(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電子レンズと、光軸方向に対して前記電子レンズよりも後側に配置されたブランキング偏向器と、前記ブランキング偏向器の中心高さ位置に配置された電磁コイルと、を用いて、前記ブランキング偏向器にビームONになる電圧を印加し、前記電磁コイルに前記ブランキング偏向器でビームOFFになるように偏向する偏向量よりも小さい偏向量になる電流を流した状態で、前記電子レンズに印加する電圧を可変にして前記荷電粒子ビームを収束させ、前記電子レンズに印加する電圧毎に、試料上に照射された前記荷電粒子ビームの照射位置の位置ずれ量を測定する工程と、
前記電子レンズに印加する電圧毎に、前記位置ずれ量が許容値内かどうかを判定する工程と、
を備え、
前記電子レンズに印加する電圧は、前記位置ずれ量が許容値内に入るように調整されることを特徴とする試料面へのビーム入射角調整方法。
電子レンズと、光軸方向に対して前記電子レンズよりも後側に配置されたブランキング偏向器と、光軸方向に対して前記ブランキング偏向器よりも後側に配置された複数の電磁コイルと、を用いて、前記ブランキング偏向器にビームONになる電圧を印加し、前記複数の電磁コイルに、前記ブランキング偏向器でビームOFFになるように偏向する偏向量よりも小さい偏向量になる電流であって、前記複数の電磁コイルによって偏向された前記荷電粒子ビームの軌道の延長線と光軸との交点が、前記ブランキング偏向器の中心高さ位置になる電流を流した状態で、前記電子レンズに印加する電圧を可変にして前記荷電粒子ビームを収束させ、前記電子レンズに印加する電圧毎に、試料上に照射された前記荷電粒子ビームの照射位置の位置ずれ量を測定する工程と、
前記電子レンズに印加する電圧毎に、前記位置ずれ量が許容値内かどうかを判定する工程と、
を備え、
前記電子レンズに印加する電圧は、前記位置ずれ量が許容値内に入るように調整されることを特徴とする試料面へのビーム入射角調整方法。
請求項3又は4記載の試料面へのビーム入射角調整方法によって試料面へのビーム入射角が調整された荷電粒子ビームを用いて、前記ブランキング偏向器を用いてブランキング動作を行いながら試料にパターンを描画することを特徴とする荷電粒子ビーム描画方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでも構わない。また、荷電粒子ビーム装置の一例として、可変成形型の描画装置について説明する。
【0018】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
図1において、描画装置100は、描画部150と制御部160を備えている。描画装置100は、荷電粒子ビーム描画装置の一例である。特に、可変成形型(VSB型)の描画装置の一例である。描画部150は、電子鏡筒102と描画室103を備えている。電子鏡筒102内には、電子銃201、電子レンズ211、照明レンズ202、ブランキング偏向器212、電磁コイル216、ブランキングアパーチャ214、第1のアパーチャ203、投影レンズ204、偏向器205、第2のアパーチャ206、対物レンズ207、主偏向器208、副偏向器209、検出器220が配置されている。描画室103内には、XYステージ105が配置される。XYステージ105上には、描画時には描画対象となるマスク等の試料101が配置される。試料101には、半導体装置を製造する際の露光用マスクが含まれる。また、試料101には、レジストが塗布された、まだ何も描画されていないマスクブランクスが含まれる。また、XYステージ105面上には、試料101が配置される位置とは異なる位置にマーク106が形成されている。マーク106は、例えば、十字型に形成されたものを用いると好適である。また、電磁コイル216は、ブランキング偏向器212の中心高さ位置に配置されると好適である。ブランキング偏向器212として、例えば1対の電極が用いられる。
【0019】
制御部160は、制御計算機110、メモリ111、外部インターフェース(I/F)回路112、制御回路120、DAC(デジタル・アナログコンバータ)アンプ122、レンズ制御回路130、コイル制御回路132、及びアンプ138を有している。制御計算機110、メモリ111、外部I/F回路112、制御回路120、レンズ制御回路130、コイル制御回路132、及びアンプ138は、図示しないバスを介して互いに接続されている。
【0020】
制御計算機110内には、測定部60、位置ずれ量演算部62、判定部64、及び描画制御部66が配置される。測定部60、位置ずれ量演算部62、判定部64、及び描画制御部66といった機能は、それぞれ電気回路等のハードウェアで構成されてもよい、或いは、これらの機能を実行するプログラム等のソフトウェアで構成されてもよい。或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより構成されてもよい。測定部60、位置ずれ量演算部62、判定部64、及び描画制御部66に入出力される情報および演算中の情報はメモリ112にその都度格納される。
【0021】
ここで、
図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。例えば、位置偏向用には、主偏向器208と副偏向器209の主副2段の多段偏向器を用いているが、1段の偏向器或いは3段以上の多段偏向器によって位置偏向を行なう場合であってもよい。また、描画装置100には、マウスやキーボード等の入力装置、及びモニタ装置等が接続されていても構わない。また、
図1の例では、ブランキングアパーチャ214が、第1のアパーチャ203よりも上方側に配置されているが、これに限るものではなく、ブランキング動作が可能である位置であれば構わない。例えば、第1のアパーチャ203或いは第2のアパーチャ206よりも下方側に配置されても構わない。
【0022】
図2は、実施の形態1における各領域を説明するための概念図である。
図2において、試料101の描画領域10は、主偏向器208のY方向偏向可能幅である、短冊状の複数のストライプ領域20に仮想分割される。また、各ストライプ領域20は、副偏向器209の偏向可能サイズである複数のサブフィールド(SF)30(小領域)に仮想分割される。そして、各SF30の各ショット位置にショット図形52,54,56が描画される。
【0023】
制御回路120からブランキング制御用のDACアンプ122に対して、ブランキング制御用のデジタル信号が出力される。そして、ブランキング制御用のDACアンプ122では、デジタル信号をアナログ信号に変換し、増幅させた上で偏向電圧として、ブランキング偏向器212に印加する。かかる偏向電圧によって電子ビーム200が偏向させられ、各ショットの照射時間(照射量)が制御される。
【0024】
制御回路120から図示しないDACアンプに対して、主偏向制御用のデジタル信号が出力される。そして、主偏向制御用のDACアンプでは、デジタル信号をアナログ信号に変換し、増幅させた上で偏向電圧として、主偏向器208に印加する。かかる偏向電圧によって電子ビーム200が偏向させられ、各ショットのビームがメッシュ状に仮想分割された、目標となるSF30の基準位置に偏向される。
【0025】
制御回路120から図示しないDACアンプに対して、副偏向制御用のデジタル信号が出力される。そして、副偏向制御用のDACアンプでは、デジタル信号をアナログ信号に変換し、増幅させた上で偏向電圧として、副偏向器209に印加する。かかる偏向電圧によって電子ビーム200が偏向させられ、各ショットのビームが対象となるSF30内の各ショット位置に偏向される。
【0026】
描画装置100では、複数段の多段偏向器を用いて、ストライプ領域20毎に描画処理を進めていく。ここでは、一例として、主偏向器208、及び副偏向器209といった2段偏向器が用いられる。XYステージ105が例えば−x方向に向かって連続移動しながら、1番目のストライプ領域20についてx方向に向かって描画を進めていく。そして、1番目のストライプ領域20の描画終了後、同様に、或いは逆方向に向かって2番目のストライプ領域20の描画を進めていく。以降、同様に、3番目以降のストライプ領域20の描画を進めていく。そして、主偏向器208が、XYステージ105の移動に追従するように、SF30の基準位置に電子ビーム200を順に偏向する。また、副偏向器209が、各SF30の基準位置から当該SF30内に照射されるビームの各ショット位置に電子ビーム200を偏向する。このように、主偏向器208、及び副偏向器209は、サイズの異なる偏向領域をもつ。そして、SF30は、かかる複数段の偏向器の偏向領域のうち、最小偏向領域となる。
【0027】
電子銃201(放出部)から放出された電子ビーム200は、電子レンズ211により例えばブランキング偏向器212内の所定の高さ位置に収束させられ、収束点(クロスオーバー:C.O.)を形成する。そして、光軸方向に対して電子レンズ211よりも後側に配置されたブランキング偏向器212内を通過する際に、ブランキング用のDACアンプ122からの偏向信号によって制御されるブランキング偏向器212によって、ビームのON/OFFが制御される。言い換えれば、ブランキング偏向器212は、ビームONとビームOFFとを切り替えるブランキング制御を行う場合に、電子ビームを偏向する。光軸方向に対してブランキング偏向器212よりも後側に配置されたブランキングアパーチャ214(ブランキングアパーチャ部材)によって、ビームOFFの状態になるように偏向された電子ビームは遮蔽される。すなわち、ビームONの状態では、ブランキングアパーチャ214を通過するように制御され、ビームOFFの状態では、ビーム全体がブランキングアパーチャ214で遮へいされるように偏向される。ビームOFFの状態からビームONとなり、その後ビームOFFになるまでにブランキングアパーチャ214を通過した電子ビーム200が1回の電子ビームのショットとなる。ブランキング偏向器212は、通過する電子ビーム200の向きを制御して、ビームONの状態とビームOFFの状態とを交互に生成する。例えば、ビームONの状態では電圧0Vを印加し(或いは電圧を印加せず)、ビームOFFの際にブランキング偏向器212に数Vの電圧を印加すればよい。かかる各ショットの照射時間tで試料101に照射される電子ビーム200のショットあたりの照射量が調整されることになる。
【0028】
以上のようにブランキング偏向器212とブランキングアパーチャ214を通過することによって生成された各ショットの電子ビーム200は、照明レンズ202により矩形の穴を持つ第1の成形アパーチャ203全体を照明する。ここで、電子ビーム200をまず矩形に成形する。そして、第1の成形アパーチャ203を通過した第1のアパーチャ像の電子ビーム200は、投影レンズ204により第2の成形アパーチャ206上に投影される。偏向器205によって、かかる第2の成形アパーチャ206上での第1のアパーチャ像は偏向制御され、ビーム形状と寸法を変化させる(可変成形を行なう)ことができる。かかる可変成形はショット毎に行なわれ、通常ショット毎に異なるビーム形状と寸法に成形される。そして、第2の成形アパーチャ206を通過した第2のアパーチャ像の電子ビーム200は、対物レンズ207により焦点を合わせ、主偏向器208及び副偏向器209によって偏向され、連続的に移動するXYステージ105に配置された試料101の所望する位置に照射される。
図1では、位置偏向に、主副2段の多段偏向を用いた場合を示している。かかる場合には、主偏向器208でSF30の基準位置にステージ移動に追従しながら該当ショットの電子ビーム200を偏向し、副偏向器209でSF内の各照射位置にかかる該当ショットのビームを偏向すればよい。かかる動作を繰り返し、各ショットのショット図形を繋ぎ合わせることで、描画データに定義された図形パターンを描画する。
【0029】
ここで、ブランキング制御用のDACアンプ122が不安定である場合等に、ビームON時の電圧が変動する場合がある。例えば、数mVの電圧変動(例えば±5mV)が生じる。あるいはもっと大きい電圧変動が生じる場合も想定される。かかる変動によって、ブランキング偏向器212を通過する電子ビーム200が偏向されることになる。
【0030】
図3は、実施の形態1におけるクロスオーバー位置がブランキング偏向器の中心高さ位置に制御されている場合のブランキング電圧変動の有無を比較した概念図である。
図3(a)では、ブランキング偏向器212にビームON時のブランキング電圧(例えば0V)が印加され、かかるブランキング電圧に電圧変動が生じていない(或いは無視できる程度の変動である)場合を示している。また、
図3(a)では、ブランキング動作以外のビーム偏向を成形用の偏向器205、副偏向器209、及び主偏向器208等によっておこなわず、例えば光軸上をビームが通過する場合を示している。
図3(a)において、電子銃201(放出部)から放出された電子ビーム200は、電子レンズ211によりブランキング偏向器212内の中心高さ位置Hに収束点(クロスオーバー:C.O.)を形成するように制御されている。ここでは、ビームONの状態なので、電子ビーム200は、ブランキング偏向器212によって偏向されずに通過する。
図3(a)では、クロスオーバー系の光路を示している。ブランキング偏向器212を通過した電子ビームは、照明レンズ202により第1の成形アパーチャ203全体を照明する。そして、第1の成形アパーチャ203を通過した第1のアパーチャ像の電子ビーム200は、投影レンズ204により第2の成形アパーチャ206に形成された開口部上に投影される。そして、第2の成形アパーチャ206を通過した第2のアパーチャ像の電子ビーム200は、対物レンズ207により試料101面上に焦点を合わせて結像する。かかる構成では、電子ビーム200は、試料101面に垂直入射する。言い換えれば、ビーム入射角θが0°になる。
【0031】
図3(a)に示した状態からブランキング偏向器212に印加されるブランキング電圧にビームOFFにならない程度に電圧変動が生じた場合を
図3(b)に示している。
図3(b)に示すように、ブランキング電圧の電圧変動によりブランキング偏向器212の中心高さ位置Hでビームが偏向される。しかし、クロスオーバー位置がブランキング偏向器212の中心高さ位置に制御されている場合、ブランキング電圧の電圧変動が生じても、電子ビーム200は、試料101面に垂直入射と実質的に同等の角度で入射する。言い換えれば、ビーム入射角θを略0°にできる。かかる構成では、後述するようにクロスオーバー位置が光軸上からずれないために、電子ビーム200は、試料101面に垂直入射することができる。
【0032】
図4は、実施の形態1におけるクロスオーバー位置がブランキング偏向器の中心高さ位置からずれた位置に制御されている場合のブランキング電圧変動の有無を比較した概念図である。
図4(a)では、ブランキング偏向器212にビームON時のブランキング電圧(例えば0V)が印加され、かかるブランキング電圧に電圧変動が生じていない(或いは無視できる程度の変動である)場合を示している。また、
図4(a)では、ブランキング動作以外のビーム偏向、例えば、成形用の偏向器205、副偏向器209、及び主偏向器208等による偏向動作をおこなわず、例えば光軸上をビームが通過する場合を示している。
図4(a)において、電子銃201(放出部)から放出された電子ビーム200は、電子レンズ211によりブランキング偏向器212内の中心高さ位置Hより例えば上方に収束点(クロスオーバー:C.O.)を形成するように調整されている。ここでは、ビームONの状態なので、電子ビーム200は、ブランキング偏向器212によって偏向されずに通過する。
図4(a)では、クロスオーバー系の光路を示している。ブランキング偏向器212を通過した電子ビームは、照明レンズ202により第1の成形アパーチャ203全体を照明する。そして、第1の成形アパーチャ203を通過した第1のアパーチャ像の電子ビーム200は、投影レンズ204により第2の成形アパーチャ206に形成された開口部上に投影される。そして、第2の成形アパーチャ206を通過した第2のアパーチャ像の電子ビーム200は、対物レンズ207により試料101面上に焦点を合わせて結像する。かかる状態では、後述するようにクロスオーバー位置が光軸上からずれないために、電子ビーム200は、試料101面に垂直入射する。言い換えれば、ビーム入射角θが0°になる。
【0033】
図4(a)に示した状態からブランキング偏向器212に印加されるブランキング電圧にビームOFFにならない程度に電圧変動が生じた場合を
図4(b)に示している。
図4(b)に示すように、ブランキング電圧の電圧変動によりブランキング偏向器212の中心高さ位置Hでビームが偏向される。しかし、クロスオーバー位置がブランキング偏向器212の中心高さ位置Hよりも上方に制御されている場合、ブランキング電圧の電圧変動が生じると、電子ビーム200は、試料101面に垂直方向からずれた方向から入射する。言い換えれば、ビーム入射角θが0°ではなくなる。その結果、デフォーカスされた状態では試料101上に照射されたビーム位置が設計上の所望の位置から位置ずれを生じる。
図4(b)において、ブランキング偏向器212中の破線部分は、後述するように、偏向後のビームにとって、見かけ上、クロスオーバー位置は、光軸上の位置から破線の位置へ移動したことになる。
【0034】
図5は、実施の形態1におけるブランキング動作時の偏向支点位置とクロスオーバー位置との関係を示す図である。
図5(a)では、電子レンズ211によりブランキング偏向器212内の中心高さ位置Hに収束点(クロスオーバー:C.O.)を形成するように調整されている場合を示している。ブランキング偏向器212に電圧が印加され、電子ビーム200が偏向される場合、その偏向支点はブランキング偏向器212の中心高さ位置Hとなる。クロスオーバー位置がブランキング偏向器212内の中心高さ位置Hにある場合、偏向支点と位置が一致するので、クロスオーバー位置は光軸上に存在することになる。そのため、
図5(c)に示すように、最終のクロスオーバー位置も光軸上の位置に形成される。これに対して、
図4(b)に示したように、クロスオーバー位置がブランキング偏向器212内の中心高さ位置Hからずれている場合、
図5(b)に示すようにクロスオーバー位置と偏向支点の位置が不一致となる。上述したように、偏向支点はブランキング偏向器212の中心高さ位置Hとなるので、偏向後のビームにとって、見かけ上、クロスオーバー位置は、偏向後のビームの軌道と偏向支点との延長線上となる。そのため、クロスオーバー位置は、光軸上の点Aの位置から点Bの位置へ移動したことになる。言い換えれば、クロスオーバー位置が光軸上から外れた位置に形成されていることになる。かかるビームは、
図5(d)に示すように、最終のクロスオーバー位置も光軸上からΔLだけ外れた位置に形成される。そのため、ブランキング電圧の電圧変動により偏向されたビームは、垂直入射(θ=0)ではないビーム入射角θをもって試料101上に照射される。その結果、焦点位置がずれた場合(デフォーカスされた場合)、照射されたビームの中心位置が設計上の所望の位置から位置ずれを生じる。他方、
図4(a)に示したように、ブランキング電圧の電圧変動がない状態では、ブランキング偏向器212内での偏向支点がそもそも生じないので、クロスオーバー位置は光軸上に存在できる。よって、かかる場合にはビームは、垂直入射(θ=0)をもって試料101上に照射される。なお、上述した例では、クロスオーバー位置が、ブランキング偏向器212内の中心高さ位置Hよりも上方にずれた場合について説明したが、下方にずれても、最終のクロスオーバーが軸からはずれるという効果は同様である。
【0035】
図6は、実施の形態1におけるビーム入射角と焦点位置との関係を示す図である。焦点位置が試料101面上に合っている(フォーカスされている)場合、
図6(a)に示すように、ビーム入射角θが0°ではなくても(垂直入射していなくても)、ビームの照射位置は、設計上の所望の位置になる。これに対して、焦点位置が試料101面上からずれる(デフォーカスされている)場合、
図6(b)に示すように、ビーム入射角θが0°ではない場合(垂直入射していない場合)、ビームの照射位置は、設計上の所望の位置から位置ずれ量Δxの位置にずれることになる。
【0036】
そこで、実施の形態1では、ビーム入射角を調整するために、クロスオーバー位置がブランキング偏向器212の中心高さ位置になるように、電子レンズ211を調整する。かかる調整には、ビームON時にビームOFFにならない程度の偏向量でブランキング偏向器212の中心高さ位置Hに偏向支点が形成されるようにビームを偏向させる必要がある。そこで、実施の形態1では、電磁コイル216をブランキング偏向器212の中心高さ位置に配置し、ビームOFFにならない程度の偏向量で電子ビーム200を偏向する。
【0037】
図7は、実施の形態1における電磁コイルの構成を示す概念図である。
図7において、電磁コイル216(例えば、アライメントコイル)は、ドーナツ状の中空円板のコアに電線を巻いて形成される。電線は、例えば、90度方向ずつ4か所に巻かれているものを用いることができる。電磁コイル216は、例えば、ブランキング偏向器212の外側に配置されればよい。
【0038】
図8は、実施の形態1におけるビーム入射角調整方法の要部工程を示すフローチャート図である。
図8において、実施の形態1におけるビーム入射角調整方法は、デフォーカス設定工程(S102)と、ビームON設定工程(S104)と、コイル電流設定工程(S106)と、レンズ値仮設定工程(S108)と、照射位置測定工程(S110)と、位置ずれ量算出工程(S112)と、判定工程(S114)と、レンズ値設定工程(S120)と、いう一連の工程を実施する。また、実施の形態1における描画方法は、かかるビーム入射角調整方法の各工程と、描画工程(S122)という一連の工程を実施する。
【0039】
まずは、通常の電子光学系の調整を行っておく。かかる状態では、例えば、ブランキング動作以外のビーム偏向をおこなわない場合に、ビームONの際のブランキング電圧での電子ビーム200の試料101面への入射角θ(ランディングアングル)は不明である。
【0040】
デフォーカス設定工程(S102)として、まず、対物レンズ207への印加電圧を調整して、あえて、電子ビーム200の焦点位置を試料101面(マーク106面)上からずらす(デフォーカスさせる)。或いは、図示しない静電レンズ等を用いて焦点位置をずらしてもよい。具体的には、描画制御部66が制御信号を制御回路120に出力する。制御回路120は、指示されたレンズ値になるように、対物レンズ207に電圧を印加する。
【0041】
ここで、上述した例では、XYステージ105上のマーク106の高さ位置が試料101面の高さ位置と同じ高さ位置になるように設定されている場合に特に有効である。しかしながら、対物レンズ207で焦点位置をずらす場合に限るものではない。例えば、XYステージ105上のマーク106の高さ位置を試料101面の高さ位置から予めΔZの高さ位置だけずらして形成してもよい。或いは、XYステージ105にZステージ機構を追加して、XYステージ105を高さ方向に移動させることにより、電子ビーム200の焦点位置を試料101面上からずらすようにしてもよい。
【0042】
ビームON設定工程(S104)として、ブランキング偏向器212にビームONになる電圧を印加する。ここでは、ブランキング偏向器212のビームON時の電圧に電圧変動は生じない、或いは無視できる程度のものであるとする。或いは、電圧変動が生じていてもよい。具体的には、描画制御部66が制御信号を制御回路120に出力する。制御回路120は、指示された偏向量になるように、DACアンプ122に制御信号を出力する。DACアンプ122はデジタル信号をアナログ信号に変換の上、増幅してブランキング偏向器212に偏向電圧を印加する。ここでは、ビームONになる電圧なので、例えば、0Vの電圧を印加する。
【0043】
コイル電流設定工程(S106)として、電磁コイル216に、ブランキング偏向器212でビームOFFになるように偏向する偏向量よりも小さい偏向量になる電流を流す。言い換えれば、ブランキングアパーチャ214によってビームOFFにならない程度に電子ビーム200を偏向する。かかる偏向量は、ブランキング偏向器212のビームON時の電圧変動で生じる偏向量よりも大きい偏向量であると好適である。より大きい偏向量(偏向電圧)で後述する設定が行われれば、それ以下の電圧変動量ではビーム入射角がずれないからである。具体的には、描画制御部66が制御信号を制御回路120に出力する。制御回路120は、指示された電流値になるように、コイル制御回路134に制御信号を出力する。コイル制御回路134は、電磁コイル216に指示された電流を流す。
【0044】
図9は、実施の形態1における電磁コイルによるビーム偏向を説明するための概念図である。上述したように、ブランキング偏向器212で電子ビーム200のブランキング偏向を行う場合、偏向支点がブランキング偏向器212の中心高さ位置Hに位置することになる。そこで、
図9(a)に示すように、電磁コイル216をブランキング偏向器212の中心高さ位置Hに配置する。これにより、
図9(b)に示すように、電磁コイル216の磁場中心をブランキング偏向器212の中心高さ位置Hに形成できる。そして、電磁コイル216により電子ビームを偏向することで、あたかもブランキング偏向器212で偏向した際と同様(相似)のビーム軌道を形成できる。
【0045】
図10は、実施の形態1におけるブランキング軌道とコイルによるビーム軌道の一例を示す図である。
図10では、ブランキング偏向器212でビームOFFにならない程度にブランキング偏向させたビーム軌道をシミュレーションにより演算した結果を示す。そして、同様の偏向量になるように電磁コイル216でビーム偏向させた際のビーム軌道をシミュレーションにより演算した結果をさらに重ねて示している。
図10に示すように、両者はほぼ同様の軌道を示す。よって、ビーム入射角を測定するにあたり、ブランキング偏向器212の代わりに、電磁コイル216により電子ビーム200を偏向することが有効であることがわかる。
【0046】
図11は、実施の形態1における電磁コイルの配置位置を説明するための概念図である。上述した例では、電磁コイル216をブランキング偏向器212の中心高さ位置Hに配置したが、電磁コイル216の中心がブランキング偏向器212の中心高さ位置Hに完全一致させる場合に限るものではない。
図11に示すように、例えば、電磁コイル216の一部がブランキング偏向器212の中心高さ位置Hに配置される程度であれば、同様の効果を発揮できる。
【0047】
レンズ値仮設定工程(S108)として、電子レンズ211に仮の印加電圧を設定する。最初は、通常の電子光学系の調整で設定されたレンズ値をそのまま用いてもよい。具体的には、描画制御部66が制御信号を制御回路120に出力する。制御回路120は、指示された電圧値になるように、レンズ制御回路130に制御信号を出力する。レンズ制御回路130は、電子レンズ211に指示された電圧を印加する。
【0048】
照射位置測定工程(S110)として、測定部60は、上述した状態で電子ビーム200を試料101上に照射して、試料101上に照射された電子ビーム200の照射位置を測定する。具体的には、まず、XYステージ105上のマーク106が設計上の電子ビーム200の照射位置に配置されるようにXYステージ105を移動させる。かかる状態で、電子ビーム200を照射して、例えば、副偏向器209でビームをx,y方向に偏向させることで、試料101面に見立てたマーク106上をx,y方向に走査(スキャン)する。そして、マーク106およびその周辺から発生した反射電子或いは2次電子を検出器220で検出(測定)する。検出器220の出力は、アンプ138でデジタル信号に変換され、増幅の上、制御計算機110に入力される。制御計算機110内では、測定部60が、スキャン結果からビームの照射位置を演算する。ビームの照射位置は、外部I/F回路112等を介して外部に出力される。
【0049】
位置ずれ量算出工程(S112)として、位置ずれ量演算部62は、ビームの照射位置の設計位置からの位置ずれ量を演算する。位置ずれ量は、外部I/F回路112等を介して外部に出力される。
【0050】
以上のようにして、ビームの照射位置の設計位置からの位置ずれ量Δxを測定する。ここでは、説明を理解しやすくするためにx方向の位置ずれ量Δxを示したが、y方向の位置ずれ量も同様に測定すると好適である。
【0051】
判定工程(S114)として、判定部64は、位置ずれ量が許容値L以下かどうかを判定する。判定の結果、位置ずれ量が許容値L以下でない場合には、レンズ値仮設定工程(S108)に戻る。位置ずれ量が許容値L以下の場合にはレンズ値設定工程(S120)に進む。レンズ値仮設定工程(S108)では、レンズ値を可変に設定して、位置ずれ量が許容値L以下になるまで、レンズ値仮設定工程(S108)から判定工程(S114)までを繰り返す。
【0052】
以上のように、ブランキング偏向器212にビームONになる電圧を印加し、電磁コイル216にブランキング偏向器212でビームOFFになるように偏向する偏向量よりも小さい偏向量になる電流を流した状態で、電子レンズ211に印加する電圧を可変にして電子ビームを収束させ、電子レンズ211に印加される電圧毎に、試料101上に照射された電子ビーム200の照射位置の位置ずれ量を測定する。そして、電子レンズに印加する電圧毎に、位置ずれ量が許容値L以下かどうかを判定する。位置ずれ量が許容値L以下になれば、ビーム入射角θを実質的に垂直入射した状態にできる。
【0053】
レンズ値設定工程(S120)として、位置ずれ量が許容値L以下となった際のレンズ値(電圧値)を電子レンズ211に設定する。以上のように、電子レンズ211に印加する電圧は、ビーム照射位置の位置ずれ量が許容値L内に入るように調整される。具体的には、描画制御部66が制御信号を制御回路120に出力する。制御回路120は、指示された電圧値になるように、レンズ制御回路130に制御信号を出力する。レンズ制御回路130は、電子レンズ211に指示された電圧を印加する。
【0054】
以上により、電子レンズ211により収束させられる電子ビーム200のクロスオーバー位置がブランキング偏向器212の中心高さ位置Hに調整される。よって、
図3(b)及び
図5(a)で説明したように、クロスオーバー位置がブランキング偏向器212の中心高さ位置に制御されている場合、ブランキング電圧の電圧変動が生じても、電子ビーム200は、試料101面に垂直入射と実質的に同等の角度で入射する。言い換えれば、ビーム入射角θを略0°にできる。
【0055】
以上のように実施の形態1によれば、ビームONの際のブランキング電圧が変動した場合でも、ブランキング電圧の変動に起因して試料面へのビームの入射角の変動が生じないようにできる。
【0056】
描画工程(S122)として、上述した試料101面へのビーム入射角調整方法によって試料面へのビーム入射角が調整された電子ビーム200を用いて、ブランキング偏向器212を用いてブランキング動作を行いながら試料101にパターンを描画する。描画動作は、上述した通りである。かかるビーム入射角の調整を行った描画装置100で描画を行うことで、描画の位置精度を向上させることができる。
【0057】
実施の形態2.
実施の形態1では、電磁コイル216をブランキング偏向器212の中心高さ位置Hに配置したが、あたかもブランキング偏向器212で偏向した際と同様のビーム軌道を形成するための構成はこれに限るものではない。実施の形態2では、複数の電磁コイルを用いて、別の構成によりブランキング偏向器212で偏向した際と同様のビーム軌道を形成する。
【0058】
図12は、実施の形態2における描画装置の構成を示す概念図である。
図12において、電磁コイル216の代わりに、複数の電磁コイル218,219を電磁コイル216とは別の位置に配置した以外は、
図1と同様である。また、実施の形態2におけるビーム入射角調整方法の要部工程を示すフローチャート図は、
図8と同様である。以下、特に説明する点以外の内容は実施の形態1と同様である。
【0059】
図13は、実施の形態2における複数の電磁コイルの配置位置と複数の電磁コイルによるビーム偏向とを説明するための概念図である。実施の形態2では、
図13に示すように、光軸方向に対してブランキング偏向器212よりも後側に複数の電磁コイル218,219を配置する。そして、複数の電磁コイル218,219で電子ビーム200を偏向する。なお、複数の電磁コイル218,219の配置位置は、光軸方向に対してブランキング偏向器212よりも後側で、最終のクロスオーバー位置よりも前側に配置できれば配置位置は任意でよい。
【0060】
コイル電流設定工程(S106)として、複数の電磁コイル218,219に、ブランキング偏向器212でビームOFFになるように偏向する偏向量よりも小さい偏向量になる電流であって、複数の電磁コイル218,219によって偏向された電子ビーム200の軌道の延長線と光軸との交点が、ブランキング偏向器212の中心高さ位置Hになる電流を流す。言い換えれば、ブランキングアパーチャ214によってビームOFFにならない程度に電子ビーム200を偏向する。これにより、複数の電磁コイル218,219によって偏向された電子ビーム200の軌道の延長線と光軸との交点が、ブランキング偏向器212の中心高さ位置になるように、複数の電磁コイル218,219によって形成される磁場が調整されることになる。複数の電磁コイル218,219を用いることで、電磁コイル218により光軸からビームを偏向し、電磁コイル219によりビーム偏向の一部を振り戻すことができる。かかる多段偏向により、電子ビーム200の軌道の延長線と光軸との交点が、ブランキング偏向器212の中心高さ位置になるように調整できる。電磁コイルをブランキング偏向器212の中心高さ位置Hに配置しない場合に、見かけ上、ブランキング偏向器212の中心高さ位置に偏向支点があるようにビーム軌道を調整するためには、偏向したビームを振り戻す必要がある。複数の電磁コイル218,219によってこれを達成できる。具体的には、描画制御部66が制御信号を制御回路120に出力する。制御回路120は、指示された電流値の組み合わせになるように、コイル制御回路134に制御信号を出力する。コイル制御回路134は、電磁コイル218,219に指示されたそれぞれの電流を流す。電磁コイル218,219による偏向量は、ブランキング偏向器212のビームON時の電圧変動する電圧よりも大きい電圧であると好適である。
【0061】
以上のように、構成しても、実施の形態1と同様の効果を発揮できる。
【0062】
実施の形態3.
上述した実施の形態では、電磁コイル216或いは電磁コイル218,219を用いて、微小偏向を作り出していたが、これに限るものではない。実施の形態3では、調整用のアンプを別途用意してブランキング偏向器212で偏向する構成について説明する。
【0063】
図14は、実施の形態3における描画装置の構成を示す概念図である。
図14において、電磁コイル216とコイル制御回路132の代わりに、DACアンプ123を配置した以外は、
図1と同様である。また、実施の形態3におけるビーム入射角調整方法の要部工程を示すフローチャート図は、
図8のS106のコイル電流設定(ブランキング偏向調整)を「ブランキング偏向調整」と読み替える点以外、
図8と同様である。以下、特に説明する点以外の内容は実施の形態1或いは実施の形態2と同様である。
【0064】
図14において、DACアンプ123(第2のアンプ)は、DACアンプ122(第1のアンプ)と並列にブランキング偏向器212に接続される。DACアンプ123は、DACアンプ123は、ビームOFFにならない程度に電子ビーム200を偏向する電圧を出力可能であればよい。よって、DACアンプ123は、DACアンプ122に比べて応答速度が遅くても構わない。
【0065】
ブランキング偏向調整工程(S106)として、DACアンプ123は、ブランキング偏向器122によるビームONの状態から、さらに、ビームOFFにならない程度に電子ビーム200を偏向する電圧をブランキング偏向器212に印加する。かかる偏向量は、ブランキング偏向器212のビームON時の電圧変動で生じる偏向量よりも大きい偏向量であると好適である。より大きい偏向量(偏向電圧)で後述する設定が行われれば、それ以下の電圧変動量ではビーム入射角がずれないからである。具体的には、描画制御部66が制御信号を制御回路120に出力する。制御回路120は、指示された電圧値になるように、DACアンプ123に制御信号を出力する。DACアンプ123は、デジタル信号をアナログ信号に変換し、増幅させた上で偏向電圧として、ブランキング偏向器212に指示された電圧を印加する。
【0066】
以上のように、調整用のアンプを別途用意してブランキング偏向器212で偏向しても実施の形態1或いは実施の形態2と同様の効果を発揮できる。
【0067】
実施の形態4.
実施の形態4では、対物レンズ207上でのビーム中心を調整することでビーム入射角の調整をおこなう構成について説明する。実施の形態4において、以下、特に説明する点以外の内容は実施の形態1〜3のいずれかと同様である。
【0068】
図15は、実施の形態4における描画装置の構成を示す概念図である。
図15において、制御計算機110内の測定部60、位置ずれ量演算部62、及び判定部64の代わりに、制御計算機110内に測定部70、位置ずれ量演算部72、及び判定部74,76を配置した点と、電磁コイル218と、コイル制御回路133と、レンズ制御回路131を追加した点と、以外は
図1と同様である。なお、測定部70、位置ずれ量演算部72、判定部74,76、及び描画制御部66といった機能は、それぞれ電気回路等のハードウェアで構成されてもよい、或いは、これらの機能を実行するプログラム等のソフトウェアで構成されてもよい。或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより構成されてもよい。測定部70、位置ずれ量演算部72、判定部74,76、及び描画制御部66に入出力される情報および演算中の情報はメモリ112にその都度格納される。また、レンズ制御回路131については、実施の形態1〜3において存在しないわけではなく、図示を省略しただけ、或いは制御回路120としてまとめただけであることは言うまでもない。また、電磁コイル218は、ブランキング偏向器212と対物レンズ207の間に配置される。また、マーク106の高さ位置は、試料101面と同じ高さ位置にすると好適である。マーク106の配置位置自体を試料101面と同じ高さ位置にしても良いし、或いは、XYステージ105にZステージ機構を追加して、XYステージ105を高さ方向に移動させることにより、マーク106の高さ位置を描画を行う際の試料101面と同じ高さ位置に調整しても好適である。
【0069】
図16は、実施の形態4における描画装置の他の構成を示す概念図である。
図16において、電磁コイル216とコイル制御回路132の代わりに、DACアンプ123を配置した以外は、
図15と同様である。
【0070】
図4(b)に示したように、クロスオーバー位置がブランキング偏向器212の中心高さ位置Hよりも例えば上方に制御されている場合、ブランキング電圧の電圧変動が生じると、対物レンズ207の磁場中において電子ビーム200のビーム中心位置が対物レンズ207の磁場中心からずれた状態になる。そこで、実施の形態4では、かかる現象を利用して、電子ビーム200のビーム中心位置が対物レンズ207の磁場中心に近づくように電子レンズ211への印加電圧を調整することによって、ビーム入射角の調整をおこなう。
【0071】
図17は、実施の形態4におけるビーム入射角調整方法の要部工程を示すフローチャート図である。
図17において、実施の形態1におけるビーム入射角調整方法は、レンズ値仮設定工程(S202)と、ビームON設定工程(S204)と、ビーム中心移動工程(S206)と、対物レンズ設定(1)工程(S208)と、照射位置測定工程(S210)と、対物レンズ設定(2)工程(S212)と、照射位置測定工程(S214)と、判定工程(S216)と、ブランキング偏向調整工程(S218)と、ビーム中心移動工程(S220)と、対物レンズ設定(1)工程(S222)と、照射位置測定工程(S224)と、対物レンズ設定(2)工程(S226)と、照射位置測定工程(S228)と、判定工程(S230)と、判定工程(S232)と、レンズ値設定工程(S234)と、いう一連の工程を実施する。また、実施の形態4における描画方法は、かかるビーム入射角調整方法の各工程と、描画工程(S236)という一連の工程を実施する。
【0072】
レンズ値仮設定工程(S202)として、電子レンズ211に仮の印加電圧を設定する。最初は、通常の電子光学系の調整で設定されたレンズ値をそのまま用いてもよい。具体的には、描画制御部66が制御信号を制御回路120に出力する。制御回路120は、指示された電圧値になるように、レンズ制御回路130に制御信号を出力する。レンズ制御回路130は、電子レンズ211に指示された電圧を印加する。
【0073】
ビームON設定工程(S204)として、ブランキング偏向器212にビームONになる電圧を印加する。ここでは、ブランキング偏向器212のビームON時の電圧に電圧変動は生じない、或いは無視できる程度のものであるとする。或いは、電圧変動が生じていてもよい。具体的には、描画制御部66が制御信号を制御回路120に出力する。制御回路120は、指示された偏向量になるように、DACアンプ122に制御信号を出力する。DACアンプ122はデジタル信号をアナログ信号に変換の上、増幅してブランキング偏向器212に偏向電圧を印加する。ここでは、ビームONになる電圧なので、例えば、0Vの電圧を印加する。
【0074】
ビーム中心移動工程(S206)として、電磁コイル218を用いて、対物レンズ207のレンズ中心側に電子ビーム200を偏向して、電子ビーム200のビーム中心を移動させる。電子ビーム200のビーム中心位置が対物レンズ207の磁場中心の位置になるように調整することが望ましい。具体的には、描画制御部66が制御信号を制御回路120に出力する。制御回路120は、指示された電流値になるように、コイル制御回路133に制御信号を出力する。コイル制御回路133は、電磁コイル218に指示された電流を流す。ここでは、まず、仮の電流値を設定する。
【0075】
対物レンズ設定(1)工程(S208)として、対物レンズ207により、電子ビーム200の焦点位置を設定する。ここでは、マーク106高さとは異なる高さ位置に焦点を設定する。具体的には、描画制御部66が制御信号を制御回路120に出力する。制御回路120は、指示された電圧値になるように、レンズ制御回路131に制御信号を出力する。レンズ制御回路131は、対物レンズ207に指示された電圧を印加する。
【0076】
図18は、実施の形態4における焦点位置の一例を示す図である。
図18において、マーク106高さ位置(試料101面位置)に対して、上方或いは下方に焦点位置を設定する。ここでは、例えば、上方(Z方向+側)に焦点位置(焦点1)を調整する。
【0077】
照射位置測定工程(S210)として、測定部70は、上述した状態で電子ビーム200をマーク106(試料101)上に照射して、マーク106(試料101)上に照射された電子ビーム200の照射位置を測定する。具体的には、まず、XYステージ105上のマーク106が設計上の電子ビーム200の照射位置に配置されるようにXYステージ105を移動させる。かかる状態で、電子ビーム200を照射して、例えば、副偏向器209でビームをx,y方向に偏向させることで、マーク106上をx,y方向に走査(スキャン)する。そして、マーク106およびその周辺から発生した反射電子或いは2次電子を検出器220で検出(測定)する。検出器220の出力は、アンプ138でデジタル信号に変換され、増幅の上、制御計算機110に入力される。制御計算機110内では、測定部70が、スキャン結果からビームの照射位置を演算する。ビームの照射位置は、外部I/F回路112等を介して外部に出力される。
【0078】
対物レンズ設定(2)工程(S212)として、対物レンズ207により、電子ビーム200の焦点位置を別の高さ位置に設定する。ここでも、マーク106高さとは異なる高さ位置に焦点を設定する。ここでは、例えば、
図18に示すように、下方(Z方向−側)に焦点位置(焦点2)を調整する。
【0079】
照射位置測定工程(S214)として、測定部70は、上述した状態で電子ビーム200をマーク106(試料101)上に照射して、マーク106(試料101)上に照射された電子ビーム200の照射位置を測定する。具体的には、電子ビーム200を照射して、例えば、副偏向器209でビームをx,y方向に偏向させることで、マーク106上をx,y方向に走査(スキャン)する。そして、マーク106およびその周辺から発生した反射電子或いは2次電子を検出器220で検出(測定)する。検出器220の出力は、アンプ138でデジタル信号に変換され、増幅の上、制御計算機110に入力される。制御計算機110内では、測定部70が、スキャン結果からビームの照射位置を演算する。ビームの照射位置は、外部I/F回路112等を介して外部に出力される。
【0080】
判定工程(S216)として、まず、位置ずれ量演算部72が、焦点1で示した+側の焦点位置でのマーク106上の照射位置と、焦点2で示した−側の焦点位置でのマーク106上の照射位置との差を演算する。そして、判定部74は、測定された照射位置間の位置ずれ量が閾値Δ1(第1の閾値)以下かどうかを判定する。測定された照射位置間の位置ずれ量が閾値Δ1以下でない場合には、ビーム中心移動工程(S206)に戻り、閾値Δ1以下になるまでビーム中心移動工程(S206)から判定工程(S216)を繰り返す。電子ビーム200のビーム中心位置が対物レンズ207の磁場中心の位置に近づくほど、測定される照射位置間の位置ずれ量は小さくなる。すなわち、測定された照射位置間の位置ずれ量が閾値Δ1以下であれば、電子ビーム200のビーム中心位置が対物レンズ207の磁場中心の位置により近づいたことになる。言い換えれば、測定された照射位置間の位置ずれ量が閾値Δ1以下となるように、電磁コイル218を用いて、対物レンズ207のレンズ中心側に電子ビーム200のビーム中心を移動させる。
【0081】
ブランキング偏向調整工程(S218)として、
図15の例であれば、電磁コイル216に、ブランキング偏向器212でビームOFFになるように偏向する偏向量よりも小さい偏向量になる電流を流す。言い換えれば、ブランキングアパーチャ214によってビームOFFにならない程度に電子ビーム200を偏向する。かかる偏向量は、ブランキング偏向器212のビームON時の電圧変動で生じる偏向量よりも大きい偏向量であると好適である。より大きい偏向量(偏向電圧)で後述する設定が行われれば、それ以下の電圧変動量ではビーム入射角がずれないからである。具体的には、描画制御部66が制御信号を制御回路120に出力する。制御回路120は、指示された電流値になるように、コイル制御回路134に制御信号を出力する。コイル制御回路134は、電磁コイル216に指示された電流を流す。
【0082】
或いは、
図16の例であれば、DACアンプ123は、ブランキング偏向器122によるビームONの状態から、さらに、ビームOFFにならない程度に電子ビーム200を偏向する電圧をブランキング偏向器212に印加する。かかる偏向量は、ブランキング偏向器212のビームON時の電圧変動で生じる偏向量よりも大きい偏向量であると好適である。より大きい偏向量(偏向電圧)で後述する設定が行われれば、それ以下の電圧変動量ではビーム入射角がずれないからである。具体的には、描画制御部66が制御信号を制御回路120に出力する。制御回路120は、指示された電圧値になるように、DACアンプ123に制御信号を出力する。DACアンプ123は、デジタル信号をアナログ信号に変換し、増幅させた上で偏向電圧として、ブランキング偏向器212に指示された電圧を印加する。
【0083】
ビーム中心移動工程(S220)として、電磁コイル218を用いて、対物レンズ207のレンズ中心側に電子ビーム200を偏向して、電子ビーム200のビーム中心を移動させる。電子ビーム200のビーム中心位置が対物レンズ207の磁場中心の位置になるように調整することが望ましい。具体的には、描画制御部66が制御信号を制御回路120に出力する。制御回路120は、指示された電流値になるように、コイル制御回路133に制御信号を出力する。コイル制御回路133は、電磁コイル218に指示された電流を流す。ここでは、まず、仮の電流値を設定する。
【0084】
対物レンズ設定(1)工程(S222)として、対物レンズ207により、電子ビーム200の焦点位置を設定する。ここでは、マーク106高さとは異なる高さ位置に焦点を設定する。ここでは、
図18に示した、上方(Z方向+側)に焦点位置(焦点1)を調整する。
【0085】
照射位置測定工程(S224)として、測定部70は、上述した状態で電子ビーム200をマーク106(試料101)上に照射して、マーク106(試料101)上に照射された電子ビーム200の照射位置を測定する。具体的には、まず、XYステージ105上のマーク106が設計上の電子ビーム200の照射位置に配置されるようにXYステージ105を移動させる。かかる状態で、電子ビーム200を照射して、例えば、副偏向器209でビームをx,y方向に偏向させることで、マーク106上をx,y方向に走査(スキャン)する。そして、マーク106およびその周辺から発生した反射電子或いは2次電子を検出器220で検出(測定)する。検出器220の出力は、アンプ138でデジタル信号に変換され、増幅の上、制御計算機110に入力される。制御計算機110内では、測定部70が、スキャン結果からビームの照射位置を演算する。ビームの照射位置は、外部I/F回路112等を介して外部に出力される。
【0086】
対物レンズ設定(2)工程(S226)として、対物レンズ207により、電子ビーム200の焦点位置を別の高さ位置に設定する。ここでも、マーク106高さとは異なる高さ位置に焦点を設定する。ここでは、例えば、
図18に示すように、下方(Z方向−側)に焦点位置(焦点2)を調整する。
【0087】
照射位置測定工程(S228)として、測定部70は、上述した状態で電子ビーム200をマーク106(試料101)上に照射して、マーク106(試料101)上に照射された電子ビーム200の照射位置を測定する。具体的には、電子ビーム200を照射して、例えば、副偏向器209でビームをx,y方向に偏向させることで、マーク106上をx,y方向に走査(スキャン)する。そして、マーク106およびその周辺から発生した反射電子或いは2次電子を検出器220で検出(測定)する。検出器220の出力は、アンプ138でデジタル信号に変換され、増幅の上、制御計算機110に入力される。制御計算機110内では、測定部70が、スキャン結果からビームの照射位置を演算する。ビームの照射位置は、外部I/F回路112等を介して外部に出力される。
【0088】
判定工程(S230)として、まず、位置ずれ量演算部72が、焦点1で示した+側の焦点位置でのマーク106上の照射位置と、焦点2で示した−側の焦点位置でのマーク106上の照射位置との差を演算する。そして、判定部74は、測定された照射位置間の位置ずれ量が閾値Δ1(第1の閾値)以下かどうかを判定する。測定された照射位置間の位置ずれ量が閾値Δ1以下でない場合には、ビーム中心移動工程(S220)に戻り、閾値Δ1以下になるまでビーム中心移動工程(S220)から判定工程(S230)を繰り返す。電子ビーム200のビーム中心位置が対物レンズ207の磁場中心の位置に近づくほど、測定される照射位置間の位置ずれ量は小さくなる。すなわち、測定された照射位置間の位置ずれ量が閾値Δ1以下であれば、電子ビーム200のビーム中心位置が対物レンズ207の磁場中心の位置により近づいたことになる。言い換えれば、測定された照射位置間の位置ずれ量が閾値Δ1以下となるように、電磁コイル218を用いて、対物レンズ207のレンズ中心側に電子ビーム200のビーム中心を移動させる。
【0089】
判定工程(S232)として、判定部76は、ビームONの状態に制御された状態(ビームON設定工程(S204)後の状態)での電子ビーム200のビーム中心の移動量L1と、電子ビーム200がビームONの状態からさらに偏向された状態(ブランキング偏向調整工程(S218)後の状態)での電子ビーム200のビーム中心の移動量L2との差分(L1−L2)が閾値Δ2(第2の閾値)以下かどうかを判定する。
【0090】
ビームONの状態に制御された状態でのビーム中心の移動量L1は、電磁コイル218への入力電流の累積変化量から換算しても好適である。言い換えれば、判定工程(S216)において、測定された照射位置間の位置ずれ量が閾値Δ1以下になるまでに行ったビーム中心移動工程(S206)でのビーム中心を移動させた距離の合計を用いる。
【0091】
同様に、ビームONの状態からさらに偏向された状態でのビーム中心の移動量L2は、電磁コイル218への入力電流の累積変化量から換算しても好適である。言い換えれば、判定工程(S230)において、測定された照射位置間の位置ずれ量が閾値Δ1以下になるまでに行ったビーム中心移動工程(S220)でのビーム中心を移動させた距離の合計を用いる。
【0092】
ビーム中心の移動量L1,L2の差分(L1−L2)が閾値Δ2以下でない場合、レンズ値仮設定工程(S202)に戻り、電子レンズ211に次の印加電圧を設定する。そして、ビーム中心の移動量L1,L2の差分(L1−L2)が閾値Δ2以下になるまで、レンズ値仮設定工程(S202)から判定工程(S232)までを繰り返す。言い換えれば、差分(L1−L2)が閾値Δ2以下になるまで、電子レンズ211に印加する電圧を可変にしながら上述した各工程を繰り返す。
【0093】
電子レンズ211によって、クロスオーバー位置がブランキング偏向器212の中心高さ位置に調整されれば、上述したように偏向支点とクロスオーバー位置とがずれないので、
図4(a)に示すように、そもそも、微小偏向が生じてもビーム中心は対物レンズ207のレンズ中心からずれない。
【0094】
レンズ値設定工程(S234)として、差分(L1−L2)が閾値Δ2以下となった際のレンズ値(電圧値)を電子レンズ211に設定する。以上のように、電子レンズ211に印加する電圧は、差分(L1−L2)が閾値Δ2以下になるように調整される。具体的には、描画制御部66が制御信号を制御回路120に出力する。制御回路120は、指示された電圧値になるように、レンズ制御回路130に制御信号を出力する。レンズ制御回路130は、電子レンズ211に指示された電圧を印加する。
【0095】
以上により、電子レンズ211により収束させられる電子ビーム200のクロスオーバー位置がブランキング偏向器212の中心高さ位置Hに調整される。よって、
図3(b)及び
図5(a)で説明したように、クロスオーバー位置がブランキング偏向器212の中心高さ位置に制御されている場合、ブランキング電圧の電圧変動が生じても、電子ビーム200は、試料101面に垂直入射と実質的に同等の角度で入射する。言い換えれば、ビーム入射角θを略0°にできる。
【0096】
以上のように実施の形態4によれば、ビームONの際のブランキング電圧が変動した場合でも、ブランキング電圧の変動に起因して試料面へのビームの入射角の変動が生じないようにできる。
【0097】
描画工程(S236)として、描画工程(S122)と同様、上述した試料101面へのビーム入射角調整方法によって試料面へのビーム入射角が調整された電子ビーム200を用いて、ブランキング偏向器212を用いてブランキング動作を行いながら試料101にパターンを描画する。
【0098】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、実施の形態1,2において位置ずれ量が許容値L以下かどうかを判定する判定工程(S114)は、描画装置100内で実施せずに外部で判定してもよい。例えば、ユーザ等によって判定されてもよい。また、位置ずれ量の演算についても描画装置100内で実施せずに外部で演算してもよい。例えば、ユーザ等によって演算されてもよい。
【0099】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0100】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての荷電粒子ビーム描画装置、試料面へのビーム入射角調整方法、および荷電粒子ビーム描画方法は、本発明の範囲に包含される。