(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各々一つの熱伝導性シートを収納したポケットを表面に複数備えたエンボスキャリアテープと、該エンボスキャリアテープの表面を保護するカバーフィルムとが、リール状に巻かれてなる熱伝導性シート供給体であり、
前記熱伝導性シートが、補強層と、該補強層の片面に積層させた熱伝導性樹脂層、又は前記補強層の両面に積層させた異なる熱伝導性樹脂層とからなるものであり、前記熱伝導性シートの少なくとも片面の表面のタックエネルギーが70μJ以下であり、前記熱伝導性シートの厚みが、60μm以上600μm以下であり、前記補強層が、アルミ箔であり、前記熱伝導性樹脂層が、シリコーンゴム100質量部に対し、熱伝導性充填材を300質量部以上含有するものであり、前記熱伝導性シートの両表面はそれぞれ異なるタックエネルギーを有しており、
前記熱伝導性シート供給体は、前記熱伝導性シートの前記カバーフィルム側の面のタックエネルギーが前記ポケットの底面側の面より小さくなるように、前記エンボスキャリアテープのポケットに前記熱伝導性シートを収納したものであることを特徴とする熱伝導性シート供給体。
請求項1から3のいずれか1項に記載の熱伝導性シート供給体のエンボスキャリアテープのポケットに収納された熱伝導性シートを、バキュームノズルを用いて前記ポケットから1つずつ吸引して供給することで自動実装することを特徴とする熱伝導性シートの供給方法。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピューター、デジタルビデオディスク、携帯電話等の電子機器に使用されるCPU、ドライバICやメモリー等のLSIチップは、高性能化・高速化・小型化・高集積化に伴い、それ自身が大量の熱を発生するようになり、その熱によるチップの温度上昇は、チップの動作不良、破壊を引き起こす原因になる。そのため、動作中のチップの温度上昇を抑制するための多くの熱放散方法及びそれに使用する熱放散部材が提案されている。
【0003】
従来、電子機器等においては、動作中のチップの温度上昇を抑えるために、アルミニウムや銅等熱伝導率の高い金属板を用いたヒートシンクが使用されている。このヒートシンクは、そのチップが発生する熱を伝導し、その熱を外気との温度差によって表面から放出する。
チップから発生する熱をヒートシンクに効率良く伝えるために、ヒートシンクをチップに密着させる必要があるが、各チップの高さの違いや組み付け加工による公差があるため、柔軟性を有するシートや、グリースをチップとヒートシンクとの間に介装させ、このシートまたはグリースを介してチップからヒートシンクへの熱伝導を実現している。
【0004】
グリース状の放熱材料は薄膜化可能で優れた放熱材料ではあるが、管理が難しいという点が挙げられる。また塗布工程は手作業でスクリーンプリントを行なったり、シリンジから押し出したりする場合とディスペンス装置を用いて自動で行なう場合があるが非常に時間がかかり、取扱いが容易ではなく、製品の組み立て工程の律速となっている場合がある。
一方、熱伝導性シートに関しては、実装時は貼り付けるだけで、特別な装置は必要なく、グリースに比べて取扱い性や管理が容易であるが、貼り付け作業は手作業がほとんどで非常に効率が悪く、製品の組み立て工程の律速となっている場合がある。そこで、熱伝導性シートの実装工程を半導体部品の実装において主流となっているバキュームノズルなどを用いた自動実装にすることで、飛躍的な生産性の向上が見込める。
【0005】
バキュームノズルなどによる自動実装装置への熱伝導性シートの供給方法としては、PETフィルムなどの基材や樹脂トレー上に所定のサイズにカットされた熱伝導性シートを並べておき、一枚ずつバキュームノズルでシートを取り上げていく方法がある。しかし、この供給方法は平面状に熱伝導性シートが並ぶことになり、非常にスペースをとり、バキュームノズルがシートを吸い上げ、実装箇所に運ぶまでの距離が一枚ずつ異なるし、平面に広げる熱伝導性シートの数が多いと実装箇所までの距離が長くなり、ノズルからシートが落ちてしまう危険性が高まる問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、エンボスキャリアテープを用いた熱伝導性シート供給体及び熱伝導性シートの供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明では、各々一つの熱伝導性シートを収納したポケットを表面に複数備えたエンボスキャリアテープと、該エンボスキャリアテープの表面を保護するカバーフィルムとが、リール状に巻かれてなることを特徴とする熱伝導性シート供給体を提供する。
【0009】
このような熱伝導性シート供給体であれば、平面状に広がることなく、多くの熱伝導性シートを準備できる。さらにカバーフィルムを剥がしながらテープを少しずつ送ることで、定位置で熱伝導性シートを取り上げることができるため、バキュームノズルは一定の動きをすればよく、ノズルの動きが単純化され実装工程上の失敗の危険性が少なくなり、自動実装工程の簡略化や効率化を実現することができる。
【0010】
また、本発明では、前記熱伝導性シートの少なくとも片面の表面のタックエネルギーが、70μJ以下であることが好ましい。
【0011】
このような熱伝導性シートであれば、カバーフィルムに付着又はエンボスキャリアテープのポケットの底面に付着することなく、バキュームノズルで吸引し、供給することができる。
【0012】
また、本発明では、前記熱伝導性シートが、補強層と熱伝導性樹脂層とを積層させたものであることが好ましい。
【0013】
このような熱伝導性シートであれば、補強層の働きにより熱伝導性シートが、ポケットの中で端に寄ったり、折れ曲がったりすることを回避することができ、一方、熱伝導性樹脂層の働きにより発熱部と冷却部との密着性が良好となるので放熱効果を有する。
【0014】
また、前記熱伝導性シートの厚みが、60μm以上600μm以下であることが好ましい。
【0015】
上記の厚みであれば、発熱部材と冷却部材の間の応力を緩和することができ、さらに良好なシート成型性を有する。
【0016】
また、前記熱伝導性樹脂層の熱伝導率は、1.0W/mK以上であることが好ましく、より好ましくは3.0W/mK以上である。
【0017】
上記の熱伝導率であれば、熱伝導性シートを発熱量の大きい発熱部に適用することが可能となる。
【0018】
前記熱伝導性樹脂層が、シリコーン樹脂100質量部に対し、熱伝導性充填材を300質量部以上含有することが好ましい。
【0019】
このような熱伝導性樹脂層であれば、熱伝導性樹脂層の熱伝導率を十分に得ることができる。
【0020】
前記補強層は、アルミ箔であることが好ましい。
【0021】
このような補強層は、比較的低価格であり、製品の安定性を維持することができる。
【0022】
熱伝導性シート供給体のエンボスキャリアテープのポケットに収納された熱伝導性シートを、バキュームノズルを用いて前記ポケットから1つずつ吸引し供給することで自動実装することを特徴とする熱伝導性シートの供給方法を提供する。
【0023】
本発明の熱伝導性シートの供給方法によれば、熱伝導性シートの自動実装工程の簡略化及び効率化を実現することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明の熱伝導性シート供給体及び熱伝導性シートの供給方法によれば、平面状に広がることなく、多くの熱伝導性シートを準備でき、カバーフィルムを剥がしながらテープを少しずつ送ることで、定位置で熱伝導性シートを取り上げることができるため、バキュームノズルは一定の動きをすればよく、ノズルの動きが単純化され実装工程上の失敗の危険性が少なくなり、自動実装工程の簡略化や効率化を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、熱伝導性シートを吸引し実装箇所まで運ぶにあたり、エンボスキャリアテープを用いる供給方法及びエンボスキャリアテープのポケットに熱伝導性シートを一枚ずつ収納し、カバーフィルムで上から保護した後このキャリアテープをリール状に巻いたものである熱伝導性シート供給体を見出した。
この方法及び供給体によれば、平面状に広がることなく、多くの熱伝導性シートを準備でき、さらにカバーフィルムを剥がしながらテープを少しずつ送ることで、定位置で熱伝導性シートを取り上げることができるため、バキュームノズルは一定の動きをすればよく、ノズルの動きが単純化され実装工程上の失敗の危険性が少なくなり、自動実装工程の簡略化や効率化を実現することができる。
エンボスキャリアテープを用いた供給方法は、非常に小さく強度の弱い半導体部品の供給方法としては知られていた(特許文献1〜4)ものの、熱伝導性シートの供給方法としては例がなかった。
このように、本発明の熱伝導性シート供給体及び熱伝導性シートの供給方法であれば、熱伝導性シートの自動実装工程を簡略化及び効率化できることを見出し、本発明を完成させた。
【0027】
すなわち、本発明は、各々一つの熱伝導性シートを収納したポケットを表面に複数備えたエンボスキャリアテープと、該エンボスキャリアテープの表面を保護するカバーフィルムとが、リール状に巻かれてなることを特徴とする熱伝導性シート供給体である。
図1〜
図3に示したように、熱伝導性シート1を収納したポケット2を表面に複数備えたエンボスキャリアテープ3と、このエンボスキャリアテープ3の表面を保護するカバーフィルム4とが、リール5状に巻かれてなることを特徴とする本発明の熱伝導性シート供給体6及びこれを用いた熱伝導性シートの供給方法であれば、熱伝導性シート1をバキュームノズル7で正しく吸引し、例えば半導体チップ8などに実装することができるので、熱伝導性シート1の自動実装工程を簡略化及び効率化することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0028】
[エンボスキャリアテープ]
エンボスキャリアテープは、半導体製造用部品の中でも特に非常に小さく、強度の弱いものを収納する際に広く用いられているものを代用することができる。半導体用部品搬送用のエンボスキャリアテープに関する発明は数多くあり、例えば、文献1〜4等が例示される。素材は耐熱性、耐候性の点から、ポリカーボネートが好ましい。
【0029】
エンボスポケットのサイズは、シートサイズより縦横ともに10〜20%程度大きいものが好ましい。このサイズであれば、ノズルで吸引する時に熱伝導性シートがポケットに引っ掛かる危険性はなく、さらに輸送中にポケットの中で熱伝導性シートがずれてしまうこともないので、正しく吸引することができる。
【0030】
熱伝導性シートが底面に出来るだけ接触しないように、ポケットの底面の四隅に突起を設けたり、またはポケットの底面の両端に凸部を設けることが好ましい。このように突起や凸部を設けることにより、熱伝導性シートをスムーズにバキュームノズルで吸引することができる。
この場合、突起や凸部が、熱伝導性シートを傷つけない形状であることが好ましい。
【0031】
ポケットの深さは、熱伝導性シートを収納した際に上部に3〜5mm程度の余裕があることが好ましい。この程度余裕があれば、熱伝導性シートを収納し、カバーフィルムで保護する際の工程中に熱伝導性シートがポケットからはみ出す危険がなく、熱伝導性シートを吸引する際の障害にもならない。
【0032】
ポケット同士の間隔は、任意であるが、5mm程度間隔をあけることが好ましい。
【0033】
本発明のエンボスキャリアテープは数十メートルから数百メートルの長さとすることができ、数十mm角の熱伝導性シートであれば数千個を収納することができる。
【0034】
[カバーフィルム]
半導体部品搬送用エンボスキャリアテープのカバーフィルムに関する発明は数多くある(特許文献5)が、本発明に用いるカバーフィルムは、半導体製造用部品の中でも特に非常に小さく、強度の弱いものを保護する際に広く用いられているものを代用することができる。素材はポリエステルフィルムなどが好ましい。
エンボスキャリアテープとカバーフィルムを接合させる必要があるが、その方法は、カバーフィルムの端部に接着剤を塗布し接着させる方法とキャリアテープとカバーフィルムを熱圧着させる方法とがある。
接合強度は、熱伝導性シート供給体を輸送する際の振動や熱、熱衝撃に耐え、経時でも安定していることが好ましい。接合強度が弱すぎると輸送中に剥がれてしまい、強すぎると実装時にテープを剥がす際に余分な負荷がかかることになる。
【0035】
[タックエネルギー]
本発明では、前記熱伝導性シートの少なくとも片面の表面のタックエネルギーが、70μJ以下であることが好ましい。
【0036】
伝導性シートの表面のタックエネルギーは、より好ましくは40μJ以下である。熱伝導性シートの少なくとも片面の表面のタックエネルギーが、70μJ以下であれば、熱伝導性シートをエンボスキャリアテープのポケットに収納し、カバーフィルムで保護しリール化した際に、カバーフィルム側が下側になっても、カバーフィルムに熱伝導性シートが付着するおそれが少なく、自動実装工程のコンピューター制御においてエラーと判断されるおそれが少ないため、工程をスムーズに進めることができる。ポケットの底面側に関しても上記のタックエネルギーであれば、ポケットの底面に熱伝導性シートが付着するおそれが少ないので、バキュームノズルで上手く吸引することができ、さらにポケットの底面に熱伝導性シートの表層が一部取られてしまう危険もない。
また、熱伝導性シートをポケットに収納する際には、カバーフィルム側に熱伝導性シートのタックエネルギーの小さい面がくるように収納するのが好ましい。
タックエネルギーの測定方法としては、マルコム社製タッキネステスターTK−1を用いることができる。測定条件はIPC規格に準拠した。
【0037】
前記熱伝導性シートは、補強層と熱伝導性樹脂層とを積層させたものであることが好ましい。
【0038】
[補強層]
補強層を有していれば、熱伝導性シートの厚みが600μm以下の場合でも、リール化した後、輸送の際にエンボスキャリアテープのポケットが上下逆さまになったとしても、ポケットの中で、熱伝導性シートが、端に寄ったり折れ曲がったり、裏返ってしまうおそれがない。そのため実装時にバキュームノズルで正しく熱伝導性シートを吸引することが可能となる。
補強層は、放熱性能や補強能力から、金属箔やガラスクロス、ポリイミドフィルムが好ましい。より好ましくは20μm以上の厚みを有する金属箔である。この厚みを有する金属箔の補強層であれば、十分な補強性能を有することに加え、熱伝導率が高く(例えばアルミ箔は237W/mK)、放熱性能への影響も少ない。さらに好ましいのは、20μ〜150μmの厚みを有する金属箔である。この厚みであれば、加工性が良好で、柔軟性も失われず、圧縮性能も富む。
金属箔の種類は、例えば、金箔、銀箔、銅箔、アルミ箔などが挙げられる。価格、加工性、延性、展性、製品安定性を考慮するとアルミ箔が好ましい。
また、補強層の上に熱伝導性樹脂層を積層させる場合は、補強層の片側だけに積層させてもよいが、両側に積層させるのが好ましい。補強層の両側に熱伝導性樹脂層を積層させた方が、実装させたときに発熱部と冷却部との密着性が向上しより高い放熱効果が期待できる。
【0039】
[熱伝導性樹脂層]
熱伝導性樹脂のマトリックスとしては、有機ゴム、シリコーンゴム、ポリウレタンゲル、合成ゴム、天然ゴムなどのゴムや、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマーが挙げられる。マトリックスは一種類を単独で又は二種以上組み合わせても使用してもよい。
マトリックスは、耐熱性、耐寒、耐候性、電気特性、及び熱伝導性シートの電子部品における重要性を考慮すると、シリコーンゴムが好ましい。
【0040】
[熱伝導性シートの厚み]
また、前記熱伝導性シートの厚みは、60μm以上600μm以下であることが好ましい。
【0041】
さらに好ましくは200μm以上400μm以下である。熱伝導性シートが、60μm以上600μm以下の厚さであれば、実装した際の熱抵抗を下げることができる一方、発熱部材と冷却部材との間の応力を緩和でき、シート成型性を良好に保つことができる。
熱抵抗は、ASTM D−5470試験法を用い、30psi/100℃/30分の条件で熱抵抗を測定できる。
【0042】
[熱伝導性樹脂の熱伝導率]
また、前記熱伝導性樹脂層の熱伝導率は、1.0W/mK以上であることが好ましく、
さらに好ましくは3.0W/mK以上である。
【0043】
熱伝導性樹脂の熱伝導率が、1.0W/mK以上の場合は、熱伝導性シートを発熱量の大きい発熱部へ適用することができる。
測定用サンプルとして熱伝導性シリコーン硬化物を60×60×6mmのサイズに成型したものを2つ準備し、成型体でプローブを挟み、ホットディスク法を用いて熱伝導率を測定できる。
【0044】
[熱伝導性充填材]
前記熱伝導性樹脂層が、シリコーン樹脂100質量部に対し、熱伝導性充填材を300質量部以上含有することが好ましい。
【0045】
熱伝導性充填材の充填量は、熱伝導性樹脂100質量部に対して、200質量部以上1300質量部以下であれば、熱伝導性樹脂層の熱伝導率を十分得ることができ、発熱量の大きい発熱部材に適応が可能である一方、熱伝導性シートの成型性も良好であり、成型した熱伝導性シートの柔軟性も優れており、300質量部以上1300質量部以下であることがさらに好ましい。
熱伝導性充填材としては、非磁性の銅やアルミニウム等の金属、アルミナ、シリカ、マグネシア、ベンガラ、ベリリア、チタニア、ジルコニア等の金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化硼素等の金属窒化物、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、人工ダイヤモンドあるいは炭化珪素等、一般に熱伝導充填材とされる物質を用いることができる。また中心粒径が、0.1〜200μmの熱伝導性充填材を用いることができ、1種単独で又は2種以上複合して用いてもよい。
【0046】
本発明は、熱伝導性シート供給体のエンボスキャリアテープのポケットに収納された熱伝導性シートを、バキュームノズルを用いて前記ポケットから1つずつ吸引し供給することで自動実装することを特徴とする熱伝導性シートの供給方法である。
【0047】
図1に示すように、本発明の熱伝導性シートの供給方法によれば、エンボスキャリアテープ3のポケット2に一つ一つ熱伝導性シート1が収納されているので、平面状に広がることなく、多くの熱伝導性シートを準備でき、さらにカバーフィルム4を剥がしながらエンボスキャリアテープ3を少しずつ送ることで、定位置で熱伝導性シートを取り上げることができるため、バキュームノズル7は一定の動きをすればよいので、熱伝導性シートの自動実装において、バキュームノズル7で熱伝導性シート1を正しく吸引して、所定の場所、例えば半導体チップ8に実装することができ(
図1(A))、自動実装工程の簡略化や効率化を実現することができる。これに対し、本発明の供給方法によらない熱伝導性シートの供給方法では、平面状に熱伝導性シートが並ぶことになり、非常にスペースをとってしまう。このとき、バキュームノズルが熱伝導性シートを吸引して、実装箇所に運ぶまでの距離が一つずつ異なるので、平面に広げる熱伝導性シートの数が多いと実装箇所までの距離が長くなり、ノズルからシートが落ちてしまう危険性が高まり、例えば
図1(B)に示すように、正しくバキュームノズル7で熱伝導性シートを吸引することができず、自動実装工程の簡略化や効率化を実現することができない。
【実施例】
【0048】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
実施例および比較例を行なうにあたり、熱伝導性シートの成分及び成型方法を以下に記載する。
【0049】
[熱伝導性シートの成分]
(A−1)成分:
【化1】
Xがビニル基である、オルガノポリシロキサン
粘度:600mm
2/s
(A−2)成分
ジメチルシロキサン単位99.85モル%及びメチルビニルシロキサン単位0.15モル%からなる、平均重合度が8,000のメチルビニルポリシロキサン
(A−3)成分
ポリ2-ブチルアクリレート
【0050】
(B−1)成分:
【化2】
ハイドロジェンポリシロキサン
平均重合度が下記の通りである、両末端が炭化水素で封鎖されたハイドロジェンポリシロキサン
平均重合度:o=28、p=2
(B−2)成分
デナコールEX83D(ナガセケムテックス(株))
【0051】
(C成分):
平均粒径が下記の通りである熱伝導性充填材としての水酸化アルミニウム
(C−1)平均粒径:1μm:アルミニウム粉
(C−2)平均粒径:10μm:アルミニウム粉
(C−3)平均粒径:1μm:アルミナ
(C−4)平均粒径:10μm:アルミナ
【0052】
(D)成分:
付加反応促進剤として、5%塩化白金酸2-エチルヘキサノール溶液
(E)成分:
付加反応制御剤として、エチニルメチリデンカルビノール。
【0053】
(F)成分:
【化3】
平均重合度30である片末端がトリメトキシシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン。
【0054】
(G)成分:
可塑剤としてジメチルポリシロキサン。
【化4】
r=80のジメチルポリシロキサン。
(H)成分
加硫剤C
−24(信越化学工業製)
【0055】
[補強層]
アルミ箔 厚み50μm
ガラスクロス 厚み64μm、
密度たて60本、よこ47本/25mm
【0056】
[熱伝導性シートの成型方法]
(A−1)、(A−3)成分をベースポリマーとして用いる際にはプラネタリーミキサーを用いて混練し、(A−2)成分をベースポリマーとして用いる際にはバンバリミキサーを用いて混練し、熱伝導性シートの組成物イ〜トを得た。
得られた組成物イ〜トの構成成分とその配分、及び伝導率を表1に示した。
【0057】
【表1】
【0058】
得られた組成物イ〜へに対して、トルエンを添加し、20%のトルエン溶液を調製した。この溶液を補強層上にスペーサーを用いコーティングし、80℃でトルエンを揮発させ、続いて120℃で硬化させる。補強層の両側に積層させる場合には、もう片方の面にも当該組成物のトルエン溶液の塗工を行なう。補強層の片側を表面とし、その裏側を裏面とする。表面に塗工する組成物と裏面に塗工する組成物は異なっていてよい。
組成物トに関しては、トルエンを添加せずに補強層上に塗工を行なった。硬化温度は190℃とした。
【0059】
補強層としてガラスクロスを用いる際には、ガラスクロスに予め目止めを施しておく必要がある。目止め材料はコーティングする材料と同一のものでよい。
【0060】
[熱伝導性シート供給体]
得られた熱伝導性シートの熱抵抗(K−cm
2/W)、タックエネルギー(μJ)を測定した。さらに10×10mmサイズに切り出した。実施例1から5に関しては、
図4に記載のポリカーボネート製エンボスキャリアテープのポケットに熱伝導性シートを1000個収納した。この時、カバーフィルム側に熱伝導性シートのタックエネルギーの小さい面がくるように収納した。エンボスキャリアテープの上からポリエステルフィルムで保護し、さらにテープをリール化して熱伝導性シート供給体を作製した(実施例1〜5)。
【0061】
比較例1は、得られた熱伝導性シートをポリカーボネート製のトレーに一つ一つ並べたものであり、比較例2は、得られた熱伝導性シートをPETフィルム上に一つ一つ並べたものである。
【0062】
熱伝導性シート供給体及び熱伝導性シートの供給方法に対する評価方法として、実際にバキュームノズルによる自動実装装置に使用し、1000個の熱伝導性シートを準備するのに必要な面積、実装するのに掛かる時間を測定し評価した。
これらの結果を表2に示した。
【0063】
【表2】
【0064】
実施例のように、エンボスキャリアテープを用いると、熱伝導性シートを収納するために掛かる面積が少なくすることができ、効率的に熱伝導性シートを保管することが出来る。また実装時にもエンボスキャリアテープを用いることによりバキュームノズルは一定の動きをし、実装箇所までの距離も一定で、効率的に実装することができ、掛かる時間が少なくて済む。
また、本発明の熱伝導性シート供給体及び熱伝導性シートの供給方法によれば、熱伝導性シートの実装時において、バキュームノズルが、熱伝導性シートを正しく吸引してミスなく供給できるのに対し、本発明の熱伝導性シート供給体及び熱伝導性シートの供給方法によらない比較例では、バキュームノズルが熱伝導性シートを正しく吸引できず、供給ミスが生じる。
【0065】
本発明のエンボスキャリアテープのポケットに熱伝導性シートを一つ一つ収納し、カバーフィルムで保護し、さらにリール状にした供給形態は、熱伝導性シートの自動実装工程の供給形態に最適であり、実装工程を効率化することに大きく貢献する。本発明の熱伝導性シートの供給形態に対応するためには、熱伝導性シートは補強層を有し、カバーフィルム側にくる表面のタックエネルギーが70マイクロJ以下であるのが好ましい。