特許第6087407号(P6087407)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087407
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】粘着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/14 20060101AFI20170220BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20170220BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20170220BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20170220BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20170220BHJP
   C09K 3/16 20060101ALI20170220BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20170220BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   C09J133/14
   C09J11/06
   C09J9/02
   C09J175/04
   C09J7/02 Z
   C09K3/16 102F
   C09K3/16 104E
   C09K3/16 108D
   C09K3/16 104G
   C09K3/16 103A
   G02B5/30
   G02F1/1335 510
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-185691(P2015-185691)
(22)【出願日】2015年9月18日
(65)【公開番号】特開2016-69648(P2016-69648A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2016年8月4日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0128688
(32)【優先日】2014年9月25日
(33)【優先権主張国】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE−CHEM CO., LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100173532
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 彰文
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】崔 ▲漢▼永
(72)【発明者】
【氏名】安 明龍
(72)【発明者】
【氏名】張 柱烈
(72)【発明者】
【氏名】淺津 悠司
(72)【発明者】
【氏名】竹厚 流
【審査官】 櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−114334(JP,A)
【文献】 特表2014−514387(JP,A)
【文献】 特開2007−111970(JP,A)
【文献】 特開2012−140578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 133/14
C09J 7/02
C09J 9/02
C09J 11/06
C09J 175/04
C09K 3/16
G02B 5/30
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n−ブチルアクリレートを単量体の全重量に対して30重量%以上含み、下記化学式1で示される化合物を前記単量体の前記全重量に対して0.5〜7重量%含んで重合されたアクリル系共重合体と、
多官能イソシアネート系架橋剤と、
アルカリ金属カチオンおよびオニウムカチオンのうちの1種以上のカチオン並びにフッ素含有無機アニオンおよびフッ素含有有機アニオンのうちの1種以上のアニオンを含むイオン性帯電防止剤と、
求電子性置換基又は求核性置換基を有するシランカップリング剤と
を含むことを特徴とする、粘着剤組成物。
【化1】
〔式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。〕
【請求項2】
前記多官能イソシアネート系架橋剤は、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、及びナフタレンジイソシアネートからなる群から選択されるジイソシアネート化合物;3価アルコール系化合物1モルと前記ジイソシアネート化合物3モルとを反応させた付加体;前記ジイソシアネート化合物3モルを自己縮合させたイソシアヌレート体;前記ジイソシアネート化合物3モルのうち2モルから得られるジイソシアネートウレアに、残り1モルのジイソシアネートが縮合されたビュレット体;及びトリフェニルメタントリイソシアネート及びメチレンビストリイソシアネートからなる群から選択されるトリイソシアネート化合物からなる群から選択される1種以上の架橋剤である、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記求電子性置換基を有するシランカップリング剤は、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヨードプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、4−クロロメチルフェニルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、及び2−イソシアネートエチルトリメトキシシランからなる群から選択される1種以上の化合物である、請求項1または2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記求核性置換基を有するシランカップリング剤は、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、アセトアセトキシプロピルトリメトキシシラン、及びアセトアセトアミドプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される1種以上の化合物である、請求項1または2に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記アルカリ金属カチオンは、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン又はカリウムカチオンであり、
前記オニウムカチオンは、第四級アルキルアンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン又はイミダゾリウムカチオンであり、
前記フッ素含有無機アニオンは、BF、PF又はSbFであり、
前記フッ素含有有機アニオンは、パーフルオロアルキル基を含むスルホネート又はパーフルオロアルキル基もしくはフルオロ基を含むスルホンイミドアニオンである、請求項1ないしのいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記アクリル系共重合体(固形分)の100重量部に対して、前記多官能イソシアネート系架橋剤を0.1〜15重量部、前記シランカップリング剤を0.005〜10重量部、前記イオン性帯電防止剤を0.1〜5重量部含む、請求項1ないしのいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の前記粘着剤組成物からなる粘着剤層がシート上に形成されてなることを特徴とする粘着シート。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかに記載の前記粘着剤組成物からなる粘着剤層が偏光板上に形成されてなることを特徴とする粘着剤層付き偏光板。
【請求項9】
請求項に記載の前記粘着剤層付き偏光板が液晶セルの少なくとも片面に接合されてなる液晶パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(Liquid crystal display device、LCD)には、一般的に液晶を備えた液晶セル及び偏光板が設けられ、前記液晶表示装置の表示品質を向上させるために様々な光学フィルム(位相差板、視野角拡大フィルム、輝度向上フィルム等)が用いられる。
【0003】
このような偏光板及び光学フィルムは、粘着剤を用いて液晶セルに接合される。粘着剤は、接着性及び透明性に優れたアクリル系重合体をベースとしたアクリル系粘着剤が多く用いられる。アクリル系粘着剤の架橋は、架橋剤とアクリル系重合体の官能性単量体との結合を利用する。
【0004】
液晶セルと偏光板との接合のための粘着剤は、基材との密着性、光漏れ防止性、耐熱及び湿熱耐久性のみならず、リワーク性のような物性を同時に満たさなければならない。また、前記言及した物性と共に粘着剤は、養生期間を短縮し、生産性も向上することが求められる。
【0005】
このように、従来、粘着剤として求められる物性を維持すると共に養生期間を短縮するための方法として、架橋反応を促進させる架橋促進剤を用いる方法が提案されている。
【0006】
韓国公開特許第2009−0132116号公報には、特定構造のルイス塩基を含む粘着剤組成物が記載されており、韓国公開特許第2008−0047030号公報には、ルイス酸を含む粘着剤組成物が記載されている。前記文献に記載された粘着剤組成物は、養生短縮の効果を有するが、架橋促進剤の添加によって粘着剤組成物の粘度が急激に変化して保存安定性が低下し、粘着剤のポットライフを短縮する短所を有しており、これによって工程安定性に問題を起こし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許第2009−0132116号公報
【特許文献2】韓国公開特許第2008−0047030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、架橋促進剤を添加することなく養生時間を短縮し、且つ良好なコーティング性も同時に有することができる粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、優れたリワーク性及び耐久性を有する粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【0010】
本発明は、優れた帯電防止性及び経時帯電防止性を有する粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1.n−ブチルアクリレートを単量体の全重量に対して30重量%以上含み、下記化学式1で示される化合物を含む単量体混合物を重合させて得られるアクリル系共重合体と、多官能イソシアネート系架橋剤と、アルカリ金属カチオンおよびオニウムカチオンのうちの1種以上のカチオン並びにフッ素含有無機アニオンおよびフッ素含有有機アニオンのうちの1種以上のアニオンを含むイオン性帯電防止剤と、求電子性置換基又は求核性置換基を有するシランカップリング剤とを含む、粘着剤組成物。
【0012】
【化1】
〔式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。〕
【0013】
2.前記項目1において、前記単量体混合物は、前記化学式1で示される化合物を前記単量体の前記全重量に対して0.5〜7重量%含む、粘着剤組成物。
【0014】
3.前記項目1において、前記架橋剤は、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、及びナフタレンジイソシアネートからなる群から選択されるジイソシアネート化合物;3価アルコール系化合物1モルと前記ジイソシアネート化合物3モルとを反応させた付加体;前記ジイソシアネート化合物3モルを自己縮合させたイソシアヌレート体;ジイソシアネート化合物3モルのうち2モルから得られるジイソシアネートウレアに、残り1モルのジイソシアネートが縮合されたビュレット体;及びトリフェニルメタントリイソシアネート及びメチレンビストリイソシアネートからなる群から選択されるトリイソシアネート化合物からなる群から選択される1種以上の架橋剤である、粘着剤組成物。
【0015】
4.前記項目1において、前記求電子性置換基を有するシランカップリング剤は、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヨードプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、4−クロロメチルフェニルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、及び2−イソシアネートエチルトリメトキシシランからなる群から選択される1種以上の化合物である、粘着剤組成物。
【0016】
5.前記項目1において、前記求核性置換基を有するシランカップリング剤は、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、アセトアセトキシプロピルトリメトキシシラン、及びアセトアセトアミドプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される1種以上の化合物である、粘着剤組成物。
【0017】
6.前記項目1において、前記アルカリ金属カチオンは、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン又はカリウムカチオンであり、前記オニウムカチオンは、第四級アルキルアンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン又はイミダゾリウムカチオンであり、前記フッ素含有無機アニオンは、BF、PF又はSbFであり、前記フッ素含有有機アニオンは、パーフルオロアルキル基を含むスルホネート又はパーフルオロアルキル基もしくはフルオロ基を含むスルホンイミドアニオンである、粘着剤組成物。
【0018】
7.前記項目1において、前記アクリル系共重合体(固形分)の100重量部に対して、前記多官能イソシアネート系架橋剤を0.1〜15重量部、前記シランカップリング剤を0.005〜10重量部、前記イオン性帯電防止剤を0.1〜5重量部含む、粘着剤組成物。
【発明の効果】
【0019】
本発明の粘着剤組成物は、保存安定性等の問題を引き起こす架橋促進剤を実質的に含むことなく、養生時間を短縮し、且つ良好なコーティング性も同時に有することができる。
【0020】
本発明の粘着剤組成物は、優れたリワーク性及び耐久性を同時に満たすことができる。
【0021】
本発明の粘着剤組成物は、優れた帯電防止性を有すると共に経時帯電防止性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、合成例1で得られた5−ヒドロキシペンチルアクリレートのNMRチャートである。
図2図2は、合成例2で得られた6−ヒドロキシヘキシルアクリレートのNMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、n−ブチルアクリレートを単量体の全重量に対して30重量%以上含み、下記化学式1で示される化合物を含む単量体混合物を重合させて得られるアクリル系共重合体と、多官能イソシアネート系架橋剤と、アルカリ金属カチオンおよびオニウムカチオンのうち1種以上のカチオン並びにフッ素含有無機アニオンおよびフッ素含有有機アニオンのうち1種以上のアニオンを含むイオン性帯電防止剤と、求電子性置換基又は求核性置換基を有するシランカップリング剤とを含むことによって、短い養生時間、優れたコーティング性、リワーク性、耐久性のみならず、優れた帯電防止性及び経時帯電防止性の全てを備えた粘着剤組成物に関する。
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0025】
本発明によるアクリル系共重合体は、n−ブチルアクリレートを、単量体の全重量に対して30重量%以上含み、下記化学式1で示される化合物を含んで重合される。
【0026】
【化2】
〔式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。〕
【0027】
アルキルヒドロキシ基を含むアクリル系モノマーの場合、アルキルヒドロキシ基の炭素鎖が短すぎると、立体障害によって架橋効率が劣り、養生時間が長くなる問題がある。
【0028】
一方、炭素鎖が長すぎると、n−ブチルアクリレートを主単量体として用いて製造されたアクリル系共重合体において、立体障害が少なすぎるため、アクリル系共重合体内でヒドロキシ基同士が過剰な水素結合を形成する。これによって、共重合体のゲル特性が発現され、粘度上昇及び溶液内のポリマーの流動特性の不均一性等が原因となり、粘着剤組成物のコーティング性が低下する問題が生じ得る。
【0029】
すなわち、養生時間の短縮及びコーティング性の改善は、互いに相反する概念であって、従来の粘着剤組成物は、短い養生時間及び優れたコーティング性を同時に満たすことができなかった。
【0030】
しかしながら、本発明によれば、n−ブチルアクリレートを主単量体として用い、架橋性単量体として化学式1で示される単量体を用いることによって、偏光板用粘着剤として求められる基本的な特性である耐久性及びリワーク性が低下することなく、アルキルヒドロキシ基の炭素数が5個であって、適正な長さの炭素鎖を有するため、短い養生時間及び良好なコーティング性を同時に満たすことができる。
【0031】
化学式1で示される化合物の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル系共重合体の製造に用いられる単量体の全重量に対して0.5〜7重量%含まれ得、好ましくは、1〜5重量%含まれ得る。含有量が0.5重量%未満である場合、架橋反応促進効果が僅かであり、養生期間短縮効果及び耐久性向上効果は期待し難い。また、含有量が7重量%超過である場合、架橋反応が過度に速くなり、アクリル系共重合体の流動性が一部低下し得る。
【0032】
本発明によるアクリル系共重合体は、炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体をさらに含んで重合され、具体的には、n−ブチルアクリレートを含んで重合される。
【0033】
n−ブチルアクリレートは、単量体の全重量に対して30重量%以上含まれて重合される。n−ブチルアクリレートの含有量が30重量%未満であれば、粘着耐久性の改善及び養生短縮を同時に満たすことが困難であるといった問題が生じる。粘着耐久性の改善及び養生短縮効果を最大限にするため、n−ブチルアクリレートは、単量体の全重量に対して好ましくは80重量%以上含まれて重合され得る。
【0034】
n−ブチルアクリレートの他に、さらに含まれて重合され得る炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体としては、2−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、メチルエチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは、単独又は2種以上混合して用いることができる。ここで、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートの両方を意味する。
【0035】
炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、n−ブチルアクリレートを含み、単量体の全重量に対して85〜99重量%含まれ得、好ましくは、90〜95重量%である。含有量が85重量%未満である場合、粘着力が十分ではなく、99重量%超過である場合、凝集力が低下し得る。
【0036】
また、本発明によるアクリル系共重合体は、化学式1で示される化合物と共重合可能な架橋性単量体をさらに含んで重合され得る。
【0037】
架橋性単量体としては、例えば、ヒドロキシ基を有する単量体、カルボキシ基を有する単量体、アミド基を有する単量体、第三級アミノ基を有する単量体等が挙げられる。
【0038】
ヒドロキシ基を有する単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、アルキレン基の炭素数が2〜4であるヒドロキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、7−ヒドロキシヘプチルビニルエーテル、8−ヒドロキシオクチルビニルエーテル、9−ヒドロキシノニルビニルエーテル、10−ヒドロキシデシルビニルエーテル等が挙げられる。
【0039】
カルボキシ基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等の1価酸;
マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の2価酸、及びこれらのモノアルキルエステル;3−(メタ)アクリロイルプロパン酸;アルキル基の炭素数が2〜3である2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの無水コハク酸開環付加体、アルキレン基の炭素数が2〜4であるヒドロキシアルキレングリコール(メタ)アクリレートの無水コハク酸開環付加体、アルキル基の炭素数が2〜3である2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加体に無水コハク酸を開環付加させた化合物等が挙げられ、これらのうち(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0040】
アミド基を有する単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ターシャリーブチルアクリルアミド、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリルアミド、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチルヘキシル(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、これらのうち(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0041】
第三級アミノ基を有する単量体としては、N,N−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N,N−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N,N−(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】
前記架橋性単量体は、アクリル系共重合体の製造に用いられる単量体の全重量に対して0.05〜10重量%含まれることが好ましく、より好ましくは、0.1〜8重量%である。含有量が前記範囲内である場合、粘着剤の凝集力及び耐久性に優れる。
【0043】
また、前記単量体以外に他の重合性単量体が、粘着力を低下させない範囲で、例えば、10重量%以下でさらに含まれ得る。
【0044】
共重合体の製造方法は、特に限定されるものではなく、当分野において通常用いられる塊状重合、溶液重合、乳化重合又は懸濁重合等の方法を挙げることができ、溶液重合が好ましい。また、重合の際に通常用いられる溶媒、重合開始剤、分子量制御のための連鎖移動剤等が用いられる。
【0045】
共重合体は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(Gel permeation chromatography、GPC)によって測定された重量平均分子量(ポリスチレン換算、Mw)が5万〜200万であり、好ましくは、40万〜200万であればよい。
【0046】
このように構成される本発明によるアクリル系共重合体は、架橋剤との架橋反応性が高いため、架橋促進剤のような別途の成分を添加しなくても養生期間を短縮することができ、高温又は高温・多湿環境下においても耐久性を確保することができる。
【0047】
架橋剤は、共重合体を適宜架橋することによって、粘着剤の凝集力を強化するための成分である。粘着剤組成物に通常用いられる熱硬化性架橋剤としては、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、アジリジン架橋剤、メラミン架橋剤、金属アルコキシド架橋剤等があるが、本発明の粘着剤組成物は、養生短縮及び耐久性確保のために多官能イソシアネート系架橋剤を用いる。
【0048】
多官能イソシアネート架橋剤としては、2官能イソシアネート、3官能イソシアネート、4官能イソシアネート、5官能以上のイソシアネートを用いることができるが、好ましくは、3官能イソシアネートを用いることができる。これは、2官能イソシアネート架橋剤は、架橋が終了されたとしても架橋密度の低下によって凝集力が不足し、耐久性を確保することが容易ではなく、4官能以上のイソシアネート架橋剤は、量産規模での原料の確保が容易ではないのみならず、粘着剤組成物の経時による粘度上昇の問題が生じ得るためである。
【0049】
多官能イソシアネート系架橋剤は、特に限定されるものではなく、例えば、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物;トリメチロールプロパン等の3価アルコール系化合物1モルとジイソシアネート化合物3モルとを反応させた付加体、ジイソシアネート化合物3モルを自己縮合させたイソシアヌレート体、ジイソシアネート化合物3モルのうち2モルから得られるジイソシアネートウレアに、残り1モルのジイソシアネートが縮合されたビュレット体、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビストリイソシアネート等の3個の官能基を含む多官能イソシアネート化合物等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して用いることができる。
【0050】
多官能イソシアネート系架橋剤の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル系共重合体(固形分)100重量部に対して0.1〜15重量部含まれることが好ましく、より好ましくは、0.1〜5重量部である。含有量が0.1重量部未満である場合、不足する架橋度によって凝集力が減少し、浮きのような耐久性低下が誘発され、切断性が劣ることがある。一方、15重量部超過である場合、過多な架橋反応によって残留応力の緩和に問題が生じ得る。
【0051】
本発明の粘着剤組成物は、求電子性置換基又は求核性置換基を有するシランカップリング剤を含む。
【0052】
求電子性置換基とは、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基、ハロアルキル基、酸無水物基のようにアクリル系共重合体内のヒドロキシ基又はカルボキシ基との化学結合を形成する反応で求電子性の官能基として作用する置換基を意味する。求核性置換基とは、架橋剤であるイソシアネートとの共有結合形成反応において、求電子性の官能基として作用し得るヒドロキシ基、アミノ基、チオール基、アセトアセチル基のような求核性官能基を意味する。
【0053】
本発明によるシランカップリング剤が前記求電子性置換基又は求核性置換基を含まないか、或いは本発明の組成物が前記シランカップリング剤を含まなければ、耐熱性及び耐湿熱性が顕著に低下する。
【0054】
本発明によるシランカップリング剤は、例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、アセトアセトキシプロピルトリメトキシシラン、アセトアセトアミドプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して用いることができる。
【0055】
シランカップリング剤の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル系共重合体(固形分)100重量部に対して、0.005〜10重量部含まれ得、好ましくは、0.005〜5重量部含まれる。含有量が10重量部超過である場合、耐久性が低下し得る。
【0056】
粘着剤組成物に通常用いられる帯電防止剤としては、イオン性、ノニオン性、ベタイン性帯電防止剤があるが、ノニオン性帯電防止剤は、帯電防止性が不足し、ベタイン性帯電防止剤は、粘着剤組成物への相溶性が不足することから、本発明の組成物はイオン性帯電防止剤を含む。
【0057】
一方、イオン性帯電防止剤も通常、粘着剤組成物内で相溶性が多少不足して粘着層から基材層に帯電防止剤が移動し、粘着層の帯電防止剤の濃度が減少することによって、経時帯電防止性(帯電防止性の経時安定性)が低下する問題がある。
【0058】
しかしながら、前述の化学式1で示される化合物を含んで重合されたアクリル系共重合体は、長鎖ヒドロキシ基を有し、粘着剤組成物内に存在するイオンと容易に相互作用が可能であるため、イオン性帯電防止剤を前記アクリル系共重合体と共に用いる場合、帯電防止剤が化学式1の化合物の長鎖ヒドロキシ基と相互作用して移動性が低下する。そのため、粘着層から基材層への帯電防止剤の損失量が減少して、経時帯電防止性に優れている。
【0059】
一方、帯電防止剤の移動性が過度に低下する場合には、累積された静電気を迅速に解消することができず、帯電防止性が低下し得る。すなわち、優れた帯電防止性と、経時帯電防止性とは、互いに相反する概念であって、従来の粘着剤組成物は、これらを同時に満たすことができなかった。
【0060】
しかしながら、前記長鎖ヒドロキシ基は、適正な長さの炭素鎖を有するため、経時帯電防止性に優れ、良好な帯電防止性も同時に有することができる。
【0061】
本発明によるイオン性帯電防止剤は、アルカリ金属カチオン及びオニウムカチオンのうち1種以上のカチオンと、フッ素含有無機アニオン及びフッ素含有有機アニオンのうち1種以上のアニオンとを含む。このような場合には、相溶性、耐久性、及び帯電防止性に優れている。
【0062】
前記アルカリ金属カチオンは、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン又はカリウムカチオンであってもよい。オニウムカチオンは、第四級アルキルアンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン又はイミダゾリウムカチオンであってもよい。フッ素含有無機アニオンは、BF、PF又はSbFであってもよい。フッ素含有有機アニオンは、パーフルオロアルキル基を含むスルホネートであるか、又はパーフルオロアルキル基もしくはフルオロ基を含むスルホンイミドアニオンであってもよい。しかし、これらに制限されるものではない。
【0063】
前記アルキルアンモニウムカチオン、パーフルオロアルキル基におけるアルキル基は、炭素数1〜4のアルキル基であってもよい。
【0064】
イオン性帯電防止剤の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル系共重合体 (固形分) 100重量部に対して、0.1〜5重量部、好ましくは、0.5〜3重量部含まれ得る。含有量が0.1重量部未満である場合、帯電防止性が不十分であり、5重量部を超過する場合には、耐久性の確保が困難となる。
【0065】
前記成分以外に、粘着剤組成物は、用途に応じて求められる粘着力、凝集力、粘性、弾性率、ガラス転移温度等を調節するために、粘着性付与樹脂、酸化防止剤、腐食防止剤、レベリング剤、表面潤滑剤、染料、顔料、消泡剤、充填剤、光安定剤等の添加剤をさらに含むことができる。
【0066】
本発明の粘着剤組成物は、液晶セルとの接合のための偏光板用粘着剤のみならず、表面保護フィルム用粘着剤としても全て用いることができる。また、保護フィルム、反射シート、構造用粘着シート、写真用粘着シート、車線表示用粘着シート、光学用粘着製品、電子部品用粘着剤のみならず、一般商業用粘着シート製品、医療用パッチなどの粘着シートにも使用することができる。
【0067】
本発明の粘着剤組成物を用いた偏光板は、本発明の粘着剤組成物からなる粘着剤層が偏光板上に積層されてなることを特徴とする。また、本発明の粘着剤組成物を用いた粘着シートは、本発明の粘着剤からなる粘着剤層がシート上に積層されてなることを特徴とする。
【0068】
粘着剤層付き偏光板および粘着シートにおける粘着剤層の厚さは、その粘着力に応じて調節され得、通常3〜100μmであることが好ましく、より好ましくは、10〜100μmである。
【0069】
このような粘着剤層付き偏光板は、通常の液晶表示装置に全て適用可能であり、具体的には、粘着剤層付き偏光板が液晶セルの少なくとも片面に接合されてなる液晶パネルを備える液晶表示装置を構成することができる。
【0070】
以下、本発明の理解を容易にするために好適な実施例を示すが、これら実施例は本発明を例示するに過ぎず、添付された特許請求の範囲を制限するわけではなく、本発明の範疇及び技術思想の範囲内において実施例に対し変更が多様であること且つ修正が可能であることは、当業者にとって明らかなものであり、このような変更及び修正が添付された特許請求の範囲に属するのも当然のことである。
【0071】
合成例1.5−ヒドロキシペンチルアクリレートの合成
【0072】
【化3】
1,5−ジヒドロキシペンタン(10.5g、0.1mol)をピリジン(100mL)に溶解し、アクリロイルクロリド(9.05g)を滴下漏斗から10分間かけて滴下した。常温でさらに1時間撹拌した後、蒸溜水(200mL)及びエチルアセテート(200mL)を添加して、有機層を抽出して、抽出された有機層を減圧蒸留した。その後、カラムクロマトグラフィーを用いて、不純物と二量体とを分離除去した。その後、溶媒を減圧蒸留して除去し、5−ヒドロキシペンチルアクリレート(8.7g、収率46.3%)を調製した。
【0073】
調製された化合物は、CDCl溶媒に溶解させ、NMRで構造を確認して、純度98%以上の5−ヒドロキシペンチルアクリレートであることを確認した(図1)。
【0074】
合成例2.6−ヒドロキシヘキシルアクリレートの合成
【0075】
【化4】
1,6−ジヒドロキシヘキサン(11.8g、0.1mol)をピリジン(100mL)に溶解し、アクリロイルクロリド(9.05g)を滴下漏斗から10分間かけて滴下した。常温でさらに1時間撹拌した後、蒸溜水(200mL)及びエチルアセテート(200mL)を添加して、有機層を抽出して、抽出された有機層を減圧蒸留した。その後、カラムクロマトグラフィーを用いて、不純物と二量体とを分離除去した。これにより、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート(10.5g、収率61.0%)を調製した。
【0076】
調製された化合物は、CDCl溶媒に溶解させ、NMRで構造を確認して、純度98%以上の6−ヒドロキシヘキシルアクリレートであることを確認した(図2)。
【0077】
製造例1.アクリル系共重合体A−1の製造
窒素ガスが還流され、温度調節が容易になるように冷却装置が設けられた1Lの反応機に、n−ブチルアクリレート(BA)98重量部と、5−ヒドロキシペンチルアクリレート(合成例1)2重量部とからなる単量体混合物を投入した後、溶媒としてエチルアセテート(EA)100重量部を投入した。その後、酸素を除去するために窒素ガスを1時間導入して置換させた後、温度を70℃に維持した。単量体混合物を均一に撹拌した後、反応開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.07重量部を投入して、8時間反応させ、エチルアセテートをさらに投入してアクリル共重合体A−1を製造した。
【0078】
得られたアクリル系共重合体は、固形分の含有量が40%であり、重量平均分子量が80万、PDI7.6であり、粘度が11,500cPであることを確認した。
【0079】
製造例2.アクリル系共重合体A−2の製造
5−ヒドロキシペンチルアクリレート(合成例1)2重量部の代わりに、4−ヒドロキシブチルアクリレート(TCI社製)2重量部を用いて前記製造例1と同様に行った。得られたアクリル系共重合体は、固形分の含有量が40%であり、重量平均分子量が78万、PDI5.4であり、粘度が12,400cPであることを確認した。
【0080】
製造例3.アクリル系共重合体A−3の製造
5−ヒドロキシペンチルアクリレート(合成例1)2重量部の代わりに、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート(合成例2)2重量部を用いて前記製造例1と同様に行った。得られたアクリル系共重合体は、固形分の含有量が39%であり、重量平均分子量が75万、PDI9.7であり、粘度が13,000cPであることを確認した。
【0081】
製造例4.アクリル系共重合体A−4の製造
n−ブチルアクリレート(BA)99.4重量部、5−ヒドロキシペンチルアクリレート(合成例1)0.6重量部を用いること以外は、製造例1と同様に行った。得られたアクリル系共重合体は、固形分の含有量が40%であり、重量平均分子量が82万、PDI7.1であり、粘度が11,300cPであることを確認した。
【0082】
製造例5.アクリル系共重合体A−5の製造
n−ブチルアクリレート(BA)99.7重量部、5−ヒドロキシペンチルアクリレート(合成例1)0.3重量部を用いること以外は、製造例1と同様に行った。得られたアクリル系共重合体は、固形分の含有量が40%であり、重量平均分子量が85万、PDI6.5であり、粘度が10,700cPであることを確認した。
【0083】
製造例6.アクリル系共重合体A−6の製造
n−ブチルアクリレート(BA)91重量部、5−ヒドロキシペンチルアクリレート(合成例1)9重量部を用いること以外は、製造例1と同様に行った。得られたアクリル系共重合体は、固形分の含有量が40%であり、重量平均分子量が78万、PDI8.3であり、粘度が12,100cPであることを確認した。
【0084】
製造例7.アクリル系共重合体A−7の製造
5−ヒドロキシペンチルアクリレート(合成例1)2重量部の代わりに、2−ヒドロキシエチルアクリレート2重量部を用いること以外は、前記製造例1と同様に行った。得られたアクリル系共重合体は、固形分の含有量が40%であり、重量平均分子量が83万、PDI4.5であり、粘度が11,100cPであることを確認した。
【0085】
製造例8.アクリル系共重合体A−8の製造
n−ブチルアクリレート(BA)30重量部、エチルヘキシルアクリレート(EHA)68重量部、5−ヒドロキシペンチルアクリレート2重量部を用いること以外は、前記製造例1と同様に行った。得られたアクリル系共重合体は、固形分の含有量が40%であり、重量平均分子量が83万、PDI6.4であり、粘度が12,300cPであることを確認した。
【0086】
製造例9.アクリル系共重合体A−9の製造
n−ブチルアクリレート(BA)10重量部と、エチルヘキシルアクリレート(EHA)88重量部と、5−ヒドロキシペンチルアクリレート2重量部とを用いること以外は、前記製造例1と同様に行い、A−9を製造した。
【0087】
得られたアクリル系共重合体は、固形分の含有量が40%であり、重量平均分子量が88万、PDI5.8であり、粘度が14,100cPであることを確認した。
【0088】
実施例及び比較例
(1)粘着剤組成物
下記表1に示す成分及び含有量で混合した後、コーティング性を考慮して適切な濃度に希釈して粘着剤組成物を製造した。この際に、含有量は、重量部である。
【0089】
【表1】
【0090】
(2)粘着シート
シリコーン離型剤がコーティングされたフィルム上に、乾燥後の厚さが25μmになるように、前記実施例及び比較例の粘着剤組成物をそれぞれ塗布した。その後、100℃で1分間乾燥して粘着剤層を形成した。その上に他の一層の離型フィルムをラミネート加工(lamination)して粘着シートを製造した。
【0091】
(3)粘着剤付き偏光板
製造された粘着シートの離型フィルムを剥離した後、厚さ185μmであり、ヨード系の偏光フィルムの両面にTAC基材が積層されたヨード系偏光板を粘着剤層側に積層して、粘着剤付き偏光板を製造した。
【0092】
実験例
(1)アクリル共重合体のゲル特性評価
アクリル系共重合体の製造の最後の段階で、ポリマーの撹拌挙動及びポリマーを保存容器に移し入れるときの流動性特性を目視で観察した。
【0093】
<評価基準>
○:撹拌の際に撹拌機の攪拌軸に沿ってゲルが上昇する現象或いは移し入れる過程においてゲルの存在が目視で確認されない。
△:撹拌の際に撹拌機の攪拌軸に沿ってゲルが上昇する現象或いは移し入れる過程においてゲルの存在が目視で確認されるが、僅かである。
×:撹拌の際に撹拌機の攪拌軸に沿ってゲルが上昇する現象或いは移し入れる過程においてゲルの存在が目視で明確に確認される。
【0094】
(2)養生時間測定
製造された粘着シートを23℃、65%RHで1〜10日間養生し、1日単位で下記方法によって、ゲル分率を測定した。ゲル分率がこれ以上増加しない期間、すなわち、養生期間を測定した。
【0095】
精秤した250メッシュの鉄網(100mm×100mm)に粘着シートの粘着剤層を約0.25g貼付して、ゲル分が漏れないように囲む。精密天秤で重量を正確に測定した後、鉄網をエチルアセテート溶液に3日間浸漬する。浸漬された鉄網を取り出して少量のエチルアセテート溶液で洗浄し、120℃で24時間乾燥した後、鉄網の重量を測定する。測定された重量を用いて下記式1でゲル分率を算出した。算出されたゲル分率の値が70〜80%範囲に含まれ、経時的な変化のない時点を基準として、養生期間を決定した。
【0096】
【数1】
〔式中、Aは、鉄網の重量(g)、Bは、粘着剤層を貼付した鉄網の重量(B−A:粘着剤重量、g)、Cは、浸漬後乾燥した鉄網の重量(C−A:ゲル化された樹脂の重量、g)である。〕
【0097】
(3)耐久性(耐熱性)
製造された粘着剤付き偏光板を90mm×170mmの大きさで切断し、離型フィルムを剥離した。その後、ガラス基板(110mm×190mm×0.7mm)の両面に光学吸収軸が直交するようにそれを付着して試片を製作した。この際に、加えられた圧力は、5kg/cmであり、気泡又は異物が生じないようにクリーンルームで作業を行った。耐熱特性は、80℃の温度で100時間放置した後、気泡又は剥離が発生するか否かを観察した。
【0098】
<評価基準>
◎:気泡又は剥離なし
○:気泡又は剥離<5個
△:5個≦気泡又は剥離<10個
×:10個≦気泡又は剥離
【0099】
(4)リワーク性
製造された粘着剤付き偏光板を25mm×100mmの大きさで切断し、離型フィルムを剥離した。その後、ガラス基板(#1737、コーニング社)に0.25MPaの圧力でそれをラミネート加工し、50℃、5気圧の条件で20分間オートクレーブ処理して試片を製作した。耐熱リワーク性は、製作された試片を50℃のオーブンにて48時間保管した後、取り出して常温で120時間放置した後、粘着力を測定した。
【0100】
<評価基準>
○:粘着力:5N以下
△:粘着力:5N超過乃至10N以下
×:粘着力:10N超過
【0101】
(5)帯電防止性(表面非抵抗)
製造された粘着剤付き偏光板の離型フィルムを剥離した後、表面抵抗測定器(MCP−HT450、三菱化学株式会社、Probe:URS、UR100、Probe checker:URS用、UR100用)を用いて、粘着剤層の3箇所をそれぞれ10回ずつ測定した。その後、その平均値を算出し、下記基準に基づいて評価した。
【0102】
<評価基準>
○:表面非抵抗≦5.0×1010Ω/□
△:5.0×1010Ω/□<表面非抵抗≦9.9×1010Ω/□
×:9.9×1010Ω/□<表面非抵抗
【0103】
(6)経時帯電防止性
前記帯電防止性を測定したサンプルを60度の耐熱オーブンにて24時間熱処理した後、帯電防止性を評価した。
【0104】
<評価基準>
○:表面非抵抗の変化量≦3.0×1010Ω/□
△:3.0×1010Ω/□<表面非抵抗の変化量≦5.0×1010Ω/□
×:5.0×1010Ω/□<表面非抵抗の変化量
【0105】
【表2】
【0106】
前記表2を参照すると、実施例1〜6の粘着剤組成物は、共重合体のゲル特性に優れ、養生時間が短かった。そして、耐久性、リワーク性、帯電防止性、及び経時帯電防止性が全て同様に優れた。
【0107】
しかしながら、比較例1〜9の組成物は、養生時間が長くなるか、或いは残りの物性のうち1つ以上の物性が著しく劣った。
図1
図2