(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6088314
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】真空フィードスルー、真空装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/24 20060101AFI20170220BHJP
G01N 23/04 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
H01J37/24
G01N23/04
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-69634(P2013-69634)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-192148(P2014-192148A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100114487
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 幸作
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100117411
【弁理士】
【氏名又は名称】串田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】小濱 達也
(72)【発明者】
【氏名】狩俣 努
【審査官】
佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第02/045153(WO,A1)
【文献】
特開2003−077559(JP,A)
【文献】
特開2000−113922(JP,A)
【文献】
特開2013−008878(JP,A)
【文献】
特開昭62−073651(JP,A)
【文献】
特開2010−062065(JP,A)
【文献】
特開平08−138814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00−23/227、
H01J 37/00−37/02、37/05、37/09−37/18、
37/21、37/24−37/244、
37/252−37/36、
H01L 21/027、21/64−21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空装置の真空側と大気側との電気的な接続を提供するための真空フィードスルーであって、
前記真空側と前記大気側とを隔てる隔壁の一部を構成するための本体であって、該本体を厚み方向に貫通する導電性の複数のピンを有する本体と、
前記本体の前記真空側の面上に配置される接点部材であって、
絶縁性部材によって形成され、平板形状を有する絶縁部と、
前記絶縁部を厚み方向に貫通し、前記絶縁部の両面のうちの、少なくとも前記本体と反対の側の面から突出するように形成されるとともに加圧導電ゴムによって形成された複数の導電部であって、前記ピンと接触するための導電部と
を有する接点部材と、
前記接点部材を前記本体側に押圧する押圧部材と
を備え、
前記押圧部材は、前記真空装置の電気部品に電気的に接続されるフレキシブルプリント基板を前記押圧部材と前記接点部材との間に挟んだ状態で、前記接点部材を前記本体側に押圧可能に構成された
真空フィードスルー。
【請求項2】
請求項1に記載の真空フィードスルーであって、
前記複数の導電部の各々は、前記絶縁部の両面から突出して形成された
真空フィードスルー。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の真空フィードスルーであって、
前記複数のピンは、前記本体の前記真空側の面から突出している
真空フィードスルー。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の真空フィードスルーであって、
前記複数の導電部の各々は、前記複数のピンの1つと複数の前記導電部とが接触可能な大きさおよび間隔で形成されている
真空フィードスルー。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の真空フィードスルーであって、
前記本体は、前記複数のピンの外側において、前記真空側の面から突出する少なくとも2つの突出部を備え、
前記接点部材および前記押圧部材には、前記突出部に対応する位置に、前記突出部を挿入可能な貫通穴が形成された
真空フィードスルー。
【請求項6】
請求項5に記載の真空フィードスルーであって、
前記押圧部材は、
前記接点部材を押圧するための平坦な押圧面を有する押圧部と、
前記押圧部よりも前記本体と反対の側に配置され、前記押圧部の位置を固定するための固定部と
を備え、
前記押圧部の外周側には、前記貫通穴としての第1の貫通穴が形成されており、
前記固定部には、前記貫通穴としての第2の貫通穴が形成されており、
前記突出部は、基部と、該基部よりも前記本体と反対の側に位置し、該基部よりも径が小さい小径部と、を備え、
前記固定部の前記第2の貫通穴の端部には、前記小径部と嵌合する切欠形状が形成され
た
真空フィードスルー。
【請求項7】
真空装置であって、
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の真空フィードスルーと、
前記フレキシブルプリント基板と
を備えた真空装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空装置の真空側と大気側との電気的な接続を提供するための接続技術に関する。
【背景技術】
【0002】
真空装置では、真空容器内の真空を保持しつつ、真空容器内の電極やセンサなどの電気部品と外部(大気側)との電気的な導通を確保するために、真空フィードスルー(以下、単にフィードスルーとも呼ぶ)が使用される。例えば、真空装置の1つとしての走査電子顕微鏡では、電子線を走査するための偏向器、電子線を細く絞るための電子レンズ、光軸調整を行うためのアライナ、二次電子や反射電子を検出するための各種検出器(マルチチャネルプレート、光電子増倍管、シンチレータなど)など、多くの電気部品が使用されており、それらの部品からの多数の配線は、真空フィードスルーを介して大気側と電気的に接続される。
【0003】
かかる真空フィードスルーとしては、従来、真空側と大気側とを隔てるためのフランジなどに、真空側から大気側に貫通した電極に接続された複数のピンが真空側に配置されたタイプが一般的である。かかるタイプでは、真空内の電気部品からの配線の先端に設けられたソケットなどの接点用部品を、上記の複数のピンにそれぞれ差し込むことによって電気的な接続が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−61966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の構成では、配線の本数が多くなると、いくつかの改善すべき点が生じ得る。例えば、真空装置の内部および外部での配線の束ができ、それらの接続作業が複雑になる。しかも、配線の数に比例してピンの数が増えると、それらのピン間には一定の距離を確保する必要があることから、フィードスルー部の部品が大型化することになる。また、配線の数が増えると、真空容器の内部において、多数の配線を引き回すための領域を確保する必要が生じる。これらのことは、真空容器そのものの大型化を招くことになる。真空容器の大型化は、真空ポンプなど、関連装置の大型化をも招き得る。このようなことから、真空フィードスルーまたは真空装置の小型化が求められる。また、このような真空フィードスルーは、取り付けやメンテナンスを容易に行えることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
本発明の第1の形態は、真空装置の真空側と大気側との電気的な接続を提供するための真空フィードスルーとして提供される。この真空フィードスルーは、真空側と大気側とを隔てる隔壁の一部を構成するための本体であって、本体を厚み方向に貫通する導電性の複数のピンを有する本体と、本体の真空側の面上に配置される接点部材であって、絶縁性部材によって形成され、平板形状を有する絶縁部と、絶縁部を厚み方向に貫通し、絶縁部の両面のうちの、少なくとも本体と反対の側の面から突出するように形成されるとともに加圧導電ゴムによって形成された複数の導電部であって、ピンと接触するための導電部と、
を有する接点部材と、接点部材を本体側に押圧する押圧部材と、を備える。押圧部材は、真空装置の電気部品に電気的に接続されるフレキシブルプリント基板を押圧部材と接点部材との間に挟んだ状態で、接点部材を本体側に押圧可能に構成される。
【0008】
かかる真空フィードスルーによれば、接点部材が押圧部材によって押圧されることによって、導電部が導通可能な状態になり、本体のピンと、フレキシブルプリント基板とを電気的に接続できる。すなわち、真空装置の真空側と大気側とを電気的に接続できる。接点部材には、加圧導電ゴムが利用されるので、従来のピンとソケットを嵌め合わせるような構造は不要となり、真空フィードスルーを薄型化および小型化できる。その結果、真空装置を小型化できる。しかも、フレキシブルプリント基板を使用できるので、真空装置内の配線の引き回しスペースも大幅に小さくでき、真空装置をさらに小型化できる。
【0009】
本発明の第2の形態として、第1の形態において、複数の導電部の各々は、絶縁部の両面から突出して形成されていてもよい。かかる形態によれば、本体のピンと導電部とをいっそう確実に接触させることができる。
【0010】
本発明の第3の形態として、第1または第2の形態において、複数のピンは、本体の真空側の面から突出していてもよい。かかる形態によれば、ピンが突出していない場合と比べて、導電部に大きな圧力が加わるので、加圧導電ゴムによって形成された導電部の導電性をいっそう確実に確保できる。
【0011】
本発明の第4の形態として、第1ないし第3のいずれかの形態において、複数の導電部の各々は、複数のピンの1つと複数の導電部とが接触可能な大きさおよび間隔で形成されていてもよい。かかる形態によれば、本体と接点部材との位置関係が僅かにずれても、ピンと導電部とを確実に接触させることができる。したがって、真空フィードスルーの取り付け時において、本体と接点部材との位置決め負担が軽減される。
【0012】
本発明の第5の形態として、第1ないし第4のいずれかの形態において、本体は、複数のピンの外側において、真空側の面から突出する少なくとも2つの突出部を備えていてもよい。接点部材および押圧部材には、突出部に対応する位置に、突出部を挿入可能な貫通穴が形成されていてもよい。かかる形態によれば、フレキシブルプリント基板にも同様に貫通穴を設けておけば、接点部材、フレキシブルプリント基板および押圧部材を、突出部がこれらの貫通穴を貫通するようにセットして、真空フィードスルーの取り付けを行える。したがって、真空フィードスルーの取り付け時における位置決め負担が軽減される。
【0013】
本発明の第6の形態として、第5の形態において、押圧部材は、接点部材を押圧するための平坦な押圧面を有する押圧部と、押圧部よりも本体と反対の側に配置され、押圧部の位置を固定するための固定部とを備えていてもよい。押圧部の外周側には、貫通穴としての第1の貫通穴が形成されていてもよい。固定部には、貫通穴としての第2の貫通穴が形成されていてもよい。突出部は、基部と、基部よりも本体と反対の側に位置し、基部よりも径が小さい小径部と、を備えていてもよい。固定部の第2の貫通穴の端部には、小径部と嵌合する切欠形状が形成されていてもよい。かかる形態によれば、接点部材、フレキシブルプリント基板、押圧部および固定部を、突出部がこれらの貫通穴を貫通するようにセットした後に、切欠部と小径部とが嵌合するように固定部をずらすだけで、押圧部の位置を容易に固定できる。これによって、本体と押圧部とに挟まれた、接点部材およびフレキシブルプリント基板の位置も固定される。
【0014】
本発明の第7の形態は、真空装置として提供される。この真空装置は、第1ないし第6のいずれかの真空フィードスルーと、フレキシブルプリント基板とを備える。かかる真空装置によれば、第1ないし第6の形態と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施例としての真空装置の主要部分を示す説明図である。
【
図2】
図1に示した真空装置の部分断面を概略的に示す説明図である。
【
図3】真空フィードスルーの構成を示す分解斜視図である。
【
図5】真空フィードスルーの組み立て途中を示す説明図である。
【
図6】真空フィードスルーを組み立てた状態を示す説明図である。
【
図7】真空フィードスルーのピン構成の一例を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.実施例:
図1は、本発明の一実施例としての真空装置100の主要部分を示す。本実施例では、真空装置100は、走査電子顕微鏡である。図示するように、真空装置100は、鏡筒150と、フレキシブルプリント基板(Flexible Printed Circuits、以下、FPCとも呼ぶ)140と、隔壁コラム160とを備えている。略円筒形の鏡筒150の内部には、試料に電子線を照射するための電子光学系や、試料を載置するステージなどが設けられている。FPC140は、鏡筒150内に収容された電子部品と、後述する真空フィードスルー(以下、単にフィードスルーとも呼ぶ)20とを電気的に接続する。隔壁コラム160は、鏡筒150の上方において鏡筒150の上部を覆うように配置されており、真空装置100の真空側と大気側とを隔てる隔壁として機能する。隔壁コラム160には、その厚み方向(径方向)に貫通する貫通穴165が形成されている。この貫通穴165には、後述するフィードスルー20が配置される。
【0017】
図2は、
図1に示した真空装置100の概略部分断面図である。図示するように、鏡筒150の内部には、電子光学系としての、電子銃110と電子部品120とが収容されている。電子部品120は、電子線を走査するための偏向器、電子線を細く絞るための電子レンズ、光軸調整を行うためのアライナなどである。電子銃110によって発生する電子線は、電子部品120を通って、試料(図示省略)に照射される。試料への電子線への照射によって得られる二次荷電粒子は、マルチチャネルプレート、光電子増倍管、シンチレータなどの各種検出器(図示省略)で検出される。
【0018】
鏡筒150には、厚み方向に貫通する複数の導電性のピン130が貫通しており、このピン130を介して、鏡筒150の外部に配置されたFPC140と、鏡筒150の内部に配置された電子部品120とが電気的に接続されている。なお、
図1では、図示を省略しているが、電子部品120よりも電子線の下流側に配置された各種検出器なども、同様にして、FPC140と接続されている。かかる鏡筒150は、ケーシング180に形成された貫通穴に部分的に挿入された状態で配置されている。鏡筒150を上部で覆う隔壁コラム160は、真空装置100のケーシング180と気密に当接している。また、隔壁コラム160の貫通穴165は、フィードスルー20によって気密に塞がれる。これによって、隔壁コラム160およびケーシング180の内部と外部とが気密に隔離される。当該内部は、真空状態に保たれる。当該外部は、大気に開放されている。
【0019】
フィードスルー20は、本体30と接点部材50と押圧部材60とを備えている。本体30は、上述したように、貫通穴165を塞ぐことによって、真空側と大気側とを隔てる隔壁の一部を構成する。本体30は、略板状の形状を有しており、非導電性の任意の材料で形成することができる。この本体30は、厚み方向に貫通する導電性の複数のピン40を有している。ピン40の数は、任意であるが、本実施例では14本である。
図7にピン40の構成例を示す。
図7(a)は、交流電圧を使用する場合の例であり、
図7(b)は、直流電圧を使用する場合の例である。ピン40は、大気側では、本体30から大きく突
出している。このピン40の大気側は、ソケットなどのコネクタを介して、真空装置100を制御する制御装置などの外部機器に接続される。ピン40の真空側は、本実施例では、本体30から僅かに突出している。ただし、ピン40の真空側の端面は、本体30と同一平面に形成されていてもよい。
【0020】
接点部材50は、ピン40とFPC140とを電気的に接続させる部材である。この接点部材50は、本体30の真空側の面上に配置される。詳しくは後述するが、接点部材50は、加圧導電ゴムによって形成された部位を有している。加圧導電ゴムは、絶縁材料の中に導線性の粒子が分散して配置されており、圧縮されることで、分散していた粒子同士が接触し、圧縮方向に導通できるようになる。加圧導電ゴムは、圧力が加えられた方向では、電気抵抗が非常に小さく(例えば、数Ω以下)、圧力が加えられていない方向では、電気抵抗が大きい(例えば、数MΩ)性質を有する異方性材料である。なお、
図2では、接点部材50を模式的に表しており、ピン40と接点部材50との対応関係は、必ずしも正確ではない。
【0021】
押圧部材60は、FPC140を押圧部材60と接点部材50との間に挟んだ状態で、接点部材50を本体30側に押圧する。これによって、接点部材50は、その厚み方向に圧縮され、接点部材50に含まれる加圧導電ゴムは、厚み方向に電気を導通させることが可能になる。
【0022】
図3は、フィードスルー20の分解斜視図である。本体30の真空側の面には、その外周部に扁平リング状の溝が形成されている。この溝には、本体30と隔壁コラム160との間をシールするためのOリングが挿入される。当該の溝の内側には、14本のピン40が突出している。溝の内側かつピン40の外側には、本体30の真空側の面から突出する突出部31が設けられている。本実施例では、突出部31は、4つ設けられているが、突出部31の数は、2つ以上の任意の数とすることができる。この突出部31は、位置決めピンとしての役割を有している。突出部31は、本体30の真空側の面に最も近い部位である基部32と、基部32に隣接し、突出部31よりも径が小さい小径部33と、突出部31の先端に位置し、小径部33よりも径が大きい先端部34とを備えている。
【0023】
接点部材50は、略板状の形状を有しており、その中央には、ピン40が配置された領域を全てカバーできる大きさの接点部51が形成されている。接点部51には、接点部材50の平面から突出する複数の導電部52が形成されている。また、接点部51の外側の4隅には、貫通穴53が形成されている。
【0024】
接点部51の断面構造を
図4に示す。図示するように、接点部51は、導電部52と絶縁部54とを備えている。絶縁部54は、平板形状を有しており、絶縁性部材、例えば、シリコーンによって形成される。複数の導電部52は、相互に離間しており、絶縁部54を厚み方向に貫通するとともに、絶縁部54の両面から突出するように形成されている。本実施例では、導電部52の配列間隔は、0.8mmである。この導電部52は、上述した加圧導電ゴムによって形成されている。かかる構成では、電子部品120に最大2kV程度の電圧が印可される場合であっても、絶縁破壊などの不具合は防止される。本実施例では、複数の導電部52は、1つのピン40と、複数の導電部52とが接触可能な大きさ(面積)および間隔で形成されている。かかる構成によれば、本体30と接点部材50との位置関係が僅かにずれても、ピン40と導電部52とを確実に接触させることができる。それによって、フィードスルー20の取り付け時における位置決め負担が軽減される。ただし、ピン40と導電部52とは、1対1の関係で接触するものであってもよい。
【0025】
押圧部材60は、押圧部61と固定部62とを備えている。押圧部61は、板状形状を有しており、接点部材50側の面は、接点部材50を本体30に向けて均一に押圧するた
めに平坦に形成されている。押圧部61の両端は、中央部よりも厚みが小さくなっている。この両端部には、それぞれ、2つの貫通穴63が形成されている。また、この両端部には、押圧部61の位置を固定するための固定部62がそれぞれ配置される。固定部には、それぞれ、2つの貫通穴64が形成されている。貫通穴64の各々の端部には、同一の方向に切り欠かれた切欠形状が形成されている。
【0026】
かかるフィードスルー20では、まず、突出部31が貫通穴53を貫通するように、接点部材50を本体30の真空側の面上に配置する。かかる状態を
図5に示す。なお、
図5では、押圧部61は、図示を省略している。次に、接点部材50の上にFPC140を配置する。FPC140には、複数のピン40のそれぞれに対応するランド141が形成されている。また、ランド141の外周には、突出部31のそれぞれに対応する位置に貫通穴142が形成されている。FPC140は、突出部31がこの貫通穴142を貫通するように配置される。本実施例では、突出部31の基部32の高さは、接点部材50およびFPC140の厚みとほぼ等しいように形成されている。つまり、本体30上に接点部材50およびFPC140を配置した際、FPC140と、突出部31の本体30と反対側の端面とは、ほぼ同じ平面上に位置する。
【0027】
次に、突出部31が押圧部61の貫通穴63および固定部62の貫通穴64を貫通するように、FPC140の上に押圧部材60を配置する。本実施例では、突出部31の小径部33の高さは、押圧部61および固定部62の厚みとほぼ等しいように形成されている。つまり、押圧部61および固定部62を配置した際、固定部62の押圧部61と反対側の面と、先端部34の小径部33側の端面とは、ほぼ同じ平面上に位置する。そして、
図6に示すように、固定部62をスライドさせて、貫通穴64の切欠形状に小径部33を嵌合させる。このとき、押圧部61および固定部62は、基部32と先端部34との間に嵌合する。かかる構成によって、押圧部61は、その面方向の位置および面に直交する方向の位置が固定される。それによって、本体30と押圧部61とに挟まれた、接点部材50およびFPC140の位置も固定される。
【0028】
かかるフィードスルー20によれば、本体30のピン40と接点部材50の導電部52とが接触し、かつ、導電部52と、FPC140のランド141とが接触した状態で、導電部52が押圧されて導通可能な状態になる。このため、ピン40とFPC140とを電気的に接続できる。すなわち、真空装置100の真空側と大気側とを電気的に接続できる。接点部材50は、非常に薄いので、従来のピンによる接続と比べて、フィードスルー20の鏡筒150の厚み方向の大きさを大幅に低減できる。しかもFPC140によって、配線の引き回しが大幅に簡素化される。したがって、フィードスルー20および真空装置100を小型化できる。真空装置100の小型化は、排気装置などの関連装置の小型化や真空装置100の製造コストの低減にも資する。
【0029】
また、フィードスルー20によれば、ピン40は、本体30の真空側の面から突出しているので、ピン40と接触する導電部52により大きな圧力を加えることができる。したがって、導電部52の導電性をより確実に確保できる。さらに、導電部52は、ピン40側にも突出しているので、ピン40と導電部52とをより確実に接触させることができる。
【0030】
さらに、フィードスルー20によれば、突出部31を位置決めピンとして使用し、接点部材50、FPC140および押圧部材60に形成された貫通穴によって、位置決めを行うことができる。したがって、真空フィードスルーの取り付け時において、本体と接点部材との位置決め負担が軽減する。また、フィードスルー20によれば、固定部62をスライドさせるだけで、押圧部61の位置を固定できるので、フィードスルー20の取り付けが容易である。特に、真空環境下においては、作業員は、手袋などを装着した状態で作業
を行うことになるので、極めて単純な作業のみで押圧部61を固定できる本実施例の構成は、非常に有効である。
【0032】
押圧部材60は、上述した構成に限らず、任意の方法で固定可能に構成されていてもよい。例えば、押圧部61は、ボルトまたはナットによって、締結されてもよい。また、接点部材50、FPC140および押圧部材60の位置決めのための構成は、任意の構成とすることができる。例えば、本体30の真空側の面から、接点部材50、FPC140および押圧部材60の外縁部の位置を規定するピンが突出し、そのピンの内側に接点部材50、FPC140および押圧部材60を嵌め込んでもよい。
【0033】
B−2.変形例2:
真空装置100は、走査電子顕微鏡に限らず、任意の真空装置として実現可能である。例えば、真空装置100は、他の分析試験装置(例えば、写像型電子顕微鏡)であってもよいし、真空薄膜形成装置(例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置)などであってもよい。
【0034】
以上、いくつかの実施例に基づいて本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0035】
20…フィードスルー
30…本体
31…突出部
32…基部
33…小径部
34…先端部
40…ピン
50…接点部材
51…接点部
52…導電部
53…貫通穴
54…絶縁部
60…押圧部材
61…押圧部
62…固定部
63,64…貫通穴
100…真空装置
110…電子銃
120…電子部品
130…ピン
141…ランド
142…貫通穴
150…鏡筒
160…隔壁コラム
165…貫通穴
180…ケーシング