特許第6088277号(P6088277)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6088277-廃石膏ボードの利用方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6088277
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】廃石膏ボードの利用方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 11/02 20060101AFI20170220BHJP
   C04B 11/05 20060101ALI20170220BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20170220BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   C04B11/02ZAB
   C04B11/05
   B09B3/00 Z
   B09B5/00 F
   B09B3/00 303A
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-22721(P2013-22721)
(22)【出願日】2013年2月7日
(65)【公開番号】特開2014-152070(P2014-152070A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 弘義
(72)【発明者】
【氏名】平中 晋吾
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−013304(JP,A)
【文献】 特開2012−091949(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/013807(WO,A1)
【文献】 特開2011−195379(JP,A)
【文献】 特開2009−007214(JP,A)
【文献】 特開2008−001567(JP,A)
【文献】 特開2003−002705(JP,A)
【文献】 特開2008−081329(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0022533(US,A1)
【文献】 特開2013−017955(JP,A)
【文献】 特開2011−088800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00−28/36
B09B 3/00
B09B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃石膏ボードを構成する石膏成分を焼成して半水石膏を得る焼成工程、焼成工程で得られた半水石膏から晶析により二水石膏を再生する晶析工程、及び、晶析工程より得られた再生二水石膏を以下の少なくとも1つの工程に供給する後処理工程を含むことを特徴とする廃石膏ボードの利用方法。
(1)再生二水石膏を、セメント系固化材原料として使用する工程;
(2)再生二水石膏を焼成して再生半水石膏とし、石膏ボード原料、セメント原料、セメント系固化材原料又は石膏系固化材原料として使用する工程;
(3)再生二水石膏を焼成して再生無水石膏とし、セメント原料又はセメント系固化材原料として使用する工程;
【請求項2】
前記廃石膏ボードが、生産時に又は建造物の新築内装工事で排出された端材、および、建造物の改装、改築又は解体現場より排出された石膏ボード廃材からなる群より選ばれた少なくとも一つである、請求項1記載の廃石膏ボードの利用方法。
【請求項3】
前記石膏成分が、廃石膏ボードを収集する収集工程;収集した廃石膏ボードを、異物を含む廃石膏ボードと異物を含まない廃石膏ボードとに分けて収容する受入工程;異物を含む廃石膏ボードより異物を除去する異物除去工程;異物を含まないか又は異物を除去された廃石膏ボードを破砕してボード原紙と石膏破砕物とに分離する破砕分離工程;により得られた廃石膏破砕物である請求項1記載の廃石膏ボードの利用方法。
【請求項4】
前記(1)の工程が、再生二水石膏を、廃石膏ボードを構成する石膏成分の一部を破砕したものと混合して、セメント系固化材原料として使用する工程である、請求項1記載の廃石膏ボードの利用方法。
【請求項5】
前記(2)の工程が、前記再生半水石膏を、廃石膏ボードを構成する石膏成分の一部を焼成して半水石膏としたものと混合して、石膏ボード原料、セメント原料、セメント系固化材原料又は石膏系固化材原料として使用する工程である、請求項1記載の廃石膏ボードの利用方法。
【請求項6】
前記(3)の工程が、前記再生無水石膏を、廃石膏ボードを構成する石膏成分の一部を焼成して無水石膏としたものと混合して、セメント原料又はセメント系固化材原料として使用する工程である、請求項1記載の廃石膏ボードの利用方法。
【請求項7】
更に、排煙脱硫石膏、化学副産石膏、天然二水石膏又は天然無水石膏を、前記(1)〜(3)の少なくとも一つの工程に使用する請求項1記載の廃石膏ボードの利用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃石膏ボードの利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃石膏の主たるソースである石膏ボード廃材の発生量は、年間約150万tであり、このうち、約50万tは生産時や家屋等の新築内装工事の端材であり、石膏ボードメーカーがリサイクルを行っている。しかし、残りの約100万tは、家屋等の建造物の改装・解体工事で排出されるものであり、リサイクルされずに埋立処分されている。埋立てられた石膏は雨水と接触すると硫化水素を発生するおそれがあるため、石膏の埋立ては、管理型の埋立地で行わなければならず、廃棄コストが問題となる。
このように、石膏ボード廃材由来の石膏は、ほとんどが再資源化されることなく廃棄され、しかも廃棄自体の費用や廃棄場所が問題となり、廃石膏の有効な利用方法の確立が求められている。
【0003】
これまで、石膏ボード廃材等から得られる廃石膏の処理方法については、数多くの提案がなされている。例えば、石膏ボード廃材から原紙を分離し、得られた石膏を再利用する方法が提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載されている方法では、回収される石膏中に界面活性剤等の有機物が残存しており、再利用の際に、多量のバージン石膏(排煙脱硫石膏、化学副産石膏、天然二水石膏又は天然無水石膏)と混合された状態でなければ、石膏ボード原料等として機能することができなかった。また、特許文献1には、紙が付着したままの廃石膏を焼却し、無水石膏にして再利用する方法も示されているが、焼却処理を行うことにより、SOxが発生する問題や、大量に使用されている排煙脱硫石膏と同じ二水型の石膏にするためには、別途水処理工程が必要となる点で改善の余地があった。
【0005】
一方、廃石膏を湿式処理して再利用する方法も提案されている。例えば、粉砕していない石膏ボード廃材を加圧下、湿式にて加熱処理することにより、α型半水石膏を生成し、これを石膏ボード等の原料として再利用する方法が提案されている(特許文献3参照)。この方法によれば、濡れている石膏ボード廃材でもボード原紙と石膏とを容易に分離することができる。しかしながら、特許文献3に記載された方法では、廃石膏は粉砕されていないため、形状の大きいものを処理する場合に、廃石膏に含まれる界面活性剤等の有機成分の含有率を十分に低減することができず、この方法により再生された石膏は、前記と同様、多量のバージン石膏と混合された状態でなければ使用に供することができなかった。
更に、上記方法により得られる半水石膏は、結晶の平均粒径が非常に小さく、多孔質体である。そのため、これを石膏ボード原料として再利用するには、製造工程において石膏スラリーの流動性を確保するために、スラリーに使用する水の割合を、バージン石膏を用いるスラリーの場合よりも多くする必要がある。その結果、上記方法による再生石膏を100%用いて製造された石膏ボードは、その強度が不足するという重大な問題を有する。従って、石膏ボード原料のすべてを再生石膏とすることは難しく、現状ではバージン材料の一部代替に留まっている。
【0006】
特許文献4は、石膏ボード廃材中の石膏を全累積細孔容積が特定の値となるように粉砕した後、種晶石膏が存在する水性媒体中で溶解して析出させる、石膏ボード廃材中の石膏を再生する方法に関するものである。しかしながら、特許文献4は、廃石膏ボードを再生することについては詳細に検討しているものの、再生後の石膏をどのような態様で利用するのかについての具体的な検討はされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−286553号公報
【特許文献2】特開2000−254531号公報
【特許文献3】特開2004−307321号公報
【特許文献4】特開2010−13304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、廃石膏ボードから再生された再生石膏の大半を有用な資源とし、廃石膏ボードの再利用率を向上させることができる、廃石膏ボードの利用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく研究を重ねた結果、廃石膏ボードを構成する石膏成分を、半水石膏とした後にそれを晶析せしめて得られる二水石膏(再生二水石膏)は、前記石膏の用途において、バージン石膏と併用しなくても、問題無く使用できることを見出し、加えて、晶析以外の方法により廃石膏ボードから回収される石膏、例えば、廃石膏ボードより分離された石膏成分を破砕したもの、又はそれを更に乾燥若しくは焼成したものと当該再生二水石膏とを併用すれば、究極的には、バージン石膏を使用することなく、その全量を廃石膏ボード由来の石膏により賄うことができ、廃石膏ボードの利用率を大幅に向上し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明によれば、廃石膏ボードを構成する石膏成分を焼成して半水石膏を得る焼成工程、焼成工程で得られた半水石膏から晶析により二水石膏を再生する晶析工程、及び、晶析工程より得られた再生二水石膏を以下の工程;
(1)再生二水石膏を、セメント系固化剤原料として使用する工程、
(2)再生二水石膏を焼成して再生半水石膏とし、石膏ボード原料、セメント原料、セメント系固化材原料又は石膏系固化材原料として使用する工程、
(3)再生二水石膏を焼成して再生無水石膏とし、セメント原料又はセメント系固化材原料として使用する工程、
の少なくとも1つに供給する後処理工程を含むことを特徴する廃石膏ボードの利用方法が提供される。
【0011】
本発明の廃石膏ボードの利用方法においては、
(A)前記廃石膏ボードが、生産時に又は建造物の新築内装工事で排出された端材、および、建造物の改装、改築又は解体現場より排出された石膏ボード廃材からなる群より選ばれた少なくとも一つであること、
(B)前記石膏成分が、廃石膏ボードを収集する収集工程;収集した廃石膏ボードを、異物を含む廃石膏ボードと異物を含まない廃石膏ボードとに分けて収容する受入工程;異物を含む廃石膏ボードより異物を除去する異物除去工程;異物を含まないか又は異物を除去された廃石膏ボードを破砕してボード原紙と石膏破砕物とに分離する破砕分離工程;により得られた廃石膏破砕物であること、
(C)前記(1)の工程が、再生二水石膏を、廃石膏ボードを構成する石膏成分の一部を粉砕したものと混合して、セメント系固化材原料として使用する工程であること、
(D)前記(2)の工程が、前記再生半水石膏を、廃石膏ボードを構成する石膏成分の一部を焼成して半水石膏としたものと混合して、石膏ボード原料、セメント原料、セメント系固化材原料又は石膏系固化材原料として使用する工程であること、
(E)前記(3)の工程が、前記再生無水石膏を、廃石膏ボードを構成する石膏成分の一部を焼成して無水石膏としたものと混合して、セメント原料又はセメント系固化材原料と
して使用する工程であること、
)更に、排煙脱硫石膏、化学副産石膏、天然二水石膏又は天然無水石膏を、前記(1)乃至(3)の少なくとも一つの工程に使用すること、
が好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の利用方法によれば、廃石膏ボードから再生した石膏を、主に石膏ボード原料として、更には、セメント原料、セメント系固化材原料又は石膏系固化材原料等の広範囲の原料として再利用できるため、廃石膏ボードの再利用率を大幅に向上させることができ、資源の無駄がないだけでなくバージン石膏の大量使用が抑制され、しかも、水処理等の格別の処理を施す必要もない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の利用方法における各工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の廃石膏ボードの利用方法においては、まず、必要に応じて廃石膏ボードの収集等の前処理を行い、次に、廃石膏ボードから二水石膏を再生し、その後、後処理工程として、再生二水石膏を、全量、若しくは、再結晶化されていない廃石膏破砕物等と併用して各種用途に供する。
【0015】
<二水石膏の再生>
上記廃石膏ボードとしては、例えば、石膏ボードの生産時や建造物の新築内装工事の時に発生する端材又は残材からなる石膏ボード廃材、改装・改築・解体工事で建築廃材として排出される石膏ボード廃材がある。
このような廃石膏ボードには、石膏成分として主に二水石膏(CaSO・2HO)が含まれている。
本発明において、再生二水石膏の製造方法としては、上記廃石膏ボードを構成する石膏成分を焼成して半水石膏を得る焼成工程と、焼成工程で得られた半水石膏から晶析により二水石膏を再生する晶析工程とを含むものであれば特に制限はなく、公知の方法が採用される。代表的な再生二水石膏の製造方法としては、前記特許文献4に示される方法が好適である。
【0016】
上記特許文献4に示される製造方法に準じて、以下、二水石膏の再生方法を説明する。
(前処理)
まず、石膏ボードの生産工場や、建築現場、改装・改築・解体工事現場から廃石膏ボードを収集する(収集工程)。収集した廃石膏ボードには金属片等の異物を含むものがあるので、異物を含む廃石膏ボードと含まない廃石膏ボードとに分けてヤードに収容する(受入工程)。異物を含む廃石膏ボードについては、例えば篩により異物を除去することが好ましい(異物除去工程)。異物を含まないか又は異物を除去された廃石膏ボードは、適当な粒径に破砕し、更に、例えば、前記特許文献1、2に記載の方法により、ボード原紙を取り除いておくことが好ましい(破砕分離工程)。かくして、廃石膏破砕物が得られる。
本発明の方法に供される廃石膏破砕物の粒径としては、特に制限はないが、機械的に運搬する際の容易さから、平均粒径が0.5〜50mmであることが好ましく、1〜20mmであることがより好ましい。平均粒径は、ふるい分けにより測定することができる。
【0017】
(焼成)
次に、上記の前処理を経て得られた廃石膏破砕物は、適当な大きさ、例えば、平均粒径0.5〜50mm、好ましくは、1〜20mmに調整して焼成工程に供され、かかる工程で焼成されて半水石膏(CaSO・1/2HO)となる。
【0018】
(粉砕)
焼成工程により得られた半水石膏は、必要に応じて、0.5〜30μm、特に、1〜20μmの体積平均粒径となるように粉砕することが好ましい。
この粉砕工程は、従来公知の装置、例えばピンミル、ボールミル、ビーズミル等の装置を用いて行うことができる。
【0019】
焼成工程および粉砕工程は、それぞれバッチ式で行ってもよく、連続プロセスで行ってもよい。更に、それぞれが独立した工程であってもよく、両工程を直列に接続した工程であってもよい。更に、これらの工程は、後述する二水石膏の晶析工程と独立した工程であってもよく、連続した工程であってもよい。
【0020】
(晶析)
続く晶析工程では、上記のようにして得られた半水石膏を、種晶石膏として二水石膏を含有させた水性媒体中に溶解し、次いで、二水石膏を再生石膏として析出させる。
種晶石膏の初期粒径は、好ましくは10〜60μmであり、より好ましくは20〜40μmである。種結晶の存在割合は、好ましくは100〜400g/Lであり、より好ましくは200〜300g/Lである。
【0021】
半水石膏を溶解させる水性媒体としては水が好ましく、pHは、適度な石膏の析出速度を保つという観点から、4〜8の範囲が好ましい。水性媒体の温度は、90℃以下が好ましく、50〜80℃がより好ましい。
前記の各条件を満たすように、種晶石膏含有スラリーに半水石膏を溶解させ、適当な時間、撹拌をすると、種晶石膏を中心に二水石膏が析出し、再生二水石膏を得ることができる。
【0022】
再生二水石膏は、公知のろ過方法により水性媒体と分離することができる。例えば、ロータリースクリーン、ドラムフィルター、ディスクフィルター、ヌッチェフィルター、フィルタープレス、スクリュウプレス、チューブプレス等のろ過装置;スクリュウデカンター、スクリーンデカンター等の遠心分離機;等により、水と分離する方法を採用することができる。分離された再生二水石膏は、後述する後処理工程における利用形態に応じて、適宜乾燥して使用される。回収されたろ液は、半水石膏の溶解、析出用水性媒体に循環再利用することができる。
【0023】
晶析工程において、石膏の溶解と析出は、バッチ式で行ってもよく、連続プロセスで行ってもよいが、本発明の利点が特に発揮されるという観点から、連続プロセスで行うことが好ましい。少なくとも粉砕工程及び石膏の溶解、析出工程をそれぞれ連続プロセスとし、これらを直列に接続し、得られた再生二水石膏の一部を種晶石膏として循環する工程を含むプロセスが、本発明の利点が最大限に発揮される点で特に好ましい。また、本発明では、石膏の溶解、析出が種晶石膏の存在下で安定的に起こるので、反応槽(溶解・析出槽)内において石膏の粒径は経時的に大きくなる。この石膏の大粒径化に伴い反応槽内の種結晶表面積が減少するが、反応槽内の石膏を粉砕したり、系外から小粒径の種晶石膏を供給するなどの対応により、安定的に一定の品質の石膏を生産することができる。
かくして廃石膏ボードから、二水石膏が再生される。
【0024】
<後処理工程:再生石膏の利用>
上記の工程により得られた再生二水石膏は、後処理工程において、石膏ボード原料、セメント原料、セメント系固化材原料及び石膏系固化材原料のうちの少なくとも一つとして用いられ、また、高炉スラグ微粉末用添加材としても用いることができる。再生二水石膏は、二水石膏のままで用いてもよいが、目的に応じて、焼成し、半水石膏や無水石膏(CaSO)として用いてもよい。
具体的には、
(1)再生二水石膏は、セメント原料又はセメント系固化材原料として使用でき、
(2)再生半水石膏は、石膏ボード原料、セメント原料、セメント系固化材原料又は石膏系固化材原料として使用でき、
(3)再生無水石膏は、セメント原料又はセメント系固化材原料として使用でき、また、
(4)再生二水石膏をそのまま、又は、焼成して再生半水石膏若しくは再生無水石膏とし、高炉スラグ微粉末用添加材として使用できる。
【0025】
前記記載から明らかな通り、セメント原料としては、再生二水石膏、再生半水石膏又は再生無水石膏を用いることができるが、特に、硬化速度の調整機能の観点から、再生二水石膏が好適である。再生半水石膏及び/又は再生無水石膏を使用する場合は、二水石膏と併用することが好ましい。原料石膏全体に占める二水石膏の混合割合は30重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましい。再生二水石膏、再生半水石膏及び再生無水石膏を併用する場合も、当該割合で併用することが好ましい。
【0026】
また、セメント系固化材原料としても、再生二水石膏、再生半水石膏又は再生無水石膏を用いることができるが、再生二水石膏及び/又は再生無水石膏が好ましい。再生半水石膏を用いる場合は、二水石膏及び/又は無水石膏と併用することが好ましい。この場合、原料石膏全体に占める半水石膏の割合は50重量%以下が好ましい。再生二水石膏、再生半水石膏及び再生無水石膏を併用する場合も、当該割合で併用することが好ましい。
尚、石膏ボード原料又は石膏系固化材原料としては、再生半水石膏が好適である。高炉スラグ微粉末用添加材としては、再生二水石膏、再生半水石膏、再生無水石膏のいずれも好適に使用できる。
【0027】
本明細書においては、再生二水石膏自体、再生二水石膏を焼成した再生半水石膏又は再生二水石膏を焼成した再生無水石膏を、「再生二水石膏由来の石膏」と総称することもある。
【0028】
このように、本発明の利用方法においては、再生二水石膏由来の石膏を様々な使用目的について石膏成分として利用することができ、更に、その利用にあたっては、従来の再利用方法と異なり、量的制限を受けることが無い。即ち、量的に賄うことができるのであれば、その全量を再生二水石膏由来の石膏とすることができる。このように、再生二水石膏由来の石膏を主たる原料として用いることで、廃石膏ボードの再利用率を向上することができ、これにより、埋立量を減らして環境への負荷を軽くすることができる。また、再生二水石膏よりもコストのかかるバージン石膏の使用量が減るので、経済的な負担が軽減されるという商業的メリットもある。特に、再生二水石膏由来の石膏を石膏ボード原料の石膏成分として使用する場合には、バージン石膏の使用量が大幅に低減できる。
尚、バージン石膏とは、排煙脱硫石膏、化学副産石膏、天然二水石膏又は天然無水石膏を意味する。
【0029】
以下で、まず、(1)再生二水石膏のままで利用する場合、(2)再生半水石膏として利用する場合、及び(3)再生無水石膏として利用する場合に分けて、それぞれの具体的な使用態様を説明する。
【0030】
(1)再生二水石膏のままでの利用
以下、図1に示したように、本発明の後処理工程において、再生二水石膏を、半水石膏や無水石膏にすることなく二水石膏のままで、セメント原料及びセメント系固化材原料のうちの少なくとも一つとして使用する場合について説明する。
【0031】
(1−1)セメント原料
まず、セメント原料として再生二水石膏そのものを使用する場合について説明する。セメント原料とは、石灰石を主成分とする公知のセメントの原料を意味し、具体的には、石灰石、粘土質原料、珪石質原料、酸化鉄原料、石膏のことをいう。石膏はセメントの硬化速度を調整するためのものであり、一般に、火力発電所などの排煙脱硫で発生する排煙脱硫石膏や、副産石膏が使用される。
【0032】
前述の通り、セメント原料としては、硬化速度の調整機能の観点から、再生二水石膏が再生半水石膏や再生無水石膏よりも好適に使用される。再生二水石膏をセメント原料とする場合の具体的な工程としては、石灰石、粘土、珪石及び酸化鉄を一定割合で混合し、該混合物をドライヤで乾燥し、原料ミル(粉砕機)で粉砕する。粉砕後の原料粉末はサイロに貯蔵する。原料粉末は、焼成効率を向上させるためにプレヒータで予熱し、徐々に焼成キルンを通過させて、1450℃以上の高温で焼成する。これにより、キルン内で原料粉末が化学変化を起こし、水硬性をもった化合物の集まりであるクリンカができる。クリンカを空冷した後、再生二水石膏とクリンカや混合材とを一定の割合で混合し、ミル(粉砕機)でこれらを粉末にすることで、セメントが得られる。
【0033】
このとき、再生二水石膏は、ろ過後乾燥させていないものをそのまま混合してもよい。ろ過後の再生二水石膏が含む水分は5〜15重量%にすぎず、このような再生二水石膏をクリンカと混合・粉砕しても、粉砕過程で水分が逸散するため、セメントの硬化に影響を与えないからである。しかしながら、セメント原料に用いる場合、再生二水石膏は、ろ過後乾燥させたものを用いる方が好ましい。乾燥を行う場合は、従来公知の方法、例えば、ろ過後の再生二水石膏を温風乾燥機を用いて、60〜80℃で30〜60分乾燥させればよい。
【0034】
セメント原料としては、廃石膏破砕物やバージン石膏と混合せず、再生二水石膏のみを用いてもよい。従来の再生石膏には不純物が多く含まれており、この不純物がセメントの硬化に影響を与え、硬化時間等の調整を難しくしていたため、少量の使用しかできなかったが、本発明で用いる再生二水石膏は純度が非常に高く、こうした心配がない。また、バージン石膏を主な原料とする従来の再利用方法に比べ、廃石膏ボードの再利用率が上昇して、廃石膏ボードの埋立量が減り、即ち、環境負荷が減るという利点がある。
【0035】
再生二水石膏は、廃石膏破砕物やバージン石膏と混ぜて用いることもできる。再生二水石膏と廃石膏破砕物とを用いると、再生二水石膏のみを用いる場合の利点は確保しつつ、更に原料調達コストやエネルギーの面でも有利である。よって、目的とするセメントの品質によっては、再生二水石膏と廃石膏破砕物との併用は好適である。
【0036】
再生二水石膏と廃石膏破砕物とを用いる場合は、廃石膏ボードを構成する石膏成分の一部を破砕して、必要に応じて原紙を除去した後、別途保管しておき、残りの石膏成分から二水石膏を再生し、この再生二水石膏及び廃石膏破砕物とクリンカとを混練する。原料の石膏成分のうち、再生二水石膏が占める割合は、70〜95重量%が好ましく、85〜95重量%が特に好ましい。該破砕石膏成分を多量に使用すると、該破砕石膏成分に含まれる不純物が、セメントの硬化の挙動に影響を与える。
【0037】
一方、再生二水石膏とバージン石膏とを用いる場合は、これらをクリンカと混合すればよい。バージン石膏は、予め乾燥させても良いし、乾燥させなくてもよい。従来の再利用方法ではバージン石膏を多量に配合しなければならなかったため、再生石膏の使用量が非常に限定的であったが、本発明の利用方法では、このような制限はなく、再生二水石膏を多く配合することができる。具体的な再生二水石膏の占める割合としては、原料の石膏成分に対して50〜95重量%が好ましく、70〜95重量%が特に好ましい。バージン石膏の占める割合を高くすると、廃石膏ボードの再利用率及び経済性の点でデメリットが生じる。
【0038】
セメント原料として、再生二水石膏、バージン石膏及び廃石膏破砕物の混合物を用いることもできる。原料の石膏成分のうち再生二水石膏が占める割合は、50〜95重量%が好ましく、70〜95重量%が特に好ましい。
尚、再生二水石膏のみを用いる場合であっても、バージン石膏及び/又は廃石膏破砕物を混合する場合であっても、セメント原料全体における石膏成分の占める割合は、SO換算で、1.0〜4.0重量%が好ましい。
【0039】
(1−2)セメント系固化材原料
続いて、セメント系固化材原料として再生二水石膏そのものを使用する場合について説明する。セメント系固化材とは、従来の石灰やセメント等では固化させにくい土質や現場の条件、例えば、建物を支えられない軟弱地盤や腐食物を多く含む土に対応するため、セメントを母材として各種有効成分を添加したものである。
【0040】
前述の通り、再生二水石膏は、セメント系固化材原料として、再生半水石膏よりも好適に使用され、再生無水石膏とは同じくらい好適に使用される。
セメント系固化材の原料として再生二水石膏を用いる場合、具体的には、クリンカと、土質や現場に合わせて選択される有効成分と、再生二水石膏とを一定の割合で混合することでセメント系固化材が得られる。再生二水石膏は、乾燥後にそのまま使用してもよく、更に粉砕して使用してもよいが、一般には、乾燥後にそのまま使用する。有効成分としては、消石灰、軽量ドロマイト、高炉スラグ、石灰石粉、フライアッシュ、シリカ微粉末等が挙げられる。
【0041】
再生二水石膏は、ろ過後乾燥させたものを用いることが好ましい。乾燥を行わないと、再生二水石膏に付着している水分(結晶水以外の水分)とクリンカ又は各種有効成分とが反応を起こしたり、硬化が開始されたりして、セメント系固化材の保存安定性が損なわれる。乾燥は、(1−1)セメント原料と同じ方法により行えばよい。
【0042】
セメント系固化材の原料としては、廃石膏破砕物やバージン石膏を混合することなく、再生二水石膏のみを用いてもよい。従来の再生石膏には不純物が多く含まれており、この不純物が、固化材の硬化に影響を与える恐れがあったが、本発明の方法により得られた再生二水石膏は純度が非常に高く、こうした心配がない。また、バージン石膏を主な原料とする従来の再利用方法に比べると、廃石膏ボードの再利用率が向上し、環境負荷が軽減されるというメリットもある。更に、高価なバージン石膏を使用しないので、経済的メリットもある。
【0043】
再生二水石膏は、廃石膏破砕物やバージン石膏と混ぜて用いることもできる。再生二水石膏と廃石膏破砕物との併用は、再生二水石膏のみを用いる場合の利点を活かしつつ、更に省エネルギーと節約の点でも有利である。よって、目的とするセメント系固化材の品質によっては、再生二水石膏と廃石膏破砕物との併用は好適である。
【0044】
再生二水石膏と廃石膏破砕物とを用いる場合は、(1−1)セメント原料の場合と同様にこれらの分別・破砕・二水石膏の再生等をして、この再生二水石膏及び廃石膏破砕物とクリンカ及び有効成分とを混合する。原料の石膏成分のうち、再生二水石膏が占める割合は、70〜95重量%が好ましく、85〜95重量%が特に好ましい。廃石膏破砕物を多量に使用すると、廃石膏破砕物に含まれる不純物が、固化材の硬化の挙動に影響を与える可能性がある。更に、セメント系固化材は土壌に直接散布・混合されるので、不純物が雨水より土壌に流出する可能性もある。
【0045】
一方、再生二水石膏とバージン石膏とを用いる場合は、これらをクリンカ及び有効成分と混練すればよい。バージン石膏は、予め乾燥させたものを用いる。従来の再利用方法と違い、本発明の利用方法では、バージン石膏を多量に用いる必要はなく、再生二水石膏を多く配合することができるのだが、具体的に再生二水石膏の占める割合としては、原料の石膏成分に対して50〜95重量%が好ましく、70〜95重量%が特に好ましい。バージン石膏の占める割合を抑えることで、廃石膏ボードの再利用率を十分に向上させることができ、廃石膏ボードの埋立量が減り、また、バージン石膏の入手コストも抑制できる。
【0046】
セメント系固化材の原料として、再生二水石膏、バージン石膏及び廃石膏破砕物の混合物を用いることもできる。原料の石膏成分のうち再生二水石膏が占める割合は、50〜95重量%が好ましく、70〜95重量%が特に好ましい。
尚、再生二水石膏のみを用いる場合であっても、バージン石膏及び/又は廃石膏破砕物を混合する場合であっても、セメント系固化材原料全体で石膏成分の占める割合は、SO換算で、1.0〜8.0重量%が好ましい。
【0047】
(2)再生半水石膏での利用
図1に示したように、本発明の後処理工程において、再生二水石膏を焼成して得られる再生半水石膏を、石膏ボード原料、セメント原料、セメント系固化材原料及び石膏系固化材原料のうちの少なくとも一つとして使用する場合について説明する。
再生半水石膏を得るためには、装置等により条件は異なるが、一般に、再生二水石膏を100〜200℃の温度で2〜60分間加熱すればよい。
【0048】
(2−1)石膏ボード原料
まず、石膏ボード原料として利用する場合について説明する。石膏ボードは、半水石膏を主体とする芯を石膏ボード用原紙で被覆してなる板状体であり、防耐火性、遮音性、施工性及び経済性等に優れていることから、建築用内装材として建築物に広く使用されている。
【0049】
再生半水石膏は、従来公知の方法に従って石膏ボード原料として使用すればよい。例えば、再生半水石膏を粉砕し、接着助剤、硬化促進剤、軽量化を図るための泡、その他の添加剤等、更には、混和材及び水とを混練し、この結果得られたスラリーを上下の石膏ボード用原紙の間に流し込み、板状に成形し、しかる後に硬化させて粗切断し、強制乾燥し、製品寸法に切断すればよい。
【0050】
石膏ボード原料としては、廃石膏破砕物やバージン石膏を混合することなく、再生半水石膏のみを用いてもよい。再生半水石膏は、晶析により得られた再生二水石膏を加熱して得られたものなので、純度が高く、石膏ボードの強度を低下させる心配はない。また、バージン石膏を主な原料とする従来の再利用方法と比べて、廃石膏ボードの再利用率及び経済性の観点からも好ましい。更に、再生半水石膏は、廃石膏ボードに含まれていた石膏成分を晶析して純度を高めたものであり、こうして得られた再生半水石膏を再び石膏ボード原料に用いることは、本発明の利用方法が循環するという観点から、大変好ましい。
【0051】
再生半水石膏は、廃石膏破砕物やバージン石膏と混ぜて用いることもできる。
廃石膏破砕物としては、廃石膏ボードを構成する石膏成分の一部を破砕して、必要に応じて原紙を除去したもの、即ち二水石膏の状態のものを焼成して半水石膏としたもの(以下、「廃半水石膏」と呼ぶことがある)を用いる。
バージン石膏としても、同様に、二水石膏の状態のものを焼成して半水石膏としたもの(以下、「バージン半水石膏」と呼ぶことがある)を用いる。
【0052】
再生半水石膏と廃半水石膏とを用いると、再生半水石膏のみを用いる場合の利点を活かしつつも、更に、石膏原料の調達にかかるコストやエネルギーが少なくて済み、省エネルギーと節約の観点からのメリットもある。よって、目的とする石膏ボードの品質によっては、再生半水石膏と廃半水石膏との併用は好適である。
再生半水石膏と廃半水石膏を用いるには、まず、廃石膏ボードを構成する石膏成分の一部を破砕して、必要に応じて原紙の除去・焼成をした後、別途保管しておき、残りの石膏成分から二水石膏を再生し、これを焼成して半水石膏とした後、該再生半水石膏と保管しておいた廃半水石膏を、接着助剤や硬化促進剤等と混練する。或いは、廃石膏ボードを構成する石膏成分の一部を破砕して、必要に応じて原紙を除去した後、別途保管しておき、残りの石膏成分から二水石膏を再生し、当該再生二水石膏と、二水石膏である廃石膏破砕物とを混合し、該混合物を焼成して半水石膏とした後、接着助剤や硬化促進剤等と混練する。
【0053】
従来の再利用方法と違い、本発明の利用方法では、バージン石膏を多量に用いる必要はなく、即ち、再生半水石膏の配合量が限定的ではないが、具体的な再生半水石膏が占める割合としては、原料の石膏成分に対し、70〜95重量%が好ましく、85〜95重量%が特に好ましい。廃半水石膏を多量に使用すると、残存する界面活性剤等に起因し、石膏ボードの強度が低下する。
【0054】
一方、再生半水石膏とバージン半水石膏を用いる場合は、これらを接着助剤や硬化促進剤等と混練し、石膏ボードの製造に供すればよい。原料の石膏成分のうち再生半水石膏の占める割合としては、廃石膏ボードの再利用率及び経済性の観点から、50〜95重量%が好ましく、70〜95重量%が特に好ましい。
【0055】
石膏ボード原料として、再生半水石膏、バージン半水石膏及び廃半水石膏を用い、これらを接着助剤等と混練することもできる。原料の石膏成分のうち再生半水石膏が占める割合は、50〜95重量%が好ましく、70〜95重量%が特に好ましい。
【0056】
(2−2)セメント原料
次に、セメント原料として再生半水石膏を使用する場合について説明する。この場合、(1−1)再生二水石膏をセメント原料として用いるときと同様の方法によりクリンカを製造し、再生半水石膏等の石膏成分とクリンカや混合材とを混合・粉砕することで、セメントが得られる。
既に述べたように、セメント原料として用いる石膏としては、再生半水石膏よりも再生二水石膏が好適ではあるが、再生半水石膏も問題なく使用することができる。
【0057】
特に、再生半水石膏は、二水石膏と混合して用いるのが良い。即ち、再生半水石膏は、二水石膏である廃石膏破砕物や、二水石膏であるバージン石膏と混ぜて用いることが好ましい。必要に応じて、更に無水石膏を混合してもよい。また、再生半水石膏の一部を、廃半水石膏やバージン半水石膏に置き換えてもよい。各石膏成分の混合割合は、原料石膏全体に占める二水石膏の割合が30重量%以上となるように設定することが好ましく、50重量%以上がより好ましい。
尚、再生半水石膏のみを用いる場合であっても、バージン石膏及び/又は廃石膏破砕物を混合する場合であっても、セメント原料における石膏成分の占める割合は、SO換算で、1.0〜4.0重量が好ましい。
【0058】
(2−3)セメント系固化材原料
続いて、セメント系固化材原料として再生半水石膏を使用する場合について説明する。具体的な使用方法としては、(1−2)と同様にして、クリンカと、有効成分と、再生半水石膏とを一定の割合で混合することで、セメント系固化材が得られる。有効成分としては、(1−2)再生二水石膏をセメント系固化材原料として利用する場合と同じものが挙げられる。
【0059】
前述したように、セメント系固化材の原料として用いる石膏としては、再生二水石膏及び/又は再生無水石膏の方がより好ましいものの、再生半水石膏でも問題なく使用することができる。
特に、再生半水石膏は、二水石膏及び/又は無水石膏と混合して使用するのが良い。即ち、再生半水石膏は、二水石膏である廃石膏破砕物や、二水石膏あるいは無水石膏であるバージン石膏と混ぜて用いることが好ましい。更に、再生半水石膏の一部を廃半水石膏やバージン半水石膏と置き換えてもよい。この場合、原料石膏全体に占める半水石膏の割合が50重量%以下とすることが好ましい。
尚、再生半水石膏のみを用いる場合であっても、バージン石膏及び/又は廃石膏破砕物を混合する場合であっても、セメント系固化材原料における石膏成分の占める割合は、SO換算で1.0〜8.0重量%が好ましい。
【0060】
(2−4)石膏系固化材原料
続いて、石膏系固化材原料として再生半水石膏を使用する場合について説明する。石膏系固化材とは、半水石膏を主成分とし、各種有効成分を配合したものであり、中性であるため、改良土のpHに影響を与えず、環境にやさしいという特徴を持つ。石膏系固化材原料としては、再生半水石膏を用いる。
【0061】
石膏系固化材原料は、再生半水石膏と各種有効成分とを一定の割合で混合し、ミル(粉砕機)でこれらを粉末にすることで得られる。
有効成分としては、例えば、硬化促進剤、遅延剤、凝集剤、pH調整剤などを挙げることができる。
【0062】
再生半水石膏は、廃半水石膏やバージン半水石膏を混ぜることなく、単独で用いてもよい。再生半水石膏は、前述の再生方法により得られた再生二水石膏を加熱したものなので、不純物をほとんど含有していない。従って、不純物に起因して、中性を保てなくなる心配がない。また、バージン半水石膏を主な原料として用いる従来の再利用方法に比べ、廃石膏ボードの再利用率が向上して廃石膏の埋立量が減り、環境への負荷を減らすことができる。更に、より高価なバージン半水石膏を使用しないので、経済的なメリットもある。
【0063】
再生半水石膏は、廃半水石膏やバージン半水石膏と混ぜて用いることもできる。再生半水石膏と廃半水石膏とを用いると、再生半水石膏のみを用いる場合の利点を活かしつつ、更に省エネルギーと節約の観点からメリットがある。よって、目的とする石膏系固化材の品質によっては、再生半水石膏と廃半水石膏との併用は好適である。
【0064】
再生半水石膏と廃半水石膏とを用いる場合、原料の石膏成分のうち再生半水石膏が占める割合は、70〜95重量%が好ましく、80〜95重量%が特に好ましい。廃半水石膏を多量に使用すると、廃石膏破砕物中の不純物がpHに影響する可能性がある。更に、石膏系固化材は土壌に直接散布・混合されるので、不純物が雨水により流出する可能性もある。
【0065】
一方、再生半水石膏とバージン半水石膏とを用いる場合は、これらを各種有効成分と混合すればよい。本発明では、従来の再利用方法と違い、バージン石膏を多量に配合する必要はなく、即ち、再生半水石膏の配合量に特に制限を課さなくても良いが、具体的な再生半水石膏の占める割合としては、原料の石膏成分に対して50〜95重量%が好ましく、70〜95重量%が特に好ましい。バージン半水石膏の占める割合が大きすぎると、廃石膏ボードの再利用率が向上せず、また、経済的にも好ましくないからである。
【0066】
石膏系固化材の原料として、再生半水石膏、バージン半水石膏及び廃半水石膏の混合物を用いることもできる。原料の石膏成分のうち再生半水石膏が占める割合は、50〜95重量%が好ましく、70〜95重量%が特に好ましい。
【0067】
(3)再生無水石膏での利用
図1に示したように、本発明の後処理工程において、再生二水石膏を焼成して得られる再生無水石膏を、セメント原料及びセメント系固化材原料のうち少なくとも一つとして使用する場合について説明する。
再生無水石膏を得るためには、装置等により条件は異なるものの、一般に、再生二水石膏を400〜900℃の温度で30〜90分間加熱すればよい。
【0068】
(3−1)セメント原料
セメント原料として再生無水石膏を使用する場合について説明する。この場合、(1−1)再生二水石膏や(2−2)再生半水石膏をセメント原料として用いるのと同様の方法によりクリンカを製造し、再生無水石膏とクリンカや混合材とを混合・粉砕することで、セメントが得られる。
【0069】
セメント原料として用いる石膏としては、硬化速度の調整機能の観点から二水石膏のほうが好適であるものの、無水石膏を使用しても問題ない。
【0070】
特に、再生無水石膏は、二水石膏と混合して使用するのがよい。また、必要に応じて半水石膏を混合しても良い。更に、再生無水石膏の一部を、廃石膏破砕物を無水石膏としたものや、バージン石膏を無水物としたものに置き換えてもよい。この場合、原料石膏全体に占める二水石膏の割合が、好ましくは30重量%以上、特に好ましくは50重量%以上となるように、各石膏成分の配合割合を決めるのがよい。
尚、再生無水石膏のみを用いる場合であっても、バージン石膏及び/又は廃石膏破砕物を混合する場合であっても、セメント原料における石膏成分の占める割合は、SO換算で、1.0〜4.0重量%が好ましい。
【0071】
(3−2)セメント系固化材原料
続いて、セメント系固化材原料として再生無水石膏を使用する場合について説明する。具体的な使用方法としては、(1−2)と同様にして、クリンカと、有効成分と、再生無水石膏とを一定の割合で混合することで、セメント系固化材が得られる。有効成分としては、(1−2)再生二水石膏をセメント系固化材原料として用いる場合と同じものが挙げられる。
【0072】
セメント系固化材の原料として用いる石膏としては、再生半水石膏よりも好適に、再生二水石膏とは同程度に好適に、無水石膏を使用することができる。
【0073】
セメント系固化材の原料として、廃石膏破砕物やバージン石膏と混合することなく、再生無水石膏のみを用いてもよい。本発明においては、再生無水石膏のみを用いても、不純物が各種有効成分と反応したり、固化材の硬化に影響を与える恐れがない。また、バージン石膏を主な原料とする従来の再利用方法に比べ、廃石膏ボードの再利用率の観点及び経済性の観点でのメリットがある。
【0074】
再生無水石膏は、廃石膏破砕物やバージン石膏と混ぜて用いることもできる。
廃石膏破砕物としては、廃石膏ボードを構成する石膏成分の一部を破砕して、必要に応じて原紙を除去したものをそのまま用いてもよいが、無水石膏と二水石膏の混在を防ぐため、これを焼成して無水石膏としたものを用いることが好ましい。
再生無水石膏と廃石膏破砕物又はその無水石膏とを用いることは、再生無水石膏のみを用いる場合のメリットを活かしつつ、更に省エネルギーと節約の観点でメリットがある。よって、目的とするセメント系固化材の品質によっては、再生無水石膏と廃石膏破砕物又はその無水石膏との併用は好適である。
【0075】
再生無水石膏と廃石膏破砕物又はその無水石膏とを用いる場合、原料の石膏成分のうち再生無水石膏が占める割合は、70〜95重量%が好ましく、80〜95重量%が特に好ましい。廃石膏破砕物又はその無水石膏を多量に使用すると、廃石膏破砕物に含まれる不純物が、固化材の硬化の挙動に影響を与えたり、各種有効成分と反応を起こす可能性がある。更に、セメント系固化材は土壌に直接散布・混合されるので、不純物が雨水により流出する可能性もある。
【0076】
一方、再生無水石膏とバージン石膏とを用いる場合は、これらをクリンカ及び有効成分と混練すればよい。本発明では、従来の再利用方法と違い、バージン石膏を多量に配合する必要はなく、即ち、再生無水石膏の配合量に特に制限を課さなくても良いが、具体的な再生無水石膏の占める割合としては、原料の石膏成分に対し、50〜95重量%が好ましく、70〜95重量%が特に好ましい。バージン石膏の占める割合が大きすぎることは、廃石膏ボードの再利用率及び経済性の観点から好ましくない。
【0077】
セメント系固化材の原料として、再生無水石膏、バージン石膏及び廃石膏破砕物若しくはその無水石膏の混合物を用いることもできる。原料の石膏成分のうち再生無水石膏が占める割合は、50〜95重量%が好ましく、80〜95重量%が特に好ましい。
尚、再生無水石膏のみを用いる場合であっても、バージン石膏及び/又は廃石膏破砕物若しくはその無水石膏を混合する場合であっても、セメント系固化材原料における石膏成分の占める割合は、SO換算で、1.0〜8.0重量%が好ましい。
【0078】
本発明の廃石膏ボードの利用方法では、後処理工程として、(1)再生二水石膏を、セメント原料又はセメント系固化材原料として使用する工程、(2)再生半水石膏を、石膏ボード原料、セメント原料、セメント系固化材原料又は石膏系固化材原料として使用する工程、及び(3)再生無水石膏を、セメント原料又はセメント系固化材原料として使用する工程の少なくとも一つが選択される。即ち、(1)、(2)及び(3)のうちの一工程を選択しても良いし、図1に表されているように、再生二水石膏を適宜の量に配分して、一部を焼成して再生半水石膏及び/又は再生無水石膏を形成し、再生二水石膏自体、再生半水石膏及び/又は再生無水石膏を(1)、(2)及び(3)のうちの複数の工程に供してもよい。
【0079】
(4)高炉スラグ微粉末用添加材
上記(1)〜(3)の他、本発明の後処理工程では、再生二水石膏由来の石膏、即ち、再生二水石膏、再生半水石膏、再生無水石膏又はこれらの混合物を、例えば、高炉スラグセメントの原料である高炉スラグ微粉末に添加される、高炉スラグ微粉末用の添加材として使用することもできる。
高炉スラグ微粉末とは、高炉水砕スラグを粉砕したものに石膏を添加したものをいい、高炉水砕スラグとは、溶融スラグへの加圧水の噴射あるいは溶融スラグを水槽に注入して急冷、粒状化(水砕)したものをいう。スラグとは、金属製錬の際、溶融した金属から分離して浮かび上がるカスのことである。
【0080】
再生二水石膏由来の石膏を高炉スラグ微粉末用添加材として使用する場合には、高炉水砕スラグに再生二水石膏由来の石膏を添加して、従来公知の方法に従い、混合・粉砕すればよい。再生二水石膏由来の石膏は、単独で用いても良く、廃石膏破砕物やバージン石膏と組み合わせてもよい。原料の石膏成分のうち再生二水石膏由来の石膏の占める割合は、50〜95重量%が好ましい。
再生二水石膏由来の石膏を単独で用いる場合も、廃石膏破砕物やバージン石膏と組み合わせる場合も、高炉スラグ微粉末における石膏成分の添加量は、SO量換算で0.5〜4.0重量%であることが好ましい。添加量が多すぎると、例えば、高炉スラグ微粉末を高炉スラグセメントの原料にする場合に、該セメントの凝結が遅くなったり、該高炉スラグセメントの強度が低下する問題が生じることがある。
図1