特許第6087643号(P6087643)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 一般財団法人電力中央研究所の特許一覧

特許6087643果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法、果菜又は花きの栽培システム、果菜又は花き栽培用の容器、蔓の巻き取り具
<>
  • 特許6087643-果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法、果菜又は花きの栽培システム、果菜又は花き栽培用の容器、蔓の巻き取り具 図000002
  • 特許6087643-果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法、果菜又は花きの栽培システム、果菜又は花き栽培用の容器、蔓の巻き取り具 図000003
  • 特許6087643-果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法、果菜又は花きの栽培システム、果菜又は花き栽培用の容器、蔓の巻き取り具 図000004
  • 特許6087643-果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法、果菜又は花きの栽培システム、果菜又は花き栽培用の容器、蔓の巻き取り具 図000005
  • 特許6087643-果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法、果菜又は花きの栽培システム、果菜又は花き栽培用の容器、蔓の巻き取り具 図000006
  • 特許6087643-果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法、果菜又は花きの栽培システム、果菜又は花き栽培用の容器、蔓の巻き取り具 図000007
  • 特許6087643-果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法、果菜又は花きの栽培システム、果菜又は花き栽培用の容器、蔓の巻き取り具 図000008
  • 特許6087643-果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法、果菜又は花きの栽培システム、果菜又は花き栽培用の容器、蔓の巻き取り具 図000009
  • 特許6087643-果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法、果菜又は花きの栽培システム、果菜又は花き栽培用の容器、蔓の巻き取り具 図000010
  • 特許6087643-果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法、果菜又は花きの栽培システム、果菜又は花き栽培用の容器、蔓の巻き取り具 図000011
  • 特許6087643-果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法、果菜又は花きの栽培システム、果菜又は花き栽培用の容器、蔓の巻き取り具 図000012
  • 特許6087643-果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法、果菜又は花きの栽培システム、果菜又は花き栽培用の容器、蔓の巻き取り具 図000013
  • 特許6087643-果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法、果菜又は花きの栽培システム、果菜又は花き栽培用の容器、蔓の巻き取り具 図000014
  • 特許6087643-果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法、果菜又は花きの栽培システム、果菜又は花き栽培用の容器、蔓の巻き取り具 図000015
  • 特許6087643-果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法、果菜又は花きの栽培システム、果菜又は花き栽培用の容器、蔓の巻き取り具 図000016
  • 特許6087643-果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法、果菜又は花きの栽培システム、果菜又は花き栽培用の容器、蔓の巻き取り具 図000017
  • 特許6087643-果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法、果菜又は花きの栽培システム、果菜又は花き栽培用の容器、蔓の巻き取り具 図000018
  • 特許6087643-果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法、果菜又は花きの栽培システム、果菜又は花き栽培用の容器、蔓の巻き取り具 図000019
  • 特許6087643-果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法、果菜又は花きの栽培システム、果菜又は花き栽培用の容器、蔓の巻き取り具 図000020
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087643
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法、果菜又は花きの栽培システム、果菜又は花き栽培用の容器、蔓の巻き取り具
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/12 20060101AFI20170220BHJP
   A01G 9/02 20060101ALI20170220BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   A01G9/12 B
   A01G9/02 101W
   A01G7/00 601Z
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-16126(P2013-16126)
(22)【出願日】2013年1月30日
(65)【公開番号】特開2013-176358(P2013-176358A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2015年10月14日
(31)【優先権主張番号】特願2012-21282(P2012-21282)
(32)【優先日】2012年2月2日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100087468
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 一美
(72)【発明者】
【氏名】庄子 和博
(72)【発明者】
【氏名】後藤 文之
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−70231(JP,A)
【文献】 特開昭53−75041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/12
A01G 9/00 − 9/02
A01G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数株の果菜又は花きを栽培室内に並べて前記果菜又は花きの蔓を上方から垂らした誘引紐に沿わせて誘引する果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法において、前記蔓の生長に合わせて前記誘引紐に対して前記蔓を下にずらして収穫済みの部分を弛ませると共に、弛んだ部分を巻き取り、さらに、前記栽培室内の生育環境を高さ方向に区分けして制御すると共に、花実の高さをほぼ揃えながら栽培を行うことを特徴とする果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法。
【請求項2】
前記果菜又は花きを植え付けた栽培容器又は当該栽培容器を収容する容器の周囲に前記弛んだ部分を巻き付けることを特徴とする請求項1記載の果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法。
【請求項3】
巻き取り具に前記弛んだ部分を巻き付けることを特徴とする請求項1記載の果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法。
【請求項4】
前記栽培室は移動可能であることを特徴とする請求項1記載の果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法。
【請求項5】
栽培室と、前記栽培室内に複数並べられた栽培容器と、前記栽培容器で栽培される果菜又は花きの蔓を誘引する誘引紐と、前記栽培容器で栽培される果菜又は花きの蔓の収穫済みの部分を同じ位置で巻き取る巻き取り手段と、前記栽培容器で栽培される果菜又は花きに光を当てる照明手段と、前記栽培室内を前記栽培容器で栽培される果菜又は花きが通過可能に高さ方向に区分けする区分け手段と、前記区分け手段によって区分けされた領域の生育環境を制御する手段とを備えることを特徴とする果菜又は花きの栽培システム。
【請求項6】
前記巻き取り手段は前記果菜又は花きの収穫済みの部分を巻き取る巻き取り面を有する前記栽培容器又は前記栽培容器を収容する容器であることを特徴とする請求項5記載の果菜又は花きの栽培システム。
【請求項7】
前記巻き取り手段は前記果菜又は花きの収穫済みの部分を巻き取る巻き取り面を有する巻き取り具であることを特徴とする請求項5記載の果菜又は花きの栽培システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トマト、ミニトマト、中玉トマト、キュウリ、パプリカ、エンドウ、スウィートピー等の蔓性の果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法、この栽培方法を使用した果菜又は花きの栽培システム、前記栽培方法に使用する果菜又は花き栽培用の容器および蔓の巻き取り具に関する。
【背景技術】
【0002】
トマト等の蔓性の果菜では、上から垂らした誘引紐に蔓の先端を誘引させる吊り下ろし栽培が行われている。また、スウィートピー等の蔓性の花きについても吊り下ろし栽培を行うことができる。この方法は1株当たりの栽培期間が長く、1株から何度も繰り返して収穫を行うことができる。この栽培方法の概念を図19に示す。果菜の蔓101の先端を誘引紐102で誘引し、生長に合わせて蔓101の先端を下にずらし、ずらすことで下に垂れた蔓101の収穫済みの部分103を引き伸ばして張るために誘引紐102を水平方向に移動させている(図19(A)→(B)→(C)→(D))。この栽培方法では、通常、トマトの蔓を20m〜30mにまで伸ばしている。このように、蔓101の生長に合わせて誘引位置を横移動させる栽培に関する技術として、例えば特開2000−209955号公報に開示されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−209955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の栽培方法では蔓101の生長に合わせてどんどん誘引位置を横移動させるので、移動作業に手間が掛かると共に、栽培に非常に広いスペースを必要とする。また、誘引位置の移動に伴って収穫位置も移動することになり、収穫に手間がかかる。
【0005】
本発明は、農作業が容易で、栽培スペースを狭くすることができる果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法、この栽培方法を使用する果菜又は花きの栽培システム、この栽培方法で使用するのに適した果菜又は花き栽培用の容器および蔓の巻き取り具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、請求項1記載の発明は、複数株の果菜又は花きを栽培室内に並べて果菜又は花きの蔓を上方から垂らした誘引紐に沿わせて誘引する果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法において、蔓の生長に合わせて誘引紐に対して蔓を下にずらして収穫済みの部分を弛ませると共に、弛んだ部分を巻き取り、さらに、栽培室内の生育環境を高さ方向に区分けして制御すると共に、花実の高さをほぼ揃えながら栽培を行うものである。
【0007】
また、請求項2記載の果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法は、果菜又は花きを植え付けた栽培容器又は当該栽培容器を収容する容器の周囲に弛んだ部分を巻き付けるものである。
【0008】
また、請求項3記載の果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法は、巻き取り具に弛んだ部分を巻き付けるものである。
【0011】
また、請求項記載の果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法は、栽培室が移動可能になっている。
【0012】
また、請求項記載の果菜又は花きの栽培システムは、栽培室と、栽培室内に複数並べられた栽培容器と、栽培容器で栽培される果菜又は花きの蔓を誘引する誘引紐と、栽培容器で栽培される果菜又は花きの蔓の収穫済みの部分を同じ位置で巻き取る巻き取り手段と、栽培容器で栽培される果菜又は花きに光を当てる照明手段と、栽培室内を栽培容器で栽培される果菜又は花きが通過可能に高さ方向に区分けする区分け手段と、区分け手段によって区分けされた領域の生育環境を制御する手段とを備えるものである。
【0014】
また、請求項記載の果菜又は花きの栽培システムは、巻き取り手段を、果菜又は花きの収穫済みの部分を巻き取る巻き取り面を有する栽培容器又は栽培容器を収容する容器としている。
【0015】
また、請求項記載の果菜又は花きの栽培システムは、巻き取り手段を、果菜又は花きの収穫済みの部分を巻き取る巻き取り面を有する巻き取り具としている。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法によれば、誘引紐から下ろした蔓の収穫済みの部分が弛んだまま余ることがないので、蔓の先端の誘引場所(誘引紐の位置)を水平方向に移動させて収穫済みの部分を引き伸ばして張る必要がなくなり、1株当たりの栽培に必要なスペースを狭くすることができると共に、蔓の収穫済みの部分が邪魔になるのを防止することができる。また、重量のある蔓を大きく移動させる必要がなくなると共に、花実の成る高さをほぼ揃えることができるので、常に同じ場所、同じ高さで農作業を行うことができ、農作業に要する労力を軽減することができる。特に、花実の位置を一定の場所にすることで着果を促進するホルモン処理が容易になる。請求項1記載の果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法によれば、また、複数株の果菜又は花きを狭いスペースでまとめて栽培することができる。また、栽培に必要なスペースを狭くできるので、生育環境の制御が容易になる。しかも、並べた果菜又は花きの花実の高さをほぼ揃えているので、例えばホルモン処理等の農作業が容易である。請求項1記載の果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法によれば、また、並べた果菜又は花きの花実の高さをほぼ揃えながら栽培し、栽培室内の生育環境を高さ方向に区分けして制御するので、果菜又は花きの部位に応じて適切な生育環境を作ることができ、収穫物の品質を向上させることができる。例えば、果菜又は花きの出芽部分の高さに相当する高さのゾーンを出芽に適した生育環境にすると共に、実がなる部分の高さに相当する高さのゾーンを実の成熟に適した生育環境にすることができる。また、各高さゾーン毎に軽重をつけて生育環境を管理することができるので、全体を等しく管理する場合に比べて省エネルギー化が可能である。例えば、出芽部分を重点的に管理することができる。これらのため、温室、ビニルハウス、植物工場での栽培に適している。
【0020】
また、請求項2記載の果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法によれば、果菜又は花きを植え付けた栽培容器又は当該栽培容器を収容する容器を利用して蔓の弛んだ部分(余らせた部分)を巻き取ることができるので、専用の巻き取り具が不要であり、必要な設備を簡略化することができる。
【0021】
ここで、蔓の弛んだ部分の巻き取りは、栽培容器又はこれを収容する容器(以下、栽培容器側という)を回転させることで行っても良いし、蔓の弛んだ部分を栽培容器側に巻き付けることで行っても良い。また、栽培容器側を回転させる場合は、作業者が人力で回転させても良いし、電動モータ等の動力を使用して回転させても良い。さらに、ターンテーブル等の回転手段を使用して栽培容器側を回転させても良いし、回転手段を使用せずに栽培容器側を持ち上げて回転させるようにしても良い。
【0022】
また、請求項3記載の果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法によれば、専用の巻き取り具を備えているので、栽培容器側を回転させずに蔓の弛んだ部分を巻き取ることができる。
【0025】
また、請求項記載の果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法によれば、任意の場所で果菜又は花きの栽培を行うことができる。例えば、被災地等の食料不足地で果菜又は花きの栽培を行うことができ、食料を必要とする現地での栽培が容易になる。
【0026】
また、請求項記載の発明によれば、請求項の果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法の実施に適した果菜又は花きの栽培システムを提供することができる。
【0028】
また、請求項記載の果菜又は花きの栽培システムによれば、果菜又は花きを植え付けた栽培容器又は当該栽培容器を収容する容器を利用して蔓を巻き取ることができるので、専用の巻き取り具が不要であり、必要な設備を簡略化することができる。
【0029】
また、請求項記載の果菜又は花きの栽培システムによれば、専用の巻き取り具を備えているので、栽培容器側を回転させずに蔓を巻き取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の果菜又は花きの吊り下ろし栽培方法の概念を示し、(A)は蔓の先端を誘引する様子を示す側面図、(B)は(A)に続く様子を示す側面図、(C)は(B)に続く様子を示す側面図、(D)は(C)に続く様子を示す側面図、(E)は(D)に続く様子を示す側面図、(F)は(E)に続く様子を示す側面図、(G)は(F)に続く様子を示す側面図である。
図2】栽培容器や外側容器の他の例を示し、(A)は巻き取り面が垂直面である場合の側面図、(B)は巻き取り面がオーバーハング面である場合の側面図である。
図3】本発明の果菜又は花きの栽培システムの実施形態の一例を示す概念図である。
図4】各ゾーンの生育環境を制御する手段を示し、(A)は複数のゾーンを同じ制御手段によって制御する様子を示す概念図、(B)はゾーン毎に専用の制御手段によって制御する様子を示す概念図である。
図5】果菜又は花きの並べ方を説明するための平面図である。
図6】本発明の果菜又は花き栽培用の容器の他の例を示す側面図である。
図7】本発明の蔓の巻き取り具の実施形態の一例を示す側面図である。
図8】蔓の巻き取り具の第1の変形例を示す側面図である。
図9】蔓の巻き取り具の第2の変形例を示す側面図である。
図10】蔓の巻き取り具の第3の変形例を示す側面図である。
図11】蔓の巻き取り具の第4の変形例を示す側面図である。
図12】蔓の巻き取り具の第5の変形例を示し、(A)はその側面図、(B)はその平面図である。
図13】蔓の巻き取り具の第6の変形例を示し、(A)はその側面図、(B)はその平面図である。
図14】蔓の巻き取り具の第7の変形例を示し、(A)はその側面図、(B)は巻き取り面を径方向から見た図である。
図15】蔓の巻き取り具の第8の変形例を示し、(A)はその側面図、(B)は巻き取り面を径方向から見た図である。
図16】蔓の巻き取り具の第9の変形例を示す側面図である。
図17】蔓の巻き取り具の第10の変形例を示す側面図である。
図18】蔓の巻き取り具の第11の変形例を示し、(A)は縦向きの巻き取りドラムに適用した場合の側面図、(B)は横向きの巻き取りドラムに適用した場合の正面図である。
図19】従来の吊り下ろし栽培方法の概念を示し、(A)は蔓の先端を誘引する様子を示す側面図、(B)は(A)に続く様子を示す側面図、(C)は(B)に続く様子を示す側面図、(D)は(C)に続く様子を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の構成を図面に示す形態に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態では果菜の栽培を例にするが、栽培の対象は果菜に限られるものではなく、スウィートピー等の蔓性の花きについても適用可能である。
【0035】
先ず最初に、本発明の果菜の吊り下ろし栽培方法について説明する。なお、図1では花実や葉の記載を省略している。図1に本発明を適用した果菜の吊り下ろし栽培方法の実施形態の一例を示す。果菜の吊り下ろし栽培方法は、果菜1の蔓2を上方から垂らした誘引紐3に沿わせて誘引するものであって、蔓2の生長に合わせて誘引紐3に対して蔓2を下にずらして収穫済みの部分を弛ませると共に、弛んだ部分4を巻き取りながら栽培を行うものである。
【0036】
栽培対象の果菜1は、例えばトマト、ミニトマト、中玉トマト、きゅうり、パプリカ、エンドウ等の蔓性の植物で、蔓2を伸ばして果房をつける部位(段)を次々にずらしていくものである。本実施形態では果菜1を養液栽培しているが、養液栽培に限られない。果菜1は1株ずつ栽培容器5に植えられている。
【0037】
また、本実施形態では、果菜1を植え付けた栽培容器5を例えばポット等の外側容器6に収容しており、この外側容器6の周囲に蔓2の弛んだ部分4を巻き付けるようにしている。即ち、外側容器6の周面は蔓2の弛んだ部分4を巻き取り可能な巻き取り面7になっており、外側容器6を巻き取り手段にしている。栽培容器5を収容する外側容器6に蔓2の弛んだ部分4を巻き付けるようにすることで、巻き付けの直径を大きくすることができて蔓2の折れ等の損傷を発生し難くすることができる。ただし、栽培容器5自体の直径が大きく蔓2を巻き付けても損傷させることがない場合等には栽培容器5に巻き付けるようにしても良い。即ち、周面が巻き取り面7である栽培容器5を使用して良い。この場合には栽培容器5が巻き取り手段となり、巻き取り手段としての外側容器6を不要にできる。
【0038】
巻き取り面7の横断面の形状は蔓2の弛んだ部分4を損傷させずに巻き取ることが可能なものであれば、特に制限されない。例えば円形、楕円形、正多角形等が好ましいが、これらには限られない。
【0039】
なお、外側容器6を使用することで、周面が蔓2の巻き取りに適していない形状の栽培容器5の使用が可能になる。
【0040】
図1に示すように、上方空間に張られた架線9には誘引紐3が吊り下げられており、果菜1を植え付けた栽培容器5は誘引紐3の下に置かれている。生長した果菜1の蔓2は誘引紐3に係止され、上方に向けて誘引される。生長させる1本の蔓2を残し、わき芽は剪定される。そして、果菜1が生長し(図1(A))、果実がなり収穫される。
【0041】
蔓2が所定の高さまで伸びると(図1(B))、蔓2を誘引紐3から外して所定の高さまで下にずらす(図1(C))。このとき、蔓2を下にずらすことで収穫済みの部分が弛むことになる(弛んだ部分4)。1回又は複数回の蔓2のずらしによって弛んだ部分4が巻き取り可能な長さになると、弛んだ部分4を外側容器6の巻き取り面7に巻き付ける(図1(D)、(E))。以降、生長に合わせて蔓2を伸びた分だけ下にずらし、弛んだ部分4を巻き取り面7で巻き取る(図1(F))。
【0042】
蔓2の弛んだ部分4の巻き取りは、回転手段8を回転させて巻き取り面7を回転させることで行う。回転手段8を使用することで巻き取り面7を軽い力で回転させることができるので、巻き取り作業は軽作業となる。
【0043】
蔓2の弛んだ部分4の巻き取りは、定期的に行っても良いし、果菜1の生長に合わせて適宜行っても良い。定期的に行う場合にはタイマーの使用によって自動的に回転手段8を回転させるようにしても良いし、作業者が操作するようにしても良い。
【0044】
この栽培方法では、誘引紐3から下ろした蔓2の収穫済みの部分が弛んだまま余ることがないので、弛みをとるために誘引紐3の位置を水平方向に移動させて弛んだ部分4を引き伸ばして張る必要がない。そのため、1株当たりの栽培に必要なスペースを狭くすることができると共に、蔓2の弛んだ部分4が邪魔になるのを防止することができる。
【0045】
また、重量のある蔓2を大きく移動させる必要がなくなると共に、花実の成る高さを各段でほぼ揃えることができるので、常に同じ場所、同じ高さで農作業を行うことができ、農作業に要する労力を軽減することができる。特に、花実の位置を一定の場所にすることで着果を促進するホルモン処理が容易になる。
【0046】
また、蔓2の収穫済みの部分を巻き取るので、巻き取り部分が果実の収穫に影響を与えることがない。
【0047】
また、栽培容器5又は外側容器6の巻き取り面7が垂直面(図2(A))やオーバーハング面(図2(B))であり巻き取った蔓2の落下が予測される場合等には、巻き取った蔓2の落下を防ぐ段部7aや部分的な突起(図示せず)等を設けても良い。一般的に市販されている汎用的な栽培容器5や外側容器6は周面が垂直面又はオーバーハング面であることが多いが、段部7a又は突起を設けることで市販の栽培容器5又は外側容器6が使い勝手の易いものとなる。なお、段部7aや突起を設けた場合には、これらを取り外し又は折り畳み可能にすることが好ましい。取り外し又は折り畳み可能にすることで、複数の栽培容器5又は外側容器6を重ねて保管することができる。さらに、蔓2の弛んだ部分4を巻き取る栽培容器5又は外側容器6として専用品を使用する場合には、巻き取り面7に凹部を設けるなどして巻き取り面7を巻き取りに適した形状にしておくことが好ましい。
【0048】
本実施形態では、外側容器6はターンテーブル等の回転手段8上に載せられている。回転手段8は人力で回転させるタイプのものであっても良いし、電動モータ等のアクチュエータによって回転させるタイプのものでも良い。
【0049】
このような栽培方法は、1株の果菜栽培に適用できるだけではなく、図3に示すように複数株の果菜栽培にも適用できる。即ち、複数株の果菜1を栽培室内に並べ、上述の吊り下ろし栽培方法によって花実の高さをほぼ揃えながら栽培するようにしても良い。また、栽培室内の生育環境を高さ方向に区分けして制御するようにしても良い。ここで、高さを「ほぼ揃える」には、高さが同一である場合が含まれるのは勿論のこと、高さが異なる場合であっても作業者が同じ姿勢で作業を行うことができる範囲の高さにする場合や後述する生育環境の区分け(高さのゾーン)を同じにできる範囲の高さにする場合も含まれる。複数株の果菜栽培は、後述する栽培システムを使用して行うことができる。
【0050】
図3を用いて果菜1の栽培システムについて説明する。果菜1の栽培システムは、栽培室10と、栽培室10内に複数並べられた栽培容器5(図示せず)と、栽培容器5で栽培される果菜1の蔓2を誘引する誘引紐3と、栽培容器5で栽培される果菜1の蔓2の収穫済みの部分を同じ位置で巻き取る巻き取り手段と、栽培容器5で栽培される果菜1に光を当てる照明手段11を備えている。栽培容器5は外側容器6に収容された状態で並べられても良いし、外側容器6を使用せずに直接置かれた状態で並べられても良い。ここで、巻き取り手段について「同じ位置で巻き取る」には、巻き取り手段の位置が全く変わらない場合の他、作業時に多少のずれが生じる場合も含まれる。
【0051】
図3では3株の果菜1を1列に並べているが、1列に並べる株数は3株に限られない。また、列数も1列に限られない。各株は栽培室10の大きさや形状等に応じて適宜並べられる。
【0052】
栽培室10には照明手段11が設けられている。照明手段11は、例えば光源又は採光手段である。本実施形態では照明手段11として天井に光源を設けているが、設ける位置はこれに限られない。光源として、例えばLED照明、有機EL照明、蛍光灯、白熱灯、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ等の使用が可能であるがこれらに限られるものではなく、栽培する果菜1の種類等に応じて適宜選択できる。また、これらの光源を設ける代わりに又はこれらの光源と併用して、採光手段として太陽光を取り入れる窓を設けても良い。なお、照明手段11からの光の熱が果菜栽培に悪影響を及ぼす場合等には照明手段11と果菜1との間に熱線をカットする熱遮蔽19等を設けることが好ましい。
【0053】
本実施形態では栽培室10内を栽培容器5で栽培される果菜1が通過可能に高さ方向に区分けする区分け手段20を有しており、栽培室10内の生育環境を高さ方向に区分けして制御している。即ち、各株の花実の高さをほぼ揃えることで、栽培室10内を高さ方向に区分けして各区分毎に適切な生育環境を作ることができる。本実施形態では、栽培室10内を花芽のできるゾーン(花芽ゾーン12)とその下の成熟ゾーン13とに区分けをして各々に適した生育環境にしている。区分け手段20は、例えばエアーカーテン、果菜1を貫通させる孔が設けられたシート、各ゾーン12,13の空気が混ざらないようにするために少なくともいずれか一方に空気の流れを形成する手段等である。即ち、各ゾーン12,13は例えばエアーカーテンによって区切るようにしても良いし、果菜1を貫通させる孔を設けたシートを張ることで区切るようにしても良い。あるいは、物理的な区切りを設けずに、各ゾーン12,13の少なくともいずれか一方に空気の流れを形成し、各ゾーン12,13の空気が混ざらないようにして生育環境を区分けするようにしても良く、その他の手段でも良い。なお、区分けの仕方は、花芽ゾーン12と成熟ゾーン13とに限られない。上下2つのゾーンに区分けする他、3つ以上のゾーンに区分けしても良い。
【0054】
生育環境として、例えば空気の流れの有無や速度、空気成分の種類やその割合、湿度、温度、CO濃度、培地温度、培養液温度等を調整する。そのため、図4に示すように、区分け手段20によって区分けされた領域(ゾーン)の生育環境を制御する手段21を備えている。図4(A)に示すように各ゾーン12,13の生育環境を同じ制御手段21によって制御するようにしても良いし、図4(B)に示すように各ゾーン毎に専用の制御手段21を設けても良い。また、1つのゾーンに対して複数の制御手段21を設けても良い。制御手段21としては、ハウス栽培等で使用されているものの使用が可能であり、例えば、空気の流れを形成し且つ流れの速度を調節可能なファン、空気成分の種類やその割合を調節可能なガス発生器及びマスフローコントローラ、空気の温度や湿度を調節可能な空調装置や冷暖房装置、CO濃度を調節可能なボイラ、培地や培養液の温度を調節可能な電熱線等のヒータや温湯配管システム等の使用が可能である。
【0055】
栽培室10は例えば断熱壁14で囲まれている。ただし、断熱が不要な場合等には断熱壁14でなく通常の壁や仕切りシート等で囲むようにしても良い。
【0056】
例えばコンテナやトラックの荷台を栽培室10に利用することで、栽培室10を移動可能にすることができる。栽培室10を移動可能にすることで、任意の場所で果菜1の栽培を行うことができ、便利である。例えば、被災地等の食料不足地で果菜1の栽培を行うことができ、食料を必要とする現地での栽培が容易である。
【0057】
この果菜1の栽培システムでは、複数の株を狭いスペースでまとめて栽培することができる。また、栽培に必要なスペースを狭くできるので、生育環境の制御が容易である。しかも、並べた果菜1の花実の高さをほぼ揃えているので、例えばホルモン処理等の農作業が容易である。
【0058】
また、並べた果菜1の花実の高さをほぼ揃えながら栽培し、栽培室10内の生育環境を高さ方向に区分けして制御するので、果菜1の部位に応じて適切な生育環境を作ることができ、収穫物の品質を向上させることができる。
【0059】
さらに、各ゾーン12、13毎に軽重をつけて管理することができるので、全体を等しく管理する場合に比べて省エネルギー化が可能である。例えば、栽培により重要な花芽ゾーン12を重点的に管理し、成熟ゾーン13の管理を弱めることができ、管理労力を軽減することができる。
【0060】
また、上述の説明では、栽培室10を移動可能にしていたが、移動可能にしなくても良い。例えば、温室やビニルハウスを栽培室10にしても良いし、通常の建築物の部屋を栽培室10にしても良い。勿論、植物工場の栽培室10であっても良い。
【0061】
また、上述の説明では、栽培室10内の生育環境を高さ方向に区分けして制御していたが、区分けをしなくても良い。即ち、区分け手段20を省略しても良い。この場合であっても、花実の高さを揃えて農作業を容易にすることができるという効果を奏することができる。
【0062】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【0063】
ここで、図5に示すように、栽培容器5から蔓2を引き出す方向を、隣り合うもの同士で互い違いにすることが好ましい。このように配置することで、栽培容器5の間隔を詰めて並べても隣り合う果菜1の間隔をある程度あけることができるので、栽培容器5を間隔を詰めて並べることができ、スペースを有効に活用することができる。
【0064】
例えば、果菜1の蔓2を巻き取り面7に案内するガイドを設けても良い。この場合の例を図6に示す。この例では蔓2を巻き取り面7に案内する根元側ガイド16と、誘引紐3側を巻き取り面7に案内する誘引紐側ガイド15との2種類を備えているが、必ずしも両方を一緒に設ける必要はなく、いずれか一方のみを設けるようにしても良い。この例では、針金等の線状部材でループを形成し、ループ内に蔓2を通すことで蔓2を案内しているが、これに限られない。例えば、フック等の引っ掛け部材や凸部材に引っ掛けることで蔓2をガイドするようにしても良い。
【0065】
根元側ガイド16は外側容器6に取り付けられており、外側容器6と一緒に回転する。一方、誘引紐側ガイド15は架線9又は床に取り付けられており、外側容器6が回転しても誘引紐側ガイド15は回転しない。そのため、外側容器6を回転させることで蔓2の弛んだ部分4をきれいに巻き取ることができる。根元側ガイド16は外側容器6から取り外し可能になっており、使用後に取り外すことで複数の外側容器6を重ねて保管することができる。
【0066】
なお、誘引紐側ガイド15を引っ掛け部材等によって形成する場合には、外側容器6に設けることもできる。即ち、蔓2を巻き取り面7で巻き取った後、誘引紐側ガイド15に引っ掛けて誘引紐3側に向けて延出させるようにしても良い。
【0067】
また、各ガイド15,16を外側容器6に設けたり取り付けた場合には、各ガイド15,16を取り外し又は折り畳み可能にすることが好ましい。取り外し又は折り畳み可能にすることで、複数の外側容器6を重ねて保管することができる。
【0068】
また、上述の説明では、果菜1の蔓2の弛んだ部分4を巻き取り手段としての外側容器6の周囲に巻き付けるようにしていたが、弛んだ部分4を巻き取り手段としての巻き取り具に巻き付けるようにしても良い。この場合の例を図7に示す。巻き取り具17は、蔓2の弛んだ部分4を巻き取り可能な巻き取り面7を備えている。巻き取り面7は例えば糸巻き状の巻き取りドラムの周面であり、巻き取りドラム(巻き取り具)17は例えば外側容器6に取り付けられた支持手段18によって支持されている。ただし、巻き取り具17を架線9に吊り下げたり床に設置しても良い。また、弛んだ部分4を巻き取ることができるものであれば、巻き取りドラム17は糸巻き状のものに限られない。本実施形態では、巻き取り具17をその中心軸が水平になるように(以下「横向き」という)設け、蔓2の弛んだ部分4を上下に巻き取るようにしているが、これに限られない。なお、巻き取り具17の高さを高くし過ぎると果菜1の水ポテンシャル(水を吸い上げる負圧)に悪影響を及ぼす虞があるので、水ポテンシャルに悪影響を及ばさない程度の高さに巻き取り具17を設けることが好ましい。
【0069】
巻き取りドラム17は支持手段18に支持されており、蔓2の弛んだ部分4を作業者が巻き取り面7に巻き付けるようにする。
【0070】
蔓2の弛んだ部分4を巻き取り具17によって巻き取る場合には、外側容器6を回転させずに蔓2の弛んだ部分4を巻き取ることができる。また、ターンテーブル等の回転手段8を省略することができる。さらに、果菜1を地面に直接植える場合にも適用できる。
【0071】
また、上述の説明では、1つの栽培容器5に果菜1を1株ずつ植えていたが、複数株を植え付けても良い。この場合の例を図8に示す。栽培容器5として、例えば長方形プランタを使用している。また、各株毎に巻き取り具17が設けられている。
【0072】
また、上述の説明では、巻き取り具17を横向きに設け、蔓2の弛んだ部分4を上下に巻き取るようにしていたが、巻き取り具17の向きはこれに限られない。例えば、図9に示すように、巻き取り具17をその中心軸が垂直になるように(以下「縦向き」という)設け、蔓2の弛んだ部分4を水平に巻き取るようにしても良いし、あるいはその中心軸が斜めになるように設け、蔓2の弛んだ部分4を斜めに巻き取るようにしても良い。
【0073】
また、上述の説明では、蔓2の弛んだ部分4を単一の円状に巻き取るようにしていたが、弛んだ部分4を例えば8の字状等の複数の円状に巻き取るようにしても良い。8の字状(2つの円状)に巻き取る例を図10に示す。この例では、上下一対の巻き取りドラム17で巻き取り具を構成している。各巻き取りドラム17は所定の間隔をあけて上下に配置され、支持手段18によって支持されている。各巻き取りドラム17は横向きに設けられており、弛んだ部分4を上下に8の字を描くように巻き取るようにしている。本実施形態では、果菜1は地面に植えられており、支持手段18は地面に立てられている。ただし、果菜1が栽培容器5内に植えられている場合等には、支持手段18を栽培容器5又は外側容器6に取り付けても良いし、栽培容器5内の土等に立てても良いし、外側容器6が置かれている地面に立てて又は床に設置しても良い。
【0074】
作業者が弛んだ部分4を一対の巻き取りドラム17の巻き取り面7に上下に8の字を描くように巻き付ける。弛んだ部分4の巻き取りを8の字状にすることで、巻き取り時の弛んだ部分4の捻れを防止又は抑制することができる。そのため、弛んだ部分4が太い場合にもより良好に巻き取ることができると共に、弛んだ部分4に与えるダメージをより小さくすることができる。
【0075】
なお、一対の巻き取りドラム17を上下以外の方向、例えば図11に示すように水平に並べたり、斜めに並べるようにしても良い。
【0076】
また、図12に示すように、一対の巻き取りドラム17を縦向きに設け、弛んだ部分4を水平に8の字状に巻き取るようにしても良い。各巻き取りドラム17は所定の間隔をあけて水平に配置され、支持手段18によって支持されている。本実施形態では、果菜1は地面に植えられており、支持手段18は地面に設置されている。ただし、果菜1が栽培容器5内に植えられている場合等には、支持手段18を栽培容器5又は外側容器6に取り付けても良いし、栽培容器5内の土等に設置しても良いし、外側容器6が置かれている地面又は床に設置しても良い。
【0077】
作業者が弛んだ部分4を一対の巻き取りドラム17の巻き取り面7に水平に8の字を描くように巻き付ける。水平に巻き取る場合にも、弛んだ部分4の巻き取りを8の字状にすることで、巻き取り時の弛んだ部分4の捻れを防止又は抑制することができる。そのため、弛んだ部分4が太い場合にもより良好に巻き取ることができると共に、弛んだ部分4に与えるダメージをより小さくすることができる。また、蔓2を交差させずに巻き取ることができるので、巻き取りが容易である。
【0078】
また、弛んだ部分4を外側容器6の周囲の巻き取り面7で巻き取る場合には、例えば図13に示すように補助巻き取り具31を設け、弛んだ部分4を水平に8の字状に巻き取るようにしても良い。補助巻き取り具31は外側容器6の脇に所定の間隔をあけて配置されている。補助巻き取り具31としては不使用(果菜1を植えていない)の外側容器6を使用しても良いし、巻き取り面7を有する筒体等を使用しても良い。
【0079】
作業者が弛んだ部分4を外側容器6の巻き取り面7と補助巻き取り具31の巻き取り面7に水平に8の字を描くように巻き付ける。外側容器6及び補助巻き取り具31を利用する場合にも、弛んだ部分4の巻き取りを8の字状にすることで、巻き取り時の弛んだ部分4の捻れを防止又は抑制することができる。そのため、弛んだ部分4が太い場合にもより良好に巻き取ることができると共に、弛んだ部分4に与えるダメージをより小さくすることができる。
【0080】
なお、蔓2の弛んだ部分4を複数の円状に巻き取る場合には、2つの円状(8の字状に巻き取る)に限られず、3つの円状や4つの円状、5つ以上の円状にしても良い。なかでも特に偶数個の円状にすることが好ましく、この場合には巻き取り時の弛んだ部分4の捻れを特により良く抑えることができる。
【0081】
また、上述の説明では、巻き取り面7が連続した面であったが、必ずしも連続している必要はなく、例えば図14に示すように、円弧状に間隔をあけて並べられた複数の面7bとしても良く、あるいは網等で巻き取り面7を構成しても良い。さらには、例えば図15に示すように複数の棒7cを円弧状に間隔をあけて並べて巻き取り面7を構成しても良い。
【0082】
また、弛んだ部分4を複数の円状に巻き取る場合には、巻き取り具17としての巻き取りドラムの全周に巻き取り面7を設ける必要はなく、例えば図16に示すように、少なくとも実質的に巻き取りに関与する部分に巻き取り面7を設ければ良い。この場合には、巻き取り面7に使用する材料の削減が可能となり、コストダウンを図ることが可能になる。
【0083】
さらに、上述の説明では、巻き取り具17としての巻き取りドラムの横断面形状を円形にしていたが、弛んだ部分4を巻き取ることができる形状であれば必ずしも円形に限られない。例えば図17に示すように楕円形でも良く、正多角形等でも良く、その他の形状でも良い。
【0084】
また、例えば図18に示すように、蔓2の弛んだ部分4の巻き取り量に応じて巻き取りドラム17を継ぎ足すようにしても良い。この場合、巻き取りドラム17の向きは縦向き(図18(A))でも、横向き(図18(B))でも良い。巻き取りドラム17を継ぎ足す場合には、果菜1の生長に合わせて巻き取り具の大きさを調節することができ、柔軟な対応が可能になる。
【符号の説明】
【0085】
1 果菜
2 蔓
3 誘引紐
4 弛んだ部分
5 栽培容器
6 ポット等の容器(巻き取り手段)
7 巻き取り面
10 栽培室
11 照明手段
15 誘引紐側ガイド
16 根元側ガイド
17 巻き取り具(巻き取り手段)
図1
図2
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図3