽電池基板110は、太陽電池基板110の前面105上のパッシベーション/ARC(反射防止コーティング)層スタック120と、太陽電池基板の背面106上の背面パッシベーション層スタック140とを有する。
【0014】
一実施形態では、太陽電池基板110は、太陽電池100の一部を形成するため、その中に配置されたp型ドーパントを有するシリコン基板である。この構成では、太陽電池基板110は、p型ドープされたベース領域101と、ベース領域101上に形成されたn型ドープされたエミッタ領域102とを有することができる。太陽電池基板110はまた、ベース領域101とエミッタ領域102との間に配置されたp−n接合領域103を含む。したがって、太陽電池基板110は、太陽150から入射するフォトン「I」によって太陽電池100が照射されたときに電子−正孔対が生成される領域を含む。
【0015】
太陽電池基板110は、単結晶シリコン、多(マルチ)結晶シリコン、または多(ポリ)結晶(polycrystalline)シリコンを含むことができる。別法として、太陽電池基板110は、ゲルマニウム(Ge)、砒化ガリウム(GaAs)、テルル化カドミウム(CdTe)、硫化カドミウム(CdS)、セレン化銅インジウムガリウム(CIGS)、セレン化銅インジウム(CuInSe2)、リン化ガリウムインジウム(GaInP2)、または有機材料を含むことができる。別の実施形態では、太陽電池基板は、GaInP/GaAs/GeまたはZnSe/GaAs/Ge基板などのヘテロ接合セルとすることができる。
【0016】
図1に示す例では、太陽電池100は、パッシベーション/ARC層スタック120と、背面パッシベーション層スタック140とを含み、各層スタックは、少なくとも2つ以上の堆積させた材料の層を含む。パッシベーション/ARC層スタック120は、太陽電池基板110の前面105に接触している第1の層121と、第1の層121上に配置された第2の層122とを含む。第1の層121と第2の層122はそれぞれ、窒化ケイ素(SiN)層を含むことができ、それは窒化ケイ素層内に形成された所望の数量のトラップ電荷を有し、太陽電池基板の前面105をバルクで不活性化するのに事実上役立つ。
【0017】
この構成では、背面パッシベーション層スタック140は、太陽電池基板110の背面106に接触している第1の裏側層141と、第1の裏側層141上に配置された第2の裏側層142とを含む。第1の裏側層141は、厚さ約200Å〜約1300Åの酸化アルミニウム(Al)層を含むことができ、それは酸化アルミニウム層内に形成された所望の数量のトラップ電荷を有し、太陽電池基板110の背面106を事実上不活性化する。第2の裏側層142は、厚さ約600Å〜約2500Åの窒化ケイ素(SiN)層を含むことができる。第1の裏側層141と第2の裏側層142はどちらも、これらの裏側層内に形成された所望の数量のトラップ電荷を有し、基板110の背面106を不活性化するのに事実上役立つ。パッシベーション/ARC層スタック120および背面パッシベーション層スタック140は、図1に示すように、太陽電池100内で前面反射Rを最小にし、背面反射Rを最大にし、それによって太陽電池100の効率を改善する。
【0018】
太陽電池100は、パッシベーション/ARC層スタック120を貫通して太陽電池基板110の前面105に接触する前側電気接点107をさらに含む。太陽電池100はまた、背面パッシベーション層スタック140内に形成された孔147を通じて太陽電池基板110の背面106に電気的に接触する背面側電気接点146を形成する導電層145を含む。導電層145および前側電気接点107は、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、スズ(Sn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニッケルバナジウム(NiV)、または他の類似の材料、およびこれらの組合せなどの金属を含むことができる。
【0019】
背面側電気接点146を形成する際には、太陽電池基板110の背面106を損傷することなく、背面パッシベーション層スタック140内に複数の貫通孔147を形成しなければならない。太陽電池100内の抵抗損失を最小にするには、高密度の孔(たとえば、1平方ミリメートル当たり0.5〜5個の孔)が必要とされる。たとえば、156mm×156mmの太陽電池には、最高120,000個の孔が必要とされることがあり、約20m/秒に制限されている従来のレーザドリル加工システムおよびプロセスを使用した場合、これには相当な時間が必要である。本発明の実施形態は、太陽電池基板110の背面106を損傷することなく背面パッシベーション層スタック140内に孔147をより迅速に形成する装置および方法を提供する。
【0020】
図2は、本発明の実施形態による基板201上に配置された1つまたは複数の層内に孔を形成するために使用できるレーザ走査装置200の横断面図である。たとえば、レーザ走査装置200は、図1の太陽電池100の背面パッシベーション層スタック140内に孔147を形成するために使用することができる。
【0021】
図2に示す実施形態では、レーザ走査装置200は、フォトンの誘導放出に基づく光増幅プロセスを通じて光または電磁放射212を放出するレーザ光源210を含む。放出された電磁放射212は、高度の空間的および時間的コヒーレンスを有する。レーザ光源210は、Nd:YAG、Nd:YVO、結晶ディスク、ファイバダイオード、ならびに約255nm〜約1064nmの波長で連続する放射波を提供および放出できる他の類似の放射放出源などの電磁放射源とすることができる。別の実施形態では、レーザ光源210は、複数のレーザダイオードを含み、各レーザダイオードは、同じ波長で均一かつ空間的にコヒーレントな光を生じさせる。レーザダイオードの電力は、約5W〜約15Wの範囲内とすることができる。
【0022】
一実施形態では、レーザ光源210は、約10μJ/パルス〜約6mJ/パルスの総エネルギーを有する約1フェムト秒(fs)〜約1.5マイクロ秒(μs)のパルス幅のパルスを生じさせる。電磁放射パルス212のパルス幅および周波数は、水冷式シャッタの使用によって制御することができる。レーザパルス繰返し率は、約15kHz〜約2MHzとすることができる。
【0023】
レーザ光源210から放出される電磁放射パルス212は、約1.5〜約2.5mmなどの第1の直径を有するビームエクスパンダ214で受け取られる。ビームエクスパンダ214は、電磁放射212の直径を約4mm〜約6mmなどの第2の直径に増大させる。次いで、電磁放射パルス212は、図5〜7に関してさらに後述するようにビームの形状を調節するビームシェーパ215へ供給される。電磁放射パルス212は、ビームシェーパ215からビームエクスパンダ/集束器216へ供給され、ビームエクスパンダ/集束器216は、電磁放射パルス212の直径を約2mm〜約3mmなどの所望の第3の直径に調整するために使用される。
【0024】
次いで、ビームエクスパンダ/集束器216は、電磁放射パルス212を多面鏡218へ供給し、多面鏡218は、集束レンズ219を通じて基板201上へ電磁放射パルス212を反射する。レンズ219は、254mmのレンズなど、焦点距離の長いレンズとすることができる。多面鏡218は、約10〜18個などの複数の反射ファセット220を有する鏡であり、各ファセット220が多面鏡218の回転軸221に対する方向に互いに対して概ね傾斜するように構成される。したがって、多面鏡218の各反射ファセット220の角度は、電気モータなどのアクチュエータ222によって軸221の周りで多面鏡218を回転させたとき、電磁放射212が一方向に基板201の表面を横切って走査されることを可能にする。アクチュエータ222は、多面鏡の回転速度を約100〜10,000rpmの速度などの所望の速度に制御するために使用される。
【0025】
処理中、たとえば図2に示すように多面鏡218が軸221の周りを回転するとき、電磁放射パルス212は基板201を横切って走査され、図1からの背面パッシベーション層スタック140内の孔147など、基板201上に形成された1つまたは複数の層内に1列の孔を作る。一実施形態では、単一のファセット220の回転は、それがレーザ光源210から供給される電磁放射パルス212を反射しているとき、基板201上に形成された1つまたは複数の層内に完全な1列の孔(すなわち、X方向の列)を作る。図3に関してさらに説明するように、直交配向したY方向に基板201を移動する間に、回転する多面鏡218の使用によって基板201の表面を横切って電磁放射212を走査させることができ、その結果、基板201の長さ(すなわち、Y方向)に及ぶ数列の(すなわち、X方向の)孔をもたらす。いくつかの実施形態では、供給された電磁放射パルス212は、重複して基板201へ供給され、その結果、別個の孔よりはむしろ、ラインが基板201の1つまたは複数の層を貫通して形成される。
【0026】
図3は、本発明の実施形態による基板201の1つまたは複数の層内で数列の孔を走査するレーザ走査モジュール300の概略側面図である。レーザ走査モジュール300は、基板位置決めシステム310、1つまたは複数の基板位置センサ320、レーザ走査装置200、およびシステムコントローラ380を含む。
【0027】
システムコントローラ380は、レーザ走査モジュール300の様々な構成要素を制御するように適合される。システムコントローラ380は通常、中央処理装置(CPU)(図示せず)、メモリ(図示せず)、および支持回路(図示せず)を含む。CPUは、システムハードウェアおよびプロセスを制御するための産業用の設定で使用される任意の形態のコンピュータプロセッサの1つとすることができる。メモリは、CPUに接続されており、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、または任意の他の形態のローカルもしくは遠隔のデジタルストレージなど、容易に利用可能なメモリの1つまたは複数とすることができる。メモリ内には、CPUに命令するためのソフトウェア命令およびデータをコード化して記憶させることができる。支持回路もまた、従来どおりにプロセッサを支持するようにCPUに接続される。支持回路は、キャッシュ、電源、クロック回路、入出力回路サブシステムなどを含むことができる。システムコントローラ380によって読取り可能なプログラム(命令)には、レーザ走査モジュール300内で実行すべき様々なプロセス方策タスクとともに、基板201の移動、支持、および位置決めを監視、実行、および制御することに関連するタスクを実行するためのコードが含まれる。したがって、システムコントローラ380は、基板位置決めシステム310、1つまたは複数の基板位置センサ320、およびレーザ走査装置200の機能を制御するために使用される。
【0028】
一実施形態では、基板位置決めシステム310は、レーザ走査モジュール300を通じて一連の基板201を支持および輸送するように構成された材料の連続する輸送ベルト313を支持および駆動する支持ローラ312を含む直線コンベヤシステムである。ローラ312は、モータ/チェーンドライバなどの機械ドライバ314によって駆動することができ、約100〜約300mm/秒の直線速度で輸送ベルト313を輸送するように構成することができる。機械ドライバ314は、電気モータ(たとえば、ACまたはDCサーボモータ)とすることができる。輸送ベルト313は、ポリマー、ステンレス鋼、またはアルミニウムから作ることができる。
【0029】
基板位置決めシステム310は、1つまたは複数の位置センサ320およびレーザ走査装置200を支持するガントリ330の下に、一連の基板201を連続して(すなわち、Y方向に)輸送するように構成される。1つまたは複数の位置センサ320は、基板201が基板位置決めシステム310によって輸送されるときに基板201の先端301を検出し、対応する信号をシステムコントローラ380へ送るように構成および位置決めされる。1つまたは複数の位置センサ320からの信号は、システムコントローラによって、走査装置200からの電磁放射212の供給のタイミングを決定して整合させるために使用される。
【0030】
たとえば、基板位置決めシステム310によって流れ経路「A」に沿って基板201が輸送されるとき、1つまたは複数の位置決めセンサ320は、基板201の先端301を検出し、対応する信号をシステムコントローラ380へ送る。次に、システムコントローラ380は、レーザ走査装置200へ信号を送り、基板201の先端がレーザ走査装置200の集束レンズ219の下にきたときにレーザ走査動作を開始するように、レーザ光源210の動作および多面鏡218の回転の時間を調整する。システムコントローラ380は、各ファセット220が電磁放射パルス212を横切って回転するときに(図2)、基板201上に配置された1つまたは複数の層内の1列の孔(たとえば、図1の背面パッシベーション層スタック140内の孔147)を走査するように、多面鏡218の回転速度をさらに制御する。システムコントローラ380は、(たとえば、X方向に整列された)第1の列の孔が終了すると、基板位置決めシステム310による基板201の直線移動によって、第1の列から(たとえば、Y方向に)所望の間隔をあけて次の列の孔が始まるように、基板位置決めシステム310の速度および多面鏡218の回転をさらに制御する。したがって、図4に関して図示および後述するように、基板201全体がレーザ走査装置200の下を移動すると、基板201の幅および長さ全体にわたって、基板201の1つまたは複数の層内に数列の孔が形成される。システムコントローラ380は、基板201の後端302が集束レンズ219の下を通過すると、次の基板201の先端が集束レンズ219の下に位置決めされるまで走査動作が中断するように、レーザ走査装置200のタイミングをさらに制御する。電磁放射212の供給のタイミングを制御できなければ、基板位置決めシステム310など、1つまたは複数のレーザ走査モジュール300の構成要素の損傷を引き起こす。
【0031】
上記のように、システムコントローラ380は、1つまたは複数の位置決めセンサ320からの閉ループフィードバックを使用して基板位置決めシステム310およびレーザ走査装置200の機能およびタイミングを制御するために使用される。基板位置決めシステム310の直線移動の速度およびレーザ走査装置200内の光学を制御することによって、レーザ走査モジュール300は、従来の手法の速度をはるかに超過するレーザドリル加工速度を実現することができる。たとえば、レーザ走査装置200の多面鏡構成および前述の制御方式の使用を通じて、約60m/秒〜約200m/秒のドリル加工速度を実現することができる。比較すると、従来のガルバノメータシステムは通常、20m/秒未満に制限される。さらに、レーザ走査装置200のビームシェーパ215を使用することで、図5〜7に関してさらに説明されるように、下にある太陽電池基板110を損傷しないような速度で、パッシベーション層スタック140内に孔147を効率的にドリル加工することが可能になる。
【0032】
図4は、一実施形態によるレーザドリル加工プロセスを実行する際に使用される基板位置決めシステム310上に位置決めされた基板201の概略上面図である。一実施形態では、基板201は、背面106と、背面106上に配置された背面パッシベーション層スタック140とを有する上向きの太陽電池基板110など、156mm×156mmの太陽電池基板である。
【0033】
図4に示すように、レーザ走査モジュール300は、図3に関して上述したレーザドリル加工動作を介してライン型パターン411内に整列された孔の配列410を形成するために使用される。一例では、孔の配列410内の各孔は、パッシベーション層スタック140を貫通して形成することができ、下にある太陽電池基板110の材料(たとえば、単結晶シリコン、多(ポリ)結晶シリコン)を損傷することなく、約40〜70μmの直径を有することができる。一例では、これらの孔は、約40〜70μmの直径を有し、互いから等しく間隔があけられ、基板位置決めシステム310上でレーザ走査装置200の下を一回通過することによって形成される。
【0034】
前述のように、レーザ走査装置200を用いると、材料層の一部分の除去(たとえば、図1のパッシベーション層スタック140内の孔147のレーザドリル加工)を実現することができる。通常、材料のアブレーションは、照射された材料層の完全な蒸発またはアブレーションを実現するために、基板201上の特定のスポットにおいて特定の周波数、波長、パルス持続時間、およびフルエンスでレーザ光源210をパルス化することによって行われる。しかし、下にある太陽電池基板110を損傷することなく、材料層、特にパッシベーション層スタック140の一部分の完全な蒸発を実現するのは困難である。
【0035】
太陽電池基板110を損傷することなくパッシベーション層スタック140の一部分を除去するのが困難である1つの理由は、基板201上に集束されるレーザスポットの領域にわたる強度の変動のためである。純粋なガウスプロファイルを有するビームを放出する理想的なレーザでは、除去すべき材料上の所望のスポットの中心におけるピーク強度は、スポットの周辺部のピーク強度より高い(図6)。
【0036】
図5は、レーザ走査装置200から距離Zに沿ってビーム500を伝搬するレーザ走査装置200の概略図である。図6は、図5の点510におけるビーム500(すなわち、ビーム成形を伴わない)のガウス強度プロファイルの概略図である。ビーム500上の点510は、所望のスポット550を横切るパッシベーション層スタック140の完全な蒸着を実現するためのレーザ走査装置200に対する基板201の典型的な位置決めを表す。スポット550の周辺部は、パッシベーション層スタック140の材料のアブレーション閾値に設定しなければならないため、理解されるように、スポット550の中心におけるピーク強度610は、スポット550の周辺部における周辺強度620より相当に高い。したがって、周辺強度620は、スポット550の周辺部に沿ってパッシベーション層スタック140のアブレーションを実現するのにちょうど十分なだけ高いが、ピーク強度610が相当に高い場合、ビーム成形を伴わなければ、スポット550の中心で下にある太陽電池基板110の損傷を引き起こす。
【0037】
太陽電池基板110を損傷することなくパッシベーション層スタック140内でスポット550の完全なアブレーションを実現するために、ビームシェーパ215が使用される。ビームシェーパ215は、ガウスレーザビームをコリメートされた平頂ビームに変換する屈折ビームシェーパとすることができる。図7は、図5の点510におけるビーム成形を伴うビーム500の強度プロファイルの概略図である。理解されるように、ビーム成形または「平頂化」動作の結果、スポット550の領域全体でパッシベーション層スタック140内の材料のアブレーション閾値にちょうど位置する均一のエネルギー密度を有するビーム強度プロファイルが得られる。したがって、レーザ走査装置200内でビームシェーパ215を使用することで、下にある太陽電池基板110を損傷することなく、パッシベーション層スタック140内で孔147の効率的なドリル加工が可能になる。
【0038】
したがって、本発明の実施形態は、太陽電池の製造中に1つまたは複数の層内に孔をレーザドリル加工するために多面鏡およびビームシェーパを使用するレーザ走査装置を提供する。一実施形態では、この装置は、背面電気接点の形成中に太陽電池の裏側パッシベーション層内に孔をレーザドリル加工するために使用される。この装置は、太陽電池の裏面電気接点の形成の速度を改善するための多面鏡の使用を含む。この装置はまた、レーザドリル加工動作中に下にある太陽電池基板の損傷を防止するようにビームのプロファイルを調節するためのビームシェーパの使用を含むことができる。さらに、基板上に配置された材料層の効率的なレーザドリル加工を提供するように基板の直線移動の速度およびタイミングおよびレーザ走査装置の動作を閉ループで制御するレーザ走査モジュールが提供される。
【0039】
上記は本発明の実施形態を対象とするが、本発明の基本的な範囲から逸脱することなく、本発明の他のさらなる実施形態を考案することもでき、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7