【文献】
隅山健太、川上浩一,Tol2トランスポゾンを用いた画期的なトランスジェニックマウス作製法,実験医学,2010年10月,Vol. 28, No. 16,p. 2653-2660
【文献】
BMC Biotechnol.,2010年,Vol. 10,p. 1-7
【文献】
Proc. Natl. Acad. Sci. USA.,2006年,Vol. 103, No. 41,p. 15008-15013
【文献】
Genetics,2006年,Vol. 174, No. 2,p. 639-649
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
目的タンパク質をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む少なくとも1種類の発現ベクターを無血清培養で生存および増殖可能な浮遊性のCHO細胞に導入し、一対のトランスポゾン配列の間に挿入された目的タンパク質をコードするDNAを含む遺伝子断片を該CHO細胞の染色体に組込み、該目的タンパク質を生産する無血清培養で生存および増殖可能な浮遊性のCHO細胞を得て、且つ該CHO細胞を浮遊培養して該目的タンパク質を生産する方法であって、
該一対のトランスポゾン配列が、配列番号2で表わされる塩基配列および配列番号3で表わされる塩基配列である一対のTol2由来の塩基配列であり、
下記(i)〜(iii)から選ばれる発現ベクターを無血清培養で生存および増殖可能な浮遊性のCHO細胞に導入する方法。
(i)抗体のH鎖をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター、抗体のL鎖をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクターおよび選択マーカー遺伝子を含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター。
(ii)抗体のH鎖をコードするDNAおよび選択マーカー遺伝子を含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター、並びに抗体のL鎖をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター。
(iii)抗体のL鎖をコードするDNAおよび選択マーカー遺伝子を含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター、並びに抗体のH鎖をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター。
目的タンパク質をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む少なくとも1種類の発現ベクターを無血清培養で生存および増殖可能な浮遊性のCHO細胞に導入し、一対のトランスポゾン配列の間に挿入された目的タンパク質をコードするDNAを含む遺伝子断片を該CHO細胞の染色体に組込み、該目的タンパク質を生産する無血清培養で生存および増殖可能な浮遊性のCHO細胞を得る方法であって、
該一対のトランスポゾン配列が、配列番号2で表わされる塩基配列および配列番号3で表わされる塩基配列である一対のTol2由来の塩基配列であり、
下記(i)〜(iii)から選ばれる発現ベクターを無血清培養で生存および増殖可能な浮遊性のCHO細胞に導入する方法。
(i)抗体のH鎖をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター、抗体のL鎖をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクターおよび選択マーカー遺伝子を含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター。
(ii)抗体のH鎖をコードするDNAおよび選択マーカー遺伝子を含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター、並びに抗体のL鎖をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター。
(iii)抗体のL鎖をコードするDNAおよび選択マーカー遺伝子を含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター、並びに抗体のH鎖をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター。
目的タンパク質をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む少なくとも1種類の発現ベクター(a)、および該トランスポゾン配列を認識し、且つ一対のトランスポゾン配列の間に挿入された遺伝子断片を染色体に転移させる活性を有するトランスポゼース(転移酵素)をコードするDNAを含む発現ベクター(b)を同時に導入されることで、該一対のトランスポゾン配列の間に挿入された該遺伝子断片が染色体に組込まれ、且つ該目的タンパク質を生産する無血清培養で生存および増殖可能な浮遊性のCHO細胞であって、
該一対のトランスポゾン配列が、配列番号2で表わされる塩基配列および配列番号3で表わされる塩基配列である一対のTol2由来の塩基配列であり、
下記(i)〜(iii)から選ばれる発現ベクターを導入されたCHO細胞。
(i)抗体のH鎖をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター、抗体のL鎖をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクターおよび選択マーカー遺伝子を含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター。
(ii)抗体のH鎖をコードするDNAおよび選択マーカー遺伝子を含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター、並びに抗体のL鎖をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター。
(iii)抗体のL鎖をコードするDNAおよび選択マーカー遺伝子を含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター、並びに抗体のH鎖をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、目的タンパク質をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む少なくとも1種類の発現ベクターを哺乳動物細胞に導入し、一対(二つ)のトランスポゾン配列の間に挿入された目的タンパク質をコードするDNAを含む遺伝子断片を浮遊性の哺乳動物細胞の染色体に組み込む方法、該タンパク質を生産する哺乳動物細胞を浮遊培養して該タンパク質を生産する方法、および該タンパク質を発現する浮遊性の哺乳動物細胞に関する。
【0031】
本発明の目的タンパク質を生産する方法(以下、本発明の方法ともいう。)としては、以下の工程(A)〜(C)を含む、目的タンパク質を生産する方法を挙げることができる。
工程(A)以下の発現ベクター(a)および(b)を浮遊性の哺乳動物細胞に同時に導入する工程
(a)目的タンパク質をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む少なくとも1種類の発現ベクター
(b)トランスポゾン配列を認識し、且つ一対のトランスポゾン配列の間に挿入された遺伝子断片を染色体に転移させる活性を有するトランスポゼースをコードするDNAを含むベクター
工程(B)工程(A)で浮遊性の動物細胞に導入した発現ベクター(b)によりトランスポゼースを一過性発現させて、一対のトランスポゾン配列の間に挿入された目的タンパク質をコードするDNAを含む遺伝子断片を前記哺乳動物細胞の染色体に組込み、目的タンパク質を発現する浮遊性の哺乳動物細胞を得る工程
工程(C)工程(B)で得られた目的タンパク質を発現する浮遊性の哺乳動物細胞を浮遊培養して、目的タンパク質を生産させる工程
【0032】
また、本発明は、目的タンパク質をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む少なくとも1種類の発現ベクターが導入され、一対のトランスポゾン配列の間に挿入された該遺伝子断片が染色体に組込まれ、且つ該目的タンパク質を生産する浮遊性の哺乳動物細胞に関する。
【0033】
本発明において、目的タンパク質とは1つ以上のポリペプチドからなるタンパク質であり、本発明の方法によれば少なくとも1種類の目的タンパク質を発現させること、および/または少なくとも1つのポリペプチドを発現させることのいずれも行なうことができる。
【0034】
目的タンパク質をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む少なくとも1種類の発現ベクターとは、1種類または2種類以上の該発現ベクターをいう。具体的には複数のポリペプチドからなる目的タンパク質を発現させるためには、各ポリペプチドをコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む複数の発現ベクターを用いることとなる。
【0035】
より具体的には、例えば、上記複数のポリペプチドからなる目的タンパク質が抗体である場合には、抗体のH鎖およびL鎖を1種類の発現ベクターで発現させてもよいし、H鎖を発現するベクターおよびL鎖を発現するベクターの2種類の発現ベクターを用いて発現させてもよい。
【0036】
本発明の方法によれば、目的タンパク質をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む少なくとも1種類の発現ベクターが導入され、一対のトランスポゾン配列の間に挿入された該遺伝子断片が染色体に組込まれ、且つ該目的タンパク質を生産する浮遊性の哺乳動物細胞を用いて目的タンパク質を製造することができる。
【0037】
遺伝子挿入の指標とされる選択マーカー遺伝子は、目的タンパク質をコードするDNAが含まれる発現ベクターと同じベクター上に組み込まれていてもよいし、別のベクターに組み込まれていてもよい。
【0038】
すなわち、目的タンパク質をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクターの少なくとも1つを、目的タンパク質をコードするDNAおよび選択マーカー遺伝子を含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクターとしてもよい。
【0039】
また、目的タンパク質をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクターに加えて、さらに選択マーカー遺伝子を含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクターを哺乳動物細胞に導入してもよい。
【0040】
具体的には、本発明の目的タンパク質を生産する方法としては、以下の工程(A)〜(C)を含む、目的タンパク質を生産する方法を挙げることができる。
工程(A)以下の発現ベクター(a)および(b)を浮遊性の哺乳動物細胞に同時に導入する工程
(a)目的タンパク質をコードするDNAと選択マーカー遺伝子を含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含むタンパク質発現ベクター
(b)トランスポゾン配列を認識し、且つ一対のトランスポゾン配列の間に挿入された遺伝子断片を染色体に転移させる活性を有するトランスポゼースをコードするDNAを含むベクター
工程(B)工程(A)で浮遊性の動物細胞に導入した発現ベクター(b)によりトランスポゼースを一過性発現させて、一対のトランスポゾン配列の間に挿入された前記遺伝子断片を該哺乳動物細胞の染色体に組込み、目的タンパク質を発現する浮遊性の哺乳動物細胞を得る工程
工程(C)工程(B)で得られた目的タンパク質を発現する浮遊性の哺乳動物細胞を浮遊培養して、目的タンパク質を生産させる工程
【0041】
また、本発明の目的タンパク質を生産する方法としては、以下の工程(A)〜(C)を含む、目的タンパク質を生産する方法を挙げることができる。
工程(A)以下の発現ベクター(a)、(b)および(c)を浮遊性の哺乳動物細胞に同時に導入する工程
(a)目的タンパク質をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む少なくとも1種類の発現ベクター
(b)選択マーカー遺伝子の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター
(c)トランスポゾン配列を認識し、且つ一対のトランスポゾン配列の間に挿入された遺伝子断片を染色体に転移させる活性を有するトランスポゼースをコードするDNAを含むベクター
工程(B)工程(A)で浮遊性の動物細胞に導入した発現ベクター(c)によりトランスポゼースを一過性発現させて、一対のトランスポゾン配列の間に挿入された前記遺伝子断片を該哺乳動物細胞の染色体に組込み、目的タンパク質を発現する浮遊性の哺乳動物細胞を得る工程
工程(C)工程(B)で得られた目的タンパク質を発現する浮遊性の哺乳動物細胞を浮遊培養して、目的タンパク質を生産させる工程
【0042】
本発明は、目的タンパク質をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む少なくとも1種類の発現ベクター、および選択マーカー遺伝子の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクターが導入され、一対のトランスポゾン配列の間に挿入された該遺伝子断片および選択マーカー遺伝子が染色体に組込まれ、且つ該目的タンパク質を生産する浮遊性の哺乳動物細胞に関する。
【0043】
また、本発明は、目的タンパク質をコードするDNAおよび選択マーカー遺伝子を含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子の両端に一対のトランスポゾン配列を含むタンパク質発現ベクターが導入され、一対のトランスポゾン配列の間に挿入された該遺伝子断片が染色体に組込まれ、且つ該目的タンパク質を生産する浮遊性の哺乳動物細胞に関する。
【0044】
また、本発明の目的タンパク質を生産する哺乳動物細胞としては、目的タンパク質をコードするDNAと選択マーカー遺伝子を含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含むタンパク質発現ベクター(a)、および該トランスポゾン配列を認識し、且つ一対のトランスポゾン配列の間に挿入された遺伝子断片を染色体に転移させる活性を有するトランスポゼース(転移酵素)をコードするDNAを含むベクター(b)が同時に導入されることで、該一対のトランスポゾン配列の間に挿入された該遺伝子断片が染色体に組込まれ、且つ該目的タンパク質を生産する浮遊性の哺乳動物細胞が挙げられる。
【0045】
本発明において、目的タンパク質をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む、浮遊性の哺乳動物細胞に導入する発現ベクターは、該哺乳動物細胞により目的のタンパク質が発現および製造可能であれば数は制限されないが、好ましくは1〜20種類の発現ベクター、より好ましくは2〜10種類の発現ベクターが挙げられ、例えば、3〜8種類の発現ベクター、4〜7種類の発現ベクター、1〜6種類の発現ベクター、1〜5種類の発現ベクター、1〜4種類の発現ベクター、1〜3種類の発現ベクターが好ましい。
【0046】
また、本発明の態様としては、目的タンパク質をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む少なくとも1種類のタンパク質発現ベクター(a)、および該トランスポゾン配列を認識し、且つ一対のトランスポゾン配列の間に挿入された遺伝子断片を染色体に転移させる活性を有するトランスポゼースをコードするDNAを含むベクター(b)を浮遊性の哺乳動物細胞に同時に導入することで、該一対のトランスポゾン配列の間に挿入された該遺伝子断片の該哺乳動物細胞の染色体への組込みを増加させる方法、目的タンパク質をコードするDNAを該哺乳動物細胞の染色体に高頻度に組込む方法、および該方法により得られた目的タンパク質を生産する浮遊性の哺乳動物細胞が挙げられる。
【0047】
本明細書において、「トランスポゾン」とは、転位性遺伝要素であり、一定の構造を保ったまま染色体上を、または染色体から別の染色体へ転位(transposition)する遺伝子単位を意味する。
【0048】
トランスポゾンは、遺伝子単位の両端に逆向きまたは同じ向きの繰り返しのトランスポゾン配列[Inverted Repeat Sequence(IR配列)またはTerminal Inverted Repeat Sequence(TIR配列)ともいう]および、該トランスポゾン配列を認識して、該トランスポゾン配列の間に存在する遺伝子を転移させるトランスポゼースをコードする塩基配列を含む。
【0049】
トランスポゾンから翻訳されたトランスポゼースは、トランスポゾンの両端のトランスポゾン配列を認識し、一対のトランスポゾン配列の間に挿入されたDNA断片を切り出し、転移先へ挿入することで、DNAの転移を行うことができる。
【0050】
本明細書において「トランスポゾン配列」とは、トランスポゼースによって認識されるトランスポゾンの塩基配列を意味し、IR配列またはTIR配列と同義である。該塩基配列を含むDNAは、トランスポゼースの作用により転移(ゲノム中のほかの位置に挿入)可能であれば、不完全な繰り返し部分を含んでいてもよく、トランスポゼースに特異的なトランスポゾン配列が存在する。
【0051】
本発明で用いるトランスポゾン配列は、DNA型トランスポゾン由来の塩基配列が好ましく、トランスポゼースにより認識される、哺乳動物細胞内で転位可能な天然または人工の一対のDNA型トランスポゾン由来の塩基配列がより好ましい。
【0052】
DNA型トランスポゾン由来の塩基配列としては、例えば、メダカ由来のTol1トランスポゾントランスポゾンおよびTol2トランスポゾン、サケ科魚類ゲノムに存在していた非自律性のトランスポゾンから再構築されたSleeping Beauty、カエル由来の人工トランスポゾンFrog Prince並びに昆虫由来のトランスポゾンPiggyBac由来の塩基配列が挙げられる。
【0053】
これらの中でも、配列表の配列番号6で表される塩基配列からなるメダカ由来Tol2トランスポゾンおよび配列表の配列番号13で表される塩基配列からなるメダカ由来Tol1トランスポゾン由来の塩基配列が好ましい。
【0054】
一対のTol2トランスポゾン由来の塩基配列としては、配列表の配列番号6で表されるTol2トランスポゾンの塩基配列の1番目から2229番目の塩基配列および4148番目から4682番目の塩基配列が挙げられる。
【0055】
一対のTol2トランスポゾン由来の塩基配列としては、より好ましくは、配列表の配列番号1で表されるTol2トランスポゾンの塩基配列における、1番目から200番目の塩基配列(配列番号2)(以下、「Tol2−L配列」と記載する)と、2285番目から2788番目の塩基配列(配列番号3)(以下、Tol2−R配列と記載する)が挙げられる。
【0056】
一対のTol1トランスポゾン由来のトランスポゾン配列としては、配列表の配列番号13で表されるTol1トランスポゾンの塩基配列の1番目から157番目の塩基配列および1748番目から1855番目の塩基配列が挙げられる。
【0057】
一対のTol1トランスポゾン由来のトランスポゾン配列としては、より好ましくは、配列表の配列番号13で表されるTol1トランスポゾンの塩基配列における、1番目から200番目の塩基配列(配列番号14)(以下、「Tol1−L配列」と記載する)と、1351番目から1855番目の塩基配列(配列番号15)の(以下、Tol1−R配列と記載する)が挙げられる。
【0058】
本発明に用いるトランスポゾン配列には、上記のトランスポゾン由来のトランスポゾン配列の部分配列を用いること、塩基配列の長さを調節すること、および塩基配列の付加、欠失または置換による改変を行うことにより、転移反応が制御されたトランスポゾン配列も含まれる。
【0059】
本発明の目的タンパク質を生産する方法としては、少なくとも2種類のトランスポゾン配列と少なくとも2種類のトランスポゼースを用いて、少なくとも1種類の目的タンパク質を製造することも含まれる。
【0060】
具体的には、例えば、2つのTol1トランスポゾン配列に挿入された1つ目の目的タンパク質をコードするDNAを含むベクター、2つのTol2トランスポゾン配列に挿入された2つ目の目的タンパク質をコードするDNAを含むベクター、Tol1トランスポゼース発現ベクターおよびTol2トランスポゾン発現ベクターを同時に、または順番に浮遊性の哺乳動物細胞へ導入し、各々の目的タンパク質をコードするDNAを該哺乳動物細胞の染色体へ組込み、2種類の目的のタンパク質を生産する哺乳動物細胞を取得する工程を含む、タンパク質の製造方法が挙げられる。
【0061】
また、1つ目の目的タンパク質と2つ目の目的タンパク質は同一でもよく、細胞に導入する遺伝子のコピー数を増加させることで、目的タンパク質の生産性を向上させることもできる。
【0062】
トランスポゾンの転移反応の制御は、トランスポゼースによるトランスポゾン配列の認識を促進または抑制することによって、転移反応を促進または抑制することができる。また、トランスポゾンの転移反応は、一対(二つ)のトランスポゾン配列の間に含まれる塩基配列の長さを短くすることでその転移反応を増加させることができ、長くすることで転移反応を低下させることができる。よって、複数のタンパク質からなる目的タンパク質を発現・製造する場合は、各タンパク質をコードするDNAを別々の発現ベクターに組込み、該DNAを宿主細胞の染色体内に組込み、且つ該目的タンパク質を生産する浮遊性の哺乳動物細胞を作製し、該細胞を用いて目的タンパク質を製造することができる。
【0063】
本明細書において「トランスポゼース」とは、トランスポゾン配列を有する塩基配列を認識して、該塩基配列の間に存在する遺伝子断片を染色体上、または染色体から別の染色体へ転位させる酵素を意味する。
【0064】
トランスポゼースとしては、例えば、メダカ由来のTol1およびTol2、サケ科魚類ゲノムに存在していた非自律性のトランスポゾンから再構築されたSleeping Beauty(SB)、Sleeping Beauty 11(SB11)、カエル由来の人工トランスポゾンFrog Prince(FP)、または昆虫由来のトランスポゾンPiggyBac(PB)由来の酵素が挙げられる。
【0065】
トランスポゼースは、天然型の酵素を用いてもよく、トランスポゼースと同様の転位活性を保持していれば、その一部のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されていてもよい。トランスポゼースの酵素活性を制御することで、トランスポゾン配列の間に存在する遺伝子断片の転移反応を制御することができる。
【0066】
トランスポゼースと同様の転移活性を保持するかを解析するには、日本国特開2003−235575号公報により開示されている2−コンポーネント解析システムにより測定することができる。
【0067】
具体的には、別々の、Tol2トランスポゼースを欠損したTol2トランスポゾン(Tol2由来非自律性トランスポゾン)を含むプラスミドとTol2トランスポゼースを含むプラスミドを用いて、トランスポゼースの作用により非自律性Tol2エレメントが哺乳動物細胞の染色体内に転移、挿入し得るかを解析することができる。
【0068】
本明細書において「非自律性トランスポゾン」とは、トランスポゾン内に存在するトランスポゼースを欠損し、自律的には転移し得ないトランスポゾンをいう。非自律性トランスポゾンは、トランスポゼースのタンパク質、トランスポゼースのタンパク質をコードするmRNAまたはトランスポゼースのタンパク質をコードするDNAを細胞内に同時に存在させることで、非自律性トランスポゾンのトランスポゾン配列の間に挿入されたDNAを、宿主細胞の染色体内に転移させることができる。
【0069】
トランスポゼース遺伝子とは、トランスポゼースをコードする遺伝子を意味する。哺乳動物細胞での発現効率を向上させるために、該遺伝子の翻訳開始コドンATGの上流に、kozakのコンセンサス配列[Kozak,M.Nucleic Acids Res.,12,857−872(1984)]、またはリボソーム結合配列であるシャイン・ダルガルノ(Shine−Dalgarno)配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6〜18塩基)に調節する配列が連結されてもよい。
【0070】
本発明の方法において、少なくとも1種類の発現ベクター中の目的タンパク質をコードするDNAを宿主細胞の染色体に組み込むためには、目的タンパク質をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクターを宿主細胞に導入し、該細胞内に導入された発現ベクターに含まれるトランスポゾン配列に対してトランスポゼースを作用させる。
【0071】
宿主細胞内に導入された発現ベクターに含まれるトランスポゾン配列に対してトランスポゼースを作用させるためには、トランスポゼースを該細胞内に注入してもよいし、トランスポゼースをコードするDNAを含む発現ベクターを、少なくとも1種類の目的タンパク質をコードするDNA、または目的タンパク質をコードするDNAおよび選択マーカー遺伝子を含む発現ベクターと共に宿主細胞へ導入してもよい。また、トランスポゼース遺伝子をコードするRNAを宿主細胞内に導入して、トランスポゼースを該細胞内で発現させてもよい。
【0072】
発現ベクターとしては特に限定はなく、トランスポゼース遺伝子を組み込んだ発現ベクターを導入する宿主細胞、用途などに応じて、当業者において知られている発現ベクターから適宜選択して使用することができる。
【0073】
本発明において、2種類以上のポリペプチドから構成される目的タンパク質、または2種類以上の目的タンパク質を生産する場合には、各タンパク質をコードするDNAを同一の発現ベクターに組み込むか、またはそれぞれ異なる発現ベクターに組み込み、当該発現ベクターを宿主細胞に導入することにより、該DNAが該細胞の染色体に組み込まれたタンパク質生産細胞を作製することができる。
【0074】
トランスポゼースは、発現ベクターに組み込んで目的タンパク質と一緒に発現させてもよいし、発現ベクターとは別のベクターに組み込んで発現させてもよい。トランスポゼースは一過性に働かせてもよいし、継続的に働かせてもよいが、安定した産生細胞を作製するためにはトランスポゼースを一過性に働かせることが好ましい。
【0075】
トランスポゼースを一過性に働かせる方法としては、例えば、目的タンパク質をコードするDNAを含む発現ベクターとは別の発現ベクターにトランスポゼースをコードするDNAを組み込み、両発現プラスミドを宿主細胞に同時に導入する方法が挙げられる。
【0076】
本明細書において「発現ベクター」とは、哺乳動物細胞を形質転換させて目的タンパク質を発現させるために用いる発現ベクターを意味する。本発明で用いる発現ベクターは、発現カセットの両側に少なくとも一対のトランスポゾン配列が存在する構造を有する。
【0077】
本明細書において「発現カセット」とは、目的タンパク質を発現させるために必要な遺伝子発現制御領域および目的タンパク質をコードする配列を有する核酸配列を意味する。該遺伝子発現制御領域としては、例えば、エンハンサー、プロモーターおよびターミネーターなどが挙げられる。発現カセットには、選択マーカー遺伝子を含んでいてもよい。
【0078】
プロモーターとしては、哺乳動物細胞中で機能を発揮できるものであればいずれも用いることができる。例えば、サイトメガロウイルス(CMV)のIE(immediate early)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、SRαプロモーター、モロニーマウス白血病ウイルス(moloney murine leukemia virus)のプロモーターおよびエンハンサー等が挙げられる。また、ヒトCMVのIE遺伝子のエンハンサーをプロモーターと共に用いてもよい。
【0079】
「選択マーカー遺伝子」とは、プラスミドベクターが導入された細胞と該ベクターを欠く細胞とを区別するために使用することができる任意の他マーカー遺伝子を意味する。
【0080】
選択マーカー遺伝子としては、例えば、薬剤耐性遺伝子[ネオマイシン耐性遺伝子、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、シクロヘキシミド耐性遺伝子(日本国特開2002−262879号公報)]および蛍光または生体発光マーカー遺伝子(緑色蛍光タンパクGFPなど)などが挙げられる。
【0081】
本発明において、好ましい選択マーカーは薬剤耐性遺伝子であり、特に好ましい選択マーカーはシクロヘキシミド耐性遺伝子である。更に、選択マーカー遺伝子を遺伝子改変してアミノ酸改変体を作製すること、または選択マーカー遺伝子の転写または翻訳を調整すること(例えば、プロモーターの改変およびアミノ酸コドンの改変など)により、選択マーカータンパク質の薬剤耐性能および発光能を変えることもできる。更に、薬剤濃度を調整することで、薬剤耐性強度の異なる選択マーカー遺伝子導入細胞を選択することもできる。
【0082】
選択マーカータンパク質の薬剤耐性能および発光能を調整するためには、減弱化した選択マーカー遺伝子を用いることが好ましい。減弱化した選択マーカー遺伝子とは、選択マーカー遺伝子にコードされるタンパク質の細胞内における活性が低くなるように改変された選択マーカー遺伝子をいう。
【0083】
細胞内における活性が低くなるように改変された選択マーカー遺伝子としては、例えば、(A)選択マーカー遺伝子にコードされるタンパク質のアミノ酸配列の改変により当該タンパク質の細胞内における活性が低くなった選択マーカー遺伝子および(B)選択マーカー遺伝子の発現を制御する塩基配列の改変もしくは選択マーカー遺伝子のORF(Open Reading Frame)内の塩基配列の改変により当該タンパク質の細胞内での発現量が低下した選択マーカー遺伝子が挙げられる。
【0084】
選択マーカー遺伝子にコードされるタンパク質のアミノ酸配列の改変により当該タンパク質の細胞内における活性が低くなった選択マーカー遺伝子としては、例えば、Sauter et al.[Biotech. Bioeng. 89,530−538(2005)]またはChen et al.[Journal of Immunological Methods 295,49−56(2004)]に記載のネオマイシン耐性遺伝子を挙げることができる。
【0085】
選択マーカー遺伝子の発現を制御する塩基配列を改変することにより当該タンパク質の細胞内での発現量を低下させる方法としては、例えば、選択マーカー遺伝子の発現を制御するプロモーター配列、ターミネーター配列、エンハンサー配列、kozakのコンセンサス配列またはシャイン・ダルガルノ配列の配列を改変する方法が挙げられる。より具体的には、例えば、選択マーカー遺伝子の発現を制御するプロモーター配列を、より弱いプロモーター配列に置換する方法が挙げられる。
【0086】
選択マーカー遺伝子のORF内の塩基配列の改変により当該タンパク質の細胞内での発現量を低下させる方法としては、例えば、当該ORF内のコドンを当該細胞内での使用頻度がより低い同義語コドンに置換する方法を挙げることができる。
【0087】
本発明の減弱化した選択マーカー遺伝子としては、例えば、上記の当該遺伝子のORF内のコドンを当該細胞内での使用頻度がより低い同義語コドンに置換された選択マーカー遺伝子を挙げることができる。
【0088】
様々な生物種の細胞内において、各同義語コドンのうち使用頻度のより低い同義語コドンは、公知の文献またはデータベースなどに基づき選択することができる。
【0089】
このような使用頻度の低い同義語コドンへの置換として具体的には、例えば、CHO細胞の場合、ロイシンのコドンをTTAに、アルギニンのコドンをCGAもしくはCGTに、アラニンのコドンをGCGに、バリンのコドンをGTAに、セリンのコドンをTCGに、イソロイシンのコドンをATAに、スレオニンのコドンをACGに、プロリンをCCGに、グルタミン酸のコドンをGAAに、チロシンのコドンをTATに、リジンのコドンをAAAに、フェニルアラニンのコドンをTTTに、ヒスチジンのコドンをCATに、グルタミンのコドンをCAAに、アスパラギンのコドンをAATに、アスパラギン酸のコドンをGATに、システインのコドンをTGTに、またはグリシンのコドンをGGTに、置換することをいう。
【0090】
減弱化した選択マーカー遺伝子において、改変前の選択マーカー遺伝子と比べて置換されるコドンの数は、タンパク質の生産細胞を効率的に取得しうる限り特に制限はないが、20個以上のアミノ酸残基に対応するコドンを置換することが好ましい。
【0091】
減弱化した選択マーカー遺伝子において、改変前の選択マーカー遺伝子と比べて改変される塩基の数は、特に制限はないが、選択マーカー遺伝子をコードする塩基配列の10%以上を改変することが好ましい。
【0092】
また、減弱化した選択マーカー遺伝子において置換するコドンのコードするアミノ酸残基は、特に制限はないが、好ましくはロイシン、アラニン、セリンおよびバリンを挙げることができる。
【0093】
減弱化した選択マーカー遺伝子において、ロイシン残基に対応するコドンを置換する場合は、特に制限はないが、選択マーカー遺伝子に含まれる全てのロイシン残基に対応するコドンのうち、70%以上のロイシン残基に対応するコドンを置換することが好ましい。
【0094】
また減弱化した選択マーカー遺伝子において、アラニン残基に対応するコドンを置換する場合は、特に制限はないが、選択マーカー遺伝子に含まれる全てのアラニン残基に対応するコドンのうち、70%以上のアラニン残基に対応するコドンを置換することが好ましい。
【0095】
このような使用頻度の低い同義語コドンに置換することにより改変して得られる、減弱化した選択マーカー遺伝子の例として具体的には、配列番号37、38または39で表される塩基配列からなるネオマイシン耐性遺伝子、配列番号41、43または44で表される塩基配列からなるピューロマイシン耐性遺伝子、配列番号45または46で表される塩基配列からなるゼオシン耐性遺伝子、配列番号47または48で表される塩基配列からなるハイグロマイシン耐性遺伝子を挙げることができる。
【0096】
さらに、抗体生産細胞の作製において薬剤耐性細胞を選択する際の薬剤の濃度を通常用いられる濃度に比べ、著しく高くすること、もしくは薬剤耐性遺伝子が薬剤を代謝・分解する前に追加投与することなどによっても、選択マーカー遺伝子を減弱化することが可能である。
【0097】
シクロヘキシミド(以下、CHXと略記する場合もある)はタンパク質合成阻害剤であり、CHX耐性遺伝子を選択マーカーとした利用例としては、酵母[Kondo K.J.Bacteriol.,177,24,7171−7177(1995)]、動物細胞(日本国特開2002−262879号公報)の例が知られている。
【0098】
動物細胞では、配列表の配列番号5で表される塩基配列でコードされるヒトリボソームタンパク質サブユニットのL36aの54位のプロリンがグルタミンに置換された、配列表の配列番号7で表される塩基配列でコードされるタンパク質を発現させた形質転換株が、シクロヘキシミドに対する耐性を付与することが明らかとなっている。また、シクロヘキシミド耐性マーカーとしては、例えば、ヒトリボソームタンパク質サブユニットL44の54位のプロリンがグルタミンに置換された変異ヒトリボソームタンパク質サブユニットL44が挙げられる。
【0099】
宿主細胞に、上記のトランスポゾン配列を含むタンパク質発現ベクター、トランスポゼースを発現するプラスミドベクターまたはRNAを導入する方法としては、特に限定はなく、例えば、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポソーム法、ジーンガン法およびリポフェクション法などが挙げられる。
【0100】
トランスポゼースを直接タンパク質として導入する方法としては、例えば、マイクロインジェクション法およびエンドサイトーシスによる細胞への供給が挙げられる。遺伝子導入は、例えば、新遺伝子工学ハンドブック、村松正實・山本雅/編、羊土社、ISBN 9784897063737に記載の方法で実施できる。
【0101】
宿主細胞としては、継代培養が可能で安定的に目的タンパク質を発現することができる哺乳動物細胞が挙げられる。宿主細胞としては、例えば、PER.C6細胞、ヒト白血病細胞Namalwa細胞、サル細胞COS細胞、ラットミエローマ細胞YB2/3HL.P2.G11.16Ag.20(またはYB2/0ともいう)、マウスミエローマ細胞NS0、マウスミエローマ細胞SP2/0−Ag14、シリアンハムスター細胞BHK、HBT5637(日本国特開昭63−000299号公報)チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞CHO細胞[Journal of Experimental Medicine,108,945(1958);Proc.Natl.Acad.Sci.USA,601275(1968);Genetics,55,513(1968);Chromosoma,41,129(1973);Methods in Cell Science,18,115(1996);Radiation Research,148,260(1997);Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77,4216(1980);Proc.Natl.Acad.Sci.,60,1275(1968);Cell,6,121(1975);Molecular Cell Genetics, Appendix I,II(pp.883−900)]、CHO/DG44、CHO−K1(ATCC CCL−61)、DUKXB11(ATCC CCL−9096)、Pro−5(ATCC CCL−1781)、CHO−S(Life Technologies,Cat #11619)、Pro−3およびCHO細胞の亜株が挙げられる。
【0102】
また、上記の宿主細胞は、染色体DNAの改変および外来性遺伝子の導入等により、タンパク質の生産に適するように改変して、本発明のタンパク質の生産方法に用いることもできる。
【0103】
更に、宿主細胞として、生産する目的タンパク質に結合した糖鎖構造を制御するために、レクチン耐性を獲得したLec13[Somatic Cell and Molecular genetics,12,55(1986)]、α1,6−フコース転移酵素遺伝子が欠損したCHO細胞(国際公開第05/35586号、国際公開第02/31140号)、GDP−mannose 4,6−dehydratase(GMD)が欠損した細胞およびFxタンパク質が欠損した細胞を用いることもできる。
【0104】
本発明において目的タンパク質とは、少なくとも1種類のポリペプチドからなるタンパク質、複数のポリペプチドまたはタンパク質からなる複合タンパク質何れをも含む。また、本発明においてタンパク質とポリペプチドは同義であるが、比較的低分子量のタンパク分子または複合タンパク質を構成するタンパク質をポリペプチドとして定義することもある。
【0105】
本発明において目的タンパク質は、本発明の方法により発現可能であれば、いかなるタンパク質、ポリペプチドでもよい。具体的には、例えば、ヒト血清タンパク質、アルブミン結合タンパク質、ペプチドホルモン、増殖因子、サイトカイン、血液凝固因子、線溶系タンパク質、抗体、選択マーカータンパク質、膜タンパク質および各種タンパク質の部分断片などが挙げられる。具体的には、例えば、ヒト静脈イムノグロブリン(IVIG)、エリスロポイエチン(EPO)、アルブミン、成長ホルモン(GH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン、インスリン様増殖因子−I(IGF−I)、インターフェロン(INF)、Fasリガンド、血液凝固因子(II、VII、VIII、IX、X)、プロトロンビン、フィブリノーゲン、プロテインC、プロテインS、アンチトロンビンIII(ATIII)、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体および薬剤選択(耐性)遺伝子などが挙げられる。
【0106】
抗体とは、抗体重鎖(H鎖)ポリペプチドと2本の抗体軽鎖(L鎖)ポリペプチドからなる分子であり、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMサブクラスが知られている。更にIgGはIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4クラスに分類される。
【0107】
IgG抗体は2本のH鎖ポリペプチドと2本のL鎖ポリペプチドからなるヘテロテトラマー分子である。H鎖およびL鎖はそれぞれ抗原結合に関与する可変領域(V)および定常領域(C)からなり、VH、CH、VLまたはCLと呼ばれる。CH領域は更にCH1、CH2、CH3領域に分類され、CH2およびCH3領域を合わせてFc領域または単にFcと呼ばれる。
【0108】
抗体には、単一のエピトープに反応するモノクローナル抗体、複数のエピトープに反応するポリクローナル抗体、遺伝子組換え抗体が包含される。
【0109】
モノクローナル抗体とは、単一クローンの抗体産生細胞が分泌する抗体であり、ただ一つのエピトープ(抗原決定基ともいう)を認識し、モノクローナル抗体を構成するアミノ酸配列(1次構造)が均一である。
【0110】
ポリクローナル抗体とは、モノクローナル抗体の混合物であり、複数のエピトープに反応することができる。
【0111】
遺伝子組み換え抗体としては、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、Fc融合タンパク質、Fcアミノ酸改変抗体、多価抗体および該部分断片などが挙げられる。アミノ酸改変抗体は、可変領域または定常領域いずれの部分にアミノ酸残基改変が施されていてもよく、抗体の活性が制御されている。
【0112】
多価抗体には、1つの抗原上の2つ以上の異なるエピトープに反応する多価抗体、2つ以上の異なる抗原に反応する多価抗体等があるがいずれのものでもよい。また抗原への結合活性を維持した多価抗体であればいずれの構造の多価抗体でもよい(国際公開第2001/77342号、米国特許第7,612,181号明細書、国際公開第2009/131239号)。
【0113】
本発明の製造方法によれば、上述のいずれの目的タンパク質および/または目的ペプチドを発現、製造することができる。
【0114】
本発明の少なくとも1種類の目的タンパク質をコードするDNAが導入された細胞としては、以下の(A)および(B)の工程により製造にされる抗体産生細胞が挙げられる。
工程(A) 以下の(a)〜(c)から選ばれる1の発現ベクターの組み合わせまたは発現ベクター(d)、および発現ベクター(e)を浮遊性の哺乳動物細胞に同時に導入する工程
(a)抗体のH鎖をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター、抗体のL鎖をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクターおよび選択マーカー遺伝子をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター
(b)抗体のH鎖をコードするDNAおよび選択マーカー遺伝子をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター、ならびに抗体のL鎖をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター
(c)抗体のL鎖をコードするDNAおよび薬剤耐性遺伝子をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター、ならびに抗体のH鎖をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター
(d)抗体のH鎖、L鎖および選択マーカー遺伝子をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター
(e)トランスポゾン配列を認識し、且つ一対のトランスポゾン配列の間に挿入された遺伝子断片を染色体に転移させる活性を有するトランスポゼースをコードするDNAを含むベクター
工程(B) 工程(A)で浮遊性の哺乳動物細胞に導入した発現ベクター(e)によりトランスポゼースを一過性発現させて、一対のトランスポゾン配列の間に挿入された前記H鎖、L鎖および選択マーカー遺伝子が前記哺乳動物細胞の染色体に組み込まれた、抗体を発現する浮遊性の哺乳動物細胞を選択する工程
【0115】
本発明の抗体を製造する方法としては、以下の工程(A)〜(C)を含む、目的タンパク質を生産する方法を挙げることができる。
工程(A) 以下の(a)〜(c)から選ばれる1の発現ベクターの組み合わせまたは発現ベクター(d)、および発現ベクター(e)を浮遊性の哺乳動物細胞に同時に導入する工程
(a)抗体のH鎖をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター、抗体のL鎖をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクターおよび選択マーカー遺伝子をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター
(b)抗体のH鎖をコードするDNAおよび薬剤耐性遺伝子をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター、ならびに抗体のL鎖をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター
(c)抗体のL鎖をコードするDNAおよび選択マーカー遺伝子をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター、ならびに抗体のH鎖をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター
(d)抗体のH鎖、L鎖および選択マーカー遺伝子をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター
(e)トランスポゾン配列を認識し、且つ一対のトランスポゾン配列の間に挿入された遺伝子断片を染色体に転移させる活性を有するトランスポゼースをコードするDNAを含むベクター
工程(B) 工程(A)で浮遊性の哺乳動物細胞に導入した発現ベクター(e)によりトランスポゼースを一過性発現させて、一対のトランスポゾン配列の間に挿入された前記H鎖、L鎖および選択マーカー遺伝子を前記哺乳動物細胞の染色体に組込み、抗体を発現する浮遊性の哺乳動物細胞を得る工程工程(C) 工程(B)で得られた抗体を発現する浮遊性の哺乳動物細胞を浮遊培養して、抗体を生産させる工程
【0116】
また、本発明は、以下の(A)および(B)の工程を含む抗体高生産株の製造方法およびスクリーニング方法を含む。
工程(A) 以下の(a)〜(c)から選ばれる1の発現ベクターの組み合わせまたは発現ベクター(d)、および発現ベクター(e)を浮遊性の哺乳動物細胞に同時に導入する工程
(a)抗体のH鎖をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター、抗体のL鎖をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクターおよび選択マーカー遺伝子をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター
(b)抗体のH鎖をコードするDNAおよび選択マーカー遺伝子をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター、ならびに抗体のL鎖をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター
(c)抗体のL鎖をコードするDNAおよび選択マーカー遺伝子をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター、ならびに抗体のH鎖をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター
(d)抗体のH鎖、L鎖および選択マーカー遺伝子をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター
(e)トランスポゾン配列を認識し、且つ一対のトランスポゾン配列の間に挿入された遺伝子断片を染色体に転移させる活性を有するトランスポゼースをコードするDNAを含むベクター
工程(B) 工程(A)で浮遊性の哺乳動物細胞に導入した発現ベクター(e)によりトランスポゼースを一過性発現させて、一対のトランスポゾン配列の間に挿入された前記H鎖、L鎖および選択マーカー遺伝子が前記哺乳動物細胞の染色体に組込まれ、抗体を高発現する浮遊性の哺乳動物細胞を選択する工程
【0117】
更に、本発明は、以下の(A)、(B)および(C)の工程を含む抗体製造方法を含む。
工程(A) 以下の(a)〜(c)から選ばれる1の発現ベクターの組み合わせまたは発現ベクター(d)、および発現ベクター(e)を浮遊性の哺乳動物細胞に同時に導入する工程
(a)抗体のH鎖をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター、抗体のL鎖をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクターおよび選択マーカー遺伝子をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター
(b)抗体のH鎖をコードするDNAおよび選択マーカー遺伝子をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター、ならびに抗体のL鎖をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター
(c)抗体のL鎖をコードするDNAおよび選択マーカー遺伝子をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター、ならびに抗体のH鎖をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター
(d)抗体のH鎖、L鎖および選択マーカー遺伝子をコードするDNAを含む遺伝子断片を含み、且つ該遺伝子断片の両端に一対のトランスポゾン配列を含む発現ベクター
(e)トランスポゾン配列を認識し、且つ一対のトランスポゾン配列の間に挿入された遺伝子断片を染色体に転移させる活性を有するトランスポゼースをコードするDNAを含むベクター
工程(B) 工程(A)で浮遊性の哺乳動物細胞に導入した発現ベクター(e)によりトランスポゼースを一過性発現させて、一対のトランスポゾン配列の間に挿入された前記H鎖、L鎖および選択マーカー遺伝子を前記哺乳動物細胞の染色体に組込み、抗体を発現する浮遊性の哺乳動物細胞を得る工程
工程(C) 工程(B)で得られた抗体を発現する浮遊性の哺乳動物細胞を浮遊培養して、抗体を生産させる工程
【0118】
本発明の少なくとも1種類の目的タンパク質をコードするDNAが導入された哺乳動物細胞としては、例えば、複数の異なる抗体遺伝子が導入されたポリクローナル抗体産生細胞および複合体分子産生細胞などが挙げられる。
【0119】
ポリクローナル抗体産生細胞としては、例えば、1つの抗原に対する少なくとも2種類以上の異なるモノクローナル抗体遺伝子が導入された細胞、複数の抗原に対する複数のモノクローナル抗体遺伝子が導入された細胞、抗原が免疫された非ヒト動物由来抗体遺伝子ライブラリーが導入された細胞および患者由来抗体遺伝子ライブラリーが導入された細胞などが挙げられる。
【0120】
複合体分子生産細胞は、細胞内で共発現させた個々の分子が複合体分子を形成するタンパク質をコードするDNAが導入された細胞であればいずれのものでもよい。具体的には、例えば、FcγRIII(CD16)とcommonγ鎖が共導入された細胞、neonatal Fc receptor(FcRn)とβ2マクログロブリンが共導入された細胞、およびCD98とLAT1が共導入された細胞(国際公開第2007/114496号)などが挙げられる。
【0121】
本発明の抗体製造方法によって製造される抗体はいずれの抗体でもよく、例えば、腫瘍関連抗原を認識する抗体、アレルギーまたは炎症に関連する抗原を認識する抗体、循環器疾患に関連する抗原を認識する抗体、自己免疫疾患に関連する抗原を認識する抗体、およびウイルスまたは細菌感染に関連する抗原を認識する抗体などが挙げられる。
【0122】
腫瘍関連抗原としては、例えば、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD7、CD9、CD10、CD13、CD19、CD20、CD21、CD22、CD25、CD28、CD30、CD32、CD33、CD38、CD40、CD40 ligand(CD40L)、CD44、CD45、CD46、CD47、CD52、CD54、CD55、CD55、CD59、CD63、CD64、CD66b、CD69、CD70、CD74、CD80、CD89、CD95、CD98、CD105、CD134、CD137、CD138、CD147、CD158、CD160、CD162、CD164、CD200、CD227、adrenomedullin、angiopoietin related protein 4(ARP4)、aurora、B7−H1、B7−DC、integlin、bone marrow stromal antigen 2(BST2)、CA125、CA19.9、carbonic anhydrase 9(CA9), cadherin、cc−chemokine receptor(CCR) 4、CCR7、carcinoembryonic antigen(CEA)、cysteine−rich fibroblast growth factor receptor−1(CFR−1)、c−Met、c−Myc、collagen、CTA、connective tissue growth factor(CTGF)、CTLA−4、cytokeratin−18、DF3、E−catherin、epidermal growth facter receptor(EGFR)、EGFRvIII、EGFR2(HER2)、EGFR3 (HER3)、EGFR4(HER4)、endoglin、epithelial cell adhesion molecule(EpCAM)、endothelial protein C receptor (EPCR)、ephrin、ephrin receptor(Eph)、EphA2、endotheliase−2(ET2)、FAM3D、fibroblast activating protein(FAP)、Fc receptor homolog 1(FcRH1)、ferritin、fibroblast growth factor−8 (FGF−8)、FGF8 receptor、basic FGF(bFGF)、bFGF receptor、FGF receptor(FGFR) 3、FGFR4、FLT1、FLT3、folate receptor、Frizzled homologue 10(FZD10)、frizzled receptor 4(FZD−4)、G250、G−CSF receptor、ganglioside(例えば、GD2、GD3、GM2およびGM3等)、globo H、gp75、gp88、GPR−9−6、heparanase I、hepatocyte growth factor (HGF)、HGF receptor、HLA antigen(例えば、HLA−DR等)、HM1.24、human milk fat globule(HMFG)、hRS7、heat shock protein 90(hsp90)、idiotype epitope、insulin−like growth factor(IGF)、IGF receptor(IGFR)、interleukin(例えば、IL−6およびIL−15等)、interleukin receptor(例えば、IL−6RおよびIL−15R等)、integrin、immune receptor translocation associated−4(IRTA−4)、kallikrein 1、KDR、KIR2DL1、KIR2DL2/3、KS1/4、lamp−1、lamp−2、laminin−5、Lewis y、sialyl Lewis x、lymphotoxin−beta receptor(LTBR)、LUNX、melanoma−associated chondroitin sulfate proteoglycan(MCSP)、mesothelin、MICA、Mullerian inhibiting substance type II receptor(MISIIR)、mucin、neural cell adhesion molecule(NCAM)、Necl−5、Notch1、osteopontin、platelet−derived growth factor(PDGF)、PDGF receptor、platelet factor−4(PF−4)、phosphatidylserine、Prostate Specific Antigen(PSA)、prostate stem cell antigen(PSCA)、prostate specific membrane antigen(PSMA)、Parathyroid hormone related protein/peptide(PTHrP)、receptor activator of NF−kappaB ligand(RANKL)、receptor for hyaluronic acid mediated motility(RHAMM)、ROBO1、SART3、semaphorin 4B(SEMA4B)、secretory leukocyte protease inhibitor(SLPI)、SM5−1、sphingosine−1−phosphate、tumor−associated glycoprotein−72(TAG−72)、transferrin receptor(TfR)、TGF−beta、Thy−1、Tie−1、Tie2 receptor、T cell immunoglobulin domain and mucin domain 1(TIM−1)、human tissue factor(hTF)、Tn antigen、tumor necrosis factor(TNF)、Thomsen−Friedenreich antigen(TF antigen)、TNF receptor、tumor necrosis factor−related apoptosis−inducing ligand(TRAIL)、TRAIL receptor(例えば、DR4およびDR5等)、system ASC amino acid transporter 2(ASCT2)、trkC、TROP−2、TWEAK receptor Fn14、type IV collagenase、urokinase receptor、vascular endothelial growth factor(VEGF)、VEGF receptor(例えば、VEGFR1、VEGFR2およびVEGFR3等)、vimentinおよびVLA−4等が挙げられ、これら抗原に対する抗体などが挙げられる。
【0123】
更に腫瘍関連抗原を認識する抗体としては、例えば、抗GD2抗体[Anticancer Res.,13,331(1993)]、抗GD3抗体[Cancer Immunol.Immunother.,36,260(1993)]、抗GM2抗体[Cancer Res.,54,1511(1994)]、抗CD52抗体[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89, 4285(1992)]、抗MAGE抗体[British J.Cancer,83,493(2000)]、抗HM1.24抗体[Molecular Immunol.,36,387(1999)]、抗副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)抗体[Cancer,88,2909(2000)]、抗bFGF抗体、抗FGF−8抗体[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86,9911(1989)]、抗bFGFR抗体、抗FGFR1抗体(国際公開第2005/037235号)、抗FGF−8R抗体[J.Biol.Chem.,265,16455(1990)]、抗IGF抗体[J.Neurosci.Res.,40,647(1995)]、抗IGF−IR抗体[J.Neurosci.Res),40,647(1995)]、抗PSMA抗体[J.Urology,160,2396(1998)]、抗VEGF抗体[Cancer Res),57,4593(1997)、Avastin
(R)]、抗VEGFR抗体[Oncogene,19,2138(2000)、国際公開第96/30046号]、抗CD20抗体[Curr.Opin.Oncol.,10,548(1998)、US5,736,137、Rituxan
(R)、Ocrelizumab、Ofatumumab]、抗EGFR抗体(Erbitux
(R)、Vectivix
(R))、抗HER2抗体(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89,4285(1992)、US5,725,856、Herceptin
(R)、Pertuzumab)、抗HER3抗体(US2008/0124345)、c−Met抗体(US6,468,529)、抗CD10抗体、抗EGFR抗体(国際公開第96/402010号)、抗Apo−2R抗体(国際公開第98/51793号)、抗ASCT2抗体(国際公開第2010/008075号)、抗CEA抗体[キャンサー・リサーチ(Cancer Res.),55(23 suppl):5935s−5945s,(1995)]、抗CD38抗体、抗CD33抗体、抗CD22抗体、抗CD20アミノ酸改変抗体(Immunology,115,4393,2010.)、抗EpCAM抗体、抗A33抗体および抗葉酸受容体抗体(MRAb−003)などが挙げられる。
【0124】
アレルギーまたは炎症に関連する抗原を認識する抗体としては、例えば、抗インターロイキン6抗体[Immunol.Rev.,127,5(1992)]、抗インターロイキン6受容体抗体[Molecular Immunol.,31,371(1994)、Actemura
(R)]、抗インターロイキン5抗体[Immunol.Rev.,127,5(1992)]、抗インターロイキン5受容体抗体、抗インターロイキン4抗体[Cytokine,3,562(1991)]、抗インターロイキン4受容体抗体[J.Immunol.Methods,217,41(1998)]、抗腫瘍壊死因子抗体[Hybridoma,13,183(1994)、Humira
(R)]、抗腫瘍壊死因子受容体抗体[Molecular Pharmacol.,58,237(2000)]、抗CCR4抗体[Nature,400,776,(1999)]、抗ケモカイン抗体(Peri et al.,J.Immunol.Meth.,174,249−257,1994)および抗ケモカイン受容体抗体[J.Exp.Med.,186,1373(1997)]などが挙げられる。循環器疾患に関連する抗原を認識する抗体としては、例えば、抗GPIIb/IIIa抗体[J.Immunol.,152,2968(1994)]、抗血小板由来増殖因子抗体[サイエンス(Science),253,1129(1991)]、抗血小板由来増殖因子受容体抗体[J.Biol.Chem.,272,17400(1997)]、抗血液凝固因子抗体[Circulation,101,1158(2000)]、抗IgE抗体、抗αVβ3抗体およびα4β7抗体などが挙げられる。
【0125】
ウイルスまたは細菌感染に関連する抗原を認識する抗体としては、例えば、抗gp120抗体[Structure,8,385(2000)]、抗CD4抗体[J.Rheumatology,25,2065(1998)]、抗CCR5抗体、抗ベロ毒素抗体[J.Clin.Microbiol.,37,396(1999)]および抗M2抗体(日本国特開2003−235575号公報)などが挙げられる。
【0126】
本発明の方法により生産されるモノクローナル抗体のエフェクター活性は、種々の方法で制御することができる。例えば、抗体のFc領域の297番目のアスパラギン(Asn)に結合するN結合複合型糖鎖の還元末端に存在するN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)にα1,6結合するフコース(コアフコースともいう)の量を制御する方法(国際公開第05/035586号、国際公開第02/31140号、国際公開第00/61739号)および抗体のFc領域のアミノ酸残基を改変することで制御する方法などが知られている。本発明の方法により生産されるモノクローナル抗体にはいずれの方法を用いても、エフェクター活性を制御することができる。
【0127】
「エフェクター活性」とは、抗体のFc領域を介して引き起こされる抗体依存性の活性をいい、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC活性)、補体依存性傷害活性(CDC活性)、またはマクロファージ若しくは樹状細胞などの食細胞による抗体依存性ファゴサイトーシス(Antibody−dependent phagocytosis、ADP活性)などが知られている。
【0128】
また、本発明の方法により生産されるモノクローナル抗体のFc領域のN結合複合型糖鎖のコアフコースの含量を制御することで、抗体のエフェクター活性を増加または低下させることができる。
【0129】
抗体のFc領域に結合しているN結合複合型糖鎖に結合するフコースの含量を低下させる方法としては、α1,6−フコース転移酵素遺伝子が欠損したCHO細胞を用いて抗体を発現することで、フコースが結合していない抗体を取得することができる。フコースが結合していない抗体は高いADCC活性を有する。
【0130】
一方、抗体のFcに結合しているN結合複合型糖鎖に結合するフコースの含量を増加させる方法としては、α1,6−フコース転移酵素遺伝子を導入した宿主細胞を用いて抗体を発現させることで、フコースが結合している抗体を取得できる。フコースが結合している抗体は、フコースが結合していない抗体よりも低いADCC活性を有する。
【0131】
また、抗体のFc領域のアミノ酸残基を改変することでADCC活性またはCDC活性を増加または低下させることができる。例えば、米国特許出願公開第2007/0148165号明細書に記載の抗体のFc領域のアミノ酸配列を用いることで、抗体のCDC活性を増加させることができる。
【0132】
また、米国特許第6,737,056号明細書、米国特許第7,297,775号明細書、または米国特許第7,317,091号明細書に記載のアミノ酸改変を行うことで、抗体のADCC活性またはCDC活性を、増加させることも低下させることもできる。
【0133】
本発明で用いられる「浮遊性の哺乳動物細胞」とは、マイクロビーズまたは組織培養用培養器(組織培養または接着培養容器などともいう)などの、培養細胞が接着し易くコーティングされた細胞培養支持体に接着せずに、培養液中に浮遊して生存および増殖できる細胞のことをいう。
【0134】
細胞培養支持体に細胞が接着しなければ、培養液中において1つの細胞の状態で生存、増殖してもよく、または細胞同士が複数凝集した細胞塊の状態で生存、増殖していても、いずれの状態でもよい。
【0135】
更に本発明で用いられる浮遊性の哺乳動物細胞としては、ウシ胎児血清(fetal calf serum、以下FCSと記す)などが含まれていない無血清培地中で、細胞培養支持体に接着せず培養液中に浮遊して生存および増殖できる細胞が好ましく、タンパク質が含まれていない無タンパク質培地中で、浮遊して生存および増殖できる哺乳動物細胞がより好ましい。
【0136】
組織培養用培養器としては、接着培養用のコーティングがなされているフラスコ、シャーレ等であればいかなる培養器でもよい。具体的には、例えば、市販されている組織培養フラスコ(グライナー社製)および接着培養フラスコ(住友ベークライト社製)などを用いることで、浮遊性の哺乳動物細胞であることが確認できる。
【0137】
本発明で用いられる浮遊性の哺乳動物細胞としては、元来浮遊性の性質を有する浮遊培養に馴化された細胞でもよいし、接着性の哺乳動物細胞を浮遊性の培養条件に馴化させた浮遊性の哺乳動物細胞いずれのものでもよい。
【0138】
元来浮遊性の性質を有する哺乳動物細胞としては、例えば、PER.C6細胞、ラットミエローマ細胞YB2/3HL.P2.G11.16Ag.20(またはYB2/0ともいう)およびCHO−S細胞(Invitrogen社製)などを挙げることができる。
【0139】
前記「接着性の哺乳動物細胞を浮遊性の培養条件に馴化させた浮遊性の哺乳動物細胞」は、Mol.Biotechnol.2000,15(3),249−57記載の方法、または以下に示す方法などで作製することができ、浮遊培養馴化前と同様、または浮遊培養馴化前より優れた増殖および生存性を示す細胞を確立することで作製することができる[J.Biotechnol.2007,130(3),282−90]。
【0140】
「浮遊培養馴化前と同等」とは、浮遊培養に馴化された細胞の生存率および増殖速度(倍化時間)などが、浮遊培養馴化前の細胞と比べて実質的に同じであることを意味する。
【0141】
本発明において接着性の哺乳動物細胞を浮遊性の培養条件に馴化させる方法としては、次の方法が挙げられる。血清含有の培地の血清含量を1/10に減らし、比較的高い細胞濃度で継代培養を繰り返し、哺乳動物細胞が生存および増殖できるようになった時点で、更に血清含量を斬減して、継代培養を繰り返す。この方法により、非血清下で生存、増殖可能な浮遊性の哺乳動物細胞を作製することができる。
【0142】
また、培養液中に適当な非イオン性界面活性剤Pluronic−F68などを添加して培養する方法によっても、浮遊性の哺乳動物細胞を作製することができる。
【0143】
浮遊性の培養条件に馴化させることにより浮遊性となる接着性の哺乳動物細胞としては、例えば、マウスミエローマ細胞NS0およびCHO細胞などが挙げられる。
【0144】
本発明において、浮遊性の哺乳動物細胞が有する性質としては、該細胞を2×10
5細胞/mLで浮遊培養した場合、3〜4日間後の培養終了時の細胞密度が、5×10
5細胞/mL以上であることが好ましく、8×10
5細胞/mL以上であることがより好ましく、1×10
6細胞/mL以上であることが特に好ましく、1.5×10
6細胞/mL以上であることが最も好ましい。
【0145】
また、本発明の浮遊性の哺乳動物細胞の倍化時間としては、48時間以下であることが好ましく、24時間以下がより好ましく、18時間以下が特に好ましく、11時間以下が最も好ましい。
【0146】
浮遊培地は、例えば、CD−CHO培地(Invitrogen社)、EX−CELL 325−PF培地(SAFC Biosciences社)およびSFM4CHO培地(HyClone社)などの市販の培地を用いることができる。また、哺乳動物細胞の培養に必要な糖類、アミノ酸類などを配合して調製することによっても得られる。
【0147】
浮遊性の哺乳動物細胞の培養は、浮遊培養が可能な培養容器を用いて、浮遊培養が可能な培養条件によって行うことができる。培養容器としては、例えば、細胞培養用の96穴プレート(コーニング社)、T−フラスコ(ベクトン・ディッキンソン社)および三角フラスコ(コーニング社)などを利用できる。
【0148】
培養条件としては、例えば、5% CO
2雰囲気中、培養温度37℃で静置培養などによって行うことができる。浮遊培養専用の培養設備であるWaveバイオリアクター(GEヘルスケアバイオサイエンス社)などの振とう培養装置などを用いることもできる。
【0149】
Waveバイオリアクター装置を用いた浮遊性の哺乳動物細胞の浮遊培養条件についてはGEヘルスケアバイオサイエンス社ホームページhttp://www.gelifesciences.co.jp/tech_support/manual/pdf/cellcult/wave_03_16.pdfに記載の方法で行うことができる。
【0150】
振とう培養の他、バイオリアクターなどの旋回撹拌装置による培養も可能である。バイオリアクターでの培養は、Cytotechnology(2006)52:199−207に記載の方法などで行うことができる。
【0151】
本発明において浮遊性の哺乳動物細胞以外の細胞株を用いる場合、上記のような方法で浮遊培養に馴化させた哺乳動物細胞株であり、且つ本発明のタンパク質生産方法を用いることができる細胞株であれば、いずれの細胞株も用いることができる。
【0152】
浮遊性の哺乳動物細胞で生産した目的タンパク質の精製は目的タンパク質を含む培養液または細胞破砕液から目的タンパク質と目的タンパク質以外の不純物を分離することによって行う。分離の方法としては、例えば、遠心、透析、硫安沈殿、カラムクロマトグラフィーおよびフィルターなどが挙げられ、目的タンパク質と不純物の物理化学的性質の違いまたはカラム単体への結合力の違いによって行うことができる。
【0153】
目的タンパク質を精製する方法は、例えば、タンパク質実験ノート(上)抽出・分離と組換えタンパク質の発現(羊土社、岡田雅人・宮崎香/編、ISBN 9784897069180)に記載の方法によって実施できる。
【0154】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0155】
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。したがって、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、請求の範囲によってのみ限定される。
【0156】
以降に記述するクローニング等、遺伝子組換えに関する各種実験技術については、J.Sambrook,E.F.Frisch,T.Maniatis著;モレキュラー クローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)及びFrederick M. Ausubelら編、Current Protocols発行、Current Protocols in Molecular Biology等に記載の遺伝子工学的方法に準じて行った。
【実施例】
【0157】
[実施例1]抗ヒトインフルエンザM2抗体発現トランスポゾンベクターの作製
タンパク質発現用プラスミドベクターには、一対のTol2トランスポゾン配列の間に挿入された任意のヒト抗体遺伝子および薬剤選択マーカー遺伝子を含む、哺乳動物細胞用遺伝子発現カセットを含むプラスミドを用いた。
【0158】
用いた遺伝子のDNAは既知の塩基配列をもとに、人工的に化学合成するか、またはその両端配列のプライマーを作製し、適当なDNAソースを鋳型としてPCRを行うことにより取得した。プライマーの端には後の遺伝子操作のために制限酵素切断部位を付加した。
【0159】
トランスポゾン配列は、日本国特開2003−235575号公報により開示されている非自律性Tol2トランスポゾンの塩基配列(配列番号1)のうち、1番目から200番目の塩基配列(Tol2−L配列)(配列番号2)と、2285番目から2788番目の塩基配列(Tol2−R配列)(配列番号3)の塩基配列を用いた。
【0160】
次の方法により、それぞれ一対のトランスポゾン配列を含む合成DNA断片を作製した(タカラバイオ株式会社製)。Tol2−R配列の5’末端および3’末端の両方に制限酵素NruIの認識配列を連結した塩基配列を含むDNA断片を作製した。また、Tol2−L配列の5’末端には制限酵素FseIの認識配列を連結し、3’末端には制限酵素AscIの認識配列を連結した塩基配列を含むDNA断片を作製した。
【0161】
次に、作製したTol2−R配列およびTol2−L配列を含むDNA断片を、抗ヒトインフルエンザM2抗体Z3G1のアミノ酸配列をコードしている塩基配列を含む発現ベクターN5LG1_M2_Z3ベクター(国際公開第06/061723号)に挿入した。
【0162】
抗体遺伝子発現カセットには、CMVエンハンサー/プロモーター制御下に、抗ヒトインフルエンザM2抗体Z3G1(ATCC Deposit No.PTA−5968;deposited March 13,2004,American Type Culture Collection, Manassas,VA,USA)のH鎖(配列番号10)をコードする塩基配列(配列番号9)およびL鎖(配列番号12)をコードする塩基配列(配列番号11)が挿入されたN5LG1_M2_Z3ベクター(国際公開第06/061723号)を用いた。
【0163】
M5LG1_M2_Z3ベクターの、抗体遺伝子発現カセットおよび選択マーカー遺伝子発現カセットを含む遺伝子断片の5’末端側に存在する制限酵素NruIサイトに、Tol2−R配列を含むDNA断片を挿入した。また、3’末端側に存在する制限酵素FseIおよびAscIサイトに、Tol2−L配列を含むDNA断片を挿入した。
【0164】
更にCMVエンハンサー/プロモーター制御下に、シクロヘキシミドに対する耐性遺伝子(ヒトリボソームタンパク質L36aの54位のプロリンがグルタミンに変異した遺伝子)をコードする塩基配列(配列番号5)が接続されたシクロヘキシミド耐性遺伝子発現カセットを、Tol2トランスポゾン配列が連結されたN5LG1_M2_Z3ベクターのFseI認識部位に挿入し、抗ヒトインフルエンザM2抗体トランスポゾン発現ベクターを構築した(
図1)。
【0165】
一方、トランスポゾン配列を含まないベクターを抗ヒトインフルエンザM2抗体発現ベクターと命名し、コントロールベクターとして使用した(
図2)。
【0166】
[実施例2]トランスポゼース発現ベクターの作製
トランスポゼースは、目的とする抗体の発現ベクターとは独立した発現ベクターを用いて発現させた。すなわち、pCAGGSベクター(Gene 108,193−200,1991)のCAGGSプロモーターの下流にメダカ由来のTol2トランスポゼースをコードする遺伝子(配列番号4)を挿入し、Tol2トランスポゼース発現ベクター(以下、Tol2ベクターと略記する)を作製した(
図3)。
【0167】
[実施例3] 哺乳動物細胞を用いた形質転換体の作製(1)浮遊化CHO細胞の作製
10%血清(FCS)を添加したα−MEM培地(Invitrogen社)で培養した接着性CHO細胞を、トリプシン処理により剥離、回収し、新しい10% FCS添加α−MEM培地を用いて、5% CO
2インキュベータ内で、37℃にて振とう培養した。数日後、これらの細胞が増殖していることを確認したのち、5%FCS添加α−MEM培地に2×10
5個/mLの濃度で播種し、振とう培養を行った。
【0168】
さらに数日後、5% FCS添加α−MEM培地を用いて同様の播種作業を行った。最終的に、血清を含まないα−MEM培地を用いて継代、振とう培養を繰り返し、血清存在下での培養と同様の増殖能を有していることを確認して、浮遊培養馴化株を作製した。
【0169】
(2)抗体を生産するCHO細胞の作製
発現ベクターとして、実施例1および実施例2の抗ヒトインフルエンザM2抗体発現トランスポゾンベクター(以下、トランスポゾンベクターと略記する)およびTol2ベクターpCAGGS−T2TP[
図3、Kawakami K&Noda T.Genetics.166,895−899(2004)]を用いた。また、コントロールとしてトランスポゾン配列を有していない抗ヒトインフルエンザM2抗体発現ベクターを用いた。
【0170】
前記発現ベクターを浮遊培養に馴化したCHO−K1細胞(American Type Culture Collection Cat.No.CCL−61)またはHEK293細胞(Invitrogen社FreeStyle 293F細胞)に導入し、シクロヘキシミドに対する耐性クローンが得られる頻度を比較した。
【0171】
各4×10
6個の細胞を400μLのPBSに懸濁し、抗ヒトインフルエンザM2抗体発現トランスポゾンベクター(10μg)とTol2ベクター(25μg)を、エレクトロポレーション法により環状DNAのまま共導入した。なお、Tol2ベクターは、Tol2トランスポゼースを一過性に発現させるため、宿主染色体への組込みを防ぐ目的で、環状DNAのまま導入した。
【0172】
また、コントロールとして、抗ヒトインフルエンザM2抗体発現ベクター(10μg)を、標準的なエレクトロポレーションによる遺伝子導入法に従い、制限酵素により直鎖状にした後、各細胞に導入した。
【0173】
エレクトロポレーションは、エレクトロポレーター(Gene Pulser XceII system(Bio−Rad社製)を用い、電圧300V、静電容量500μF、室温の条件で、gap幅4mmのキュベット(Bio−Rad社製)を使用して行った。
【0174】
エレクトロポレーションによる遺伝子導入後、各々の細胞について3枚の96穴プレートに播種し、CHO細胞はSAFC Biosciences社 EX−CELL 325−PF培地を、HEK293細胞はfreeStyle−293培地(Invitrogen社)を用いて、CO
2インキュベータ内で3日間培養した。
【0175】
次に、遺伝子導入後4日後の培地交換から、3μg/mLのシクロヘキシミドを加え、シクロヘキシミド存在下で培養し、1週間毎に培地交換を行いながら、3週間培養した。
【0176】
3週間培養後、シクロヘキシミド耐性コロニーが認められるウェル数をカウントした。
その結果を表1および表2に示す。
【0177】
【表1】
【0178】
【表2】
【0179】
表1に示すように、浮遊性のCHO−K1細胞に、抗ヒトインフルエンザM2抗体発現トランスポゾンベクターまたは抗ヒトインフルエンザM2抗体発現ベクターを導入したところ、抗ヒトインフルエンザM2抗体発現ベクターを導入した細胞からは、他の細胞株と同様に、シクロヘキシミド耐性の形質転換株が取得されなかったが、抗ヒトインフルエンザM2抗体発現トランスポゾンベクター導入細胞からは、シクロヘキシミド耐性の形質転換株が高頻度で得られた。
【0180】
一方、表2に示すように、HEK293細胞に、抗ヒトインフルエンザM2抗体発現トランスポゾンベクターまたは抗ヒトインフルエンザM2抗体発現ベクターのいずれの発現ベクターを導入しても、シクロヘキシミド耐性の形質転換株は取得されなかった。
【0181】
これらの結果から、浮遊性の哺乳動物細胞において、一対のトランスポゾン配列の間に挿入された目的タンパク質をコードする遺伝子およびシクロヘキシミド耐性遺伝子が、効率よく宿主細胞の染色体内に導入されることがわかった。
【0182】
(3)浮遊性CHO細胞と接着性CHO細胞における抗体生産の検討
浮遊性CHO細胞または接着性CHO細胞における抗体生産効率を検討するために、各細胞株における抗体の産生量を検討した。浮遊性CHO細胞としては、浮遊培養に馴化した浮遊性CHO−K1細胞を用いた。また、接着性CHO細胞としては浮遊培養馴化前の接着性CHO−K1細胞を用いた。
【0183】
浮遊性CHO−K1細胞および接着性CHO−K1細胞に抗ヒトインフルエンザM2抗体発現トランスポゾンベクター(10μg)とTol2ベクター(25μg)をそれぞれ、エレクトロポレーションした。その後、浮遊性CHO−K1細胞と接着性CHO−K1細胞を、各々3枚の96穴プレートに播種した。
【0184】
浮遊性CHO−K1細胞は浮遊細胞用培地(SAFC Biosciences社EX−CELL 325−PF)を用い、接着性CHO−K1細胞は10%血清を添加したα−MEM培地(Invitrogen社)を用いた。各細胞をCO
2インキュベータ内で3日間培養し、エレクトロポレーションから4日後の培地交換から、3μg/mLのシクロヘキシミド存在下で3週間培養した。この際、1週間毎に培地交換を行った。
【0185】
浮遊性CHO−K1細胞は1×10
6個の細胞を6穴プレートに播種し、CO
2インキュベータ内で3日間振とう培養し、培養上清を用いて抗ヒトインフルエンザM2抗体のタンパク質量をHPLCにて測定した。
【0186】
接着性CHO−K1細胞は6穴プレートでコンフルエントに到達した後(2×10
6個)培地交換し、3日間静置培養した後、培養上清を用いて抗体タンパク質量をHPLCにて測定した。
【0187】
培養上清中の抗体濃度の測定はFEMS Yeast Res.,7,(2007),1307−1316に記載の方法に従って行った。結果を
図4に示す。
【0188】
図4Aに示すように、浮遊培養に馴化したCHO−K1細胞では、極めて高い抗体発現量を示す細胞が多数得られた。一方、
図4Bに示すように、接着性のCHO−K1細胞では、HPLCの検出限界(5μg/mL)以下の発現量を示す細胞しか得られなかった。
【0189】
これらの結果から、トランスポゾンベクターを用いて目的タンパク質を発現させるためには、浮遊性の哺乳動物細胞を用いた場合に目的タンパク質を高発現できることを見出した。
【0190】
また、実施例1〜3の結果より、本発明の方法は、浮遊培養に馴化した浮遊性の哺乳動物細胞を用いて外来遺伝子を高発現する生産細胞を効率的に作製し、目的タンパク質を生産する新規な方法として利用し得ることがわかった。
【0191】
[実施例4]Tol1トランスポゾンによる抗体発現細胞の造成および抗体製造(1)抗ヒトインフルエンザM2抗体発現Tol1トランスポゾンベクターの作製
実施例1と同様に、タンパク質発現用プラスミドベクターには、一対のTol1トランスポゾン配列の間に挿入された任意のヒト抗体遺伝子および薬剤選択マーカー遺伝子を含む、哺乳動物細胞用遺伝子発現カセットを含むプラスミドを用いた。
【0192】
用いた遺伝子のDNAは既知の配列情報をもとに、人工的に化学合成するか、またはその両端配列のプライマーを作製し、適当なDNAソースを鋳型としてPCRを行うことにより取得した。プライマーの端には後の遺伝子操作のために制限酵素切断部位を付加した。
【0193】
トランスポゾン配列は、配列表の配列番号13で表される非自律性Tol1トランスポゾンの塩基配列(国際公開第2008/072540号)のうち、1番目から200番目の塩基配列(Tol1−L配列)(配列番号14)と、1351番目から1855番目の塩基配列(Tol1−R配列)(配列番号15)を用いた。
【0194】
次の方法により、それぞれ一対のトランスポゾン配列を含む合成DNA断片を作製した。Tol1−R配列の5’末端および3’末端の両方に制限酵素NruIの認識配列を連結した塩基配列を含むDNA断片を作製した。また、Tol1−L配列の5’末端には制限酵素FseIの認識配列を連結し、3’末端には制限酵素AscIの認識配列を連結した塩基配列を含むDNA断片を作製した。
【0195】
次に、作製したTol1−R配列およびTol1−L配列を含むDNA断片を、N5LG1_M2_Z3ベクターに挿入した。N5LG1_M2_Z3ベクターの、抗体遺伝子発現カセットおよび選択マーカー遺伝子発現カセットを含む遺伝子断片の5’末端側に存在する制限酵素NruIサイトに、Tol1−R配列を含むDNA断片を、3’末端側に存在する制限酵素FseIおよびAscIサイトに、Tol1−L配列を含むDNA断片を挿入した。
【0196】
更にCMVエンハンサー/プロモーター制御下に、シクロヘキシミドに対する耐性遺伝子(ヒトリボソームタンパク質L36aの54位のプロリンがグルタミンに変異した遺伝子)(配列番号7)が接続されたシクロヘキシミド耐性遺伝子発現カセットを、Tol1トランスポゾン配列が連結されたN5LG1_M2_Z3ベクターのFseI認識部位に挿入し、抗ヒトインフルエンザM2抗体Tol1トランスポゾン発現ベクターを構築した(
図5)。
【0197】
(2)Tol1トランスポゼース発現ベクターの作製
トランスポゼースは目的抗体の発現ベクターとは独立した発現ベクターを用いて発現させた。すなわち、CMVエンハンサー/プロモーター制御下に、配列番号16で表される塩基配列からなるメダカ由来のTol1トランスポゼース(配列番号17)をコードするDNA断片が接続されたTol1トランスポゼース遺伝子発現カセットを、pBluescriptII SK(+)(Stratagene社製)に挿入し、Tol1トランスポゼース発現ベクターpTol1aseとして利用した(
図6)。
【0198】
(3)抗体を生産するCHO細胞の作製
上述(1)〜(3)で作製した発現ベクターを用いて、実施例3と同様の方法によりTol1トランスポゾンによる発現ベクターの導入効果を検討した。その結果を表3に示す。
【表3】
【0199】
表3に示すように、浮遊性のCHO−K1細胞に、抗ヒトインフルエンザM2抗体発現Tol1トランスポゾンベクターを導入すると、抗ヒトインフルエンザM2抗体発現Tol2トランスポゾンベクターを導入した実施例3と同様に、シクロヘキシミド耐性の形質転換株が高頻度で得られた。
【0200】
この結果から、浮遊性の哺乳動物細胞において、Tol1トランスポゾン由来の塩基配列であるトランスポゾン配列を使用しても2つのトランスポゾン配列の間に挿入された抗体遺伝子およびシクロヘキシミド耐性遺伝子が、効率よく宿主細胞の染色体内に導入されることがわかった。
【0201】
(4)浮遊性CHO細胞における抗体生産の検討
Tol1トランスポゾンを用いて、浮遊性CHO細胞における抗体生産効率を、実施例3の(3)と同様にして検討を行った。
【0202】
培養上清中の抗体濃度の測定はFEMS Yeast Res.,7,(2007)、1307−1316に記載の方法に従って行った。結果を
図7に示す。
【0203】
図7に示すように、Tol1トランスポゾン由来の塩基配列であるトランスポゾン配列を用いた場合でもTol2と同様に、極めて高い抗体発現量を示す細胞が多数得られた。この結果から、トランスポゾン配列としてTol1トランスポゾン由来の塩基配列を用いた場合にも、Tol2トランスポゾン由来の塩基配列を用いた場合と同様に、目的タンパク質を高発現する浮遊性の哺乳動物細胞が得られることが明らかになった。
【0204】
[実施例5]抗ヒトCD98抗体の作製
(1)抗ヒトCD98抗体重鎖発現トランスポゾンベクターおよび抗ヒトCD98抗体軽鎖発現トランスポゾンベクターの作製
配列番号20および23のアミノ酸配列で表された可変領域H鎖およびL鎖を有する抗ヒトCD98抗体を作製するために、各抗体可変領域にヒトIgG1抗体定常領域のアミノ酸配列を連結させH鎖およびL鎖のアミノ酸配列を作製した。
【0205】
シグナル配列が連結した抗ヒトCD98抗体重鎖可変領域および軽鎖可変領域の遺伝子配列(配列番号18、21)は、日本国特許第4324637号公報に開示されている(N5KG1−Val C2IgG1NS/I117Lベクター)に組込まれている配列を使用し、トランスポゾン配列、プロモーター等は実施例1と同様のものを用いて抗ヒトCD98抗体重鎖発現トランスポゾンベクター(CD98Hベクターと略記する)および抗ヒトCD98抗体軽鎖発現トランスポゾンベクター(CD98Lベクターと略記する)をそれぞれ構築した(
図8、9)。
【0206】
使用したDNA断片は既知の配列をもとに、人工的に化学合成するか、あるいはその両端配列のプライマーを作製し、適当なDNAソースを鋳型としてPCRを行うことにより取得した。プライマーの端には後の組換え操作のために制限酵素切断部位を付加した。
【0207】
(2)シクロヘキシミド耐性遺伝子発現トランスポゾンベクターの作製
実施例1に記載のCMVエンハンサー/プロモーター制御下に、シクロヘキシミド耐性遺伝子をコードする配列(配列番号7)を接続し、該シクロヘキシミド耐性遺伝子発現カセットの両端に一対のトランスポゾン配列(Tol−2L、Tol2−R)を挿入し、シクロヘキシミド耐性遺伝子発現トランスポゾンベクター(以下、CHXベクターと略記する)を構築した(
図10)。
【0208】
用いたDNA断片は既知の配列をもとに、人工的に化学合成するか、あるいはその両端配列のプライマーを作製し、適当なDNAソースを鋳型としてPCRを行うことにより取得した。プライマーの端には後の遺伝子操作のために制限酵素切断部位を付加した。
【0209】
(3)抗ヒトCD98抗体を生産するCHO細胞の作製
上述(1)および(2)で作製したCD98Hベクター(
図8)、CD98Lベクター(
図9)、CHXベクター(
図10)および実施例2で作製したTol2ベクター(
図3)を浮遊培養に馴化したCHO−K1細胞に導入し、抗体を高発現する細胞の出現数を比較した。
【0210】
実験区では、4×10
6個CHO−K1細胞を400μLのPBSに懸濁し、CD98Hベクター(10μg)、CD98Lベクター(10μg)、CHXベクター(10μg)およびTol2ベクター(10μg)を、エレクトロポレーション法により環状DNAのまま共導入した。Tol2ベクターは、Tol2トランスポゼースを一過性に発現させるため、宿主染色体への組込みを防ぐ目的で、環状DNAのまま導入した。エレクトロポレーションは、エレクトロポレーター(Gene Pulser XceII system(Bio−Rad社製)を用い、電圧300 V、静電容量500μF、室温の条件で、gap幅4mmのキュベット(Bio−Rad社製)を使用して行った。
【0211】
また、対照区では、CD98Hベクター(10μg)、CD98Lベクター(10μg)およびCHXベクター(10μg)を、それぞれ制限酵素PciI(タカラバイオ社)により直鎖状にした後、上述と同様にしてエレクトロポレーションを行なった。
【0212】
エレクトロポレーションによる遺伝子導入後、各々のキュベットの細胞は、0.5% 大豆加水分解物を加えたCD OptiCHO培地(Invitrogen社)(以下、0.5CD培地と記す。)に懸濁して96穴プレート1枚に播種し、CO
2インキュベータ内で4日間培養した。次に、遺伝子導入後5日後の培地交換から、3μg/mLのシクロヘキシミド(Sigma−Aldrich社 C4859)を添加した0.5CD培地を用いて、シクロヘキシミド存在下で培養を行い、1週間毎に培地交換を行いながら、4週間培養した。
【0213】
4週間培養後、抗体の発現はFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を利用したサンドイッチ法(LENCE
TM、パーキンエルマー社)で定量した。抗体高発現細胞は、培養上清中の抗体濃度が5.0μg/mL以上発現しているクローンを、抗体が発現している細胞として計測したその結果を表4に示す。
【0214】
【表4】
【0215】
表4に示すように、浮遊性のCHO−K1細胞に、抗ヒトCD98抗体重鎖発現トランスポゾンベクター、抗ヒトCD98抗体軽鎖発現ベクターおよびシクロヘキシミド耐性遺伝子ベクターと共にTol2ベクターを共導入した実験区では、抗ヒトCD98抗体発現細胞が多数認められたが、Tol2ベクターを共導入していない対照区では、ベクターを線状化したにも関らず、抗ヒトCD98抗体発現細胞を認められなかった。
【0216】
[実施例6]抗ヒトCD98抗体の製造(1)抗ヒトCD98抗体重鎖遺伝子断片、抗ヒトCD98抗体軽鎖遺伝子断片およびシクロヘキシミド耐性遺伝子を含む発現トランスポゾンベクターの作製
実施例5(1)で作製した抗ヒトCD98抗体重鎖発現トランスポゾンベクターに、同実施例5(1)で作製した抗ヒトCD98抗体軽鎖発現遺伝子カセットおよび実施例5(2)で作製したシクロヘキシミド耐性遺伝子カセットをそれぞれ連結し、上述と同様合成DNA、PCR法を用いて抗ヒトCD98抗体重鎖遺伝子断片、抗ヒトCD98抗体軽鎖遺伝子断片およびシクロヘキシミド耐性遺伝子を含む発現トランスポゾンベクター(以下、CD98−CHXタンデムベクターと略記する)を構築した。
【0217】
(2)抗ヒトCD98抗体重鎖遺伝子断片およびシクロヘキシミド耐性遺伝子を含む発現トランスポゾンベクターの作製
実施例5(1)で作製した抗ヒトCD98抗体重鎖発現トランスポゾンベクターに、実施例5(2)に示したシクロヘキシミド耐性遺伝子カセットをそれぞれ連結し、上述と同様合成DNA、PCR法を用いて抗ヒトCD98抗体重鎖およびシクロヘキシミド耐性遺伝子を含む発現トランスポゾンベクター(CD98H−CHX発現トランスポゾンベクターと略記する)を構築した。
【0218】
(3)抗ヒトCD98抗体を生産するCHO細胞の作製
前記実施例5(1)および(2)ならびに前記実施例6(1)および(2)で作製した発現トランスポゾンベクターを用いて、抗ヒトCD98抗体のH鎖およびL鎖を同一の発現ベクターで遺伝子導入した場合(対照区)、抗ヒトCD98抗体のH鎖、L鎖またはシクロヘキシミド耐性遺伝子をそれぞれ別々の発現ベクターで遺伝子導入した場合(実験区1)、およびH鎖またはL鎖を別々の発現ベクターで遺伝子導入した場合(実験区2)の、抗CD98抗体を高発現する細胞の出現数を比較した。
【0219】
実験区1では、4×10
6個のCHO−K1細胞を400μLのPBSに懸濁し、CD98Hベクター(10μg)、CD98Lベクター(10μg)、CHXベクター(10μg)、およびTol2ベクター(10μg)を、エレクトロポレーション法により環状DNAのまま共導入した。
【0220】
実験区2では、4×10
6個CHO−K1細胞を400μLのPBSに懸濁し、CD98H−CHXベクター(10μg)、CD98Lベクター(10μg)およびTol2ベクター(10μg)を、エレクトロポレーション法により環状DNAのまま共導入した。
【0221】
対照区では、4×10
6個CHO−K1細胞を400μLのPBSに懸濁し、CD98−CHXタンデムベクター(10μg)、Tol2ベクター(20μg)を、エレクトロポレーション法により環状DNAのまま共導入した。また、全ての実験においてTol2ベクターは、Tol2トランスポゼースを一過性に発現させるためおよび宿主染色体への組込みを防ぐ目的で、環状DNAのまま導入した。
【0222】
以下の方法は実施例5(3)と同様の方法により、抗体生産細胞の出現率の確認を行った。抗体発現細胞は、培養上清中の抗体濃度が3.0μg/mL以上であるクローンを、抗体が発現している細胞として計測した。その結果を表5に示す。
【0223】
【表5】
【0224】
CD98Hベクター、CD98LベクターおよびCHXベクターを導入した実験区1、ならびにCD98HベクターおよびCD98Lベクターを導入した実験区2では、抗ヒトCD98抗体を高発現している細胞の出現率が大きく増加していた。
【0225】
以上の結果は、抗体重鎖遺伝子と抗体軽鎖遺伝子とが同一の発現ベクター上に組込まれた発現ベクターを浮遊性CHO細胞に導入することと比べて、抗体重鎖遺伝子と抗体軽鎖遺伝子とをそれぞれ別々のトランスポゾン配列間に挿入された発現ベクターを浮遊性CHO細胞に共導入する方が、抗体高生産株を容易に取得および製造できることを示している。また、実験区1と実験区2の結果から、導入するベクターが複数の場合でも、薬剤耐性遺伝子(選択マーカー遺伝子)は少なくとも1つで十分であることが明らかになった。更に、薬剤耐性遺伝子は、抗体重鎖遺伝子が組込まれた発現ベクター上にあってもよいし、別の独立したベクター上であってもよいことが明らかになった。
【0226】
以上の結果は、従来困難であった浮遊性の哺乳動物細胞へ2つ以上のベクター上に配置した遺伝子を同時に効率よく細胞に導入する手段として、トランスポゾンベクターが有効であることを示している。更に、複数のポリペプチドから構成されるタンパク質および複数のタンパク質を高生産するために、それぞれのポリペプチドまたはタンパク質を異なるトランスポゾンベクターで細胞に導入することが有効であることを示している。
【0227】
(4)抗ヒトCD98抗体を生産するCHO細胞の培養
上述実施例6(3)で得られたCD98−CHXタンデムベクターが導入された細胞ならびにCD98H−CHXベクターおよびCD98Lベクターが導入された細胞のぞれぞれから、抗体発現量の高い上位3株について抗体発現量を比較した。実験の詳細を以下に示す。
【0228】
実施例6(3)で得られたシクロヘキシミド耐性で選抜され且つ抗ヒトCD98抗体を発現しているCHO−K1細胞を、96穴プレート、24穴プレート、6穴プレート(コーニング社)に順次拡大培養した。拡大培養後、培養上清中の抗体濃度を測定し抗ヒトCD98抗体を高発現するCHO細胞の上位3株を選抜した。次に、選択した3株をそれぞれ2×10
5個/mLになるように、0.5% CD培地(Invitrogen社)0.5CD培地3mLに懸濁し、6穴プレートを用いて、37℃、5% CO
2の雰囲気中で5日間旋回培養した。5日間培養後の培地中の抗体量を、HPLC(Waters社)で定量した。その結果を表6に示す。
【0229】
【表6】
【0230】
表6に示すように、CD98HベクターおよびCD98Lベクターが共導入されたCHO−K1細胞は、CD98−CHXタンデムベクターが導入されたCHO−K1細胞に比べて、抗体生産量が高いことが明らかになった。
【0231】
以上の結果は、抗体重鎖遺伝子と抗体軽鎖遺伝子とをそれぞれ別々の一対のトランスポゾン配列の間に挿入した発現ベクターを浮遊性CHO細胞に共導入することで、抗体高生産株を容易に取得および製造できるだけでなく、得られた細胞は高い抗体生産性を有することを示している。
【0232】
[実施例7]抗ヒトtumor necrosis factor−alpha(TNFα)抗体の製造(1)抗ヒトTNFα抗体重鎖遺伝子断片、抗ヒトTNFα抗体軽鎖遺伝子断片およびシクロヘキシミド耐性遺伝子を含む発現トランスポゾンベクターの作製
配列番号26および29のアミノ酸配列を有する抗ヒトTNFα抗体を作製するために、実施例6(1)で作製した抗ヒトCD98抗体重鎖遺伝子断片、軽鎖遺伝子断片およびシクロヘキシミド耐性遺伝子を含む発現トランスポゾンベクター(CD98−CHXタンデムベクター)のVHおよびVL遺伝子断片を抗ヒトTNFα抗体由来VHおよびVLにそれぞれ置換し、抗ヒトTNFα抗体重鎖遺伝子断片、抗ヒトTNFα抗体軽鎖遺伝子断片およびシクロヘキシミド耐性遺伝子発現トランスポゾンベクター(以下、TNFα−CHXタンデムベクターと略記する。)を構築した。
【0233】
抗ヒトTNFα抗体重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子の配列は、ヒュミラ
(R)皮下注40mg審査報告書(独立行政法人医薬品医療機器総合機構、平成20年2月14日)
図2および
図1に記載のアダリムマブ(遺伝子組換え)の重鎖可変領域サブユニットまたは軽鎖可変領域サブユニットのアミノ酸配列(配列番号25、28)にシグナル配列を連結させたアミノ酸配列(配列番号26、29)を作製し、アミノ酸配列が変わらないように塩基配列を決定し、合成DNAを用いて作製した(配列番号24、27)。人工配列の端には後の遺伝子操作のために制限酵素切断部位を付加した。
【0234】
(2)抗ヒトTNFα抗体重鎖遺伝子断片およびシクロヘキシミド耐性遺伝子を含む発現トランスポゾンベクターの作製
実施例6(2)で作製した抗ヒトCD98抗体重鎖遺伝子断片およびシクロヘキシミド耐性遺伝子を含む発現トランスポゾンベクター(CD98H−CHXベクター)のVH遺伝子断片部位を、抗ヒトTNFα抗体VH遺伝子断片に改変し、抗ヒトTNFα抗体重鎖遺伝子断片およびシクロヘキシミド耐性遺伝子を含む発現トランスポゾンベクター(以下、TNFαH−CHXベクターと略記する)を構築した。抗ヒトTNFα抗体重鎖遺伝子は本項(1)に示した配列と同じ配列を用いた。
【0235】
(3)抗ヒトTNFα抗体軽鎖遺伝子発現トランスポゾンベクターの作製
実施例6(1)で作製した抗ヒトCD98抗体軽鎖遺伝子発現トランスポゾンベクター(CD98Lベクター)の軽鎖遺伝子部位を、抗ヒトTNFα抗体軽鎖に改変し、抗ヒトTNFα抗体軽鎖遺伝子発現トランスポゾンベクター(以下、TNFαLベクターと略記する)を構築した。抗ヒトTNFα抗体VL遺伝子は本項(1)に示した配列と同じ配列を用いた。
【0236】
(4)抗ヒトTNFα抗体を生産するCHO細胞の作製
抗ヒトTNFα抗体を生産するCHO−K1細胞を作製するために、上述(1)で作製したTNFα−CHXタンデムベクター(20μg)と実施例2で作製したTol2トランスポゼース発現ベクター(Tol2ベクター)(10μg)を、実施例3(1)で作製した浮遊培養に馴化したCHO−K1細胞へ導入した(対照区)。
【0237】
同様に、上述(2)および(3)で作製したTNFαH−CHXベクター(10μg)、TNFαLベクター(10μg)、Tol2ベクター(10μg)を、それぞれ環状DNAのまま共導入した(実験区)。遺伝子導入細胞の培養を96ウェルプレート5枚について行なったこと以外、遺伝子導入、細胞培養等は実施例6と同様にして行い抗体を高発現する細胞の出現数を比較した。抗体高発現細胞は、培養上清中の抗体濃度が3.0μg/mL以上であるクローンを、抗体が発現している細胞として計測した。その結果を表7に示す。
【0238】
【表7】
【0239】
表7に示すように、実施例6で行った抗ヒトCD98抗体の生産細胞と同様に、TNFαH−CHXベクターとTNFαLベクターとを共導入したCHO−K1細胞は、TNFα−CHXタンデムベクターを導入したCHO−K1細胞と比べて、抗ヒトTNFα抗体を高発現している細胞の出現率が約4倍高かった。
【0240】
この結果は、何れの抗体に関しても、それぞれ別々の発現ベクターに組み込まれた一対のトランスポゾン配列の間に挿入された抗体重鎖遺伝子と抗体軽鎖遺伝子を浮遊性CHO細胞に共導入することで、抗体高生産株を容易に取得および製造できることを示している。
【0241】
(5)抗ヒトTNFα抗体を生産するCHO細胞の培養
上述(4)で得られたTNFα−CHXタンデムベクターが導入された細胞ならびにTNFαH−CHXベクターおよびTNFαLベクターが共導入された細胞から、シクロヘキシミド耐性で選抜され、且つ抗ヒトTNFα抗体を発現している細胞を選択し、96穴プレート、24穴プレート、次いで6穴プレートへ順次拡大培養した。拡大培養に成功したTNFα−CHXタンデムベクターが導入された細胞4株ならびにTNFαH−CHXベクターおよびTNFαLベクターが共導入された細胞52株を、培養期間が7日間である以外は実施例6(4)と同様にして細胞を培養し、抗体発現量を計測した。結果を
図11に示す。
【0242】
その結果、TNFαH−CHXベクターとTNFαLベクターとを共導入したCHO−K1細胞は、TNFα−CHXタンデムベクターを導入したCHO−K1細胞と比べて、約2.4倍高い抗体生産量を示した。
【0243】
この結果は、実施例6(4)と同様に、抗体重鎖遺伝子と抗体軽鎖遺伝子をそれぞれ別々の一対のトランスポゾン配列の間に組込んだ発現ベクターを浮遊性CHO細胞に共導入することで、抗体高生産株を容易に取得および製造できるだけでなく、得られた細胞は高い抗体生産性を有することを示している。
【0244】
[実施例8]抗ヒトCD20抗体の製造(1)抗ヒトCD20抗体重鎖遺伝子断片、抗ヒトCD20抗体軽鎖遺伝子断片およびシクロヘキシミド耐性遺伝子を含む発現トランスポゾンベクターの作製
配列番号32および35のアミノ酸配列で表されるVHおよびVLを含む抗ヒトCD20抗体を作製するために、実施例6(1)で作製したCD98−CHXタンデムベクターの抗体VHまたはVL遺伝子部位を、ぞれぞれ抗ヒトCD20抗体由来VHまたはVLに置換し、抗ヒトCD20抗体重鎖遺伝子断片、抗ヒトCD20抗体軽鎖遺伝子断片およびシクロヘキシミド耐性遺伝子を含む発現トランスポゾンベクター(以下、CD20−CHXタンデムベクターと略記する)を構築した。
【0245】
抗ヒトCD20抗体VH領域およびVL領域の遺伝子配列は、GenBank accession no. AR000013に記載の塩基配列およびリツキサン
(R)注10mg/mL 審査報告書(衛研発 第3395号、平成15年8月28日)別紙に記載のリツキシマブのVHおよびVLのアミノ酸配列(配列番号32、35)にシグナル配列を連結したアミノ酸配列(配列番号31、34)を作製し、アミノ酸配列が変化しないように塩基配列を決定し、合成DNAにより作製した(配列番号30、33)。人工配列の端には後の遺伝子操作のために制限酵素切断部位を付加した。
【0246】
(2)抗ヒトCD20抗体重鎖遺伝子断片およびシクロヘキシミド耐性遺伝子を含む発現トランスポゾンベクターの作製
実施例6(2)で作製したCD98H−CHXベクター抗体VH遺伝子部位を、抗ヒトCD20抗体由来VHに改変し、抗ヒトCD20抗体重鎖遺伝子断片およびシクロヘキシミド耐性遺伝子を含む発現トランスポゾンベクター(以下、CD20H−CHXベクターと略記する)を構築した。抗ヒトCD20抗体重鎖遺伝子は上述(1)に示した配列と同じ配列を用いた。
【0247】
(3)抗ヒトCD20抗体軽鎖遺伝子発現トランスポゾンベクターの作製
実施例6(1)で作製したCD98Lベクター抗体VL遺伝子部位を抗ヒトCD20抗体由来VLに改変し、抗ヒトCD20抗体軽鎖遺伝子発現トランスポゾンベクター(以下、CD20Lベクター)を構築した。抗ヒトCD20抗体重軽遺伝子は上述(1)に示した配列と同じ配列を用いた。
【0248】
(4)抗ヒトCD20抗体を生産するCHO細胞の作製
抗ヒトCD20抗体を生産するCHO−K1細胞を作製するために、上述(1)で作製したCD20−CHXタンデムベクターと実施例2で作製したTol2トランスポゼース発現ベクター(Tol2ベクター)を、実施例3(1)で作製した浮遊培養に馴化したCHO−K1細胞へ導入した(対照区)。
【0249】
同様に、上述(2)および(3)で作製したCD20H−CHXベクター(10μg)、CD20Lベクター(10μg)を、Tol2ベクター(10μg)と共にCHO−K1細胞へ共導入した(実験区)。遺伝子導入細胞の培養を96ウェルプレート5枚について行なったこと以外、遺伝子導入、細胞培養等は実施例6と同様にして行い抗体を高発現する細胞の出現数を比較した。また、抗体濃度が3.0μg/mL以上を、抗体が発現しているウェルとして計測した。その結果を表8に示す。
【0250】
【表8】
【0251】
その結果、CD20H−CHXベクターとCD20Lベクターを共導入したCHO−K1細胞は、CD20−CHXタンデムベクターを導入したCHO−K1細胞に比べて、抗ヒトCD20抗体を高発現している細胞の出現率が約3倍高かった。
【0252】
この結果は、実施例6(3)または実施例7(3)で実施した抗ヒトCD98抗体、抗ヒトTNFα抗体と同様の結果であり、何れの抗体に関しても、抗体重鎖遺伝子と抗体軽鎖遺伝子をそれぞれ別々のトランスポゾン配列間に組込んだ発現ベクターを浮遊性CHO細胞に共導入することで、抗体高生産株を容易に取得および製造できることを示している。
【0253】
(5)抗ヒトCD20抗体を生産するCHO細胞の培養
上述(3)で得られたCD20−CHXタンデムベクターが導入された細胞ならびにCD20H−CHXベクターおよびCD20Lベクターが共導入された細胞から、シクロヘキシミド耐性で選抜され且つ抗ヒトCD20抗体を発現している細胞を選択し、96穴プレート、24穴プレート、次いで6穴プレートへ順次拡大培養した。拡大培養に成功した対照区細胞4株および実験区細胞50株を、培養期間が7日間である以外は実施例6(4)と同様にして細胞を培養し、抗体発現量を計測した。結果を
図12に示す。
【0254】
図12に示すように、CD20H−CHXベクターとCD20Lベクターとを共導入したCHO−K1細胞は、CD20−CHXタンデムベクターを導入したCHO−K1細胞と比べて、約1.6倍高い抗体生産性を有することが明らかになった。
【0255】
この結果は、実施例6(4)、実施例7(5)で実施された抗ヒトCD98抗体、抗ヒトTNFα抗体の生産性と同様な結果であり、抗体重鎖遺伝子と抗体軽鎖遺伝子をそれぞれ別々のトランスポゾン配列間に組み込んだ発現ベクターを浮遊性CHO細胞に共導入することで、抗体高生産株を容易に取得および製造できるだけでなく、得られた細胞は高い抗体生産性を有することを示している。
【0256】
[実施例9]ネオマイシン耐性遺伝子および抗ヒトCD98抗体を発現するトランスポゾンベクターの作製(1)野生型ネオマイシン耐性遺伝子および抗ヒトCD98抗体を発現するトランスポゾンベクターの作製
タンパク質発現用プラスミドベクターには、一対のTol2由来の塩基配列の間に挿入された任意のヒト抗体遺伝子および薬剤耐性マーカー遺伝子を含む、哺乳動物細胞用遺伝子発現カセットを含むプラスミドを用いた。
【0257】
用いた遺伝子のDNAは既知の塩基配列をもとに、人工的に化学合成するか、またはその両端配列のプライマーを作製し、適当なDNAソースを鋳型としてPCRを行うことにより取得した。プライマーの端には後の遺伝子操作のために制限酵素切断部位を付加した。
【0258】
トランスポゾン配列は、日本国特開2003−235575号公報により開示されている非自律性Tol2トランスポゾンの塩基配列(配列番号1)のうち、1番目から200番目の塩基配列(Tol2−L配列)(配列番号2)と、2285番目から2788番目の塩基配列(Tol2−R配列)(配列番号3)の塩基配列を用いた。
【0259】
Tol2−R配列またはTol2−L配列を含むDNA断片をそれぞれ合成して用いた。
【0260】
抗体重鎖遺伝子発現カセットとして、抗ヒトCD98抗体N5KG1−Val C2IgG1NS/I117Lベクター(日本国特許第4324637号公報)をもとに増幅した、CMVプロモーター制御下に抗体H鎖をコードする塩基配列(配列番号18)を含むDNA断片を、抗体軽鎖遺伝子発現カセットとして抗ヒトCD98抗体N5KG1−Val C2IgG1NS/I117Lベクターをもとに増幅した、SV40プロモーター制御下に抗体軽鎖をコードする塩基配列(配列番号21)を含むDNA断片を調製した。
【0261】
ネオマイシン耐性遺伝子発現カセットとしては、SV40プロモーター制御下にネオマイシン耐性遺伝子をコードする塩基配列からなるDNA(配列番号36および、Genbank Accession No.U47120.2で表される塩基配列からなるネオマイシンホスホトランスフェラーゼをコードするDNA)を有するDNA断片を調製した。
【0262】
上記の抗体重鎖遺伝子発現カセット、抗体軽鎖遺伝子発現カセットおよびネオマイシン耐性遺伝子発現カセットを連結し、さらにその両端にTol2−R配列を含むDNA断片およびTol2−L配列を含むDNA断片を連結し、抗ヒトCD98抗体発現ベクターAを作製した(
図13)。
【0263】
(2)改変型ネオマイシン耐性遺伝子1を有する抗ヒトCD98抗体発現トランスポゾンベクターの作製
(1)で得られた野生型ネオマイシン耐性遺伝子を有する抗ヒトCD98抗体発現トランスポゾンベクターAのネオマイシン耐性遺伝子を、配列番号37で表される塩基配列からなる改変型ネオマイシン耐性遺伝子1に置換した抗ヒトCD98抗体発現トランスポゾンベクターBを作製した。
【0264】
改変型ネオマイシン耐性遺伝子1は、野生型ネオマイシン耐性遺伝子と同一のアミノ酸配列をコードし、且つ全体の22%にあたる167塩基を改変した。具体的には、全32個のロイシン残基のうち、25個のロイシン残基に対応するコドンをT
TAとなるように改変した。
【0265】
(3)改変型ネオマイシン耐性遺伝子2を有する抗ヒトCD98抗体発現トランスポゾンベクターの作製
(1)で得られた野生型ネオマイシン耐性遺伝子を有する抗ヒトCD98抗体発現トランスポゾンベクターAのネオマイシン耐性遺伝子を、配列番号38で表される塩基配列からなる改変型ネオマイシン耐性遺伝子2に置換した抗ヒトCD98抗体発現トランスポゾンベクターCを作製した。
【0266】
改変型ネオマイシン耐性遺伝子2は、野生型ネオマイシン耐性遺伝子と同一のアミノ酸配列をコードし、且つ全体の23%にあたる180塩基を改変した。具体的には、全32個のロイシン残基のうち、28個のロイシン残基に対応するコドンをT
TAとなるように改変している。
【0267】
(4)改変型ネオマイシン耐性遺伝子3を有する抗ヒトCD98抗体発現トランスポゾンベクターの作製
(1)で得られた野生型ネオマイシン耐性遺伝子を有する抗ヒトCD98抗体発現トランスポゾンベクターAのネオマイシン耐性遺伝子を、配列番号39で表される塩基配列からなる改変型ネオマイシン耐性遺伝子3に置換した抗ヒトCD98抗体発現トランスポゾンベクターDを作製した。
【0268】
改変型ネオマイシン耐性遺伝子3は、野生型ネオマイシン耐性遺伝子と同一のアミノ酸配列をコードし、且つ全体の26%にあたる203塩基を改変している。具体的には、全32個のロイシン残基のうち、30個のロイシン残基に対応するコドンをT
TAとなるように改変している。
【0269】
[実施例10]改変型ネオマイシン耐性遺伝子を発現する抗体生産CHO細胞による抗体生産
実施例9(1)〜(4)で作製した抗ヒトCD98抗体発現トランスポゾンベクターA〜Dを、配列番号40で表されるアミノ酸配列からなるTol2トランスポゼースを発現するベクターpCAGGS−T2TP[Kawakami K&Noda T.Genetics.166,895−899(2004)]とともに浮遊化CHO−K1細胞にそれぞれ導入し、抗体生産細胞A〜Dを作製した。
【0270】
浮遊CHO細胞へのベクターの導入は、CHO細胞(4×10
6個)を400μLのPBSバッファーに懸濁し、環状DNAのままの抗ヒトCD98抗体発現トランスポゾンベクター(10μg)およびTol2トランスポゼース発現ベクターpCAGGS−T2TP(20μg)を、エレクトロポレーション法により共導入することにより行った。
【0271】
ここで、Tol2トランスポゼース発現ベクターもまた、Tol2トランスポゼースを一過性に発現させるため、環状DNAのまま導入した。
【0272】
また、Tol2トランスポゼースを用いないコントロールとして、実施例19(4)の抗ヒトCD98抗体発現トランスポゾンベクターD(10μg)を、制限酵素PciI(タカラバイオ社)により直鎖状にした後、エレクトロポレーション法により、浮遊化CHO−K1細胞に導入した。
【0273】
エレクトロポレーションは、エレクトロポレーター[Gene Pulser XceII system(Bio−Rad社製)]を用い、電圧300V、静電容量500μF、室温の条件で、gap幅4mmのキュベット(Bio−Rad社製)を使用して行った。
【0274】
エレクトロポレーションによる遺伝子導入後、各々のキュベットの細胞は、1枚の96穴プレートに播種し、5%大豆加水分解物を加えたCD OptiCHO 培地(Invitrogen社)を用いて、CO
2インキュベータ内で3日間培養した。
【0275】
次に、遺伝子導入4日後の培地交換から、最終濃度500μg/mLになるようにG418(Geneticin
(R)、Invitrogen社)を加え、G418存在下で培養し、1週間毎に培地交換を行いながら、3週間培養した。
【0276】
培養後、抗体の発現を、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を利用したサンドイッチ法により、LANCE
(R)アッセイ(パーキンエルマー社)で定量した。その結果を表9に示す。
【0277】
【表9】
【0278】
表9に示すとおり、改変型ネオマイシン耐性遺伝子を発現する細胞B〜Dでは、野生型ネオマイシン耐性遺伝子を発現する細胞Aに比べ、抗ヒトCD98抗体の発現量が高かった。
【0279】
特に、改変型ネオマイシン耐性遺伝子3を発現する抗ヒトCD98抗体生産細胞Dでは、野生型ネオマイシン耐性遺伝子を発現する抗ヒトCD98抗体生産細胞Aの10倍の発現を示す細胞株が得られた。
【0280】
また、改変型ネオマイシン耐性遺伝子3を用いても、Tol2トランスポゼース発現ベクターを共導入していないコントロール細胞では、ベクターを線状化したにも係わらず、抗ヒトCD98抗体発現細胞を得ることができなかった。
【0281】
[実施例11]ピューロマイシン耐性遺伝子および抗ヒトCD98抗体を発現するトランスポゾンベクターの作製(1)改変型ピューロマイシン耐性遺伝子1を有する抗ヒトCD98抗体発現トランスポゾンベクターの作製
実施例9(1)で得られた野生型ネオマイシン耐性遺伝子を有する抗ヒトCD98抗体発現トランスポゾンベクターAのネオマイシン耐性遺伝子を配列番号41で表される塩基配列からなる改変型ピューロマイシン耐性遺伝子1に置換した抗ヒトCD98抗体発現トランスポゾンベクターEを作製した。
【0282】
改変型ピューロマイシン耐性遺伝子1は、配列番号42で表される塩基配列からなる野生型ピューロマイシン耐性遺伝子(ピューロマイシン−N−アセチルトランスフェラーゼ遺伝子、Genbank Accession No.U07648.1に開示される塩基配列からなる)と同一のアミノ酸配列をコードし、且つ全体の3%にあたる17塩基を改変している。具体的には、ピューロマイシン耐性遺伝子に含まれる全28個のアラニン残基のうち、改変により17個のアラニン残基に対応するコドンをGCGとし、野生型で既にGCGであったコドンと併せて、全てのアラニン残基に対応するコドンをGCGとした。
【0283】
(2)改変型ピューロマイシン耐性遺伝子2を有する抗ヒトCD98抗体発現トランスポゾンベクターの作製
実施例9(1)で得られた野生型ネオマイシン耐性遺伝子を有する抗ヒトCD98抗体発現トランスポゾンベクターAのネオマイシン耐性遺伝子を配列番号43で表される塩基配列からなる改変型ピューロマイシン耐性遺伝子2に置換した抗ヒトCD98抗体発現トランスポゾンベクターFを作製した。改変型ピューロマイシン耐性遺伝子2は、野生型ピューロマイシン耐性遺伝子と同一のアミノ酸配列をコードし、且つ全体の14%にあたる79塩基を改変している。具体的には、改変型ピューロマイシン耐性遺伝子1のアラニン残基に対応するコドンの改変に加え、ロイシン残基に対応するコドンをT
TA、バリン残基に対応するコドンをGTA、セリンのコドンをTCGとした。
【0284】
[実施例12]改変型ピューロマイシン耐性遺伝子を発現する抗体生産CHO細胞による抗体生産1
実施例11(1)の改変型ピューロマイシン耐性遺伝子1を有する抗ヒトCD98抗体発現トランスポゾンベクターE、実施例11(2)の改変型ピューロマイシン耐性遺伝子2を有する抗ヒトCD98抗体発現トランスポゾンベクターF、Tol2トランスポゼース発現ベクターpCAGGS−T2TPを浮遊化したCHO−K1細胞に導入し、抗体生産細胞EおよびFを作製した。
【0285】
浮遊性CHO細胞へのベクターの導入は、浮遊化CHO細胞(4×10
6個)を400μLのPBSバッファーに懸濁し、環状DNAのままの改変型ピューロマイシン耐性遺伝子を有する抗ヒトCD98抗体発現トランスポゾンベクター(10μg)と、pCAGGS−T2TP(20μg)を、エレクトロポレーション法により共導入することにより行った。
【0286】
ここで、Tol2トランスポゼース発現ベクターpCAGGS−T2TPもまた、Tol2トランスポゼースを一過性に発現させるため、環状DNAのまま導入した。
【0287】
エレクトロポレーションは、エレクトロポレーター[Gene Pulser XceII system(Bio−Rad社製)]を用い、電圧300V、静電容量500μF、室温の条件で、gap幅4mmのキュベット(Bio−Rad社製)を使用して行った。
【0288】
エレクトロポレーションによる遺伝子導入後、各々のキュベットの細胞は、1枚の96穴プレートに播種し、5%大豆加水分解物を加えたCD OptiCHO 培地(Invitrogen社)を用いて、CO
2インキュベータ内で3日間培養した。
【0289】
次に、遺伝子導入2日後の培地交換から、最終濃度5μg/mLになるようにピューロマイシン(P9620、Sigma−Aldrich社)を加え、1週間毎にピューロマイシンを含む培地に培地交換を行いながら、4週間培養した。
【0290】
培養後、抗体の発現量を、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を利用したサンドイッチ法により、LANCE
(R)アッセイ(パーキンエルマー社)で定量した。その結果を表2に示す。
【0291】
【表10】
【0292】
表10に示すとおり、改変型ピューロマイシン耐性遺伝子2を発現する抗体生産細胞Fは、改変型ピューロマイシン耐性遺伝子1を発現する抗体生産細胞Eの2倍以上の抗体生産量を示した。
【0293】
[実施例13]改変型ピューロマイシン耐性遺伝子を発現する抗体生産CHO細胞による抗体生産2
実施例12で得られた改変型ピューロマイシン耐性遺伝子2を発現する抗体生産細胞Fを三角フラスコで培養し、抗ヒトCD98抗体を生産した。
【0294】
具体的には、抗体生産細胞Fを96穴プレートから24穴プレート、次いで6穴プレートと順次拡大培養した。細胞数が十分増えた抗体生産細胞F2株(細胞株1および細胞株2)を選抜し、それぞれ2×10
5個/mlになるように、5%大豆加水分解物を加えたCD OptiCHO培地(Invitrogen社)35mlに懸濁し、125ml容の三角フラスコ(ベントキャップ付き、コーニング社)を用いて、37℃、5%CO
2の雰囲気中で1週間旋回培養し、抗ヒトCD98抗体を生産した。
【0295】
培養後の培地中の抗体量を、HPLC(Waters社)で定量した。その結果を表11に示す。
【0296】
【表11】
【0297】
以上の結果は、浮遊性のCHO細胞において、一対のトランスポゾン配列の間に挿入された抗体遺伝子、および、改変型薬剤耐性遺伝子が、効率よく宿主の染色体内に導入され、しかも高発現細胞の選抜に有効であることを示している。また、得られた細胞は拡大培養が可能であり、浮遊培養条件にて目的タンパク質の生産が可能であることがわかった。
【0298】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2010年12月15日出願の日本特許出願2010−279849に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。