特許第6088780号(P6088780)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アルバックの特許一覧

<>
  • 特許6088780-プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置 図000002
  • 特許6088780-プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6088780
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20170220BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20170220BHJP
   C23C 14/50 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   C23C14/34 J
   H01L21/68 R
   C23C14/50 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-220249(P2012-220249)
(22)【出願日】2012年10月2日
(65)【公開番号】特開2014-70275(P2014-70275A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】藤井 佳詞
(72)【発明者】
【氏名】中村 真也
【審査官】 塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−057599(JP,A)
【文献】 特開2006−233283(JP,A)
【文献】 特開2000−256845(JP,A)
【文献】 特開2011−058085(JP,A)
【文献】 特開2002−203837(JP,A)
【文献】 特開2002−367962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
C23C 16/00−16/56
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空処理室内で、金属製の基台表面に装着されるプレートに処理対象物を静電吸着し、真空引きされたこの真空処理室内にプラズマ励起用のガスを導入し、この真空処理室内に設けた電極に電力投入してプラズマ雰囲気を形成し、処理対象物に対してプラズマ処理を行うプラズマ処理方法において、
前記プラズマ処理の開始前に前記基台の電位をフローティングとする第1工程と、
前記プラズマ処理中に基台に対してプラズマ処理開始時の基板電位より高い正の電位を印加する第2工程とを含むことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項2】
前記第2工程は、前記プラズマ処理の終了直後の処理対象物が除電された状態となるように、前記プラズマ処理終了直前の所定期間で実施される請求項1記載のプラズマ処理方法。
【請求項3】
電極を備えた真空処理室と、この真空処理室内にプラズマ励起用のガスを導入するガス導入手段と、電極に電力投入する第1電源と、金属製の基台とその表面に装着されるプレートとを有して真空処理室内で処理対象物を静電吸着するステージとを備え、
基台が絶縁材を介して電気的にフローティングにされて真空処理室内に設置され、当該基台に、スイッチング素子を介して接続されてプラズマ処理中に、基台に対してプラズマ処理開始時の基板電位より高い正の電位を印加する第2電源を更に備えることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記電極が絶縁物のターゲットであり、前記第1電源が高周波電源であり、プラズマ処理として高周波スパッタリングにより処理対象物表面に成膜することを特徴とする請求項3記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置に関し、より詳しくは、プラズマ処理の際、金属製の基台表面に装着されるプレートに処理対象物が静電吸着している場合に、簡単な構成で可及的速やかにプラズマ処理後にプレートから処理対象物を脱離できるようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程において所望のデバイス構造を得るために、シリコンウエハ等の処理対象物に対して、スパッタリング法及びプラズマCVD法等による成膜処理、イオン注入処理やエッチング処理などの各種のプラズマ処理が行われ、これらのプラズマ処理を行うプラズマ処理装置では、真空雰囲気中の真空処理室にて処理対象物を位置決め保持するために、静電チャック付きステージが設けられている。この場合、ステージは、例えば金属製の基台とその表面に装着された窒化アルミニウムのセラミックスプレート(チャックプレート)とを有し、このチャックプレートに正負の電極を埋設してチャックプレート表面に処理対象物を静電吸着する静電チャックとして構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、チャック電源からチャックプレートの電極に電圧印加して処理対象物を静電吸着した状態で所望のプラズマ処理を施した後、吸着状態の処理対象物をチャックプレートから脱離するのに際しては、電極への電圧印加を停止する。このとき、処理対象物をチャックプレートから可及的速やかに脱離可能な状態におくために、プラズマ処理により処理対象物に帯電した電荷を積極的に除電することが望ましい。従来、このような除電方法としてガス除電方法などがある。例えば、特許文献2には、処理対象物に向けて伝熱ガスを噴出する伝熱ガス供給部を設け、この伝熱ガス供給部から、処理対象物に向けてイオン化ガスを供給することが開示されている。
【0004】
然しながら、特許文献2の如く、プラズマ処理終了後、イオン化ガスを供給する工程を設けて処理対象物を除電するのでは、当該工程だけ処理時間が長くなり、スループットを向上させることにとって障害となる。しかも、処理対象物に向けてイオン化ガスを供給する部品を設けるため、装置構成が複雑になり、その上、そのような部品は高価であるため、装置のコストアップを招来する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−277545号公報
【特許文献2】特開2010−199239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、簡単な構成で静電吸着した処理対象物を可及的速やかに脱離できるようにしたプラズマ処理方法及びプラズマ処理装置を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、真空処理室内で、金属製の基台表面に装着されるプレートに処理対象物を静電吸着し、真空引きされたこの真空処理室内にプラズマ励起用のガスを導入し、この真空処理室内に設けた電極に電力投入してプラズマ雰囲気を形成し、処理対象物に対してプラズマ処理を行う本発明のプラズマ処理方法は、プラズマ処理開始前に前記基台の電位をフローティングとする工程と、プラズマ処理中に基台に対してプラズマ処理開始時の基板電位より高い正の電位を印加する工程とを含むことを特徴とする。
【0008】
上記によれば、プラズマ処理の際にプレートに処理対象物が静電吸着し得る場合、プラズマ処理をする間、例えばプラズマ処理の終了直前に、基台に正の(直流)電位を印加すると、処理対象物を帯電させている電子が、低抵抗のプラズマを介してアースへと流れて処理対象物が除電される。従って、プラズマ処理終了直後の処理対象物は、プレートから可及的速やかに脱離可能な状態となる。その結果、上記従来の如く、処理対象物に向けてイオン化ガスを供給して除電する等の工程を省略してスループットを向上することができ、しかも、イオン化ガスを供給する部品等を必要としないので、装置構成が簡単で、その上、装置の低コスト化を図ることができる。
【0009】
なお、本発明において、プレートとは、ウエハなどの処理対象物が設置されるものであり、この状態でプラズマ処理を行うと、処理対象物が帯電し得るものをいい、例えば、プレートを静電チャックのチャックプレートとすることができ、また、プレート上での処理対象物の帯電は、石英板などの絶縁性プレートであっても起こり得る。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明のプラズマ処理装置は、電極を備えた真空処理室と、この真空処理室内にプラズマ励起用のガスを導入するガス導入手段と、電極に電力投入する第1電源と、金属製の基台とその表面に装着されるプレートとを有して真空処理室内で処理対象物を静電吸着するステージとを備え、基台が絶縁材を介して電気的にフローティングにされて真空処理室内に設置され、当該基台にスイッチング素子を介して接続されてプラズマ処理中に、基台に対してプラズマ処理開始時の基板電位より高い正の電位を印加する第2電源を更に備えることを特徴とする。この場合、プレートを静電チャックのチャックプレートとすることができる。




【0011】
これによれば、プレートに静電吸着されている処理対象物を可及的速やかに脱離できる簡単で低コストの構成を実現することができる。
【0012】
なお、本発明は、前記プレートが静電チャックのチャックプレートであり、また、前記電極が絶縁物のターゲットであり、前記第1電源が高周波電源であり、プラズマ処理として高周波スパッタリングにより処理対象物表面に成膜するものに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のスパッタリング装置の模式図。
図2】スパッタリング時に高周波電源及び直流電源をオンオフしたときの基板表面電位の変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、プラズマ処理装置及びその方法を、プレートを静電チャックのチャックプレート、ターゲットを絶縁物、処理対象物をシリコンウエハ(以下、基板Wと表記する)とし、基板W表面に絶縁膜を成膜するスパッタリング装置及びその方法に適用した実施形態を説明する。
【0015】
図1を参照して、SMは、本実施形態の高周波スパッタリング装置である。この高周波スパッタリング装置SMは、真空処理室1aを画成する真空チャンバ1を備え、真空チャンバ1の天井部にカソードユニットCが着脱自在に取付けられている。以下においては、図1中、真空チャンバ1の天井部側を向く方向を「上」とし、その底部側を向く方向を「下」として説明する。
【0016】
カソードユニットCは、ターゲット2と、このターゲット2の上方に配置された磁石ユニット3とから構成されている。ターゲット2は、アルミナ、窒化シリコンまたは炭化シリコンなどの絶縁物で構成され、基板Wの輪郭に応じて、公知の方法で平面視円形や矩形に形成されたものである。ターゲット2は、バッキングプレート21に装着した状態で、そのスパッタ面22を下方にして、真空チャンバ1の上壁に設けた第1絶縁体41を介して真空チャンバ1の上部に取り付けられる。また、ターゲット2は、公知の構造を有する高周波電源(第1電源)E1に接続され、スパッタリング時、アースとの間で所定周波数(例えば、13.56MHz)の高周波(交流)電力が投入されるようにしている。ターゲット2の上方に配置される磁石ユニット3は、ターゲット2のスパッタ面22の下方空間に磁場を発生させ、スパッタリング時にスパッタ面22の下方で電離した電子等を捕捉してターゲット2から飛散したスパッタ粒子を効率よくイオン化する公知の閉鎖磁場若しくはカスプ磁場構造を有するものであり、ここでは詳細な説明を省略する。
【0017】
真空チャンバ1の底部中央には、ターゲット2に対向させてステージ5が配置されている。ステージ5は、例えば基板Wの輪郭に対応した上面形状を持つ金属製の基台51と、この基台51上面に接着されるチャックプレート(プレート)52とで構成されている。チャックプレート52は、基台51の上面より一回り小さい外径を有し、図示省略のチャック電源から電圧が印加される静電チャック用の電極52a,52bが埋設されて静電チャックを構成している。この場合、チャックプレート52は、リング状の第1防着板53により基台51の上面に着脱自在に取り付けられている。第1防着板53は、スパッタリング中に基板Wに発生するバイアス電位を低減するために、第2絶縁体42を介して基台51の上面に取り付けられている。なお、静電チャックの構造については、単極型や双極型等の公知のものが広く利用できるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0018】
基台51は、真空チャンバ1の底面に設けた開口に気密に装着された断面視L字状の第3絶縁体43で保持され、アース接地の真空チャンバ1とは縁切りされ、電気的にフローティングにされている。第3絶縁体43の上部は第1防着板53でカバーされている。第1〜第3の各絶縁体41,42,43の材質としては特に制限はなく、ガラス入りのフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)や、ガラス入りのエポキシ樹脂などを用いることができる。また、ステージ5には、電気的にフローティングである基台51に対して正の直流電位を印加する直流電源(第2電源)E2からの出力がスイッチング素子54を介して接続されている。直流電源E2としては、公知の構造のものを利用でき、ターゲット2への投入電力等を考慮して、400V以下の正電位が印加されるようにしている。なお、エッチング装置などの他のプラズマ処理装置にあっては、真空処理室内で行われるプラズマ処理に応じて印加電圧が適宜設定される。また、スイッチング素子54保護用の抵抗を設けてもよい。基台51には更に、冷媒循環用の通路55aやヒータ55bが内蔵され、スパッタリング中、基板Wを所定温度に制御することができるようにしている。
【0019】
真空チャンバ1の側壁には、スパッタガスを導入するガス導入手段としてのガス管6が接続され、このガス管6がマスフローコントローラ6aを介して図示省略のガス源に連通する。スパッタガスには、真空処理室1aにプラズマを形成する際に導入されるアルゴンガス等の希ガスだけでなく、酸素ガスや窒素ガスなどの反応ガスが含まれる。真空チャンバ1の側壁にはまた、ターボ分子ポンプやロータリポンプなどで構成される真空ポンプPに通じる排気管7が接続され、真空処理室1aを一定速度で真空引きし、所定圧力に保持できるようにしている。
【0020】
真空チャンバ1内でステージ5の周囲には、第3絶縁体43と所定間隔を存して、アース電極としての環状の第2防着板8が設けられている。第2防着板8は、その内周縁部から径方向外側に下方に傾斜するように形成されたものである。なお、特に図示して説明しないが、第2防着板8に、上下方向に貫通する複数個の貫通孔を開設するようにしてもよい。そして、第2防着板8は、アース接地の真空チャンバ1の底面に設置され、スパッタリング時にアースとしての役割を果たすようにしている。真空チャンバ1内にはまた、この真空チャンバ1の内壁面へのスパッタ粒子の付着を防止するために、ターゲット2と基板Wとの間の空間を囲う第3防着板9が配置されている。
【0021】
第3防着板9は、夫々がアルミナ、ステンレス等の公知の材料製である、真空チャンバ1の上壁に吊設した上防着板91と、真空チャンバ1の底面に立設した下防着板92と、上防着板91及び下防着板92の間で両防着板91,92より真空チャンバ1の内側に設けられて上防着板91及び下防着板92と上下方向でオーバーラップする可動防着板93とで構成されている。可動防着板93の外側面には、周方向に90°間隔で真空チャンバ1の底面を貫通して設けたシリンダCyの駆動軸Crが夫々連結され、各駆動軸Crにより支持されている。そして、シリンダCyにより、真空チャンバ1の内壁面へのスパッタ粒子の付着を防止する下動位置(図1に示す位置)と、上防着板91側に移動することで可動防着板93と下防着板92との間に隙間を形成し、図外のゲートバルブで開閉される搬送用の透孔Toを通してステージ5への基板Wの搬出・搬入を行い得る上動位置との間で可動防着板93が移動自在となる。以下に、上記高周波スパッタリング装置SMによるスパッタリング方法を説明する。
【0022】
図2も参照して、図外の真空搬送ロボットにより、可動防着板93の上動位置にて、真空雰囲気下の真空処理室1aに搬送用の透孔Toを通して、ステージ5上へと基板Wを搬出し、ステージ5のチャックプレート52上面に基板Wを載置する。このとき、スイッチング素子54はオフ状態であり、ステージ5はフローティングにしている。真空搬送ロボットが退避すると、可動防着板93を下動位置に移動し、真空チャンバ1内壁面へのスパッタ粒子の付着を防止する。そして、静電チャック用の電極52a,52bに対してチャック電源から所定電圧を印加すると、基板Wがチャックプレート52表面に静電吸着される。
【0023】
次に、真空処理室1a内が所定圧力(例えば、10−5Pa)まで真空引きされると、ガス導入手段6を介してスパッタガスとしてのアルゴンガスが一定の流量(例えば、アルゴン分圧が2Paになる流量)で導入し、これに併せてターゲット2に高周波電源E1から所定の高周波電力(例えば、1〜5kW)を投入する。これにより、真空処理室1a内にプラズマが形成され、プラズマ中のアルゴンガスのイオンでターゲット2が、目標膜厚に応じて適時設定されるスパッタ時間だけスパッタリングされ、ターゲット2からのスパッタ粒子が基板Wに付着、堆積して絶縁膜が成膜される。この場合、プラズマを介して高周波電流がアースへと流れるが、本実施形態では、ステージ5と、基板W周囲の第1防着板53とが電気的にフローティングになっているため、基板Wに流れる高周波電流が制限され、基板Wにバイアス電位がかかることが抑制された状態で成膜される。
【0024】
ここで、スパッタリングによる成膜中、基板W表面にはプラズマ中の電子が帯電することで、基板Wの電位が、図2中、線aで示すように、徐々に低下していく。そこで、本実施形態では、設定されたスパッタ時間が経過する前に、スイッチング素子54をオンして一定期間だけ直流電源E2からステージ5の基台51に対して正の電位が印加される。これにより、基板W電位はゼロV近傍の電位となる(図2参照)。この場合、正の電位の印加は、スパッタリング中(プラズマ処理中)のいずれかであればよいが、スパッタリング終了時点で、基板Wが帯電していないように(つまり、基板W電位が約0Vとなっているように)、スパッタリング終了直前であることが好ましい。
【0025】
スパッタリングによる成膜終了後、ターゲット2への高周波電力の投入とガス導入とが停止され、チャック電源からの電圧印加を停止すると共にアースに短絡して基板Wの吸着を解除する。そして、図外の真空搬送ロボットにより、真空処理室1aに搬送用の透孔Toを通して、ステージ5上にある成膜済みの基板Wが搬出される。
【0026】
以上の実施形態によれば、ステージ5のチャックプレート52で静電吸着された基板Wに対してスパッタリングによる成膜処理をする間の一定期間基台51に正の電位を印加するため、基板Wに帯電した電子が低抵抗のプラズマを介してアースへと流れて基板Wが除電される。従って、スパッタリング終了直後の基板Wをチャックプレート52から可及的速やかに脱離可能な状態にできる。この場合、上記従来例の如く、基板に向けてイオン化ガスを供給する等の工程を省略することができてスループットを向上でき、しかも、イオン化ガスを供給する部品等を必要としないため、装置構成が簡単で、その上、装置の低コスト化を図ることができる。
【0027】
ここで、上記高周波スパッタリング装置SMだけでなく、エッチング装置などを含むプラズマ処理装置においては、プラズマ処理中、プラズマに曝される処理対象物が所謂セルフバイアスと呼ばれる負の電位を持つことがある。例えば処理対象物が石英等の絶縁性のプレートに載置されているような場合には、このとき生じた処理対象物の帯電が解消されない限り、帯電によって処理対象物が絶縁性のプレートに静電吸着し、プラズマ処理後に当該プレートからの脱離が困難になることかある。このような場合にも本発明を適用してプレートを支持する金属製の基台に正の直流電位を印加すれば、上記と同様の効果が得られ、有利である。
【0028】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではない。上記実施形態では、高周波スパッタリング装置を例に説明したが、成膜中の基板の帯電により基板の速やかな搬送が阻害され得るものであれば、他の構成のスパッタリング装置だけでなく、エッチング装置などの他のプラズマ処理装置にも広く適用することができる。このようなプラズマ処理装置としては、例えば、導電性ターゲットに直流電力を印加すると共に、ステージにバイアス電圧を印加してスパッタリングにより成膜するプラズマ処理装置や、電極を絶縁体とし、コイル及び平板の少なくとも一方に高周波電力を投入して真空処理室内にICPプラズマを励起してプラズマ処理を行うものがある。
【0029】
また、上記実施形態では、基台51は金属製としたが、耐熱性や導電性を有する材料であれば代用し得る。また、プレートとしてチャックプレート52を例に説明したが、上述のように静電チャックを備えない絶縁性のプレートであって、プラズマ処理により処理対象物が静電吸着するような場合には、本発明を適用してプラズマ処理後に処理対象物を可及的速やかに脱離可能な状態にできる。更に、処理対象物についても、ウエハだけでなく、ガラス基板やサファイヤ基板などプラズマ処理中に帯電し得るものであれば、特に制限されるものではない。
【符号の説明】
【0030】
SM…高周波スパッタリング装置、1…真空チャンバ、1a…真空処理室、2…ターゲット、5…ステージ、52…チャックプレート(プレート)、52a,52b…電極(静電チャック)、6…ガス管(ガス導入手段)、8…第2防着板(アース電極)、C…カソードユニット、E1…高周波電源、E2…直流電源、W…基板(処理対象物)。
図1
図2