(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
半導体処理チャンバ内においてプラズマを発生させ制御するシステムおよび方法について説明する。このプラズマは、処理チャンバ内で発生させ、もしくは処理チャンバ外の遠隔プラズマユニットで発生させ、またはその両方において発生させることができる。処理チャンバ内では、プラズマと基板ウエハの間に配置されたイオン抑制要素の助けを借りて、プラズマを閉じ込め、プラズマを基板ウエハから分離する。いくつかの例では、このイオン抑制要素は、プラズマ発生ユニット(例えば電極)、ガス/前駆体分配システム(例えばシャワーヘッド)および/または処理システムの他の構成要素の部分としても機能する。追加の例では、このイオン抑制要素は主に、プラズマ発生領域と、基板ウエハの露出した表面の材料をエッチングしかつ/または基板ウエハの露出した表面に材料を堆積させるガス反応領域との間の仕切りを画定するように機能する。
【0015】
このイオン抑制要素は、プラズマ発生領域から基板へ移動するイオン性荷電種を低減または排除するように機能する。帯電していない中性種およびラジカル種は、イオン抑制器の開口を通り抜けて基板のところで反応することができる。基板の周囲の反応領域からイオン性荷電種を完全に排除することが必ずしも所望の目的でないことに留意すべきである。エッチングプロセスおよび/または堆積プロセスを実行するため、多くの場合に、イオン種が基板に到達することが必要である。これらの場合には、イオン抑制器は、反応領域内のイオン種の濃度を、そのプロセスを支援するレベルに制御するのを助ける。
【0016】
例示的な処理システム構成
例示的な処理システム構成は、基板に到達するプラズマ励起した種(以後、プラズマ励起種)のタイプおよび量を制御するために処理チャンバ内に配置されたイオン抑制器を含む。いくつかの実施形態では、このイオン抑制器ユニットは、プラズマ発生ユニットの電極としても機能する多孔板である。追加の実施形態では、このイオン抑制器は、基板に接した反応領域にガスおよび励起種を分配するシャワーヘッドである。他の実施形態では、イオンの抑制は、多孔板イオン抑制器およびシャワーヘッドによって実現され、プラズマ励起種は、多孔板イオン抑制器とシャワーヘッドの両方を通り抜けて反応領域に到達する。
【0017】
図1および
図2はそれぞれ、容量結合プラズマ(CCP)ユニット102の一部としてのイオン抑制器110と、イオン抑制にも寄与することができるシャワーヘッド104の両方を含む処理システムの略断面図および略斜視図を示す。場合により、この処理システムはさらに、処理チャンバ100の外側に配置された流体供給システム114などの構成要素を含むことができる。処理チャンバ100は、周囲の圧力とは異なる内圧を維持することができる。例えば、処理チャンバ内の圧力を約1ミリトル(mTorr)から約100トルとすることができる。
【0018】
CCPユニット102は、処理チャンバ100内でプラズマを発生させるように機能することができる。CCPユニット102の構成要素は、蓋またはホット電極(hot electrode)106およびイオン抑制要素110(本明細書ではイオン抑制器とも呼ぶ)を含むことができる。いくつかの実施形態では、蓋106およびイオン抑制器110は導電性電極であり、これらの電極間のガスをイオン化してプラズマにするのに十分な強さの電場を発生させるために、これらの電極を互いに対して電気的にバイアスすることができる。電気絶縁体108は、蓋電極106とイオン抑制器電極110を分離して、プラズマが発生したときにこれらが短絡することを防ぐことができる。蓋106、絶縁体108およびイオン抑制器110のプラズマにさらされる表面は、CCPユニット102内のプラズマ励起領域112を画定することができる。
【0019】
プラズマを発生させるガス(以後、プラズマ発生ガス)は、ガス供給システム114からガス入口116を通ってプラズマ励起領域112内へ移動することができる。このプラズマ発生ガスを使用して励起領域112内でプラズマに点火することができ、または、このプラズマ発生ガスは、既に形成されているプラズマを維持することができる。いくつかの実施形態では、プラズマ発生ガスは、入口116を通って下流に移動してCCPユニット102に達する前に、処理チャンバ100の外側に配置された遠隔プラズマシステム(図示せず)内で既に、少なくとも部分的にプラズマ励起種に変化している。このプラズマ励起種はプラズマ励起領域112に到達したときに、プラズマ励起種をCCPユニット102内でさらに励起することができ、または追加の励起なしでプラズマ励起領域を通過させることもできる。いくつかの操作では、基板処理の順序および/または条件に応じて、CCPユニット102によって提供する追加の励起の程度を時間とともに変化させる。
【0020】
このプラズマ発生ガスおよび/またはプラズマ励起種は、プラズマ励起領域112内へより均一に送達するための蓋106の複数の孔(図示せず)を通り抜けることができる。例示的な構成は、プラズマ発生ガス/プラズマ励起種が蓋106の孔を通ってプラズマ励起領域112内に流入するように、入口116が、蓋106によってプラズマ励起領域112から分離されたガス供給領域120内へ開いていることを含む。プラズマ励起領域112から、供給領域120、入口116および流体供給システム114へプラズマがあまり逆流しないように、構造特徴および動作特徴を選択することができる。構造特徴は、逆流しているプラズマを非活性化する蓋106の孔の寸法および断面幾何形状の選択を含むことができる。逆流しているプラズマの非活性化については
図7Aおよび
図7Bを参照して後に説明する。動作特徴は、イオン抑制器110を通り抜けるプラズマの一方向の流れを維持する、ガス供給領域120とプラズマ励起領域112の間の圧力差を維持することを含むことができる。
【0021】
前述のとおり、蓋106およびイオン抑制器110はそれぞれ、蓋106および/またはイオン抑制器110が電荷を受け取ることができるように、第1の電極および第2の電極として機能することができる。これらの構成では、蓋106もしくはイオン抑制器110またはその両方にパワー(例えばRFパワー)を供給することができる。例えば、蓋106にパワーを供給し、イオン抑制器110を接地することができる。この基板処理システムは、蓋106および/またはイオン抑制器110にパワーを供給するRFジェネレータ140を含むことができる。帯電した蓋106は、プラズマ励起領域112内のプラズマの均一な分布を促進にする(すなわち局在するプラズマを減らす)ことができる。プラズマ励起領域112内でのプラズマの形成を可能にするため、絶縁体108は、蓋106とイオン抑制器110とを電気的に絶縁することができる。絶縁体108はセラミック製とすることができ、電気火花の発生を防ぐために高い絶縁破壊電圧を有することができる。プラズマにさらされた表面を循環冷却剤(例えば水)によって冷却するため、CCPユニット102はさらに、1つまたは複数の冷却流体チャネルを含む冷却ユニット(図示せず)を含むことができる。
【0022】
イオン抑制器110は、プラズマ励起領域112からのイオン性荷電種の移動を抑制し、同時に、帯電していない中性種またはラジカル種がイオン抑制器110を通り抜けて活性化されたガス(以後、活性化ガス)の送達領域124に入ることを許す複数の孔122を含むことができる。帯電していないこれらの中性種またはラジカル種は、より反応性の低いキャリアガスによって運ばれて孔122を通り抜ける反応性の高い種を含むことができる。前述のとおり、孔122を通り抜けるイオン種の移動を低減させることができ、場合によっては完全に抑制することができる。イオン抑制器110を通り抜けるイオン種の量を制御することによって、その下のウエハ基板と接触するガス混合物の制御が向上し、ガス混合物の制御が向上することによって、ガス混合物の堆積特性および/またはエッチング特性の制御が向上する。例えば、ガス混合物のイオン濃度を調整することによって、ガス混合物のエッチング選択性(例えばSiN
x:SiO
xエッチング比、金属:SiO
xエッチング比、金属:SiN
xエッチング比、ポリSi:SiO
xエッチング比など)を大幅に変化させることができる。ガス混合物のイオン濃度を調整することによって、堆積する誘電体材料の共形性(conformal)と流動性(flowable)との平衡を変化させることもできる。
【0023】
イオン抑制器110を通り抜ける活性化ガス(すなわちイオン種、ラジカル種および/または中性種)の通り抜けを制御するように、複数の孔122を構成することができる。例えば、イオン抑制器110を通り抜ける活性化ガス中のイオン性荷電種の流量が低下するように、孔のアスペクト比(すなわち孔の直径と長さの比)および/または孔の幾何形状を制御することができる。イオン抑制器110の孔は、プラズマ励起領域112に面するテーパの付いた部分と、シャワーヘッド104に面する円筒形部分とを含むことができる。この円筒形部分の形状および寸法を調整して、シャワーヘッド104に達するイオン種の流れを制御することができる。イオン抑制器を通り抜けるイオン種の流れを制御する追加の手段として、調整可能な電気バイアスをイオン抑制器110に与えることもできる。
【0024】
シャワーヘッド104は、CCPユニット102のイオン抑制器110と、ペデスタル150上に装着されていることがある基板と接触するガス反応領域130(すなわちガス活性化領域)との間に配置される。ガスおよびプラズマ励起種は、イオン抑制器110を通り抜け、イオン抑制器110とシャワーヘッド104の間に画定された活性化ガス送達領域124に入ることができる。これらのガスおよびプラズマ励起種の一部はさらに、シャワーヘッド104を通り抜け、基板と接触するガス反応領域130に入ることができる。
【0025】
このシャワーヘッドは、プラズマ励起種の通り抜けを許すチャネル126の第1のセットと、第2のガス/前駆体混合物をガス反応/活性化領域130内に送達するチャネルの第2のセットとを有する2重ゾーンシャワーヘッドとすることができる。これらの2つのチャネルセットは、ガス反応領域130に到達する前に、プラズマ励起種と第2のガス/前駆体混合物とが混合することを防ぐ。いくつかの実施形態では、プラズマ励起種の少なくとも一部が、その流れの方向を変えることなく孔122およびチャネル126を通り抜けることを可能にするため、イオン抑制器110の孔122のうちの1つまたは複数の孔が、シャワーヘッド104のチャネル126のうちの1つまたは複数のチャネルと整列する。追加の実施形態では、チャネルの第2のセットのガス反応領域130に面した開口の形状が環形であり、それらの環形の開口が、チャネル126の第1のセットの円形の開口を取り巻き、チャネル126の第1のセットの円形の開口と同心に整列する。
【0026】
シャワーヘッド104のチャネルの第2のセットは、そのプロセスを実行するために選択された原料ガス/前駆体混合物(図示せず)に流体結合される。例えば、二酸化ケイ素(SiO
2)などの誘電体材料の堆積を実行するように処理システムが構成されているとき、原料ガス/前駆体混合物は、シラン、ジシラン、TSA、DSA、TEOS、OMCTS、TMDSOなど、シリコンを含むガスまたは前駆体を含むことができる。この混合物は、ガス反応領域130内で酸化性ガス混合物と反応することができ、この酸化性ガス混合物は、プラズマ発生したラジカル酸素(O)、活性化された分子状酸素(O
2)、オゾン(O
3)などのプラズマ励起種を含むことができる。プラズマ励起種がイオン抑制器110の孔122を通り抜けるときにプラズマ励起種中の過剰のイオンを減らすことができ、プラズマ励起種がシャワーヘッド104のチャネル126を通り抜けるときにプラズマ励起種中の過剰のイオンをさらに減らすことができる。他の例として、基板表面でエッチングを実行するように処理システムが構成されているとき、原料ガス/前駆体混合物は、酸化剤、ハロゲン、水蒸気および/またはキャリアガスなどのエッチング剤を含むことができ、このエッチング剤は、ガス反応領域130内で、シャワーヘッド104のチャネルの第1のセットから分配されたプラズマ励起種と混合する。
【0027】
この処理システムはさらに、プラズマ励起領域112内でプラズマを発生させるためのパワーを蓋106および/またはイオン抑制器110に供給するためにCCPユニット102に電気的に結合された電源140を含むことができる。この電源を、実行されるプロセスに応じて調整可能な量のパワーをCCPユニット102に送達するように構成することができる。例えば堆積プロセスでは、CCPユニット102に送達するパワーを調整して、堆積層の共形性を設定することができる。堆積した誘電体膜は通常、プラズマ出力が低いほどより流動性であり、プラズマ出力を増大させると流動性から共形性へと変化する。例えば、プラズマ励起領域112内に維持されたアルゴンを含むプラズマは、プラズマ出力を、約1000ワットから約100ワットまたはそれ以下(例えば約900、800、700、600もしくは500ワットまたはそれ以下)に低下させると、より流動性の酸化ケイ素層を生成することができ、プラズマ出力を、約1000ワットまたはそれ以上(例えば約1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700ワットまたそれ以上)に増大させると、より共形性の層を生成することができる。プラズマ出力を低出力から高出力へ高めたとき、流動性の堆積膜から共形性の堆積膜への遷移は、比較的に滑らかで連続的であることもあり、または比較的に離散したしきい値を横切って進行することもある。プラズマ出力を(単独でまたは他の堆積パラメータに加えて)調整して、堆積膜の共形特性と流動特性の間の平衡を選択することができる。
【0028】
この処理システムはさらに、基板(例えばウエハ基板)を支持し移動させるように動作可能なペデスタル150を含むことができる。ペデスタル150とシャワーヘッド104の間の距離は、ガス反応領域130を部分的に画定する。ガス反応領域130を拡張または縮小し、シャワーヘッド104を通り抜けたガスに対してウエハ基板を再配置することによりウエハ基板の堆積またはエッチングを達成するために、ペデスタルを、処理チャンバ100内で垂直方向または軸方向に調整できるようにすることができる。ペデスタル150は、ウエハ基板の温度を制御するためにその中を熱交換流体が流れる熱交換チャネルを有することができる。この熱交換流体を循環させることによって、基板温度を比較的に低い温度(例えば約−20℃から約90℃)に維持することができる。例示的な熱交換流体にはエチレングリコール、水などがある。
【0029】
基板を加熱温度(例えば約90℃から約1100℃)に維持するため、加熱要素(抵抗性加熱要素など)を含むようにペデスタル150を構成することもできる。例示的な加熱要素には、2周以上巻かれて平行同心円の形態をなす、基板支持プラテンに埋め込まれた単一ループヒータ要素が含まれる。このヒータ要素の外側部分は、支持プラテンの周界に隣接して延びることができ、内側部分は、より小さな半径を有する同心円経路に沿って延びることができる。ヒータ要素への配線はペデスタルの脚を通して実施することができる。
【0030】
図3は、イオン抑制器プレートとシャワーヘッドの両方を含む処理システム内を通る一対のガス混合物のガス流路の略図である。ブロック305で、プラズマ発生ガス混合物などの第1のガスを、ガス入口を通して処理チャンバに供給する。第1のガスは、以下のガスのうちの1種または数種のガスを含むことができる:CF
4、NH
3、NF
3、Ar、He、H
2O、H
2、O
2など。ブロック310で、処理チャンバ内で第1のガスをプラズマ放電によって励起させて、1種または数種のプラズマ流出物を形成する。あるいは(またはインシトゥ(in−situ)プラズマ発生に加えて)、処理チャンバに結合された遠隔プラズマシステム(RPS)を使用してエクスシトゥ(ex−situ)プラズマを発生させ、そのプラズマ励起生成物を処理チャンバ内へ導入することもできる。RPSプラズマ励起生成物は、イオン性荷電プラズマ種ならびに中性種およびラジカル種を含むことができる。
【0031】
プラズマ流出物をインシトゥプラズマユニットによって発生させるのか、もしくはRPSユニットによって発生させるのか、またはその両方によって発生させるのかに関わらず、ブロック315で、プラズマ流出物を処理チャンバ内のイオン抑制器に通す。イオン抑制器は、第1のプラズマ活性化ガスが処理チャンバ内のガス反応領域に移動するときに、イオン種の通り抜けを遮断しかつ/または制御し、同時にラジカル種および/または中性種の通り抜けを許すことができる。ブロック320で、処理チャンバ内に第2のガスを導入する。前述のとおり、第2のガスの内容は実行するプロセスに依存する。例えば、第2のガスは、堆積プロセス用の堆積化合物(例えばSiを含む化合物)およびエッチングプロセス用のエッチング剤を含むことができる。第1のガスおよび第2のガスが処理チャンバのガス反応領域に到達するまで、第1ガスと第2のガスの間の接触および反応を防ぐことができる。
【0032】
ガス反応領域よりも前に第1のガスと第2のガスが相互作用することを防ぐ1つの方法は、2重ゾーンシャワーヘッド(dual−zone showerhead)(DZSH)内の別個のチャネルにこれらのガスを流す方法である。ブロック330は、活性化された第1のガスおよび活性化された第2のガスがDZSHを通り抜けることを示す。DZSHは、複数の第2のチャネルを通り抜ける第2のガスと相互作用することなく第1の活性化ガスがシャワーヘッドを通り抜けることを可能にする複数の第1のチャネルを有する。DZSHを出た後、ブロック335で、第1のガスと第2のガスは、処理チャンバのガス反応領域内で互いに混合する。実行するプロセスに応じて、この混合されたガスは反応して、基板の露出した表面に材料を堆積させ、もしくは基板から材料をエッチングし、またはその両方を達成する。
【0033】
次に
図4を参照すると、イオン抑制要素としても機能するシャワーヘッド428を有する処理システム400の略断面図が示されている。図示の構成では、プラズマを発生させるための第1のガス源402が、任意選択のRPSユニット404に流体結合されており、RPSユニット404で第1のプラズマを発生させ、そのプラズマ流出物を、ガス入口408を通して処理チャンバ406内へ運ぶことができる。処理チャンバ406内で、このガスは、ガス分配プレート412の孔410を通り抜け、ガス分配プレート412とシャワーヘッド428の間に画定されたガス領域414に入ることができる。いくつかの実施形態では、この領域414がプラズマ励起/活性化領域であり、このプラズマ励起/活性化領域では、ガスをさらに励起させかつ/または第1のプラズマを発生させるために、ガス分配プレート412およびシャワーヘッド428が第1および第2の電極として機能する。ガス分配プレート412の孔410は、寸法または幾何形状に関して、逆流しているプラズマを非活性化するように構築することができる。ガスを励起させかつ/またはプラズマを発生させるため、プレート412およびシャワーヘッド428を、プレート412およびシャワーヘッド428に電荷を供給するRFパワージェネレータ422に結合することができる。一実施形態では、シャワーヘッド428を接地し、プレート412に電荷を供給する。
【0034】
ガス領域414内の励起したガス(以後、励起ガス)または活性化ガスは、シャワーヘッド428を通り抜け、基板418に隣接するガス反応領域416に入って、基板の表面から材料をエッチングし、かつ/または基板の表面に材料を堆積させることができる。シャワーヘッド428は、励起ガスがガス領域414からガス反応領域416内に入ることを可能にし、同時に第2のガス(すなわち前駆体ガス/混合物)が外部源(図示せず)から第2のガス入口426を通してガス反応領域416内に流入することを可能にするDZSHとすることができる。DZSHは、活性化ガス/励起ガスおよび第2のガスがガス反応領域416内に流入する前に、これらのガスが混合することを防ぐことができる。
【0035】
励起ガスは、DZSHの複数の孔424を通り抜けることができる。DZSHの複数の孔424は、寸法および/または幾何形状に関して、プラズマ(すなわちイオン性荷電種)の通り抜けを制御または防止し、同時に活性化ガス/励起ガス(すなわち反応性ラジカルまたは帯電していない中性種)の通り抜けを許すように構築することができる。
図7Aは、DZSHで使用することができる孔の輪郭の例示的な実施形態を示す。孔424の他に、DZSHは、その中を第2のガスが流れる複数のチャネル426を含むことができる。第2のガス(前駆体ガス)は、孔424に隣接して配置された1つまたは複数の開口部(図示せず)を通ってシャワーヘッド428を出ることができる。DZSHは、第2のガス送達システムとイオン抑制要素の両方として機能することができる。
【0036】
前述のとおり、混合されたこれらのガスは、プラテン420上に配置されていることがある基板418の表面に材料を堆積させ、かつ/または基板418の表面から材料をエッチングすることができる。プラテン420は、処理チャンバ406内で垂直方向に移動できるようにすることができる。処理チャンバ406内での基板418の処理は、孔424の輪郭、ガス領域414内の圧力および/または処理チャンバ内の基板418の位置の影響を受けることがある。さらに、孔424の輪郭および/またはガス領域414内の圧力によって、ガス励起領域416内へ通すイオン種(プラズマ)の濃度を制御することができる。このガス混合物のイオン濃度は、エッチング選択性を変化させるだけでなく、堆積する誘電体材料の共形性−流動性平衡を変化させることができる。
【0037】
次に
図5を参照すると、イオン抑制要素として機能するプレート512(すなわちイオン抑制器プレート)を有する他の処理システム500の略断面図が示されている。図示の構成では、第1のガス源502がRPSユニット504に流体結合されており、RPSユニット504で第1のプラズマを発生させ、そのプラズマ流出物を、ガス入口508を通して処理チャンバ506内へ運ぶことができる。このプラズマ流出物を、イオン抑制器プレート512とガス入口508の間に画定されたガス領域514に運ぶことができる。ガス領域514内で、このガスは、イオン抑制器512の孔510を通り抜け、イオン抑制器512と基板518の間に画定されたガス反応/活性化領域516に入ることができる。上記の説明と同様に、基板518をプラテン520上に支持して、処理チャンバ506内で基板を移動させることができるようにすることができる。
【0038】
上記の説明と同様に、孔510は、寸法および/または幾何形状に関して、イオン性荷電種(すなわちプラズマ)の通り抜けを防止および/または制御し、同時に帯電していない中性種またはラジカル種(すなわち活性化ガス)の通り抜けを許すように構築することができる。イオン種の通り抜けは、ガス領域514内のプラズマの圧力を変化させることによって制御できることがある。ガス領域514内の圧力は、ガス入口508を通して送達されるガスの量を制御することによって制御することができる。前駆体ガス(すなわち第2のガス)は、イオン抑制器512の垂直方向下方にまたはイオン抑制器512と平行に配置された1つまたは複数の第2のガス入口522から処理チャンバ506内に導入することができる。第2のガス入口522は、処理チャンバ506の壁に配置された1つまたは複数の開口部、管など(図示せず)を含むことができ、さらに、それらの開口部、管などに前駆体ガスを送達する1つまたは複数のガス分配チャネル(図示せず)を含むことができる。一実施形態では、イオン抑制器512が、その中を前駆体ガスが流れる1つまたは複数の第2のガス入口を含む。イオン抑制器512の第2のガス入口は、この前駆体ガスをガス反応領域516内に送達することができる。このような一実施形態では、イオン抑制器512が、イオン抑制器と上で説明した2重ゾーンシャワーヘッドの両方の機能を果たす。エッチングプロセスおよび/または堆積プロセスのために、孔510を通り抜けた活性化ガスと処理チャンバ506内に導入された前駆体ガスをガス反応チャンバ516内で混合することができる。
【0039】
以上では処理チャンバの例示的な実施形態を説明した。以下では、イオン抑制器プレート412、512、シャワーヘッド428などのイオン抑制器の例示的な実施形態を説明する。
【0040】
例示的なイオン抑制器
図6Aは、本発明の一実施形態に基づくイオン抑制要素600(イオン抑制器)の略斜視図である。イオン抑制要素600は例えば
図4および/または
図5のイオン抑制器プレートに対応する。この斜視図は、イオン抑制要素またはイオン抑制プレート600の上面を示す。イオン抑制プレート600は概して円形の形状を有することができ、また、第1の領域(例えばプラズマ領域)から第2の領域(例えばガス反応領域またはシャワーヘッド)へのプラズマ流出物の通り抜けを可能にする1つまたは複数の貫通孔をそれぞれが含む複数のプラズマ流出物通路602を含むことができる。一実施形態では、通路602の貫通孔が、1つまたは複数の円形のパターンを形成するように配置されるが、他の構成も可能である。前述のとおり、これらの貫通孔は、幾何形状または寸法に関して、イオン種の通り抜けを制御または防止し、同時に帯電していない中性種またはラジカル種の通り抜けを許すように構成することができる。これらの貫通孔は、イオン抑制プレート600の上面の近くのより大きな内径と、イオン抑制プレートの底面の近くのより小さな内径とを有することができる。さらに、これらの貫通孔は概して円筒形もしくは円錐形とし、またはこれらの組合せとすることができる。これらの貫通孔の輪郭の例示的な実施形態が
図7A〜
図7Bに示されている。
【0041】
これらの複数の通路は、イオン抑制プレート600の表面に実質的に均一に分布させることができ、それにより、中性種またはラジカル種は、イオン抑制プレート600を均等に通り抜けて第2の領域に入ることができる。
図5の実施形態などのいくつかの実施形態では、処理チャンバがイオン抑制プレート600だけを含み、他の実施形態では、処理チャンバが、イオン抑制プレート600と、
図6Bのシャワーヘッドなどのシャワーヘッドの両方を含み、または処理チャンバが、2重ゾーンシャワーヘッドとイオン抑制プレートの両方として機能する単一のプレートを含む。
【0042】
図6Bは、本発明の一実施形態に基づくシャワーヘッド620の略下面図である。シャワーヘッド620は例えば
図4に示したシャワーヘッドに対応する。前述のとおり、シャワーヘッド620は、ガス反応領域の垂直方向上方に、ガス反応領域に隣接して配置することができる。イオン抑制プレート600と同様に、シャワーヘッド620も概して円形の形状を有することができ、複数の第1の孔622および複数の第2の孔624を含むことができる。複数の第1の孔622は、プラズマ流出物がシャワーヘッド620を通り抜けてガス反応領域に入ることを可能にし、複数の第2の孔624は、シリコン前駆体などの駆体ガス、エッチング剤などがガス反応領域に入ることを可能にする。
【0043】
複数の第1の孔622は、シャワーヘッド620の上面からシャワーヘッドを貫通して延びる貫通孔とすることができる。一実施形態では、複数の第1の孔622がそれぞれ、シャワーヘッド620の上面の近くのより小さな内径(ID)と底面の近くのより大きなIDとを有する。さらに、プラズマ流出物がシャワーヘッドを出たときにガス反応領域内でプラズマ流出物を均一に分配するのを助け、それによってプラズマ流出物と前駆体ガスの均一な混合を促進するため、複数の第1の孔622の底縁を面取り626することができる。第1の孔622のより小さなIDは約0.5mmから約20mmの間とすることができる。一実施形態では、このより小さなIDが約1mmから6mmの間である。第1の孔622の断面形状は、概して円筒形もしくは円錐形とし、またはこれらの組合せとすることができる。さらに、処理チャンバ内でイオン抑制要素600とシャワーヘッド620の両方を使用するときには、第1の孔622を通路602の貫通孔と同心に整列させることができる。この同心整列は、処理チャンバ内において活性化ガスがイオン抑制要素600とシャワーヘッド620の両方を通り抜けるのを容易にすることがある。
【0044】
他の実施形態では、複数の第1の孔622が、シャワーヘッド620の上面からシャワーヘッドを貫通して延びる貫通孔であり、第1の孔622がそれぞれ、シャワーヘッドの上面の近くのより大きなIDと、シャワーヘッドの底面の近くのより小さなIDとを有する。さらに、第1の孔622は、このより大きなIDとより小さなIDとの間で遷移するテーパ領域を含むことができる。このような構成は、プラズマが孔を通り抜けるのを防止または調節し、同時に活性化ガスが通り抜けることを許すことができる。このような実施形態は、イオン抑制要素600の代わりにまたはイオン抑制要素600に加えて使用することができる。このような貫通孔の例示的な実施形態が
図7Aに示されている。
【0045】
複数の第1の孔622の数は約60から約2000個の間とすることができる。複数の第1の孔622はさまざまな形状を有することができるが、一般に丸形である。処理チャンバがイオン抑制プレート600とシャワーヘッド620の両方を含む実施形態では、プラズマ流出物がイオン抑制プレートおよびシャワーヘッドを通り抜けるのを容易にするために、複数の第1の孔622を通路602と実質的に整列させることができる。
【0046】
複数の第2の孔624は、シャワーヘッド620の底面からシャワーヘッドを部分的に貫いて延びることができる。この複数の第2の孔を、前駆体ガス(例えば堆積化合物、エッチング剤など)を外部ガス源(図示せず)から第2の孔624へ送達する複数のチャネル(図示せず)に結合または接続することができる。第2の孔は、シャワーヘッド620の底面のより小さなIDと、シャワーヘッドの内部のより大きなIDとを含むことができる。第2の孔624の数は、約100から約5000個の間とすることができ、または異なる実施形態では約500から約2000個の間とすることができる。第2の孔のより小さなIDの直径(すなわち底面における孔の直径)は、約0.1mmから約2mmの間とすることができる。第2の孔624は一般に丸形であり、同様に円筒形もしくは円錐形またはこれらの組合せとすることができる。プラズマ流出物と前駆体ガスの均一な混合を促進するため、第1の孔と第2の孔の両方をシャワーヘッド620の底面に均一に分布させることができる。
【0047】
図7Aを参照すると、貫通孔の例示的な輪郭が示されている。図示された貫通孔は一般に、孔の上端の近くの大きな内径(ID)の領域と、孔の底または下端の近くのより小さなIDの領域とを含む。このより小さなIDは約0.2mmから約5mmの間とすることができる。また、孔のアスペクト比(すなわちより小さなIDと孔の長さの比)は約1から20とすることができる。このような構成は、プラズマ流出物のイオン種の通り抜けを実質的に遮断および/または制御し、同時にラジカル種または中性化学種の通り抜けを許すことができる。例えば、アスペクト比を変更することで、貫通孔を通り抜けるプラズマの量を調節することができる。プラズマの通り抜けは、貫通孔の直上の領域内のプラズマの圧力を変化させることによっても調節することができる。
【0048】
次に具体的な輪郭を参照する。貫通孔702は、孔の上端の大きなIDの領域704と孔の下端の小さなIDの領域706とを含み、大きなIDと小さなIDの間に段状の縁がある。貫通孔710は、孔の上端の大きなIDの領域712と孔の下端の大きなIDの領域716とを含み、これらの領域間に小さなIDの領域714がある。大きなIDの領域と小さなIDの領域との間の遷移は、それらの領域間の遷移を急にするために段状またはブラント(blunt)とすることができる。
【0049】
貫通孔720は、孔の上端の大きなIDの領域722と孔の下端の小さなIDの領域726とを含み、大きなIDの領域と小さなIDの領域の間に、角度θで遷移するテーパの付いた領域(以後、テーパ領域)724がある。小さなIDの領域726の高さ728は、孔の全高727、テーパ領域724の角度θ、大きなIDおよび小さなIDによって決まる。一実施形態では、テーパ領域724が、約15°から約30°の間、好ましくは約22°の角度を含み、全高727が約4mmから約8mmの間、好ましくは約6.35mmであり、大きなIDが約1mmから約4mmの間、好ましくは約2.54mmであり、小さなIDが約0.2mmから1.2mmの間、好ましくは約0.89mmであり、その結果、小さなIDの領域726の高さ728が約1mmから約3mmの間、好ましくは約2.1mmである。
【0050】
貫通孔730は、孔の上端の第1のID領域732と、第1のID領域732と同心に整列し、第1のID領域732の垂直方向下方に位置する第2のID領域734と、第2のID領域734と同心に整列し、第2のID領域734の垂直方向下方に位置する第3のID領域736とを含む。第1のID領域732は大きなIDを含み、第2のID領域734は小さなIDを含み、第3のID領域736は、第2のID領域734よりわずかに大きなIDを含む。第3のID領域736は孔の下端まで延び、または出口ID737までの外側へ広がるテーパを有することができる。第3のID領域736と出口ID737の間のテーパは角度θ
3で広がり、角度θ
3は約15°から約30°の間とすることができ、約22°であると好ましい。第2のID領域734は、第1のID領域732から角度θ
1で遷移する面取りされた縁を含むことができ、角度θ
1は約110°から約140°の間とすることができる。同様に、第2のID領域734は、第3のID領域736まで角度θ
2で遷移する面取りされた縁を含むことができ、角度θ
2も約110°から約140°の間とすることができる。一実施形態では、第1の領域732の大きなIDが約2.5mmから約7mmの間、好ましくは約3.8mmであり、第2のID領域734の小さなIDが約0.2mmから約5mmの間、好ましくは約0.4mmであり、第3のID領域736のわずかに大きなIDが約0.75mmから約2mmの間、好ましくは約1.1mmであり、出口IDが約2.5mmから約5mmの間、好ましくは約3.8mmである。
【0051】
大きなIDの領域と小さなIDの領域の間の遷移(ブラント、段状、テーパなど)は、イオン種が孔を通り抜けることを実質的に遮断し、同時にラジカル種または中性種の通り抜けを許すことができる。例えば、次に
図7Bを参照すると、大きなIDの領域722と小さなIDの領域726の間に遷移領域724を含む貫通孔720の拡大図が示されている。テーパ領域724は、プラズマ725が貫通孔720を通り抜けるのを実質的に防ぐことができる。例えば、プラズマ725が貫通孔720に侵入すると、テーパ領域724の壁と接触することによってイオン種は非活性化または接地し、それによってプラズマが貫通孔を通り抜けることを制限し、貫通孔720よりも上方の領域にプラズマを閉じ込めることができる。しかしながら、ラジカル種または中性種は貫通孔720を通り抜けることができる。したがって、貫通孔720はプラズマ720をフィルタリングして、不必要な種の通り抜けを防止または制御する。例示的な一実施形態では、貫通孔の小さなIDの領域726が1mm以下のIDを含む。貫通孔を通り抜けるラジカル種および/または中性種の濃度をかなりのレベルに維持するため、小さなIDの領域の長さおよび/またはテーパ角を制御することができる。
【0052】
プラズマの通り抜けを防ぐだけでなく、本明細書で説明した貫通孔を使用して、所望のレベルのプラズマが貫通孔を通り抜けることができるように、プラズマの通り抜けを調節することもできる。貫通孔を通り抜けるプラズマの流れの調節は、所望の割合のプラズマが、非活性化したりまたは接地したりすることなくイオン抑制器を通り抜けることができるように、イオン抑制器プレートの上方のガス領域内のプラズマの圧力を増大させることを含むことができる。
【0053】
次に
図8を参照すると、CCPユニット800の略図が示されている。具体的には、図示のCCPユニット800は、プラズマを閉じ込めるプラズマ発生領域810を画定するトッププレート802およびボトムプレート804を含む。前述のとおり、RPS(図示せず)によってプラズマを発生させ、そのプラズマを、貫通孔806を通してプラズマ発生領域810に送達することができる。あるいはまたはそれに加えて、例えばトッププレート802およびボトムプレート804を、発電ユニット(図示せず)に結合された第1および第2の電極として利用することによって、CCPユニット800内でプラズマを発生させることもできる。
【0054】
トッププレート802は、プロセスガスおよび/またはプラズマがプラズマ発生領域810内に送達されることを許し、同時にプラズマがトッププレート802を通って逆流することを防ぐ貫通孔806を含むことができる。貫通孔806は、貫通孔730と同様の輪郭を有することができ、第1、第2および第3のID領域(それぞれ820、822および824)、ならびに隣接する領域間の面取りされた縁(828および829)、および第3のID領域824と出口IDの間で遷移するテーパ領域826を有することができる。第3のID領域824と出口IDの間のテーパ領域826および/または第2のID領域と第3のID領域(それぞれ822および824)の間の面取りされた縁は、プラズマが貫通孔806内に侵入したときにイオン種を非活性化または接地することによって、プラズマの逆流を防ぐことができる。
【0055】
同様に、ボトムプレート804は、ラジカル種または中性種が貫通孔を通り抜けることを許し、同時にイオン種の通り抜けを防止または制御する貫通孔808を含むことができる。貫通孔808は、貫通孔720と同様の輪郭を有することができ、大きなIDの領域830、小さなIDの領域832、および大きなIDの領域830と小さなIDの領域832の間で遷移するテーパ領域834を有することができる。テーパ領域834は、以前に説明したようにイオン種を非活性化または接地することによって貫通孔808を通り抜けるプラズマの流れを防ぐことができ、同時にラジカル種または中性種が貫通孔808を通り抜けることを許す。
【0056】
プラズマが貫通孔806および/または808を通り抜けることをさらに防ぐため、トッププレート802および/またはボトムプレート804は電荷を受け取って、プラズマを電気的にバイアスし、プラズマ発生領域810内にプラズマを閉じ込め、かつ/またはボトムプレートを通り抜ける活性化ガス中のイオン濃度を調整することができる。CCPユニット800内でトッププレート802およびボトムプレート804を使用することによって、プラズマ発生領域810内でプラズマを実質的に発生させかつ/または維持することができ、同時にラジカル種および中性種をガス反応領域に送達して、1種または数種の前駆体ガスと混合し、それによって基板表面から材料をエッチングし、または基板表面に材料を堆積させる。
【0057】
例示的なプロセス
本発明のいくつかの実施形態によれば、前述のイオン抑制器を使用して、エッチングプロセスまたは堆積プロセス用のラジカル種および/または中性種を提供することができる。例えば、一実施形態では、イオン抑制器を使用して、窒化ケイ素を選択的にエッチングするためのフッ素ラジカルを提供する。フッ素ラジカルを使用することによって、酸化ケイ素に対する窒化ケイ素の約80:1以上の高いエッチング速度選択性を得ることができる。このようなプロセスの1つの用途は、置換ゲートプロセス中の窒化ケイ素の除去である。ゲート酸化物などの露出した酸化ケイ素領域を除去することなく、窒化ケイ素ゲートを選択的に除去することができる。この窒化ケイ素を金属などのゲート材料に置き換えることができる。
【0058】
イオン抑制器を使用して、イオン濃度よりも高いラジカル濃度を有する反応性ガスを提供することができる。プラズマの荷電粒子の大部分はイオン抑制器によってフィルタリングまたは除去されるため、エッチングプロセスの間、基板は通常、バイアスされない。ラジカルおよび他の中性種を使用するこのようなプロセスは、スパッタリングおよび衝撃(bombardment)を含む従来のプラズマエッチングプロセスに比べて、プラズマ損傷を減らすことができる。さらに、本発明の実施形態は、液体の表面張力によって小さなフィーチャの曲りおよび剥離が生じることがある従来の湿式エッチングプロセスよりも有利である。
【0059】
図9は、窒化ケイ素層および酸化ケイ素層を含む基板から窒化ケイ素を選択的にエッチングする本発明の一実施形態に基づく例示的な方法を示す簡略化した流れ図である。この方法は、基板処理チャンバのプラズマ発生領域内にフッ素含有ガスを流入させること(902)を含む。このフッ素含有ガスは、HF、F
2、NF
3、CF
4、CHF
3、C
2F
6、C
3F
6、BrF
3、ClF
3、SF
6などを含むことができる。他の実施形態は、フッ素含有ガスの代わりに、フッ素を含まないCl
2、HBr、SiCl
4などの他のハロゲン含有ガスを含むことができる。
図9の例示的な方法では、フッ素含有ガスがさらに、O
2、O
3、N
2O、NOなどの1種または数種の酸素源を含むことができる。酸素を使用することによって、酸化ケイ素のエッチング速度に対する影響を最小限に抑えつつ、窒化ケイ素のエッチング速度を増大させることができる。フッ素含有ガスはさらに、H
2、He、N
2、Arなどの1種または数種の不活性ガスを含むことができる。不活性ガスを使用してプラズマ安定性を向上させることができる。これらのさまざまなガスの流量および比を使用して、エッチング速度およびエッチング選択性を制御することができる。一実施形態では、フッ素含有ガスが、約5sccmから500sccmの間の流量のNF
3、約0sccmから5000sccmの間の流量のO
2、約0sccmから5000sccmの間の流量のHe、および約0sccmから5000sccmの間の流量のArを含む。処理チャンバ構成、基板サイズ、エッチングするフィーチャの形状寸法およびレイアウトを含むいくつかの因子によっては、他のガスおよび/または流量を使用することができることを当業者は理解するであろう。
【0060】
この方法はさらに、フッ素含有ガスにエネルギーを印加して、プラズマ発生領域内でプラズマを発生させること(904)を含む。当業者には理解されるとおり、このプラズマは、ラジカルおよびイオンを含むいくつかの荷電種および中性種を含むことがある。このプラズマは、知られている技法(例えばRF、誘導結合、容量結合など)を使用して発生させることができる。一実施形態では、約15Wから5000Wの間のソースパワー、約0.2トルから30トルの間の圧力のCCPユニットを使用してエネルギーが供給される。CCPユニットは、処理チャンバのガス反応領域から離れた位置に配置することができる。例えば、イオン抑制器によって、CCPユニットおよびプラズマ発生領域をガス反応領域から分離することができる。
【0061】
この方法はさらに、このプラズマをフィルタリングして、フッ素イオン濃度よりも高いフッ素ラジカル濃度を有する反応性ガスを提供すること(906)を含む。プラズマは、基板処理チャンバのプラズマ発生領域とガス反応領域の間に配置されたイオン抑制器を使用してフィルタリングすることができる。このイオン抑制器は、プラズマ発生領域とガス反応領域の間でフッ素ラジカルおよび中性種が移動することを可能にする複数のチャネルを含むことができる。このイオン抑制器は、プラズマ発生領域から移動するイオンの一部または全部を除去するように構成することができる。例えば、一実施形態では、この反応性ガスがイオンを実質的に含まないような態様で、イオンのかなりの部分が除去される。
【0062】
この方法はさらに、この反応性ガスを、基板処理チャンバのガス反応領域内に流入させること(908)を含む。一実施形態では、イオン抑制器がシャワーヘッドとして構成され、イオン抑制器を出た反応性ガスが、基板に隣接するガス反応領域内に流入する。あるいは、イオン抑制器を出た反応性ガスが、シャワーヘッドまたは他のガス分配器を通り抜けてガス反応領域内に流入する。
【0063】
この方法はさらに、基板処理チャンバのガス反応領域内で基板を反応性ガスにさらすこと(910)を含む。一実施形態では、基板の温度が約−10℃から200℃の間であり、基板処理チャンバ内の圧力が約0.2トルから30トルの間である。上で説明したいくつかの因子に応じて、他の温度および/または圧力を使用することもできることを当業者は理解するであろう。この反応性ガスは、この反応性ガスが酸化ケイ素層をエッチングするよりも速いエッチング速度で窒化ケイ素層をエッチングする。
【0064】
図10は、酸化ケイ素のエッチング速度よりも速い窒化ケイ素のエッチング速度を提供する本発明の一実施形態に基づく例示的なエッチングプロセスを示す簡略化した流れ図である。このプロセスは、フッ素含有ガスから、フッ素ラジカルおよびフッ素イオンを含むプラズマを発生させること(1002)を含む。上で説明したとおり、このプラズマは、ガス反応領域から分離された基板処理チャンバのプラズマ発生領域内で形成することができる。このプロセスはさらに、このプラズマからフッ素イオンの一部を除去して、フッ素イオン濃度よりも高いフッ素ラジカル濃度を有する反応性ガスを提供すること(1004)を含む。フッ素イオンの前記一部は、イオン抑制器を使用して除去することができる。このプロセスはさらに、窒化ケイ素層および酸化ケイ素層を含む基板を反応性ガスにさらし、この反応性ガスが、この反応性ガスが酸化ケイ素層をエッチングするよりも速いエッチング速度で窒化ケイ素層をエッチングすること(1006)を含む。
【0065】
図9〜
図10に示した例示的なプロセスは、
図1〜
図5に示した処理チャンバまたは
図6A、
図6B、
図7A、
図7Bおよび
図8〜
図9に示したイオン抑制要素とともに使用することだけに限定されないことを理解すべきである。本発明の実施形態に基づくプロセスは、他のハードウェア構成を使用して実行することもできる。また、
図9〜
図10に示した具体的なステップは、本発明の実施形態に基づく特定の方法を提供する。代替実施形態によれば、上で概説したステップをシステムソフトウェアによって連続的に繰り返すことができ、他のステップシーケンスを実行することができる。例えば、上で概説したステップを異なる順序で実行することができる。さらに、
図9〜
図10に示した個々のステップは、その個々のステップに対して適当なさまざまなシーケンスで実行することができる複数のサブステップを含むことができる。さらに、その特定の用途に応じて、追加のステップを追加または除去することもできる。当業者は、多くの変更形態、改変形態および代替形態を認識するであろう。
【0066】
本明細書の全体を通して論じた方法および装置は、単なる例として提供したものであることに留意すべきである。さまざまな実施形態は、さまざまなステップまたは構成要素を適宜、省略し、置換し、または追加することができる。例えば、ある実施形態に関して説明した諸特徴を、他のさまざまな他の実施形態において組み合わせることができることを理解すべきである。さらに、実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語またはこれらの組合せによって実現することができる。ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェアまたはマイクロコードで実現されるときには、必要なタスクを実行するためのプログラムコードまたはコードセグメントを、記憶媒体などのコンピュータ可読媒体に記憶することができる。必要なタスクを実行するように、プロセッサを適合させることができる。用語「コンピュータ可読媒体」は、限定はされないが、携帯可能なまたは固定された記憶装置、光記憶装置、simカード、他のスマートカード、および命令またはデータを記憶、収容または搬送することができる他のさまざまな他の媒体を含む。