(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電線導体の外周を絶縁性の絶縁被覆体で被覆した被覆電線における前記絶縁被覆体の先端近傍を所定の圧縮力で圧縮して圧着する被覆圧着部と、前記絶縁被覆体の先端から前記被覆電線の長手方向に所定の長さ露出した前記電線導体を圧着する導体圧着部とで一体に構成したバレル部を備えた圧着端子であって、
前記被覆圧着部を、
前記被覆電線の短手方向における断面形状を前記絶縁被覆体を包囲する閉断面形状に形成するとともに、前記長手方向に延設して形成し、
前記導体圧着部を、
前記被覆圧着部の一端を前記長手方向に延設して形成するとともに、前記短手方向における断面形状を前記電線導体を包囲する閉断面形状に形成し、
前記バレル部に、
前記被覆圧着部の他端側を前記長手方向に延設して一体形成するとともに、圧着状態において、前記所定の圧縮力より小さい圧縮力で、前記絶縁被覆体を所定の圧着長さ圧縮して圧着する弱圧着部を備えた
圧着端子。
電線導体の外周を絶縁性の絶縁被覆体で被覆した被覆電線における前記絶縁被覆体の先端近傍を所定の圧縮力で圧縮して圧着する被覆圧着部と、前記絶縁被覆体の先端から前記被覆電線の長手方向に所定の長さ露出した前記電線導体を圧着する導体圧着部とで一体に構成したバレル部を備えた圧着端子の圧着方法であって、
前記被覆電線の短手方向における断面形状を前記絶縁被覆体を包囲する閉断面形状に形成するとともに、前記長手方向に延設して形成した前記被覆圧着部と、前記被覆圧着部の一端を前記長手方向に延設して形成するとともに、前記短手方向における断面形状を前記電線導体を包囲する閉断面形状に形成した前記導体圧着部とで構成した前記バレル部を圧着する際に、
圧着状態において、前記所定の圧縮力より小さい圧縮力で、前記絶縁被覆体を所定の圧着長さ圧縮して圧着する弱圧着部を前記被覆圧着部の他端側に形成する
圧着端子の圧着方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電線を圧着端子に圧着した状態において、電線の導体と圧着端子の圧着部とをしっかりと密着させることができ、安定した導電性を得ることができる圧着端子、接続構造体、及びコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、導体を絶縁被覆で被覆し、先端側の前記絶縁被覆を剥がして前記導体を露出させた導体先端部を備えた被覆電線における少なくとも前記導体先端部の圧着接続を許容する圧着部を備えた圧着端子であって、前記圧着部を、長手方向の先端側から基端側へこの順に、前記導体先端部を圧着する導体圧着部と、前記絶縁被覆の先端側の被覆先端部を圧着する被覆圧着部とを配設し、前記被覆圧着部を、前記被覆先端部を囲繞可能な中空形状に形成し、前記導体圧着部を、前記被覆圧着部よりも小径に形成するとともに、前記導体先端部を囲繞可能な中空形状に形成することを特徴とする。
【0010】
上述した構成によれば、電線を圧着端子に圧着した状態において、電線の導体と圧着端子の圧着部とをしっかりと密着させることができ、安定した導電性を得ることができる圧着端子、接続構造体、及びコネクタを提供することができる。
【0011】
詳しくは、本発明の圧着端子は、上述したように、前記圧着部を、被覆圧着部と、被覆圧着部よりも小径に形成した導体圧着部とで構成したため、被覆電線の先端側を圧着部に挿入すると、導体先端部を導体圧着部に適切に配置することができるとともに、被覆先端部を被覆圧着部に適切に配置することができる。
【0012】
これにより、圧着部の内部において、導体先端部が捩じれたり、傾いたりすることがなく、また、挿入が足りずに圧着部の内部において、導体先端部よりも先端側に空隙が残留することがない。
【0013】
さらに本発明の圧着端子は、導体圧着部を、被覆圧着部よりも導体先端部の径に相当するように小径に形成しているため、圧着部と被覆電線の先端側を圧着する際に、導体圧着部の圧着に伴う変形を抑えることができる。
【0014】
従って、電線を圧着端子に圧着した状態において、電線の導体と圧着端子の圧着部とをしっかりと密着させることができ、安定した導電性を得ることができる。
【0015】
この発明の態様として、前記圧着部の長手方向の先端側に、該先端側を封止する封止部を形成し、前記圧着部を、前記被覆圧着部から前記封止部にかけて、周方向全体において連続する連続形状で形成することができる。
【0016】
上述したように、前記圧着部の長手方向の先端側に封止部を形成することにより、該先端側から圧着部の内部に水分が浸入することを防ぐことができる。
【0017】
さらに、前記被覆圧着部から前記封止部にかけて、周方向全体において連続する連続形状で形成することにより、圧着部の先端側以外の部分を通じて圧着部の内部に水分が浸入することを防ぐことができる。
【0018】
加えて、上述したように、前記導体圧着部を、前記被覆圧着部よりも小径に形成することで圧着部を圧着した状態において、圧着部の内部において空隙が生じることがなく、また圧着に伴って圧着部が大きく変形して破損することを防ぐことができるため、圧着部の内部に水分が浸入し、浸入した水分が圧着部の内部に留まることを防止できる。
【0019】
以上により、圧着部を圧着した状態において、圧着部の内部の優れた止水性を得ることができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記被覆圧着部と前記導体圧着部との境界部分に、前記被覆圧着部から前記導体圧着部に向けて徐々に小径となる第1縮径部を形成することができる。
【0021】
上述した構成によれば、前記被覆圧着部と前記導体圧着部との境界部分を、長手方向、及び幅方向に直交する直交方向に沿って形成した場合と比較して、第1縮径部を、長手方向に沿って配置した被覆先端部や導体先端部に対向させて配置することができる。これにより、第1縮径部も含めて圧着部を圧着したとき、第1縮径部を、被覆先端部と導体先端部との境界部に対してしっかりと密着した状態で圧着することができる。
【0022】
また、上述した構成によれば、前記被覆圧着部と前記導体圧着部との境界部分に、前記被覆圧着部から前記導体圧着部に向けて徐々に小径となる第1縮径部を形成したため、電線先端部を圧着部に挿入した状態において、前記被覆圧着部及び前記導体圧着部の境界部分と、電線先端部における、被覆先端部及び導体先端部の境界部とを長手方向において一致させることができる。
【0023】
そして、この被覆先端部と導体先端部との境界部は、例えば、絶縁被覆から外側へ導出された直後において先端側に向けて徐々に縮径する導体先端部の基端部が配置される。
【0024】
このため、前記被覆圧着部と前記導体圧着部との境界部分に、第1縮径部を形成することで、導体先端部の基端部の形状に対応させて形成することができる。
【0025】
従って、圧着部と前記被覆電線の先端側とを圧着したとき、圧着部を、前記被覆圧着部と前記導体圧着部の境界部分も含めて前記被覆電線の先端側に対して密着させることができ、特に、前記被覆圧着部と前記導体圧着部との境界部分における内部空隙の発生を防ぐことができる。
【0026】
またこの発明の態様として、前記導体圧着部と前記封止部との境界部分に、前記導体圧着部から前記封止部に向けて徐々に小径となる第2縮径部を形成することができる。
【0027】
上述した構成によれば、前記導体圧着部と前記封止部との境界部分を、長手方向、及び幅方向に直交する直交方向に沿って形成した場合と比較して、第2縮径部を、例えば、長手方向に沿って配置した導体先端部や、圧着部の底面等に対向させて配置することができる。これにより、第2縮径部も含めて圧着部を圧着したとき、第2縮径部を、例えば、長手方向に沿って配置した導体先端部や、圧着部の底面等に対してしっかりと密着した状態で圧着することができる。
【0028】
また、上述した構成によれば、前記導体圧着部と前記封止部との境界部分に、前記導体圧着部から前記封止部に向けて徐々に小径となる第2縮径部を形成したため、該第2縮径部に、導体先端部の先端部分、例えば、導体先端部を構成する複数本素線のうちの少なくとも一部の素線の先端部を入り込ませることができる。
【0029】
従って、圧着部と前記被覆電線の先端側とを圧着したとき、導体圧着部と前記封止部との境界部分においても導体先端部に対して密着させることができ、特に、導体圧着部と前記封止部との境界部分における内部空隙の発生を防ぐことができる。
【0030】
またこの発明の態様として、前記被覆圧着部及び前記導体圧着部で構成する前記圧着部を、段階的に全周が縮径する階段状圧着部で構成することができる。
この発明により、導体先端部を圧着する際の圧着量を、複数の径の導体先端部であっても、略同量とすることができ、圧着変形量が大きくなりすぎて、圧着時の変形負荷によって、圧着部が損傷することを防止できる。さらに、圧着時において、全周方向から圧着するため、前記圧着部に作用する圧着変形による負荷を低減することができる。
また、段階的に全周が縮径するため、導体先端部をガイドしながら、所定の挿入位置まで、電線先端部を容易に挿入することができる。
【0031】
また、例えば、底面がフラットな状態の階段状圧着部に比べて、圧着端子を加工して製造する際の加工歪の偏りが少なくなり、耐久性のある圧着端子を製造することができる。さらには、階段状圧着部における各段部分の間の傾斜する段差部分の長手方向の長さを一定とする場合には、段差部分の傾斜角度を、底面がフラットな階段状圧着部に比べて緩やかに形成できるため、加工負荷を低減することができる。逆に、一定の傾斜角度で段差部分を形成する場合には、段差部分の長手方向Xの長さを短く形成することができる。
【0032】
またこの発明の態様として、前記圧着部を、該圧着部を展開した展開形状で形成した端子基材で形成するとともに、長手方向を中心軸とするように前記端子基材を丸めた断面中空形状に形成し、前記封止部、前記導体先端部、及び、前記被覆先端部のそれぞれの境界部分において、基端側から先端側へ向けて縮径する縮径部を、周方向における底面部を除く少なくとも一部分に形成し、前記端子基材の互いに対向する一対の対向端部同士を溶接する溶接部を、前記圧着部の底面部に長手方向に沿って形成することができる。
【0033】
上述した構成によれば、前記封止部、前記導体先端部、及び、前記被覆先端部のそれぞれの境界部分に有する縮径部を、周方向における少なくとも底面部を除く少なくとも部分に形成したため、底面部は、長手方向に沿って形状が変動しない平坦形状とすることができる。
【0034】
よって、前記圧着部の底面部において、レーザー照射装置を長手方向に沿ってスライドさせながら一対の対向端部同士を溶接する際に、一対の対向端部同士に対して照射するレーザー照射距離が、被覆圧着部、導体圧着部、前記封止部とのそれぞれの境界部における径の変動に伴って変動することにより、レーザーの焦点がずれることなく確実に溶接部を形成することができる。
【0035】
また、前記圧着部の底面部において、レーザー照射装置を長手方向に沿ってスライドさせながら一対の対向端部同士を溶接する際に、レーザーの焦点を合わせるために、いちいちレーザー照射器を圧着部に対して接離する方向に動作させる必要がなく、スムーズに溶接部を形成することができる。
【0036】
またこの発明の態様として、前記導体部分を、アルミ系材料で構成するとともに、少なくとも前記圧着部を、銅系材料で構成することができる。
【0037】
この発明により、銅線による導体部分を有する被覆電線に比べて軽量化できるとともに、上述した確実な止水性により、いわゆる異種金属腐食(以下において電食という)を防止することができる。
【0038】
詳しくは、被覆電線の導体部分に従来用いられていた銅系材料をアルミニウムあるいはアルミニウム合金などのアルミ系材料に置き換え、そのアルミ系材料製の導体部分を圧着端子に圧着した場合においては、端子材料の錫めっき、金めっき、銅合金等の貴な金属との接触により、卑な金属であるアルミ系材料が腐食される現象、すなわち電食が問題となる。
【0039】
なお、電食とは、貴な金属と卑な金属とが接触している部位に水分が付着すると、腐食電流が生じ、卑な金属が腐食、溶解、消失等する現象である。この現象により、圧着端子の圧着部に圧着されたアルミ系材料製の導体部分が腐食、溶解、消失し、やがては電気抵抗が上昇する。その結果、十分な導電機能を果たせなくなるという問題がある。
しかしながら、上述した確実な止水性により、銅系材料による導体部分を有する被覆電線に比べて軽量化を図りながら、いわゆる電食を防止することができる。
【0040】
本発明は上述したいずれか一つに記載の圧着端子における圧着部によって、前記被覆電線と前記圧着端子とを接続した接続構造体であることを特徴とする。
【0041】
この発明によれば、圧着端子の圧着部により囲繞して圧着するだけで確実な止水性を確保できる接続構造体を構成することができる。したがって、安定した導電性を確保することができる。
【0042】
また、この発明は、上述の接続構造体を複数束ねて構成したワイヤーハーネスであることを特徴とする。
この発明により、圧着端子と電線導体を構成する金属種によらず、安定した導電性を確保したワイヤーハーネスを構成することができる。
【0043】
また本発明は前記接続構造体における圧着端子をコネクタハウジング内に配置したコネクタであることを特徴とする。
【0044】
この発明によれば、圧着端子と導体部分を構成する金属種によらず、安定した導電性を確保したまま圧着端子を接続することができる。
【0045】
詳述すると、例えば、雌型のコネクタと雄型のコネクタを互いに嵌合して、各コネクタのコネクタハウジング内に配置した圧着端子を互いに接続する際、止水性を確保したまま各コネクタの圧着端子を互いに接続することができる。
この結果、確実な導電性を備えた接続状態を確保することができる。
【0046】
この発明は、電線導体の外周を絶縁性の絶縁被覆体で被覆した被覆電線における前記絶縁被覆体の先端近傍を所定の圧縮力で圧縮して圧着する被覆圧着部と、前記絶縁被覆体の先端から前記被覆電線の長手方向に所定の長さ露出した前記電線導体を圧着する導体圧着部とで一体に構成したバレル部を備えた圧着端子であって、前記被覆圧着部を、前記被覆電線の短手方向における断面形状を前記絶縁被覆体を包囲する閉断面形状に形成するとともに、前記長手方向に延設して形成し、前記導体圧着部を、前記被覆圧着部の一端を前記長手方向に延設して形成するとともに、前記短手方向における断面形状を前記電線導体を包囲する閉断面形状に形成し、前記バレル部に、前記被覆圧着部の他端側を前記長手方向に延設して一体形成するとともに、圧着状態において、前記所定の圧縮力より小さい圧縮力で、前記絶縁被覆体を所定の圧着長さ圧縮して圧着する弱圧着部を備えたことを特徴とする。
【0047】
上記所定の圧縮力は、所望する高さに加締めた被覆圧着部が絶縁被覆体を圧縮する圧縮力、被覆電線の保持性と被覆圧着部による止水性とを両立する圧縮力、あるいは被覆圧着部による止水性を向上するため、被覆電線の保持に要する力より大きい圧縮力などとすることができる。
上記バレル部は、内部中空形状のクローズバレル形式とすることができる。
【0048】
上記閉断面形状は、端部を溶着して一体に形成した閉断面形状、あるいは重ね合わせた端部を溶着して一体に形成した閉断面形状などとすることができる。
上記所定の圧着長さは、被覆電線側からバレル部の内部への水分の侵入に対して、止水性を確保できる長さとすることができる。
【0049】
この発明により、安定した止水性を確保することができる。
詳述すると、自動車等に装備された電装機器は、被覆電線を束ねたワイヤーハーネスを介して、別の電装機器や電源装置と接続して電気回路を構成している。この際、ワイヤーハーネスと電装機器や電源装置とは、それぞれに装着したコネクタ同士で接続されている。
これらコネクタは、被覆電線に圧着して接続した圧着端子が内部に装着されており、凹凸対応して接続される雌型コネクタと雄型コネクタとを嵌合させる構成である。
【0050】
ところで、このようなコネクタは、様々環境下で使用されているため、雰囲気温度の変化による結露などによって意図しない水分が被覆電線の表面に付着することがある。そして、被覆電線の表面を伝ってコネクタ内部に水分が侵入すると、被覆電線の先端より露出している電線導体の表面が腐食するという問題がある。
【0051】
そこで、圧着端子で圧着された電線導体への水分の侵入を防止する様々な技術が提案されている。
例えば、特許文献1に記載の圧着端子は、電線の導体を圧着する導体圧着部、及び電線の絶縁被覆を圧着する被覆加締部で構成した電線接続部を備えた圧着端子において、被覆加締部に電線の長手方向と交差する方向にセレーションを設けて、被覆加締部と絶縁被覆との境界を凸凹状にしている。これにより、特許文献1の圧着端子は、水分の侵入経路を複雑にして絶縁被覆側からの水分の侵入を防止するとされている。
【0052】
しかしながら、特許文献1のような圧着端子は、セレーションによる止水性をより確実にするために、被覆加締部をしっかり加締めると、被覆加締部における潰れ代のバラツキにより、被覆加締部の後端が絶縁被覆を損傷、あるいはせん断して導体が露出するおそれがある。このため、特許文献1の圧着端子は、絶縁被覆側からの水分の侵入に対して安定した止水性を確保できないおそれがある。
【0053】
しかしながら、具体的には、バレル部を加締めて被覆電線を圧着した際、弱圧着部が所定の圧縮力より小さい圧縮力で絶縁被覆体を圧縮しているため、被覆圧着部による絶縁被覆体の圧縮量に対して、弱圧着部による絶縁被覆体の圧縮量を小さくすることができる。
【0054】
さらに、バレル部を加締める荷重の増加に伴い、弱圧着部による絶縁被覆体の圧縮量を大きくすることができる。つまり、圧着端子は、被覆圧着部に加えて、弱圧着部でも被覆電線を保持することができる。換言すると、圧着端子は、被覆電線側からバレル部の内部への水分の侵入を、被覆圧着部と弱圧着部とで阻止することができる。
【0055】
そして、例えば絶縁被覆体が損傷するまで被覆圧着部を加締めた場合、圧着端子は、絶縁被覆体を弱圧着部で圧縮して保持することができる。このため、圧着端子は、被覆圧着部の被覆電線側に形成した弱圧着部によって、被覆電線側からバレル部の内部に水分が侵入することを阻止することができる。
【0056】
すなわち、被覆電線側からバレル部の内部への水分の侵入を被覆圧着部だけで阻止する場合に対して、圧着端子は、弱圧着部を一体に形成したことにより、止水性を損なうまでのバレル部の潰し量を大きくすることができる。
【0057】
これにより、圧着端子は、バレル部を加締めた際、被覆圧着部の潰し量のバラツキによって絶縁被覆体が損傷し、被覆電線側からバレル部の内部への水分の侵入に対する止水性が確保できなくなることを弱圧着部により防止することができる。
【0058】
加えて、例えばバレル部における電線導体側端部を別部材でシールする、あるいは加締めて封止することで、圧着端子は、バレル部の長手方向両端から内部に水分が侵入することを確実に防止することができる。
従って、圧着端子は、バレル部の潰し量のバラツキに対して、弱圧着部を備えたことで安定した止水性を確保することができる。
【0059】
この発明の態様として、前記弱圧着部を、前記被覆圧着部の肉厚よりも薄肉に形成することができる。
この発明により、バレル部を一様な力で加締めても、被覆圧着部による絶縁被覆体の圧縮量と、弱圧着部による絶縁被覆体の圧縮量とを異ならせることができる。つまり、圧着端子は、被覆圧着部と弱圧着部とをそれぞれ異なる力で加締める手間を省くことができる。
【0060】
このため、圧着端子は、バレル部を加締める際、組付工数が増加することなく、弱圧着部を加締めて被覆電線を圧着することができる。さらに、既存の圧着装置、圧着工具、あるいは圧着治具などを使用することができる。
従って、圧着端子は、被覆圧着部の肉厚に対して弱圧着部の肉厚を薄くすることで、バレル部を加締める際における組付工数の増加を抑えることができる。
【0061】
また、この発明の態様として、前記弱圧着部の内面形状を、前記長手方向の断面において、前記短手方向で対面する内面間の距離を一定に形成することができる。
この発明により、弱圧着部は、所定の圧着長さの範囲における絶縁被覆体を一様な圧縮力で圧縮することができる。つまり、弱圧着部は、所定の圧着長さの範囲における絶縁被覆体を一様な圧縮量で圧縮することができる。このため、弱圧着部は、より安定した止水性を確保することができる。
【0062】
これにより、万一、被覆圧着部によって絶縁被覆体が損傷しても、圧着端子は、弱圧着部によって、被覆電線側から絶縁被覆体の損傷個所に水分が到達することをより困難にすることができる。
従って、圧着端子は、より安定した止水性を確保することで、安定した導電性を確保することができる。
【0063】
また、この発明の態様として、前記弱圧着部における内面形状を、前記長手方向の断面において、前記被覆圧着部側を小径側とするとともに、前記被覆圧着部の内面と連続する略テーパー状に形成することができる。
上記略テーパー状は、弱圧着部の肉厚を長手方向に沿って徐々に薄くして形成してもよい、あるいは肉厚均一のまま内外面形状を略テーパー状にして形成してもよい。
【0064】
この発明により、弱圧着部が絶縁被覆体を圧縮する圧縮力をより安定させることができる。例えば、略円筒状の被覆圧着部における内径に対して、内径の大きい略円筒状の弱圧着部を有するバレル部の場合、被覆圧着部と弱圧着部との内径差が、被覆圧着部による絶縁被覆体の圧縮量と弱圧着部による絶縁被覆体の圧縮量との差となる。
【0065】
ゆえに、バレル部の潰し量が最小値に近い場合、弱圧着部による絶縁被覆体の圧縮量を十分確保できないおそれがある。すなわち、弱圧着部は、安定した圧縮力で絶縁被覆体を圧縮できないおそれがある。
一方、バレル部の潰し量が最大値に近い場合、圧着端子は、被覆圧着部と弱圧着部との内径差による段差により、絶縁被覆体を容易にせん断するおそれがある。
【0066】
そこで、弱圧着部の内面形状を略テーパー状にすることで、圧着端子は、弱圧着部が絶縁被覆体を圧縮する圧縮力を被覆電線側から長手方向に沿って緩やかに大きくすることができる。このため、バレル部の潰し量のバラツキに対して、圧着端子は、弱圧着部の略テーパー状の内面形状における長手方向のいずれかの位置で、安定した止水性を確保できる圧縮力以上で絶縁被覆体を圧縮することができる。
【0067】
さらに、略テーパー状の内面形状によって内径差による段差を解消することで、圧着端子は、弱圧着部が絶縁被覆体を容易にせん断することを防止できる。
従って、圧着端子は、弱圧着部の内面形状を略テーパー状にすることで、バレル部における被覆電線側からの水分の侵入に対する止水性をより安定して確保することができる。
【0068】
また、この発明の態様として、前記弱圧着部における内面形状を、前記長手方向の断面において、前記長手方向における前記被覆圧着部側から前記被覆電線側に向けて段階的に前記短手方向で対向する内面間の距離を大きくした略階段状に形成することができる。
【0069】
この発明により、弱圧着部と絶縁被覆体との境界が略階段状に形成されるため、被覆電線側からバレル部の内部への水分の侵入経路を複雑化、かつ侵入経路の距離を長くすることができる。
【0070】
これにより、万一、被覆電線側からバレル部の内部に水分が侵入しても、圧着端子は、侵入した水分が電線導体に到達することをより困難にすることができる。
従って、圧着端子は、弱圧着部における被覆電線側からの水分の侵入に対する止水性をより安定して確保することができる。
【0071】
またこの発明の態様として、前記被覆圧着部及び前記導体圧着部で構成する前記バレル部を、段階的に全周が縮径する階段状圧着部で構成することができる。
この発明により、電線導体を圧着する際の圧着量を、複数の径の電線導体であっても、略同量とすることができ、圧着変形量が大きくなりすぎて、圧着時の変形負荷によって、バレル部が損傷することを防止できる。さらに、圧着時において、全周方向から圧着するため、前記バレル部に作用する圧着変形による負荷を低減することができる。
また、段階的に全周が縮径するため、電線導体をガイドしながら、所定の挿入位置まで、電線先端部を容易に挿入することができる。
【0072】
また、例えば、底面がフラットな状態の階段状圧着部に比べて、圧着端子を加工して製造する際の加工歪の偏りが少なくなり、耐久性のある圧着端子を製造することができる。さらには、階段状圧着部における各段部分の間の傾斜する段差部分の長手方向の長さを一定とする場合には、段差部分の傾斜角度を、底面がフラットな階段状圧着部に比べて緩やかに形成できるため、加工負荷を低減することができる。逆に、一定の傾斜角度で段差部分を形成する場合には、段差部分の長手方向Xの長さを短く形成することができる。
【0073】
また、この発明の態様として、前記バレル部に、前記導体圧着部を前記長手方向に延設し、前記長手方向における先端を封止した封止部を備えることができる。
この発明により、圧着端子は、バレル部における電線導体側の開口からの水分の侵入を防止することができる。さらに、封止部、被覆圧着部、及び弱圧着部により、圧着端子は、圧着状態におけるバレル部の内部を密閉状態にすることができる。これにより、圧着端子は、バレル部の内部への水分の侵入をより確実に防止することができる。
従って、圧着端子は、圧着状態におけるバレル部の内部を密閉状態にすることで、確実な止水性を確保するととともに、より安定した導電性を確保することができる。
【0074】
また、この発明は、上述の圧着端子におけるバレル部によって、前記被覆電線と前記圧着端子とを接続した接続構造体であることを特徴とする。
この発明により、圧着端子のバレル部により圧着するだけで確実な止水性を確保できる接続構造体を構成することができる。したがって、安定した導電性を確保することができる。
【0075】
また、この発明の態様として、前記電線導体を、アルミ系材料で構成するとともに、少なくとも前記バレル部を、銅系材料で構成することができる。
この発明により、銅線による電線導体を有する被覆電線に比べて軽量化できるとともに、上述した確実な止水性により、いわゆる異種金属腐食(以下において電食という)を防止することができる。
【0076】
詳しくは、被覆電線の電線導体に従来用いられていた銅系材料をアルミニウムあるいはアルミニウム合金などのアルミ系材料に置き換え、そのアルミ系材料製の電線導体を圧着端子に圧着した場合においては、端子材料の錫めっき、金めっき、銅合金等の貴な金属との接触により、卑な金属であるアルミ系材料が腐食される現象、すなわち電食が問題となる。
【0077】
なお、電食とは、貴な金属と卑な金属とが接触している部位に水分が付着すると、腐食電流が生じ、卑な金属が腐食、溶解、消失等する現象である。この現象により、圧着端子の圧着部に圧着されたアルミ系材料製の導体部分が腐食、溶解、消失し、やがては電気抵抗が上昇する。その結果、十分な導電機能を果たせなくなるという問題があった。
しかしながら、上述した確実な止水性により、銅系材料による導体部分を有する被覆電線に比べて軽量化を図りながら、いわゆる電食を防止することができる。
【0078】
また、この発明は、上述の接続構造体を複数束ねて構成したワイヤーハーネスであることを特徴とする。
この発明により、圧着端子と電線導体を構成する金属種によらず、安定した導電性を確保したワイヤーハーネスを構成することができる。
【0079】
また、この発明は、上述の接続構造体における圧着端子をコネクタハウジング内に配置したコネクタであることを特徴とする。
この発明により、圧着端子と電線導体を構成する金属種によらず、安定した導電性を確保したまま圧着端子を接続することができる。
【0080】
詳述すると、例えば、雌型のコネクタと雄型のコネクタを互いに嵌合して、各コネクタのコネクタハウジング内に配置した圧着端子を互いに接続する際、止水性を確保したまま各コネクタの圧着端子を互いに接続することができる。
従って、コネクタは、確実な導電性を備えた接続状態を確保することができる。
【0081】
また、この発明は、電線導体の外周を絶縁性の絶縁被覆体で被覆した被覆電線における前記絶縁被覆体の先端近傍を所定の圧縮力で圧縮して圧着する被覆圧着部と、前記絶縁被覆体の先端から前記被覆電線の長手方向に所定の長さ露出した前記電線導体を圧着する導体圧着部とで一体に構成したバレル部を備えた圧着端子の圧着方法であって、前記被覆電線の短手方向における断面形状を前記絶縁被覆体を包囲する閉断面形状に形成するとともに、前記長手方向に延設して形成した前記被覆圧着部と、前記被覆圧着部の一端を前記長手方向に延設して形成するとともに、前記短手方向における断面形状を前記電線導体を包囲する閉断面形状に形成した前記導体圧着部とで構成した前記バレル部を圧着する際に、圧着状態において、前記所定の圧縮力より小さい圧縮力で、前記絶縁被覆体を所定の圧着長さ圧縮して圧着する弱圧着部を前記被覆圧着部の他端側に形成することを特徴とする。
【0082】
この発明により、圧着する際における被覆圧着部の変形に追従してより確実に弱圧着部を形成することができる。これにより、圧着端子の圧着方法は、予め弱圧着部をバレル部に形成した場合に対して、圧着した際に弱圧着部が歪な形状に変形することを抑制して、絶縁被覆体を一様に圧縮することができる。
【0083】
さらに、絶縁被覆体に対してバレル部を加締めて圧着する工程と同時に弱圧着部を形成することができるため、圧着端子の圧着方法は、弱圧着部を形成する特別な工程を不要にすることができる。
従って、圧着端子の圧着方法は、弱圧着部を効率よく形成するとともに、より確実な止水性を確保することができる。
【発明の効果】
【0084】
この発明によれば、圧着部の内部へ水分が浸入することなく、圧着部と導体の間に水分が介在することのない優れた止水性を得ることのできる圧着端子、接続構造体、及びコネクタを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0087】
この発明の一実施形態を以下図面とともに詳述する。
図1(a)は本実施形態の雌型圧着端子付き電線1の電線先端部200a、及びその後方部分の斜視図であり、
図1(b)は本実施形態の雌型圧着端子10と電線先端部200aの斜視図であり、電線先端部200aを雌型圧着端子10に挿入する直前の様子を示している。
【0088】
また
図2は本実施形態の雌型圧着端子10を斜め下方から視た斜視図であり、
図3は本実施形態の雌型圧着端子付き電線1の電線先端部200a、及びその周辺部分を幅方向における中間部分において切断して示した縦断面図である。
【0089】
本実施形態の雌型圧着端子付き電線1は、
図1(a)、及び
図3に示すように、被覆電線200を雌型圧着端子10に接続して構成している。つまり、被覆電線200における電線先端部200aを、雌型圧着端子10の圧着部30に圧着接続している。
【0090】
雌型圧着端子10に圧着接続する被覆電線200は、アルミニウム素線を束ねたアルミニウム芯線201を、絶縁樹脂で構成する絶縁被覆202で被覆して構成している。詳しくは、アルミニウム芯線201は、断面が0.75mm
2となるように、アルミニウム合金線を撚って構成している。
【0091】
電線先端部200aは、被覆電線200の先端部分において、被覆先端部202aと導体先端部201aとを先端側へ向けてこの順に直列に備えた部分である。
【0092】
導体先端部201aは、被覆電線200の先端側の絶縁被覆202を剥がしてアルミニウム芯線201を露出させた部分であり、被覆先端部202aは、被覆電線200の先端部分であるが、被覆先端部202aよりも後方側部分であって、アルミニウム芯線201を絶縁被覆202で被覆した部分である。
【0093】
以下において、雌型圧着端子10について詳述する。
雌型圧着端子10は、長手方向Xの先端側である前方から後方に向かって、図示省略する雄型端子における挿入タブの挿入を許容するボックス部20と、ボックス部20の後方で、所定の長さのトランジション部40を介して配置された圧着部30とを一体に構成している。
【0094】
なお、本実施形態では、上述したように、ボックス部20と圧着部30で構成する雌型圧着端子10で構成したが、圧着部30を有する圧着端子であれば、上述の雌型圧着端子10におけるボックス部20に挿入接続する挿入タブと圧着部30とで構成する雄型圧着端子でも、圧着部30のみで構成し、複数本の被覆電線200のアルミニウム芯線201を束ねて接続するための圧着端子であってもよい。
【0095】
また、長手方向Xとは、
図1に示すように、圧着部30を圧着して接続する被覆電線200の長手方向と一致する方向であり、幅方向Yは長手方向Xに対して平面方向において交差する方向である。また、圧着部30に対するボックス部20の側を前方とし、逆に、ボックス部20に対する圧着部30の側を後方としている。
【0096】
ボックス部20は、倒位の中空四角柱体で構成され、内部に、長手方向Xの後方に向かって折り曲げられ、挿入される雄型コネクタの挿入タブ(図示省略)に接触する弾性接触片21を備えている。
【0097】
また、中空四角柱体であるボックス部20は、底面部22の長手方向Xと直交する幅方向Yの両側部に連設された側面部23を重なり合うように折り曲げて、長手方向Xの先端側から見て略矩形状に構成している。
【0098】
圧着前の圧着部30は、
図1(b)に示すように、圧着面31及び圧着面31の幅方向Yの両側に延出したバレル構成片32を丸めて端部32a同士を突合せし、溶接して後方視略O型に形成している。
【0099】
なお、バレル構成片32の長手方向長さは、絶縁被覆202の長手方向X前方側の先端である被覆先端部202aから、長手方向Xの前方で露出する導体先端部201aの長手方向Xの露出長さより長く形成している。
【0100】
圧着部30は、電線先端圧着部30Aと封止部30Bとを後方から前方側へこの順に連続して配設している。
封止部30Bは、電線先端圧着部30Aよりも前方端部を略平板状に押しつぶすように変形させて板材同士が重合する偏平形状で構成している。
被覆圧着部30aは、被覆先端部202aを囲繞可能な中空形状に形成している。
【0101】
電線先端圧着部30Aは、被覆圧着部30a、後方側縮径部30s、導体圧着部30b、及び、前方側縮径部30tを、後方から前方側へこの順に連続して直列に配設している。電線先端圧着部30Aは、被覆圧着部30aから前方側縮径部30tにかけて電線先端部200aを挿入可能な中空形状で構成し、被覆圧着部30aから封止部30Bにかけて周方向全体において連続する連続形状で一体に形成している。換言すると、圧着部30は、被覆圧着部30aから封止部30Bにかけて周面部が開口していない中空形状(筒状)に形成している。
【0102】
導体圧着部30bは、導体圧着部30bよりも小径に形成するとともに、導体先端部201aを囲繞可能な中空形状に形成している。
【0103】
後方側縮径部30sは、被覆圧着部30aと導体圧着部30bとの境界部分において、被覆圧着部30aから導体圧着部30bに向けて徐々に小径となる周面部を有して形成している。詳しくは、後方側縮径部30sは、周方向における底面部を除く周面全体が長手方向Xの前方に向けて徐々に縮径している。
【0104】
前方側縮径部30tは、導体圧着部30bと封止部30Bの境界部分において、導体圧着部30bから封止部30Bに向けて徐々に小径となる周面部を有して形成している。詳しくは、前方側縮径部30tは、周方向における底面部35について長手方向Xの前方に向けて縮径していないが、少なくとも上面部36について長手方向Xの前方に向けて縮径している。
【0105】
上述した電線先端部200aに雌型圧着端子10を圧着接続する手順、及び、その際に奏する作用効果について
図4、及び
図5を用いて説明する。
図4は本実施形態の雌型圧着端子付き電線1の作用説明図であり、詳しくは、
図4(a)は電線先端部200aを雌型圧着端子10に挿入する直前の状態を示す縦断面図であり、
図4(b)は電線先端部200aを雌型圧着端子10に挿入した状態子を示す縦断面図である。
図5(a)は
図3のA−A線断面図であり、
図5(b)は
図3のB−B線断面図である。
【0106】
まず、
図4(a)に示すように、圧着部30における電線先端圧着部30Aに電線先端部200aを挿入する。このとき、
図4(b)に示すように、被覆圧着部30aの内部に電線先端部200aの被覆先端部202aが挿入されるとともに、導体圧着部30bの内部に電線先端部200aの導体先端部201aが挿入される。
【0107】
この状態で、図示しない圧着工具により電線先端圧着部30Aに対して圧着部30を圧着することで、
図3、及び
図5に示すように、電線先端部200aに雌型圧着端子10を圧着接続することができる。
【0108】
上述した雌型圧着端子付き電線1、及び雌型圧着端子10は、以下のような効果を得ることができる。
【0109】
雌型圧着端子10における圧着部30は、長手方向Xの先端側から基端側へこの順に、導体先端部201aを圧着する導体圧着部30bと、被覆先端部202aを圧着する被覆圧着部30aとを配設し、被覆圧着部30aを、被覆先端部202aを囲繞可能な中空形状に形成し、導体圧着部30bを、導体圧着部30bよりも小径に形成するとともに、導体先端部201aを囲繞可能な中空形状に形成したため、電線先端部200aを雌型圧着端子10に圧着した状態において、導体先端部201aと導体先端部201aとをしっかりと密着させることができ、安定した導電性を得ることができる。
【0110】
詳しくは、長手方向Xに沿って略一定の径を有して寸胴に形成した圧着部を備えた従来の雌型圧着端子の場合、被覆電線200の先端側部分(電線先端部200a)を圧着部30に挿入しすぎると、導体先端部201aだけでなく被覆先端部202aまでも導体圧着部30bに配置される事態が生じる。
【0111】
そうすると、圧着部30の内部において導体先端部201aが押し込まれることにより捩じれたり、傾くなどした状態で圧着部に圧着されるため、圧着状態において、圧着部が導体先端部201aに対して密着せずに圧着部と導体先端部201aとの間の内部に空隙が生じやすくなるという課題を有する。
【0112】
逆に、被覆電線200の先端側(電線先端部200a)の圧着部30への挿入が足りない場合には、圧着部の先端部分において導体先端部201aが配置されていない箇所が生じ、圧着状態においても圧着部の内部において、内部空隙が残留し易くなるという課題を有する。
【0113】
そうすると電線先端部200aを雌型圧着端子に圧着した状態において、導体先端部201aと導体先端部とをしっかりと密着させることができず、安定した導電性を得ることができなかった。
【0114】
これに対して本実施形態の雌型圧着端子10は、上述したように、圧着部30を、被覆圧着部30aと、導体圧着部30bよりも小径に形成した導体圧着部30bとで構成したため、被覆電線200の先端側を圧着部30に挿入すると、長手方向Xにおいて導体先端部201aを導体圧着部30bに適切に配置することができるとともに、被覆先端部202aを被覆圧着部30aに適切に配置することができる。
【0115】
これにより、圧着部30の内部において、導体先端部201aが捩じれたり、傾いたりすることがなく、また、挿入が足りずに圧着部30の内部において、導体先端部201aよりも先端側に空隙が残留することもない。
【0116】
従って、圧着部30を圧着した状態において、圧着部30の内部において空隙が生じることがなく、電線先端部200aを雌型圧着端子10に圧着した状態において、導体先端部201aと導体先端部201aとをしっかりと密着させることができ、安定した導電性を得ることができる。
【0117】
より詳しくは、電線先端部200aを圧着部30に挿入する際に、導体先端部201aを導体圧着部30bに達するまで挿入しようとしても、導体圧着部30bは、被覆圧着部30aよりも小径に形成しているため、被覆先端部202aが被覆圧着部30aの位置よりも深く、導体圧着部30bに達するまで挿入されることを防止できる。
【0118】
逆に、電線先端部200aを圧着部30に挿入する際に、被覆先端部202aが導体圧着部30bの手前部分まで挿入すると、小径に形成した導体圧着部30bの基端側に当接することで所定の挿入位置までの挿入が完了したことを容易に認識することができる。
【0119】
従って、電線先端部200aを圧着部30に対して挿入しすぎることや、挿入が足りないということもなく、導体先端部201aを導体圧着部30bに適切に配置することができるとともに、被覆先端部202aを被覆圧着部30aに適切に配置することができる。
【0120】
また、従来の雌型圧着端子は、圧着部を、長手方向全長に亘って略同径に形成しているため、特に、圧着部の内部に配置した導体先端部201aに、該圧着部が密着する程度まで圧縮変形させて圧着しようとした場合、圧着に伴って圧着部に大きな圧縮変形を強いることになる。
【0121】
そうすると、圧着の過程で圧着部の一部が破損したり、圧着後の圧着部(圧着完了部)に撓みが生じるなど、圧着後の形状の変形具合が大きくなり、圧着部と被覆電線200の先端部との間に空隙が生じることになる。
【0122】
そうすると電線先端部200aを雌型圧着端子に圧着した状態において、導体先端部201aと導体圧着部とをしっかりと密着させることができず、安定した導電性を得ることができなかった。
【0123】
これに対して本実施形態の雌型圧着端子10は、導体圧着部30bを、被覆圧着部30aよりも導体先端部201aの径に相当するように小径に形成しているため、圧着部30を電線先端部200aに対して圧着する際に、導体圧着部30bにおける圧着に伴う変形を抑えることができる。
【0124】
従って、圧着に伴って導体圧着部30bの一部が破断することがなく、導体圧着部30bを導体先端部201aにしっかりと密着させることができるため、圧着部30に内部空隙が生じることを防ぐことができ、導体先端部201aと導体先端部201aとをしっかりと密着させることができ、安定した導電性を得ることができる。
【0125】
また、本実施形態の雌型圧着端子10は、上述したように、導体圧着部30bを、被覆圧着部30aよりも小径に形成することにより、電線先端部200aを雌型圧着端子10に圧着した状態において、被覆圧着部30aを被覆先端部202aに密着させることができるとともに、導体圧着部30bを導体先端部201aに密着させることができ、導体圧着部30bと導体先端部201aとの間に空隙が生じることを防ぐことができる。
【0126】
さらに、本実施形態の雌型圧着端子10は、圧着部30の長手方向Xの先端側に封止部30Bを形成するとともに、被覆圧着部30aから封止部30Bにかけて、周方向全体において端子基材100が連続する連続形状で形成し、導体圧着部30bを、被覆圧着部30aよりも小径に形成しているため、圧着部30の内部へ水分が浸入することなく、圧着部30とアルミニウム芯線201の間に水分が介在することのない優れた止水性を得ることができる。
【0127】
詳しくは、雌型圧着端子を挿着するコネクタは、一般に様々な環境の下で使用されているため、雰囲気温度の変化による結露などによって意図しない水分が被覆電線の表面に付着することがある。そして、被覆電線の表面を伝ってコネクタ内部に水分が浸入することがある。
【0128】
そして、圧着部の内部において、該圧着部と導体先端部201aとの間に隙間が生じている場合、該空隙を通じて水分が浸入し易くなり、浸入した水分が圧着部と導体先端部201aとの間に介在することで、導体先端部201aが腐食するという課題が有していた。特に、イオン化傾向の異なる異種金属で構成された電線導体、及び圧着端子の場合、コネクタの一部として備えた場合に、水分が付着して電食が発生するという問題もあった。
【0129】
これに対して、本実施形態の雌型圧着端子10は、圧着部30の長手方向Xの先端側に封止部30Bを形成するとともに、被覆圧着部30aから封止部30Bにかけて、周方向全体において端子基材100が連続する連続形状で形成し、さらに、導体圧着部30bを、被覆圧着部30aよりも小径に形成することにより、圧着部30の内部に水分が浸入することを防ぐことができ、優れた止水性を得ることができる。
【0130】
また、本実施形態の雌型圧着端子10は、被覆圧着部30aと導体圧着部30bとの境界部分に、被覆圧着部30aから導体圧着部30bに向けて徐々に小径となる後方側縮径部30sを形成している。
【0131】
上述した構成により、被覆圧着部30aと導体圧着部30bとの境界部分を、長手方向X、及び幅方向に直交する直交方向に沿って形成した場合、換言すると、径方向に真直ぐに形成した場合と比較して、後方側縮径部30sを、長手方向Xに沿って配置した電線先端部200aに対向させて配置することができる。
【0132】
これにより、後方側縮径部30sも含めて圧着部30を圧着したとき、後方側縮径部30sを、被覆先端部202aと導体先端部201aとの境界部に対してしっかりと密着した状態で圧着することができる。
【0133】
また、上述した構成によれば、被覆圧着部30aと導体圧着部30bとの境界部分に、被覆圧着部30aから導体圧着部30bに向けて徐々に小径となる後方側縮径部30sを形成したため、電線先端部200aを圧着部30に挿入した状態において、被覆圧着部30aと導体圧着部30bとの境界部分と、電線先端部200aにおける、被覆先端部202aと導体先端部201aとの境界部200cとを長手方向Xにおいて一致させることができる(
図4参照)。
【0134】
そして、この被覆先端部202aと導体先端部201aとの境界部は、例えば、絶縁被覆202から外側へ導出された直後において先端側に向けて徐々に縮径する導体先端部201aの基端部が配置される(
図4参照)。
【0135】
このため、被覆圧着部30aと導体圧着部30bとの境界部分に、後方側縮径部30sを形成することで、導体先端部201aの基端部の形状に対応させて形成することができる。
【0136】
従って、圧着部30と被覆電線200の先端側とを圧着したとき、圧着部30を、被覆圧着部30aと導体圧着部30bの境界部分も含めて被覆電線200の先端側に対して密着させることができ、特に、被覆圧着部30aと導体圧着部30bとの境界部分における内部空隙の発生を防ぐことができる。
【0137】
また、本実施形態の雌型圧着端子10は、導体圧着部30bと封止部30Bとの境界部分に、導体圧着部30bから封止部30Bに向けて徐々に小径となる前方側縮径部30tを形成している。
上述した構成によれば、導体圧着部30bと封止部30Bとの境界部分を、長手方向X、及び幅方向に直交する直交方向に沿って形成した場合、換言すると、径方向に真直ぐに形成した場合と比較して、前方側縮径部30tを、例えば、長手方向Xに沿って配置した導体先端部201aや、圧着部30の底面部35等に対向させて配置することができる。これにより、前方側縮径部30tも含めて圧着部30を圧着したとき、前方側縮径部30tを、例えば、長手方向Xに沿って配置した導体先端部201aや、圧着部30の底面部35等に対してしっかりと密着した状態で圧着することができる。
【0138】
また、上述した構成によれば、導体圧着部30bと封止部30Bとの境界部分に、導体圧着部30bから封止部30Bに向けて徐々に小径となる前方側縮径部30tを形成したため、該前方側縮径部30tに、導体先端部201aの先端部分、例えば、導体先端部201aのアルミニウム芯線201を構成する複数本のアルミニウム素線201aaのうちの少なくとも一部の素線201aaの先端部を入り込ませることができる。
【0139】
従って、圧着部30と被覆電線200の先端側とを圧着したとき、導体圧着部30bと封止部30Bとの境界部分においても導体先端部201aに対して密着させることができ、特に、導体圧着部30bと封止部30Bとの境界部分における内部空隙の発生を防ぐことができる(
図3参照)。
【0140】
続いて、上述した雌型圧着端子10の製造方法について
図6及び
図7を用いて説明する。
図6は圧着部30における溶接について説明する説明図を示し、詳しくは
図6(a)はファイバーレーザ溶接装置Fwでファイバーレーザ溶接を行っている様子を示す作用説明図であり、
図6(b)は
図6(a)のa部拡大図である。
図7は雌型圧着端子10を構成する端子基材100の平面図である。
【0141】
また、端子基材100は、表面が錫メッキ(Snメッキ)された黄銅等の銅合金条(図示せず)を、
図7に示すような平面展開した端子形状に打ち抜いた板材である。
【0142】
端子基材100は、端子形状に曲げ加工したとき、ボックス部20に相当するボックス部相当部分120、トランジション部40に相当するトランジション相当部分、及び、圧着部30に相当する圧着部相当部分130から形成している。
【0143】
圧着部相当部分130は、バレル底部101とバレル片102とで構成し、封止部相当部分130B、前方側縮径部相当部分130t、導体圧着部相当部分130b、後方側縮径部相当部分130s、及び、被覆圧着部相当部分130aとを、長手方向の前方側から後方側へこの順に配置している。
【0144】
被覆圧着部相当部分130aにおけるバレル片102は、封止部相当部分130B、前方側縮径部相当部分130t、及び導体圧着部相当部分130bにおけるバレル片102よりも幅方向に突出し、封止部相当部分130B、前方側縮径部相当部分130t、及び導体圧着部相当部分130bにおけるバレル片102は略同じ突出長さで幅方向へ突出して形成している。
【0145】
また、後方側縮径部相当部分130sのバレル片102は、長手方向Xの前方側から後方側へ徐々に突出長さが突出するように突出方向の先端部分を平面視傾斜して形成している。
【0146】
上述した圧着基材100を、中空四角柱体のボックス部20と後方視略O型の圧着部30とからなる立体的な端子形状に曲げ加工するとともに、圧着部30を溶接してクローズバレル形式の雌型圧着端子10として構成している。
【0147】
詳しくは、圧着部30のバレル片102を、対向端部32a同士が底面側で突き合わさるようにして丸めて円筒状を構成するとともに、円筒状の前方部分を上面側から底面側に押し付けて略平板状となるように変形させる。そして、円筒状の対向端部32a同士を突き合わせた長手方向Xに沿った箇所を溶接して長手方向溶接部W1を形成し、その後、幅方向Yの幅方向溶接箇所W2を溶接して、幅方向溶接部W2を形成する。
【0148】
ここで、後方側縮径部30s、及び前方側縮径部30tは、周方向における少なくとも底面部35を除く部分を縮径させて形成しているが、これら縮径部30s,30tにおける底面部35は、縮径させておらず平坦状に形成している。
これにより、圧着部30の底面部35は、長手方向Xに沿って径が変動しない平坦形状とすることができる。
【0149】
よって、
図6に示すように、圧着部30の底面部35において、レーザー照射装置Fwを長手方向Xに沿ってスライドさせながら一対の対向端部同士を溶接する際に、一対の対向端部同士に対して照射するレーザー照射距離が、被覆圧着部30a、導体圧着部30b、封止部30Bとのそれぞれの境界部における径の変動に伴ってレーザーLの焦点がずれることなく確実に溶接部W1,W2を形成することができる。
【0150】
また、圧着部30の底面部において、レーザー照射装置を長手方向Xに沿ってスライドさせながら一対の対向端部同士を溶接する際に、レーザーLの焦点を合わせるために、いちいちレーザー照射器を圧着部30に対して接離する方向に動作させる必要がなく、スムーズに溶接部を形成することができる。
【0151】
この発明の構成と、実施形態との対応において、
この発明の圧着接続構造体は、実施形態の雌型圧着端子付き電線1に対応し、
以下同様に、
雌型圧着端子は、雌型圧着端子10に対応し、
後方側縮径部は、後方側縮径部30sに対応し、
前方側縮径部は、前方側縮径部30tに対応し、
導体は、アルミニウム芯線201に対応し、
長手方向の先端側は、長手方向Xの前方側に対応し、
長手方向の基端側は、長手方向Xの後方側に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
【0152】
本実施形態では、圧着端子100のバレル部130を、アルミニウムやアルミニウム合金等の卑な金属からなるアルミニウム芯線201に圧着接続する例を説明したが、その卑な金属以外に、例えば、銅や銅合金等の貴な金属からなる導体部分に圧着接続してもよく、前記実施形態と略同等の作用及び効果を奏することができる。
【0153】
詳しくは、上述の構成のバレル部130は、圧着状態において、水の浸入を防止できるため、例えば、これまで線間止水のために圧着後にシールなどが必要であった銅や銅合金等の芯線で構成する被覆電線を接続してもよい。
【0154】
また、上述の説明では、
図6に示すように、端子形状に打ち抜いた銅合金条を丸めるとともに、端部32a同士を突き合わせて長手方向Xの溶接個所W1に沿って溶接して後方視略O型に形成してから、長手方向Xの前端部分をつぶすとともに、幅方向Yの溶接個所W2に沿って溶接して封止して、長手方向Xの前端が封止部30Bで封止させ、長手方向Xの後方に開口を有する略筒状の圧着部30を形成したが、圧着部30における別の溶接方法について説明する説明図である
図8に示すように、圧着部30の形状を形成してから、溶接個所を溶接して圧着部30を形成してもよい。
【0155】
詳述すると、
図8(a)に示すように、端子形状に打ち抜いた銅合金条を丸めるとともに、長手方向Xの前端部分をつぶして、封止部30Bを含む圧着部30の形状にあらかじめ形成する。
【0156】
そして、丸めて突き合わさる端部32a同士を長手方向Xの溶接個所W3に沿って溶接するとともに、封止部30Bにおいて幅方向Yの溶接個所W4に沿って溶接して封止して圧着部30を完成させる。
【0157】
また、
図6に示すように、圧着部30の底面側で端部32a同士を突き合わして溶接してもよいし、
図8(a),(b)に示すように、圧着部30上面側で端部32a同士を突き合わして溶接してもよい。
【0158】
さらには、
図8(c)に示すように、圧着状態において、圧着部30の被覆圧着部30aを、被覆電線200の絶縁被覆202に対して正面視円形状に圧着し、導体圧着部30bを、アルミニウム芯線に対して正面視略U字状に圧着してもよい。
【0159】
また、圧着端子100は、
図8に示すように、帯状のキャリアKに取り付けられたままの状態で圧着部30を溶接してから、被覆電線200を圧着接続する際、あるいは被覆電線200を圧着接続した後、キャリアKから分離してもよいが、キャリアKから分離された状態で圧着端子100を形成し、被覆電線200を圧着接続してもよい。
【0160】
さらにまた、上述の説明では、電線先端圧着部30Aを、被覆圧着部30a、後方側縮径部30s、導体圧着部30b、及び、前方側縮径部30tを、後方から前方側へこの順に連続して直列に配設して構成したが、別の圧着部について説明する説明図である
図9に示すように、後方側縮径部30s、導体圧着部30b、及び、前方側縮径部30tの代わりに段差状縮径部30cで構成してもよい。
【0161】
段差状縮径部30cは、被覆圧着部30aに比べてより小径であり、さらに、長手方向Xの前方に向けて段階的に縮径している。なお、段階的に縮径する段差状縮径部30cの各段は高さ方向の差、各段における縮径量は、被覆電線200の絶縁被覆202の厚みに対応し、また、各段の長手方向Xの長さは、被覆電線200におけるアルミニウム芯線201の長さに対応するよう設定している。
【0162】
このように構成した段差状縮径部30cは、様々な径の被覆電線200を挿入するとともに圧着して雌型圧着端子付き電線1を構成する場合、電線先端圧着部30Aに対して電線先端部200aを適切な挿入位置に挿入し、確実な圧着状態を実現することができる。
【0163】
詳述すると、例えば
図9(b)に示すように、太径の被覆電線200の場合、段差状縮径部30cにおける長手方向X後方(
図9において左側)の段部分に導体先端部201aが当接するまで挿入することで、それ以上挿入することができず、適切な挿入位置まで挿入することができる。
【0164】
図9(c)に示すように、中径の被覆電線200の場合、長手方向X中間の段部分に当接する位置まで挿入することができる。つまり、太径の被覆電線200より長手方向X前方の位置まで挿入することができる。
【0165】
さらに、
図9(d)に示すように、細径の被覆電線200の場合、長手方向X前方(
図9において右側)の段部分に当接する位置まで挿入することができる。つまり、中径の被覆電線200よりさらに長手方向X前方の位置まで挿入することができる。
【0166】
このようにして、段差状縮径部30cは、被覆電線200の径に応じて、段部分まで適切に挿入することができる。なお、各段部分は、長手方向X後方から前方に向かって段階的に縮径されているため、つまり、当該段部分まで挿入される電線先端部200aの導体先端部201aに応じて縮径された各段部分で、導体先端部201aを圧着するため、その圧着量は、導体先端部201aの径によらず、同程度の圧着量で圧着することができる。したがって、細径のアルミニウム芯線201を圧着するために、大きく圧着変形させる、つまり圧着量が大きすぎることで、圧着部30に割れなどの不具合が発生することなく、適切な圧着量で確実に圧着することができる。つまり、段差状縮径部30cにより多種の被覆電線200を確実に圧着して雌型圧着端子付き電線1を構成することができる。
さらにまた、上述の説明の段差状縮径部30cは、底面部分がフラットな圧着部30において、被覆圧着部30aに比べてより小径であり、さらに、長手方向Xの前方に向けて段階的に縮径したが、さらに別の圧着部30について説明する説明図である
図10に示すように、圧着部30の全周が縮径する、つまり、段差状縮径部30cにおける縮径された各段の中心が長手方向Xに沿って一定となるように形成してもよい。
【0167】
このように、底面がフラットでない、全周が縮径された段差状縮径部30cを用い、様々な径の被覆電線200を挿入するとともに圧着して雌型圧着端子付き電線1を構成する場合、底面がフラットな圧着部30における段差状縮径部30cと同様の効果を奏するとともに、さらに、様々な径の被覆電線200における導体先端部201aを所定位置まで挿入する際のガイドとなり、容易に挿入することができる。さらに、底面がフラットな圧着部30における段差状縮径部30cに比べて、雌型圧着端子10を加工して製造する際の加工歪の偏りが少なくなり、耐久性のある雌型圧着端子10を製造することができる。さらにまた、圧着時において、全周方向から圧着するため、圧着部30に作用する圧着変形による負荷を低減することができる。
【0168】
さらには、段差状縮径部30cにおける各段部分の間の傾斜する段差部分の長手方向Xの長さを一定とする場合には、段差部分の傾斜角度を、底面がフラットな圧着部30における段差状縮径部30cに比べて緩やかに形成できるため、加工負荷を低減することができる。逆に、一定の傾斜角度で段差部分を形成する場合には、段差部分の長手方向Xの長さを短く形成することができる。
なお、
図9及び
図10には、三段階で縮径する例を図示しているが、段数は、二段階でもよく、四段階以上であってもよい。
【0170】
まず、本実施形態における被覆電線400、及び圧着端子200について
図11から
図13を用いて詳しく説明する。
なお、
図11は被覆電線400、及び圧着端子200における上方からの外観斜視図を示し、
図12はバレル部230における溶接について説明する説明図を示し、
図13は
図11中のA−A矢視断面図を示している。
【0171】
また、
図11中において、矢印Xは長手方向を示し(以下「長手方向X」とする)、矢印Yは幅方向を示している(以下、「幅方向Y」とする)。さらに、長手方向Xにおいて、後述するボックス部210側(図中の左側)を前方とし、ボックス部210に対して後述する被覆電線400側(図中の右側)を後方とする。
また、
図12(a)は、ボックス部210を二点鎖線で示す透過状態とした圧着端子200の底面側の概略斜視図を示し、
図12(b)は
図12(a)におけるZ部拡大図を示している。
【0172】
被覆電線400は、
図11及び
図13に示すように、アルミニウム素線101aを束ねたアルミニウム芯線401を、絶縁樹脂で構成する絶縁被覆402で被覆して構成している。詳しくは、アルミニウム芯線401は、断面が0.75mm
2となるように、アルミニウム合金線を撚って構成している。さらに、被覆電線400は、絶縁被覆402の先端から所定の長さアルミニウム芯線401を露出させている。
【0173】
圧着端子200は、
図11から
図13に示すように、メス型端子であり、長手方向Xの前方から後方に向かって、図示省略するオス型端子のオスタブの挿入を許容するボックス部210と、ボックス部210の後方で、所定の長さのトランジション部220を介して配置されたバレル部230とを一体に構成している。
【0174】
この圧着端子200は、表面が錫メッキ(Snメッキ)された黄銅等の銅合金条(図示省略)を、平面展開した端子形状に打ち抜いた後、中空四角柱体のボックス部210と後方視略O型のバレル部230とからなる立体的な端子形状に曲げ加工するとともに、バレル部230を溶接して構成したクローズバレル形式の端子である。
【0175】
ボックス部210は、底面部211の長手方向Xと直交する幅方向Yの両側部に連設された側面部212の一方を、他方の端部に重なり合うように折り曲げて、長手方向Xの前方側から見て略矩形の倒位の中空四角柱体で構成されている。
【0176】
さらに、ボックス部210の内部には、底面部211における長手方向Xの前方側を延設して、長手方向Xの後方に向かって折り曲げて形成され、挿入されるオス型端子の挿入タブ(図示省略)に接触する弾性接触片213を備えている。
【0177】
バレル部230は、絶縁被覆402を圧着する弱圧着部231、及び被覆圧着部232と、露出したアルミニウム芯線401を圧着する芯線圧着部233とを後方からこの順番で一体にして構成するとともに、芯線圧着部233より前方端部を略平板状に押しつぶすように変形させた封止部234で構成している。
【0178】
このバレル部230は、
図12に示すように、端子形状に打ち抜いた銅合金条におけるバレル部230を被覆電線400の外周を包囲する大きさに丸めるとともに、丸めた端部2230b同士を突き合わせて長手方向Xの溶接個所W1に沿って溶接して後方視略O型に形成している。換言すると、バレル部230は、幅方向Yにおける断面形状を閉断面形状に形成している。
【0179】
さらに、バレル部230の封止部234は、
図12に示すように、バレル部230の長手方向Xの前端を閉塞するように幅方向Yの溶接個所W2に沿って溶接して封止している。
つまり、バレル部230は、端部230a,230b同士、及び長手方向Xの前端を溶着して閉塞し、長手方向Xの後方に開口を有する略筒状に形成されている。
【0180】
また、バレル部230における弱圧着部231は、
図13に示すように、被覆圧着部232における長手方向Xの長さと略同等の長さであって、銅合金条を端子形状に打ち抜いた際、被覆圧着部232の板厚よりも薄肉の板厚に成形している。
【0181】
そして、被覆電線400の外周を包囲する大きさに丸めた状態において、弱圧着部231は、被覆圧着部232の外径と略同一の外径を有するとともに、被覆圧着部232の内径より大きい内径を有する形状に形成している。
【0182】
次に、このような構成の圧着端子200のバレル部230に被覆電線400を挿入するとともに、バレル部230を加締めて圧着する工程、及び圧着後の圧着接続構造体1Aについて、
図14を用いて詳しく説明する。
【0183】
なお、
図14は被覆電線400、及び圧着端子200における加締め前後の状態を説明する説明図を示し、
図14(a)は被覆電線400を挿入した圧着端子200に対して圧着工具610で加締める前の状態を説明する説明図を示し、
図14(b)は被覆電線400、及び圧着端子200を接続した圧着接続構造体1Aの断面形状の断面図を示している。
【0184】
上述した圧着端子200のバレル部230に対して、
図14(a)に示すように、後方からアルミニウム芯線401が露出した被覆電線400を内部に挿入する。この際、露出したアルミニウム芯線401が、芯線圧着部233に配置されるよう挿入する。
その後、
図14(a)に示すように、被覆電線400を挿入した圧着端子200のバレル部230に対して、アンビルとクリンパで構成された1組の圧着工具610で挟み込むようにして加締める。
【0185】
この1組の圧着工具610は、
図14(a)に示すように、アンビルとなる第1圧着型611、及びクリンパとなる第2圧着型612で構成されている。さらに、圧着工具610は、圧着後における芯線圧着部233の外面形状に対応する内面形状に形成された芯線加締部610aと、圧着後における弱圧着部231、及び被覆圧着部232の外面形状に対応する内面形状に形成された被覆加締部610bとを一体にして構成している。
【0186】
このような圧着工具610で、被覆電線400を挿入した圧着端子200のバレル部230を、1組の圧着工具610で挟み込むようにして弱圧着部231、被覆圧着部232、及び芯線圧着部233を一様な力で加締めて、絶縁被覆402、及びアルミニウム芯線401を圧着して圧着接続構造体1Aを構成する。
【0187】
具体的には、圧着接続構造体1Aは、
図14(b)に示すように、圧着工具610の芯線加締部610aで芯線圧着部233を加締めることで、芯線圧着部233とアルミニウム芯線401とが圧着して導通可能に接続されている。さらに、圧着工具610の被覆加締部610bで被覆圧着部232、及び弱圧着部231を加締めることで、被覆圧着部232、及び弱圧着部231と絶縁被覆402とが圧着して接続されている。
【0188】
この際、圧着接続構造体1Aは、被覆圧着部232の内径と弱圧着部231の内径の差により、被覆圧着部232による絶縁被覆402の圧縮量に対して、弱圧着部231による絶縁被覆402の圧縮量が小さくなる。つまり、圧着端子200は、被覆圧着部232が絶縁被覆402を圧縮する圧縮力に対して、弱圧着部231が絶縁被覆402を圧縮する圧縮力が小さくなるよう構成されている。
【0189】
このようにして圧着端子200のバレルを加締めて被覆電線400を圧着して接続するとともに、アルミニウム芯線401と圧着端子200との導通性を確保した圧着接続構造体1Aを構成する。
【0190】
次に、上述した圧着接続構造体1Aをコネクタハウジングの内部に装着したコネクタについて
図15を用いて説明する。
なお、
図15はメス型コネクタ521とオス型コネクタ531の接続対応状態の斜視図を示し、
図15中においてオス型コネクタ531を二点鎖線で図示している。
【0191】
メス型コネクタハウジング522は、圧着端子200を長手方向Xに沿って装着可能な複数の開口を内部に有して、幅方向Yにおける断面形状が略矩形状のボックス形状に形成している。このようなメス型コネクタハウジング522の内部に対して、上述した圧着端子200で構成した複数の圧着接続構造体1Aを長手方向Xに沿って装着してメス型コネクタ521を備えたワイヤーハーネス420を構成する。
【0192】
また、メス型コネクタハウジング522に対応するオス型コネクタハウジング532は、メス型コネクタハウジング522と同様に、圧着端子200を装着可能な複数の開口を内部に有して、幅方向Yにおける断面形状が略矩形状であってメス型コネクタハウジング522に対して凹凸対応して接続可能に形成している。
【0193】
このようなオス型コネクタハウジング532の内部に対して、図示を省略するオス型の圧着端子で構成した圧着接続構造体1Aを長手方向Xに沿って装着してオス型コネクタ531を備えたワイヤーハーネス430を構成する。
そして、メス型コネクタ521とオス型コネクタ531とを嵌合することで、ワイヤーハーネス420とワイヤーハーネス430とを接続する。
【0194】
以上のような構成を実現する圧着端子200、圧着接続構造体1A、及びメス型コネクタ521は、安定した止水性を確保することができる。
具体的には、バレル部230を一様な力で加締めて被覆電線400を圧着しているため、弱圧着部231は、被覆圧着部232が絶縁被覆402を圧縮する圧縮力に対してより小さい圧縮力で絶縁被覆402を圧縮することができる。すなわち被覆圧着部232による絶縁被覆402の圧縮量に対して、弱圧着部231による絶縁被覆402の圧縮量を小さくすることができる。
【0195】
さらに、バレル部230を加締める荷重の増加に伴い、弱圧着部231による絶縁被覆402の圧縮量を大きくすることができる。つまり、圧着端子200は、被覆圧着部232に加えて、弱圧着部231でも被覆電線400を保持することができる。換言すると、圧着端子200は、被覆電線400側からバレル部の内部への水分の侵入を、被覆圧着部232と弱圧着部231とで阻止することができる。
【0196】
そして、例えば絶縁被覆402が損傷するまで被覆圧着部232を加締めた場合、圧着端子200は、絶縁被覆402を弱圧着部231で圧縮して保持することができる。このため、圧着端子200は、被覆圧着部232の被覆電線400側に形成した弱圧着部231によって、被覆電線400側からバレル部の内部に水分が侵入することを阻止することができる。
【0197】
より詳しくは、絶縁被覆402と接触した状態からのバレル部の潰し量に対する本実施形態と従来例との比較を説明する説明図を示す
図16を用いて説明する。
なお、
図16(a)は絶縁被覆402と接触した状態からのバレル部の潰し量が0.6mmより小さい場合を示し、
図16(b)は絶縁被覆402と接触した状態からのバレル部の潰し量が0.6mm以上、かつ0.8mmより小さい場合を示している。
また、
図16中における左側を本実施形態における圧着接続構造体1Aを示し、右側を従来例における圧着接続構造体1Aaを示している。
【0198】
圧着接続構造体1Aaは、
図16に示すように、上述した被覆電線400と、圧着端子200aとを圧着して構成している。この圧着端子200aは、被覆圧着部232a、図示を省略した芯線圧着部、及び封止部でバレル部230aを構成している。
【0199】
ここでは、絶縁被覆402の肉厚を0.3mmとし、被覆圧着部232、及び被覆圧着部232aの肉厚を0.25mmとし、弱圧着部231を被覆圧着部232に対して0.1mm薄く形成しているものとする。
【0200】
絶縁被覆402と接触した状態からのバレル部の潰し量が0.6mmより小さい場合、
図16(a)に示すように、本実施形態における圧着接続構造体1A、及び従来例における圧着接続構造体1Aaは、それぞれ被覆圧着部232、及び被覆圧着部232aが絶縁被覆402を圧縮して被覆電線400を保持するとともに、止水性を確保することができる。
【0201】
絶縁被覆402と接触した状態からのバレル部の潰し量が0.6mm以上、かつ0.8mmより小さい場合、
図16(b)に示すように、従来例における圧着接続構造体1Aaは、被覆圧着部232aの端部によって絶縁被覆402がせん断され、被覆電線400側からの水分の侵入に対する止水性を維持することができない。
【0202】
一方、本実施形態における圧着接続構造体1Aは、被覆圧着部232の端部によって絶縁被覆402がせん断されるものの、弱圧着部231が絶縁被覆402を圧縮している状態を維持しているため、被覆電線400側からの水分の侵入に対する止水性を確保することができる。
【0203】
すなわち、被覆電線400側からバレル部の内部への水分の侵入を被覆圧着部232だけで阻止する場合に対して、圧着端子200は、弱圧着部231を一体に形成したことにより、止水性を損なうまでのバレル部230の潰し量を大きくすることができる。
【0204】
これにより、圧着端子200は、バレル部230を加締めた際、被覆圧着部232の潰し量のバラツキによって絶縁被覆402が損傷し、被覆電線400側からバレル部230の内部への水分の侵入に対する止水性が確保できなくなることを弱圧着部231により防止することができる。
【0205】
従って、圧着端子200は、バレル部230の潰し量のバラツキに対して、弱圧着部231を備えたことで、安定した止水性を確保することができる。
【0206】
また、弱圧着部231を、被覆圧着部232の肉厚よりも薄肉に形成したことにより、バレル部230を一様な力で加締めても、被覆圧着部232による絶縁被覆402の圧縮量と、弱圧着部231による絶縁被覆402の圧縮量とを異ならせることができる。つまり、圧着端子200は、被覆圧着部232と弱圧着部231とをそれぞれ異なる力で加締める手間を省くことができる。
【0207】
このため、圧着端子200は、バレル部230を加締める際、組付工数が増加することなく、弱圧着部231を加締めて被覆電線400を圧着することができる。さらに、既存の圧着工具610を使用することができる。
従って、圧着端子200は、被覆圧着部232の肉厚に対して弱圧着部231の肉厚を薄くすることで、バレル部230を加締める際における組付工数の増加を抑えることができる。
【0208】
また、弱圧着部231を略円筒状に形成したことにより、長手方向Xの断面において、弱圧着部231は、径方向で対面する内面間の距離を一定にすることができる。ゆえに、弱圧着部231は、絶縁被覆402を一様な圧縮力で圧縮する、すなわち絶縁被覆402を一様な圧縮量で圧縮することができる。このため、弱圧着部231は、より安定した止水性を確保することができる。
【0209】
これにより、万一、被覆圧着部232によって絶縁被覆402が損傷しても、圧着端子200は、弱圧着部231によって、被覆電線400側から絶縁被覆402の損傷個所に水分が到達することをより困難にすることができる。
従って、圧着端子200は、より安定した止水性を確保することで、安定した導電性を確保することができる。
【0210】
また、バレル部230に封止部234を備えたことにより、圧着端子200は、バレル部230におけるアルミニウム芯線401側の開口からの水分の侵入を防止することができる。さらに、封止部234、被覆圧着部232、及び弱圧着部231により、圧着端子200は、圧着状態におけるバレル部230の内部を密閉状態にすることができる。これにより、圧着端子200は、バレル部230の内部への水分の侵入をより確実に防止することができる。
従って、圧着端子200は、圧着状態におけるバレル部230の内部を密閉状態にすることで、確実な止水性を確保するととともに、より安定した導電性を確保することができる。
【0211】
また、上述した弱圧着部231を有する圧着端子200により、圧着端子200のバレル部230に圧着するだけで確実な止水性を確保できる圧着接続構造体1Aを構成することができる。
従って、圧着接続構造体1Aは、より安定した導電性を確保することができる。
【0212】
また、被覆電線400の芯線を、アルミニウム合金で構成するとともに、バレル部230を、銅合金で構成したことにより、銅線による芯線を有する被覆電線400に比べて軽量化することができる。さらに、封止部234、被覆圧着部232、及び弱圧着部231による確実な止水性により、異種金属で構成された圧着端子200と被覆電線400とによる電食の発生を防止することができる。
【0213】
また、圧着接続構造体1Aにおける圧着端子200をメス型コネクタハウジング522の内部に配置してメス型コネクタ521を構成することにより、メス型コネクタハウジング522の内に配置した圧着端子200にオス型コネクタ531の圧着端子を接続する際、止水性を確保したままメス側コネクタ21の圧着端子200をオス型コネクタ531に接続することができる。
従って、メス型コネクタ521は、確実な導電性を備えた接続状態を確保することができる。
【0214】
なお、上述の実施形態2において、弱圧着部231の内面形状を、被覆圧着部232の内径よりも大きい内径を有する形状に形成したが、これに限定せず、被覆圧着部232による絶縁被覆402の圧縮量に対して弱圧着部231による絶縁被覆402の圧縮量を小さくできる内面形状であれば、別の圧着端子200、及び圧着接続構造体1Aを説明する説明図を示す
図17から
図20に示すように、適宜の内面形状に形成してもよい。
【0215】
ただし、
図17から
図20において、要部を明確に図示するため、圧着端子200、及び圧着接続構造体1Aにおけるボックス部、トランジション部、封止部、及び芯線圧着部の図示を省略している。
【0216】
例えば、
図17(a)に示すように、上述した実施形態2における弱圧着部231に対して、バレル部240における弱圧着部241の内面形状が異なる圧着端子200であってもよい。この弱圧着部241の内面形状は、被覆圧着部242に連設する傾斜面241aを被覆圧着部242側に形成するとともに、後方端を薄肉にして拡径したベルマウス部241bを形成している点が、上述した実施形態2における弱圧着部231の内面形状と異なる。
【0217】
この際、圧着接続構造体1Aは、
図17(b)に示すように、傾斜部241aとベルマウス部241bとの間によって、被覆圧着部242による圧縮力よりも小さい圧縮力で一様に圧縮することができる。これにより、上述の実施形態2と同様の効果を奏することができる。
【0218】
さらに、傾斜部241aによって、上述の実施形態2のような弱圧着部231と被覆圧着部232との内径差による段差を軽減し、バレル部240を加締めた際に絶縁被覆402が損傷することを防止できる。加えて、ベルマウス部241bによって、被覆電線400が揺動した際、バレル部240の後端と絶縁被覆402が擦れて絶縁被覆402が摩耗、あるいは損傷するおそれを軽減することができる。
【0219】
また、別の圧着端子200の例として、
図18(a)に示すように、バレル部250における被覆圧着部252の外径と略同一外径の弱圧着部251において、被覆圧着部252側を小径とするとともに、後端の内径が絶縁被覆402の外径より大きい略テーパー状のテーパー部251aと、テーパー部251aの後端の内径と略同一内径の後端拡径部251bとを前方からこの順番で形成した内面形状であってもよい。
【0220】
この際、圧着接続構造体1Aは、
図18(b)に示すように、弱圧着部251が絶縁被覆402を圧縮する圧縮力をより安定させることができる。例えば、
図13のようなバレル部230の場合、被覆圧着部232と弱圧着部231との内径差が、被覆圧着部232による絶縁被覆402の圧縮量と弱圧着部231による絶縁被覆402の圧縮量との差となる。
【0221】
ゆえに、バレル部230の潰し量が最小値に近い場合、圧着端子200は、弱圧着部231による絶縁被覆402の圧縮量を十分確保できないおそれがある。すなわち、圧着端子200は、安定した圧縮力で絶縁被覆402を圧縮できないおそれがある。
一方、バレル部230の潰し量が最大値に近い場合、圧着端子200は、被覆圧着部232と弱圧着部231との内径差による段差により、絶縁被覆402を容易にせん断するおそれがある。
【0222】
そこで、バレル部250における弱圧着部251の内面形状を略テーパー状にすることで、圧着端子200は、弱圧着部251が絶縁被覆402を圧縮する圧縮力を長手方向Xの後方から前方に向かって緩やかに大きくすることができる。このため、バレル部250の潰し量のバラツキに対して、圧着端子200は、弱圧着部251の略テーパー状の内面形状における長手方向Xのいずれかの位置で、安定した止水性を確保できる圧縮力で絶縁被覆402を圧縮することができる。
【0223】
さらに、略テーパー状の内面形状によって内径差による段差を解消することで、圧着端子200は、弱圧着部251が絶縁被覆402を容易にせん断することを防止できる。
従って、圧着端子200は、弱圧着部251の内面形状を略テーパー状にすることで、バレル部250における被覆電線400側からの水分の侵入に対する止水性をより安定して確保することができる。
【0224】
また、別の圧着端子200の例として、
図19(a)に示すように、バレル部260における被覆圧着部262の外径と略同一外径の弱圧着部261において、被覆圧着部262の内径に対して長手方向Xの前方から後方に向けて段階的に拡径した内面形状であってもよい。
【0225】
この際、圧着接続構造体1Aは、
図19(b)に示すように、弱圧着部261と絶縁被覆402との境界が段階的に全周が縮径する段差圧着部に形成される。このため、弱圧着部261の長手方向Xにおける長さを実施形態2における弱圧着部231の長さと同等にした場合、弱圧着部261は、弱圧着部231に対して被覆電線400側からバレル部260の内部への水分の侵入経路を複雑化、かつ侵入経路の距離を長くすることができる。
【0226】
これにより、万一、被覆電線400側からバレル部260の内部に水分が侵入しても、圧着端子200は、侵入した水分が電線導体に到達することをより困難にすることができる。
従って、圧着端子200は、弱圧着部261における被覆電線400側からの水分の侵入に対する止水性をより安定して確保することができる。
【0227】
また、別の圧着端子200の例として、
図20(a)に示すように、バレル部270における被覆圧着部272の外径と略同一外径の弱圧着部271において、被覆圧着部272の内径より大きい内径に拡径するとともに、径方向内側に向けて突設した環状突部271a,271bを有する内面形状であってもよい。なお、環状突部271aの突出高さに対して、後方の位置する環状突部271bの突出高さが小さくなるよう形成している。
【0228】
この際、圧着接続構造体1Aは、
図20(b)に示すように、弱圧着部271が、被覆圧着部272による圧縮力よりも小さい圧縮力で絶縁被覆402を圧縮することができる。さらに、環状突部271a,271bが絶縁被覆402を咬持するように圧着することができる。このため、弱圧着部271の長手方向Xにおける長さを実施形態2における弱圧着部231の長さと同等にした場合、弱圧着部271は、弱圧着部231に対して被覆電線400側からバレル部270の内部への水分の侵入経路をより複雑化することができる。
従って、圧着端子200は、弱圧着部271における被覆電線400側からの水分の侵入に対する止水性をより安定して確保することができる。
【0229】
また、弱圧着部231の長手方向Xの長さを、被覆圧着部232における長手方向Xの長さと略同等の長さとしたが、これに限定せず、被覆電線400からバレル部230の内部への水分の侵入に対して、止水性を確保できる長さであれば適宜の長さとしてもよい。
【0231】
次に、実施形態2に対して弱圧着部331の構成が異なる圧着端子300、及び圧着接続構造体1Aについて
図21及び
図22を用いて説明する。
なお、
図21は実施形態3における被覆電線400、及び圧着端子300の断面形状の断面図を示し、
図22は実施形態3における被覆電線400、及び圧着端子300における加締め前後の状態を説明する説明図を示している。
【0232】
また、
図22(a)は被覆電線400を挿入した圧着端子300に対して圧着工具640で加締める前の状態を説明する説明図を示し、
図22(b)は被覆電線400、及び圧着端子300を接続した圧着接続構造体1Aの断面形状の断面図を示している。
【0233】
圧着端子300は、
図21に示すように、上述の実施形態2における圧着端子200に対して、弱圧着部331の内面形状が異なる。より詳しくは、バレル部330の弱圧着部331は、
図21に示すように、被覆圧着部332の内外径と略同一の大きさの内外径で形成している。
【0234】
ボックス部310、トランジション部320、バレル部330の封止部334、芯線圧着部333、及び被覆圧着部332は、上述した実施形態2におけるボックス部210、トランジション部220、封止部234、芯線圧着部233、及び被覆圧着部232と同一の構成のため、ここでの詳細な説明を省略する。
【0235】
次に、このような構成の圧着端子300のバレル部330に被覆電線400を挿入するとともに、バレル部330を加締めて圧着する工程、及び圧着後の圧着接続構造体1Aについて、
図22を用いて詳しく説明する。
【0236】
上述した圧着端子300のバレル部330に対して、
図22(a)に示すように、後方からアルミニウム芯線401が露出した被覆電線400を内部に挿入する。この際、露出したアルミニウム芯線401が、芯線圧着部333に配置されるよう挿入する。
【0237】
その後、
図22(a)に示すように、被覆電線400を挿入した圧着端子300のバレル部330に対して、アンビルとクリンパで構成された1組の圧着工具640で挟み込むようにして加締める。
【0238】
この1組の圧着工具640は、
図22(a)に示すように、アンビルとなる第1圧着型641、及びクリンパとなる第2圧着型642で構成されている。さらに、圧着工具640は、圧着後における芯線圧着部333の外面形状に対応する内面形状に形成された芯線加締部640aと、圧着後における被覆圧着部332の外面形状に対応する内面形状に形成された第1被覆加締部640bと、圧着後における弱圧着部331の外面形状に対応する内面形状に形成された第2被覆加締部640cとを一体にして構成している。
より詳しくは、第2被覆加締部640cは、第1被覆加締部640b側を小径とする略テーパー状の内面形状に形成されている。
【0239】
このような圧着工具640で、被覆電線400を挿入した圧着端子300のバレル部330を、1組の圧着工具640で挟み込むようにして弱圧着部331、被覆圧着部332、及び芯線圧着部333を一様な力で加締め、絶縁被覆402、及びアルミニウム芯線401を圧着して圧着接続構造体1Aを構成する。
【0240】
具体的には、圧着接続構造体1Aは、
図22(b)に示すように、圧着工具640の芯線加締部640aで芯線圧着部333を加締めることで、芯線圧着部333とアルミニウム芯線401とが圧着して導通可能に接続されている。さらに、第1被覆加締部640b、及び第2被覆加締部640cで被覆圧着部332、及び弱圧着部331を加締めることで、被覆圧着部332、及び弱圧着部331と絶縁被覆402とが圧着して接続されている。
【0241】
この際、弱圧着部331は、長手方向Xにおける断面において、被覆圧着部332と略同等の肉厚で、前方側を小径とする略テーパー状に形成される。このため、圧着接続構造体1Aは、被覆圧着部332による絶縁被覆402の圧縮量に対して、弱圧着部331による絶縁被覆402の圧縮量が前方から後方にかけて緩やかに小さくなる。
【0242】
つまり、圧着接続構造体1Aは、被覆圧着部332が絶縁被覆402を圧縮する圧縮力に対して、絶縁被覆402を圧縮する圧縮力が前方から後方にかけて緩やかに小さくなるように弱圧着部331を形成している。
このようにして圧着端子300のバレルを加締めて被覆電線400を圧着して接続するとともに、アルミニウム芯線401と圧着端子300との導通性を確保した圧着接続構造体1Aを構成する。
【0243】
以上のような構成の圧着端子300、及び圧着接続構造体1Aは、上述の実施形態2と同様の効果を奏することができる。
また、絶縁被覆402に対してバレル部330を加締める際に、弱圧着部331を形成する圧着端子300の圧着方法としたことにより、圧着する際における被覆圧着部332の変形に追従してより確実に弱圧着部331を形成することができる。
【0244】
これにより、圧着端子300の圧着方法は、予め弱圧着部331をバレル部330に形成した場合に対して、圧着した際に弱圧着部331が歪な形状に変形することを抑制して、絶縁被覆402を一様に圧縮することができる。
【0245】
さらに、絶縁被覆402に対してバレル部330を加締めて圧着する工程と同時に弱圧着部331を形成することができるため、圧着端子300の圧着方法は、弱圧着部331を形成する特別な工程を不要にすることができる。
従って、圧着端子300の圧着方法は、弱圧着部331を効率よく形成するとともに、より確実な止水性を確保することができる。
【0246】
なお、上述の実施形態3において、弱圧着部331を略テーパー状に形成したが、これに限定せず、被覆圧着部332による絶縁被覆402の圧縮量に対して弱圧着部331による絶縁被覆402の圧縮量を小さくできる形状であれば、別の圧着接続構造体1Aを説明する説明図を示す
図23及び
図24に示すように、適宜の形状に形成してもよい。
ただし、
図23及び
図24において、要部を明確に図示するため、圧着接続構造体1Aにおけるボックス部、トランジション部、封止部、及び芯線圧着部の図示を省略している。
【0247】
例えば、
図23(a)に示すように、圧着工具640でバレル部340を加締める際に、被覆圧着部342の内外径の大きさより大きい内外径の弱圧着部341を形成してもよい。
また、別の断面形状の例として、
図23(b)に示すように、圧着工具640でバレル部350を加締める際に、バレル部350における後端から被覆圧着部352に向けて内外径を段階的に縮径した弱圧着部351を形成してもよい。
【0248】
また、別の断面形状の例として、
図24(a)に示すように、圧着工具640でバレル部360を加締める際に、バレル部350における後端から被覆圧着部362に向けて緩やかに、かつ段階的に内外径を縮径した弱圧着部361を形成してもよい。
また、別の断面形状の例として、
図24(b)に示すように、圧着工具640でバレル部370を加締める際、径方向に内側に向けて突設した止水突部372aを被覆圧着部372の後端における内周面に形成することで、止水突部372aより後方に弱圧着部371を形成してもよい。
【0249】
より詳しくは、バレル部370の潰し量のバラツキによって、被覆圧着部372の止水突部372aが絶縁被覆402を押し潰して損傷させるおそれがある。そこで、止水突部372aより後方で、かつ止水突部372aによる絶縁被覆402の圧縮量より小さい圧縮量で絶縁被覆402を圧縮する範囲を弱圧着部371としてもよい。
【0250】
また、バレル部340,350,360を加締める際、弱圧着部341,351,361を形成するとしたが、これに限定せず、上述の実施形態2と同様に、銅合金条を端子形状に打ち抜いた際、弱圧着部341,351,361を予め成形してもよい。
【0251】
また、上述の実施形態2、及び実施形態3において、圧着端子200、300をメス型の圧着端子としたが、これに限定せず、メス型の圧着端子に対して長手方向Xに嵌合するオス型の圧着端子であってもよい。あるいは、ボックス部210、310ではなく略U字状あるいは環状の平板などであってもよい。
【0252】
また、被覆電線400における芯線をアルミニウム合金とし、圧着端子200、300を黄銅等の銅合金としたが、これに限定せず、被覆電線400における芯線、及び圧着端子200、300を黄銅等の銅合金やアルミニウム合金などの同一金属で構成してもよい。
【0253】
また、弱圧着部において、被覆電線400側からの水分の侵入に対する止水性の向上を図ってもよい。例えば、圧着接続構造体1Aにおける別の断面形状を説明する説明図を示す
図25における
図25(a)に示すように、長手方向Xの断面形状において、被覆圧着部382、及び略テーパー状の弱圧着部381を有するバレル部380における弱圧着部381の内面に、径方向外側に向けて凹設した凹溝部381aを形成してもよい。これにより、万一、後方から水分が侵入した場合、凹溝部381aにより水分の侵入経路を複雑化するとともに、進入した水分を凹溝部381aに貯留することで、弱圧着部381における止水性を向上することができる。
【0254】
あるいは、
図25(b)に示すように、長手方向Xの断面形状において、バレル部390の被覆圧着部392における内面の後端に、径方向内側に向けて突設した止水突部392aを備え、かつ略テーパー状の弱圧着部391の内面における後端近傍に、径方向内側に向けて突設した後端止水突部391aを形成してもよい。
【0255】
これにより、万一、バレル部390の後方から水分が侵入した場合、後端止水突部391aにより水分の侵入経路を複雑化することで、弱圧着部391における止水性を向上することができる。なお、止水突部392a、後端止水突部391aは、圧着前の状態に予め形成する、あるいは圧着する際に被覆圧着部392、及び弱圧着部391とともに形成してもよい。
【0256】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の電線導体は、実施形態のアルミニウム芯線401に対応し、
以下同様に、
絶縁被覆体は、絶縁被覆402に対応し、
導体圧着部は、芯線圧着部233,333に対応し、
接続構造体は、圧着接続構造体1Aに対応し、
アルミ系材料は、アルミニウム合金に対応し、
銅系材料は、黄銅等の銅合金条に対応し、
コネクタハウジングは、メス型コネクタハウジング522、及びオス型コネクタハウジング532に対応し、
コネクタは、メス型コネクタ521、及びオス型コネクタ531に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0257】
本実施形態では、圧着端子200のバレル部230を、アルミニウムやアルミニウム合金等の卑な金属からなるアルミニウム芯線401に圧着接続する例を説明したが、その卑な金属以外に、例えば、銅や銅合金等の貴な金属からなる導体部分に圧着接続してもよく、前記実施形態と略同等の作用及び効果を奏することができる。
【0258】
詳しくは、上述の構成のバレル部230は、圧着状態において、水の浸入を防止できるため、例えば、これまで線間止水のために圧着後にシールなどが必要であった銅や銅合金等の芯線で構成する被覆電線を接続してもよい。
【0259】
また、上述の説明では、
図12に示すように、端子形状に打ち抜いた銅合金条を丸めるとともに、端部230a同士を突き合わせて長手方向Xの溶接個所W1に沿って溶接して後方視略O型に形成してから、長手方向Xの前端部分をつぶすとともに、幅方向Yの溶接個所W2に沿って溶接して封止して、長手方向Xの前端が封止部234(334)で封止させ、長手方向Xの後方に開口を有する略筒状のバレル部230を形成したが、バレル部230における別の溶接方法について説明する説明図である
図26に示すように、バレル部230の形状を形成してから、溶接個所を溶接してバレル部230を形成してもよい。
【0260】
詳述すると、
図26(a)に示すように、端子形状に打ち抜いた銅合金条を丸めるとともに、長手方向Xの前端部分をつぶして、封止部234(334)を含むバレル部230の形状にあらかじめ形成する。
【0261】
そして、丸めて突き合わさる端部230a同士を長手方向Xの溶接個所W3に沿って溶接するとともに、封止部234(334)において幅方向Yの溶接個所W4に沿って溶接して封止してバレル部230を完成させる。
【0262】
また、
図12に示すように、バレル部230の底面側で端部230a同士を突き合わして溶接してもよいし、
図26(a),(b)に示すように、バレル部230上面側で端部230a同士を突き合わして溶接してもよい。
【0263】
さらには、
図26(c)に示すように、圧着状態において、バレル部230の被覆圧着部232(332)を、被覆電線200の絶縁被覆202に対して正面視円形状に圧着し、芯線圧着部233(333)を、アルミニウム芯線に対して正面視略U字状に圧着してもよい。
【0264】
また、圧着端子100は、
図26に示すように、帯状のキャリアKに取り付けられたままの状態でバレル部230を溶接してから、被覆電線200を圧着接続する際、あるいは被覆電線200を圧着接続した後、キャリアKから分離してもよいが、キャリアKから分離された状態で圧着端子100を形成し、被覆電線200を圧着接続してもよい。
【0265】
さらにまた、上述の説明では、バレル部230を、弱圧着部231、被覆圧着部232、及び芯線圧着部233を後方からこの順番で構成したが、別の圧着部について説明する説明図である
図27に示すように、被覆圧着部232、及び芯線圧着部233の代わりに段差状縮径部235で構成してもよい。
【0266】
段差状縮径部235は、弱圧着部231に比べてより小径であり、さらに、長手方向Xの前方に向けて段階的に縮径している。なお、段階的に縮径する段差状縮径部235の各段は高さ方向の差、各段における縮径量は、被覆電線400の絶縁被覆402の厚みに対応し、また、各段の長手方向Xの長さは、被覆電線400におけるアルミニウム芯線401の長さに対応するよう設定している。
【0267】
このように構成した段差状縮径部235は、様々な径の被覆電線400を挿入するとともに圧着して圧着接続構造体1Aを構成する場合、バレル部230に対して被覆電線400を適切な挿入位置に挿入し、確実な圧着状態を実現することができる。
【0268】
詳述すると、例えば
図27(b)に示すように、太径の被覆電線400の場合、段差状縮径部235における長手方向X後方(
図27において左側)の段部分にアルミニウム芯線401が当接するまで挿入することで、それ以上挿入することができず、適切な挿入位置まで挿入することができる。
【0269】
図27(c)に示すように、中径の被覆電線400の場合、長手方向X中間の段部分に当接する位置まで挿入することができる。つまり、太径の被覆電線400より長手方向X前方の位置まで挿入することができる。
【0270】
さらに、
図27(d)に示すように、細径の被覆電線400の場合、長手方向X前方(
図27において右側)の段部分に当接する位置まで挿入することができる。つまり、中径の被覆電線400よりさらに長手方向X前方の位置まで挿入することができる。
【0271】
このようにして、段差状縮径部235は、被覆電線400の径に応じて、段部分まで適切に挿入することができる。なお、各段部分は、長手方向X後方から前方に向かって段階的に縮径されているため、つまり、当該段部分まで挿入される被覆電線400のアルミニウム芯線401に応じて縮径された各段部分で、アルミニウム芯線401を圧着するため、その圧着量は、アルミニウム芯線401の径によらず、同程度の圧着量で圧着することができる。したがって、細径のアルミニウム芯線401を圧着するために、大きく圧着変形させる、つまり圧着量が大きすぎることで、圧着部30に割れなどの不具合が発生することなく、適切な圧着量で確実に圧着することができる。つまり、段差状縮径部235により多種の被覆電線400を確実に圧着して圧着接続構造体1Aを構成することができる。
さらにまた、上述の説明の段差状縮径部235は、底面部分がフラットなバレル部230において、弱圧着部231に比べてより小径であり、さらに、長手方向Xの前方に向けて段階的に縮径したが、さらに別のバレル部230について説明する説明図である
図28に示すように、バレル部230の全周が縮径する、つまり、段差状縮径部235における縮径された各段の中心が長手方向Xに沿って一定となるように形成してもよい。
【0272】
このように、底面がフラットでない、全周が縮径された段差状縮径部235を用い、様々な径の被覆電線400を挿入するとともに圧着して圧着接続構造体1Aを構成する場合、底面がフラットなバレル部230における段差状縮径部235と同様の効果を奏するとともに、さらに、様々な径の被覆電線400におけるアルミニウム芯線401を所定位置まで挿入する際のガイドとなり、容易に挿入することができる。さらに、底面がフラットなバレル部230における段差状縮径部235に比べて、圧着端子200を加工して製造する際の加工歪の偏りが少なくなり、耐久性のある圧着端子200を製造することができる。さらにまた、圧着時において、全周方向から圧着するため、バレル部230に作用する圧着変形による負荷を低減することができる。
【0273】
さらには、段差状縮径部235における各段部分の間の傾斜する段差部分の長手方向Xの長さを一定とする場合には、段差部分の傾斜角度を、底面がフラットなバレル部230における段差状縮径部235に比べて緩やかに形成できるため、加工負荷を低減することができる。逆に、一定の傾斜角度で段差部分を形成する場合には、段差部分の長手方向Xの長さを短く形成することができる。
なお、
図27及び
図28には、三段階で縮径する例を図示しているが、段数は、二段階でもよく、四段階以上であってもよい。