(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
  [積層体の形成方法(参考)]
  まず、参考として、積層体30の形成方法について、
図3を用いて説明する。
図3は、露出する保護層を除去しない場合における積層体の形成方法を示す図である。
 
【0017】
  まず、
図3の(a),(b)に示すように、サポートプレート32に分離層34を形成する。
 
【0018】
  次に、
図3の(c)に示すように、分離層34上に保護層35を形成する。保護層35を形成する場合、分離層34の表面であってサポートプレート32と重畳していない面を覆うように形成する。
 
【0019】
  図3の(d)に示すように、保護層35又は基板31の少なくともどちらかに接着層33を形成し、当該接着層33を介して、保護層35と基板31とを貼り合わせることによって積層体30を製造する。
 
【0020】
  図3の(e)に示すように、基板31において、接着層33が形成されている面と反対側の面を研削し、薄化する。
 
【0021】
  基板31を研削し、薄化した後、基板31に対して加熱処理及び真空処理のうちの少なくとも一方を施す。これにより
図3の(f)に示すように、CVD膜36が基板31上に形成されるとともに、CVD膜36と露出した保護層35とが接触する。これにより、サポートプレート32の曲面に形成されていた分離層34及び保護層35(特に、保護層35)が剥離し、剥離物37が発生してしまう。分離層34及び保護層35が剥離することにより、パーティクル等が生じて基板31に付着し、基板31を汚染するおそれがある。
 
【0022】
  よって、積層体に対して加熱処理又は真空処理などの所望の処理を行なうとき、支持体から保護層及び分離層が剥離しないように、積層体を適切に保護する必要がある。なお、積層体を形成する各構成(例えば、保護層、分離層など)については、以下の実施の形態にて詳述する。
 
【0023】
  [実施の形態]
  以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本実施形態により、
図1の(f)に示されるような積層体10が形成される。
 
【0024】
  本実施形態に係る積層体10の形成方法は、基板11と、接着層13と、光を吸収することにより変質する分離層14と、基板11を支持するサポートプレート(支持体)12とをこの順に積層して積層体10を形成する積層体10の形成方法であって、分離層14の表面であってサポートプレート12と接着していない面のうち、少なくとも接着層13と重畳していない面を覆う保護層15を形成する保護層形成工程と、保護層15における、積層体10を形成したときに露出する部分を除去する保護層除去工程とを包含する。まず、積層体10を形成する各構成について、以下に詳述する。
 
【0025】
  〔基板〕
  基板11は、サポートプレート12に支持された状態で、薄化、実装等のプロセスに供されるものである。積層体10が備える基板11は、ウエハに限定されず、薄いフィルム基板、フレキシブル基板等の任意の基板を採用することができる。また、基板11における接着層13側の面には、電気回路等の電子素子の微細構造が形成されていてもよい。
 
【0026】
  〔サポートプレート〕
  サポートプレート12は、基板11を支持する支持体であり、光透過性を有している。そのため、積層体10の外からサポートプレート12に向けて光が照射されたときに、当該光がサポートプレート12を通過して分離層14に到達する。また、サポートプレート12は、必ずしも全ての光を透過させる必要はなく、分離層14に吸収されるべき(所定の波長を有している)光を透過させることができればよい。
 
【0027】
  サポートプレート12は、基板11を支持するものであり、基板11の薄化、搬送、実装等のプロセス時に、基板11の破損又は変形を防ぐために必要な強度を有していればよい。以上のような観点から、サポートプレート12としては、ガラス、シリコン、アクリル樹脂からなるもの等が挙げられる。
 
【0028】
  〔分離層〕
  分離層14は、サポートプレート12を介して照射される光を吸収することによって変質する材料から形成されている層である。本明細書において、分離層14が「変質する」とは、分離層14をわずかな外力を受けて破壊され得る状態、又は分離層14と接する層との接着力が低下した状態にさせる現象を意味する。光を吸収することによって生じる分離層14の変質の結果として、分離層14は、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失う。よって、わずかな外力を加える(例えば、サポートプレート12を持ち上げるなど)ことによって、分離層14が破壊されて、サポートプレート12と基板11とを容易に分離することができる。
 
【0029】
  また、分離層14の変質は、吸収した光のエネルギーによる(発熱性又は非発熱性の)分解、架橋、立体配置の変化又は官能基の解離(そして、これらにともなう分離層14の硬化、脱ガス、収縮又は膨張)等であり得る。分離層14の変質は、分離層14を構成する材料による光の吸収の結果として生じる。よって、分離層14の変質の種類は、分離層14を構成する材料の種類に応じて変化し得る。
 
【0030】
  分離層14は、サポートプレート12における、接着層13を介して基板11が貼り合わされる側の表面に設けられている。すなわち、分離層14は、サポートプレート12と接着層13との間に設けられている。
 
【0031】
  分離層14の厚さは、例えば、0.05〜50μmであることがより好ましく、0.3〜1μmであることがさらに好ましい。分離層14の厚さが0.05〜50μmの範囲内に収まっていれば、短時間の光の照射及び低エネルギーの光の照射によって、分離層14に所望の変質を生じさせることができる。また、分離層14の厚さは、生産性の観点から1μm以下の範囲内に収まっていることが特に好ましい。
 
【0032】
  なお、積層体10において、分離層14とサポートプレート12との間に他の層がさらに形成されていてもよい。この場合、他の層は光を透過する材料から構成されていればよい。これによって、分離層14への光の入射を妨げることなく、積層体10に好ましい性質などを付与する層を、適宜追加することができる。分離層14を構成している材料の種類によって、用い得る光の波長が異なる。よって、他の層を構成する材料は、すべての光を透過させる必要はなく、分離層14を構成する材料を変質させ得る波長の光を透過させることができる材料から適宜選択し得る。
 
【0033】
  また、分離層14は、光を吸収する構造を有する材料のみから形成されていることが好ましいが、本質的な特性を損なわない範囲において、光を吸収する構造を有していない材料を添加して、分離層14を形成してもよい。また、分離層14における接着層13に対向する側の面が平坦である(凹凸が形成されていない)ことが好ましく、これにより、分離層14の形成が容易に行なえ、且つ貼り付け時においても均一に貼り付けることが可能となる。
 
【0034】
  分離層14は、以下に示すような分離層14を構成する材料を予めフィルム状に形成したものをサポートプレート12に貼り合わせて用いてもよいし、サポートプレート12上に分離層14を構成する材料を塗布してフィルム状に固化したものを用いてもよい。サポートプレート12上に分離層14を構成する材料を塗布する方法は、分離層14を構成する材料の種類に応じて、化学気相成長(CVD)法による堆積等の従来公知の方法から適宜選択することができる。
 
【0035】
  分離層14は、レーザから照射される光を吸収することによって変質するものであってもよい。すなわち、分離層14を変質させるために分離層14に照射される光は、レーザから照射されたものであってもよい。分離層14に照射する光を発射するレーザの例としては、YAGレーザ、リビーレーザ、ガラスレーザ、YVO
4レーザ、LDレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザ、色素レーザ等の液体レーザ、CO
2レーザ、エキシマレーザ、Arレーザ、He−Neレーザ等の気体レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザ等のレーザ光、又は、非レーザ光等が挙げられる。分離層14に照射する光を発射するレーザは、分離層14を構成している材料に応じて適宜選択することが可能であり、分離層14を構成する材料を変質させ得る波長の光を照射するレーザを選択すればよい。
 
【0036】
  (光吸収性を有している構造をその繰返し単位に含んでいる重合体)
  分離層14は、光吸収性を有している構造をその繰返し単位に含んでいる重合体を含有していてもよい。当該重合体は、光の照射を受けて変質する。当該重合体の変質は、上記構造が照射された光を吸収することによって生じる。分離層14は、重合体の変質の結果として、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失っている。よって、わずかな外力を加える(例えば、サポートプレート12を持ち上げるなど)ことによって、分離層14が破壊されて、サポートプレート12と基板11とを容易に分離することができる。
 
【0037】
  光吸収性を有している上記構造は、光を吸収して、繰返し単位として当該構造を含んでいる重合体を変質させる化学構造である。当該構造は、例えば、置換もしくは非置換のベンゼン環、縮合環又は複素環からなる共役π電子系を含んでいる原子団である。より詳細には、当該構造は、カルド構造、又は上記重合体の側鎖に存在するベンゾフェノン構造、ジフェニルスルフォキシド構造、ジフェニルスルホン構造(ビスフェニルスルホン構造)、ジフェニル構造もしくはジフェニルアミン構造であり得る。
 
【0038】
  上記構造が上記重合体の側鎖に存在する場合、当該構造は以下の式によって表され得る。
 
【0040】
  式中、Rはそれぞれ独立して、アルキル基、アリール基、ハロゲン、水酸基、ケトン基、スルホキシド基、スルホン基又はN(R
1)(R
2)であり(ここで、R
1及びR
2はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である)、Zは、存在しないか、又は−CO−、−SO
2−、−SO−もしくは−NH−であり、nは0又は1〜5の整数である。
 
【0041】
  また、上記重合体は、例えば、以下の式のうち、(a)〜(d)のいずれかによって表される繰返し単位を含んでいるか、(e)によって表されるか、又は(f)の構造をその主鎖に含んでいる。
 
【0043】
  式中、lは1以上の整数であり、mは0又は1〜2の整数であり、Xは、(a)〜(e)において上記“化1”に示した式のいずれかであり、(f)において上記“化1”に示した式のいずれかであるか、又は存在せず、Y
1及びY
2はそれぞれ独立して、−CO−又は−SO
2−である。lは好ましくは10以下の整数である。
 
【0044】
  上記“化1”に示されるベンゼン環、縮合環及び複素環の例としては、フェニル、置換フェニル、ベンジル、置換ベンジル、ナフタレン、置換ナフタレン、アントラセン、置換アントラセン、アントラキノン、置換アントラキノン、アクリジン、置換アクリジン、アゾベンゼン、置換アゾベンゼン、フルオリム、置換フルオリム、フルオリモン、置換フルオリモン、カルバゾール、置換カルバゾール、N−アルキルカルバゾール、ジベンゾフラン、置換ジベンゾフラン、フェナンスレン、置換フェナンスレン、ピレン及び置換ピレンが挙げられる。例示した置換基が置換を有している場合、その置換基は、例えば、アルキル、アリール、ハロゲン原子、アルコキシ、ニトロ、アルデヒド、シアノ、アミド、ジアルキルアミノ、スルホンアミド、イミド、カルボン酸、カルボン酸エステル、スルホン酸、スルホン酸エステル、アルキルアミノ及びアリールアミノから選択される。
 
【0045】
  上記“化1”に示される置換基のうち、フェニル基を2つ有している5番目の置換基であって、Zが−SO
2−である場合の例としては、ビス(2,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,6‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4‐ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3‐ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(2‐ヒドロキシフェニル)スルホン、及びビス(3,5‐ジメチル‐4‐ヒドロキシフェニル)スルホンなどが挙げられる。
 
【0046】
  上記“化1”に示される置換基のうち、フェニル基を2つ有している5番目の置換基であって、Zが−SO−である場合の例としては、ビス(2,3‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,3‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,4‐ジヒドロキシ‐6‐メチルフェニル)スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,5‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3,5‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,3,4‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,3,4‐トリヒドロキシ‐6‐メチルフェニル)‐スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,3,4‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,4,6‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,4,6‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシドなどが挙げられる。
 
【0047】
  上記“化1”に示される置換基のうち、フェニル基を2つ有している5番目の置換基であって、Zが−C(=O)−である場合の例としては、2,4‐ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4‐トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’‐テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,5,6’‐テトラヒドロキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐メトキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐オクトキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’‐ジヒドロキシ‐4‐メトキシベンゾフェノン、2,6‐ジヒドロキシ‐4‐メトキシベンゾフェノン、2,2’‐ジヒドロキシ‐4,4’‐ジメトキシベンゾフェノン、4‐アミノ‐2’‐ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ジメチルアミノ‐2’‐ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ジエチルアミノ‐2’‐ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ジメチルアミノ‐4’‐メトキシ‐2’‐ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ジメチルアミノ‐2’,4’‐ジヒドロキシベンゾフェノン、及び4‐ジメチルアミノ‐3’,4’‐ジヒドロキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
 
【0048】
  上記構造が上記重合体の側鎖に存在している場合、上記構造を含んでいる繰返し単位の、上記重合体に占める割合は、分離層14の光の透過率が0.001〜10%になる範囲にある。当該割合がこのような範囲に収まるように重合体が調製されていれば、分離層14が十分に光を吸収して、確実かつ迅速に変質し得る。すなわち、積層体10からのサポートプレート12の除去が容易であり、当該除去に必要な光の照射時間を短縮させることができる。
 
【0049】
  上記構造は、その種類の選択によって、所望の範囲の波長を有している光を吸収することができる。例えば、上記構造が吸収可能な光の波長は、100〜2,000nmであることがより好ましい。この範囲のうち、上記構造が吸収可能な光の波長は、より短波長側であり、例えば、100〜500nmである。例えば、上記構造は、好ましくは約300〜370nmの波長を有している紫外光を吸収することによって、当該構造を含んでいる重合体を変質させ得る。
 
【0050】
  上記構造が吸収可能な光は、例えば、高圧水銀ランプ(波長:254nm〜436nm)、KrFエキシマレーザ(波長:248nm)、ArFエキシマレーザ(波長:193nm)、F
2エキシマレーザ(波長:157nm)、XeClレーザ(308nm)、XeFレーザ(波長:351nm)もしくは固体UVレーザ(波長:355nm)から発せられる光、又はg線(波長:436nm)、h線(波長:405nm)もしくはi線(波長:365nm)などである。
 
【0051】
  上述した分離層14は、繰り返し単位として上記構造を含んでいる重合体を含有しているが、分離層14はさらに、上記重合体以外の成分を含み得る。当該成分としては、フィラー、可塑剤、及びサポートプレート12の剥離性を向上し得る成分などが挙げられる。これらの成分は、上記構造による光の吸収、及び重合体の変質を妨げないか、又は促進する、従来公知の物質又は材料から適宜選択される。
 
【0052】
  (無機物)
  分離層14は、無機物からなっていてもよい。分離層14は、無機物によって構成されることにより、光を吸収することによって変質するようになっており、その結果として、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失う。よって、わずかな外力を加える(例えば、サポートプレート12を持ち上げるなど)ことによって、分離層14が破壊されて、サポートプレート12と基板11とを容易に分離することができる。
 
【0053】
  上記無機物は、光を吸収することによって変質する構成であればよく、例えば、金属、金属化合物及びカーボンからなる群より選択される1種類以上の無機物を好適に用いることができる。金属化合物とは、金属原子を含む化合物を指し、例えば、金属酸化物、金属窒化物であり得る。このような無機物の例示としては、これに限定されるものではないが、金、銀、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム、チタン、クロム、SiO
2、SiN、Si
3N
4、TiN、及びカーボンからなる群より選ばれる1種類以上の無機物が挙げられる。なお、カーボンとは炭素の同素体も含まれ得る概念であり、例えば、ダイヤモンド、フラーレン、ダイヤモンドライクカーボン、カーボンナノチューブ等であり得る。
 
【0054】
  上記無機物は、その種類によって固有の範囲の波長を有する光を吸収する。分離層14に用いた無機物が吸収する範囲の波長の光を分離層に照射することにより、上記無機物を好適に変質させ得る。
 
【0055】
  無機物からなる分離層14に照射する光としては、上記無機物が吸収可能な波長に応じて、例えば、YAGレーザ、リビーレーザ、ガラスレーザ、YVO
4レーザ、LDレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザ、色素レーザ等の液体レーザ、CO
2レーザ、エキシマレーザ、Arレーザ、He−Neレーザ等の気体レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザ等のレーザ光、又は、非レーザ光を適宜用いればよい。
 
【0056】
  無機物からなる分離層14は、例えばスパッタ、化学蒸着(CVD)、メッキ、プラズマCVD、スピンコート等の公知の技術により、サポートプレート12上に形成され得る。無機物からなる分離層14の厚さは特に限定されず、使用する光を十分に吸収し得る膜厚であればよいが、例えば、0.05〜10μmの膜厚とすることがより好ましい。また、分離層14を構成する無機物からなる無機膜(例えば、金属膜)の両面又は片面に予め接着剤を塗布し、サポートプレート12及び基板11に貼り付けてもよい。
 
【0057】
  なお、分離層14として金属膜を使用する場合には、分離層14の膜質、レーザ光源の種類、レーザ出力等の条件によっては、レーザの反射や膜への帯電等が起こり得る。そのため、反射防止膜や帯電防止膜を分離層14の上下又はどちらか一方に設けることで、それらの対策をとることが好ましい。
 
【0058】
  (赤外線吸収性の構造を有する化合物)
  分離層14は、赤外線吸収性の構造を有する化合物によって形成されていてもよい。当該化合物は、赤外線を吸収することにより変質する。分離層14は、化合物の変質の結果として、赤外線の照射を受ける前の強度又は接着性を失っている。よって、わずかな外力を加える(例えば、サポートプレートを持ち上げるなど)ことによって、分離層14が破壊されて、サポートプレート12と基板11とを容易に分離することができる。
 
【0059】
  赤外線吸収性を有している構造又は赤外線吸収性を有している構造を含む化合物としては、例えば、アルカン、アルケン(ビニル、トランス、シス、ビニリデン、三置換、四置換、共役、クムレン、環式)、アルキン(一置換、二置換)、単環式芳香族(ベンゼン、一置換、二置換、三置換)、アルコール及びフェノール類(自由OH、分子内水素結合、分子間水素結合、飽和第二級、飽和第三級、不飽和第二級、不飽和第三級)、アセタール、ケタール、脂肪族エーテル、芳香族エーテル、ビニルエーテル、オキシラン環エーテル、過酸化物エーテル、ケトン、ジアルキルカルボニル、芳香族カルボニル、1,3−ジケトンのエノール、o−ヒドロキシアリールケトン、ジアルキルアルデヒド、芳香族アルデヒド、カルボン酸(二量体、カルボン酸アニオン)、ギ酸エステル、酢酸エステル、共役エステル、非共役エステル、芳香族エステル、ラクトン(β−、γ−、δ−)、脂肪族酸塩化物、芳香族酸塩化物、酸無水物(共役、非共役、環式、非環式)、第一級アミド、第二級アミド、ラクタム、第一級アミン(脂肪族、芳香族)、第二級アミン(脂肪族、芳香族)、第三級アミン(脂肪族、芳香族)、第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩、アンモニウムイオン、脂肪族ニトリル、芳香族ニトリル、カルボジイミド、脂肪族イソニトリル、芳香族イソニトリル、イソシアン酸エステル、チオシアン酸エステル、脂肪族イソチオシアン酸エステル、芳香族イソチオシアン酸エステル、脂肪族ニトロ化合物、芳香族ニトロ化合物、ニトロアミン、ニトロソアミン、硝酸エステル、亜硝酸エステル、ニトロソ結合(脂肪族、芳香族、単量体、二量体)、メルカプタン及びチオフェノール及びチオール酸などの硫黄化合物、チオカルボニル基、スルホキシド、スルホン、塩化スルホニル、第一級スルホンアミド、第二級スルホンアミド、硫酸エステル、炭素−ハロゲン結合、Si−A
1結合(A
1は、H、C、O又はハロゲン)、P−A
2結合(A
2は、H、C又はO)、又はTi−O結合であり得る。
 
【0060】
  上記炭素−ハロゲン結合を含む構造としては、例えば、−CH
2Cl、−CH
2Br、−CH
2I、−CF
2−、−CF
3、−CH=CF
2、−CF=CF
2、フッ化アリール、及び塩化アリールなどが挙げられる。
 
【0061】
  上記Si−A
1結合を含む構造としては、SiH、SiH
2、SiH
3、Si−CH
3、Si−CH
2−、Si−C
6H
5、SiO脂肪族、Si−OCH
3、Si−OCH
2CH
3、Si−OC
6H
5、Si−O−Si、Si−OH、SiF、SiF
2、及びSiF
3などが挙げられる。Si−A
1結合を含む構造としては、特に、シロキサン骨格及びシルセスキオキサン骨格を形成していることが好ましい。
 
【0062】
  上記P−A
2結合を含む構造としては、PH、PH
2、P−CH
3、P−CH
2−、P−C
6H
5、A
33−P−O(A
3は脂肪族又は芳香族)、(A
4O)
3−P−O(A
4はアルキル)、P−OCH
3、P−OCH
2CH
3、P−OC
6H
5、P−O−P、P−OH、及びP(=O)−OHなどが挙げられる。
 
【0063】
  上記構造は、その種類の選択によって、所望の範囲の波長を有している赤外線を吸収することができる。具体的には、上記構造が吸収可能な赤外線の波長は、例えば1μm〜20μmの範囲内であり、2μm〜15μmの範囲内をより好適に吸収できる。さらに、上記構造がSi−O結合、Si−C結合及びTi−O結合である場合には、9μm〜11μmの範囲内であり得る。なお、各構造が吸収できる赤外線の波長は当業者であれば容易に理解することができる。例えば、各構造における吸収帯として、非特許文献:SILVERSTEIN・BASSLER・MORRILL著「有機化合物のスペクトルによる同定法(第5版)−MS、IR、NMR、UVの併用−」(1992年発行)第146頁〜第151頁の記載を参照することができる。
 
【0064】
  分離層14の形成に用いられる、赤外線吸収性の構造を有する化合物としては、上述のような構造を有している化合物のうち、塗布のために溶媒に溶解でき、固化されて固層を形成できるものであれば、特に限定されるものではない。しかしながら、分離層14における化合物を効果的に変質させ、サポートプレート12と基板11との分離を容易にするには、分離層14における赤外線の吸収が大きいこと、すなわち、分離層14に赤外線を照射したときの赤外線の透過率が低いことが好ましい。具体的には、分離層14における赤外線の透過率が90%より低いことが好ましく、赤外線の透過率が80%より低いことがより好ましい。
 
【0065】
  一例を挙げて説明すれば、シロキサン骨格を有する化合物としては、例えば、下記化学式(1)で表される繰り返し単位及び下記化学式(2)で表される繰り返し単位の共重合体である樹脂、あるいは下記化学式(1)で表される繰り返し単位及びアクリル系化合物由来の繰り返し単位の共重合体である樹脂を用いることができる。
 
【0067】
  (化学式(2)中、R
1は、水素、炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下のアルコキシ基である)
  中でも、シロキサン骨格を有する化合物としては、上記化学式(1)で表される繰り返し単位及び下記化学式(3)で表される繰り返し単位の共重合体であるtert−ブチルスチレン(TBST)−ジメチルシロキサン共重合体がより好ましく、上記式(1)で表される繰り返し単位及び下記化学式(3)で表される繰り返し単位を1:1で含む、TBST−ジメチルシロキサン共重合体がさらに好ましい。
 
【0069】
  また、シルセスキオキサン骨格を有する化合物としては、例えば、下記化学式(4)で表される繰り返し単位及び下記化学式(5)で表される繰り返し単位の共重合体である樹脂を用いることができる。
 
【0071】
  (化学式(4)中、R
2は、水素又は炭素数1以上、10以下のアルキル基であり、化学式(5)中、R
3は、炭素数1以上、10以下のアルキル基、又はフェニル基である)
  シルセスキオキサン骨格を有する化合物としては、このほかにも、特許文献3:特開2007−258663号公報(2007年10月4日公開)、特許文献4:特開2010−120901号公報(2010年6月3日公開)、特許文献5:特開2009−263316号公報(2009年11月12日公開)及び特許文献6:特開2009−263596号公報(2009年11月12日公開)において開示されている各シルセスキオキサン樹脂を好適に利用することができる。
 
【0072】
  中でも、シルセスキオキサン骨格を有する化合物としては、下記化学式(6)で表される繰り返し単位及び下記化学式(7)で表される繰り返し単位の共重合体がより好ましく、下記化学式(6)で表される繰り返し単位及び下記化学式(7)で表される繰り返し単位を7:3で含む共重合体がさらに好ましい。
 
【0074】
  シルセスキオキサン骨格を有する重合体としては、ランダム構造、ラダー構造、及び籠型構造があり得るが、何れの構造であってもよい。
 
【0075】
  また、Ti−O結合を含む化合物としては、例えば、(i)テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、及びチタニウム−i−プロポキシオクチレングリコレートなどのアルコキシチタン、(ii)ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、及びプロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート)などのキレートチタン、(iii)i−C
3H
7O−[−Ti(O−i−C
3H
7)
2−O−]
n−i−C
3H
7、及びn−C
4H
9O−[−Ti(O−n−C
4H
9)
2−O−]
n−n−C
4H
9などのチタンポリマー、(iv)トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、チタニウムステアレート、ジ−i−プロポキシチタンジイソステアレート、及び(2−n−ブトキシカルボニルベンゾイルオキシ)トリブトキシチタンなどのアシレートチタン、(v)ジ−n−ブトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタンなどの水溶性チタン化合物などが挙げられる。
 
【0076】
  中でも、Ti−O結合を含む化合物としては、ジ−n−ブトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタン(Ti(OC
4H
9)
2[OC
2H
4N(C
2H
4OH)
2]
2)が好ましい。
 
【0077】
  上述した分離層14は、赤外線吸収性の構造を有する化合物を含有しているが、分離層14はさらに、上記化合物以外の成分を含み得る。当該成分としては、フィラー、可塑剤、及びサポートプレート12の剥離性を向上し得る成分などが挙げられる。これらの成分は、上記構造による赤外線の吸収、及び化合物の変質を妨げないか、又は促進する、従来公知の物質又は材料から適宜選択される。
 
【0078】
  (フルオロカーボン)
  分離層14は、フルオロカーボンからなっていてもよい。分離層14は、フルオロカーボンによって構成されることにより、光を吸収することによって変質するようになっており、その結果として、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失う。よって、わずかな外力を加える(例えば、サポートプレート12を持ち上げるなど)ことによって、分離層14が破壊されて、サポートプレート12と基板11とを容易に分離することができる。
 
【0079】
  また、一つの観点からいえば、分離層14を構成するフルオロカーボンは、プラズマCVD法によって好適に成膜され得る。なお、フルオロカーボンは、C
xF
y(パーフルオロカーボン)及びC
xH
yF
z(x、y及びzは整数)を含み、これらに限定されないが、例えば、CHF
3、CH
2F
2、C
2H
2F
2、C
4F
8、C
2F
6、C
5F
8等で有り得る。また、分離層14を構成するために用いるフルオロカーボンに対して、必要に応じて窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス、アルカン、アルケンなどの炭化水素、及び、酸素、二酸化炭素、水素を添加してもよい。また、これらのガスを複数混合して用いてもよい(フルオロカーボン、水素、窒素の混合ガス等)。また、分離層14は、単一種のフルオロカーボンから構成されていてもよいし、2種類以上のフルオロカーボンから構成されていてもよい。
 
【0080】
  フルオロカーボンは、その種類によって固有の範囲の波長を有する光を吸収する。分離層14に用いたフルオロカーボンが吸収する範囲の波長の光を分離層に照射することにより、フルオロカーボンを好適に変質させ得る。なお、分離層14における光の吸収率は80%以上であることが好ましい。
 
【0081】
  分離層14に照射する光としては、フルオロカーボンが吸収可能な波長に応じて、例えば、YAGレーザ、リビーレーザ、ガラスレーザ、YVO
4レーザ、LDレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザ、色素レーザ等の液体レーザ、CO
2レーザ、エキシマレーザ、Arレーザ、He−Neレーザ等の気体レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザ等のレーザ光、又は、非レーザ光を適宜用いればよい。フルオロカーボンを変質させ得る波長としては、これに限定されるものではないが、例えば、600nm以下の範囲のものを用いることができる。
 
【0082】
  (赤外線吸収物質)
  分離層14は、赤外線吸収物質を含有していてもよい。分離層14は、赤外線吸収物質を含有して構成されることにより、光を吸収することによって変質するようになっており、その結果として、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失う。よって、わずかな外力を加える(例えば、サポートプレート12を持ち上げるなど)ことによって、分離層14が破壊されて、サポートプレート12と基板11とを容易に分離することができる。
 
【0083】
  赤外線吸収物質は、赤外線を吸収することによって変質する構成であればよく、例えば、カーボンブラック、鉄粒子、又はアルミニウム粒子を好適に用いることができる。赤外線吸収物質は、その種類によって固有の範囲の波長を有する光を吸収する。分離層14に用いた赤外線吸収物質が吸収する範囲の波長の光を分離層14に照射することにより、赤外線吸収物質を好適に変質させ得る。
 
【0084】
  〔接着層〕
  接着層13は、基板11をサポートプレート12に接着固定すると同時に、基板11の表面を覆って保護する構成である。よって、接着層は、基板11の加工時又は搬送時に、サポートプレート12に対する基板11の固定、及び基板11の保護すべき面の被覆を維持する接着性及び強度を有している必要がある。一方で、サポートプレート12に対する基板11の固定が不要になったときに、基板11から容易に剥離又は除去され得る必要がある。
 
【0085】
  したがって、接着層13は、通常は強固な接着性を有しており、何らかの処理によって接着性が低下するか、又は特定の溶剤に対する可溶性を有する接着剤によって構成される。接着層13の厚さは、例えば、1〜200μmであることがより好ましく、10〜150μmであることがさらに好ましい。接着層13は、以下に示すような接着材料を、スピン塗布のような従来公知の方法により基板11上に塗布することによって、形成することができる。
 
【0086】
  接着剤として、例えばアクリル系、ノボラック系、ナフトキサン系、炭化水素系、ポリイミド系等の、当該分野において公知の種々の接着剤が、本実施の形態における接着層13を構成する接着剤として使用可能である。以下では、本実施の形態における接着層13が含有する樹脂の組成について説明する。
 
【0087】
  接着層13が含有する樹脂としては、接着性を備えたものであればよく、例えば、炭化水素樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂等、又はこれらを組み合わせたものなどが挙げられる。
 
【0088】
  (炭化水素樹脂)
  炭化水素樹脂は、炭化水素骨格を有し、単量体組成物を重合してなる樹脂である。炭化水素樹脂として、シクロオレフィン系ポリマー(以下、「樹脂(A)」ということがある)、ならびに、テルペン樹脂、ロジン系樹脂及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂(以下、「樹脂(B)」ということがある)等が挙げられるが、これに限定されない。
 
【0089】
  樹脂(A)としては、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分を重合してなる樹脂であってもよい。具体的には、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分の開環(共)重合体、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分を付加(共)重合させた樹脂などが挙げられる。
 
【0090】
  樹脂(A)を構成する単量体成分に含まれる前記シクロオレフィン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの二環体、ジシクロペンタジエン、ジヒドロキシペンタジエンなどの三環体、テトラシクロドデセンなどの四環体、シクロペンタジエン三量体などの五環体、テトラシクロペンタジエンなどの七環体、又はこれら多環体のアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)置換体、アルケニル(ビニルなど)置換体、アルキリデン(エチリデンなど)置換体、アリール(フェニル、トリル、ナフチルなど)置換体等が挙げられる。これらの中でも特に、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、又はこれらのアルキル置換体からなる群より選ばれるノルボルネン系モノマーが好ましい。
 
【0091】
  樹脂(A)を構成する単量体成分は、上述したシクロオレフィン系モノマーと共重合可能な他のモノマーを含有していてもよく、例えば、アルケンモノマーを含有することが好ましい。アルケンモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、α−オレフィンなどが挙げられる。アルケンモノマーは、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。
 
【0092】
  また、樹脂(A)を構成する単量体成分として、シクロオレフィンモノマーを含有することが、高耐熱性(低い熱分解、熱重量減少性)の観点から好ましい。樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するシクロオレフィンモノマーの割合は、5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましい。また、樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するシクロオレフィンモノマーの割合は、特に限定されないが、溶解性及び溶液での経時安定性の観点からは80モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがより好ましい。
 
【0093】
  また、樹脂(A)を構成する単量体成分として、直鎖状又は分岐鎖状のアルケンモノマーを含有してもよい。樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するアルケンモノマーの割合は、溶解性及び柔軟性の観点からは10〜90モル%であることが好ましく、20〜85モル%であることがより好ましく、30〜80モル%であることがさらに好ましい。
 
【0094】
  なお、樹脂(A)は、例えば、シクロオレフィン系モノマーとアルケンモノマーとからなる単量体成分を重合させてなる樹脂のように、極性基を有していない樹脂であることが、高温下でのガスの発生を抑制するうえで好ましい。
 
【0095】
  単量体成分を重合するときの重合方法や重合条件等については、特に制限はなく、常法に従い適宜設定すればよい。
 
【0096】
  樹脂(A)として用いることのできる市販品としては、例えば、ポリプラスチックス株式会社製の「TOPAS」、三井化学株式会社製の「APEL」、日本ゼオン株式会社製の「ZEONOR」および「ZEONEX」、JSR株式会社製の「ARTON」などが挙げられる。
 
【0097】
  樹脂(A)のガラス転移点(Tg)は、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることが特に好ましい。樹脂(A)のガラス転移点が60℃以上であると、接着剤積層体が高温環境に曝されたときに接着層の軟化をさらに抑制することができる。
 
【0098】
  樹脂(B)は、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である。具体的には、テルペン系樹脂としては、例えば、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、水添テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。ロジン系樹脂としては、例えば、ロジン、ロジンエステル、水添ロジン、水添ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステル、変性ロジン等が挙げられる。石油樹脂としては、例えば、脂肪族又は芳香族石油樹脂、水添石油樹脂、変性石油樹脂、脂環族石油樹脂、クマロン・インデン石油樹脂等が挙げられる。これらの中でも、水添テルペン樹脂、水添石油樹脂がより好ましい。
 
【0099】
  樹脂(B)の軟化点は特に限定されないが、80〜160℃であることが好ましい。樹脂(B)の軟化点が80℃以上であると、接着剤積層体が高温環境に曝されたときに軟化することを抑制することができ、接着不良を生じない。一方、樹脂(B)の軟化点が160℃以下であると、接着剤積層体を剥離するときの剥離速度が良好なものとなる。
 
【0100】
  樹脂(B)の分子量は特に限定されないが、300〜3,000であることが好ましい。樹脂(B)の分子量が300以上であると、耐熱性が十分なものとなり、高温環境下において脱ガス量が少なくなる。一方、樹脂(B)の分子量が3,000以下であると、接着剤積層体を剥離するときの剥離速度が良好なものとなる。なお、本実施形態における樹脂(B)の分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の分子量を意味するものである。
 
【0101】
  なお、樹脂として、樹脂(A)と樹脂(B)とを混合したものを用いてもよい。混合することにより、耐熱性及び剥離速度が良好なものとなる。例えば、樹脂(A)と樹脂(B)との混合割合としては、(A):(B)=80:20〜55:45(質量比)であることが、剥離速度、高温環境時の熱耐性、及び柔軟性に優れるので好ましい。
 
【0102】
  (ブロック共重合体)
  積層体が備える接着層を構成し得るブロック共重合体は、モノマー単位が連続して結合したブロック部位が2種以上結合した重合体であり、ブロックコポリマーと称することもある。
 
【0103】
  ブロック共重合体として、種々のブロック共重合体を用いることが可能であるが、例えば、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SBBS)、エチレン−プロピレンターポリマー(EPT)、および、これらの水添物、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー)(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEEPS)等を用いることができる。
 
【0104】
  積層体が備える接着層を構成し得るブロック共重合体には、少なくとも1個の官能基含有原子団が結合してもよい。このようなブロック共重合体は、例えば、公知のブロック共重合体に対し、変性剤を用いて当該官能基含有原子団を少なくとも1個結合させることによって得ることができる。
 
【0105】
  官能基含有原子団とは、1個以上の官能基を含む原子団である。官能基含有原子団が含む官能基としては、例えば、アミノ基、酸無水物基(好ましくは無水マレイン酸基)、イミド基、ウレタン基、エポキシ基、イミノ基、水酸基、カルボキシル基、シラノール基、及びアルコキシシラン基(当該アルコキシ基は炭素数1〜6であることが好ましい)が挙げられる。ブロック共重合体は、エラストマーであり、かつ、極性をもたらす官能基を有している。少なくとも1個の官能基含有原子団を有するブロック共重合体を含有させることにより、接着剤組成物の柔軟性及び接着性が向上する。
 
【0106】
  ブロック共重合体は、ジブロック共重合体又はトリブロック共重合体であることが好ましく、トリブロック共重合体であることがより好ましい。また、ジブロック共重合体とトリブロック共重合体とを組み合わせて用いてもよい。これにより、接着剤組成物を用いて形成した接着層の220℃における損失計数(tanσ)を、1.1以下の最適な値にすることができる。
 
【0107】
  また、ブロック共重合体は、スチレン基を含んでいることが好ましく、主鎖の両末端がスチレン基であることがより好ましい。熱安定性の高いスチレンを両末端にブロックすることでより高い耐熱性を示すからである。
 
【0108】
  ブロック共重合体のスチレン基含有量は、10重量%以上、65重量%以下であることが好ましく、13重量%以上、45重量%以下であることがより好ましい。これにより、接着剤組成物を用いて形成した接着層の23℃におけるヤング率を、0.1GPa以上の最適な値にすることができる。
 
【0109】
  さらに、ブロック共重合体の重量平均分子量は、50,000以上、150,000以下であることが好ましく、60,000以上、120,000以下であることがより好ましい。これにより、接着剤組成物を用いて形成した接着層の220℃における貯蔵弾性率(G’)を、1×10
5Pa以下の最適な値にすることができる。
 
【0110】
  また、ブロック共重合体のスチレン基含有量が13重量%以上、50重量%以下であり、ブロック共重合体の重量平均分子量が50,000以上、150,000以下であれば、炭化水素系溶剤への溶解性が優れているのでより好ましい。これにより、この接着剤組成物により形成した接着層を除去するときには、炭化水素系溶剤を用いて容易かつ迅速に除去することができる。
 
【0111】
  さらに、ブロック共重合体は水添物であることがより好ましい。水添物であれば、熱に対する安定性が一層向上し、分解や重合等の変質が起こりにくい。また、炭化水素系溶剤への溶解性及びレジスト溶剤への耐性の観点からもより好ましい。
 
【0112】
  また、ブロック共重合体は、ガラス転移点が23℃以下のユニットを含んでいることが好ましい。ブロック共重合体が、ガラス転移点が23℃以下のユニットを含んでいることによって、接着剤組成物を用いて形成した接着層の23℃におけるヤング率を、0.1GPa以上の最適な値にすることができる。
 
【0113】
  ブロック共重合体は、複数の種類を混合してもよい。つまり、接着剤組成物は複数の種類のブロック共重合体を含んでもよい。複数の種類のブロック共重合体のうち少なくとも一つが、スチレン基を含んでいることが好ましい。さらに、複数の種類のブロック共重合体のうち少なくとも一つにおける、スチレン基含有量が10重量%以上、65重量%以下の範囲であれば、また複数の種類のブロック共重合体のうち少なくとも一つにおける、重量平均分子量が50,000以上、150,000以下の範囲であれば、本発明の範疇である。また、接着剤組成物において、複数の種類のブロック共重合体を含む場合、混合した結果、スチレン基の含有量が上記範囲となるように調整してもよい。
 
【0114】
  (アクリル−スチレン系樹脂)
  アクリル−スチレン系樹脂としては、例えば、スチレン又はスチレンの誘導体と、(メタ)アクリル酸エステル等とを単量体として用いて重合した樹脂が挙げられる。
 
【0115】
  (メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、炭素数15〜20のアルキル基を有するアクリル系長鎖アルキルエステル、炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリル系アルキルエステル等が挙げられる。アクリル系長鎖アルキルエステルとしては、アルキル基がn−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基等であるアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。なお、当該アルキル基は、分岐状であってもよい。
 
【0116】
  炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリル系アルキルエステルとしては、既存のアクリル系接着剤に用いられている公知のアクリル系アルキルエステルが挙げられる。例えば、アルキル基が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、ドデシル基、ラウリル基、トリデシル基等からなるアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。
 
【0117】
  脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、イソボルニルメタアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートがより好ましい。
 
【0118】
  芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されるものではないが、芳香族環としては、例えばフェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェノキシメチル基、フェノキシエチル基等が挙げられる。また、芳香族環は、炭素数1〜5の鎖状又は分岐状のアルキル基を有していてもよい。具体的には、フェノキシエチルアクリレートが好ましい。
 
【0119】
  (マレイミド系樹脂)
  マレイミド系樹脂としては、例えば、単量体として、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−sec−ブチルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−n−ペンチルマレイミド、N−n−ヘキシルマレイミド、N−n−へプチルマレイミド、N−n−オクチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ステアリルマレイミドなどのアルキル基を有するマレイミド、N−シクロプロピルマレイミド、N−シクロブチルマレイミド、N−シクロペンチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−シクロヘプチルマレイミド、N−シクロオクチルマレイミド等の脂肪族炭化水素基を有するマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−m−メチルフェニルマレイミド、N−o−メチルフェニルマレイミド、N−p−メチルフェニルマレイミド等のアリール基を有する芳香族マレイミド等を重合して得られた樹脂が挙げられる。
 
【0120】
  例えば、下記化学式(8)で表される繰り返し単位及び下記化学式(9)で表される繰り返し単位の共重合体であるシクロオレフィンコポリマーを接着成分の樹脂として用いることができる。
 
【0122】
  (化学式(9)中、nは0又は1〜3の整数である)
  このようなシクロオレフィンコポリマーとしては、APL  8008T、APL  8009T、及びAPL  6013T(全て三井化学株式会社製)などを使用できる。
 
【0123】
  なお、光硬化性樹脂(例えば、UV硬化性樹脂)以外の樹脂を用いて接着層13を形成することが好ましい。これは、光硬化性樹脂が、接着層13の剥離又は除去の後に、基板11の微小な凹凸の周辺に残渣として残ってしまう場合があり得るからである。特に、特定の溶剤に溶解する接着剤が接着層13を構成する材料として好ましい。これは、基板11に物理的な力を加えることなく、接着層13を溶剤に溶解させることによって除去可能なためである。接着層13の除去に際して、強度が低下した基板11からでさえ、基板11を破損させたり、変形させたりせずに、容易に接着層13を除去することができる。
 
【0124】
  上述した分離層、接着層を形成するときの希釈溶剤として、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、メチルオクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の直鎖状の炭化水素、炭素数4から15の分岐状の炭化水素、p−メンタン、o−メンタン、m−メンタン、ジフェニルメンタン、1,4−テルピン、1,8−テルピン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン、ツジャン、カラン、ロンギホレン、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、メントール、イソメントール、ネオメントール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、テルピネン−1−オール、テルピネン−4−オール、ジヒドロターピニルアセテート、1,4−シネオール、1,8−シネオール、ボルネオール、カルボン、ヨノン、ツヨン、カンファー、d−リモネン、l−リモネン、ジペンテン等のテルペン系溶剤;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン(CH)、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類又は前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル又はモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体(これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい);ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル等の芳香族系有機溶剤、縮合多環式炭化水素等を挙げることができる。
 
【0125】
  縮合多環式炭化水素とは、2つ以上の単環がそれぞれの環の辺を互いに1つだけ供給してできる縮合環の炭化水素であり、2つの単環が縮合されてなる炭化水素を用いることが好ましい。
 
【0126】
  そのような炭化水素としては、5員環及び6員環の組み合わせ、又は2つの6員環の組み合わせが挙げられる。5員環及び6員環を組み合わせた炭化水素としては、例えば、インデン、ペンタレン、インダン、テトラヒドロインデン等が挙げられ、2つの6員環を組み合わせた炭化水素としては、例えば、ナフタレン、テトラヒドロナフタリン(テトラリン)及びデカヒドロナフタリン(デカリン)等が挙げられる。
 
【0127】
  〔保護層〕
  保護層15は、分離層14の表面であってサポートプレート12と接着していない面のうち、少なくとも接着層13と重畳していない面を覆うものである。保護層15は、例えば、レジスト剥離処理(レジスト剥離工程)等の高温且つ長時間の薬品処理や、その後に行なわれる高温(例えば260℃)での加熱処理工程によって分離層14が変質しないように保護することができる。
 
【0128】
  保護層15が覆う分離層14の面は、分離層14の表面であってサポートプレート12と接着していない面のうち、少なくとも接着層13と重畳していない面が含まれればよい。
 
【0129】
  つまり、本実施形態において、保護層15は、分離層14の表面であってサポートプレート12と接着していない面のうち、接着層13と重畳している面をも覆っている。しかし、積層体が備える保護層はこのような形態に限定されず、分離層の表面であって支持体と接着していない面のうち、接着層と重畳していない面のみを覆ってもよい。いずれの構成であっても、少なくとも分離層の表面であって支持体(サポートプレート)と接着していない面のうち、少なくとも接着層と重畳していない面を覆っているので、レジスト剥離処理等の高温且つ長時間の薬品処理によって分離層が変質しないように保護することができる。
 
【0130】
  保護層15を形成する材料としては、積層体10に対して行なう処理に応じて適宜選択することができる。つまり、当該処理において用いる薬品、当該処理が行なわれる環境に対して、耐性を有する材料を適宜選択すればよい。例えば、積層体10を高温且つ長時間のレジスト剥離工程に供するのであれば、当該工程にて用いる剥離液に対して耐性を有するものを選択すればよい。
 
【0131】
  保護層15を形成する材料の具体例としては、例えば、接着剤が挙げられる。接着層13との接着性を向上させることができるからである。
 
【0132】
  保護層15を接着剤で構成する場合、当該接着剤は接着層13を構成する接着剤と同一組成のものであってもよい。接着層13を構成する接着剤としては上述の通り、剥離液等に対する薬品耐性があるものを選択しているので、そのような接着剤で保護層15を形成すれば、良好に分離層14を保護することができる。
 
【0133】
  また、保護層15を構成する接着剤は、接着層13を構成する接着剤と異なる組成のものであってもよい。ただし、そのような接着剤であっても、接着層13を構成する接着剤の候補となる接着剤であることがより好ましい。接着層13を構成する接着剤としては上述の通り、剥離液等に対する薬品耐性があるものから選択され得るので、そのような接着剤の候補となる接着剤で保護層15を形成すれば、良好に分離層14を保護することができる。
 
【0134】
  保護層15を構成する材料の具体例としては、例えば、ブロック共重合体、シクロオレフィン系ポリマー等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。ブロック共重合体及びシクロオレフィン系ポリマーの説明は、上述の接着層13において行なった各成分の説明に準ずる。
 
【0135】
  保護層15の膜の厚さは、例えば、1〜10μmであることが好ましい。保護層15の膜の厚さが、1μm以上であることにより、保護層15が高温且つ長時間の様々な薬品処理に良好に耐えることができる。保護層15の膜の厚さが10μm以下であることにより、基板11を積層体から分離する工程において、基板11を良好に分離できる。
 
【0136】
  <積層体の形成方法1>
  次に積層体10の形成方法について、
図1を用いて説明する。
図1は、保護層における、積層体を形成したときに露出する部分を、接着工程前に除去する場合における積層体の形成方法を示す図である。
 
【0137】
  まず、
図1の(a),(b)に示すように、サポートプレート12上に分離層14を形成する。分離層14を形成する方法としては、化学気相成長(CVD)法による堆積等、上述の方法が挙げられる。
 
【0138】
  次に、
図1の(c)に示すように、分離層14上に保護層15を形成する(保護層形成工程)。保護層形成工程では、分離層14の表面であってサポートプレート12と接着していない面を覆う保護層15を形成する。
 
【0139】
  さらに、
図1の(d)に示すように、分離層14上に形成された保護層15のうち、サポートプレート12の曲面上に形成されている保護層15(保護層15における、積層体10を形成したときに露出する部分)を除去する(保護層除去工程)。
 
【0140】
  保護層15を除去する方法としては、例えば、サポートプレート12の曲面上に形成されている保護層15を溶剤によって溶解して除去する方法、カッター又はブレードなどを用いてサポートプレート12の曲面上に形成されている保護層15を物理的に切断して除去する方法、大気圧下でのアッシングによりサポートプレート12の曲面上に形成されている保護層15を除去する方法などが挙げられる。この中でも、強度及び実用性の観点から、サポートプレート12の曲面上に形成されている保護層15を溶剤によって除去する方法が好ましい。
 
【0141】
  保護層15を溶剤によって除去する方法において、用いられる溶剤としては保護層15を溶解し得るものであれば特に限定されず、当業者は、保護層15の組成に応じて、適宜選択することができる。例えば、保護層15が炭化水素系の接着剤を用いて形成されたものであれば、溶剤としてp−メンタン、及びd−リモネン等のテルペン系溶剤を用いることができ、保護層15がアクリル系又はマレイミド系の接着剤を用いて形成されたものであれば、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、酢酸エチル、及びメチルエチルケトン等を用いることができる。
 
【0142】
  サポートプレート12の曲面上に形成されている保護層15に溶剤を供給する方法としては、例えば、溶剤の噴出によって、当該保護層15に溶剤を供給する方法、保護層15を介してサポートプレート12に貼り付けられた基板11を溶剤中に浸漬させる方法が挙げられる。
 
【0143】
  溶剤の噴出によって、サポートプレート12の曲面上に形成されている保護層15に溶剤を供給する方法としては、曲面上に形成されている保護層15に均一に溶剤を供給するために、サポートプレート12を回転させながら、曲面上に形成されている保護層15に溶剤を供給する方法が好ましい。サポートプレート12を回転させながら、溶剤を供給する方法としては、例えば、溶剤を噴出するノズルをサポートプレート12の中心部の直上に配置し、溶剤をサポートプレート12の中心位置に滴下した後又は滴下しながら、サポートプレート12を、スピンナーを用いて高速回転させる方法が挙げられる。これにより、遠心力によって溶剤を、サポートプレート12の曲面上に形成されている保護層15に均一に供給することができる。また別の方法としては、溶剤を噴出するノズルをサポートプレート12の周縁部の直ぐ外側の直上に配置し、溶剤をサポートプレート12の周縁部の直ぐ外側に滴下しながら、サポートプレート12を、スピンナーを用いて回転させる方法が挙げられる。これにより、溶剤をサポートプレート12の全周縁部の直ぐ外側に供給することができる。この方法によっても、サポートプレート12から露出しているいずれの部分の保護層15にも均一に溶剤を供給することができる。なお、溶剤を噴出するノズルをサポートプレート12の周縁部の直ぐ外側の直上に配置する場合、配置するノズルの数に制限はなく、1つ以上であればよい。
 
【0144】
  基板11の回転及び溶剤の噴出を伴う上記方法において、基板11の回転速度、溶剤をノズルから供給するときの溶剤の流量、及び溶剤の供給時間は、保護層15を形成している接着剤の組成、保護層15の厚さ、露出部分の保護層15の大きさ(露出部分における基板11の周縁部からの距離)、使用する溶剤の種類、及び除去の程度に応じて異なり得るものであるが、当業者であれば、その最適条件を困難なく検討及び決定することができる。
 
【0145】
  溶剤による保護層15の溶解のために、サポートプレート12の曲面上に形成されている保護層15に溶剤を供給する方法の場合には、曲面上に形成されている部分の保護層15を除去した後に、サポートプレート12に貼り付けられた基板11を乾燥することが好ましい。乾燥工程を経ることによって、不要な溶剤、除去対象部分ではない保護層15に浸入した溶剤を除去することができる。
 
【0146】
  乾燥方法としては、スピンナー等を用いて基板11を回転させることによる振り切り乾燥、N
2ガスなどの噴霧によるエアブローでの乾燥、ベークによる乾燥、及び減圧による乾燥等が挙げられる。なお、これらの乾燥方法としては、いずれかの方法を単独で用いる方法、あるいは任意の2つ以上の方法を組み合わせて用いて乾燥させる方法のいずれも可能である。
 
【0147】
  次に、
図1の(e)に示すように、サポートプレート12の曲面上に形成されている分離層14に溶剤を供給して分離層14を除去してもよい。このとき、サポートプレート12の曲面上に形成されている分離層14を溶剤により除去するために用いられる溶剤としては、分離層14を溶解し得るものであれば特に限定されず、当業者は、分離層14の組成に応じて、適宜選択できる。サポートプレート12の曲面上に形成されている分離層14に溶剤を供給する方法としては、上記保護層15に溶剤を供給する方法と同様の方法を用いることができる。
 
【0148】
  次に、
図1の(f)に示すように、保護層15又は基板11の少なくともどちらかに接着層13を形成し、当該接着層13を介して、保護層15と基板11とを貼り合わせることによって積層体10を製造する(接着工程)。このとき、サポートプレート12の曲面上に形成されていた保護層15及び分離層14は既に除去されているため、積層体10を形成したときに保護層15及び分離層14は露出しない。したがって、
図1の(d)は、保護層15における、積層体10を形成したときに露出する部分を、接着工程の前に除去していることを示しており、
図1の(e)では、分離層14における、積層体10を形成したときに露出する部分を、接着工程の前に除去することを示している。
 
【0149】
  接着工程の後、基板11に対して加熱処理及び真空処理のうちの少なくとも一方が施される(加工工程)。加工工程とは、基板11に貫通電極を形成するための裏面加工をするため、接着層13を介してサポートプレート12に貼り付けられた基板11に対して、加熱処理及び真空処理のうちの少なくとも一方を伴った加工を施す工程である。ここで加熱処理とは、100℃以上に加熱することを意図している。また、真空処理とは、減圧乾燥することを意図している。何れの処理も、接着層13における発泡及び変質を促すものである。
 
【0150】
  加熱処理を伴う加工としては、リソグラフィー工程、洗浄工程、及びリフロー工程等が挙げられる。
 
【0151】
  真空処理を伴う加工としては、プラズマ化学的気相成長(プラズマCVD)及びエッチング・アッシングなどの真空プラズマ処理が挙げられる。
 
【0152】
  以上により、加工工程により積層体にCVD膜が形成されても、保護層15は露出していない。そのため、当該CVD膜と保護層15とは接触しても、保護層15が剥離することを抑制することができる。さらに、
図1の(e)に示すように、分離層14における、積層体10を形成したときに露出する部分を、接着工程の前に除去しておけば、加熱処理又は真空処理によりCVD膜が形成されても、露出する部分の分離層14が剥離することを防止することができる。
 
【0153】
  なお、本明細書において、「保護層(又は分離層)における、積層体を形成したときに露出する部分を除去する」とは、それぞれの露出する部分を完全に除去する場合だけでなく、それぞれの露出する部分を熱処理又は真空処理の後に剥離しない程度に除去する場合も含まれる。
 
【0154】
  <積層体の形成方法2>
  次に、積層体20の形成方法について、
図2を用いて説明する。
図2は、保護層における、積層体を形成したときに露出する部分を、接着工程後に除去する場合における積層体の形成方法を示す図である。なお、上記積層体の形成方法1は、接着工程前に保護層除去工程を行なっているが、本形成方法は、接着工程後に保護層除去工程を行なっている。また、上記積層体の形成方法と共通する工程については、その説明を省略する。
 
【0155】
  まず、
図2の(a)〜(c)に示すように、サポートプレート12上に分離層14を形成した後、分離層14上に保護層15を形成する。
 
【0156】
  次に、
図2の(d)に示すように、保護層15又は基板11の少なくともどちらかに接着層13を形成し、当該接着層13を介して、保護層15と基板11とを貼り合わせることによって積層体20を製造する(接着工程)。
 
【0157】
  図2の(e)に示すように、基板11において、接着層13が形成されている面と反対側の面を研削し、薄化する。具体的には、例えば、グラインダーを用いて、基板11を所定の厚さに加工すればよい。
 
【0158】
  そして、
図2の(f)に示すように、分離層14上に形成された保護層15のうち、曲面上に形成されている保護層15を除去する(保護層除去工程)。このとき、図に示すように、保護層15とともに分離層14を除去してもよい。
 
【0159】
  基板11とサポートプレート12とを貼り合わせる接着工程の後に保護層除去工程を行なった場合、保護層除去工程では、溶剤処理又はプラズマ処理により保護層15を除去することが好ましい。溶剤処理としては、上記と同様の処理を行なえばよい。プラズマ処理としては、O
2プラズマ処理を行なえばよい。
 
【0160】
  保護層除去工程の後、基板11に対して加熱処理及び真空処理のうちの少なくとも一方が施される(加工工程)。
 
【0161】
  以上により、加工工程により積層体にCVD膜が形成されても、保護層15は露出していない。そのため、当該CVD膜と保護層15とが接触しても、保護層15が剥離することを抑制することができる。さらに、
図2の(f)に示すように、積層体20を形成したときに分離層14の露出する部分を、加工工程の前に除去しておけば、加熱処理又は真空処理によりCVD膜が形成されても、露出する部分の分離層14が剥離することを防止することができる。
 
【0162】
  保護層除去工程にてプラズマ処理により保護層15を除去する場合、分離層14における、積層体20を形成したときに露出する部分を保護層15と共に除去することが好ましい。これにより、保護層除去工程の後、加熱処理又は真空処理によりCVD膜が形成されても、分離層14が剥離することを併せて抑制することができる。
 
【0163】
  本実施形態の変形例として、保護層における、積層体を形成したときに露出する部分を、溶剤処理により除去し、分離層における、積層体を形成したときに露出する部分をプラズマ処理により除去してもよい。
 
【0164】
  〔積層体の形成方法〕
  本発明に係る積層体の形成方法は、保護層を形成しない場合も含んでいる。つまり、本発明に係る積層体の形成方法は、基板と、接着層と、光を吸収することにより変質する分離層と、前記基板を支持する支持体とをこの順に積層して積層体を形成する積層体の形成方法であって、前記分離層における、積層体を形成したときに露出する部分をプラズマ処理により除去する分離層除去工程を包含する。
 
【0165】
  これにより、分離層における、積層体を形成したときに露出する部分をプラズマ処理すれば、露出する部分の分離層を除去することができる。そのため、分離層除去工程の後、加熱処理又は真空処理によりCVD膜が形成されても、分離層が剥離することを抑制することができる。
 
【0166】
  本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
 
【実施例】
【0167】
  [実施例1]
  〔積層体の形成〕
  (プロセス)流量400sccm、圧力700mTorr、高周波電力2,500W及び成膜温度240℃の条件下において、反応ガスとしてC
4F
8を使用したCVD法により、分離層であるフルオロカーボン膜(厚さ1μm)を支持体(12インチガラス基板、厚さ700μm)上に形成し、その上に接着剤組成物であるTZNR−A3007t(東京応化工業株式会社製)を塗布し、220℃で3分間のベークを行なうことで膜厚1.5μmの保護層を形成した(保護層形成工程)。12インチシリコンウエハには主溶剤が280重量部の上記接着剤組成物をスピン塗布して、100℃、160℃、200℃で各3分加熱して接着層を形成し(膜厚50μm)、真空下220℃、4,000Kgの条件で3分間、ガラス支持体と貼り合せを行ない積層体とした(接着工程)。
【0168】
  〔溶剤による保護層の剥離〕
  保護層を介してサポートプレートに貼り付けられたウエハから露出した部分の保護層を、p−メンタンを用いて除去した。まず、ウエハの周縁部の直ぐ外側の直上に配置した溶剤噴出用のノズルから20ml/minの流量でもって溶剤を供給しながら、ウエハを1,500rpmで10分間回転させた。次いで、溶剤の供給を停止し、ウエハを乾燥させた。乾燥は、100℃、160℃及び220℃でのベークをこの順序で各6分間行なうとともに、その間、ウエハを回転させることで実施した。その後、ウエハをクーリングプレートに移し、ピンアップして3分間徐冷した。これによって、ウエハから露出している部分の保護層のみを除去することができた。
【0169】
  〔プラズマ処理による保護層の剥離〕
  接着層を介してサポートプレートに貼り付けられたウエハから露出した部分の分離層をプラズマ処理により除去した。プラズマ処理は、くし型電極またはICP電極を用い、以下の条件で行なった。
【0170】
  くし型電極を用いた場合のプラズマ処理については、Power:1,200W、圧力:0.5Torr、ガス流量:1,200sccm(O
2)、ステージ温度:90℃、ピンアップ保持による処理時間:6分の処理条件であった。ICP電極を用いた場合のプラズマ処理については、Power:600W、圧力:130Pa、ガス流量:3,800sccm(O
2)、200sccm(N
2+H
2)、ステージ温度240℃、ピンアップ保持による処理時間:90秒の処理条件であった。
【0171】
  くし型電極またはICP電極を用いた上記処理条件におけるそれぞれのプラズマ処理により、保護層における、積層体を形成したときに露出する部分を除去することができた。さらに、当該保護層とともに、分離層における、積層体を形成したときに露出する部分を除去することができた。
【0172】
  [実施例2]
  〔積層体の形成〕
  実施例1と同様の条件で、積層体を形成した。本実施例にて形成した積層体は、保護層が形成されていない点で、実施例1にて形成した積層体と異なる。
【0173】
  〔プラズマ処理による保護層の剥離〕
  次に、接着層を介してサポートプレートに貼り付けられたウエハから露出した部分の分離層をプラズマ処理により除去した。プラズマ処理は、くし型電極またはICP電極を用い、以下の条件で行なった。
【0174】
  くし型電極を用いた場合のプラズマ処理については、Power:1,200W、圧力:0.5Torr、ガス流量:1,200sccm(O
2)、ステージ温度:90℃、ピンアップ保持による処理時間:3分の処理条件であった。ICP電極を用いた場合のプラズマ処理については、Power:600W、圧力:130Pa、ガス流量:3,800sccm(O
2)、200sccm(N
2+H
2)、ステージ温度240℃、ピンアップ保持による処理時間:45秒の処理条件であった。
【0175】
  くし型電極またはICP電極を用いた上記処理条件におけるそれぞれのプラズマ処理により、分離層における、積層体を形成したときに露出する部分を除去することができた。